映画の感想 2006年 2007/09/16 更新
採点基準
★★★★ :人類の宝 (最高) ★★★☆ :絶対必見 ★★★ :観るべき映画 ★★☆ :観ても良い ★★ :中間 ★☆ :観なくてもいい ★ :観る価値はほとんどない ☆ :作者もろともこの世から消えてなくなれ (最低) なし :あえて採点しない(最低ではない)
基本的に、ネタバレがある可能性があります。
文章などの内容には、時々変更や追加が入ることがあります。
2006年公開作品(前年に鑑賞) //
2006年公開作品(映画館以外で鑑賞) 2006/11/17
ビデオ、劇場上映 //
映画祭/上映会/未公開作品 2007/01/03
2005年公開作品(2006年に鑑賞) 2006/03/26
2005年公開作品(2006年に映画館以外で鑑賞) 2007/09/16
2006年に映画館等で観た旧作 2007/09/16
2006年公開作品 2007/09/16
邦画 | 洋画 | 米 | 英 | 仏 | 露 | アイルランド | 中国 | 香港 | 韓国 | 台湾 | 南アフリカ | 計 | |
拡大公開作品 | 17 | 22 | 15 | 1 | 1 | 2 | 3 | 39 | |||||
ミニチェーン作品 | 5 | 6 | 3 | 1 | 1 | 1 | 11 | ||||||
ミニシアター作品 | 18 | 13 | 2 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 | 3 | 31 | |||
計 | 40 | 41 | 20 | 3 | 2 | 1 | 1 | 4 | 1 | 5 | 3 | 1 | 合計=81作品 |
タイトル | 採点 | 分類 | 更新日 | 累計 |
NANA2 | ★★☆ | ドラマ系 | 2007/05/06 | 80 |
恋と仕事とコンプレックスと友情と羨望が絡み合うストーリーは、『とらばいゆ』以来の大谷監督らしい面白さが発揮されていた。 |
硫黄島からの手紙 | ★★★ | ドラマ系 | 2007/05/06 | 79 |
この映画はアメリカ映画なので、自国にとっての敵国(少なくとも異民族)の人々を、自分たちと同様の普通の人間として描いているところに、過去のアメリカだけでなく、他国に対する怒りを抑えられずにエスカレートさせて悲劇的な結果へと向かいがちな現在のあらゆる国にとっても意味のある内容になっている。 |
麦の穂をゆらす風 | ★★★ | ドラマ系 | 2007/05/06 | 78 |
1920年のアイルランドの物語を今映画にする意味は?などと深読みしようとする気持ちも吹き飛ばしてしまうほど、圧倒的なリアリズムで圧制と分裂の非常さを描く。 |
カポーティ | ★★☆ | ドラマ系 | 2007/05/06 | 77 |
ノンフィクション小説「冷血」の誕生秘話なので、当然のようにストーリーが以前観た映画『冷血』(1967 米)とそっくりなのだが、あちらが死刑反対映画の印象が強かったのに対し、こちらはカポーティ自身のズルさや弱さが描かれているのが面白い。 |
武士の一分 | ★★☆ | ドラマ系 | 2007/05/06 | 76 |
映画の出来はともかく、夫婦愛を描いたいたって普通の時代劇だなぁ。 『たそがれ清兵衛』が現代のサラリーマンと地続きだっただけに、そのような必然性が無いこの映画は余計に戸惑うが。 |
パプリカ | ★★★ | 妄想系、ドラマ系 | 2007/05/06 | 75 |
一人一人の妄想が合わさって暴走する話っていいねぇ。 だって現実ってまさに人々の妄想が支配しているようなものだからねぇ。 例えば宗教とかイデオロギーとか。 |
おじさん天国 | ★★☆ | お笑い系 | 2007/05/06 | 74 |
某所にあったように『牛頭』のような映画で、このてきとーさがたまらない。 |
007/カジノ・ロワイヤル | ★★☆ | 感覚系、ドラマ系 | 2007/01/03 | 73 |
アクションはひたすら無骨で勢いで押すタイプで、ボンドも傷だらけだし冗談はほとんど言わないしお色気も極力抑えていて、これまでのシリーズの昔ながらの洗練された雰囲気を捨ててまで、ゼロから始める意気込みで今という時代に合った映画を作ったのだろう。 でも、「洗練」は「古臭さ」とは別物で、「現代的」にするため捨てなければならないものではなく両立可能だと思うので(例えば、『NEW POLICE STORY』などの最近のジャッキー映画の傑作は「洗練されていて古くない」し。)、次回作は勢いだけの映画から脱皮して欲しい。 |
暗いところで待ち合わせ | ★★☆ | ドラマ系 | 2007/05/06 | 72 |
これは良く出来ている。 全編ほぼ出ずっぱりの田中麗奈の渾身の演技といい、彼女のたたずまいを中心にぶれることのない演出といい、救われない2人に寄り添うように進んでいって、ひとひねりしてうまいところに落とすストーリーといい。 |
7月24日通りのクリスマス | ★★ | ドラマ系 | 2007/01/03 | 71 |
シリアスでもない物語なので、軽い映画にしようと思ったのか、演出的には特別何もしないで、芸達者な人たちをキャスティングして彼らに任せるといった意図を感じさせる映画になっていた。 その狙いはある程度成功していて、中谷美紀は素敵だし、佐藤隆太は思いもかけずにポイントとなる役を見事に演じたし、上野樹里は確実に笑いを取ってコメディエンヌとしての達者ぶりを見せるし、劇団ひとりも芝居がかった演技で映画のポイントを抑えるチョイ役としての役割を果たすし、YOUはなんだかよく解らないけどなんだかいいといった感じで、彼らの芝居だけで十分楽しめる。 しかし、そうなるとこれだけの出演者を揃えたのだから、例えば『アメリ』などのように、脚本的にも演出的にももっと映画自体を激しくドライブして、引っ掻き回して面白くすべき映画だったろうと思う気持ちもわいてくる。 中谷美紀が毎日のように妄想にふけっているという設定や、最初のどんくさい格好から途中でファッションに目覚めて変身するということが、物語にほとんど役に立ってないなどの欠点も目立ちすぎる。 (何しろ、変身前と変身後を見て、ギャップがあるというより、変身前も結構イケてたと思っちゃうんだもんなぁ。) |
トゥモロー・ワールド | ★★ | ドラマ系、象徴系 | 2006/12/12 | 70 |
社会的なメッセージを含んだ映画だというのは理解できるのだが、正直言ってインパクトに欠ける映画だなぁ。 確かにこの近未来の設定の映画を見ながら、今の2006年あたりが実は歴史の分岐点で、個人レベルでも国家レベルでも他者への不寛容や過敏な危機管理により人間関係において争いがベースとなる世の中になるのか、あるいは信頼、理解、寛容をベースとした平穏な世界になるのか、その選択を迫られているときで、今間違えると後戻りができなくなるのかも知れないなどと思った。 そして、争いの世界を選択した結果のなれの果てのようなこの映画の世界は、当然のように弱者が虐げられる状態で、それは弱者の代表である子供が存在できないという形で象徴的に描かれている。 さらに、争いの恐ろしさに実感を持たせるためにアクションシーンはインパクト十分に生々しく描かれていて、前半での車の行く手を燃える車でふさがれてからバックで逃げるという動きの大きいシーンをワンカットで一気に見せるシーンといい、クライマックスの市街戦そのものといった状況を主人公のすぐ後ろからやはり長回しで撮ったシーンといい、素晴らしい。 そんなシーンがあったにもかかわらず、映画全体からのインパクトがなぜ弱かったかを考えてみると、本来の映画のテーマはあくまで「世の中の争い」を描くことで、子供ができないという設定はそのための道具に過ぎないはずだったのに、その設定が特異過ぎてそれに気をとられて、「生殖機能を脅かす環境汚染を描く映画か?」「少子化問題を描く映画か?」などと余計なことを考えてしまう結果になったからではないだろうか? 設定に凝るということが裏目に出て、本来前面に出るべきテーマがぼやけてしまったように思える。 |
ストロベリーショートケイクス | ★★ | ドラマ系 | 2006/11/30 | 69 |
やわらかい生活 | ★★★ | ドラマ系、感覚系 | 2007/09/16 | 68 |
同じ廣木隆一&荒井晴彦&寺島しのぶの組み合わせによる『ヴァイブレータ』と同様に、過去の出来事で受けた心の傷を背負いながら生きる女の物語。 作り物臭くない自然な生々しさを出していた演出と俳優の芝居が素晴らしい。 |
好きだ、 | ★★★ | 感覚系、ドラマ系 | 2007/01/03 | 67 |
物語はきわめてシンプルで、その代わりに映画を埋めつくすのは、市川準ばりの粘着質なカメラ&絶妙のモンタージュで描く表情や風景で、登場人物の感情をそのひだまで感じられるようにしっかりと描かれている。 我々の人生においても、例えば若いときにしか持てない恋愛に対する感情とか、久しぶりに再会したときの取り戻せないその人との過去への思いとか、表面的に起きている出来事そのものよりも、そこから感覚的に受ける感情の方が年代や時間経過に対して特有で、それがうまく表現できていた。 |
ウール100% | ★★☆ | 象徴系、ドラマ系 | 2006/12/09 | 66 |
主役の岸田今日子&吉行和子も含めて何から何まで少女趣味で、可愛く仕上がっていていい。 引きこもりの老姉妹の安らぎの生活が他者との接触によって揺れ動くという物語も今日的でいい。 |
王の男 | ★☆ | ドラマ系 | 2006/12/09 | 65 |
この映画、破綻してるよね? 冒頭とラストでホモセクシャルの要素の展開があるのだが、その間の展開が抜けているので全体を通してみるとホモの設定は生かされていないのがいい例。 はっきり言って必然性が無い、とってつけたような設定。 もっとはっきり言うと、女ウケのいい美少年を出演させるための単なる口実か?或いは同じ芸人モノの『さらば、わが愛/覇王別姫』の安直な模倣か? 前半、登場人物たちがそれぞれ意図のはっきりしない行動をするまとまりの無い展開で、中盤になって悩める凡庸な王が出て来てから彼を軸にやっと物語らしい展開になるかと思ったが、結局王の人物設定もまとまりの無いもので、後半もまとまりの無い展開が続いた。 |
手紙 | ★☆ | ドラマ系 | 2006/12/09発表、2006/12/13更新 | 64 |
まるでキッチリ計量して料理本のレシピに忠実に作った料理のような物足りない映画だった。 つまり、演出がルーチンワークのようで、お金を取って見せる映画なら観客の心に訴えるような作り手の情熱とか気迫を込めてしかるべきなのに、そのようなものはほとんど感じられなかった。 例を挙げると、この映画で例外的に良かった二、三のシーンの中の1つ、沢尻エリカが自分のアパートに来た山田孝之を自分の部屋に入れ、彼に向かって長台詞を言うところと彼女の演技が、単に台詞を感情を込めて言うのではなく、それ以上のものを相手に訴える力にあふれていて、その結果そのシーンの画面が発する緊張感が高まり、観る者の心を動かすことになった。 映画の演出って映画全体をこのレベルまで上げることであって、単に俳優を動かしたり台詞を言わせたりカメラを動かしたりして映画の体裁を整える程度ではないだろう。 しかも、この映画のテーマからして、気楽に見に来た観客に対しては、その胸ぐらをつかんで「この映画を自分のこととして考えろ!」と怒鳴りつけるような迫力を放つようでなければならないだろう。 映画作りにはもっと心を鬼にして臨まなきゃいけないんじゃないの? 『フラガール』を見習え! |
デスノート the Last name | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/12/09 | 63 |
感想は前作とほぼ同じ。 内容的に深みは無いが、面白い話をこれだけほとんど破綻無くキッチリ作っていたら、文句をつけることもないでしょう。 |
ブラック・ダリア | ★☆ | ドラマ系 | 2006/12/09 | 62 |
ストーリーをなぞって映像化して2時間ぐらいに収めるのが精一杯だったとしか思えないような出来で、観るほうもストーリーを追うのが精一杯で、ほとんど印象に残らない。 |
紙屋悦子の青春 | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/11/12 | 61 |
フラガール | ★★★☆ | ドラマ系 | 2007/05/06 | 60 |
フラダンスの経験のない女たちがコーチの指導の元で訓練し、挫折を味わいながら最終的にステージに上がれるまでになる…、というストーリーは、類似映画が既に多数存在するので、たとえ良く出来ていたとしても新味のないストーリーでは程度が知れていると思っていたが、結果はストーリーのハンデなどものともしない素晴らしさだった。 その秘密は、登場人物の心情を観る者が実感できるようにしっかりと演出することで、実際彼らは演技をしているというよりあの炭鉱町にずっと住んでいたように見える程で、そこまでのレベルだからこそ台詞の重みも違う。芝居をキッチリさせるという演出の基本を確実に行うだけで、いくらでも素晴らしい映画が出来る好例である。(演出がおざなりな邦画が多過ぎるから余計に引き立つのかもしれないが。) |
ダーウィンの悪夢 | ★★★ | ドキュメンタリー | 2006/11/12 | 59 |
西瓜 | ★★☆ | 妄想系 | 2006/11/12 | 58 |
レディ・イン・ザ・ウォーター | ★★ | ドラマ系 | 2006/11/12 | 57 |
神話や伝説というものが日常生活に影響を及ぼしていた昔の時代のように、この映画の登場人物たちにとって「物語」は大きな存在で、それに対してリアルに関わる。 水の精の名前が"Story"であることにも、シャマラン監督の物語への思い入れが現れていて、この映画の世界は彼の憧れなのだろう。でも、そんな物語へのこだわりに反して映画の表現としては冴えが見られず、台詞だけが浮いてしまう結果になり、まるで話し相手が面白がっているのかどうかの反応を見もしないで、自分だけ面白がって1人で一方的にしゃべり続けている人の話を聞かされているような気分だった。 |
デスノート (前編) | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/11/12 | 56 |
前半は独裁者の末路を象徴しているような印象だったが、終わってみればそんな人間の内面を描いている映画ではなく、純粋に頭脳戦を描いたサスペンス映画だった。他人の行動を自由にコントロールできる設定は、「なんでもあり」なのでやり過ぎると呆れられるであろうところ、その直前で上手い具合に前編のエンディングに持ち込んで、一区切りつけて後編はデスノートがもう一冊絡んで全く別な展開になるのでは? で、結論は「面白い映画」というよりは「大きな欠点がなく退屈しない映画」といった感じ。 |
オトシモノ | ★☆ | ドラマ系 | 2006/11/12 | 55 |
ホラーというよりは、NHKの少年ドラマシリーズや「六番目の小夜子」のような感じの映画で、ユルく仕上げられていて、リアリティもシビアに追求されていない。 テレビならそれで良いかもしれないけど、劇場で上映する映画として世間に通用すると信じて作られたとすると、それは果たして…と首を傾げざるをえない。 |
父親たちの星条旗 | ★★★ | ドラマ系、社会派系 | 2006/11/12 | 54 |
一言で言えば「反戦念押し映画」。 戦争にまつわる美談の胡散臭さ、戦場を見た者と見ない者との意識の違い、そして戦争は本当に悲惨で避けるべきだと体験した者なら誰でも思うとものといった、解りきったことを訴えている映画なのだが、解りきったことであるにもかかわらず解らない愚かな人々がアメリカだけでなく世界中にあふれているのが現状なので、そんな愚か者たちにも解り易いように、難解な映画にはせずにストレートに作っていて、戦争に美談などないことを愚か者たちに肝に銘じてもらおうとしている。 |
虹の女神 Rainbow Song | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/11/12 | 53 |
いやぁ、上野樹里さまさま! ストーリーは問題が多くて、一番は上野樹里が市原隼人のことを好きになるのが、いつ?どこに惹かれて?ということがハッキリしないこと。(何しろ、市原くんの役柄は最初から最後までほとんど長所の見られないどんくさいものなので。) 樹里ちゃんの役も男勝りでしっかり者に見えるのに、恋愛になると一転して積極性ほとんどゼロで、相手に感づいてもらおうという回りくどいことをしたりで、キャラに一貫性が無い。 ついでに、恋愛相手が映画の冒頭で死んで以後回想シーンを交えて展開する構成や、死んだ人がメッセージを遺していたことなど、岩井俊二の『Love Letter』に似過ぎなのも安直な印象を受ける。 でも、映画全体を覆う「過去への切ない思い」の雰囲気は抜群で、その具現化に一番貢献していたのが、コミカルな日常、恋や仕事に悩む姿、そして大学時代に作った8ミリ映画のヒロインと、場面ごとに何れも異なるタイプの生っぽさを放って演じていた上野樹里で、彼女は天才かも。 |
紀子の食卓 | ★★★ | 哲学系、象徴系 | 2006/11/12 | 52 |
同じ園監督の『自殺サークル』の続編とはいえ、主要出演者は全部入れ替わっているから別物だろうと思っていたら、現実感が薄らいできた現代において精神的に自立して生きることを説いた前作同様の内容で、思った以上に続編らしかった。 これまで自分の心の中の思いを映像化して自身と激しくぶつかってきたような映画を作ってきた園監督が、その成果として強固な構成力を発揮して、思いの矛先を自身から同時代の人々へと変えた結果、社会を的確に映す映画が出来上がった。それに、俳優たちの演技が素晴らしい。園監督おみそれしました。 |
ナチョ・リブレ 覆面の神様 | ★★☆ | お笑い系 | 2006/11/12 | 51 |
頭をカラッポにして楽しめるタイプの映画。なので、そんなに気合を入れて観るほどの映画でもないのだが、どころどころ大いに笑わせてくれる。 |
Sad Movie | ★☆ | ドラマ系 | 2006/11/12 | 50 |
かったるい映画! 前半1時間ぐらい経っても並行する4つの話のどれも遅々として進まないもったいぶった展開で、代わって小細工や小ネタばかり見せられていてイライラ。(例えば、初心者相手の手話がサッパリ通じないことで笑いをとろうとしているシーンが2回もあるんだけど…、さっさと筆談に切り替えろよ!) 後半も似たような調子で、(例えば、カメラに向かって話しかける暇があったら逃げようと努力した方がいいと思うが。)要するに全体的に物語の密度が低いのが致命的で、それの対策としてストーリーを4つ盛り込んだのかも知れないが、1つ1つに集中せずにすぐ他に移ってしまうため、ますます散漫な映画に感じられるという逆効果の結果になったとも言える。 |
地下鉄に乗って | ★☆ | ドラマ系 | 2006/11/12 | 49 |
父親と縁を切った息子がタイプスリップをして昔の父と向き合い、またその息子は浮気もしているという親子と不倫カップルの人と人との繋がりの物語なのに、人物の描きこみが全く不十分。 主人公の堤真一は家族をないがしろにした父を嫌って縁を切ったというのに、自分の家庭を持つ一方でどこまで本気なのか判らない浮気をしていて、その相手の岡本綾も同様に本気なのか遊びなのかこの先関係をどうしようと思っているのかさっぱり判らない。 さらにこの物語にとって一番重要なはずの父親(大沢たかお)の人物像の描き方も、冒頭で妻や息子をいきなり張り倒すところまどは良かったが、それ以降は事業におけるあくどい面も描かれなければ、純真な気持ちを戦争が捻じ曲げたところも表面的で、演出に全く腰が入っていない。 結局人物像に説得力がないので、彼らが相手のどこに心を動かされたかを描いた物語にも説得力がない。 |
ルート225 | ★★ | ドラマ系、象徴系 | 2006/11/12 | 48 |
太陽 | ★★ | ドラマ系、妄想系 | 2006/11/12 | 47 |
ポツダム宣言受諾を決めた御前会議から人間宣言あたりまでの昭和天皇を描いた映画だが、ことわりがあるように史実に沿っているとはいえあくまでフィクション。ノンフィクションということならこの映画について語ることが天皇の戦争責任など実際の天皇そのもの評価を避けて通れないが、フィクションということで、権力がありながら何もせずに世間から離れたところに閉じこもって思考とも瞑想ともつかないことをしていた、とある「一皇帝」の人間ドラマとして観ることが出来た。とはいえ、イメージ中心の映画なので、掴み所のない感じには戸惑うけど。 |
夜のピクニック | ★★ | ドラマ系 | 2006/09/24 | 46 |
これ見よがしのウケ狙いが激しい最近の映画とは違って、長澤監督は映画に込める想いの描き方が誠実で、この映画もこれまでの長澤作品以上に素直で無駄のない出来上がりで好感が持てるのだが、素直過ぎて演出に力技が感じられず、もうちょっと強くアピールした方が良かったのでは?と思うような物足りなさを感じたし、芝居の出来も役者の実力次第で悪くもなってしまうことに無頓着な気がする。好演ぞろいのキャストを揃えられたことで満足せず、俳優たちを追い込んででも1シーン1シーンを磨き上げることを目指した方が良いのでは? |
迷子 | ★★ | 感覚系 | 2006/09/24 | 45 |
身近な人を失った喪失感と後悔を描いたという点で、ツァイ・ミンリャンの『ふたつの時、ふたりの時間』と同じ内容の映画で(ついでに、伝染病の設定は『Hole』と同じ)、あれに比べて普遍的なドラマの要素が薄いので、お話に対して評価が難しいというか、評価以前というか。まあ、面白く観続けることができたからいいんだけど。 |
楽日 | ★★☆ | 感覚系 | 2006/09/24 | 44 |
昔の映画を上映している古くて大きい映画館の客席のまばらな観客の寂しさや、なんといっても劇場裏に立体的に張り巡らされた従業員通路の迷宮的な雰囲気が圧倒的。 |
ゆれる | ★★★ | ドラマ系 | 2006/09/24 | 43 |
田舎に残ってくすぶって生きる者と、そんな生活が嫌で都会に出て行こうとする者の間の葛藤に、身内ならではの愛憎が加わる。演出に無駄も曖昧さもなく、役者の演技をきっちりと受け止めてフィルムに焼き付けていて、本当に素晴らしい。 |
バックダンサーズ! | ★☆ | ドラマ系 | 2006/09/24 | 42 |
手垢のついたストーリーをわざわざ映画にするのなら込められてしかるべき作り手の想いというものが感じられず、結果的に見てくれだけの映画でしかなかった。 |
花よりもなほ | ★★ | ドラマ系 | 2006/09/12 | 41 |
雪に願うこと | ★★ | ドラマ系 | 2006/12/09 | 40 |
映画の作りとしてはさすがの根岸監督の演出で、芝居などがとてもしっかりしている。 だが、ストーリーはというと、結論から言えばこの映画は伊勢谷友介演じる役の目線で描かれているのだが、主役は彼ではなく佐藤浩市か吹石一恵演じる役の方にして、伊勢谷のエピソードはサイドエピソードにすべきではなかったのだろうか。 冒頭、東京に出て事業を始めたが失敗して清算せずに出身地の北海道に逃げ帰った伊勢谷が、ばんえい競馬の馬を管理する厩舎を持つ兄の佐藤のところに転がり込んで、厩舎の仕事を手伝って兄とその周辺の人々と触れ合ううちに、自分自身の生き方を見つけ出し、最後には再び東京で生きていこうと決意して去って行くという話しになっている。 伊勢谷は都会から来た都会人で、彼が地方で生きる人々の生き様を見てそれに感化されて成長していくという物語は、一見地方に敬意を抱いているように思えるが、私には都会人が地方というものを「利用」しているようにしか思えない。 実例を挙げれば、方言を耳にした都会人が「お国訛りって素朴でいいねぇ。」なんてことを言ったりするけど、地方の人は単に日常的な言葉をしゃべっているだけで、なにも都会人にいい気分になって欲しくて訛っているわけではないのである。 地方に理解のあるような都会人の言動は、実のところ地方の人の思いとのズレが大きくなるだけで、都会人の安易な理解の言葉は表面的なだけの無理解な言葉に聞こえ、地方を理解しようとしているよりも地方を理解している自分の心の広さに酔っているんじゃないの?と思ってしまう。つまりは、地方を都会人の自己満足のための道具にしているということである。 映画に話を戻すと、佐藤浩市は厩舎の経営が厳しい中で踏ん張って生きているし、吹石一恵も騎手としての成績が伸びず進路に悩む日々をおくっているのだが、主役はあくまで伊勢谷なので、佐藤や吹石の地に足のついた生き様より、伊勢谷の軽薄さの方が前面に出てしまい、上で述べた「都会人の地方に対する下心」を感じながら映画を観ることになってしまった。 そんなわけで、地方の人の方を主役としていたなら、そんな思いはしないで済んだのではないか?と思ったのである。 |
グエムル 漢江の怪物 | ★★ | ドラマ系 | 2006/09/24 | 39 |
観る者の予想する展開をことごとく外して、「何これ?」と思わせることが第一の目的の、言うなれば「はぐらかし映画」。その狙い自体は構わないけど、「それにふさわしい題材は怪物映画以外に他にあるのでは?」「『トレマーズ』のようなストレートな怪物対決映画にした方が面白かったのでは?」と思ってしまう。 |
ハチミツとクローバー | ★★☆ | 感覚系、ドラマ系 | 2006/08/17 | 38 |
ちょっと間違えばベタで臭くて安っぽくなりそうな映画だが、ストーリーやキャラ設定に対して決してそうならないように注意が行き届いていて、抑制された中でなおかつ十分にエモーショナルな出来になっている演出の絶妙さに感心。 |
ゲド戦記 | ★★ | 象徴系 | 2006/08/13 | 37 |
(例えば『ニュー・ワールド』のように)不安とか空虚とかの心の中に去来する「気分」を描くのが目的で、そのためドラマや活劇やイマジネーションといったアニメ(特にジブリの)に付き物の要素を邪魔なものとして廃し、万人受けしない映画になると承知でこの意思を貫いたのでは? |
サイレントヒル | ★★ | ドラマ系 | 2006/08/13 | 36 |
恐怖は敵対心を増大させ、復讐は連鎖して更なる復讐を招くという映画。宗教的な良心が魔女狩りに代表される差別に結びつきやすいという内容は、信者には衝撃的かもしれないが、そうでない私にはまだ遠慮がちでまとまり過ぎの気がする。 |
ダ・ヴィンチ・コード | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/07/12 | 35 |
こみ入ったディテールが解りやすく描かれていて、150分もの長尺を最後まで退屈させない映画になっているという点では評価。 |
クラッシュ | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/07/11 | 34 |
銃を簡単に入手できるアメリカにおいて、他人(特にこの映画の場合は異民族)に対して日常的に憎悪を抱けば時にそれがエスカレートする。 そして、憎悪を晴らすために手元の銃を相手に向ける衝動に襲われる。 ついには発砲してしまった場合、相手を傷つけるだけでなく、自分の心にも深い傷跡を残す。 しかも、普段はいたって善良の市民でも、偶然のきっかけで銃を人に向ける状況になったり憎悪に狂ったりすることもあり、逆に根っからの悪人と思われていた人が突然善意に目覚めることもある。 これらのことを複数の登場人物たちによって描いて見せた『クラッシュ』という映画は、一言で言えば常識的に発砲するのが当然な状況であっても、実は発砲してはいけないのではないか?人々が安易に発砲する状況がもう少し後退すれば、殺伐とした世の中が少しは和らぐのではないか?ということを訴えているのだろう。 でも、この中の多くのエピソードが偶然によって運命が左右されるもので、一方、命の危険にさらされた者が手元に銃を持っているといった状況も描かれているが、実際のそのような状況になったと想像してみて、偶然に身を委ねられるかといえば、やっぱりやられる前に撃つ方を選択せざるをえないのではないかと思えてしまい、結局メッセージと逆の思いにとらわれてしまうのは作品として失敗しているのではないだろうか? |
ヒストリー・オブ・バイオレンス | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/07/09 | 33 |
プルートで朝食を | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/07/02 | 32 |
グッドナイト&グッドラック | ★★☆ | ドラマ系、実録系 | 2006/07/02 | 31 |
ローズ・イン・タイドランド | ★★★ | 妄想系 | 2006/06/27 | 30 |
テリー・ギリアムおなじみの妄想映画。それも最初から最後まで全編妄想という凄まじさ。 人間にとって妄想することの意味を、功も罪も切り分けずに全部まとめて美しく可愛く虚しく描いている。 |
インサイド・マン | ★★ | ドラマ系、象徴系 | 2006/06/24 | 29 |
人種のるつぼのニューヨークを舞台に、誰が敵か味方か判らない状態で疑心暗鬼になり、その状況を利用して陰でひそかに金儲けをする者がいるという現実社会の状況をストーリーに取り入れているが、サスペンスとして盛り上げるセオリーに則っていないので、緊張感が長続きせず薄い。 |
デイジー (インターナショナル・バージョン) | ★☆ | ドラマ系 | 2006/06/15 | 28 |
後半、悲しみの廃人と化したチョン・ジヒョンはじめ、登場人物たちの意志と行動が結びつかず、映画の焦点がボケて展開も遅くてダルくて、なおかつご都合主義で全然ダメになった。 |
間宮兄弟 | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/06/24 | 27 |
森田監督はやっぱり実力があるから、なんてことないストーリーでも映画を持たせることができ、結果的に規格外の人々による物語を暖かく観ることが出来た。 |
ナイロビの蜂 | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/06/24 | 26 |
こみ入ったストーリーをかろうじてだが解るように作られているし、社会問題も盛り込んでいいんだけど、レイチェル・ワイズのせつない表情で、もっと夫婦のドラマとしてエモーショナルに盛り上げてほしかった。 |
河童 | ★★ | ドラマ系 | 2006/06/24 | 25 |
低予算ながら、衣装や特殊メークやセットを出来る限り違和感無く作って河童の世界を作り上げている。 映像も、室内や森の中などの薄暗いシーンが大半で、明るい場所では汚い画になりやすいビデオ撮影の悪影響が感じられないものになっていた。 でも、主人公にとっては最初は魅力的に見えた河童の世界も、その世界なりに人間社会と同じように数々の問題を内包した複雑な社会だったという原作が微妙で映画化向きじゃないのか、動きの少ない映像を台詞主導で進める映画になっているので、重苦しさを感じた。 |
富嶽百景 遥かなる場所 | ★☆ | ドラマ系 | 2006/06/24 | 24 |
画面の力が弱すぎるなぁ。 太宰治が主役のエッセイ風のストーリーは、それぞれ独立するエピソードが羅列されていて、だでさえドラマチックとは正反対のタイプの物語なのに、観ていてすぐに気持ちが離れてしまった。 せめて、照明で画面を作りこむとか、もっとカットを細かく割るとかして、映像にメリハリを出して映画に引きつけて欲しかった。 エンドクレジットを見ても判るように、ロケのスタッフが10人ぐらいしかいないような低予算の映画なので、そうしたくても出来なかったのかもしれないけど。 |
嫌われ松子の一生 | ★★★☆ | ドラマ系、ミュージカル | 2006/05/27 | 23 |
成功と失敗、勝ち負け、幸不幸、偶然と必然、意味と無意味、「人生」はそんな二元論で価値を評価することを超越したもので、生きることそのものであることの素晴らしさを、前向きに高らかにうたい上げている。 |
緑茶 | ★★★ | ドラマ系、観念系 | 2006/05/27 | 22 |
瓜二つの女は同一人物か?彼女たちの話は実話か作り話か? 物語の虚構性に翻弄される感覚を楽しめる。 |
プロデューサーズ | ★★ | ミュージカル | 2006/05/04 | 21 |
うーん、こういう軽いミュージカルは個人的に合わないのかなぁ? ダメだった理由の考察が必要。 |
ニュー・ワールド | ★★★ | 感覚系 | 2006/05/04 | 20 |
心の安息を求めてさまよう人々の姿が、彼らの心情に寄り添って浮かび上がらせるように描かれていて、そんなテレンス・マリック監督ならではの表現が味わえる。 |
HAZE | ★★★ | 感覚系 | 2006/05/04 | 19 |
我愛イ尓 <ウォ・アイ・ニー> | ★★☆ | 感覚系 | 2006/06/04 | 18 |
結婚した2人が延々と夫婦喧嘩を繰り返す映画で、最初は仲の良かった2人が、ふと小言を言ったことがきっかけとなって口論が始まる。 ベタベタとなつかれれるのが嫌だと言えばすねて相手を避けてみたり、すると今度は冷たくなったときつく言えばあなたは優しくなくなったと反発したり。 夫婦仲がうまくいかないのはお互いに非は相手にあって自分に無いと思ってしまうため、愛情がありつつもそれが愛憎に転じてしまう。 相手が自分の思うとおりにしようとしてもならないという、ある意味究極のサスペンス。 誰でも経験したことのある生々しいものだけに、それゆえ内容的に見ることがつらい映画になっているが、うんざりするような映画になっていることも、監督が夫婦間の会話を生々しいものに描くことに成功していることを示している。 |
寝ずの番 | ★★ | ドラマ系 | 2006/06/11 | 17 |
楽しい映画なのだが、エピソードの羅列のような展開なら尻上がりに面白くしなければいけないのに、最初が一番面白いので、見ていて単調に感じて飽きる。 |
マクダル・パイナップルパン王子 | ★★ | 象徴系 | 2006/05/04 | 16 |
うつせみ | ★★★☆ | 観念系 | 2006/05/04 | 15 |
THE有頂天ホテル | ★☆ | ドラマ系 | 2006/05/04 | 14 |
ホテル・ルワンダ | ★★★☆ | ドラマ系 | 2006/03/26 | 13 |
スーパーマンでない普通の人が家族や仲間たちの命を救うために全力を尽くすさまを、コスタ=ガブラス監督作品をほうふつとさせる息もつかせない政治サスペンスとして描いている。 |
ミュンヘン | ★★★☆ | ドラマ系 | 2006/03/26 | 12 |
争いか平和か?祖国は家庭の延長か? 連鎖する暴力の意味を問う上で、個人から国家まであらゆる立場を考慮し網羅されて描かれている良作。 |
ブロークバック・マウンテン | ★★★ | 感覚系 | 2006/03/26 | 11 |
思った以上に、繊細すぎるくらい繊細な演出の映画だった。 |
カミュなんて知らない | ★★ | ドラマ系 | 2006/03/26 | 10 |
こりゃまた、解ったような解らないような…、いいような悪いような…。リアリティの欠如や人を引き込む映画製作の魔力など、色々な要素が入っているが、それらがまとまってないような…。 |
博士の愛した数式 | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/03/26 | 9 |
ジャーヘッド | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/03/26 | 8 |
実際はこんな感じだったんだろうなぁ、となんとなく実感できる映画になっていた。 戦地に行ったこと無い連中の勇ましい言動って、本当にバカ丸出し。 |
単騎、千里を走る。 | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/03/26 | 7 |
『至福のとき』タイプのいわゆるいい話で、まずまず 健さんの役は、中国人には挙動不審に見えたりしないの? |
エミリー・ローズ | ★★ | ドラマ系、感覚系 | 2006/03/26 | 6 |
悪魔の存在を法廷で問う物語を、真面目に法廷劇にしすぎて面白くなくなった。 |
エリ・エリ・レマ・サバクタニ | ★★☆ | 感覚系、象徴系 | 2006/03/26掲載 2006/09/16更新 |
5 |
2015年の日本、ウィルスに感染すると自殺する病気が流行って数百万人が犠牲になり、それにかかった宮崎あおいの祖父の筒井康隆が、病気を治す力があると言われている音楽を演奏する、浅野忠信と中原昌也を訪ねる。 人生の意味と自己と他者の関係を、意味の曖昧な風景とノイズミュージックのイメージで描く。 イメージ中心なところが『UEREKA』と同様で、あれを解りやすくライトにしたような映画だが、その違いの分だけもの足りなさを感じたので、この映画ももっとイメージで押しても良かったかも。 あおいちゃん、かわい過ぎ。 |
オリバー・ツイスト | ★★ | ドラマ系 | 2006/03/26 | 4 |
驚くほど前作の『戦場のピアニスト』そっくりな、主人公が運命に流されていくストーリー。 それがドラマチックな盛り上がりとは無縁なものを目指していて、「この映画はあんなもん」ということは理解できるのだが、でもぶっちゃけて言えば映画の半分に当たる1時間経過したあたりで「長いなぁ」と思い始め、後半もこのまま面白くない展開が続く予感がした。 で、結局これ以上コメントが続かない。 |
PROMISE | ★ | お笑い系、空回り系 | 2006/03/26 | 3 |
いやぁ、チェン・カイコー監督、何も『少林サッカー』のようなバカ映画のジャンルまで手を出さなくても。 慣れないことしても、ちっとも笑えないじゃん。 え?これコメディじゃない? ああ、じゃあただの勘違い映画か。 |
あおげば尊し | ★★★ | ドラマ系 | 2006/03/26 | 2 |
市川監督はかつて『病院で死ぬということ』という作品を撮ったが、この映画は教師という職業の設定で、「死ぬということ」プラス「この世に教えを遺すこと」の映画。 なししろテリー伊藤演じる教師の相手はインターネット時代の小学生で、精神が未熟なまま好奇心を満たす手段には通じていて、情報を遮断しようにもしきれない難しいし、もちろん心の芽まで摘んではいけない難しい存在。 そんな現状に、市川監督ならではの誠実さがにじみ出る描きで向き合っている。 そして、風景や日常をやわらかいタッチの映像とテンポで見せる例の魅力的な作風も、久しぶりに堪能することができた。 |
輪廻 | ★★★ | 感覚系、ドラマ系 | 2006/03/26 | 1 |
2006年公開作品(映画館以外で鑑賞) (1作品) 2006/11/17
タイトル | 採点 | 分類 | 更新日 | 累計 |
ギミー・ヘブン | ★ | ドラマ系、妄想系 | 2006/11/17 | 1 |
ストーリー | 感想 |
(オチの前までは「シネマトピックスオンライン」参照) 江口と松田が会っているところに松田の妹の宮崎が現れ、昔松田が妹思いの気持ちから母を殺して父が身代わりで服役し、兄の一方的な思いを宮崎は憎んでいて、宮崎が次々と殺人を犯し、松田がその尻拭で捜査を混乱させようとしていたのだった。 松田は自殺し、お互いに共感覚の持ち主だと確かめ合った江口と宮崎は、そこで共に死ぬのだった。 |
「共感覚」とは、普通の人とは違う感覚であらゆるものを感じることだそうで、その持ち主が他人と感覚を共有できずに疎外感に陥り、共有できる同胞を求めるたがるということなんだそうな。 例えれば、絶対音感の持ち主がすべての音に音階を感じることが煩わしいが、絶対音感を持ち合わせていない人が大多数なので解ってもらえないといったようなことだろうか? そんなわけで、観る者にとっては感覚的に解りにくい映画であるにもかかわらず、登場人物の気持ちを解ってもらおうとするためになされてしかるべき脚本や演出に対する作り手の努力が皆無で、とにかくこの映画、観る者の気持ちなど無視して、ご都合主義だらけのストーリーを勝手に進めていって勝手な世界観を描いていくのは、一言で言えば「第二の飯田譲治」といった感じ。(そういえば、飯田監督の『アナザヘヴン』なんてつまんない映画があったな。ヘブンシリーズか?) だいたい、同じものに対しても感じ方が人によって違うなんて当たり前で、そんな状況で我々は人と付き合っているというのに、感覚が違う人とは心が通じ合えず感覚が同じでなければ付き合えないなんて…、「女子か?!」((C)タカアンドトシのトシ) あと、この映画はミステリーの要素もあるのだが、「●●は怪しいが、捜査の結果無実と判った」という台詞がありながら、実はその●●が犯人だっていうのは、謎解きモノには許されない反則だろ。 |
映画祭/上映会/未公開作品 2017/06/13
タイトル | 採点 | 製作年 国、スタッフ、等 | 分類 | 更新日 | 累計 |
あのコがいねぇ | 採点せず | 2002 日 監督:高柳元気 30分 8mm⇒ビデオ 自主映画 (映画祭 TAMA CINEMA FORUM) | ドラマ系 | 2006/12/11 | 4 |
ストーリー | 感想 |
大学生が一目ぼれした女は、かつ上げをし自分の女にも暴力を振るうような町一番の暴れん坊の彼女だった。 このことを高校からの友人2人に話すと諦めろと止められるが、アタックして友人たちが助太刀に入るも全員殴られてしまう。 |
まあ、自主映画なので、作っている人たちが楽しんでいるようで、それでいいでしょう。 |
福笑いぃ太陽 | 採点せず | 2005 日 監督:母袋暁野 38分 8mm 自主映画 (映画祭 TAMA CINEMA FORUM) | 空想系 | 2006/12/11 | 3 |
ストーリー | 感想 |
ダムに沈んだ小屋の中には女の子がいた。 彼女に関する物語が真実のように思えてきて、現実と虚構の境がなくなっていく。 |
『レディ・イン・ザ・ウォーター』のような、「『物語』とは人間にとって何なのか?」といったことがテーマの映画。 物語に対してこだわることって、一言で言えば「虚構が(現実よりも)大事」って言っているようなものだから、これを理解してもらおうとするのは並大抵のことではなく、『レディ〜』は失敗していたと思うし、成功例といえば「物語」というものを描く技、或いは「物語」にこだわることに意味があるように錯覚させる技が断然上手い大林宣彦監督作品(『おかしなふたり』『金田一耕助の冒険』他)ぐらいか? そんなわけで、この映画にはついていくのが難しかったんだけど、こだわり自体は間違っていないし、こだわることも自由。 |
うずまきの彼方へ | ★★ | 2006 日 監督:山崎幹夫 16分 8mm 自主映画 (映画祭 TAMA CINEMA FORUM) | ドキュメンタリー、お笑い系 | 2006/12/11 | 2 |
ストーリー | 感想 |
青梅線の羽村駅のそばに、すり鉢状に彫られた「まいまいず井戸」がある。 井戸に向かって下りるらせん状の通路を井戸の外に向かって逆向きに延ばしていき、映画の舞台は関東から北海道、そして宇宙へと広がっていく。 |
グダグダのナレーションによる解説(同時録音の手間を省けるから?)と意味のないカットを入れたりする構成が、思いつきで作り始めたような映画の内容にぴったりでいい。 |
ねこのひげ | ★★★ | 2005 日 (第28回ぴあフィルムフェスティバル) 公式サイト | ドラマ系 | 2006/12/11 | 1 |
感想 |
最低限の段取りだけ決めてすぐに本番に入って役者たちに自由に演じてもらうような演出だったようだが、芝居のレベルがとにかく高い。 ビデオ撮りということもあって何度も撮り直しがきくということを活かし、妥協しない姿勢で撮影に臨んだのだろうか? なにげない日常の出来事を描く映画に、確かな芝居が活きている。 |
ビデオ、劇場上映 (作品) //
タイトル | 採点 | 分類 | 更新日 | 累計 |
2005年公開作品(2006年に鑑賞) 2006/03/26
2作品 (日=2)
タイトル | 採点 | 分類 | 更新日 | 累計 |
男たちの大和 YAMATO | ★★☆ | ドラマ系、感覚系 | 2006/03/26 | 2 |
ALWAYS 三丁目の夕日 | ★☆ | ドラマ系 | 2006/03/26 | 1 |
演出のテンポ悪すぎ。 ただでさえ庶民の人情話は軽快さが求められるというのに、そこに無頓着でもった〜りした映画になってしまったことに、作り手の誰もマズイと思わなかったの? そんな全体のノリの悪さを、堤真一や堀北真希などの俳優が演技の呼吸で局所的にのみカバーしていた。 そんな派手目の役から地味なキャラを演じた小雪まで、総じて良かった俳優陣の中、唯一グスグズした演技で雰囲気を壊していた吉岡秀隆も、彼の実力不足というより、監督が登場人物の演技に無頓着で修正しようとしなかったことの犠牲になったというべきだろう。 |
2005年公開作品(2006年に映画館以外で鑑賞) 2007/09/16
タイトル | 採点 | 分類 | 更新日 | 累計 |
富江 REVENGE | ★ | ドラマ系 | 2007/09/16 | 1 |
照明暗めでおどろおどろしい雰囲気を出して、気の狂った登場人物を設定したり妙な体液や血をドバドバ流したり、そういうのを見せればホラーの出来上がりだと思って作られたような映画。 ちなみに、この文章は感染の使いまわし。 |
2006年に観た旧作 (16作品) 2007/09/16
タイトル | 製作年 国 | 採点 | 分類 | 更新日 | 累計 |
我が恋は燃えぬ | 1947 日(松竹) | ★★ | ドラマ系 | 2007/01/03 | 16 |
西鶴一代女 | 1951 日(大映) | ★★★☆ | ドラマ系 | 2007/01/03 | 15 |
お遊さま | 1951 日(大映) | ★★★ | ドラマ系 | 2007/09/16 | 14 |
ストーリー | 感想 |
これまで何度も見合いをしてその都度相手を断っていた京都の道具屋の若旦那が、ついに一目ぼれする相手にめぐり合ったが、それは見合い相手のしず(乙羽信子)の付き添いで来た義理の姉の遊(田中絹代)だった。 しかし、遊が未亡人だからといって、見合い相手の義姉との結婚が許されるはずも無かった。 ある日、道端で苦しんでいる遊を見かけた若旦那は、その近所のなじみの家に運び込んで、医者を呼んで枕元で見守り続けた。 目が覚めた遊は彼にしず(乙羽信子)と結婚してほしいと言い、彼は遊が望むことをしたいと思って承諾し、一方態度がはっきりしなかったしずも承諾した。 しかし、初夜でしずは旦那に、自分が結婚したのは義姉が旦那と知り合ってから明るくなったので、2人を結びつけるために自分が犠牲になったのであり、2人の結婚は形だけのものにしたいと言った。 その後、3人で泊りがけで遊びに行き、旦那と遊が夫婦だと間違えられるほどいちゃついき、その傍らでしずの心は沈んでいった。 その頃、遊が倒れたとき旦那と2人きりだったことで噂が立ち、さらに遊が帰ってくると一人息子の病状が悪化して間もなく亡くなったことで、遊は実家に帰されることになった。 間もなく遊に新たな縁談が舞い込んで、再び3人で旅行に行ったとき、2人が夫婦には見えないと遊がしずに言ったことでしずが結婚の目的を告白し、怒った遊は二度と2人と会わないと言って宿を飛び出し、縁談を承諾した。 時がたって、旦那の道具屋は潰れて、しずと2人で東京に出て貧しい暮らしをして、子供を産んだしずはまもなく死んでしまう。 旦那は、再婚したお遊の住む屋敷に行き、門前に子供を置いてお遊に託して去って行った。 |
虞美人草 | 1935 日 | ★★★ | ドラマ系 | 2007/08/30 | 13 |
ストーリー | 感想 |
京都の学校の前で行き倒れた少年が教師に拾われて彼の家で育てられ、上京して学者になり、教師とその娘が、兄のように慕っていた学者と結婚しようと東京に引っ越して5年ぶりに再会した。 しかし、学者は彼が家庭教師をしていたお嬢様(三宅邦子)に気に入られていて、また彼女の母が、家を継がないといって遊びまわっている腹違いの兄に財産を渡さないために、学者を早く養子にしようとしていたこともあり、結婚をほのめかされて彼の気持ちもお嬢様に傾いていた。 お嬢様には亡き父が約束したいいなずけがいて、彼はその約束を実現しようと思っていたが、外交官試験に受からないことを口実に約束は保留にされていた。 娘は、学者が自分から気持ちが離れていることを感じつつ、彼に買い物の付き添いを頼むと、そこで学者がお嬢さんとばったり出くわし、以後お嬢様に冷たくされる。 板ばさみに悩んだ結果、学者は共に上京してきた友人に頼んで先生親子のところに行かせ、学問に専念するため結婚しないと言うと、娘は傷つき父は本人が来て直接言わなかったことを怒った。 外交官試験に受かったいいなずけがプロポーズをしにお嬢様の家に行くと、彼女の兄が妹と学者がいちゃついているところをいいなずけに見せて、「わがままな妹は君のようないい奴にふさわしくないから身を引け」と言った。 酒場で友人からの報告を聞いた学者が良心の呵責にさいなまれていると、そこに居合わせたいいなずけが学者に「今が真面目になる時だ」と説得して、京都に帰ろうとする父娘を追って学者をその汽車に乗せた。 いいなずけはお嬢様のところに行って学者が京都に帰ったことを言い、それを聞いて自分にプロポーズしてきたのも断り、いいなずけは一人外国へと赴任するのだった。 |
夏目漱石原作の映画化で、人間の心の弱さが招く不幸や自己嫌悪とそれとの葛藤を描いた物語が、さすが漱石といった感じで面白い。 |
女優須磨子の戀 | 1947 日(松竹) | ★★☆ | ドラマ系 | 2007/08/30 | 12 |
ストーリー | 感想 |
教師の傍ら演劇の評論家でもあった島村(山村聡)は、それまでの演劇とは流れが違う新劇の旗揚げとして「人形の家」の公演をしようとし、彼の師匠である座長の了承も得るが、主役のノラを演じるような女優がいなくて悩んでいたところ、劇団員の松井須磨子(田中絹代)が再婚相手に愛想をつかして別れを切り出して夫婦喧嘩をしているところに出くわし、その激しさを見て彼女を抜擢した。 島村の厳しい演技指導に、女優としてのモチベーションに燃える須磨子も応えて、公園は成功し須磨子の演技も評判になったが、2人は演出家と女優の関係を超えて愛し合うようになっていた。 そのことが世間の噂になったので、座長は須磨子に、養子である島村は妻と姑にそれぞれ身を引くように迫られるが、島村は須磨子を取って家を出て劇団からも離れ、一人田舎に帰ろうとした須磨子を引き止めて、二人で芸術座を結成することになった。 しかし、須磨子中心の劇団に不満を覚えて抜けていく役者がいたり、須磨子の希望で稽古場を持つも支払いのために結局外地まで巡業を余儀なくされた。 苦労の甲斐があって明治座での公演が決まったが、初日直前に島村が風邪をこじらせて亡くなり、悲しみを背負って須磨子は明治座の舞台に立つが、それ以来須磨子は心の支えが無くなった不安を舞台にぶつけるようになるなど演技に迷うようになり、ついには「カルメン」の公演期間中に稽古場で自殺した。 |
島村抱月と松井須磨子の実話に沿った映画。 劇中劇のシーンが多く、また長回しも多用している。 多くの人々の反感を内心恐れていた須磨子の心を表すシーンとして、島村の弔問に彼の妻子が現れて、妻が須磨子に「あなたは悪くない。悪いのは島村。」と口では言った直後に須磨子をにらみつけるシーンが絶品。 |
闇打つ心臓(8mm) | 1982 日 | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/11/30 | 11 |
ストーリー | 感想 |
犬猫(8mm) | 2000 日 | ★★★ | ドラマ系 | 2006/11/30 | 10 |
ストーリー | 感想 |
おしどり駕籠 | 1958 日(東映) | ★★☆ | ドラマ系、感覚系 | 2006/11/30 | 9 |
ストーリー | 感想 |
海賊八幡船 | 1960 日(東映) | ★★☆ | ドラマ系、感覚系 | 2006/11/30 | 8 |
ストーリー | 感想 |
白日夢 | 1981 日 | ★☆ | 妄想系 | 2006/11/30 | 7 |
ストーリー | 感想 |
日本の夜 女・女・女物語 | 1963 日 | ★☆ | ドキュメンタリー | 2007/01/03 | 6 |
日本の女についてのドキュメントだが、女ということで取り上げる題材に強い拘束力があるわけではなく、ちょっとでも女がかかわっている内容ならなんでもかんでも、水商売や風俗からビジネス街、地方などなど、こまごまと何でもかんでも取り上げる構成の映画。 女性といってもひとくくりにこういうもんだと決め付けられるのではなく、多種多様な生き様があるんだなぁ、という気分見れて、自然に世の中の多様性を実感できる。 ドキュメンタリーのつくりとしては、現場にいきなりカメラを持ち込んで撮るといった、我々が普通「ドキュメンタリー」という言葉で想像する撮り方ではなく、事前に打ち合わせして照明もセットした上で当事者や仕込みの俳優に再現させたいわゆる「やらせ」が大半だと思われる(隠しカメラのシーンも仕込みだろう)が、上に述べたようにリアリティの追求よりも多様な社会をイメージさせることが目的なので、やらせといっても問題ないだろう。 とはいっても、面白いか?というと、当時は最先端でも今となっては面白くない題材が多いし、「昔はこうだったんだ。」という類の発見もほとんどないので、はっきり言って面白くない。 |
世界 | 2004 日=仏=中国 | ★★ | ドラマ系、感覚系 | 2006/11/30 | 5 |
ストーリー | 感想 |
黒蜥蜴 | 1962 日(大映) | ★★☆ | ドラマ系、感覚系 | 2006/05/04 | 4 |
ストーリー | 感想 |
宝石商の三島雅夫のもとに、彼の娘の叶順子を誘拐するという怪盗「黒蜥蜴」脅迫状が毎日届いていた。 三島は娘の警護に私立探偵の明智小五郎(大木実)を雇い、娘のお見合いのために大阪のホテルで3人と、それに三島のおとくいさんの京マチ子との4人で泊まっていた。 しかし、京マチ子こそ黒蜥蜴で、彼女と娘が2人でホテルの一室にいて、黒蜥蜴の話す永遠の美の話に娘が興味を抱く。 やがて、黒蜥蜴は手下の川口浩がいる隣の部屋に娘を連れ出して、クロロホルムで眠らせてトランクに詰めてそれを持って川口がホテルを出て、東京行きの特急列車に乗った。 そのころ、黒蜥蜴は娘になりすまして父に彼女が部屋にいるようにみせかけ、黒蜥蜴は見張りの明智とトランプをしているうちに犯行予告の12時になって、娘が誘拐されていることに気づいた。 しかし、明智の手下が川口を尾行していて娘をホテルに連れ帰り、明智は黒蜥蜴の正体を見破るが、黒蜥蜴は明智らを部屋に閉じ込めて、変装してホテルから逃げ去った。 東京に戻った一同は、娘を厳重な監視下の三島の屋敷の中で守っていたが、メイドとして屋敷に潜入していた黒蜥蜴の手下の手はずで、娘をソファに隠して屋敷から連れ出すことに成功した。 三島のところに、娘と引き換えに三島自慢のダイヤをもらうとの脅迫状が届き、三島はそれに従って取引場所の東京タワーで黒蜥蜴にダイヤを手渡すが、そこにいた明智が尾行して、黒蜥蜴が伊豆の秘密美術館に向かう船へと乗り込んだ。 しかし、黒蜥蜴がソファに隠れていた明智を見つけ、彼女も明智もお互いに相手に密かに恋愛感情を抱いていたのだが、敵対しあう定めで黒蜥蜴はソファごと明智を水葬にする。 美術館に着いた黒蜥蜴は、船で連れてきた娘に、美術館に展示されている美男美女の剥製の一員にすることを告げた。 そのとき、黒蜥蜴に恋している川口が、彼女の嫉妬心を得ようと娘を逃がそうとするが、逆に捕まって娘と共に檻に入れられる。 そこで、娘は自分は替え玉であることを川口に言い、ブルジョワが嫌いだった川口も偽者と知って2人に愛が芽生える。 そこに、本物の娘が黒蜥蜴への興味から美術館に現れて捕らえられるが、実は黒蜥蜴の手下に変装していた明智が正体を明かし、警官隊や三島も現れて観念した黒蜥蜴は毒をあおって死ぬ。 三島はダイヤと娘が返ってきて喜ぶが、瓜二つの2人とも自分はニセモノだと言い、明智も「ダイヤもニセモノ。本物はたった今ここで死んだ。」と言った。 |
明智と黒蜥蜴の荒唐無稽な対決の設定にのっかり、出演者たちは歌ったり踊ったりで、日本女優の中でも桁違いのスケール感を誇る京マチ子も、その資質をフルに発揮して、叶順子、男装、東京タワーの売店のおばさんなど4変化を見せたり、さらにはSKD仕込みのダンスまで披露するサービス振り。 映像的にも斜め構図を多用したり、暗転や原色の照明など、遊び心たっぷり。 ストーリーも、オープニングの明智のナレーションにあるように、現実社会では野暮で無粋な犯罪や金持ちに対抗し、黒蜥蜴を中心に芸術的かつ観念的に高められた犯罪や恋愛を描く夢物語の楽しさがある。 ただし、そんな面白さが後半失速気味になるのがおしい。 |
憂国 | 1965 日(ATG) | ★☆ | 感覚系 | 2006/05/04 | 3 |
ストーリー | 感想 |
新婚だからという理由で二・ニ六事件の叛乱軍から除外された武山信二中尉(三島由紀夫)は、明日にでも勅令を受けて叛乱軍と相対することになったとき、忠誠心と友情の板ばさみに合うことになるので、第3の選択として前夜のうちに切腹することにし、妻の麗子(鶴岡淑子)も後を追うことに同意した。 2人は裸同士で抱き合ってお互いの体に別れを継げた後、妻が夫の切腹を見守り、その後妻も自害した。 |
結論から言えば、もし私がリアルタイムでこの映画を観ていたら、「三島由紀夫、血迷ったか?」と思っただろうと思われる映画で、今にして観てみれば、「後に本当に割腹自殺をしてしまった人が生前に撮った切腹映画」以上の意味はないと思う。 上映時間28分のモノクロ画面の中、字幕のみで台詞は無く、音は弦楽器によるBGMが全編にわたって流れ続けるだけの映画で、セットはほとんど白一色のシンプルなものという、いかにも様式的なスタイルの映画で、タイトルが一見物語に無関係が『憂国』であることから、切腹を含めた日本的な様式美を描こうとしたのだろう。 ところが、結果的には様式「美」といえるような目を見張るものはまったく無く、代わりに全裸のベッドシーンがわりと長いところに三島由紀夫のナルシスティックな面を思わせたり、切腹のときに顔面玉の汗だらけになるといった「古臭さ」を感じさせられたりで、(ついでに、切腹で死んだ後、呼吸で胸が上下したりもしていた)、そんなトホホな面が、様式美を狙った大仰さによってより強調された形になっている。 |
有りがたうさん | 1936 日(松竹) | ★★★ | ドラマ系 | 2006/05/04 作成 2017/06/13 更新 |
2 |
ストーリー | 感想 |
伊豆で乗り合いバスの運転手をしている「有りがたうさん」(上原謙)は、運転も穏やかでバスに道を譲ってくれる往来の人々全員に「ありがとう」と声をかける人柄の暖かさで評判だった。 バスの乗客は、不景気で東京に売られに行く娘と駅まで付き添うその母、他の土地へ流れていこうとする気のいい水商売風の女、有りがたうさんが歩いている踊り子の言伝を聞くためにバスを止めたりすると急げと文句を言う見栄っ張りなヒゲ男などだった。 また、途中の道では、娘を売って寂しさで気が変になってさまよう男や、東京から戻ってきた一家や、道路工事の仕事が終わって信州のトンネル工事へ向かおうとしている朝鮮人の一団などが歩いているところに出くわした。 有りがたうさんは、売られる娘が気になって、ミラーで見ているうちにあやうく崖から落ちそうになったりするが、女の進言で中古バスを買うための独立資金で娘のお金を払い、翌日、東京に行かずに済んだ娘とその母が、有りがたうさんの運転する下りのバスで家へと帰って行くのだった。 |
不況に苦しむ社会状況を色濃く反映しながら、映画自体はいたって軽く、ほのぼのとした楽しめるものになっている。 バスの車内のシーンは、実際にバスを走らせて揺れる状態で撮影されている。 |
信子 | 1940 日(松竹) | ★★☆ | ドラマ系 | 2006/05/04 | 1 |
ストーリー | 感想 |
広島?(九州?)から女学校の先生になるために上京してた信子(高峰三枝子)は、親のいとこの芸者置屋の女将の飯田蝶子のところに世話になった。 赴任して、校長から訛りのことを注意され、学校の出資者の娘の細川頼子(三浦光子)を筆頭に生徒たちからも訛りを馬鹿にされて、職員室で涙に暮れた。 置屋から来ていることが校長に知れて、舎監として寄宿舎に住むことになると、早速頼子がお化けに扮していたずらをして、信子は他のこれまでの舎監が無視していたのと違って徹底的にいたずらに対抗し、階段に落ちていたスリッパから頼子の仕業らしいことはわかったが、彼女は白状しなかった。 現場を押さえようと信子が夜に張り込んで、毛布をかぶった怪しい人をいたずらの犯人と思って捕まえると、それは寄宿舎に忍び込んだ泥棒の男で、信子は一躍生徒たちの英雄になる。 そんな状態が面白くない頼子は、ハイキングの時にいじけてバスに乗って勝手に先に行ってしまったため、生徒たちが彼女を探す羽目になって、彼女に対する生徒たちの反発が強くなり、信子も彼女の素行の悪さに厳しく当たったので、食事の席から頼子が姿をくらまし、寄宿舎や校内を生徒たちとともにくまなく探した結果、実験室でガス自殺を図ったところを見つかった。 頼子の病床に付き添った信子は、父の後妻とうまく行かずに家を出て入った寄宿舎でも、先生や学友たちから特別扱いされて、寂しくていたずらも叱って欲しかったと聞かされ、寄宿舎の生徒たちに頼子と仲良くしてほしいとお願いしながら処分の決定をまっていたところ、頼子の話を聞いた父も信子を支持し、やがて学校には信子と生徒たちの明るい姿が見られるようになった。 |
信子の行動は、今だったらハイキングで行方不明になるのは監督不行き届きとか、生徒の発するサインを見逃したりで教育者失格と言われかねないところに時代を感じる。 生徒のいたずらなどを、所詮は子供じみたものと思って軽く流すか、些細な風紀の乱れに毅然と向き合うかは判断の難しい問題だが、そんな話を随所に軽いお笑いエピソードを絡めて、楽しめる映画になっている。 |
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