〜ま〜

まく(幕) カーテン。劇場で舞台と客席を区切る布。開幕から閉幕までの舞台上に起きたドラマの時間的経過を幕とする劇的概念をそれは伴うが、これは西欧近代劇と交流した明治以後の理解で、舞台と客席を一つものとする舞楽以来の日本芸能では、幕はむしろ楽屋と舞台を区切る意味で重視されてきた。 .
まくあい(幕間) 幕が下りて1場面が終わり、次場面が開幕するまでの間。"まくま"と読むのは誤読。 .
まくうち(幕内) 役者、大小道具、衣装、床山、照明、音響関係、楽屋従業員など、直接、間接に日々の舞台生産に従事する人々や機構を慣習として幕内と呼ぶ。 .
まくぎれのき(幕切れの柝) 幕切れに打つ柝(→き)は、その幕全体を引き締める重要な役割がある。
1、幕切れの柝・・・「○○が何して、(チョーン)ええ、何とじゃなあ」と、台詞が形よく決まったところで打って、幕切れの感情をスッキリとさせ「無事に終了」を知らせる柝である。俳優の呼吸に合わせてたっぷりと間をとって高い調子でひとつ打つ。
2、三重の柝・・・時代物は「幕切れの柝」の後、初めは大きく間をあけて打ち、次第に間をつめて打って幕を閉める。止め柝(→とめぎ)で終わり、この後は鳴物の「砂切り」(→シャギリ)になる。
3、拍子幕の柝・・・世話物(→せわもの)は、「幕切れの柝」を打った後、一定の拍子で柝を打って幕を閉める。この柝を「拍子幕の柝」という。止め柝の後、鳴物の「砂切り」(→シャギリ)になる。
4、砂切り止め・・・鳴物の「砂切り」の演奏が終わると、大きく間をあけて「チョーン」・・・「チョーン」とふたつ打つ柝のこと。
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まくだまり(幕溜り) 上手チョボ床(→ちょぼ)と舞台額縁との間、下手おはやしべやと額縁との間をいう。引幕が開けられたとき幕がたまっているからこの名がある。幕尻ともいう。 .
まくまえしばい(幕前芝居) 暗転幕や緞帳を降ろして、その前で演じられる芝居。定式幕の前で演じられる場合は幕外(まくそと)と称し、花道の付け際での芝居になることが多い。 .
マスキング 舞台のある部分を隠すための装置道具。例えば一文字、みきり、かがみなど。 .
マチネー matineeは芝居、音楽会、映画などの昼の興行。この語は本公演前に行われる特別公演の意味でそのまま残った。 .
まつばめ(松羽目) 能舞台の模倣で、正面の羽目板には松の絵が描いてあり、左右の羽目板には竹が描かれている歌舞伎の舞台装置。能や狂言をもとにした舞踊劇などを演じるときに用いられる。

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まつばめもの(松羽目物) 歌舞伎舞踊の種類の一つ。松羽目とは、能舞台正面に松を描いた鏡板を指す。それを歌舞伎舞台のバックにそっくり模倣し、能、狂言を歌舞伎舞踊化したものを松羽目物と総称する。(船弁慶)(紅葉狩)(土蜘蛛)などが能から(素袍袴)(二人袴)などが狂言からつくられた。 .
まるほん(丸本) 院本とも書く。人形浄瑠璃、歌舞伎の脚本用語。語り物として上演とほとんど同時に出版された義太夫節の、その全段丸ごと収録した版本が丸本で、1ページの行数で、七、八、十行本とも略称された。 .
まるもの(丸物) 大道具用語。張り物(→はりもの)や切出し(→きりだし)のような平面的な道具を平目(ひらめ)というが、これに対して立体的な道具を丸物という。 .
まわり(回り) 開演5分前に楽屋の各部を回りながら打つ柝(→き)のこと。 .
まわりぶたい(回り舞台) 舞台機構。1758年(宝暦8)大阪角の芝居上演の並木正三作(三丁石ふねの始)の大切。淀の段の舞台装置がその原形という。舞台床を円形に切抜きそれを回して舞台転換の時間を短縮したり、特殊な演出効果をあげる機構。1847年(弘化4)に(蛇の目回し)といわれる且り舞台の二重回しが完成する。 .