〜し〜 その1

じ(地) 日本音楽、日本舞踊用語。一般に基本、土台の意味。1)能、地謡の略称、および囃子の基盤となる旋律。リズム型2)浄瑠璃、旋律的部分でなく、朗読的な部分。義太夫節では地合といわれる。3)三味線音楽、地調子の略称。上調子に対して基本の調子の意。4)地歌、筝曲、反復される短い単純な基本的旋律(リズム)型。本手(原旋律)をのせる旋律の意。替手(対旋律)の一種。(砧地)(巣籠地)などは、それぞれ砧やツルの巣ごもりを象徴し、このほかにもいろいろある。5)日本舞踊の伴奏音楽。伴奏者は他方と呼ばれる。器楽だけでなく、声楽を伴う。 .
じあかり(地明かり) 照明用語。舞台の作業灯。設計計画によらない照明で、転じて照明がセットされた場合でも演技面を中心に各場合に共通して使用できるベースライトの配置を指すこともある。 .
じうた(地唄/地歌) 上方唄の別名で、江戸時代初期から京阪地方で唄われ、盲人音楽家の専門芸として伝承された。唄いながら三味線を弾く、弾き唄いを原則としているが、箏との合奏もある。三味線の技巧は最も繊細で、左指(弦のほう)の使い方が複雑である。やや太くて大きい中棹三味線(ちゅうさおしゃみせん)を用いる。 .
ジオラマ サイクロラマやパノラマにさらに照明の強度方向、切出し(→きりだし)の添加、透明、半透明幕の使用を加えて立体的な効果を生ずる装置法。 .
しかけもの(仕掛物) 脚本や演出上の技巧として、大道具、小道具、鬘、衣装などにあらかじめトリックを施したもの。特に引道具、追出し、押出し、ぶん回し、引返しなどで観客の目を驚かし大入りをとったことが記録に見える。その他がんどう返し(→がんどうかえし)、戸板返しなど歌舞伎大道具の代表的な仕掛物がある。特に怪談物や変化物踊にはこの種の大道具が多用される。衣装では引抜き(→ひきぬき)、ぶっ返りが有名である。 .
じかすり(地絣) 大道具用語。舞台床に敷く布で、地面を表現するため鼠色と褐色が定式である。また廊下では板目、屋外では石畳、川砂利などを描いたもの。雪の場面では真白の地かすり(雪布)を使用する。上方では泥裂(どろぎれ)という。 .
じかた(地方) 日本舞踊用語。舞踊において地の音楽を受け持つ人々の総称で、踊手の立方(たちかた)に対する。地は土台、下地の意。囃子方を除いて、三味線音楽のほとんどが含まれる。 .
しぎ(支木、心木) 大道具用語。大道具の張り物(→はりもの)や切出し(→きりだし)などを立てるために使用する一種のつっかえ棒。棒の両端に鎹を取り付けたもので、舞台床と張り物などの裏側の木枠に引き込んで留める。全体が鉄製のものを金支木という。 写真
しこみ(仕込み) 用意・準備あるいは全てのセッティングのこと。 .
しず →カウンターウエイト .
じぞう(地蔵) 街道筋などの一種の淋しい感じの場面に使われている。昔の旅人には実感であって舞台においてもそれらの聯想が伴って効完的であったと思われる。 .
じだいもの(時代物) 歌舞伎、人形浄瑠璃の種類。町人社会の事件を扱う世話物の対。歌舞伎では時代狂言、一番目物、一番目狂言ともいい、およそ平安、鎌倉、室町時代に題材をとったもの、また公卿、僧侶、武家社会を主題としたものをいう。 .
しだし(仕出し) 歌舞伎の役柄。端役のなかの最も軽い役(賑やかな囃子で幕開く。仕出し多勢わやわやと通り過ぎ)(向かうより若衆の仕出し数人)などと脚本に指定されるように、役としては一般庶民の性格で、幕明きの場面の雰囲気をつくり、また主役の登場までのつなぎを勤める程度の役をいう。 .
しちさん(七三) 劇場用語。(花道七三)ともいう。歌舞伎劇場の本花道(→はなみち)で、揚幕(→あげまく)から七三舞台の付際からは三分の場所。ここに「すっぽん」(→すっぽん)をつける。昔はこの割合は逆で揚幕よりだったが、階上席から見通せる場所として化政期(1804〜30)以後この場所となった。花道で登退場の俳優が観客の視線を浴びて、思入れ、気を変える、見得などの演技を行う場所。

じっけんげきじょう(実験劇場) 営利を度外視して芸術上の新しい実験を試みる劇場の意。 .
じつごと(実事) 歌舞伎用語。歌舞伎の役柄から出て、演技の種類となった言葉で、誠実、篤実な人を主人公とした写実的な場面、演技。判断力を備え円満な人格を演ずる人が実事師と呼ばれ、そういう人物の高度な精神を主題とする場面を実事といった。 .
シテ 能の主役。ひとつの演目が二部形式になっている複式能では、通常は同一人物が演じるが、前半の役を前ジテ(まえじて)、後半の役を後ジテ(のちじて)と呼ぶ。 .
しびょうし(四拍子) 能と歌舞伎の囃子の基本形となる4つの楽器。太鼓、大皷、小皷、笛(能管)の総称。 .
しめる 三味線、囃子などの演奏のテンポを遅くすること。 .
しもだし(下出し) 回り舞台を下手(↓しもて)が前に出てくるように回転させること。本回しともいう。 .
しもて(下手) 客席側から舞台をみて、左側のことを下手という。外国では、舞台から客席側を見て左右をいうので、下手はステージライトという。 .
シャギリ(砂切り) 歌舞伎の儀式音楽。砂切りとも書く。一幕が終わり(止め木)(→とめぎ)が打たれたのち、下座で演奏する。能管。太鼓、大太鼓で(着到)(→ちゃくとうどめ)に似ているがテンポが早い。 .
しゃくだか(尺高) 大道具用語。定式の二重で、高さ1尺(約30センチ)のものをいう。ふつう貧家などの二重屋体(台)(→やたい)床に使用する。 .
しゃきょうもの(石橋物) 歌舞伎舞踊の一系統。能の(石橋)に取材した獅子物をいう。いずれも獅子の狂いに眼目が置かれているのが特徴である。 .
しゃっかんほう(尺貫法) 長さの単位を尺、体積の単位を升、質量の単位を貫とする日本古来の度量衡法を尺貫法と言
う。現在ではメートル法が使われているが、昔は長さの単位に尺を用いていたため、日本家屋を建てる時や歌舞伎の舞台で使用する大道具などが、この尺を基準にして作られている。現在でも日本の舞台では、この尺貫法の長さの単位が多く用いられている。
1寸=3.03cm / 1尺=10寸=303cm / 1間=6尺=1.818m
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シャッター 照明用語。スポットライトのレンズの前に取り付け光量を機械的に調節する機材。アイリス型は同心円形の絞りであり、ブラインド型は平行板の開閉式である。 .
じゃのめまわし(蛇の目回し) 普通の回り舞台の外側にもう一重、同心円形に切ってあり、内側と外側を別々に回せるようになっている機構。二重回しともいう。 .
しゃまく(紗幕) 織り目の粗い、透ける布で作った幕のこと。幻想、霧、霞などを表現するために、舞台装置をぼかして見せるための幕。 .
ジャリいと(ジャリ糸) 小道具用語。仕掛物を客席から見えないように操作するための細い糸、ひも。舞台にあらわれている、月、雲、紺色に染めてある。今はナイロンテクスなど新しい素材を使用することも多い。 .
しゅうめい(襲名) 歌舞伎行事の一つ。俳優が由緒ある家名または芸名を継いで家系とすることをいう。ただし血筋はつながっていなくても、名前養子となってその名を継ぎ、併せて家の芸、家の狂言を継続する。 .
しょうか(生花) 大道具用語。舞台で用いる本物の花のことで、草花に限らず本物の樹木類をいう。 .