〜き〜

き(柝) 拍子木ともいう。歌舞伎、人形浄瑠璃だけでなく、演芸、民族芸能、相撲、見せ物など催物の開閉、口上などの合図に用いられる。歌舞伎では幕の開閉の二丁柝、演出上のきっかけ(山台、月、独吟)のチョンチョン、一日興行進行(砂切止→シャギリ、二丁、回り、追い出し止め木)など、そのつど狂言方により打たれる。また別にツケ打(→つけ)の打つ柝もある。
さまざまな打ち方・・・→ちゃくとうどめ→にちょう→まわり、↓きをなおす、↓きざみ、→とめぎ→しらせのき→つなぎ→まくぎれ→うちだし
.
きえもの(消え物) 小道具の一つ。台本、演出、俳優などの要求により舞台上で使用される消耗品。食べる、飲む、燃やす、破る、壊すなどによって上演の度になくなる品物で、小道具係の扱うものが多いが、大道具係、衣装係の扱うものもある。焚捨(たきすて)ともいう。 .
ぎおん(擬音) 劇の進行に必要な音のうち実際に形象化できないものを各種の器具や笛類などを用い、現実音に似たものを人工的につくり出すことをいう。 .
ぎきょく(戯曲) 俳優が観客に向かって舞台で表現する行為の総体が「演劇」であるが、そのような舞台表現を予想し、文字によって書きあらわされた作品(脚本含む)を戯曲という。 .
きざみ 柝(↑き)を直した後(↓きをなおす)、下座音楽(→げざおんがく)に合わせて細かく刻むように打つ柝を「きざみ」という。幕が開き切るまで打つので、打つ数は間口によって異なる。 .
きぜわもの(生世話物) 歌舞伎作品の一種。歌舞伎作品はあつかっている題材によって時代物と世話物に分けられる。その世話物はさらに、時代物に近い様式的な演技と演出を必要とする(時代世話)と、この生世話とに分けられる。一般的に、町人階級の下層に属する職人などの生活を主とした、せりふ中心の脚本といえる。 .
ぎだいゆうきょうげん(義太夫狂言) 歌舞伎脚本のうち、人形浄瑠璃(義太夫節で上演される)の脚本(丸本)を移したものをいう。 .
きど(木戸) 1)劇場用語。興行場の出入り口をいう。木戸銭の略としても用いる。2)大道具用語。世話木戸、山木戸など様々な形のものがある。多くの場合下手(→しもて)寄りのところに縦向きに独立して置かれ垣が飾ってなくてもこの木戸から出入りすることになっており、演技場必要がなくなると劇の途中でも後見役(→こうけん)が取り除くことがある。 .
きまり(極まり) 歌舞伎演技、演出用語。俳優が演技中、その役の感情が高潮に達した際、一瞬制止したままのポーズで高揚した演技を観客に印象づけることで、見得に至る寸前の演出。 .
きまりもの 定式物(→じょうしきもの)のこと。 .
きゃくしょく(脚色) 小説や伝記など原作のあるものを書き換え、劇化、脚本化すること。 .
きゃくでん(客電) 劇場、ホールなどの客席用の照明をいう。開演中は、この照明を消したり、少し絞ることがある。 .
きゃくほん(脚本) 演劇、映画、放送での台詞やト書きを書いた本、上演台本のこと。歌舞伎では、作者の書いた完本を台帳といい、根本、正本の呼び名もある。 .
キュー cueは合図、きっかけのこと。舞台では俳優の登場から演技、照明、音楽効果、道具などの進行の指示をいう。演出プランにしたがい舞台監督(→ぶたいかんとく)が統括する。 .
きょうげき(京劇) 中国の伝統演劇。中国には昆劇、越劇、川劇など100以上の伝統的な地方演劇があるが、北京を中心とするものが京劇である。歌、台詞、立ち廻り、舞踊を組み合わせた演劇で、北京オペラとも呼ばれる。伝統的に女性役を男性の女形が演じたが、現在では女優が演じるようになった。 .
きょうげんかた(狂言方) 歌舞伎の舞台で柝を打ったりプロンプターを務めたり、舞台の進行に重要な仕事を受け持つ演出補助の仕事を務める人のこと。また、能狂言の演者のことも、このように言う。 .
きょうげんさくしゃ(狂言作者) 歌舞伎の脚本作者、歌舞伎作者、狂言作りともいう。 .
きょうげんまわし(狂言回し) 歌舞伎の役柄。劇の主人公の行動(主筋)に対して、恋の斡旋役である奴や仲居、あるいは落魄の主人公の介添役である若党夫婦など、道化、犠牲のそれぞれの持ち役を通じて、その主筋をスムーズに、時にはドラマチックには運ぶ脚色上の(働き)を見せる役をいう。 .
きよもと(清元) 清元延寿太夫(えんじゅだゆう)によって樹立され、歌舞伎の伴奏音楽として発達した。浄瑠璃として最後に生まれた流派で、歌詞にも曲調にも装飾的な技巧が多い。三味線は中棹であるが、常磐津よりもやや細めのものが使われ、この系統では最も柔らかい音色。浄瑠璃の中で最も派手な語り口と、裏声による技工的な高音に特長がある。清元の演奏家はすべて清元の姓を名乗る。 .
きりあな(切穴) 舞台の床を切り抜いた穴のこと。いつもはふたがしてあるが、必用に応じて臨時に開けて俳優の道具を出し入れする。迫り(→せり)と同意語。 .
きりおとし(切り落とし) 劇場用語。追込席、大入場ともいい、仕切のない大衆席をいう。 .
きりだし(切出し) 大道具用語、ベニヤ板、ブリキ、ボール紙などをいろいろな形に切り抜き、建てられるように裏から材木の枠を打ちつけて色彩した平面的な大道具の一種、立木、遠山、灯籠、草むらなどに最も多く使用される。立体的な丸物に対して平物(ひらもの)とも呼ばれる。 .
きわめつけ(極付) 歌舞伎用語。その役者の得意芸として後世の範となるような演技をいう。 .
きわもの(際物) 際物狂言、一夜漬狂言、ニュース劇ともいう。庶民の耳目をそばだたせた事件をすぐに劇に組み替え舞台にかけた作品。 .
きをなおす(柝を直す) いよいよ幕を開けられる状態になったとき、「開幕する」の合図として黒御簾の前で、柝をふたつ打つことを「柝を直す」という。この柝(↑き)で下座音楽(→げざおんがく)の演奏が始まり、幕が開けられる。 .