〜い〜

いえのげい(家の芸) 歌舞伎用語。歌舞伎俳優はそれぞれ、市川、尾上、中村などの家系的な名跡(芸名、排名、屋号)につながる。それは歌舞伎が本来俳優の魅力、芸風、演劇を支える一般的魅力とし、盃事、嫉妬事、意見事など人生の局面を事(パターン)としてとらえ、それが荒事、和事など俳優自信の役柄制度までに発展したためである。これを(家の芸)という。例えば荒事芸の市川家、和事芸の中村 .
いえもと(家元) 芸の累積を家で保管し、血筋、師弟関係を通じてそれを一つの道として代々継承する日本芸能特有の世界でその家またはそれを行う人をいう。 .
いかす(生かす) 復活させることを指す言葉。カットされた場面・台詞とか小道具・大道具などをもう一度使うことを「生かす」と言う。 .
いけころし(活け殺し) 歌舞伎音楽用語。主として下座音楽(→げざおんがく)において舞台の進行にしたがって、演奏を強めたり弱めたりすること。活けは強める。殺しは弱めるの意。一般の三味線音楽にも用いられ、せりふの強弱にも使われる。 .
いしょうあわせ(衣装合わせ) 演出家や美術家が立ち会いのもと、俳優が衣装を試着して、舞台で使用するものを選定すること。 .
いたど(板戸) 定式道具としての板や土壁などはすべて木の枠に紙を張って作られ、いわゆる張り物の上に泥絵具を塗って、板の感じ土壁の感じを描き現わすのが定めであって本物を使用する場合は甚だ稀である。普通使われる板戸は横桟(重桟)、格子桟、一枚板、杉板等があり、鎌倉時代以前の武家屋敷または公家の館などに「マイラ戸」と呼ぶ形の板戸もある。 .
いたつき(板付き) 演出用語。開幕したとき、あるいは舞台が回ってきた時舞台にいる役、または所定の位置に立っていることをいう。 .
いためぬの(板目布) 廊下や道場のような板の間に装った場合この布を敷く。実際の舞台の板は定式舞台としては利用しない。 .
いちだん(一段) →びゃくろく .
いちべる(一ベル) 通常、開演5分前を知らせるベル。予鈴(よれい)ともいう。現在ではベルを使用せず、ブザーやチャイムなどを用いている。 .
いちもんじ(一文字) 大道具用語。略して「もんじ」ともいう。舞台上部、上下(→かみて)いっぱいに横長に吊られた細長い黒幕。見た目に一の字のように見えることから、この名称になった。照明器具、大道具備品など上部の機構を隠す。舞台前方から奥へ1.5〜2.0メートル間隔で吊れ、順に第一、第二、第三と呼ぶ。上方では「かすみ」、九州や名古屋などでは「べか」ということも。

舞台機構図

写真
いちよん 大道具の標準寸法のひとつで、舞台から1尺4寸高いこと。常足(つねあし)ともいう。+1.4と表示すれば1尺4寸高のこと。+0.4は4寸高のこと。 .
いっかん(一管) 演奏形態で、能管(笛)をひとりで吹奏すること。 .
いっちょう(一調) 小鼓、大鼓、太鼓のいずれかひとつだけの演奏のこと。長唄のときは小鼓に限られている。一調に笛が加わる場合は「一調一管」という。 .
いってこい 1.台詞の順番が逆になること。テレコともいう。
2.舞台装置の転換で、次の次の場面で、もとの同じ道具に戻ること。「この道具は、いってこいになる」などという。
.
いっぱい(一杯) 1.邦楽で曲一杯ということで、全曲の意味。
2.邦楽のフレーズを数える単位。一杯、二杯と数える。
.
いっぱいかざり(一杯飾り) 大道具用語。舞台全体を使って、一場面だけの装置を飾ること。回り舞台では裏表のニ場面を飾る二杯飾りが普通なので、これを区別するためにこう呼ばれる。杯は場面数の数え方の単位。 .
いっぽんびき(一本引き) 日本家屋の舞台装置で、数枚の襖や障子がひとつにつながっていて、役者が出入りするたびに、これを大道具の係が開閉させること。 .
いと(糸) 1.三味線、箏、琵琶、胡弓などの楽器に張る弦の別名。
2.三味線演奏者の通称。小唄などでは「唄はだれだれ」「糸はだれだれ」というこtがある。
.
いど(井戸) 舞台の切穴を利用して装る。水を汲み上げることはもちろん、芝居では井戸からの出入りを仕組んだものが多いので奈落へ通ずるように装られる。 .
いどころかわり(居所変わり) 歌舞伎大道具用語。舞台転換において、幕を閉めたり、回り舞台などを使わず迫(→せり)、田楽返し(→でんがくがえし)、煽り返し(→あおりがえし)、がんどう返し(→がんどうかえし)、押し出し、引割りなどの仕掛けを用いて短時間で場面を変化させること。むしろ見せ場の一つとして観客の面前で行う歌舞伎独自の演出の一つ。 .
いなおる(居直る) 1.役者が演技としてきちんと座り直すこと。
2.所定の席に着くこと。
3.花道の七三から本舞台の所定の位置に着くこと。
.
いなずま(稲妻) 大道具用語。二重舞台を使う場合、二つをはなして組み、その間に平台を渡す時に足の代わりに用いる鉄製の器具。これを利用して組み立てる二重舞台を(鳥居に飾る)という。 .
いれこみ(入れ込み) 舞台の準備が完了して観客を劇場内に入れることをいう。「入れ込みは5時で開演は6時」という。「客入れ」「開場」ともいう。 .
いろあく(色悪) 歌舞伎の役柄。敵役の一つで、外見は色男だがその実は悪人という役柄。 .
いろおんど(色温度) 照明用語。(しきおんど)ともいう。通常の白色光は太陽光を基準にするが、舞台では白熱電球が使われ、やや黄色である。これは光源の温度放射が低いからで、測る単位をケルビン(K゜)という。太陽光は5.000〜6.000に対して、白熱電球は2.500〜3.000ケルビン。 .
いろもの(色物) 寄席演芸の一種。かつては寄席そのものを色物席と総称していたが、東京の寄席が落語中心のプログラムを組むようになってからは、漫才、奇術、太神楽、音曲、声色(こわいろ)、紙切りといった落語以外の演芸を指す言葉となった。 .
いろもよう(色模様) 歌舞伎、人形浄瑠璃で、淡く単純な恋愛の場面や演技のこと。濃厚なものは「濡れ場」という。 .
いろわく(色枠) 照明用語。カラーフィルターを挟む枠。カラーフレーム、シートとも呼び、照明器具の前面に挿入する。 .
いわぐみ(岩組) 大道具用語。張り抜きの岩、叉はその他の丸物の造型物をいい、平面的な切り出し(→きりだし)に対して立体的な効果がある。 .
インターバル 合間、幕間、休憩時間。 .
イントレ 照明器具、スピーカーシステム、テレビカメラ等を乗せるヤグラ、鉄塔のこと。イントレの語源は映画の題名「イントレランス」からきている。この作品の中で初めて高い撮影台を使い、画期的な大ロングショットや壮大な群衆場面の撮影に成功した。このことから、ヤグラ式撮影塔のことを「イントレ」と呼ぶようになった。

写真