映画の感想 2007年 2009/05/28 更新




採点基準
  ★★★★ :人類の宝 (最高)
  ★★★☆ :絶対必見
  ★★★ :観るべき映画
  ★★☆ :観ても良い
  ★★ :中間
  ★☆ :観なくてもいい
  ★ :観る価値はほとんどない
  ☆ :作者もろともこの世から消えてなくなれ (最低)
  なし :あえて採点しない(最低ではない)

基本的に、ネタバレがある可能性があります。

文章などの内容には、時々変更や追加が入ることがあります。

2007年公開作品(前年に鑑賞) //
2007年公開作品(2006年に鑑賞) 2007/05/06
2007年公開作品(映画館以外で鑑賞) 2008/12/03
ビデオ、劇場上映 //
映画祭/上映会/2008年公開予定/公開未定作品 2008/02/02
2006年公開作品(2007年に鑑賞) //
2006年公開作品(2007年に映画館以外で鑑賞) 2007/11/26
2007年に映画館等で観た旧作 2007/08/27

2007年公開作品 2009/05/28

  邦画 洋画 香港 中国 イラン スペイン デンマーク メキシコ
拡大公開作品 (東京都心で4館以上かつ全国で200館程度以上で公開) 7 10 8 1             1 17
ミニチェーン作品 (東京都心で3館もしくは全国で100館程度で公開) 13 10 7 2         1     23
ミニシアター作品 (東京都心で2館以下で公開) 16 12 3   4 1 1 1  1 1   28
36 32 18 3 4 1 1 1 2 1 1 合計=68作品


タイトル 採点 分類 更新日 累計
転々 ★★☆ ドラマ系、お笑い系 2007/12/16 66
 意外にもまともな「擬似家族」モノだった。(ひょっとして、三木聡⇒「時効警察」⇒園子温⇒『紀子の食卓』⇒擬似家族、っていうつながり? 吉高由里子も出てるし、『紀子の食卓』のクライマックスはすき焼きのシーンだったし。)
 シリアスな内容と、多数のウケ狙いの小ネタの同居は、果たしていいのか悪いのか?よくわからない。
呉清源 極みの棋譜 ★★ 感覚系 2007/12/16 65
 呉清源の人生において、囲碁と、それと共に大きな存在であった真理(信仰)の2つを描いていて、つまり彼の心を描くことだけをめざしているのか、実録的な出来事中心の描き方を避けている。
 空気を描くようなそんな難しいアプローチは、残念ながら上手く描ききれなかったように見える。
 いくら出来事軽視だからといって簡単な説明で背景を解りやすくすることは可能だし、日本語字幕が活字体と手書きが混在しているのは編集に苦しんだ結果なのでは?
鳳凰 わが愛 ドラマ系、二流系 2007/11/26 64
ブレイブ ワン ★★★ ドラマ系、社会派系 2007/11/26 63
グッド・シェパード ★★ ドラマ系、実録系 2007/11/26 62
エクスクロス〜魔境伝説〜 ★★☆ B級系 2007/11/24 61
パンズ・ラビリンス ★★★ ドラマ系 2007/11/04 60
カタコンベ ★☆ ドラマ系 2007/11/04 59
サウスバウンド ★★☆ ドラマ系 2007/11/04 58
プラネット・テラー in グラインドハウス ★★☆ 感覚系 2007/11/04 57
アフター・ウェディング ★★ ドラマ系 2007/11/04 56
サッド ヴァケーション ★★☆ ドラマ系 2007/10/15 55
クワイエットルームへようこそ ★★☆ ドラマ系 2007/10/15 54
善き人のためのソナタ ★★★ ドラマ系 2007/10/15 53
 ストーリーは、芸術が人の心を動かす点も含めて『華氏451』とそっくりだが、あちらが数十年後の思いもよらない世界を的確に予言していたのに対し、こちらは実際に存在した国で行われていたことであり、誰でも生々しく実感できる映画になっている。
スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ ★☆ ドラマ系、パロディ系 2007/10/15 52
 結論から言うと、ちっとも面白くない。元ネタの『用心棒』のような、面白い映画を正攻法で目指した気配は無い。
 かといって、反則技やセオリー無視をしてでもウケ狙いに走っているわけでもなく、パロディとしても中途半端。
 このタイプの映画で面白さを目指してないとしたら、何を目的に映画をつくったのだろう?
 思いつきで映画を作り始めたものの、思いつき以上のものは何も出来なかったといった感じだ。
インランド・エンパイア ★★★ 感覚系 2007/10/15 51
 映画撮影中のシーンと現実世界、現在のアメリカと過去のポーランド、映画の画面のこちら側と向こう側を、全く脈絡無く行き来する展開で、オチも含めてストーリーを把握している自信が無い。
 でも観ている間は、訳が解らないからといって映画から気持ちが離れることなく、先の読めない展開と例によって奇妙な映像と台詞に釘付けになったのだから、面白い映画だったとしか言えない。
22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語 ★★☆ ドラマ系、観念系 2007/09/29 50
 大林監督、例によって映画は「作り物」でストーリーは「作り話」であることをわざわざ強調するのだが、『転校生 さよならあなた』が「作り話」が開放的に膨張していく作品だったのに対し、こちらは「作り物」意識で凝り固まった感じで窮屈な印象。
 でも、その「作り物」を作る意欲の強さと技術の高さは、並の監督など到底及ばないほどで、圧倒される。
長江哀歌 ★★☆ ドラマ系、感覚系 2007/09/29 49
 一見発展する方向で変化している中国の町や人々の影で、明るい将来のイメージを持てない人々を淡々と描いてきたジャ監督が、ここでも三峡ダムの底に沈もうとしている町を舞台に、古いものが失われ人々は移動してそれにつれて心も変わり、すべては過去とは違う現在そしてさらに違う未来へと流れていく。
 そんな姿を無常感たっぷりに描いている。
シッコ ★★★ 社会派系、ドキュメンタリー系 2007/09/29 48
 この映画の目的は、アメリカ人に対してアメリカをアメリカ人のための国にするために行動することを働きかけること。
 そのための手段としての映画の作りは、アメリカの問題点を明確にすること、その問題を解決している実例を示して問題解決が不可能でないこと、大衆を動かす必要上判りやすいこと、さらには国家レベルで情報操作をする敵に対抗するために、客観的とされるドキュメンタリーの枠を超えて表現を作り込むこと。
 目的と手段に対するスタンスがはっきりしていることが素晴らしい。
 よって、面白い映画を目指してないので面白くないし、アメリカ人以外は基本的に対象外なのでなおさら。
 でも、利益を追求する企業と政治家の結託は、アメリカの保険だけの話ではない。
呪怨 パンデミック ★★ 感覚系 2007/08/29 47
 清水監督は今回もホラーシーンに数々の新しいアイディアを盛り込んでいることに感心。
 それだけではなく、過去のJホラーで見たことのあるようなショットを取り入れたり(祈祷師だった老婆に触れたことで記憶が共有され、老婆が英語で話(しているように聞こえる?)すようなシーンは『リング』にもあった)、展開がもはや辻褄が合っているかを気にする必要もないほど「何でもあり」になっている状況に乗っかって、怖がらせ方も「何でもあり」になっているのだが、それら「使いまわし」とか「安直」とか否定的に見られがちなことを、抵抗感を感じさせないように映画の中に取り込んでいることにも上手さを感じる。
 欠点らしいところといえば、ホラーにとって演出の次ぐらいに重要な俳優の(主に恐怖に怯える)演技の面で、印象を残すような登場人物がいなかったことぐらいで、全体的にはこれといった欠点もなく「良く出来た映画」と言える。
 しかし、清水監督の実績からすれば「良く出来ている」ことは予め予想できることで、そんな予想の範囲内の出来では「見て良かった」と思うまでにはいかず、予想を裏切るところまでいっていないのが残念なところ。
 シリーズものの宿命である「前作をしのぐことを要求される」ことや、Jホラーも限界に達してしまったかも知れないという思いなど、状況的に不利な点が多いのだろう。
天然コケッコー ★★★ 感覚系 2007/09/29 46
 これといったストーリーはなく、終盤の卒業のシーンに代表されるように、感受性の表現の素晴らさで全編魅せる。
オフサイド・ガールズ ★★☆ ドラマ系、社会派系 2007/09/29 45
 バカとバカとが対決するバカパワー満載の映画だが、そんな人々の自然な姿こそが、社会の理不尽さをさりげなく強調している。
ファウンテン 永遠に続く愛 ★☆ 妄想系 2007/08/27 44
デス・プルーフ in グラインドハウス ★★★ 感覚系 2007/09/29 43
 タランティーノ監督のB級映画好きが高じて作られた凝った趣味映画と思いきや、往年のCG無しアクションが現在のものより素晴らしいことを知らしめるためにキッチリとした仕事振りを見せている。
腑抜けども、悲しみの愛を見せろ ★★☆ ドラマ系 2007/09/29 42
 登場人物が全員エキセントリックで、それは一見受け狙いのようだが、実は家族の愛憎という重い題材を、軽さに逃げることなく正面から堂々と描いている。サトエリの仁王立ちする姿の見た目が素晴らしい。
不完全なふたり ★★★ 感覚系 2007/08/27 41
 諏訪監督作品を観たのは『M/OTHER』(1999)以来だと思うが、時が経っても国が変わってもほとんど以前のままだった。
 結婚15年目で離婚を決意した夫婦の、別れたら家庭的なことは何もかも失ってしまうのでは?という恐れと、よりを戻しても希望のない結婚生活が続くだけだという板ばさみの状況。
 その2人をネチネチと精神的に追い詰めるストーリーの嫌らしさと、固定カメラの長回しと苦悩を捕らえる顔のアップのショットの意地の悪さは絶品。
サイドカーに犬 ★★★ ドラマ系 2007/08/27 40
殯の森 ★★☆ 感覚系 2007/08/27 39
怪談 ★★ ドラマ系、感覚系 2007/09/23 38
 往年の中川信夫監督作品などの怪談映画を愛している中田監督は、そんな映画を今の時代に忠実に再現すべく丁寧な仕事振りを見せたが、結果はJホラーが既に怪談映画の要素をかなり取り入れていたので、それらとの違いは少なく、怪談映画の優位性は発揮できなかった。
 さらに、Jホラーなら例えば呪いのビデオのような日常的に実感しやすい小道具や設定を取り入れているのに、時代劇はその点が弱く、結果的にJホラーと怪談映画の悪いところ取りになった。
傷だらけの男たち ★☆ ドラマ系、感覚系 2007/09/23 37
 なんか「渋い」とか「クール」な映画ではなく、ただただ重苦しいだけの映画だった。
河童のクゥと夏休み ★★★ ドラマ系 2007/09/23 36
 人の心の弱さだとか他者への思いやりだとか、大人にも見る価値があるテーマを数々含んでいるが、基本的には大人向けのハードな映画ではなく、子供に安心して見せられるようなマイルドな映画になっている。
プロヴァンスの贈りもの ★★☆ ドラマ系 2007/09/23 35
 一瞬で大金を稼ぐトレーダーが、農村で大地に根ざした生活のかけがえの無さに目覚めるという、リドリー・スコット監督らしくない有りがちなストーリーだが、自然に感動できる作品に仕上がっている。
転校生 さよならあなた ★★★ 観念系 2007/08/12 34
 後半、「男と女」「肉体と精神」「あなたとわたし」「あの世とこの世」の違いが混沌となる虚構の世界に入り、人の想いが作る虚構=物語が、別れさえも悲しみでなくしてしまうのが大林監督ならではの素晴らしさ。
ゾディアック ★☆ ドラマ系、実録系 2007/08/12 33
 劇中の台詞にあるように、「交通事故死者の数の多さに比べれば、ゾディアックの殺人の被害者は数人」でしかなく、事件を追求することは結局はむなしいことだという映画なのだろうか? 157分もの尺の映画から感じたことがその程度だったことに、むしろむなしさを感じてしまった。
ラッキー・ユー ★★ ドラマ系 2007/07/21 32
しゃべれども しゃべれども ★★★ ドラマ系 2007/08/12 31
 落語で笑わせることの難しさをはじめとして、自分の気持ちをうまく言えなかったり、他人を傷つける態度を不本意にとってしまうような不器用な人々を、まるで名人芸の落語のようにしなやかなストーリーと語り口でみせる。
ボルベール<帰郷> ★★☆ ドラマ系 2007/08/12 30
 中年っぽさを身に着けたペネロペ・クルスのこれまで以上の魅力に象徴されるように、飾らない女たちのたくましさを堂々と描いた映画。
赤い文化住宅の初子 ★★ ドラマ系 2007/08/12 29
 「赤毛のアン」がアンの夢物語だと気づきながら、現実世界を受け入れるよりアンのように王子様に助けられることを望んで、現実と衝突しながら成長する女の子の話…ということを導き出すために頭を使わなければならない映画になっていて、なんか回りくどい。
14歳 ★★★ ドラマ系 2007/08/12 28
 まだ精神的には子供で、短絡的でエゴむき出しであるが故に、大人にとってはもちろん、14歳の本人にとっても向き合うことが難しい14歳の心の危うさが、これ以上ないと思えるほどの的確さと生々しさで描かれ圧倒される。
東京タワー オカンとボクと、時々、オトン ★★★ ドラマ系 2007/06/10 27
 そもそもがパーソナルな内容なので、主人公が自分の親に対する気持ちを正直に表しているだけの映画といってよく、それゆえに映画化(や小説化)するにあたってドラマチックにしたりすると、その素直な感情が嘘でねじ曲げられて映画全体が台無しになってしまいそうほど。
 平凡な人間である私の個人的な感想として、基本的に普通の人々(父親は普通でなさそうだが、「時々」しか主人公と接する時間がなかったので、結果的に影響力は少なく事実上普通人)による家族の物語として、映画の目線が共感が持てるようになっていて良かった。
 (裏を返せば、共感が持てなかったからダメだった人もいるかもしれないが、それはいいとしても、そもそも冒頭で「小さな話」というナレーションがあるとおりの家族の話でしかないものに対し、よく見かける「(社会性が無く)内向き」という批判は的外れだし、共感した者としてはそんなものは受け付けない。)
バベル ★★★ ドラマ系 2007/06/10 26
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習 ★★☆ 偽ドキュメンタリー系、社会派系 2007/08/12 25
 見かけはドキュメンタリーだが、基本的にはフィクションで、おそらく大部分のシーンがやらせ。
 でも、そのニセドキュメントシーンの中に実際のアメリカ人を撮ったシーンが含まれていると思われ、その異常さの原因である異文化に対する「無知」が、カザフスタン人の無知によるギャグと同列で、所詮世界は「お互い様」だと思わせる。
 見かけはバカだが実は深い映画。
プレステージ ★★ ドラマ系 2007/08/12作成
2009/05/28更新
24
 クリストファー・ノーラン作品は『メメント』同様相変わらずストーリーという映画の「輪郭」のみに執心していて、「中身」(=エモーショナルな生々しさ)が無いので物足りない。
 謎解きだけしか見所がない映画について行くだけ、そしてオチが判っても面白くないだろうと思いながら観てまさにその通りの結果になった。
監督・ばんざい! ★★★ シュール系、自分系 2007/08/12作成
2009/05/28更新
23
 基本的には何も考えずにボーっと観て、脈絡の無さに感覚が麻痺してくるのを楽しむべき映画で、映画に理屈を求める人ほど自滅してしまいそう。
 でも、最近の映画はヒット作のパターンをなぞったような予定調和の映画ばかりで、そんなぬるい映画がヒットしてしまう状況に対する不満と、それに背を向けて観客に新鮮な驚きを提供するために新しい映画の形を模索しようとする監督の強い意志など、多くの思いが込められている映画。

 北野監督の「最近の映画に対する不満」が表れていると思える部分として、劇中の監督キタノが作る劇中劇の1つで、『ALWAYS 三丁目の夕日』(★☆)の裏パターンのような「コールタールの力道山」と題されたものが、他が数分間しなかいのに比べてかなり長めになっていることがある。
 北野監督は、1950年代の東京の庶民の生活といえば、「A級」「B級」で分けるところの「B級」臭さが不可欠なはずなのに、『ALWAYS〜』にはそれが全く無いきれいごと一辺倒だったことに反発して、B級臭さを詰め込んだ「コールタールの力道山」を作ることで、「『ALWAYS〜』なんか観て喜びやがってバカどもが! 見ろ!こっちが本物だ!」と言いたかったのではないだろうか?
 でも、「コールタールの力道山」は結局監督自ら製作を断念することになるのだが、その理由が「貧乏臭い映画なんか誰も観ない」と思ったから。
 『ALWAYS〜』のような「きれいごと」映画がヒットするようなA級志向がはびこる現状では、「きれいごと」を廃するという正当な行為も反感を買うだけで受け入れられないと思ったのだろう。
 しかも、その「A級志向」の持ち主は、どう考えても大半が「B級人間」と思われるので、自分自身という一番身近な存在ですらきちんと認識できていない上での「志向」(というより、幻想、妄想)なのだから、うわついたA級志向から改心させるのも簡単ではない。

 北野監督は、この「A級」「B級」の区別をすごく意識していると思う。
 以前彼は、元々コメディアンだった森繁久彌や萩本欽一が今やA級芸能人然としていることを批判したことがあり、その考えの下、彼は今でもテレビでB級芸能人ぶりを見せ続けている。
 自分自身の出自を忘れて上級な方に寝返ることを恥ずかしいと感じている、言わば「生涯一B級人間」である。
 だから、A級なものに対する反感も強いと思われ、それがよく表れているのが、江守徹演じるなにやら社会的地位がありそうな人。
 彼のキャラの描き方には、「社会的地位」「肩書き」などによるA級イメージなんてどうせ表層的なもので、そんなA級人間たちもよく見てみれば、やっていることはインチキ臭かったり、実は結構下品だったりで、中身はまるっきりB級人間だろ!という思いが感じられる。
 そう描くと同時に、世間の人々は表層だけのA級イメージだけで妄信的に好意を感じてしまうということも描いている。

 北野監督は、自作が世間にどのように受け止められているかについて発言することが多く、中でも一番多い内容が「日本でヒットしない」こと。
 だから、もっと多くの人が観てくれるような企画を目指しつつ、しかしそれらはことごとく自分には出来ない、やりたくない、今さらやってもしょうがないものばかりだという悩みが、この映画のスタートだろう。
 自分がやりたいことと、人々が欲しているものが全く一致しないというのは、大きな問題である。
 映画人でこの壁がないのは、映画はお金儲けのためと考えているか、観る人のことを考えないで作っているか、とにかくなんとなく映画を作っているか、そんな人たちだろう。
 映画製作において「譲れないもの」を持っていないような人たちの「A級っぽい」映画がむしろヒットし、一方自分の映画は観てもらえないというイライラが憎悪となって、『監督・ばんざい!』という作品の中にぶちまけられる。
 同時に、B級人間としてどう頑張ったところで、自称A級の人たちには受け止められないという無念さを感じられる。
 これと同じ想いを感じた映画といえば、ジョン・ウォーターズ監督の『セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ』(★★★)があった。
 どんなに映画への愛情が深くても、どんなに怒りにまかせて暴れてみせても、しょせんは世の中を変えることが出来ないマイノリティの空騒ぎ
 これらの憎悪や失望や自虐は、映画に対する想いが深いが故の、愛情の裏返しとしてのもので、男女間の恋愛において愛情をこじらせてしまうことがあるのと同じ。
 何かに愛情を感じたことのある人なら誰でもこの想いを理解できると思うのだが、『監督・ばんざい!』に対する不評が多かったところをみると、理解されなかったみたい。
 まあ、映画に対する愛情が弱い人だったら、この映画の想いを共有できなくても無理はないかなぁ。しょうがないけど。
恋しくて ★★★ ドラマ系 2007/06/10 22
あしたの私のつくり方 ★★ ドラマ系、教育系 2007/06/10 21
黄色い涙 ★★ ドラマ系 2007/06/10 20
机のなかみ ★★ ドラマ系 2007/05/10 19
パッチギ! LOVE&PEACE ★★★ ドラマ系、社会派系 2007/05/10 18
プロジェクトBB ★★★ 感覚系、ドラマ系 2007/05/06 17
アルゼンチンババア ★☆ ドラマ系、象徴系 2007/05/06 16
 ハチミツ、マッサージ、パン作り、石細工など、人の手作業を通して精神的に疲れた人に真心を届けるという話のの良さは判るのだが、それはあくまで表面的なストーリーの流れからだけで、芝居から実感できるものではなかった。
 映画の内容に沿っていない、目指す方向が見当違いな芝居のシーンの数々を見ていても、楽しむことが出来なかった。
★★☆ ドラマ系、象徴系 2007/05/06 15
ドリームガールズ ★★★ ドラマ系、感覚系 2007/05/06 14
マリー・アントワネット ★★★ ドラマ系、感覚系 2007/05/06 13
ボビー ★☆ ドラマ系 2007/05/06 12
守護神 ★★★ ドラマ系 2007/05/06 11
聴かれた女 ★★ ドラマ系 2007/05/06 10
さくらん ★★ ドラマ系 2007/05/06 9
僕は妹に恋をする ★★★ ドラマ系 2007/05/06 8

 なんか、相米慎二の映画みたいだ。
 長回しのシーンを多用するなどして、主役の2人を中心に芝居をしっかりと体当たりでさせることを重視していて、その粘り腰演出の甲斐あって映画的な高揚感が画面からあふれてくる。
 安藤監督はなんとなく映画を撮っているような監督達とは違う、正真正銘の映画監督であることを見せつけた。

幸福な食卓 ★★ 感覚系、ドラマ系 2007/05/06 7

 家族などの人と人との関係において、強過ぎず弱過ぎず近過ぎず遠過ぎずのつながりを探る。
 とても真面目に作られた映画だけど、生真面目過ぎるかなぁ。
 少しぐらい遊びがあった方が映画としては良かった気がする。

魂萌え! ★★☆ ドラマ系 2007/05/06 6
 定年退職間もなく亡くなった夫が浮気をしていたことに気づいたことをきっかけに、専業主婦が新たな人生を歩みはじめるまでを、ドラマチックに盛り上げたりしないで、平凡な日常生活レベルの抑揚と目線の高さで描いている。
エレクション ★★☆ ドラマ系 2007/05/06 5
 暴力団の後継者争いに敗れた男が、組の分裂を口にしながら時期会長と対立するという、以前何かの映画で(ゴッドファーザー?)あったようなストーリーで、目新しさはないが作りは手堅い。
悪夢探偵 ★★★ 感覚系、ドラマ系 2007/05/06 4
 塚本監督は相変わらずハズすことなど考えられないほどの好調ぶり。
 スクリーンとスピーカーから発せられるスピード感とエネルギーは昔ながらで、なおかつ夢や空想といった世界も、単に非現実的なだけではなく、誘い込まれるような恍惚感を感じさせるような繊細さも兼ね備えた演出ぶりを見せる。
ユメ十夜 ★★ 感覚系 2007/05/06 3
 十話オムニバスで、1つ1つでは最高が★★、最低が★で、全体的に低調。
 短編では話が膨らまないのと、ストーリーが夢をモチーフにしているので、飛躍しすぎてついていくのがやっとだったりなどの理由でつかみどころがないのが原因か?
エクステ ★★★ おわらい系、社会派系 2007/05/06 2
 これはかなり笑える。
 人毛でできたエクステをつけることから園監督が発想して、臓器売買から日本での身近な虐待として児童虐待と広がるが、それらはあくまで映画の一部の要素として留めておいて、基本的には髪の毛をあれこれ使った恐怖シーンが見どころの映画。
 大量の髪の毛を使ったりの髪の毛に対する徹底ぶりは、うずまきに対して『うずまき』をほうふつとさせ、過剰さが恐怖からやがて笑いへと発展していく。
 ついでに、大杉漣が異常な芝居を見せるのも『うずまき』と一緒。
 栗山千明はおそらく初の単独主演を手堅く演じて、つぐみも『紀子の食卓』同様のリアルな怖さを見せる。
 これだけいろいろな要素を手当たり次第盛り込みながら、そのごった煮感覚が映画を破綻させる方に向かわずに、満腹感を持って見終われる映画になっているのも、園監督の好調ぶりを示している。
妖怪奇談 ★☆ ドラマ系 2007/05/06 1
 女性三人が突然それぞれ「ろくろ首」「手の爪が急激に伸びる」「のっぺらぼう」に変貌していく話。
 こういう現実離れした話は、彼女達が社会から阻害される立場になることが、現実の社会問題(ファッション中毒やイジメなど)に重なるような設定にするのがセオリーだと思うが、そうした現実とのリンクがほとんどないので、単なる架空の世界の、我々には無関係な苦悩話になっている。
 演出や芝居が底抜けレベルでなかったことだけが唯一の救いか?


2007年公開作品(2006年以前に鑑賞) (2作品) 2007/05/06

タイトル 採点 製作年 国、スタッフ、等 分類 更新日 累計
墨攻 ★★ 2006 中国=日=韓国=香港 感覚系、ドラマ系 2007/01/03 1
Over8 2006 日 8mm⇒DV (映画祭 TAMA CINEMA FORUM)、2007年公開予定  2006/12/12 -
 9本の短編集のうち4本を鑑賞。
 総合的な感想としては、カメラワーク、画調、ストーリーなどに凝って独自性を持たせようとしていることに熱心なことが感じられるが、そういうことを目指すより、どうすればお客さんが自分の作品に手ごたえを感じるか、満足してもらえるかを重視して、客観的な視点も持ちながら作った方がいいんじゃないの?
 それからついでに、インディーズ映画などで、本編に比べてタイトルのデザインに力が入っていて念入りに作っている作品をよく見るけど、バランスの悪い印象を受けるので、タイトルはさりげない方がいいと思う。
Over8 「Sole wa Sole ソレハソーレ」 2006 日 監督&脚本&編集:川野弘毅 2007/01/27劇場公開予定 8分 8mm⇒DV (映画祭 TAMA CINEMA FORUM) ドラマ系、感覚系 2006/12/12 (4)
ストーリー 感想
 こき使われている下っ端のショッカーの戦闘員が戦闘服をコインランドリーで洗っているとき、居合わせた青年に親切にされる。
 後日、彼が正義の戦隊と戦っているときに、相手の服の洗剤の匂いから、正体は親切にしてくれた青年だと知って親しげに近づくが、「それはそれ、これはこれ」と一撃をくらった。
 オチ命の話なのにオチも弱いし、そこまでの途中のシーンも弱いし…。
Over8 「結晶都市」 2006 日 監督&脚本&撮影:品川亮 2007/01/27劇場公開予定 10分 8mm⇒DV (映画祭 TAMA CINEMA FORUM) ドラマ系、感覚系 2006/12/11 (3)
ストーリー 感想
 醜い上に悪臭を放って通りがかりの女たちに嫌な顔をされる中年の工事現場の誘導員は、唯一自分を嫌わない盲目の少女(派谷恵美)に想いを抱いて親切に接したが、手術で目が見えるようになった少女が自分を毛嫌いしたので殴り殺す。  チャップリンの『街の灯』と似たような話をヒネっているんだけど、ヒネリの部分が結果的に露悪趣味にしか見えなかった。
Over8 「ラーメン」 2006 日 監督&脚本&編集:前田弘二 2007/01/27劇場公開予定 10分 8mm⇒DV (映画祭 TAMA CINEMA FORUM) ドラマ系、不条理系 2006/12/11 (2)
ストーリー 感想
 出前の男がアパートに一室にラーメンを届けると、そこには恋人を失って正気を失っているような全裸の女がいて、代わって彼が恋人のように振舞って女に尽くす。  不条理劇ぽい展開に期待しながらついていったんだけど…。
Over8 「days of」 2006 日 監督&脚本&原作:福島拓哉 2007/01/27劇場公開予定 9分 8mm⇒DV (映画祭 TAMA CINEMA FORUM) 空想系、感覚系 2006/12/11 (1)
ストーリー 感想
 過去と思われる時代、森の中で追われた者が現代へと逃げて来た。  架空の設定で架空の話を繰り広げるのが好きなんでしょうねぇ。
 私は自分に無関係な話は興味ないです。


2007年公開作品(映画館以外で鑑賞) (1作品) 2008/12/03

タイトル 採点 製作年 国、スタッフ、等 メディア 年月日(曜)時 ジャンル 更新日 累計
犯人に告ぐ ★★ 2007年 日、【監督】瀧本智之【原作】雫井脩介【出演】豊川悦司、石橋凌、小澤征悦、笹野高史、片岡玲子、井川遥、松田美由紀、池内万作、崔洋一、石橋蓮司、占部房子、山中崇、柄本祐、根岸季衣、嶋田久作、他 HDDレコーダー(WOWOW) 2007/06/24(日)放映 (2007/07/07(土)鑑賞) ドラマ系 2007/07/09更新
2008/12/03更新
1
ストーリー 感想
 神奈川県警の豊川悦司は誘拐事件の捜査の指揮を執っていたが、身代金引渡しで犯人を逃がして人質の少年は殺され容疑者も証拠不十分で起訴できず、時同じくして豊川の妻が息子を出産して亡くなった場に居合わせられなかったことで、記者会見で逆上して左遷されられた。
 6年後、BADMANと名乗る犯人による連続児童殺人事件が進展しない県警の捜査本部は、豊川を呼んで指揮に当たらせ、情報提供を呼びかけるため井川遥キャスターのテレビニュースに出演した豊川は、独断でBADMANを挑発する。
 その作戦が功を奏してBADMANから手紙が届き、豊川はテレビからの挑発を続けるが、井川の番組に視聴率を奪われた裏番組の片岡礼子キャスターが、つき合っている豊川の上司の小澤征悦に、自分の番組にも警察が協力して欲しいと頼み、豊川と対立する小澤は彼に不利な情報を片岡に流した。
 BADMANが投函前に落とした手紙が発見されたことから、豊川は発見場所付近の住民に対するローラー作戦への協力をテレビで呼びかける。
 しかし作戦実施の最中、豊川の息子が誘拐され、豊川は誘拐犯の指示通り一人で指定の場所に行き、子供の救出には成功するが、犯人である6年前の被害者の父親に刺されてしまう。
 そのころ、聞き込みに協力しなかったことからBADMANは捕まり、豊川も一命をとりとめた。
 主人公の豊川は、手柄は自分のものにして責任は自分に押し付けようとするお偉方、過去の失敗に対する自責の念と更なる被害者を出さないために事件解決を目指す誠実さ、それに被害者と同年代の子供の父親でありながら家庭を顧みる時間がないことなど、複数のことに追い詰められた状況にいる設定で、感情移入されやすいキャラになっている。
 でも、このドラマの魅力はそこ止まりで、ストーリー自体は退屈はさせないのだが、ただただ展開するだけで厚みが感じられない。
 基本的に捜査陣が犯人を追い詰める典型的なミステリーであるだけでなく、劇場型犯罪であることや、警察側もマスコミを利用する心理戦を繰り広げること、児童殺人という弱者に向けられる犯人の心理など、面白くなりそうな要素を数々含んだストーリーなのだが、どれもこれも膨らませられてない。



映画祭/上映会/2008年公開予定/公開未定作品 2008/02/02

タイトル 上映形態 製作年 国 採点 分類 更新日 累計
全然大丈夫 試写会、2008年公開予定 2007 日 ★☆ 感覚系 2007/12/23 4
 「ゆるい」という言葉がいい意味で使われることが多くなった時勢に則って作られたような映画で、結果は「ゆるいだけ」だった。(ついでに書くと、主人公たちはそれぞれ終始「子供っぽいだけ」「不器用なだけ」「優しいだけ」で、これでは物語を進める力に欠ける。)
 ゆるくてもいい映画は、ゆるさの中にも「流れ」や「芯」といったものがあり、それらがあることでゆるさの中に気分良く身を任せることができるが、単に「ゆるいだけ」ではよどんだ水の上で動かないボートにずっと乗せられているようなもので、居心地の悪さに辛い思いをすることになった。
ウォーター・ホース (原題:The Water Horse) 第2回東京国際シネシティフェスティバル2007、2008年公開 2007 米 ★★ ドラマ系、子供向け系 2008/02/02 3
 少年が謎の生物と心を通わすストーリーが、父親が家を出たきり帰ってこないという設定も含めて『E.T.』と全く同じと言っていい。
 全体的には子供にも自然に楽しめるような無難な作りになっていて、逆に言えば大人にとっては良い子ちゃん過ぎる内容でもの足りない。
 『E.T.』は、大人に隠れて子供だけの秘密を持つ後ろめたさ、子供の目で見た世界が大人が感じるのとは違うという心のズレなど、決してきれいごとだけではない陰の部分があり、そんな要素がファンタジーにさらに深みを加えるのだが、この映画にはそんな邪な要素はなかった。
ジェリーフィッシュ (原題:Jellyfish) 第8回東京フィルメックス 2007 イスラエル ★★ ドラマ系、象徴系 2007/11/24 2
男兒本色 (原題:Invisible Target) 香港映画祭 2007 香港 ★★ 感覚系 2007/11/24 1



ビデオ、劇場上映 (作品) //

タイトル 採点 分類 更新日 累計



2006年公開作品(2007年に鑑賞) //

  作品 (日=)

タイトル 採点 分類 更新日 累計


2006年公開作品(2007年に映画館以外で鑑賞) //

タイトル 採点 分類 更新日 累計
リトル・ミス・サンシャイン ★★★ ドラマ系、社会派系 2007/05/06 5
市川崑物語 ★★★ 感覚系、むずむず系 2007/05/06 4
気球クラブ、その後 ★★ ドラマ系 2007/05/06 3
ルナシー ★★ 感覚系 2007/05/06 2
酒井家のしあわせ ★★☆ ドラマ系 2007/05/06 1
 感受性の鋭い思春期の少年にとって、地方都市では他人の心に土足で上がりこんでくる人々が家の内外にあふれていて、わずらわしい思いをしながらも中学生ではまだそれを打ち破る力を持ち合わせていないイライラ感が生々しく描かれていて、この演出力の高さに呉監督の将来性を感じる。


2007年に観た旧作 (作品) 2007/08/27

タイトル 製作年 国 採点 分類 更新日 累計
愛欲の罠 1973 日 ★★☆ 感覚系 2007/08/27 1
ストーリー 感想
 殺し屋の荒戸源次郎は、犯罪組織の男(大和屋竺)に認められ、その組織のアメリカ本部からやって来る男を殺すように依頼された。
 狙撃は成功したが、直後に荒戸の妻(絵沢萠子)を現場に連れて行ったことで窮地に追い込まれた。
 実は絵沢は大和屋の女で、荒戸の監視役として送り込んだのであり、その絵沢が目撃されたことで、大和屋のしわざだということがばれたのだった。
 荒戸は大和屋の依頼で絵沢を狙撃したが、しばらくして荒戸の家の近所で絵沢を目撃し、後をつけると大和屋の別荘にいる絵沢と再会した。
 やがて、大和屋と荒戸を追って、等身大の人形を操る殺し屋マリオが現れ、荒戸は撃たれて別荘から逃げ出し、戻ると大和屋と絵沢が殺されていた。
 荒戸はとある町に逃げ、そこの売春宿に身を隠し安田のぞみを抱くが、絵沢の無残な殺され方を目にして以来インポになっていた。
 しかし、その町は組織の本部のお膝元で、殺し屋たちが現れ荒戸に決闘を挑み、激闘の末に相手を殺したことで、荒戸のインポが治って安田を抱き続けた。
 しかし、売春宿にマリオが現れて安田を殺し、荒戸は組織の本部に乗り込んで、マリオを倒して殺し屋No.1の座をものにし、ボスも撃ち殺した。
 殺し屋同士の対決を描いたストーリーや、凝りまくった仕掛けやギャグの数々など、大和屋監督自身が脚本執筆のメンバーの1人だった鈴木清順監督の『殺しの烙印』そっくりの映画で、同様の奇妙さやとぼけた感じがこの映画でも楽しめる。
 主役を演じた荒戸源次郎の演技は、正直言って素人っぽいのだが、それすら演出の狙いではないかと思えるほど、変だけど妙に惹かれる映画。



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