映画の感想、スクリーン以外で鑑賞 2005年 2014/04/28 更新




採点基準
  ★★★★ :人類の宝
  ★★★☆ :絶対必見
  ★★★ :観るべき映画
  ★★☆ :観ても良い
  ★★ :中間
  ★☆ :観なくてもいい
  ★ :観る価値はほとんどない
  ☆ :作者もろともこの世から消えてなくなれ
  なし :採点不能

ストーリーは、基本的にすべて書いています。当然、ネタバレの可能性あり。

文章などの内容には、時々変更や追加が入ることがあります。

タイトル スタッフ/キャスト 製作年/国/カラー/縦横比/時間 視聴日 メディア 作品の分類 採点 更新日
わが恋せし乙女 監督&脚本:木下恵介 音楽:木下忠司 1946 日(松竹) モノクロ 1:1.33 2005/12/17(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2006/07/03
ストーリー 感想
 浅間山のふもとの牧場に捨てられた女の赤ん坊がその家の娘として育てられ、ひそかに彼女のことを愛していた彼女の兄が、復員して来て結婚を申し込もうと機会をうかがっていたとき、村祭りで妹が男と楽しそうにしているのを見かけて、帰りの馬車で兄妹2人になっても妹に何も話すことが出来ず、逆に妹から兄が出征中に都会から疎開して来て出征して脚を負傷して帰ってきた村役場に勤めるその男と結婚を約束していることを告白された。
 兄は自分の思いは妹に告げず、つらい思いを抱えたまま表向きは明るく妹に祝福の言葉を言い、兄の思いを知っていた母は彼を偉いと言って慰めた。
 ストーリー的には悲恋モノだが、終戦直後の沈んだ世の中を明るくしようと思ったのか、軽快な音楽に乗って、花で飾り立てた馬車で夜道を疾走したりなど、明るくメルヘンチックな映画。
雲のむこう、約束の場所 監督:新海誠 2004 日 カラー1:1.85 2005/12/10(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、アニメ ★☆ 2005/12/10
 津軽海峡を挟んで南北に分断された日本という架空の設定、男2人に女1人の高校時代の思い出、繰り返し同じ夢を見る謎と宇宙も夢を見てそれが別空間として現れるというSF的設定などなど、あれもこれも詰め込んで表現も観念的にすればする程、その内向きな作り物っぽさが、観ているこっちの気持ちをどんどん映画から離れさせるという、物語以前の結果になってしまった。
 映画は作り手の作品に込める思い入れも大事だけど、観る者にその思いを伝える、あるいは思いは別にして映画を観たことで何かしらの満足感を与えるには、テクニック、センス、客観視、策略、客を信用しないで丸め込もうとするズルさなども必要で、それらが全く欠如してしまっては、独りよがりと言われても仕方がない。
野菊の如き君なりき 監督&脚本:木下恵介 原作:伊藤左千夫「野菊の墓」 音楽:木下忠司 1955 日(松竹) モノクロ 1:1.33 2005/12/01(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★★ 2006/07/04
ストーリー 感想
 幼なじみの民子(有田紀子)と政男(田中晋二)はいつも二人でいる程仲が良かったが、家柄が違う二人の間を離すために政男は中学の寮に入れられ、民子には縁談が持ちかけられ民子は承諾してしまう。
 しかし、民子は嫁ぎ先で虐げられて実家に帰って死んでしまう。
 やがて、老人になった政男(笠智衆)が故郷に帰省して、民子の墓前に野菊の花を供えた。
 この映画の表現で特徴的なのは、まず回想シーンに昔の写真のように横長の白い楕円形の枠がつけられていること、ギター演奏によるBGMが鳴り止まないこと、そして、節目節目で笠智衆のナレーションによる俳句が詠まれること。
 これらの手法がこの映画で際立っているかといえばそうではなく、木下監督の演出はあくまで観る者の心を的確につかんで揺さぶることであって、上記の手法が結果的には隠し味程度にしか感じられないほど、映画そのものに引き込まれてしまう。
 だから、具体的にこの映画のどこが素晴らしいかを説明するのはとても難しく、演出の的確さが完璧だから最高に素晴らしいとしか言えない
 例えれば、料理に使う材料や調味料の種類も隠し味も、最高の組み合わせで最適の分量を知っている、最高の料理人のような映画監督ということだろう。
 特に、民子が縁談を受け入れる時の気落ちした様子と、それに気づかずに親たち周りの大人たちが「嫁ぎ先が決まって良かった」と喜ぶシーンの物悲しさなどは絶品中の絶品。
 以上のことは、長唄や浄瑠璃を流し続けた『楢山節考』も、阿蘇の話にフラメンコを流し続けた『永遠の人』も一緒で、特に音楽の使い方において、音楽のリズムを映画のリズムに転化させることに定評があると言えるだろう。
男はつらいよ 寅次郎と殿様 監督:山田洋次 脚本:山田洋次、朝間義隆 1977 日(松竹) カラー 1:2.35 2005/11/28(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2007/09/16
 シリーズ19作目で、マドンナは真野響子。
 冒頭寅さんが柴又に帰ってきて喧嘩してすぐ出て行くところ、寅さんがマドンナと結ばれるんじゃないかと思わせるところ、そして例によって失恋するところなど、おなじみのストーリーのキーポイントが、やっつけ仕事で考えたようにこれといったひねりもなくあっさりと片付けられているのにがっかりで、いよいよシリーズのマンネリ化が本格化してきたように感じる。
非情都市 監督:鈴木英夫 1960 日(東宝) モノクロ 1:2.35 2005/11/24(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2006/03/26
ストーリー 感想
 新聞記者の三橋達也は、特ダネを得るのに熱心なあまり、情報源の男の名を伏せる約束を破って新聞に載せたためにその男を自殺に追い込んだりしたが、彼は読者はセンセーショナリズムを求めていると言い放った。
 ある男が撃たれる事件が発生し、三橋は顔なじみの刑事から、ある金融会社が事件の裏で関わっていることを突き止める。
 三橋がそこに乗り込むと、逆に犯人を匿ってもらうことを持ちかけられる。
 三橋は危ない橋だと思いながらも特ダネ欲しさにその話に乗る。
 やがて、犯人は逃亡するが、三橋が犯人を匿ったことが上層部にばれ、しかも事件につながりのあると思われた銀行が新聞社の得意先だったことから、三橋は地方への転勤話を持ちかけられる。
 三橋は彼らに反発するが、やがて警察が現われて犯人隠避で逮捕され、拘置所の中で解雇を言い渡される。
 新聞社に裏切られた三橋は、自分の調べた記事で戦うと叫んだが、その声はむなしく響くだけだった。
 「非情」というよりは、三橋達也演じる主人公の自業自得という気がしないでもないが、それでも彼と司葉子が屋外で立ったままで会話するようななんでもないシーンでも緊張感が異常に高かったりなど、演出の力で見せる映画になっていた。
彼奴を逃すな 監督:鈴木英夫 1956 日(東宝) モノクロ 1:1.33 2005/11/21(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 ★★★ 2006/03/26
ストーリー 感想
 木村功と津島恵子の夫婦は、妻が洋裁屋を営み、その一角で仕事の無い夫が片手間でラジオの修理の仕事をしていた。
 2人は19:45からの映画を観ることにして、まず妻が届け物をするついでに19:00少し前に出て、夫も店の後片付けをして閉めようとしたところ、近所の男が19:30からのボクシングの試合を聞きたいということでラジオを持ち込み、急遽修理を始める。
 間もなく店の明かりが消え、木村は懐中電灯片手に修理をするが、そのとき店の外に男がいて、カーテンの隙間から中を覗き込んでいるのが見えた。
 19:30に直ったラジオを届けて映画に行ったが、その頃近くの店で身元不明の男が19:10の貨物列車の通過音に紛れて殺され、警察に通報して息を引き取った。
 志村喬ら刑事が捜査に乗り出し、背後に麻薬組織があることが判り、目撃者探しの聞き込みを行うが、その頃洋裁屋に警察にばらすと妻の命はないとの脅迫状が残されていて、木村は刑事に19:00に店を閉めたので何も見ていないと答えた。
 しかし、ラジオを19:30に届けたことから証言の嘘がばれて、2人は警察に呼ばれ厳しく追及されるが、何も見ていないとしらを切り通した。
 やがて同一犯によって近所の男が殺され、志村たちは木村を訪ねて証言をしてもらおうと雑談するが、津島はますます証言に反対した。
 しかし、ついに木村は妻に内緒で警察で犯人の顔のモンタージュ写真の作成に協力し、それが新聞に載って木村は人に尾行されているのを感じたり、店の前で演奏するチンドン屋のピエロも、新聞の似顔絵の男の変装で、店の中の2人を監視しているような気になり、洋裁の届け物で外出をした時に走って尾行をまこうとしたが、それは護衛の刑事だった。
 モンタージュ写真にそっくりの宮口精二が木村の留守中にラジオを持って店に現れ、何もせずに修理だけ依頼して津島が受け付けた。
 その夜の19:00少し前、津島が外出して外では志村たちが張り込みいるときに宮口が店に現れ、修理が済むのを待つ振りをして木村に銃を突きつけ、19:10の列車の通過時に殺すために彼に修理を続けさせた。
 そこに津島が帰ってきて、気づかない彼女に木村は電線の切りくずで「ニゲロ」の文字を作って気づかせようとしたり、また隣の家のラジオにノイズを発生させて知らせようとしたが、ことごとく失敗し、ついに貨物列車が近づいてきてあわやというところで、刑事が店の中を覗きにきて宮口が発砲して撃ち合いになり、宮口が撃たれ、2人は無事助け出された。
 これは素晴らしい!
 ヒッチコックを意識したのかも知れないが、サスペンス映画として十分対抗できる出来になっている。
 ストーリーは極めてシンプルで、サスペンス映画にとって余計なものは何も無い。
 警察に証言するなと脅され、常に見張られているような恐怖に襲われる前半もいいが、極めつけはクライマックスの銃で脅されながら密かに妻に危険を知らせるところで、ブレッソンの『抵抗』をほうふつとさせるような、ディテールを積み重ねることによる緊張感の高め方が見事である。
七つの大罪 (原題: Les 7 Peches Capitaux) 監督:ジョルジュ・ラコンブ、他 1952 仏=伊 モノクロ 1:1.33 2005/11/17(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/11/17
ストーリー 感想
 遊園地でジェラール・フィリップが、客に7つの大罪の的にボールをぶつけるゲームを出していて、客たちは一つ一つ的を倒していく。  ジェラール・フィリップが狂言回しを務める、7話のオムニバス。
 大罪と言っている割には、尺が短いせいなのか、全体的にマイルドな印象の内容。
七つの大罪 <強欲と怒り> 監督:エドゥアルド・デ・フィリッポ 1952 伊 モノクロ 1:1.33 2005/11/17(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/11/17
ストーリー 感想
 大家のアルヴァロが、家賃を滞納しているクラリネット吹きのジェルミニのところに催促に行くと、無一文だったので退去を命じて帰って行くが、アルヴァロが落としたジェルミニが財布を拾って、それを見ていた男の分け前要求を振り払って、身分証と大半の金を抜き取って、警察に届けようとする。
 家に帰ったアルヴァロは、美容院代をせびる妻とケチって喧嘩になり、さらに財布が無くなっていたので妻が盗んだとつかみかかったはずみで真珠のネックレスが切れて床に散らばる。
 そこにジェルミニが財布を元の状態で返しに来て、10%の謝礼を要求する彼に金額が減っていると言って断って帰した後、ノイローゼになった妻が自分で紙を切って戻った金を窓から外にばらまく。
 一方、ジェルミニの靴に真珠が1粒入っていて、質屋に売って滞納した家賃の額のお金を手にした。
 財布を警察に届けたはずなのに、その後何故か持ち主に返した展開がつながらないのだが、登場人物のピリピリがオーバー気味なのがちょいと面白い。
七つの大罪 <怠惰> 監督:ジャン・ドレヴィル 1952 仏 モノクロ 1:1.33 2005/11/17(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/11/17
ストーリー 感想
 天国の本部局。神の命令で下界を調査するために最近死んだ人間たちを調べるが、ノルマに追われてあくせく働く人々を嘆き、「怠惰」の女神を派遣して、世界中が怠惰になった。
 その結果がひどすぎたので、局長が下界に降りなんとか探し出し、嫌がる彼女を説得して半分だけ術を解き、みんなが幸せになって天国に帰っていった。
 特撮を駆使したファンタジックな内容だけど、話は普通。
七つの大罪 <肉欲> 監督:イヴ・アレグレ 1952 仏 モノクロ 1:1.33 2005/11/17(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/11/17
ストーリー 感想
 13歳の少女シャンタルに妊娠していることを聞かされた司祭は、彼女の母のところにいって知らせ、母は娘を問い詰めて相手が同じアパートに住むラヴィラだと言い、母がラヴィラに話して彼が娘を問い詰めると、彼が座った後同じところに座って妊娠したと言った。
 ほっとした2人は、人目を忍んで彼女の部屋でイチャツキ出すが、隣の部屋で様子をうかがっていた娘は、夜の街へと出て行った。
 真ん中ごろのどんでん返しの後がたいした内容じゃないので、拍子抜け。
七つの大罪 <妬み> 監督:ロベルト・ロッセリーニ 1952 伊 モノクロ 1:1.33 2005/11/17(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/11/17
ストーリー 感想
 画家の妻のカミーユは、夫が自分よりも芸術や飼い猫やモデルに夢中だと思ってイライラがつのり、猫を7階のベランダから落とす。
 しかし、一命を取り留めた猫がおびえていたことから、夫は妻が落としたことに気づき、妻は夫にののしられ続ける。
 妻の妬みがイカンという内容なのだろうが、夫はインテリ風をを吹かせて妻を凡人扱いしているので、彼女に同情的にも見えてしまう。
七つの大罪 <大食> 監督:カルロ・リム 1952 仏 モノクロ 1:1.33 2005/11/17(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/11/17
ストーリー 感想
 上流階級のパーティーで、お菓子を食べ続ける婦人を見た男は、田舎で医者をしていた祖父の話を始めた。
 19世紀末、夜道で嵐の中車が故障して、近くの一軒家に泊めてもらって、秘伝のチーズの美味さに驚き、1つしかないベッドに若夫婦と妻を真ん中にして3人で寝ることになる。
 夫が先に寝て、妻は好きにしていいと言い、祖父はベッドを飛び出してチーズを貪り食った。
 食べるのはせいぜいチーズ一かたまりなので、大食でもなければもちろん罪でもない。
 女の誘いを断ったのが罪だということなのだろうか?
七つの大罪 <高慢> 監督:クロード・オータン・ララ 1952 仏 モノクロ 1:1.33 2005/11/17(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/11/17
ストーリー 感想
 電気を止められ拾った小枝で暖を取っているアンヌ・マリー(ミシェル・モルガン)とその母が、道で会った知り合いにパーティーに招待された。
 家に帰ると間もなく母の弟が訪ねてアンヌ・マリーに子守の仕事を頼んだが、2人は断った。
 結局招待状が届かなかったので、恥かしい思いをするだけだと止める母を振り切って、アンヌ・マリーが嫌がらせでパーティーに出席すると、一同は驚いて、中にはよく招待したものだとホストに言う者までいた。
 そのうち、客の一人のエメラルドの指輪がはずれて無くなり、客全員の身体検査が行われることになり、真っ先に疑われたアンヌ・マリーが怒ってハンドバッグを投げつけて出て行き、中には宝石は無かった。
 この話も、高慢だとは言えないし、もちろん罪には思えない。
七つの大罪 <第八の大罪> 監督:ジョルジュ・ラコンブ 1952 仏 モノクロ 1:1.33 2005/11/17(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/11/17
ストーリー 感想
 ジェラール・フィリップが第八の大罪について話し出す。
 枢機卿が若い水兵を連れて夜の路地裏の建物に入ると、パンツのみの男が出迎えて、薄暗い室内には女の子や中国人の男や半裸の女や女装の男がいて、一室に呼ばれると…全員が画家の前でポーズをとった。
 いかがわしい想像が第八の大罪だった。
 これも、いかがわしいことをするわけでもなく、想像だけでも罪なのか?
 どちらかといえば、美しすぎる妄想のほうが罪だと思うが。
五瓣の椿 監督:野村芳太郎 原作:山本周五郎 1964 日(松竹) カラー 1:2.35 2005/11/17(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/11/17
ストーリー 感想
 おりう(岩下志麻)は、三味線の師匠の岸沢蝶太夫(田村高廣)が芝居の演奏の仕事が終わった夜、宿で彼女に夢中になった彼に言い寄られていたが、実は彼女は薬問屋の武蔵屋の娘おしので、彼女の母おその(左幸子)を金目当てでたぶらかして、死んだ父の喜兵衛(加藤嘉)の恨みで彼に近づき、彼をかんざしで殺してそばに赤い椿を残しその夜のうちに一人で宿を出た。
 また、いかがわしい治療で治療費をふんだくったり金貸しをしたり、それに患者とも関係を持つ婦人科医の海野得石(伊藤雄之助)も相模屋の女将から金をふんだくったことがあり、半年ぶりに会ったおみの(岩下志麻)に、相模屋の女将はろうがい持ちの夫より自分と会って女になったと言っていたと話し、おみのが正体を明かしておしのを名乗り、うろたえた得石をやはりかんざしで殺して椿の花を残した。
 おしのの父が死ぬ前に母に言いたいことがあると彼女のいる亀戸の寮に籠で運ばせ、母が遊んでいた菊太郎を連れて現れたときには父は死んでいて、母はおしのには父は本当の父ではないと言い、病気の夫では満たされなかったと言って菊太郎と遊び続けたので、その夜寮に火を放って母と菊太郎を焼き殺して姿をくらまし、焼死体は父と母とおしののものとされた。
 連続殺人の捜査に当たった町方与力の青木千之助(加藤剛)が、目撃者の女中が犯人に似た女を見たとの情報でその宿に行くと、そこには婚約者の香屋清一(小沢昭一)を待っていたお倫(岩下志麻)がいたが、青木は彼女が人殺しのできない箱入り娘にしか見えず、簡単な取調べしかしなかった。
 しかし、翌日彼女が言った実家に行くと、そこにはおしのの幼なじみの本物の娘がいて、お倫は姿をくらまし、清一のなじみの女郎屋では女たらしの清一に捨てられた女郎が自殺をしていて、清一はかんざしと椿と共に殺され、その現場には青木宛に「法では罰せられられない罪を罰し、いずれ自首する」との手紙が残されていたが、おしのは父同様に結核に冒されていて死を予感して復讐を急いでいた。
 青木は殺された男たちがおそのと、彼女に男の世話をした芝居小屋にいた佐吉(西村晃)と関係があったことから、おしのを疑って彼女の墓を掘って骨を調べなおそうとし、また佐吉の行方を追った。
 おしのはおよねと名乗って、袋物問屋丸梅の主人源次郎(岡田英次)に近づき、彼に捨てられた女中のおつる(市原悦子)から、源次郎がおそのをはらませたので、番頭の喜兵衛を彼女の婿にさせて取り繕ったことを聞かされた。
 これまでおしのに好意を抱いて復讐を陰で手伝っていた佐吉とおしのが屋形船で会い、佐吉は自分が負われていることと、おしのの骨は男のものだという調べがついたことを言い、追い詰められた状況を利用しておしのを手篭めにしようとするが、逆におそのの浮気を助けたことの恨みで4人目の被害者になる。
 おしのは源次郎と会い、彼に抱かれながら自分が娘であることを明かして、源次郎は殺さずに自首してすべてを話して、源次郎を死ぬまで苦しめると言い、源次郎は許しを請いながら止めようとした。
 おしのは牢の中で刑を待つ日々を平穏に暮らしていたが、源次郎が廃人のようになったことで彼の妻が自殺したと聞かされ、自分の復讐に罪は無いと思っていたが、無関係の人を傷つけたと思い始めてうろたえ、寝静まったころに裁縫のはさみで首を切って自殺した。
 岩下志麻も頑張ってるし、面白い映画に出来そうなストーリーなんだけど、結果的には普通の映画になってしまった。
 ちなみに、岩下の濡れ場のきわどいカットは多分ふき替え。
ブラッド・ワーク 監督&製作:クリント・イーストウッド 原作: マイクル・コナリー「わが心臓の痛み」 2002 米 カラー 1:2.35 2005/11/14(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★☆ 2005/11/14
ストーリー 感想
 FBIのプロファイラーのクリント・イーストウッドにに対して、謎の数字と共に挑戦状を書き残す連続殺人事件が起き、現場で記者に囲まれたときに、怪しい男を見かけて逃げる彼を走って追ったが、途中で心臓に痛みを感じて犯人を逃し、引退して2年後心臓移植をして船の上で暮らしていた。
 そんな彼のところに、イーストウッドの心臓のドナーである妹をコンビニ強盗で殺された姉のグラシエラが訪ねて来て、事件を調べて欲しいと頼まれた彼は、主治医のアンジェリカ・ヒューストンが術後の後遺症を心配して止めるのも聞かずに、同じ船着場で暮らすジェフ・ダニエルズと共に捜査を始める。
 イーストウッドは、事件が行き当たりばったりではなく計画的で、2週間前に起きたATM強盗殺人と同一犯人だとにらみ、使われた銃と同型の持ち主のロシア人の職場を訪ねると、彼はそこから逃走し、数日後2つの強盗殺人の被害者から奪ったイアリングとサングラスと共にそのロシア人が殺されているのが発見され、警察は彼が真犯人だと考えたが、イーストウッドは違うと思って捜査を続け、2人の被害者が自分と同じ特殊な血液型の持ち主だということを突きとめ、2人は臓器が目当てで殺されたのだと推理し、コンビニ強盗の防犯カメラのテープに写っていた、事件後現場に現れた謎の通報者が実は変装した犯人で、彼が事件の前に通報していて臓器がダメにならないようにしたことがわかった。
 血液型のリストにアクセスできる人間として、ATM強盗の直後に現場に現れて通報したコンピューター技師の家を、そこには技師の妻の他殺死体があって技師は逃走していたが、やがてかつてイーストウッドが心臓病で倒れた現場で殺されているのが発見され、そこには2年前同様謎の数字付きのイーストウッドへの挑戦状が残されていて、イーストウッドはすべての事件は連続殺人犯の仕業だとにらみ、数字はダニエルズを意味していると気づいて彼を問い詰めると、イーストウッドを追って船着場に移り住み、ライバルを救うためにドナーになる人間を殺したことを話し、またグラシエラと彼女の死んだ妹の息子を誘拐したので、イーストウッドはダニエルズを連れて彼女たちがいる座礁した船に行く。
 イーストウッドは2人を助けたが逃げたダニエルズと銃撃戦になり、彼を殺して事件は解決した。
 とりあえず、これといって欠点が見られない、真っ当な作りの映画。
 移植された心臓を巡って、心臓を大事にすべきか、ドナーを殺した犯人を捜すべきかの葛藤があるストーリーもまずまず。
新・仁義なき戦い。 監督:阪本順治 2000 日(東映) カラー 1:1.66 2005/11/2(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/11/13
 固有名詞が多くてストーリーがわかりにくく、トヨエツと布袋が幼なじみだとか、布袋が在日コリアンなどの設定が意味があるとは思えないほど有効に働いていない。
 でも、ストーリーがわかりにくい以前に、映像的にヤクザたちが凄みをきかすだけのフラットな映像のシーンが大半で、映画の世界に入り込みたいと思えるものになっていないのが問題で、そのせいでストーリーを追う気力が失せてしまうというのが正確。
 阪本監督は、『K.T.』などがそうだったけど、本人が力を入れて作っている割には、観るものの立場では心が動かされない映画になっているものがいくつかある。
緋ざくら大名 監督:加藤泰 原作:山手樹一郎 1958 日(東映) モノクロ 1:2.35 2005/10/10(月=祝) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2006/06/28
ストーリー 感想
 北条家五万石は、亡き領主の跡取りが一人娘の鶴姫(大川恵子)しかなく、一次的に信濃守を跡目に付けているが、明後日の十八歳の姫の誕生日に婿養子をもらって正当な跡取りにするという父の遺言に従って、家老(大河内傳次郎)が勝手に縁談を決めたので、姫はかたくなに拒み続けた。
 姫の親戚筋が、この機に乗じて跡目争いに加わって、強引に姫をものにしようとする者も現れ、姫は江戸屋敷の外に逃げ出して、芝居小屋に舞台の上に追っ手と共に現れると、太鼓叩きをしていた松平家の次男の千代三郎(大川橋蔵)が追っ手たちを芝居の刀で蹴散らし、姫を連れて逃げた。
 千代三郎は、しかるべきところまで姫を連れて行こうにも、千代三郎を浪人と思っている姫が行き先を言わないので、千代三郎は姫を置いて行ってしまうが、姫は自分を乗せた籠かきに、千代三郎は自分のお供で彼のところに連れて行くように行ったので、彼の住む長屋の人たちは姫を見て彼の嫁だと思い込んで大騒ぎ。
 姫は千代三郎の部屋に泊まり、千代三郎は部屋を出て夜道をうろついているところ、芝居小屋の追っ手たちが現れ再び彼と刀を合わせることになり、賭場に逃げ込んだら丁半博打で身ぐるみはがされて、借金を払うために松平家の江戸屋敷に帰ってお金をもらい、その時婿養子に行く縁談の話になって、千代三郎は鶴姫が好きになったと言うが、大名の子は町民のように結婚相手を選べないと兄に諭され、相手が誰かを聞かずに婿に行くことを承諾する。
 そのころ、信濃守が毒殺されて、跡目を狙う者たちが家老の仕業として屋敷内の牢に閉じ込めた。
 千代三郎は借金を返して長屋に帰ると姫はいたが、2人ともほとんど言葉を交わすことができなかった。
 街中で姫のお供の腰元のお照が姫を探し回っているのを追っ手が見つけ、彼らから逃れるために短刀で斬りかかって逆に斬られてしまい、駆けつけた千代三郎が追っ手と戦っている間に姫のいる長屋に運ばれるも息絶えて、悲しんだ姫が長屋を飛び出して、千代三郎が捜し当てて長屋に連れ帰ると、追っ手たちが待ち構えていたので千代三郎と斬り合いになり、長屋の町民たちとともに撃退する。
 そこに、牢を抜け出した家老たちが長屋に現れ、千代三郎は名乗らずに身を引いた。
 千代三郎の婿入りの日、彼は突然籠から逃げ出し、姫も屋敷から逃げ出して、2人は長屋で出会うと、そこに現れた家老たちから初めてお互いが婿入りの相手同士だったことがわかり、改めて屋敷へと向かうのだった。
 一番の見どころは、千代三郎が自分の縁談を受け入れることを兄に言った後に長屋で姫と会った時、お互いに相手に気がありながら、その恋が許されないばかりに、手が触れ合ってもそれ以上何も出来ず何も言えない状況を、台詞ではなく2人の動きで見せるところ。
 加藤監督の後の作品の『緋牡丹博徒 お竜参上』の名シーンである、藤純子と菅原文太の橋のたもとのやり取りをほうふつとさせる。
 それ以外にも、全体的にコミカルな雰囲気で観ていて楽しい映画。
男はつらいよ 柴又慕情 監督:山田洋次 脚本:山田洋次、朝間義隆 1972 日(松竹) カラー 1:2.35 2005/09/04(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 少し前の農村、吉田義夫の借金取りの親分がさくらたちの取り立てに来てもめているところに、長楊枝をくわえた寅さんが通りかかって、代わりに金を払うが、さくらは寅さんが兄なのではないかと思って尋ねても寅さんは身に覚えがないとしらを切る。
 といった夢を見ていた寅さんが、小さな駅の待合室で寝ているときに起こされて、ホームで待っていた汽車に乗って行く。
 とらやでは、博が家を建てる資金の足しにするために、寅さんの部屋を貸間として貸し出す札を店先にぶら下げていたが、帰ってきた寅さんがそれを見て怒って、不動産屋に行って自分の部屋を探し、紹介してもらったのが寅さんの部屋だった。
 寅さんが、博はどうせろくな家を建てられないと言ったことで気まずくなって出て行き、金沢で舎弟の登と再会して旅館に泊まって夜中までどんちゃん騒ぎ。
 翌朝、登は一人先に京都に旅立ち、寅さんは福井に行くと、そこで同じ金沢の旅館に泊まっていた吉永小百合ら旅行中の女性3人組と出会う。
 彼女たちは結婚を控えての独身として揃える最後の旅行で、ありきたりな観光地めぐりをしていたが、寅さんと意気投合して俄然旅行が楽しくなり、やがて東京に向けて帰って行く。
 寅さんが柴又に帰って来ると、彼に会おうと柴又に来ていた吉永以外のOLの2人と再会し、彼女たちから吉永は作家の父と2人暮らしで、気難しい父の世話をしているのでまだ独身だと聞いて、寅さんは幸薄い彼女と結婚して幸せにしてやろうという気になる。
 後日、吉永がとらやを尋ねてきて、寅さんに「何故結婚しないの?」などと質問して、とらやの人々とすっかり楽しんで帰って行った。
 家に帰った吉永は、父に恋人ともう一度会って欲しいと言うが、父の「勝手に結婚しろ」としか言わない相変わらずの冷たい態度に苦悩する。
 再び吉永が数日間父から離れてとらやに泊まるつもりで久しぶりに来たとき、彼女がかつて恋人から「家のバラの世話だけしていればいい」とプロポーズされたのを、馬鹿にされていると感じたのと、父も非難したことで彼とはそれっきりになったことを話した。
 吉永が博とさくらに、父を置いて結婚することに気が引けることを話すと、博たちは父は一人で大丈夫などと結婚を後押しし、寅さんが吉永を彼らのアパートからとやらに連れて行くとき、寅さんに愛知で焼き物の仕事をしている恋人と結婚する気になったと嬉し泣きし、失恋した寅さんも彼女を祝福する。
 吉永が嫁いだ後、彼女の父が娘が世話になったとらやを訪ね、寅さんは旅先で登と再会する。
地球の危機 監督:アーウィン・アレン 1961 米 カラー 1:2.35 2005/09/03(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 新型の原子力潜水艦が考案者のネルソン提督(ウォルター・ピジョン)を乗せて北極海で試験航行中、氷山が次々と崩れる現場に遭遇する。
 原因は、地球から離れた位置にあるはずのヴァンアレン放射線帯が、大量の流星の影響で地表近くまで降りてきたことだった。
 潜水艦はニューヨークへ向い、国連で提督はグァム沖の上空で核爆発をさせれば放射線帯は消えると主張したが、自然消滅する可能性があるので慎重に様子を見るべきだとの意見と対立して結論が出ず、提督は独断で潜水艦をマリアナ諸島に向わせる。
 世界中で異常気象になり、そのため無線も通じなくなり、艦は海底ケーブルを通じて大統領と連絡を取ろうと潜水夫を潜らせると、大イカが現れて格闘になるもケーブルへの接続に成功するが、辛うじてワシントンは壊滅状態らしいことしかわからなかった。
 次に潜水艦は機雷群に突っ込み、除去を試みた小型潜水艇の犠牲で突破することができた。
 それまで伏せられていた任務が乗組員らに伝えられ、彼らの中には帰国して家族と共に地球最期を迎えたいと思うものが現れ、ミサイル発射を阻止しようとする何者かによる破壊工作が起こるようになったので、居合わせた難破船に帰国希望者を移した。
 艦長(ロバート・スターリング)や、視察で乗り込んでいた精神科医(ジョーン・フォンテン)らは、これまでの独善的な提督の行動の数々に、次第に彼が誇大妄想に囚われているのではないかと思い始め、ついに艦長は提督を病人として逮捕してミサイル発射を中止させようとした。
 そのとき、追ってきた他の潜水艦が魚雷を発射してきたので、艦は深海に逃れると、次は巨大ダコが艦に襲いかかって来たが電気ショックで払いのけたが、破壊工作の張本人の精神科医が原子炉を停止させた。
 気温はますます上昇して自然鎮火説の間違いが明らかになったことで提督はミサイルを発射しようとしたが、北極で救助されたアルバレスが、神の意思に従うべきだと発射期限の数分前に爆弾を手にして操縦室を占拠したので、提督は人間が生き延びようと努力することこそ神の意思だと説得し、そのすきに潜水夫が船外からミサイルをセットして発射させて、提督の計算どおり放射線帯は消滅して地球は救われた。
 地球的規模の自然災害を、人類が操ることの出来る最大の力である核爆発で阻止しようとする話だが、そんな大それた行為に対する畏れの気持ちや、多くの人々の命運を左右する立場の人間に要求される精神性はあまりに高く、結局は強大な力を人間が持つということは、それを行使する立場にいる人物は本当にそれに値するのか?という不安に常に付きまとわれることになる問題も扱っている。
 映像的には、潜水艦内はまるでビルの一室のようで緊張感に欠けるが、それでも潜水艦同士の戦いをミニチュアでみせたりするところなど見どころは多い。
殺しのテクニック 監督:フランク・シャノン 1966 伊 カラー 1:2.35 2005/09/03(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 組織に雇われている殺し屋のクリント(ロバート・ウェバー)は、口封じのために狙撃して殺すことに成功し、これを最後に引退して田舎で暮そうと思い、次の仕事である、警察に情報を漏らしたらしい組織のデトロイトの大物のフランク・セッキの殺しを断ったが、その直後何者かに尾行され、兄と待ち合わせしたところを銃撃されて兄は死ぬ。
 犯人はセッキの組織とにらんで、再び仕事を引き受け、組織は彼の助手としてトニー(フランコ・ネロ)という若者をあてがい、二人は整形して顔のわからないセッキを追っているマイクに会おうとパリに飛んだが、彼の行動は漏れていて、一足先にマイクは殺されていた。
 マイクの部屋に残されていた写真の女メリー(ジャンヌ・ヴァレリー)に会うために、彼女に薬を与えているバリー(ミシェル・バルディネ)から居場所を聞き、かの祖所からマイクが探し当てたセッキの整形を手がけた医者(ホセ・ルイ・ド・ヒラロンガ)を探り出す。
 トニーがホテルに一人でいたところ、何者かに殴られ任務遂行の暗号を教えろと言われるが、それはクリントしか知らないものだった。
 2人はマイクの部屋にあった写真の別荘が、メリーによると彼女が最後にマイクとあった日に、整形手術の病院に行った後にドライブしに行ったところだと聞き、そこに行くとトニーを殴った男がいて乱闘になり、またセッキの整形前の写真の指輪をしていた男を撃ち殺して、仕事が終わったかに思えたがクリントは腑に落ちないままパリを後にしようとしたとき、空港でセッキの指輪をした焼死体が発見されたとの新聞記事を目にし、トニーは何故かホテルから外出中で、クリントはメリーに会いに行くと彼女に電話をし、途中の山道で車に襲われるが、逆に崖から落として難を逃れる。
 クリントはメリーを問い詰めると、彼が家に来ることをバリーに電話で話したと言い、バリーを追って撃ち殺してホテルに戻ってトニーと共にメリーの家に行くと、その間に彼女はセッキによって薬の打ち過ぎで死んだように見せかけられていた。
 クリントは整形の医者とパリで会う手はずをトニーに頼み、待ち合わせ場所のクラブで待っていると、実はその医師こそがセッキで、クリントは打たれながらも手下共々セッキを撃ち殺し、そこに現れたトニーが、元々セッキを殺した後にクリントに金を払う代わりに彼を殺すのが任務で、またセッキの手下に殴られたときにセッキにも通じたことを明かされ、クリントはトニーより一瞬早く銃を抜いて彼を撃ち殺す。
花咲く港 監督:木下恵介 1943 日(松竹) モノクロ 1:133 2005/09/03(土) HDDレコーダー(TBS) ドラマ系 ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 九州のある島。かつてこの島に来て造船所を作ろうとしたが不景気になって未完に終わり、14年前にペナンに渡って一旗あげた地元の名士の渡瀬の遺児が、父の故郷に帰って来るとの電報を2通もらって、渡瀬を尊敬する村人たちが小沢栄の到着を歓迎するが、その後、もう一人遺児だと名乗るズーズー弁の男の上原謙が現れた。
 実は二人とも遺児に成りすましてペテンを働こうと別々にやって来たのであって、顔見知りだった二人はとっさに上原が小沢の弟ということにした。
 二人は造船所を作る話を持ちかけ、村人たちも乗り気になって次々と株を買い、元からゆきさんの槇芙佐子までなけなしの金をつぎこんだので、ふたりは後ろめたさと儲けの金額が大きくなって怖気づいて、早く金を持って島を逃げ出そうと話し合う。
 そんなところに、10年前にペナンで渡瀬と結婚した村瀬幸子が女の子を連れて夫のいた島を見に現れ、かつて愛する渡瀬を追ってペナンまで行って、彼に相手にされずにからゆきさんになって結局村瀬に渡瀬を取られた旅館の女将の東山千栄子が、行く当てのない2人を引き取ることになるが、渡瀬の妻だということは口外しないことを約束された。
 しかし村瀬は、渡瀬には自分の前に妻がいて、子供が2人いると聞かされたことは、そんなはずはないと不思議に思った。
 小沢が金を持ち逃げしようとしたとき、一緒に逃げるはずの上原が東山の旅館の女中の木戸光子に惚れて二人で船に乗っていて、そうしているうちに、日本が真珠湾と上海で米英相手に勝利を収めたとのニュースが入って村は沸きかえり、小沢も戦勝ムードの中で逃げ出す気にならくなったばかりか、船が組みあがっていくにしたがって、船を完成させたいという気持ちになり、上原も島民たちののんびりした暮らしぶりが気に入ってしまった。
 しかし、村瀬の娘から村瀬が渡瀬の妻だと知った2人は、村瀬と話して彼女は自分たちが偽者だとは気づいていなかったものの、あわてて島から逃げ出そうとするが、島に嵐が来て宿に戻り、村瀬が夫のやり残した船のことを心配しているのを知って、船を守ろうと嵐の中を飛び出していく。
 翌日、晴天の中で渡瀬丸の進水式が開かれるが、二人の姿は島にはなく、そこに村の漁船がアメリカの潜水艦に沈められたとの知らせが入って、村人たちはもっと船を作ってアメリカに復讐しようと心を一つにした。
 小沢と上原は長崎の警察に連行される船の上で、後にした島のことをしみじみと思うのだった。
珈琲時光 監督:ホウ・シャオシェン 2004 日(松竹) カラー 1:1.85 2005/09/01(木) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 東京に住む一青窈は、約70年前の昔東京にいた台湾の音楽家のことを調べていて、知り合いの古本屋の浅野忠信に話したり、彼の立ち寄った先を訪ねたりしていた。
 群馬の田舎の実家に帰り、彼女の父の後妻に、台湾人の彼氏の子供を身ごもっていることと、結婚はせずに一人で子供を育てることを話した。
白い刻印 監督:ポール・シュレイダー 1997 米 カラー 1:1.85 2005/08/31(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 ハロウィンのニューハンプシャー州の町、警察官のニック・ノルテは、離婚して小学生の一人娘のジルと会える日だったが、慣れ親しんでいない子供たちのいるパーティーにニックによって押し付けられた彼女は、母を電話で呼んで抜け出そうとしたことで、ニックは元妻と娘の取り合いになる。
 翌日の鹿狩りの解禁日に、雪山に入った2人のうち、町の実力者のトワンブリーが銃で自分を撃って死に、同行していたジャックという男は、トワンブリーが足を滑らせて転げ落ちたのを見ていたが、ニックに何も見ていないと言った嘘を見抜いて、ジャックが殺したのではないかとにらんだ。
 ニックは、再婚しようと思っているシシー・スペイセクを両親の家に連れて行く。
 父のジェームズ・コバーンは母や子供たちに暴力を振るっていたが、床に伏せていた母がまもなく死んでしまい、ニックの弟で宗教にのめり込んでいるウィレム・デフォーも実家に呼ばれた。
 ニックは娘の親権を争う訴えを起こそうとしていて、殺人の推理と共に頭の中がいっぱいになり、上司が事件に関わっていると絡んで警官をクビになり、歯痛に耐え切れず自分で抜歯し、娘に会っても会話が成り立たず娘に拒否され、ついにシシーにも出て行かれ、父の車を使おうとしてもみ合ううちに銃で殴って死なせてしまい、かれは父の遺体に火をつけて小屋ごと燃やしてしまう。
 その後、ニックは殺人犯だと決め付けた無実のジャックを撃ち殺して消え去り、父と子の暴力はこの世から消え去った。
69 sixty nine 監督:李相日 原作:村上龍 2004 日(東映) カラー 1:1.85 2005/08/30(火) WOWOW ドラマ系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 1969年の佐世保。高校生の妻夫木聡は、東京から来たホステスの井川遥相手に童貞を捨てたなどのホラ話をしていたが、そのうちアメリカのフェスティバルで女が裸になっている写真を見て自分たちもフェスティバルを開こうと安藤政信を誘い、それで上映する映画の主演女優を授業をサボって探していたら教師の嶋田久作に殴られ、主演女優には太田莉菜しかいいないと妄想を膨らませて彼女が所属する英語演劇部に行ったら、顧問の小日向文世と言い合いになったはずみでベトナム反戦を呼びかけ、それを聞いた太田が同調して好意を示した。
 妻夫木たちが8ミリカメラを借りに全共闘の部室に行ったとき、また言い合いになったのと、妄想の中での太田の後押しの言葉のはずみで、1学期の終業式の前日の夜中に高校に忍び込んで、安田講堂のようにバリケード封鎖をしようと言い出し、学校中にアジの言葉を落書きしたりなどして大騒ぎになるが、犯人だとばれて無期謹慎になる。
 謹慎中に、安藤が本当に学生運動に傾きかけるが、結局大学生に反発して妻夫木とともに乱闘そして逃走。
 また謹慎解除間近に、妻夫木が工業高校の番長の新井浩文の女に手を出したと思われ、あわや袋叩きということろに、妻夫木の父で教師の柴田恭平のかつての教え子のヤクザの村上淳が間に入って事なきを得る。
 妻夫木が職員室でしぼられていたとき、安藤たちが彼を救出に来て、また全校放送ではマスゲームと皇帝の清掃の中止を求める集会を呼びかけ大勢がそれに従ったので、要求はのまれる。
 そして、妻夫木は太田を8ミリにおさめ、フェスティバルも成功して1969年は終わり、その後安藤は学生運動にのめりこんで挫折し、妻夫木は太田と結婚してアメリカで映画監督として成功した…というホラ話を妻夫木が教室で話していた。
オードリー・ローズ 監督:ロバート・ワイズ 1977 米 カラー 2005/08/30(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 ニューヨークに住む、カメラマンのマーシャ・メイスンと夫のジョン・ベックは、1人娘のアイビーの後をアンソニー・ホプキンスがつけまわしていることに気づいた。
 マーシャが交通事故に合って、娘を学校に迎えに行くのが遅れて、娘が学校にいなくて探し回るが、アンソニーが家に送っていたのだった。
 その夜、2人はアンソニーからの誘いを受けて会い、5歳のときに交通事故で死んだ彼の娘のオードリー・ローズが生まれ変わってアイビーになったと霊媒師が言ったことを聞かされた。
 マーシャはアンソニーの真剣な態度に惹かれたが、ジョンはとりあわず、弁護士に相談して、アンソニーの目的を探るために彼を家に招待して話を聞く。
 そのとき、誕生日が近づく度に夜にうなされていたアイビーが突然錯乱して手がつけられなくなったとき、アンソニーが彼女をオードリー・ローズと呼んで抱擁しアイビーを落ち着かせた。
 ジョンはアンソニーを殴って家から追い出すが、マーシャはオードリー・ローズが車に閉じ込められて焼け死んだようにアイビーがガラスに触れて火傷したことを気にし、翌日再び錯乱したときに、訪れたアンソニーを家に入れ、アンソニーはアイビーをなだめた後、マーシャに自分が霊媒師に会った後インドに行って輪廻転生を信じるようになり、オードリー・ローズの魂を成仏させないとアイビーが危ないと言う。
 後日、再びアイビーが錯乱したところに、同じビルの一室を借りたアンソニーが来て彼女をジョンとマーシャから奪って連れ出して自分の部屋に連れて行って鍵をかけたので、駆けつけた警官に逮捕され、裁判では輪廻転生の是非が問われた。
 裁判沙汰になったことで、アイビーはオードリー・ローズのことを意識するようになり、学校内で燃やされた焚き火を見て無意識に近づいて火傷を負ってしまう。
 マーシャが裁判で輪廻転生を信じるとアンソニーに有利な証言をしたので、検事の申し出でアイビーに退行催眠をかけるテストを行なうことになり、オードリー・ローズの事故のところまで戻るが、
地上最大のショウ 監督:セシル・B・デミル 1952 米、カラー 2005/08/28(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、記録系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 リングリング・ブラザーズ・サーカスの団長のブラッド(チャールトン・ヘストン)は、無名のブランコ乗りのホリーをメインに、都市を巡り歩く年間興行を望んでいたが、小都市でのサーカスの興行は昔に比べて厳しくなって、彼は女たらしのブランコ乗りのスターの大セバスチャンを呼ぶことで興行を取り付けた。
 ホリーは自分がセンターリングで演技する約束を団長としていたのに、破られてセバスチャンに対抗意識剥き出しでお互いに危険な演技をエスカレートさせるうちに、危険と背中合わせのブランコ乗りの同志の気持ちが目覚めた。
 ブラッドの友人のピエロ(ジェームズ・スチュアート)は客席にいた母のところに行き、警察が彼の行方を追っていることを聞かされた。
 ホリーは、サーカスの運営第一で自分のことを構ってくれない団長からセバスチャンへと気持ちが移りかけるが、彼女の芸が危険過ぎると言う団長が本当に自分を思ってくれると感じて団長に気持ちが戻る。
 セバスチャンの空中ブランコの演技前にホリーが彼と話したことで、強がったセバスチャンがネットを切って危険な芸をして墜落してしまい、後日、退院した彼がサーカスに戻って来たときには、二度とブランコに乗れない体になっていたので、ホリーは責任を感じで彼の側についていようと思い、代わりに象使いの女のエンジェルが団長の恋人の後釜につこうとする。
 エンジェルの恋人だった象使いの男が嫉妬して、象の曲芸中に象に踏ませて彼女を殺そうとしたので、団長が芸をやめさせ彼をクビにする。
 そんな彼に、かつてサーカステントの側でイカサマ博打をやって団長に追い出された男が取り入って、サーカス団の列車を止めて売上金を強奪することを持ちかけて成功するが、逃走しようとしたとき後続列車が迫るのに気づいて、止めようとして車で列車に突っ込んで正面衝突するが、間に合わずに列車は大破して団長は重症を追い、元医師で妻を安楽死させた罪でピエロを追っていた刑事が列車に同乗していたにも関わらず、ピエロは逃走せずにセバスチャンの輸血も得て団長を応急手当する。
 次の移動先での興行は無理かと思われたが、団員たちが徒歩で町に向って行進し、客たちを事故現場に連れて来て、側の草原に客席を作って興行を始めた。
 ピエロは逮捕され、団長はホリーに求愛するが、彼女は身動きのできない彼を放って、嬉々として興行を始めようとするのだった。
 サーカスの演技をそのまま延々と見せるだけのシーンが、映画のかなりの時間を占めているので、ドラマというより、サーカスをスクリーンで疑似体験する映画、或いは、サーカス・プロモーション映画といった要素が強い。
 そう割り切って見れは、往年の巨大サーカスの雰囲気を楽しめるし、特に2人がブランコの技の危険度をエスカレートさせるシーンはハラハラドキドキ。
 ドラマとしてみれば、クライマックスの列車事故の展開が唐突過ぎで、アカデミー作品賞受賞作としては評判が悪いのもうなづける。
男はつらいよ 寅次郎恋歌 監督:山田洋次 1971 日(松竹) カラー 1:2.35 2005/08/28(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 旅先で吉田義夫が座長の客の来ない旅芸人一座と触れ合って柴又に帰ってきた寅さんは、おいちゃんたちの歓迎振りが白々しかったので、機嫌を悪くして夜にとらやに客を連れてきて飲んで騒いだのだが、自分の傍若無人さに気づいてそのまま旅立ってしまう。
 岡山にいる博の母が危篤との電報が届いて、博とさくらが向かうが亡くなっていて、とらやに電話をして聞きつけた寅さんが葬式に現れ、心配した通りひんしゅくを買う。
 その夜、「思い残すことは無い」と言い残して死んだ母は幸せだったと言う博の父で学者の志村喬や兄たちに対し、博は自分のやりたいことも出来ずに父の女中のようだった母は不幸だったと声を荒げて反論した。
 皆が帰った後、一人暮らしになった志村の家に寅さんが残って話し相手になっていたが、家族が無いのが身軽でいいと言う寅さんに、志村が「一家団欒こそが人間本来の姿で、それを目指す生き方こそ自然」と言ったことに感銘した寅さんは柴又に帰ることにする。
 そのころ、池内淳子が帝釈天の近所に喫茶店を開いた挨拶でとらやに来て、帰ってきた寅さんが会ってしまって皆の心配した通りに一目ぼれしたものの、彼女には小学生の男の子がいたので、相方のいる女性に恋したことに苦しんだが、彼女の夫が3年前に亡くなったと聞いて急に張り切りだす。
 寅さんは、もともと内気で転校してきたばかりで馴染めずにいる池内の子供に寅さんが遊びを教え、他の子供たちとも仲良くなって池内は寅さんに感謝をした。
 柴又に志村が尋ねてきて、博は最初のうちはそっけなかったが、孫の満男の相手をする志村を見て、母に冷たかった父も、亡くしてみれば寂しくなったのではないかと思った。
 寅さんが池内の喫茶店に来ていたときに、彼女が契約でトラブルに巻き込まれている会話を電話
世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す 監督: 1956 米 2005/08/18(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) 感覚系、ドラマ系 ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 空飛ぶ円盤が世界中で目撃され、米軍は発見次第攻撃することを決めた。
 一方、宇宙有人飛行を前提とした人工衛星の打ち上げをしている博士は同僚と結婚したばかりで、打ち上げ場に向けて砂漠の中の道を車を走らせているときに円盤を目撃し、口述筆記をしているテープレコーダーにその音が録音された。
 11機目の衛星が打ち上げられたとき、妻の父の陸軍将軍が現れ、これまで打ち上げてきた衛星はすべて世界中に墜落したことを報告した。
 博士は12機目にカメラをつけて原因を究明しようとしたところ、打ち上げ場に円盤が着陸して中から宇宙人が現れ、軍隊が彼らに攻撃すると、逆に宇宙船がシールドで防御しながら攻撃して、打ち上げ場は全滅して夫妻だけが生き残り、将軍は捕虜になって円盤の中で尋問を受けた。
 電力不足でテープレコーダーの再生速度が遅くなったことで円盤の機械音と思われた宇宙人のメッセージが再生され、博士はそのテープを持ってワシントンD.C.に報告するが、対応が慎重過ぎると感じて、自分で宇宙人指定の周波数で交信し、待ち合わせ場所で宇宙船に乗り込んで、56日以内に地球人が自分たちと協定を結ばなければ攻撃すると告げた。
 博士たち科学者は、モノを破壊する超音波銃や、円盤の動力源である磁力を打ち消す磁力砲を開発し、その研究施設に偵察に現れた円盤に銃を使うが逃げられ、代わりに将軍が死体で返された。
 宇宙人は脅しとして、太陽表面で巨大爆発を起こして地球上では天変地異が起きたが、新兵器の情報は広められて量産され、期日の日に円盤の大群がワシントンDCに現れて、迎え撃った軍隊と総力戦になり、地球人側が多くの犠牲者を出しながら磁気砲で円盤を次々と墜落させて勝利を収めた。
黒田騒動 監督:内田吐夢 1956 日(東映) 2005/08/27(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 家康の死後十数年、外様大名の黒田長政(高堂国典)は筑前に国替えになった上に、さらに取り潰しを狙う幕府からの締め付けは厳しく、戦国時代の気質を持って幕府に反抗的な跡取りの忠之(片岡栄二郎)を隠居させるように迫ってきた。
 長政は一旦はそれに従うが、城代家老の栗山大膳(片岡千恵蔵)が忠之の後見人として責任を持つとの言葉を受けて、決して戦をしないことと、国家老のを父と思って従うようにと忠之に言い残して亡くなる。
 跡を継いだ忠之は、彼の行列を見て涙していた足軽倉橋十太夫(南原伸二)を籠の中から見て話しかけ、彼を気に入って異例の取立てで五百石を与えて側近にした。
 忠之は狩りのときに百姓の弥次兵衛(荒木忍)の娘お秀(高千穂ひづる)を見初めて側室に迎えるが、十太夫は彼女が隠れ切支丹であることに気づき、大膳も弥次兵衛たちが四、五年前に突然に現れ、それ以前のことは誰も知らないことを調べ上げた。
 忠之は足軽隊を組織し、十太夫は忠之に大筒を増やすことを進言し、大膳が江戸表に目をつけられないために足軽隊を解散せよと言うのを聞き入れなかった。
 大膳が長崎勤番に行っている間、弥次兵衛はお秀に、城下の祭りの日に殿に門を開けさせ、城から出て有川駿河(仁礼功太郎)と密会することを命じ、そのたくらみは成功した。
 お秀が殿に海に船を浮かべたいと言ったので、殿は有川の設計で船を作り、その建造のために民の負担は重くなり、さらに禁制の軍船との噂が広まって、大膳も長崎から手紙を書くが、殿は反発するだけだった。
 幕府隠密は船の設計図を手に入れ、船が切支丹の手に渡ることを恐れて検分の使者の竹中妥女正(大友柳太朗)を派遣することになり、それを聞きつけた大膳は途中で彼を待ち受けて接待して時間稼ぎをし、その間に船を砲撃して炎上させ、竹中は大膳の策略に感服して引き返す。
 出世のために大膳を蹴落とそうと企む十太夫は、大膳が長崎を出たことから彼が首謀者だと殿に言い、大膳の後を追って殿の元に出向くことを伝えるが、大膳は公儀の仕事が優先だと断って長崎に帰る。
 十太夫は殿の妹の萩野(中原ひとみ)との結婚が決まって家老になり、仲を取り持ったのがお秀と知った大膳は、殿に会って結婚の延期を申し出るが、ついに殿は大膳に切腹を命じるも大膳は断り、十太夫の足軽隊が大膳の屋敷を包囲する。
 大膳の手下がお秀の部屋を床下から見張っていたときに、部屋にいあたお秀と有川に密書を届ける忍びの者が現れ、争いの末それを手に入れ大膳の屋敷に戻り、九州の切支丹蜂起を伝えるそれを読んだ大膳は、殿を幕府に訴える書状を書いて使者を遣わすが、二通のうちのおとりの一通を手に入れた殿は大膳の切腹を待たずに屋敷を砲撃させたとき、もう一通が届いた竹中が大膳の屋敷に駆けつける。
 忠之と大膳と十太夫が江戸の老中のところに呼び出され、大膳は殿を訴えたのは表向きで、実は切支丹の密書を公儀に届けることが目的だったと言った。
 大膳の思惑通り、切支丹防衛のため忠之はお咎め無し、大膳は公儀を利用したことでお家断絶、十太夫は禁制破りで遠島になった。
 竹中は大膳に敬意を表して別れ、三年後の島原の乱で忠之は鎮圧に手柄を立てるのだった。
不思議な村 1972 米 2005/08/26(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、象徴系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 教師のキム・ダービーは、都会の生活から逃げるように山奥に孤立する教師のいない村への赴任を希望したが、下宿先の主人は彼女が持ち込んだ雑誌を密かに燃やしたり、生徒たちはよそよそしくて歌も歌わず、摺り足で歩くなど、何か村の掟に縛られているようだった。
 一方、近くの町の医師のウイリアム・シャトナーは、村人たちが病気にならない秘密を調査しに村に来たときに、1人の子供が痛みに苦しんで、それはある男が傷ついたからだと村人が言い、現にその男を治療したらすべては収まった。
 彼女が生徒の中で一番親しいフランチャーという男の子にハーモニカをあげると、彼は子供たちだけの集まりで故郷の曲と彼らが呼ぶ曲を演奏して、それは禁じられていることだと言う者もいたが、そこに先生が現れて皆が立ち去り、1人残ったフランチャーが何故か口外していない彼女の恋人のことを話し出したので彼女が問い詰めると、念力で宙に浮かされてしまう。
 後日、フランチャーが女の子に摺り足をやめることを勧めて、楽しくなった2人は故郷を思い出して宙を舞っているのを物陰か先生が目にして、教室で彼らに故郷の絵を書かせる。
 彼らは、他の星が滅んで地球にやって来たのだが、地球人は彼らを魔女とさげすんだため、山奥で能力を出さないような生活をしていたのだった。
 しかし、先生が子供たちの能力を引き出そうとしたため、フランチャーが首の骨を折ってしまい、村人たちの協議の結果、掟を破って持てる力を出すことにし、医師の手術が成功して助かった。
 村人たちは地球人から離れて暮すのをやめ、地球を故郷として人間と共存しようと決めるのだった。
水爆と深海の怪物 監督: 1955 米 2005/08/25(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 原子力潜水艦が開発され、まもなくその航海中に放射能を帯びた巨大な物体が物体が潜水艦に向ってきて絡まりつき、何とか逃れるが物体の一部が付着していて、男女2人の生物学者と潜水艦の艦長が解析する。
 その結果立てられた仮説は、太平洋上の水爆実験場から放射性汚染物質が流れ出して、ミンダナオ海溝の深海に潜んでいた巨大タコが被爆し、放射線で餌の魚が逃げてしまったため、海面に上がってきて放射線を感じない人間を餌にするようになったというもので、現に日本の漁船が行方不明になったりしていた。
 タコは黒潮に乗って移動して、貨物船を抱え込んだまま海に沈めて、数少ない生存者がその様子を語り、ついにオレゴン州に上陸して初めてその姿が確認された。
 海軍は、タコの居場所を突き止め、突き刺さって体内に留まり遠隔操作で爆発させる魚雷を使って一発勝負に出ることにした。
 タコはサンフランシスコに上陸して街を破壊し、陸軍が火炎放射器で海に追い返し、原子力潜水艦が特殊魚雷を発射して命中するが、潜水艦がタコに捕まったため、近すぎて爆破できなくなってしまった。
 そこで、艦長と博士が潜水服を着てタコに近づいて爆薬を爆破させ、タコは潜水艦を放して爆破させ、海底にいた潜水服の2人も無事だった。
クローサー 2002 香港=米 2005/08/24(水) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 ある投資会社のコンピューターにウィルスが進入するが、電脳天使と名乗るハッカーが外部からウィルスを駆除し、後日、電脳天使と名乗るスー・チーが面会に来て社長に迎えられるが、実はウィルスも彼女によるもので、麻薬で儲けた社長を殺すために面会することが目的だった。
 衛星経路で社屋の防犯システムに侵入して状況をスー・チーに知らせることでサポートしているヴィッキー・チャオと共にスー・チーは目的を果たて社屋から脱出し、刑事のカレン・モクが捜査に乗り出した。
 スー・チーの彼が海外から香港に来て、彼に自分が殺し屋だということを話し、引退して彼と結婚することを考えていた。
 しかし、ヴィッキーは親を殺したその社長とその兄を殺すことに躍起になって、彼女を子ども扱いする姉に反発していた。
 ヴィッキーがターゲットを向かいのビルから狙撃しようとしたが、うまくいかずにスー・チーも駆けつけ、警備をしていたカレンと相棒が2人の居場所を見つけて4人は地下駐車場に向うエレベーターの中で鉢合わせになり、銃と格闘でつばぜり合いを繰り広げるが、そこに敵の手下たちがカレンもろとも殺そうと襲い掛かってきたので、4人は協力して戦いながら車で脱出して分かれる。 
天国の本屋 恋火 監督:篠原哲雄 2004 日(松竹) 2005/08/21(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 自分勝手なピアノ演奏をするため、楽団をクビになって酒場で飲んだくれて「田舎帰ろっかなぁ」とつぶやいた玉山鉄二が、本屋の屋根裏部屋で目を覚まし、酒場で玉山と同席していた原田芳雄の説明によると、その本屋は死後に満100歳になって現世に帰るまでに、人生を全うするための「天国」にあり、原田は本屋の店長で、玉山のつぶやきを聞いてまだ死んでいないのに短期アルバイト雇うために連れて来たと言った。
 玉山は納得できず、現世に帰りたいと思っていたところに、本屋の客の翔子(竹内結子)が持ってきた本を朗読する仕事を原田から命ぜられる。
 一方現世では、翔子の姪の香夏子(竹内結子)が母の十三回忌を迎え、居酒屋で桜井センリと吉田日出子から夏の花火大会での、恋する者同士が見ると結ばれる「恋する花火」の思い出話を聞き、12年前から中止になった花火大会を青年会で復活させようとしていた。
 翔子が忘れていった本を玉山が家まで届けに行って、玉山は本の落書きの楽譜から、彼女が玉山が子供の頃に憧れていてピアニストで、昔彼女がその曲を弾いたのを聞いていて、それがきっかけで玉山もピアニストになったことを告白したが、翔子は態度がかたくなで、天国に来てからはピアノを弾いていないと語った。
 香夏子と大倉孝二が花火師の塩見三省のところを訪ねると、恋する花火は香川照之だけが作れる花火だったが、彼は10年前の暴発事故以来花火を作るのをやめてしまっていて、香夏子たちが今ではカエルの養殖をしている香川を訪ねて行って、彼女が名乗ったのを聞いて驚いたが、相手にしなかった。
 玉山は翔子の家で彼女の曲を演奏していた時に、彼女が花火の暴発事故で片方の耳が聞こえなくなって、その後まもなく入院して死んでしまったことを話した。
 一方、本屋の先輩店員の香里奈は、彼女に好意を持っている新井浩文に、弟から目を離したすきに交通事故で失ってしまい、自殺しようとしたところ、玉山と同様に生きたまま原田に連れてこられたことを告白した。
 翔子は塩見の妻の根岸季衣から、叔母の翔子が付き合っていた香川の起こした事故で耳が聞こえなくなったことを知り、香川に会いに行って、翔子が事故の後も彼の花火を楽しみに待っていたのだから、花火をやめたのは間違っていると主張したが、香川は聞き入れなかった。
 後日、香夏子は夜に香川を訪ねて、飲んだくれた香川と怒鳴りあって、翔子が香川に、結婚のとりやめと花火をやめて責任を取るように言ったことを聞かされた。
 香里奈は弟と再会できて、心の重荷が取れて現世に帰って行き、玉山は翔子の未完の曲の完成のためにピアノを演奏したが、彼がじきに現世に帰ることを聞いて翔子はうろたえた。
 玉山が現世に帰るとき、見送りに来た翔子とお礼を言い合って別れ、玉山は花火大会の真っ最中の会場で目覚め、香川はついに現れないまま大会は終了したとき、恋する花火が打ち上げられ、それを天国の本屋で見ていた翔子が、本屋にあった蓋の開かないピアノの蓋が開いたので、それで演奏を始めて本屋には人々が集まり、同時に玉山も、原田と新井が用意したピアノで現世で演奏を始め、香夏子が打ち上げ場所に駆けつけると、そこでは香川が1人で恋する花火を打ち上げていた。
 香夏子は玉山のところに駆け寄り、叔母の未完の曲「永遠」を彼が弾いていたことと、玉山は翔子と瓜二つの香夏子を見てお互いに驚くが、そこに恋する花火が上がって、翔子は恋の予感を感じるのだった。
沈黙の要塞 監督:スティーブン・セガール 1994 米 2005/08/21(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、社会派系 2005/09/25
ストーリー 感想
 アラスカの石油採掘所が火災に遭い、油田消火人のスティーブン・セガールと石油会社の社長のマイケル・ケインが到着し、社長は現場作業員のミスだと言い放つのに対し、セガールは現場監督の言う通り噴出防止装置の欠陥でひび割れていたことを確認したが、消火のため採掘装置を爆破したため、証拠は無かった。
 社長は13日以内に完成させないと採掘権がイヌイットに戻ってしまう最大規模の新しい油田をなんとしても完成させるために、その欠陥部品で間に合わせて、突貫工事を行なっていた。
 セガールが欠陥部品のことで社長を非難したため、社長はセガールに油田事故の現場に連れて行くと、そこには環境団体に情報をリークした現場監督が、その手帳のありかを吐かせるために社長の手下の拷問を受け殺された死体があり、セガールもろとも爆破して、社長は2人の内部の人間による破壊工作だったと発表した。
 しかし、セガールは間一髪で脱出していて、傷ついて転がり込んだイヌイットの村のジョアン・チェンらに助けられ、一方、社長も死体が無いことからセガールの捜索を続けていた。
 セガールはイヌイットによって、大地を汚す白人と戦う瞑想を受け、彼の留守中に村に捜索のヘリが現れ祈祷師の老人を射殺したので、セガールとチャンは戦うために村を出て、現場監督の家から手帳を探し出し、油田の破壊を目指すことにし、追っ手の傭兵たちを振り切って目的地に到着し、施設を次々と破壊していき、仲間が逃げる中、唯一石油を掘り出して採掘権を守ろうとした社長も殺して施設を破壊しつくす。
 後日、セガールは政府と石油会社が石油の利益を追うがために、排気ガスや流出による海洋汚染などで健康が蝕まれているので、燃料電池などのクリーンなエネルギーを推進すべきとの内容の演説をするのだった。
男はつらいよ 奮闘篇 監督:山田洋次 1971 日(松竹) 2005/08/21(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 関西から寅さんの産みの母のミヤコ蝶々が寅さんに会いにとらやに来て、帝国ホテルにしばらく泊まっていると言い残して発ったのと入れ違いに寅さんが帰ってくるが、彼は自分を捨てて出て行った母親に会おうとしなかったので、おいちゃんたちと怒鳴りあいになって寅さんはさくらと博と共にしぶしぶホテルに会いに行った。
 寅さんがいい年してふらふらしてることを責めたことで母と寅さんが口喧嘩になって、寅さんはいい嫁さんを見つけて来ると言って飛び出し、そのまま沼津に行くと、そこで青森県鯵ヶ沢町から出て来て勤めていたバーから逃げて来た榊原るみと知り合い、彼女が知能が遅れていると思った寅さんは、いざというときのためのとらやの住所のメモを渡して、青森に帰すために東京行きの汽車に一人で乗せた。
 すると、榊原がとらやに現れ、まもなく寅さんも結局心配してとらやに帰って来て、寅さんの提案で青森に帰す代わりに、柴又で働かせて皆で見守ることにするが、榊原に近づく男を寅さんが片っ端から追っ払うので、結局どんな仕事もすぐに辞めることになった。
 榊原に「寅さんの嫁になりたい。」と言われた寅さんはその気になって浮かれるが、他の人々は彼女を青森に帰した方がいいんじゃないかと思うようになった。
 そこに、榊原の恩師の田中邦衛がとらやに現れ、榊原を連れて青森に帰り、その日の夕方、仕事から帰って来た寅さんが事態を知って、自分が榊原にふさわしくない人間だと感じてとらやを飛び出し、後日、「榊原に会った。自分は用のない人間だ。」という遺書のような速達のハガキがとらやに届いたので、さくらは寅さんを探しに邦衛の働いている鯵ヶ沢の小学校に行く。
 そこでは榊原が働いていて、邦衛から寅さんは榊原が元気なのを見て喜び、一泊して弘前に向って発ったことを聞かされ、さくらが弘前行きのバスに乗ると、途中の嶽温泉で寅さんが乗り込んできて、2人は再会を喜ぶのだった。
 今回も、おいちゃんが「あのバカ、こんな風に帰って来るぞ。」と言っているところに寅さんが帰ってきてビックリしたり、ミヤコ蝶々が苦労話をしているときに寅さんがホテルのベッドで遊んだりと、細かいところで色々と笑わせてくれる。
 同情と愛情の区別がつかない寅さんらしさもいい。
 津軽の素人が多数出演していて、演技の自然さでプロの俳優を圧倒、ていうか、本当に演技のリアリティを追求すると、津軽弁の関係で地元民に演じさせるのが断然ベストってことなのだが。
めぐりあい 監督:恩地日出夫 1968 日(東宝) カラー 1:2.35 2005/08/20(土)
2014/04/27(日)
HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/09/25 作成
2014/04/28 更新
ストーリー 感想
 川崎の自動車工場の組立工の黒沢年男は、路上でぶつかったことで、ベアリングの問屋で働く酒井和歌子と知り合う。
 黒沢は、大学に行きたかったのだが家計を支えるために就職し、進学を目指す弟をうらやみつつ助けてやりたいと思っていた
 酒井は、母の森光子と弟との3人暮らしで、母が死んだ夫の弟の有島一郎と再婚することを快く思っていなかった。
 黒沢は、電車の中で会社のマドンナの進千賀子が恋人の田村亮と一緒のところ酔っ払いたちに絡まれていたのを見て彼女を助け、進は田村と別れて黒沢とバーに行くが、結局彼女は大学出の田村と結婚すると言って、工員の立場を思い知る。
 黒沢は自分の誕生日に自動車整備工の友人から客のダンプカーを借りて酒井と海へ行って泳ぎ、酒井は母の再婚話をするうち、黒沢の体に男を感じて、帰りは雨の中をダンプの荷台に乗って意地を張り合ったが、やがて二人は唇を重ね合った。
 酒井が家に帰ると、有島のところに墓参りに行っていた母がバスの事故で亡くなったとの知らせが入り、かけつけた酒井は有島から母が再婚を断ったことを聞かされ、酒井の弟は叔父さんと住み、酒井は一人で寮のある職場に移ることにした。
 黒沢の方は、定年を延ばしてもらっていた父がクビになり、大学に行けなくなった弟と黒沢が喧嘩になって、黒沢は家を飛び出して友人のところに居候する。
 翌日の夕方、待ち合わせ場所の駅に酒井が現れなかったため、黒沢はますますむしゃくしゃして意地を張って酒井を避けるようになり、酒井は自分が横浜ドリームランドで働いているとだけ教えて、彼の方から自分に会う気になるのを待つことにした。
 黒沢は家に帰って、父の再就職は決まってなかったが、弟は働いてお金を貯めてから大学へ行くことにし、ドリームランドに行って酒井と再会して二人は微笑みあうのだった。
 今の青春映画と比べると、演出も映像も小細工が少ない代わりに、役者の表情が豊かで活き活きと動き回り、そんな姿を長回しなどの武骨な手法で撮ったりしているこっちの方が好感が持てる。
 時代の違いはあるので単純に今と比較できないとは思うが、少なくとも当時の観客にとって意味のある作品を真剣に作ろうとしていることは感じられる。
 黒沢年男もエモーショナルでいいけど、酒井和歌子にとっては記念碑的な作品ということになるのだろう。
風と樹と空と 監督:松尾昭典 原作:石坂洋次郎 1964 日(日活) カラー 1:2.35 2005/08/18(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 18歳の吉永小百合は、津軽から集団就職で東京の社長の家のお手伝いの仕事に就き、上野駅に迎えに来た川地民夫は彼女に美人だと言って気に入り、彼の妹の槙杏子はどっちが美人かで良きライバルになる宣言をし、他の家族も小百合の明るさを気に入り、彼女目当てに家に来る御用聞きまで現れた。
 小百合は川地にちょっと惹かれたが、母親の「奉公先で結ばれてできちゃった結婚した自分に似てお前は惚れっぽいから気をつけろ。」の言葉を思い出して自制した。
 上京して最初の日曜日に、一緒に出て来た仲間たちの浜田光夫、安田道代、和田浩治、平山こはるらと会って、皆の少し変わった姿に、それぞれ進む道が違うことを感じられた。
 ある日、川地は十朱幸代の入院先のお見舞いに小百合を同行させ、十朱がかつて結婚の約束をした川地に、体が弱くて結婚できないから友達までの関係でいようと語り、それを聞いた小百合は泣き出してしまう。
 その影響は、小百合がかつて気があった和田が、彼のアパートで開いた平山との結婚式まで及んで、小百合はべろべろに酔っぱらって、浜田に連れられて新宿でホステスになって式に出席しなかった安田の部屋に泊めてもらう。
 小百合が社長の妻の加藤治子の付き添いで来たデパートで、家出して来た妹の田代みどりを連れてきた浜田と会い、以前から小百合に好意を感じていた浜田が小百合に告白するが、同時に妹と一緒に田舎に帰ることも打ち明け、友達としてこれからも小百合につき合うと言った。
 浜田の帰郷の日、小百合は見送りに行かないつもりだったが、結局彼女が上野に着いたときには列車は駅を出た後で、浜田は見送りのいない中帰って行った。
 小百合はホームで途方にくれるが、後日、御用聞きに誘われた野球の試合で明るく審判を務める小百合の姿があった。
運が良けりゃ 監督:山田洋次 脚本:山内久&山田洋次 1966 日(松竹) カラー 1:2.35 2005/08/16(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 飢饉で江戸の人々の生活が苦しかった頃、熊さん(ハナ肇)と八っつあん(犬塚弘)たち長屋の店子仲間は、女郎相手に一晩どんちゃん騒ぎをした後、財布がないからと言って番頭(藤田まこと)を家まで同行させて、途中で川に落として逃げて食い逃げに成功する。
 熊たちの長屋の大家は、女郎遊びはするくせに家賃を入れないと、店子に文句を言うする日々だった、
 熊の妹のおせい(倍賞千恵子)は、長屋のそばを通りかかった大名(安田伸)に見初められて、彼女を側室に迎える話が持ち上がったが、彼女は長屋に出入りしていた肥くみの息子に一目ぼれしていて、熊さんが大名の使いに接待された際に傍若無人な態度をとったことで上手い具合に破談になった。
 長屋の持ち主の近江屋が家賃の値上げを申し出、家賃を取れない大家がクビにされそうになったので、店子たちは全員でサンマを焼いて近江屋を煙だらけにして嫌がらせをしたところ、火消しが出動して長屋が取り壊されそうになり、首謀者の熊が牢に入れられる。
 おせいの隣に住んでいる病人で金貸しのおかん(武智豊子)は、死を感じておせいに餅を買いに行かせ、貯め込んだお金を密かに餅に入れて飲み込んで死んだのをおせいが壁の穴から見てしまう。
 近江屋は病人のおかんがいなくなったことで、店賃が入らない長屋をつぶして厩(うまや)にすることにし、それを聞いた出所した熊は、おかんの亡骸を始末する金がないので、近江屋に運んで死人にかっぽれを躍らせてから、焼き場に運んで勝手に焼き、焼け残ったお金を取り出す。
 おせいの婚礼の日だというのに、熊は博打に行ってしまって、式が始まってやっと熊が身ぐるみはがされて帰って来たが、そんな兄をおせいは笑顔で迎えるのだった。
 熊さん八っつあんの役名で判るように、複数の落語のようなエピソードからなる映画。
 一番の見どころは、白塗りで死体の役を演じた武智豊子が、ハナ肇に操られて死んだままでかっぽれを踊るシーン。
 何しろ彼女は素が死人のような顔だから、ぴったり過ぎて怖くて可笑しい。
 焼き場の番をしている男の役で渥美清が出ている。
男はつらいよ 純情篇 監督:山田洋次 1971 日(松竹) 2005/08/13(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/09/27
ストーリー 感想
 柴又を取り上げたテレビ番組にとらややさくらが映ったのを、九州に行こうとしていた寅さんが山口で観ていて、とらやに電話をかけてきた。
 寅さんは、長崎から五島列島に向う船が欠航になったところに、甲斐性無しの夫から赤子を抱えて逃げて来て、お金も持たずに実家のある五島に向おうとしていた宮本信子と知り合い、一緒に長崎の宿に泊めてやって、翌朝、駆け落ち同然で島を出た彼女が3年ぶりに帰るのに二の足を踏んでいたので、彼女の実家までついて行く。
 再会した一人暮らしの父親の森繁久彌は宮本に、いつ死ぬかわからない親を頼らずに、駆け落ちまでして愛した男を何とかすることを考えろと言い、これを聞いた寅さんが、自分も柴又を当てにしているからいつまでたっても堅気になれないと反省したとたん、柴又に帰りたくなって帰ると、とらやの2階の寅さんの部屋は人に貸していたと聞かされて直ぐに出て行こうとしたのだが、下宿人が若尾文子だと知ってあっさりと出て行くのを取りやめる。
 そこに博がタコ社長の工場を辞めて独立するという話が持ち上がり、寅さんは独立してアパート暮らしから抜け出したいと言う博と、博に辞められたら工場が潰れるというタコ社長の両方に相手を説得して欲しいと頼まれ、両方に話はついたと言ってしまったために、打ち上げパーティは大混乱になりかけたところ、博の父の退職金が足りないとの知らせを読んだ博が独立を撤回することで納まった。
 若尾がとらやに下宿して来たのは、小説家として挫折して居候生活をして夫が嫌になったからで、彼女はそれまでの自分の周囲の人とは違う寅さんたちの人間らしい生活が気に入り、寅さんと2人で散歩したりしたが、決して寅さんに気があるわけではなく、とらやに夫が訪ねて来て、彼の願いを聞き入れ夫のところに帰って行き、失恋した寅さんはその夜柴又をあとにする。
 年が明けて、正月に宮本夫婦がとらやを訪ねてきて、森繁に電話をすると、彼女の明るい声に森繁は涙を流した。
 家族、故郷、会社といったベースなるところにとどまって生きるか、そこから抜け出して別の人生を歩むかという選択が、宮本信子、寅さん、博、若尾文子らのエピソードによって語られるという物語が良く出来ている反面、寅さんやおいちゃんなどの面白いリアクションやくだらないやり取りが後退してきたのは残念。
新・男はつらいよ 監督:小林俊一 1970 日(松竹) 2005/08/12(金) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/09/27
感想
 後半はいつも通りのマドンナがらみのエピソードなのだが、それとは無関係に、前半が寅さんとおいちゃん夫婦がハワイ旅行にいった振りをしてとらやで息を潜めていて、そこに空き巣の財津一郎が絡んでどたばたが繰り広げられるという、シリーズの中でも異色の作品。
 おいちゃんが語る婦系図を寅さんが大きなリアクションで聞くと言った面白いシーンもあり、渥美清、森川信、財津一郎らのやり取りの面白さを堪能できる。
シャンハイ・ナイト 2003 米 2005/08/11(木) HDDレコーダー(WOWOW) ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 義和団が皇帝の龍玉を盗み出し、番人の老人は殺される間際に、彼の娘リン(ファン・ウォン)に龍玉を取り戻すように言う。
 彼女の兄のジョン・ウェイン(ジャッキー・チェン)はアメリカ西部で賞金稼ぎをやっていたが、妹からの知らせを聞いて、彼女が犯人を追ったロンドンに向うために、かつての相棒のロイ(オーウェン・ウィルソン)に預けたお金を受け取りに彼がいるニューヨークへ行く。
 しかし、ロイはお金を持ってなかったが、2人はロンドンに行き、到着早々スリの少年に時計を盗まれたのをきっかけにチンピラの一団と乱闘になってジョンは彼らを倒し、警察に感謝されて署に行くと、そこには龍玉を追ってイギリス皇室のラズボーン卿の屋敷に忍び込んで殺そうとした罪で捕まっていたリンと再会した。
 ジョンとロイがスリの少年のアイディアで、変装してラズボーンの屋敷のパーティにもぐりこむと、そこには西太后の腹違いの息子のロイ・チョウ(ドニー・イェン)もいて、王位に就けない王子同士が王位につくために手を結んで皇帝の証の龍玉を盗んだのだった。
 2人は見つかって乱闘になり、そこにリンとスリの少年も現れ、龍玉は少年が持ち去り、あとの3人も逃げ延びるがまもなく捕まり、リンは王位継承者上位の者たちの殺人犯人に仕立てられるために連れて行かれ、ジョンとロイも龍玉の在りかを吐かせるための拷問を受ける。
 しかし2人は逃げ出し、少年の残した帽子についた蝋から蝋人形館に行くと、確かに少年はいたが、龍玉は義和団の手に渡った。
 皇室の暗殺の現場が、ヴィクトリア女王即位50周年の花火大会の会場だと感づいてそこに行き、リンを救出して機関銃を女王たちに向けて撃ったウーを格闘の末倒し、ビッグ・ベンに逃げたラスボーンとも戦って倒し、龍玉は手元に戻って彼らは女王から称号を受けるのだった。
でっかいでっかい野郎 1969 日(松竹) 2005/08/10(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 三池炭鉱から来て、父の遺言で遺骨を故郷の北九州の若松の海が見える墓地に埋めようとしたが墓がないので勝手に遺灰をばら撒いた渥美清は、保護司もしている病院の院長の長門裕之を訪ねて浮浪者のような格好で病院に現れたので人騒動。
 長門は彼に湾のゴミ掃除の仕事を紹介し、自分で埋立地に家を建てて住むようになったが、海に落ちた拍子にフグをつかみ取って、同僚たちと料理して食べたら毒に当たって長門の病院に全員入院。
 しかし、態度が悪くて全員病院を追い出される。
 ある夜、病院のボイラーマン(佐藤蛾次郎)が副業で外国船の船員相手のパンパンの若松ローズ(香山美子)のポン引きをして、病院のベッドに客を連れ込んだところ、そこで勝手に寝ていた渥美ともめて取っ組み合いになり、その外人船員が密輸犯だったことから、新聞沙汰になって取材に来た週刊誌の記者(財津一郎)が、ちょうど院長が道楽で買った無法松の人力車を彼に引かせて、現代の無法松だとおだてたことから、その気になって無法松を目指して祇園太鼓を習ったり、長門の妻で女医の岩下志麻を乗せたりしていたが、渥美に気があるローズのやきもちで岩下に当たったために、結局渥美と同様に長門の世話になっている伴淳三郎の孫娘の中川加奈の送り迎えを無理矢理することになり、純愛の松五郎にならって、彼も中川に思いを寄せるようになる。
 しかし、中川がバイトでホステスをしているグラブに渥美を連れて行って驚かせたり、ある日彼女を迎えに行った渥美は、彼女が恋人の大野しげひさと一緒にいるところを目にしてしまう。
 伴淳が健康診断でカッケであることがわかり、社長の加藤嘉の自宅に呼ばれたので、定年を既に一年過ぎていた伴淳がクビにされると思って憤慨した渥美もついて行くと、会社の経営が苦しいので人件費を抑えるために従業員を若返らせるには、まず社長の自分が辞めるということだと判り、伴淳はそれなら自分が辞めると言ってしまう。
 彼が退職金200万円をもらって家に帰ると、中川が大野を連れてきて結婚して大阪に行くから約束の退職金の半分をくれと言い、伴淳はバンドマンの大野との結婚に反対して、中川はお金をもらわずに出て行ってしまう。
 渥美が中川のために一肌脱いで、夜に伴淳の寝込みを襲って退職金の半分の100万円を強奪して中川に渡し、そのお金は大野の借金の返済に消えてしまう。
 伴淳が警察に通報して渥美が犯人だとわかって警察署に連行されるが、伴淳が届けを取り下げて釈放され、渥美は禁酒をしようと神社にお払に行くが、お神酒をおかわりしてしまうのだった。
続 男はつらいよ 監督:山田洋次 1969 日(松竹) カラー 1:2.35 2005/08/10(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/10/03
感想
 シリーズ2作目にして、ストーリーが早くもシリーズおなじみのマンネリパターンになっているのだが、それでも森川信のおいちゃんが寅さんに負けず劣らず面白く、つまらない原因で大喧嘩をするこの2人のバカ親戚ぶりは、後年のシリーズでは見られない一代目おいちゃんの頃の醍醐味と言える。
フォー・ルームス (原題:Four Rooms) 監督&脚本: (第1話)アリソン・アンダース (第2話)アレクサンダー・ロックウェル (第3話)ロバート・ロドリゲス (第4話)クエンティン・タランティーノ 1995 米 カラー 1:1.85 2005/08/08(月) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 大晦日のホテルで、ちょっと頭の弱いベルボーイ(ティム・ロス)が体験した話。
<ハネムーンスイート お客様は魔女> 採点:★
 6人の魔女がホテルの一室に集まり、昔石にされた魔女を復活させようとしていたが、その魔術に必要な精液がなかったために、その部屋に届け物に来たベルボーイに1人の魔女が迫り、魔術で骨抜きにして目的が達せられ、魔女が復活する。
<404号室 間違えられた男> 採点:★
 ベルボーイが氷を届けると、間違って銃を持った夫が妻(ジェニファー・ビールス)を縛っている部屋に入り、夫に間男だと間違えられ、ベルボーイは必死に言い訳をすると、夫は理解して彼にキスをした途端に心臓発作で倒れる。
 でも、それは夫が妻の愛を試すための芝居だったのだが、妻が反撃してベルボーイと浮気したと嘘を言い出だして夫はうろたえる。
<309号室 かわいい無法者> 採点:★☆
 バンデラスが妻(タムリン・トミタ)と子供2人とパーティに出席しようと身支度していたが、結局子供は部屋に置いていくことにし、ベルボーイに子供の様子を定期的に見に来ることを頼む。
 部屋の中のものでイタズラする子供たちは、ベッドの中に女の死体があることをみつけ、フロントのベルボーイに電話すると、ちょうど倒れた妻を抱えたバンデラスが帰って来て、ベルボーイが慌てて部屋の様子を見に行くと、こぼした酒にタバコの火が引火して火事になった部屋に死体があって、それをバンデラスに見られてしまう。
<ペントハウス ハリウッドから来た男> 採点:★
 いろんなことが起こり過ぎて仕事を辞めようとベルボーイが思ったところに、最後の仕事としてペントハウスのお得意様に届け物をしに行くことになる。
 そこにはハリウッドの映画人のタランティーノがいて、彼は「ヒッチコック劇場」の「リオから来た男」そのままに、彼の車を賭けて客の男にライターを10回連続で点火させることをさせ、失敗したときに指を客の指を切る役をベルボーイに頼み、最初は断ったものの大金に惹かれて引き受けることになり、1回目に失敗したので、即座に指を切って金を手にしてさっさと帰って行った。
 どうでもいい話ばかりだなぁ。
 かろうじて面白かったのは、3話目のオチぐらい。
 それ以外のやたら多い台詞など、時間と台本のページの全くの無駄。
MUSA 武士 (原題:Musa) 監督:キム・ソンス 2001 韓国 カラー 1:2.35 2005/08/08(月) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、ドラマ系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 14世紀後半。元が中国を追い払われ、後に建国された明と高麗の関係が悪化し、高麗から明に派遣された使者団が到着早々捕らえられ、護衛の将軍以下全員が流刑地に向って砂漠を護送されているところ、モンゴルの一団が襲いかかって明の人間を皆殺しにし、高麗人たちはその場においていかれ、彼らは砂漠を通って高麗に向うことにする。
 砂漠の中の村で高麗に帰る僧と出会ったとき、モンゴルの一団が明の姫のチャン・ツーイーを連れていたので、副使亡き後隊を率いる将軍は姫を奪って南京に連れて行くことで交渉しようとする。
 命を助けて逃がしたモンゴルの隊長が隊を引き連れて姫を追ってきて黄河を超えられなくなり、明を目指す漢民族の一団も同行することになって、一行で砦を目指すがそこは廃墟で、蒙古軍が迫ったので、姫の引渡しを拒否し砦に篭城することになる。
 攻め込まれて追い詰められるうちに、姫を引き渡すべきだという声があがるようになる中、ついに蒙古軍が砦の門を破って攻め込むが、蒙古軍を倒し、姫をはじめわずかに生き残った漢の人々と別れて、唯一生き残った高麗人のアン・ソンギは高麗に向けて粗末な船を出すのだった。
 アクションは短いカットのアップの映像の連続という「目くらましアクション」で、斬ったり斬られたり血が飛んだりワーワー叫んだり、人が斬られたりするところはスローにするという解かり易い例の調子の感傷演出だったり、若い男たちは今風のロン毛でやたら上目使いで見栄を切ったり、チャン・ツーイーは美白メイクでスローで撮ったりして綺麗だな、というような映画。
 一言で言えば、長〜い(133分)感傷アクション。
子熊物語 (原題:The Bear) 監督:ジャン=ジャック・アノー 1988 仏 カラー 1:1.66 2005/08/05(金) HDDレコーダー(フジ) ドラマ系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 小熊とその親の2頭が崖の下の蜂の巣を食べているとき、崖が崩れて親熊が死んでしまう。
 一方、別の大人の熊が2人のハンターに肩を撃たれて、逆に彼らの馬を襲って逃げ、親を亡くした子熊と出合って2頭で行動する。
 2人のハンターは2頭を追い詰め、子熊が2人に生け捕りにされミルクを与えられ、やがてロープを切って逃げていく。
 2人のハンターのうち、若いトム(チェッキー・カリョ)は最初は復讐に燃えていたが、その気持ちも薄らいだ頃、崖で大人の熊に襲われるが、ギリギリ熊が手を出せないところにいたおかげで助かり、熊が去っていくときに銃で撃つのをやめ、子熊にも別れを告げて2人は下山する。
 子熊は、1頭でいるところにピューマに襲われ、追い詰められて川に落ちて流され、川岸で待つピューマにあわやというところで大人の熊が現れピューマは逃げ去り、やがて山は雪景色に包まれた。
舞姫 監督:篠田正浩 原作:森鴎外 2005/08/04(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 1885年、陸軍軍医の太田豊太郎(郷ひろみ)は、国の期待を背負って奨学金を得てドイツに医学を学びに来たが、踊り子のエリス(リサ・ウォルフ)と出会い、父の葬式を出すお金も無い彼女のために時計を質に入れてお金を作ったりして、次第に彼女に夢中になって、勉学からは気持ちが離れていった。
 そんな彼に、ドイツ在住の軍の上官や同じドイツで勉強している日本人の態度が厳しくなり、約1年たった頃についに帰国を命ぜられたが、彼は免官してドイツに残り、エリスと母の2人住まいの家に同居することになった。
 彼は、マルクス主義者のドイツ人に新聞への記事を書く仕事を紹介してもらいながらコッホ博士に学ぶことを続けようとするが、結局家計はエリスが支えていた。
 そうしているうちにエリスが妊娠し、豊太郎の友人で、ヨーロッパ視察に来た大臣(山崎努)に随行した相沢(益岡徹)と再会し、豊太郎の母(加藤治子)が自害しようとしていたところに彼が駆けつけたことを聞かされた。
 豊太郎は大臣に翻訳の仕事を頼んで、ルール工業地帯への視察に随行させ、ベルリンに戻ったときに豊太郎に日本に来て側で意見を言って欲しいと持ちかけ、豊太郎はつい承諾してしまい、家に帰った豊太郎は熱を出して寝込んでしまう。
 訪ねて来た相沢は、状況を把握して、エリスに豊太郎が日本に帰ることを話し、豊太郎に騙されたと思ったエリスは階段から転げ落ちて流産してしまう。
 3日目に目覚めた豊太郎は、相沢から流産のことを聞き、翌日彼に連れられて近所の人々の冷たい視線を浴びながらエリスの家を後にし、入れ違いに退院してきたエリスは、豊太郎の名を叫びながら馬車を追いかけ、3年ぶりに日本に帰る豊太郎を乗せた船が日本に着いた。
キートンのゴルフ狂の夢 (原題:Convict 13) 監督&脚本:バスター・キートン、エディ・クライン 1920 米 モノクロ 1:1.33 サイレント 2005/08/04(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) 感覚系、ドラマ系 ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 キートンが恋人のシビル・シーリーと共にゴルフをするが、彼はまともにゴルフができず、打った玉が近くの木に当たって跳ね返って自分に当たって気絶すると、そのすきに通りかかった脱獄囚がキートンと服と取り替える。
 囚人に間違えられたキートンは看守たちに追われるうちに間違って刑務所に逃げ込んでしまうと、そこにシビルがいて彼女の父の刑務所長に囚人じゃないと言うが、父はそれを聞かずにキートンが間違えられた脱獄囚の絞首刑を予定通り直ちに執行しようとする。
 シビルが死刑台のロープを刑務所のジムにあったトレーニング用のゴム紐にすり替えたおかげでキートンは死なずに済んで、キートンが1人で労働しているときに見張りを倒して、彼の服を着て看守になりすます。
 その時、1人の荒くれ者の囚人が集団脱走を企て、看守の格好をしたキートンが囚人たちを鎮圧して喝采を浴びた…、といったところで、ゴルフボールで気絶していたキートンが目を覚ました。
キートンの文化生活一週間 2005/08/04(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 キートンがシビル・シーリーと結婚して、おじさんから結婚祝いで土地と家のキットをもらい、さっそくキートン組み立て始めたときに、シビルに横恋慕している男が部品の番号を書き換えたために、平行四辺形の変な形の家が出来上がった。 
名探偵登場 2005/08/04(水) ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 トゥエインという謎の人物が、「食事と殺人」という招待状で世界の名探偵たちを邸宅に呼び寄せた。
拝啓天皇陛下様 2005/08/03(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 長門裕之は岡山の陸軍の部隊に入隊したが、ちょっと変わって訓練もままならない渥美清と一緒だった。
 五・一五事件の前の年、農村の貧窮を憂える将校が蜂起の志願者を募って、2人はつまずいた拍子に志願したことになったが、しばらくしてその将校はいなくなってこの件はそれっきりだった。
 彼ら初年兵をいじめた二年兵の西村晃が退役する前に復讐しようと渥美は考えたが、彼に優しくされて意欲を失い、相撲をとって取っ組み合っているように見せかけた。
 2人は二年兵になったが、文字が読めない渥美が中隊長の加藤嘉の命令で代用教員をしていた初年兵の藤山寛美から文字を教わることになって、どっちが上の立場かでちょっともめる。
 訓練を天皇が視察することになり、当時は一般市民は彼の顔を写真でも見たことがないのが当たり前だったので、渥美は目の前を通り過ぎた馬上の彼をしばし見ていた。
 2人は除隊して、前科者の渥美は中隊長の紹介で果樹園で働くことになったが、軍需で景気が良くなって長門の仕事が追いつかなくなり、さらに支那事変が起こって2人とも岡山の部隊に召集される。
 日本軍は南京を陥落させ、これでもうすぐ戦争が終わると思った渥美は、大勢の兵隊たちが除隊したら働き先がないので、自分だけ軍隊に残してもらおうと天皇に手紙を書くが、長門が天皇に直接モノを言うのは罪になると言って止め、実際に戦争は終わらず、昭和13年に彼らの部隊も中国北部に行くことになった。
 三年後、長門は長年の夢だった小説家になることができ、九州で渥美と再会して、渥美は何度も負傷したにもかかわらず早く軍隊に戻っていい食べ物を食べたいと言った。
 昭和19年、長門は従軍作家として大陸にいて、渥美も大陸で終戦を迎え、昭和22年土浦に帰った長門は小説の仕事が無くなり、妻がヤミ屋で働いていたところに渥美が訪ねて来て、敗戦を知ったときの悔しさや、内地の人間が敗戦どこ吹く風で食べ物の奪い合いをしていることを嘆いたりしたが、渥美がニワトリを盗んできたことを長門が怒ったことで喧嘩になり、渥美は去って行った。
 長門はやっと小説が書けるようになり、渥美は月に一度奥日光の開拓村から長門の所に来て近所の人のために力仕事をして、中国にいた小隊長の夫が死んだ未亡人が好きになり、勝手に結婚する気になって華厳の滝の自殺者の遺体を片付ける仕事に変えてまで結婚資金を貯めていたが、未亡人はお高くとまって渥美は相手にされなかった。
 昭和25年、立川基地のそばに引っ越した長門夫妻のところに渥美が婚約者の中村メイ子を連れて現れたが、しばらくして長門は渥美が酔って車にひき殺された新聞記事を見る。
 渥美清演じる主人公は、素直な気持ちで天皇に好意を持って、そのままの気持ちで軍人になって、「軍人は死ぬときには『天皇陛下万歳』と言わければならない」と力説するようになり、戦後も天皇を愛する気持ちは変わらないといった、無垢で憎めない男で、そんな男は結局世の中に押し流されてしまう姿に悲しさを感じる。
くたばれ!ハリウッド 2002 米 カラー 1:1.85 2005/08/02(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドキュメンタリー ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 ロバート・エヴァンズは、かつては子役で、成長して兄と共同で洋服メーカーを営んでいたが、本拠地のニューヨークからロサンゼルスに出展するためにビバリーヒルズのホテルのプールにいたときに、女優のノーマ・シアラーにスカウトされ『千の顔を持つ男』に出演し、これがきっかけでダリル・F・ザナックにスカウトされ『陽はまた昇る』に出演した。
 順調に見えた俳優業は3作目で終わることになるが、彼はザナックに憧れ、買収されたパラマウントのトップに就任される。
 すぐにクビになるだろうと言われたが、『ローズマリーの赤ちゃん』の監督にハリウッド第1作目の『吸血鬼』を監督したばかりのポランスキーを起用して大成功を収める。
 その後も映画界全体が作品選びに苦慮しているときに、アリ・マッグローが見つけた『ある愛の詩』の原作を映画化することになるが、監督選びに難航するうちに彼はアリと結婚し、撮影が始まった。
 しかし業績悪化で、彼がクビになるのみならず撮影所が閉鎖になる話が取締役会で決まろうとしていたときに、彼は『ある愛の詩』と『ゴッドファーザー』の2つのベストセラーを映画化することをプレゼンしてその場を免れ、『ある愛の詩』をヒットさせ、『ゴッドファーザー』も嫌がるコッポラを起用し、最初の2時間バージョンに1人反対して3時間に延ばして成功させた。
 彼はさらに撮影所長だけではなく映画の製作も始め、『チャイナタウン』はゴールデングローブ賞も受賞し、彼は会社の待遇に不満を感じて独立し、『マラソンマン』『ブラック・サンデー』とヒットを続けるが、この頃からコカインに手を出して逮捕され、麻薬撲滅のCMを製作する判決を受け、復帰後『ゴッドファーザー』のメンバーで作った『コットンクラブ』は失敗する。
 さらに、製作会社のパートナーが殺され、彼は事件に無関係だったにもかかわらずスキャンダルになって映画製作ができなくなり、精神病院に入るまでになる。
 しかし、ジャック・ニコルソンらかつての仲間が手を差し伸べて、長らく離れていたパラマウントで『黄昏のチャイナタウン』から映画製作をすることになって現在に至る。
 ドキュメンタリーとしては、記録映像の羅列をナレーションで説明するという、妙にあっさり作りで、迫るものが無い。
 おまけに、人物の写真を動く背景に合成したりといった編集のせいで、画面がデジタルっぽくなるのも、ドキュメンタリーならではの生っぽさが弱くなる結果になっている。
 エヴァンス本人に対しては、ポランスキー、フランシス・レイ、ニーノ・ロータらヨーロッパの映画人を起用するなど、映画の雰囲気作りを重視した人だということに注目した。
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス 「夢幻百花」 監督:チェン・カイコー 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/08/02(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 北京で、引越し屋のトラックが依頼主の男を乗せて家に行くと、そこは開発で取り壊された後の更地で、引越し屋は男の言うとおり目に見えない家具を車に積み込んで引越し代をもらおうとする。
 1人が見えない花瓶を割ってしまって男は悲しみ、引越し屋が弁償しようとすると、どぶのあったところにタイヤがはまって、そこの土の中から小さな鐘を見つけて依頼主が喜んで鳴らすと、引越し屋たちはかつての古い町の幻を目にした。
 街が新しく作りかえられようとする中で、古いものが永遠に失われようとしているのを惜しいと思う心に訴える映画。以上。
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス 「ゴアVSブッシュ」 監督:スパイク・リー 2002 独=英 パートカラー 1:1.85 2005/08/02(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドキュメンタリー ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 フロリダでの大統領選挙で、投票所が早く閉まったり、数千人の黒人が犯罪者にされ投票できなかったり、ブッシュの弟の州知事の指図でゴアに投票しにくい用紙に変えられたり、全国ネットのニュースでブッシュ勝利と報じられたために投票の再調査がやりずらくなったなどのことを、多くの人が証言する。  ほとんどインタビューだけで構成されているのだが、多くの人の発言が短い時間で次々と切り替わるような軽快な編集は、政治メッセージの映画には合わないと思う。
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス 「トローナからの12マイル」 監督:ヴィム・ヴェンダース 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/08/02(火) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 ★★ 2005/09/25
ストーリー 感想
 荒野の中の町ベローナの診療所に来た男は、そこが休みだったので12マイル先の別の診療所を目指すが、次第に目がかすむ症状が出てきて、幻覚を見ながら車を運転することになる。
 男は空腹のため、クッキーと間違ってドラッグを食べてしまったのだった。
 運転できなくなった彼は、通りがかった車に転がり込んで病院に連れて行ってもらい、目が覚めるとベッドの脇には彼を病院まで車に乗せたケイトがいた。
 幻覚の表現がちょっといい。
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス 「女優のブレイクタイム」 監督:ジム・ジャームッシュ 2002 独=英 モノクロ 1:1.85 2005/08/02(火) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 映画女優が撮影中のしばしの休憩時間に、個室で電話をしたりさまざまなスタッフが入っては出て行ったり、用意された食事に手をつけずに撮影に戻っていった。  モノクロでだるい雰囲気を出しているということか?
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス 「失われた一万年」 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/08/02(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドキュメンタリー ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 ブラジルのアマゾンの開発が進み、1981年に最後の未知の部族が見つかって、政府の部隊が彼らに接触を試み、英国の撮影隊がそれに同行した。
 最初は矢で攻撃されたりしたが、金属を知らない彼らに鍋など与えて接触に成功するも、1年後彼らの大半が風邪や水ぼうそうで死んでしまう。
 20年後、彼らの生き残りで、かつて部隊を最初に攻撃した男に会いに行くと、ゴム園の小屋で結核に苦しんでいて、白人と戦ったり白人女とセックスしたときの様子をこと細かに話した。
 彼の甥は都会でブラジル人として暮そうとしているが、彼の将来は定かでなかった。
 10分だと深く掘り下げられないからか、ドキュメンタリーとしてはちょっと弱い。
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス 「ライフライン」 監督:ヴィクトル・エリセ 2002 独=英 1:1.85 2005/08/02(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 第二次大戦前。赤ん坊とその母が昼寝をしているが、赤ん坊のおなかのところに血がにじんできて泣き出し、母が助けを求めて叫ぶと、近所のおばさんが赤ん坊の腹を縫って助かった。
 かたわらには、ナチスが国境に現れた記事が載っている1940年6月28日の新聞があった。
 新聞の意味は、この少し前にフランスがナチスによって陥落して、その兵がスペインとの国境まで来たということらしい。
 でも、それ以上の意味はわからない。
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス 「結婚は10分で決める」 監督:アキ・カウリスマキ 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/08/02(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/09/25
ストーリー 感想
 線路で寝ていて留置所に入れられた男が、共同経営者に事業を譲って得た金で、石油を掘りに女とシベリアに行って、息の列車の中で結婚しようとした。
 男は走る列車の窓から祖国を眺めた。
 主人公は何かが嫌になってそこから逃げ出したいことが最後にはっきりするが、10分しかないんだから、最初にはっきりさせるべきなのでは?
鏡獅子 監督:小津安二郎 1935 日 モノクロ 1:1.33 2005/08/02(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドキュメンタリー ★☆ 2005/08/02
ストーリー 感想
 六代目尾上菊五郎が「鏡獅子」を演じる舞台を撮影した、海外への文化の紹介のための映画。  歌舞伎のことは良くわからないので、何も言えません。
ひばり捕物帖 かんざし小判 監督:沢島忠 原作:瀬戸口寅雄 1958 日(東映) カラー 1:2.35 2005/08/02(月) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、感覚系 ★★☆ 2005/08/02
ストーリー 感想
 老中の妹でありながら、お七と名乗る町娘に成りすました姫(美空ひばり)が、江戸の美人番付コンテストに参加して合格者が街を籠で練り歩いていると、その中の1人がかんざし一突きで何者かに殺される。
 お七が手下の岡っ引きの五郎八(堺駿二)と事件のことを話しながら川べりを歩いていると、つけて来た乞食を居合わせた浪人の兵馬(東千代之介)が追い払う。
 お七は岡っ引きの親分になって、凶器のかんざしの出所を探ると、同じようにかんざしの出所を探している者がいることを聞いて、それを調べると謎の侍一味に襲われ、そのとき昼間の浪人の兵馬が本職の喧嘩仲裁屋として現れ助けに入る。
 かんざしの持ち主を訪ねると、ちょうどその女を乗せた籠が到着し、女はやはりかんざしで殺されていて、彼女のかんざしが無くなっていた。
 そのかんざしは、まもなく島流しから帰って来る彼女の兄の源次から預かったもだとわかるが、彼が江戸に着くなり待っていたお七たちの前で侍たちにある道場に連れて行かれ、彼が盗んだ3本のかんざしのありかを聞かれ拷問を受ける。
 お七は源次の泥棒仲間で獄門になった男の妹のお菊を訪ねるが、彼女は2年前に夜逃げしていた。
 お七は道場の門弟になって潜入し、座敷郎の源次に接触して妹が死んだことを伝え、お菊が木更津にいることを聞き出すが、お七は捕まってしまい、兵馬が駆けつけ助け出す。
 源次を監禁した一味を率いる松永藩の家老は源次を斬り、手下を木更津に送り、五郎八もその一行を尾行して木更津に行く。
 お七は芸者になって家老に近づき、彼がかんざし2本を持っていることをつきとめる。
 江戸に連れてこられたお菊が、埋蔵金の隠し場所が書かれたかんざしの残り1つを問い詰められ、女役者が持っていると白状して家老たちに斬られようとしたそのとき、幕府の使者として大奥の実力者の尼に成りすましたお七が現れ、侍女になる予定だったとしてお菊を助け出す。
 お七は身代わりに弁慶の役で舞台に立ち、駆けつけた兵馬と共に襲ってきた家老の手下たちと戦い、そこに老中が現れ家老は観念し、老中が姫の目付けとして兵馬を送ったことがわかった。
 ひばりが、町娘、岡っ引き、剣士、芸者、尼、役者、そして姫と七変化を見せ、4、5曲も歌うなど、ひばりの魅力をたっぷりと楽しめる映画になっている。
 歌のシーンの中でも、酒場の中で突然色つきの照明の水車がくるくる回ってムーディーな雰囲気の中、酒でへべれけの東千代之介と踊って歌うシーンが面白い。
 この上さらに、クライマックスで弁慶に扮したひばりが六歩を踏むところと、その芝居小屋目指して疾走する東千代之介のそれぞれがカットバックされるスピード感あふれるカット割が素晴らしい。
 東千代之介も、しょっちゅう「借金返すぞー!」と叫んで喧嘩の場所に急行するハイテンションな演技を見せていい。
東京大空襲 ガラスのうさぎ 監督:橘祐典 原作:高木敏子「ガラスのうさぎ」 1979 日 カラー 1:1.33 2005/07/31(日) HDDレコーダー(東京MXTV) ドラマ系 ★★★ 2005/08/01
ストーリー 感想
 昭和19年。12歳の敏子(蛯名由紀子)の家は両国で軍に指定されたガラス工場を営んでいて、父(長門裕之)は満州などに技術指導に行くようになり、長兄の昭雄(大和田獏)の部隊も出動し、出征間際の西宮の部隊にいた次兄の和雄(佐久田修)のところには、病弱の母(長山藍子)に代わって敏子が小豆と餅を持って会いに行った。
 サイパンが全滅して敏子の学校の生徒も疎開することになり、敏子は二宮へ妹二人と共に縁故疎開することになった。
 しかし、妹たちはホームシックで敏子の手に負えなくなって東京に戻ることになり、まもなく東京大空襲で家族たちとはぐれて父だけが1人で二宮に来て、敏子が父と東京に家族を探しに行ったとき、かつて父が作ったガラス細工の溶けかかったうさぎを土の中から見つけ、空襲当日に母たちと行動を共にしていたふみえ(木村理恵)から、火の海の中ではぐれてしまったという話以外は何も手がかりがなかった。
 敏子は女学校へ入学し、父が仕事で行くことになった新潟で一緒に住むことになり、父と共に二宮駅で汽車を待っていたとき、米軍機の機銃掃射で父が死んで、家族が誰一人いなくなった敏子は海に身を投げようとするが、気を取り直して葬式を挙げてまもなく戦争が終わった。
 敏子は東京に帰り、亀戸の叔父さん(福田豊土)のところに住むが、工場跡にいたとき復員した和雄と再会したが、2人はヤミの仕事をしている叔父から離れ、兄が家を建てるお金を貯めるまで、敏子は郡山のおばさん(三崎千恵子)のところに行く。
 敏子はおばから教わった家事や農作業をするが、おばは自分の娘は学校に行かせながら敏子は働かせっぱなしだったので、家出をして東京に戻ると、工場跡には和雄が事務や薪の運搬で貯めたお金で建てた家があり、そこには昭雄が帰っていた。
 敏子は3人で協力してガラス工場を再建できると思ったが、戦場で人の醜さを知った昭雄は、真面目な和雄と折り合わず、実母である郡山のおばさんの所に1人で出て行った。
 ある日、敏子ガード下で泣きじゃくっている小さな女の子に目を留めると、その子を拾った小学校の同級生で今は靴磨きをしているしげると再会し、お互いに励まし合って敏子はその場を離れるのだった。
 ちなみに、「国際児童年記念企画」の字幕が最初に映される。
 描かれていることは、太平洋戦争前後の軍国教育、配給、疎開、空襲、焼け跡、戦後のドサクサ、ヤミ市などのおなじみのエピソードなのだが、その描き方が今観てもとてもしっかりしている
 例えば、空襲シーンも人々の周囲の町並みを大きく燃やしているし、見渡す限りの焼け跡のセットも大きさが出ているし、ヤミ市のシーンも大道具やエキストラも豪勢で、つまりこの映画では重要ポイントであるその時代のその場の雰囲気のリアリティを出すことに対しては手抜かりが無い。
 あと、それぞれのエピソードに関しても、戦争という非常時に起きたことを、戦争を知らない世代にも解からせることを目的としているようで、ドラマチックに盛り上げるなどといった過剰な演出は一切無い。
 そして、そうした出来事を目の当たりにした人の代表として描かれる主人公の敏子を演じた往年の名子役の蛯名由紀子も、喜怒哀楽をしっかりと表しながら、なおかつ大げさ過ぎない演技で、この映画をしっかりと支えている
 なにより、彼女を見ていて素直に好意や親近感を感じられるのがいい。
 愚直で誠実な映画作りが、25年以上の時を経て、60年前の出来事を描くことがむしろ難かしくなった今となって、ますます輝く映画として残ることになった
10ミニッツ・オールダー イデアの森 「時間の闇の中で」 監督:ジャン=リュック・ゴダール 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/07/30(土) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 ★☆ 2005/07/30
ストーリー 感想
 ホロコーストなどの戦争映像やキリストの磔など、人生や映画など様々なものの最後の瞬間を映し出す。  このオムニバスの他の作品の多くが「ゴダール風」だったとやっと気づいたが、ゴダールの映画は相変わらず訳が解からないながらも、一味違うものが感じられる。でも、これは解からなさ過ぎ。
10ミニッツ・オールダー イデアの森 「星に魅せられて」 監督:マイケル・レッドフォード 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/07/30(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2005/07/30
ストーリー 感想
 80光年の距離を飛んだ宇宙船が地球に帰還し、結果的に2146年にタイムトラベルした。
 乗組員の1人の男がひとけの無い道を歩いてある家に行くと、そこで彼を待っていた老人は彼の息子だった。
 彼は再び宇宙に飛び立ち、ある星に子供の写真を置いていく。
 今更感の強いストーリー。結局、ただの再会モノ。
10ミニッツ・オールダー イデアの森 「啓示されし者」 監督:フォルカー・シュレンドフ 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/07/30(土) HDDレコーダー(WOWOW) 哲学系 2005/07/30
ストーリー 感想
 過去は消え去ったということで存在しないし、未来はまだ来ていないから存在しないが、存在しないということで現在とは違うものとして存在している、といったナレーションと、水辺でくつろぐ人々の映像。  役に立ちそうにないことを考えるために頭を使うことないと思うけど。
10ミニッツ・オールダー イデアの森 「ジャン=リュック・ナンシーとの対話」 監督:クレア・デニス 2002 独=英 モノクロ 1:1.85 2005/07/30(土) HDDレコーダー(WOWOW) 実録系 ★☆ 2005/07/30
ストーリー 感想
 男性(ナンシー?)と若い女性(監督?)が、列車の中で外国人が侵入者として見られること、それを意識しての外国人の同化、世界の均一化について対話する。  コメントなし。
10ミニッツ・オールダー イデアの森 「10分後」 監督:イシュトヴァン・サボー 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/07/30(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2005/07/30
ストーリー 感想
 家で夫の帰りを待つ妻に、パーティ帰りで酔った夫が何故か荒れてもみ合ううちに食卓のナイフで夫を刺して、救急車を呼んで夫は搬送され、妻は警官から尋問を受けるために部屋に連れ戻される。  ほぼ10分間ワンカット(実際には2カット)で、10分間で事態は信じられないくらい変わりました、という話。それで?
10ミニッツ・オールダー イデアの森 「老優の一瞬」 監督:Jiri Mentzel 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/07/30(土) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2005/07/30
ストーリー 感想
 1人の老優がかつての出演映画を回想する。  8ミリっぽい粒子の粗い画質にスローモーション、ショパンのようなゆったりとしたピアノのBGM。今時、どんなヘボ監督だって、こんなイージーな演出はしないと思う。
10ミニッツ・オールダー イデアの森 「時代 x4」 監督:Mike Figgis 2002 独=英 カラー 1:1.85 2005/07/30(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2005/07/30
ストーリー 感想
 ワンカットで撮られた4つの物語が同時進行で4分割のマルチスクリーンで映され、時には同じ時間の同じ場所を複数のカメラで撮られることもある。  全体像がつかみにくいだけ。こういうのは勘弁して欲しい。
10ミニッツ・オールダー イデアの森 「水の寓話」 監督:ベルナルド・ベルトルッチ 2002 独=英 モノクロ 1:1.85 2005/07/30(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/07/30
ストーリー 感想
 集団不法入国で仕事を探しに来たインド人(?)の男が、仲間とはぐれて木陰に座る老人に飲み水をくんで来てくれと頼まれ、バイクが動かなくて困っていた女を見て助けて彼女の店に連れてこられ、そこが目的地のドイツではなくイタリアだということを知り、女と結婚して式の最中に花嫁が破水。
 やがて店は寂れて閉店し、男は妻と2人の子供を乗せて車を走らせるが、事故を起こして男は3人の家族を残して現場から立ち去り、森の中をさまようと、水をくれと頼んだ老人に「朝からずっと待っていた」と言われた。
 最後まで見終わると、オムニバスの最初のこれが結局一番面白かったが、それでも10分強の上映時間なのに、内容的に5分ぐらいにしか思えなかった。
丹下左膳 百万両の壺 監督:津田豊滋 2004 日 1:1.85 2005/07/29(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/07/30
ストーリー 感想
 ある雪の晩に大勢と斬り合いになって右目と右腕を失った丹下左膳(豊川悦司)は、彼を助けたお藤(和久井映見)の矢場の用心棒になった。
 一方、柳生対馬守が家宝のこけざるの壺に百万両のありかが書かれていることを知り、その壺は江戸の司馬道場に婿養子に行った弟の柳生源三郎(野村宏伸)に結婚祝いにあげたので、壺を返せと手紙に書いたところ、源三郎は結婚祝いが汚いつぼ1つだったうえに、今頃になって返せと言ってきたことに腹を立て、妻(麻生久美子)と一緒に返さないで売ってしまおうと話し合った。
 後日、源三郎のところに使者が来て、壺の代わりが百両と聞いて、高すぎる値段を不審に思って使者を問い詰めたところ、百万両の秘密を聞かされたが、壺は既に妻がクズ屋(かつみ、さゆり)に十文で売り払っていて、壺はさらにクズ屋や左膳と同じ長屋に住むちょび安に、金魚蜂の代わりとして与えられていた。
 お藤の矢場で、町人の七兵衛(渡辺裕之)に弓矢で負けた旗本が暴れて左膳に追い出され、帰る七兵衛と左膳が屋台でソバを食べていたところ、先程の旗本の一派に襲われ、ソバ屋の主人が巻き添えで斬られて矢場に運び込むと、彼はちょび安の祖父で、「安を頼む」と言い残して息を引き取ったため、嫌がる左膳とお藤が譲り合いの末、結局お藤のところで引き取ることになる。
 源三郎は広い江戸でクズ屋を探すことになるが、通りかかった矢場から聞こえるお藤の歌と、矢場で働くお久(田中千絵)に引き寄せられ、壺を探し回る振りをして矢場に入り浸って遊ぶようになり、左膳に百万両の壺を探していることを話す。
 源三郎は左膳の長屋にいるクズ屋を紹介され、それが当のクズ屋だったことから、安の持っているつぼがこけざるの壺だと気づくが、彼が壺を探さずにお久と金魚釣りをしているところを妻に見られ、屋敷から出してもらえなくなり、壺を見つけたから取りに行きたいと言っても信じてもらえなかった。
 一方、対馬守の使者も壺なら何でも一両で買い取るという独自の方法で壺を探そうとしていて、左膳もこけざるの壺を売ろうと先に一両を受け取り、それを安に渡してめんこ代わりに遊ばせるが、結局安が大事にしている壺は売らず、その間に両替屋の息子が持ってきためんこ代わりの大判を安が買って持ち帰ってきたので、お藤が返しに行かせる途中で泥棒に盗まれる。
 左膳は六十両の大判を弁償するために安を連れて丁半博打の賭場に行くが完敗し、その帰り道に安に目をつぶらされているうちに斬りかかってきた旗本の手下を斬り殺す。
 左膳は翌日司馬道場に道場破りに行って門下生を全員倒し、奥の座敷にいた道場主の源次郎は仮病を使って手合わせを避けようとするが、妻に後押しされて道場へ行き、相手が左膳と知ると六十両と引き換えにわざと負けてもらい、妻や門下生たちに見直される。
 源次郎から安の持っている壺が百万両の壺だと聞かされて左膳が帰ると、安が壺を一両で売りに出かけた後で、左膳は追いかけるが、途中でまた旗本が用心棒(豊原功補)を伴って斬り合いになり、左膳が勝って壺が売られる前に安に追いついた。
 壺は、源次郎が左膳に預けて、それを探すことを口実に遊び歩こうとするが、安が持っていたお守りから、安は柳生対馬守が江戸屋敷の侍女に産ませた子供だと判り、すっかり安に情が移った左膳とお藤が渋る中、安は引き取られて壺を抱えながら籠に乗って去っていく。
 しかし、安が籠から飛び出して左膳に向って駆けてつまずいた拍子に放られた壺が粉々に砕けるのだった。
 傑作中の傑作、山中貞雄監督の『丹下左膳餘話 百萬両の壺』(1935)のリメークで、脚本もオリジナルを元に書かれているので、台詞などまでかなりそっくり。
 ただし、私はオリジナルの脚本を読んだことが無く、オリジナルの現存するバージョンにはチャンバラなどの欠損シーンがあるので、そのバージョンには無かった本作のシーンが、オリジナルの脚本にはあったものなのか、今回新たに追加されたものなのか判らない。
 ただし、後述するように演出の色合いはかなり違うので、リメークした動機はあくまでオリジナルのストーリーに惹かれたのであって、演出スタイルまでは踏襲せずに、新たに変更したのだろう。
 そのオリジナルと違うスタイルとは、まずフィルムはオリジナルのモノクロではなく当然のようにカラーで、セットや衣裳は江戸時代の地味な印象ではなく、緑の壁や黄色い着物などの色鮮やかなもので、照明は夜のシーンでもとても明るく、鮮やかな明るい色を強調。
 音楽は邦楽ではなく、だらだらしたピアノの曲が流れる。
 オリジナルは、コミカルなストーリーをあくまで軽妙に描いていたのに、本作では軽妙だったシーンも演出の間が悪くてドタバタした感じだし、さらに泣きのシーンもとても多く、斬り合いのシーンになると突然スローモーションになったりカット割りが早くなったりの現代風のアクション映像(ただし、迫力もケレン味もなく凡庸)だったりと、全体の統一感が無い。
 そして、これらの演出はいずれも目を見張るようなものは感じられなかったので、結局演出の狙いが何なのかは全く解らない。
 そもそも、偉大なオリジナルと比較するなと言う方が無理なのだから、リメークするにおいて少なくとも何か1つは勝算が無ければ作ろうと思わないのが普通だろうが、結果は勝算があるかどうかの検討すら無かったとしか思えないほどの、意義が感じられないリメークだった。
 役者では、トヨエツは現在の日本の俳優ではベストのキャスティングだったかもしれない。
 とぼけた侍役の野村宏伸もはまっている。
 和久井映見は、怒鳴っているときはいいが、やわらかい口調の江戸弁はいまいち。
 今の日本俳優にとっては、全体的に江戸弁は難しいかな?
どうぶつ宝島 監督:池田宏 原作:ロバート・ルイス・スチーブンソン 作画監督:森康二 アイデア構成:宮崎駿、原画:宮崎駿、他 1971 日(東映) カラー 1:2.35 2005/07/29(金) HDDレコーダー(NHK-BS2) 感覚系、ドラマ系、アニメ ★★★ 2005/07/30
ストーリー 感想
 宿の店番をしながら世界への航海を夢見ているジム(松島みのり)のところに、追っ手から逃れている怪しい猫の泊り客が来て、ジムに箱を預けて逃げていく。
 ジムが箱を開けると海賊のフリント船長の宝島の地図が出てきて、ジムは樽でできた小船でネズミのグランと赤ん坊のバブと共に宝島を目指す。
 やがて、海賊船ポークソテー号が帆船を襲って沈めているところに出くわし、ジムたちも捕まってしまい、かつてのフリントの手下で彼を裏切ったシルバー船長以下手下たちにこき使われる。
 船が海賊たちの港町に着いたところで、海賊たちの中で唯一ジムが宝島の地図を持っていることを知っていた男爵が地図を奪い取り、ジムとグランは奴隷商人に売られて牢屋に入れられる。
 するとそこにはフリントの孫娘で、やはり宝島の地図を追ってシルバーに売られたキャシーがいて、グランが牢の小穴から外に出て鍵を手に入れて逃げ出すが、気の強いキャシーはジムと行動を共にしなかった。
 ジムが宝島の地図のありかを巡る海賊の船長会議に潜入し、会議に現われた男爵から地図を奪い取ってあわやというところにキャシーが現われて、ジムを助けた代わりに地図を奪っていく。
 キャシーはシルバーと取引して彼の船で宝島を目指すことになり、シルバーたちは地図を肌身離さず持っているキャシーから地図を奪おうとするがことごとく失敗し、そこにシルバーを追って別の海賊船が現われて乱闘となり、ボークソテー号に忍び込んでいたジムはキャシーを助けて地図を守り、海賊船を爆破する。
 ポークソテー号は嵐に遭い、真っ二つになってジムとグランとバブをずっと子守していたオットーを乗せた船首部分が宝島に流れ着が、船尾部分も流れ着いていてシルバーは宝のありかを知っているキャシーを連れて島の山頂を目指す。
 ジムも後を追い、もろくて崩れやすい山頂への尾根や険しい山の斜面での激しい戦いの末、シルバーたちを倒し山頂の湖に沈んでいた宝を積んだ船を見つけるのだった。
 宮崎駿が「アイデア構成」なる見慣れない肩書きでクレジットされていることからもわかるように、当時まだ下っ端だった彼がのし上がってきて、その地位以上の役割を果たしていて、クライマックス(『カリオストロの城』そっくりの展開)などの見せ場の大仕掛けや意表をついた展開、樽の小船や丸っこい巨大な鋼鉄製の海賊船などのメカのデザイン、ギャグの数々など、本当に素晴らしい。
 もちろん、例によって登場人物(3人の人間以外は全部動物なので、「登場動物」)のキャラもきっちりと立っている。
殿方ご免遊ばせ (原題:Une Rarisienne) 1957 仏 カラー 1:1.33 2005/07/28(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2005/07/30
ストーリー 感想
 フランス首相の娘のブリジット(ブリジット・バルドー)は、官房長官のミシェル(アンリ・ヴィダル)を一方的に好きになってまとわりつき、彼が彼女を避けると最初のデートでキスをしたことを父にばらすと言って脅していた。
 ある日、鴨狩りで首相とミシェルとブリジットとミシェルと他の派閥のボスのエルブレエとその妻のカロリーヌとが一緒になり、かつてミシェルの愛人だったカロリーヌがその夜ミシェルの寝室に行くことで話がつき、その寝室にブリジットも来たことで騒ぎになり、カロリーヌの浮気を疑っていたエルブルレが皆を集めて駆けつけ、カロリーヌを隠すためにミシェルはブリジットと会っていたことになり、首相はミシェルにブリジットと結婚して責任を取らせる。
 ミシェルとの結婚が望みだったはずが、父とミシェルが結婚を決めたことにブリジットは憤慨してしまう。
 ある国のシャルル大公殿下(シャルル・ボワイエ)が妻の女王とフランスに来て、パーティ会場で意地を張ったブリジットはミシェルに、殿下と近づきになると言い張って、見事その通り歓談することに成功する。
 後日、シャルルは公務のスケジュールをキャンセルしてブリジットとお忍びで戦闘機で南仏まで飛んでデートし、浜辺の店で地元のギャングに殿下を他人と間違えて喧嘩になり、2人はパリに戻ると、首相たちは大騒ぎになっていた。
 それでも、2人とも相方とよりを戻し、大公夫妻は帰国の途につくのだった。
 ブリジット・バルドーが、始終胸を突き出して巨乳を強調したり、ホットパンツでお尻を振ったり、すごい量のブロンドの巻き毛を揺らしたり、入浴してバスタオルを巻いただけの姿で背中を見せたりというのを見られることがすべての映画かな?
巴里の女性 監督:チャールズ・チャップリン 1923 米 モノクロ 1:1.33 サイレント 2005/07/26(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★☆ 2005/07/27
ストーリー 感想
 フランスの田舎に住むマリー(エドナ・パーヴィエンス)はジャンと付き合っていたが、反対する父は夜に彼女を部屋にとじこめたので、窓から抜け出してジャンとパリに行く相談をした。
 しかし、父が帰ってきた彼女を家に入れなかったので、ジャンはマリーを自分の家に泊めようとしたが、ジャンの父も反対したので、2人はその夜のうちにパリに行くことにした。
 ジャンが一旦荷物を取りに家に帰ったとき、父が倒れてジャンが行けなくなったのを、マリーは彼に見捨てられたと早とちりし、一人で駅からパリに旅立つ。
 1年後、マリーは金持ちの紳士ピエールとデートを重ねる日々だったが、彼が他の女と結婚する新聞記事を読み、ピエールは関係は今まで通りだと言うが、しょげてパーティーに出る気にならなくなった。
 それでも、彼女の友達が誘った画家のパーティーに行くと、画家になったジャンとその母が住む家をノックしてしまい、貧しい彼のために肖像画を依頼して帰る。
 翌朝、ジャンがマリーの家に来て、マリーは彼女が村を出た日にジャンの父が亡くなったことを知った。
 マリーはドレス姿で絵のモデルになるが、ジャンは村にいた頃の姿を描き上げ、マリーに変わらぬ愛を告白した。
 愛とお金、どちらを取るかでマリーの心は揺れ、そんな彼女にピエールはお金無しの生活には戻れないと冷ややかだったが、マリーは結局ピエールに別れを告げる。
 その頃、ジャンに母がマリーの素行に疑問があると言ったため口論となり、ジャンがマリーと結婚しようとしたのは間違いだったと口走ったのを訪ねて来たマリーが立ち聞きしてしまって彼女はそのまま立ち去り、マリーの友達のポーレットとデートをしていたピエールとよりを戻すことにする。
 マリーと別れたことを後悔したジャンは、懐に銃を忍ばせマリーとピエールが食事をしている席に現われ、マリーが帰ってこないと思ったジャンは拳銃自殺をする。
 ジャンの母が銃を持ってマリーの家を訪ねると、彼女は入れ違いにジャンの家に行っていて、ジャンの亡骸の傍らで涙に暮れていた。
 時が経って、マリーとジャンの母はパリから遠く離れた田舎の一軒家で孤児たちを引き取って暮らしていて、たまたま近くを通りかかったピエールの車とマリーの乗った馬車が、お互いに相手の存在に気づかぬまますれ違って離れていくのだった。
弾丸を噛め (Bite the Bullet) 監督&脚本&製作:リチャード・ブルックス 1975 米 カラー 1:2.35 2005/07/25(月) NHK-BS2 ドラマ系 ★★ 2005/07/26
ストーリー 感想
 1908年のアメリカ西部を舞台に馬の長距離レースが開かれ、その選手や馬を運ぶ列車の中では馬主たちが賭けをしていた。
 馬主の依頼でレースの馬を出発地まで引っ張ってきたサム(ジーン・ハックマン)は、昔の仲間のルーク(ジェームズ・コバーン)との再会早々に、ロバを殴り倒した選手の若造のカーボ(ジャン・マイケル・ヴィンセント)と喧嘩して追い払う。
 馬を列車に乗せずに連れて来たことで馬主はサムをクビにし、サムは馬を酷使するだけのレースには出るつもりは無かったが、結局自分の馬で出る彼を含め9人がレースに出る。
 選手の1人のメキシコ人が歯痛で苦しんでいたので、やはり出場者の紅一点ジョーンズ(キャンディス・バーゲン)とサムが、最初の夜の宿泊所の列車の中で弾丸で歯冠を作って治療した。
 翌日、山中でジョーンズが2人の男に襲われ、通りかかったサムと共にその2人を撃ち殺す。
 年老いたミスター(ベン・ジョンソン)は体調が悪くて遅れて出発し、その夜の野営地に遅れて着き、レースに出たのは流れ牧童として一生を終える前に名を残すためだと語って息を引き取った。
 続いてカーボが馬を酷使して殺し、通りがかったサムが埋葬してやれと怒り、イギリスから出場したノーフォーク卿は骨折した馬を射殺した。
 サムはジョーンズに、セオドア・ルーズベルトがスペインと戦うためにキューバに派兵した荒馬騎兵隊に彼が加わったとき、馬はテディが乗る1頭しかなかったことや、唯一愛したキューバ人の妻がスペイン軍の砦の人の盾にされたことを話した。
 翌日、コースが囚人たちが線路を布設しているところを通っていて、実はそこにいる恋人を助ける目的でレースに参加したジョーンズが監視員を銃で脅しすが、恋人はジョーンズと2人で逃げる約束を変更して囚人たちを連れて逃げることにしたため、残る3人の馬も待ち伏せて奪い、メキシコ人が銃で撃たれる。
 サムとルークはレースの審判員が乗っていたサイドカーで囚人たちを追いかけて、先回りしたカーボと共に全員を撃ち殺し、恋に破れたジョーンズはレースから離れる。
 馬を取り戻した3人はレースに戻り、サムとルークは披露しきった馬を引いて並んでゴールするのだった。
大阪物語 監督:吉村公三郎 脚色:依田義賢 原作:溝口健二(井原西鶴「日本永代蔵」「当世胸算用」「萬の文反古」より) 1957 日(大映) モノクロ 1:1.33 2005/07/25(月) NHK-BS2 ドラマ系 ★★☆ 2005/07/26
ストーリー 感想
 百姓の仁兵衛(にへい、中村鴈治郎、二代目)は、年貢が払えず2人の子供のために妻のお筆(浪花千栄子)も売らずに、夜逃げをして大阪に来るも仕事が見つからず、船着場の米俵からこぼれた米を拾って売って暮らしていた。
 そして十年、仁兵衛は茶屋と両替屋を商うまでになったが、茶がらを混ぜた茶を売ったり、娘のおなつ(香川京子)が気がある番頭の忠三郎(市川雷蔵)が勘定を十文間違えただけで厳しく当たったり、無駄だと思ったことには一銭も使わない守銭奴になっていて家族には呆れられ、そのくせ百姓時代に借金の取り立てをされた地主の店がとりつぶしになったと聞くと、積年の恨みでそこを買い取り、今までの小さい店から移った。
 ある日、仁兵衛が建築中の家から材木の切れ端を焚きつけのために拾っていると、同様に拾っていた鐙(あぶみ)屋の女主人のお徳(三益愛子)と気が合い、お互いに相手の持参金と結納金目当てに、お徳の息子の市之助(勝新太郎)とおなつの縁談を勝手に決めたために、お筆と言い合いになったときお筆が倒れ、仁兵衛は薬代をケチったためにお筆は死んでしまう。
 お徳に言われて通夜に出席した市之助は、おなつの兄の吉太郎(林成年)を連れて馴染みの花魁の滝野(小野道子)のところへ行き、綾衣(中村玉緒)をあてがって夢気分にさせたところで、滝野を身受けしたいが借金で金が無いので、お金を都合して欲しいと頼む。
 吉太郎は店の金を持ち出し、市之助は滝野を身受けして駆け落ちし、帰りに仁兵衛が川床から川の中に落とした小銭を代わりに探していた忠三郎に、吉太郎は余った金を渡して川から見つけたことにするようにと言った。
 しかし、そのお金を受け取った仁兵衛はそれが自分の蔵の中にあったものだと気づき、吉太郎を勘当するも母を父に殺されたと思っていた彼はあっさりと受け、おなつを市之助を結婚させないために駆け落ちさせて忠三郎と結びつけるために金を渡したと知って忠三郎をクビにし、おなつが忠三郎について行くと聞いて逆上して倒れてしまう。
 仁兵衛を看病していたお徳が、墓まで持っていけないお金よりも後継ぎがいなくなったことを悔やむと、仁兵衛は突然床から飛び起きて蔵に閉じこもり、金を抱きかかえながら誰にも渡さないと言うのだった。
テルミン (Theremin : An Ellectronic Odyssey) 1993 米 カラー 1:1.33 2005/07/23(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドキュメンタリー ★★ 2005/07/24
ストーリー 感想
 ニューヨーク在住のロシア人のレオン・テルミン博士が「テルミン」と名づけた電子楽器を1920年に発明して、この楽器を使った演奏講演を行ないながら、新しい楽器の開発を行なっていた。
 彼は、テルミン奏者の第1人者の少女クララ・ロックモアを気に入ってたが、1920代の初めに研究者の妻が亡くなり、彼は寂しさを紛らすように研究に没頭する。
 黒人バレー団を起用した講演も行い、プリマの女性と再婚したが、異人種間の結婚は当時はうまくいかなかった。
 自宅にいた彼が数人のロシア人に拉致され、ソ連に連れて行かれ、その後彼の業績はソ連でもなかったことにされ、彼は1945年には死んだとの情報が流れた。
 テルミンはシンセサイザーの父モーグ博士が少年に電子楽器に興味を持つきっかけになったり、サスペンスやSF映画の効果音に使われたり、後にビーチボーイズが自作に取り入れたりしたが、クララは楽器としてのテルミンにイメージを守ろうとし、後にモーグが大量生産しようとしたときも協力しなかったので、結局普及しなかった。
 クララは1952年に夫とソ連に行ったとき、偶然テルミン博士と再会し、彼が科学者たちの収容所で盗聴器の開発をさせられていたことを知った。
 1991年、博士は表彰をうけるためにニューヨークに来てクララと再会し、2年後に亡くなるのだった。
 テルミンという楽器に対しても人物に対しても、ドキュメンタリーとしては内容不足だと思うのだが、テルミンという楽器の一番の魅力は、演奏している人の姿に尽きるということで、そのことがジェリー・ルイスが映画の中でお笑いネタにするような使われ方をしたり、逆に言えば、楽器としては効果音扱い程度だったのだが、それでも電子楽器としてはよりポピュラーだったメロトロンより、今ではテルミンの方が語り草になっているのもそんな理由からだろう。
マインド・ゲーム 2004 日 カラー 1:2.35 2005/07/22(金) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、アニメ ★★ 2005/07/28
ストーリー 感想
 大阪で、若い女のみょん(声:前田沙耶香)が慌てて飛び乗った電車に、中学時代に彼女と付き合っていた西(声:今田耕司)が居合わせて、再会した二人は彼女の家が経営する居酒屋に行った。
 西は結局彼女との愛を発展させることに二の足を踏んで別れ、他の男(声:山口智充)との結婚を控えている彼女に未練たらたらだった。
 やがて、その店にみょんの父親(声:坂田利夫)の借金を取り立てに来た2人組が彼女を尾行して現れ、口論になるうちに西は銃で撃たれあの世に行ってしまう。
 そして、あの世の案内人に行き先を指示されるが、この世に未練のあった西は逆方向に突っ走って、彼が撃たれる直前のこの世に戻って来て、銃を奪って逆に相手を撃ち殺し、西はみょんと彼女の姉のヤン(声:たくませいこ)を引き連れて車で逃走する。
 殺された男の一味が車で追いかけて、カーチェイスの末西たちの車が橋から海に落ちていったところにクジラが現れ、開けた口の中に車が飛び込んで体内に逃れた。
 そこには既に30年も暮らしている爺さん(声:藤井隆)がいて、3人はそれなりに快適な日々を暮らすが、西は積極的に人生を生きることに目覚めて、4人はクジラの口からの脱出を試み、ついに西が外に飛び出したとき、すべての時間はふりだしに戻って、みょんが飛び乗った電車に尾行していた取り立ては乗ることが出来ず、再会した西とみょんは新幹線で大阪を後にした。
 主人公が意志の力で生き返ったり過去の思い出を勝手に変えることで未来を変えたりと、物語が都合よく展開するようになっていて、また画のスタイルも目まぐるしく変わったりと、かなり自由なスタイルの映画になっている。
 そんなご都合主義やセオリー外しというだけで「邪道」と言って切り捨てるつもりは毛頭無いし、どんどんやってもらって構わないのだが、この映画の場合は半分ぐらい観たあたりで映画から気持ちが離れていってしまった。
 何故そうなったかを例えて言うと、自分が見た夢はどんなにストーリーやイメージが支離滅裂でもすんなり受け入れられるが、そんな夢を当人以外の人が見たところで、しょせん他人の夢には気持ちが入り込めず、楽しいものとして受け止められるとは限らない、ということか?
 この映画は自由なイメージの創造(即ち「人工的な夢のイメージ」「ファンタジー」「フィクション」「マインド・ゲーム」などに言い換えられる)なのだが、それを観客にとって「他人の夢」を見ている気分にしか出来ないようでは不十分で、「自分の夢」を見ているという気分にさせるためには、やはりそれ相応の「お膳立て」「リアリティ(実感)」「こじつけ」などが必要で、この映画にはそれが欠けていたということだろう。
(The Go-between) 監督:ジョセフ・ロージー 1970 英 カラー 1:1.33 2005/07/21(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/07/24
ストーリー 感想
 12歳のレオは学友のマーカスと共に田舎にあるマーカスの屋敷で夏休みを過ごすためにやってきて、そこにいたマーカスの姉のマリアン(ジュリー・クリスティ)に一目ぼれする。
 裕福でないレオは夏服を持ち合わせていなかったので、マリアンが町に買い物に出るついでにレオに服を買ってやるために2人で町に出た。
 町でマリアンがレオと別れて1人で買い物行き、しばらくして待ち合わせ場所で会って家に帰ったが、結局マリアンは何も買っていなかった。
 マーカスの家族たちが敷地内の川に泳ぎに行ったとき、近くの農民のテッド(アラン・ベイツ)が泳いでいて、入れ替わりに去っていった。
 マーカスがハシカで寝込み、多くの家族の中でレオにとってはマリアンだけが話し相手になり、暇を持て余してテッドの家の干草で遊んでいたときに脚を傷つけてしまい、手当てしたテッドから、マリアンと2人きりになったとき彼女に手紙を渡して欲しいと頼まれ、やがてレオは2人の間の通信係になる。
 しかし、ある時マリオンからの手紙を読んでしまって、それがラブレターだったことにショックを受ける。
 レオはその手紙をテッドのところに持って行き、マーカスが回復したのでマリアンを2人きりになれないからと、これ以上手紙を運ぶことを拒否する。
 しばらくして、レオはマーカスから、マリアンがしばらく前から屋敷にいるトリミンガム子爵(エドワード・フォックス)と婚約したことを聞かされ、さらにそれでもマリアンがテッドへの手紙をレオに頼んだことに戸惑い、配達をやめようと思ったが、マリオンが服を買ったことなど恩に着せて頼んだので、結局テッドのところに運ぶ。
 まだ性のことを知らないレオは、それを教えてくれることを手紙を運ぶことを条件にテッドに頼んだが、テッドは断ってレオを家から追い出した。
 トリミンガムはレオに、テッドに軍に入隊を勧めたと言い、そのことをテッドに話すと彼は「戦争に行くかはマリアン次第だ」と言い、マリアンはレオに「トリミンガムと結婚するしか仕方が無い」と言って悲しみに暮れ、またレオも屋敷を去る日が近づいてきた。
 レオの誕生日の日、マリアンがレオにテッドへの手紙を頼もうとしたところに、マリアンの母(マーガレット・レイトン)が現れ、手紙のことを隠すレオの嘘を見抜いた彼女はレオに届け先を問い詰める。
 誕生パーティの時刻にマリアンは現れず、母はレオにマリアンの居場所に案内させると、レオと彼女はテッドの家でマリアンとテッドがあられもない姿で体を重ねているのを目にしてしまった。
 それから約50年後の現代。レオはマリアンと再会し、彼女はトリミンガムと結婚しながらテッドにそっくりの子供が出来たことを世間が噂したことでマリオンを恨んで、彼女とは滅多に会わずに好きな女性に愛を告白できなくなっていることを話し、自分はテッドと愛することができて彼の子供を得ることができたことは幸せだったと、昔のようにその孫に伝えて彼を幸せにしてやって欲しいと頼むのだった。
さすらいのカウボーイ ディレクターズカット版 (The Hired Hand) 監督:ピーター・フォンダ 1971(2001再編集) 米 カラー 1:1.85 2005/07/18(月=祝) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 ★★ 2005/07/24
ストーリー 感想
 ハリー(ピーター・フォンダ)、アーチ(ウォーレン・オーツ)、ダン(ロバート・プラト)の3人はアメリカ西部の荒野をカリフォルニアを目指して旅していたが、働き口があるカリフォルニアへの期待に胸を膨らませる若いダンに対し、ハリーはうまい話は相手にせず、放浪に疲れたので、別れた妻のハンナ(ヴァーナ・ブルーム)と暮らした町に、彼女に受け入れられないかもしれないが帰ることにし、アーチはハリーと長い付き合いだったがダンと行くことにした。
 途中、泊まった村の酒場の奥でダンが撃たれて2人の目の前で息絶えるが、撃ったサム(セヴァン・ダーデン)はダンが自分の妻を襲ったから撃ったと主張した。
 2人はその晩のうちにダンを埋葬し、翌朝サムの寝込みを襲って彼の両足を打ち抜いて村を逃げ去った。
 2人はハンナの家に着き、ハンナは娘には父は死んだことになっているので、農場の使用人として2人を住まわせることにする。
 近くの町に行った2人は、ハンナは使用人と寝るとの噂を耳にし、ハリーはハンナからハリーが出て行った後から体が寂しいからそうしたが、男と一緒になることには懲りたので誰ともすぐに別れたと言った。
 そして、アーチがいる今の状況は、7年前にハリーが放浪していたアーチに憧れて一緒に出て行く前と一緒だとみんなが悟り、ハンナはハリーとよりを戻したいと思うようになり、アーチは身を引いて出て行くことになった。
 しばらくして、サムの手下がアーチの馬と指を持って現れ、ハリーがサムのところに来なければ更に指を切ると脅し、ハリーはハンナが止めるのも聞かずに直ぐにサムのいた村に行き、打ち合いになってハリーが撃たれ、自力で脱出したアーチがサムたちを撃ち殺し、ハリーはアーチに抱かれて息を引き取るのだった。
宇宙戦争 (The War of the Worlds) 監督:バイロン・ハスキン 製作:ジョージ・パル 原作:H・G・ウェルズ 1953 米 カラー 1:1.33 2005/07/17(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 ★★★ 2005/07/24
ストーリー 感想
 火星人たちはずっと地球のことを監視していて、火星の環境が悪くなったことで、ついに唯一の移住先である地球侵略の第1歩が始まった。
 カリフォルニアの山中のリゾート地の近くに家ぐらいの大きさの隕石のようなものが落下し、たまたま現地近くで休暇を取っていたフォれスター博士ら科学者たちが調査を始めることになる。
 最初のうちは危険な様子は無かったが、ある夜、見張りの3人の男が隕石の一部が動いているのを見つけ、接近中の火星から火星人が来たと思って友好的に近づいたら、光線によって一瞬のうちに消滅した。
 それと同時に付近に停電が起き、補聴器や時計などあらゆる機器が磁化され動作不能になり、その磁気は隕石から発せられていることが判った。
 隕石を調べて光線による破壊が確認されて軍隊が出動し、また同じような物体が世界各地に飛来していた。
 そしてついに飛来物の中から飛行体が現れ、フォれスター博士と知り合ったシルビアの叔父の神父が接触を試みて飛行体に近づくと、飛行体からの光線を浴びたことで軍隊は攻撃を開始するが、飛行体はシールドで覆われていて武器は全く通用せず、軍隊は壊滅状態になった。
 博士とシルビアが逃げるために乗ったセスナは、飛行体のそばを飛んだところで墜落し、2人は近くの無人の農家で一夜を明かすことにするが、そこに飛来物が激突して家は大破し、飛行体から降りた火星人が家の中を捜索しに来て見つかったので追い払い、なんとか脱出することが出来た。
 2人はロサンゼルスの研究所に戻って、手に入れた飛行体の潜望鏡の先のカメラと火星人の血液に調査を開始する。
 世界中の軍隊は負け続けたため、ついにロサンゼルス郊外の飛行体に対して原爆を投下するも、飛行体は無傷だった。
 ロサンゼルス市民たちは山中への避難を開始し、機材を取りに行って研究所員の避難用のスクールバスに1人乗り遅れた博士は、乗り捨ててあったトラックを走らせるが、我先に脱出しようとする暴徒によって車ごと奪われてしまい、飛行体の攻撃が始まる中、博士はシルビアたちを探しに人々が集まっていた教会を次々と探し回り、やはり暴徒に襲われたシルビアたちと再会する。
 教会が崩れ去ろうとしたまさにその時、飛行体は突然墜落し、中から瀕死の火星人が現れまもなく息絶えた。
 地球の微生物に対して免疫が無かったことが原因で、人々は神が作った奇跡に感謝の祈りを捧げるのだった。
キーラーゴ 監督:ジョン・ヒューストン 1948 米 モノクロ 1:1.33 2005/07/17(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/07/24
ストーリー 感想
 退役したフランク(ハンフリー・ボガート)が、戦死した戦友の未亡人のノーラ(ローレン・バコール)と父のテンプル(ライオネル・バリモア)を訪ねて、彼らが経営するホテルがあるフロリダ半島の南端沖の島キーラーゴにやって来た。
 島ではおりしも、禁固30日の刑を受けた先住民の2人組が逃走していたり、暴風雨が迫っていてテンプルは先住民たちに小屋を提供、ホテルに泊まっていた客で、禁酒法時代に一儲けし、国外追放の刑を受けてハバナに逃れようとしていたギャングのボスのロッコ・(エドワード・G・ロビンソン)の一団が正体を現し、逃走犯の捜索でホテルに来ていた保安官部下のソーヤーも含めて銃で脅してホテルに軟禁する。
 ロッコを社会の敵と非難する人たちの中にあって、フランクは正義感を内に秘めていながらも、世の中にロッコのようなギャングがいるのは必然で、ロッコを一人消したところで世の中変わらないと冷めた発言をし、彼が銃を手にしながらロッコを撃てなかったことに代わってソーヤーが銃を手にして逆にロッコに撃ち殺される。
 次第に激しくなる嵐の中で、ロッコはハバナに船を出せないだけでなく、ハリケーンに慣れていないせいで更なる恐怖心に襲われる。
 嵐は過ぎ、ソーヤーを探していた保安官がホテルに来て、海に捨てたはずのソーヤーの死体が波で打ち上げられているのを見つけるが、誰もロッコのことを口にすることが出来ず、小屋にいた先住民の逃走犯が殺したことになって、保安官は逃げようとした2人を射殺した。
 やがて、ホテルに別のギャング団の者が現れ、ロッコと取引をして現金を置いて帰り、ハバナに向う船は船長が逃げたため唯一船を操縦できるフランクがロッコたちを乗せることになった。
 ロッコの情婦の元歌手で、ホテルで彼に侮辱されて連れて行ってもらえなくなったゲイ(クレア・トレヴァー)は、ロッコのポケットからひそかに銃を抜いてそれをフランクに手渡した。
 ハバナに向う海上で、フランクは撃たれながらもすきを突いて全員を射殺し、金にも手をつけずに引き返すとの無線をホテルに送り、フランクのことを見直したノーラは笑顔で答えるのだった。
修羅雪姫 怨み恋歌 監督:藤田敏八 原作:小池一雄、上村一夫 1974 日(東宝) カラー 1:2.35 2005/07/16(土) WOWOW ドラマ系、感覚系 ★★☆ 2005/07/24
ストーリー 感想
 明治39年、日露戦争の後。殺人犯として追われていた雪(梶芽衣子)は、山中を彷徨ってトラバサミにかかり周介(原田芳雄)という男に助けられるが、まもなく警官隊に囲まれて観念して捕まり、絞首刑の判決を受ける。
 刑執行の日に雪を移送中の馬車が襲われ、雪は秘密警察を率いる菊井精四郎(岸田森)のところに連れて来られ、無政府主義者の徳永乱水(伊丹十三)が持つ書類を手に入れる仕事を依頼され、乱水の家に女中として潜入する。
 しかし、乱水は雪を同伴して外出したときに、尾行をまいて乱水が雪の正体と菊井が彼女を送り込んだことを知っていたと話し、自分の主義を話した上で持ち歩いていた極秘書類を見せ、雪は乱水に寝返ることになった。
 演説会の当日、乱水は用心のために書類を雪に預け、途中雪を追っていた警官隊が2人を逮捕しようとして、雪は銃で撃たれながらも逃げ延びて、乱水の弟で四谷の貧民窟で療養所を開いていた周介と久しぶりに再会した。
 しかし、弱みはゆすりに使うという周介は主義のために生きる乱水に冷たかった。
 雪が療養中のところ、様子を探りに屋根に登っていた男を雪がメスを投げつけて傷つけ、貧民窟の人々が彼を捕まえるが、男は夜に番人を襲って、彼が持っていた斧で手錠のかかった自分の腕を切り落として逃げる。
 拷問を受けても雪のことを黙秘し続けた乱水は、釈放されて妻のあや(吉行和子)が乱水を周介のところに連れて来るが、周介は乱水にペスト菌が植え付けられていることに気づいて隔離する。
 乱水が助からないと知ったあやは、警察に乗り込んで拷問した刑事の目を刺すが逆に斬り殺されて夫と一緒に葬られる。
 雪は周介の意志を受けて菊井のところに来て、貧民窟にお金を渡さなければ証拠書類を発表すると菊井を脅すが、菊井は貧民窟もろとも書類を焼き捨てることにして、雪をそのまま部屋に閉じ込める。
 雪は部屋を抜け出して刑事たちを斬り捨て、ペストに冒されていた周介とともに菊井を襲って斬り捨てるが、周介も撃たれて死ぬのだった。
修羅雪姫 監督:藤田敏八 原作:小池一雄、上村一夫 1973 日(東宝) カラー 1:2.35 2005/07/16(土) WOWOW ドラマ系、感覚系 ★★★ 2005/07/24
ストーリー 感想
 明治7年。雪の降りしきる晩に八王子の監獄で女囚たちに取り上げられた雪(梶芽衣子)は、成長して「修羅雪姫」と名乗る、刀を仕込んだ傘を使う殺し屋になっていた。
 明治6年に起こった徴兵令の発布にともなう百姓一揆の混乱に乗じて、島根の農村で4人の男女が、もうすぐ白装束の徴兵官が村に来る予定で、4人に金を払えば徴兵免除になるとデマを流し、その村に小学校教師として赴任してきた雪の母(赤座美代子)の夫(大門正明)が白い洋装姿だったため4人は彼を殺して母を手込めにし、母は金を持ち逃げして東京に行った4人の中の1人徳市(地井武男)を追って正体を隠して近づいて殺して捕まり、残りの3人への復讐を全うするために手当たり次第に男と交わって出来た子供が雪だった。
 難産だったため、母は雪に復讐を託して死に、雪は出所した女囚に連れられて道海和尚(西村晃)の元で厳しい武術の修行をしながら成長した。
 雪は3人のうちまず伴蔵(仲谷昇)を探し当てたが、彼は飲んだくれながら売れない竹夫人を作っていて、娘の小笛(中田喜子)は父に黙って借金のかたに体を売ってお金を稼いでいた。
 花札賭博の賭場で雪と伴蔵が一緒になり、イカサマがばれた伴蔵が脅されたのを雪が引き取り、いきさつを話して命乞いする伴蔵を斬るが、残り2人の居場所は聞き出せなかった。
 次の塚本儀四郎(岡田英次)は、アヘンの取引のため乗り込んだアメリカ行きの船が遭難して既に死んでいて、雪は儀四郎の墓の花に斬りつけ、その場に居合わせた新聞を発行している足尾竜嶺(黒沢年男)が雪に興味を持って付きまとうことになる。
 松右衛門は、竜嶺が気に入ったのと、新聞に雪のことを書かせて世間の注目を浴びることで残る1人のおこの(中原早苗)をおびき寄せることを狙って雪の生涯を竜嶺に話して、その新聞が出たことで、上京していた小笛は親切だった雪が父の仇であることをしり、おこのの手下たちが警官に化けて竜嶺を連れ出して監禁し、雪の居場所を吐かせようとする。
 雪はおこのの屋敷に殴りこんで手下たちを全員斬り殺し、追い詰められて首を吊ったおこのも斬る。
 復讐が遂げられたと思われたとき、竜嶺の新聞社に今では政府御用達の兵器商になった儀四郎が現れ、修羅雪姫の記事の中止を迫って去り、直後に現れた雪に儀四郎が現れたことと、儀四郎は竜嶺の父であることを告げた。
 雪は儀四郎を追って鹿鳴館の仮面舞踏会に潜入し、後を追ってきた竜嶺と共に隠し部屋に逃げた儀四郎を追うが、竜嶺は儀四郎に銃で撃ち殺され、雪も銃弾を受けながらも儀四郎を斬り殺し、傷つきながら鹿鳴館を後にしたところを小笛に刺されるのだった。
 イメージの数々が素晴らしい。
 雪景色の中での白い着物。
 どぎつく真っ赤な色の血が大量に噴出し、一刀で斬られた腕が宙を舞う鮮やかなショット。
 カメラワークも、俯瞰などのケレン味たっぷりなモノがたっぷりと見られ、しかも見飽きることもない。
 この映画のモチーフが『キル・ビル』で使われたことで有名だけど、ただの形だけの引用ではなく、タランティーノがこの映画で受けたインパクトを自作で再現させようとしたのがよくわかった。
狼よ落日を斬れ 監督:三隅研次 1974 日(松竹) カラー 1:2.35 2005/07/10(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/07/24
ストーリー 感想
 池田屋事件があったころの幕末の江戸。
 病弱な少年だった杉虎之助は、父の後妻が彼に代わって自分の子供を旗本の跡取りにしようとしたために家出して川に身を投げたところ、通りかかった池本茂兵衛(田村高廣)に助けられ、8年間彼から剣を教わった。
 江戸に現れた虎之助(高橋英樹)が、彼の叔父の旗本の山口金五郎(佐野浅夫)が地方から来た武士たちに絡まれているところに通りかかって彼を助け、その様子を伊庭八郎(近藤正臣)が見ていた。
 お秀(大地喜和子)が金が必要で博打に手を出し、負けて体で払わされようとしていたところに虎之助が通りかかって助け、彼女を家に連れ帰ったところ、お秀は虎之助にほれて彼に迫る。彼の道場に虎之助を呼び、手合わせしようとしたが、実は八郎は血を吐くほど体が弱っていた。
 茂兵衛の使いの者の依頼で、虎之助は男装の侍姿の礼子(松坂慶子)を京都まで連れて行くことになり、途中、薩摩の侍たちが襲ってくるのを切り捨てながら京に着く。
 京都では、新撰組が薩摩藩士を取り調べていて、人斬り半次郎(緒形拳)が疑われて新撰組たちとやりあった後、元お秀の法秀尼に匿われ二人は愛し合うようになる。
 虎之助は京で隠密の手引きで茂兵衛と再会し、徳川のために命がけで戦うという虎之助に、茂兵衛は若い者は徳川の後の時代を作るために犬死するなと言って江戸に返そうとする。、
 虎之助は京都に来ていて見廻り組に入っていた八郎と再会して京で行動を共にすることになり、法秀尼のことで半次郎も虎之助と知り合い、これに沖田総司(西郷隆盛)も加わって4人は親交を暖めた。
 しかし、隠密たちは薩摩の罠にかかって茂兵衛は路地で斬られ、「仇を撃とうと思うな」と言い残して死に、鳥羽伏見の戦いで幕府軍が敗れて一同は江戸に行き、慶喜が水戸に去ったいまでは徳川のために戦う意味が無いと言う虎之助に対し、八郎は武士の誇りをかけて上野に立てこもって官軍と戦うことにした。
 虎之助と一緒になった礼子が家にいたところに、上野の戦いの残党狩りの薩摩藩士(藤岡重慶)が踏み込んで斬り殺したため、後日、彼に会った虎之助は彼を含めて薩摩藩士たちを斬り殺して山へ逃げ、その捜索をしていた隊長の半次郎は、沖田が絶命したところに出くわし、彼を下手人にして捜索を打ち切る。
 逃げていた虎之助は、傷を追って隠れていた八郎に出会い、破傷風になっていた八郎の腕を斬って命を救うが、その後八郎は函館で死んだとの噂を耳にした。
 虎之助は東京で床屋をしていて、法秀尼は外国に行くことになり、半次郎は政府の職を退いた西郷隆盛(辰巳柳太郎)を追って薩摩に帰ることになった。
 しかし、茂兵衛が斬られた現場にいた元薩摩藩士の警官から、茂兵衛を斬ったのは半次郎らしいこと聞き、虎之助は薩摩に行って半次郎と斬り合うが、茂兵衛の言っていた戦うことのむなしさを感じて剣を捨ててその場を去り、後日東京で西南戦争で戦死したことを知るのだった。
鬼火 監督:望月六郎 1997 日 カラー 1:1.85 2005/07/16(土) HDDレコーダー(テレビ東京) ドラマ系 ★★★ 2005/07/24
ストーリー 感想
 殺人で入っていた刑務所から大阪に戻ってきた原田芳雄は、ムショ仲間で原田を兄貴としたっている哀川翔と再会し、哀川が世話になっている暴力団に入ることを誘われるが、断って堅気の生活を目指す。
 しかし、結局哀川の組の運転手になり、組のヤミ金の取立てで他の組に乗せていった幹部が監禁されて、親分の奥田瑛二の頼みで、見事に単身で幹部を助けて金も取り立てる。
 奥田や哀川たちとクラブに行ったとき、原田はそこでアルバイトで演奏していた片岡礼子のピアノが気に入り、片岡は100万円を哀川から受け取って原田と一夜を共にすることを承諾すが、原田は居候しているゲイバーの主人の北村一輝の家に片岡を連れて来て、手も出さずに寝るだけだった。
 片岡は、妹をもてあそんで精神病院送りにした藤間という男を殺すための銃が欲しいと原田に頼み、原田は北村を通じて銃を手に入れ、片岡に銃の撃ち方をてほどきし、藤間を連れ出して山中で片岡に撃たせるが、片岡は躊躇し、みっともなく命乞いする男の姿に原田はそれで済まそうとする。
 しかし、藤間が車に隠し持っていた写真には、片岡のあられもない姿が写っていて、原田は車ごと焼き捨てる。
 藤間の弟が対立する暴力団員だったことで、奥田は原田を堅気にし、原田は印刷工場の職を見つけ、一軒家を借りて片岡と住むが、その後、北村が自宅で殺されてしまう。
 表向きは、仇を討っても北村は生き返らないと言って、片岡と平穏に暮らしていたが、次第に怒りが湧いてきて、ついに藤間兄弟を殺して警察に自首する。
 そして、哀川は原田を切り捨てた奥田に銃を向けるのだった。
パリの恋人 (原題:Funny Face) 監督:スタンリー・ドーネン 音楽: ジョージ・ガーシュウィン、アイラ・ガーシュイン 1957 米 カラー 1:1.85 2005/07/10(日) HDDレコーダー(HNK-BS2) ドラマ系、感覚系 ★★ 2005/07/12
ストーリー 感想
 ニューヨークのファッション雑誌「クオリティ」の編集長(ケイ・トンプソン)は、グラビアカメラマンのディック(フレッド・アステア)とモデルとスタッフたちを連れてグリニッジヴィレッジの本屋に行き、雇われ店長のジョー(オードリー・ヘップバーン)が止めるのも聞かずに中で撮影をはじめ、本を滅茶苦茶にしてしまう。
 一人だけ後片付けを手伝ったディックが、ジョーに華やかなパリの話をしたり、彼女に共感してキスしたことで、堅物だったジョーの気持ちがぐらつく。
 編集長が新しく雑誌の顔になるモデルを探しているところに、ディックが他のモデルと違う個性のファニーフェイスのジョーを推薦し、本を注文して雑誌社に呼んで、モデルの仕事を拒否する彼女に、ディックはパリに行けば彼女の憧れの共感主義を唱える哲学のフロストル教授に会えると持ちかけて口説き落とす。
 パリに着いた日の日中は、おのぼりさんと化してエッフェル塔などを観光したが、撮影の予定があった夕方になってもジョーは戻って来なかったので、ディックはジョーが教授に会おうと待ち伏せていたカフェに連れ戻しに行く。
 戻ったジョーは美しく変身し、翌日からパリのあちこちで次々と素敵な写真を撮影していき、次第にディックに好意を抱き始めたジョーは、パリに来るために引き受けたモデルの仕事を続けることを考え始める。
 ある夜、カフェにフロストル教授が来ていると聞いたジョーはそのカフェに行き、教授と話し合うことが出来て夢中になるが、彼女を追って来たディックは、教授が下心でジョーの相手をしているのを見抜き、彼女のお披露目披露会に出すために彼女を連れ戻そうとして、教授に対する印象の違いからの口論で、ステージ上のセットが無茶苦茶になったところにカーテンが開いて恥をかいてしまう。
 ジョーが教授と会っている共感主義の瞑想サロンにディックと編集長も潜入し、ジョーを説得することが出来ずに帰った後、本性を表して迫ってきた教授をジョーは殴って気絶させ、パーティーに戻ってお披露目の役目を務め終わるが、失恋したディックは帰国の途についていた。
 ところが、ディックが空港で教授と鉢合わせになり、ジョーが彼を振ったことを知ってホテルに戻り、ジョーと再会して愛を確認するのだった。
 オードリーが素敵な衣裳を次々と着替えてパリの各地で写真撮影するファッショナブルなシーンや、彼女が全身黒タイツのような衣裳でカフェで踊るシーンがビジュアル的にいい。
 オードリーを眺める映画としては申し分ない
 でも、この映画でいいところといったらそのくらい
 オードリーって、映画の最初ではみすぼらしい格好をしていて最後にはおしゃれな女性に変貌する話とか(『麗しのサブリナ』『マイ・フェア・レディ』など)、浅い考えにこだわって不幸になっていくが、最後は自分の考えが間違っていたことに気づいて幸せをつかむ話(『昼下りの情事』『ティファニーで朝食を』)の映画が多いが、この映画も見事に両方の要素が入っている。こんなんで良かったのだろうか?
 もっと別なタイプの映画に出ていた方が良かった気がする。
脱獄 監督:デヴィッド・ミラー 脚本:ダルトン・トランボ 原作:エドワード・アビイ「勇敢なカウボーイ」 1962 米 モノクロ 1:2.35 2005/07/10(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★★ 2005/07/10
ストーリー 感想
 1953年のニューメキシコ。
 朝鮮戦争帰りのジャック(カーク・ダグラス)は、土地を柵で囲うような決まりごとが嫌いな昔気質のカウボーイで、国道沿いのジェリー(ジーナ・ローランズ)のドライブインに馬で現れ、ジャックの幼なじみで彼女の夫のポール(マイケル・ケイン)が密入国者を匿って留置所に入れられ面会も出来ないことを知った。
 彼が酒場に行ったとき、客に因縁をつけられて喧嘩になり、駆けつけた保安官補たちを故意に殴って留置所に入ることが出来、そこでポールと再会する。
 ジャックが看守(ジョージ・ケネディ)に目をつけられて殴られた夜、鉄格子を破ってポールも一緒に行こうと誘うが、ポールは脱獄して一生逃亡生活を続けたり、失敗して刑期が5年延びるよりは、残りの刑期2年を我慢して妻子のところに帰る道を選び、ポールが1人脱獄してジェリの店に行って、ジェリーにポールのことを話し、翌朝馬で山に逃げ込む。
 保安官のジョンソン(ウォルター・マッソー)は自ら山に行って捜索の指揮を執り、軍が演習を兼ねて隊員の出動を申し出たところ、ヘリコプターだけ要請し、ヘリがジャックの居場所を見つけるが、ジョンソンたちの目の前で撃ち落される。
 看守もジャックを追って山に入っていたが、ジャックは逆に彼を殴り倒し、さらに山を登っていくが、そこにも追っ手が待ち構えていて、ジャックは馬で走り抜けた。
 ジョンソンはあきらめて下山するが、ジャックは足を撃たれていて、メキシコに行こうと雨の中国道を横切ろうとして、ジェリーの店で知り合った男の大型トレーラーにひかれ、馬は安楽死にされ、ジャックは通りかかったジョンソンが呼んだ救急車に乗せられ、現場にはジャックのテンガロンハットが雨に濡れた路上に残されるのだった。
 今から25年以上前の雑誌「ロードショー」に掲載された、小森のおばちゃまのカーク・ダグラスに対するインタビューで、彼のお気に入りの出演作が『突撃』とこの『脱獄』だった
 カウボーイに象徴される昔ながらのおおらかなものが、新しいものによって踏みにじられることを描いた映画で、例えば所有地や国などの境界が曖昧だったところに柵を作ってきっちりと分けてしまうように、人間の行動の自由と制限を細かく法によって決めることで窮屈な思いをすること。
 あるいは、かつては文字通り屋外を回っていたであろう保安官が、効率化で車や無線機を使うことでオフィスワークのみになり、窓の外を眺めては犬の小便をする場所の順番が決まっていることに気づくことで、効率化が人間の行動を単純で味気ないものにしていることなどの意味が込められている。
 さらに、物語のキーになる大型トレーラーが、ニューメキシコに向けて多量の仮設便所を運んでいるというのは、何を意味するんでしょ?(ビキニ環礁での水爆実験に向けた、ニューメキシコの核実験場が目的地?)
 脚本のドルトン・トランボならではの、色々な含みがある映画である。
 ポール役のマイケル・ケイン(Kane)は、有名な英国俳優のマイケル・ケイン(Caine)とは別人。
メイキング・オブ・ドッグヴィル〜告白〜 (原題:Dogville Confessions) 2003 デンマーク カラー 1:2.35 2005/07/10(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドキュメンタリー ★☆ 2005/07/10
 これはメイキング? それともドキュメンタリー?
 一見両者は同じもののように思えるが、個人的な解釈は、メイキングは単なる記録情報の提示だけでも構わないが、ドキュメンタリーはさらにそれを掘り下げて、画面の中で起こったことはいったい何だったのか?という作り手の意図が込められている要求される。
 それを踏まえて書き進む以前に、まず何が起きているかがとても判り難い
 その理由として考えられるのが、まずナレーションが無いこと。それからこの映画の画調がすべて本編の『ドッグヴィル』と同じで、その『ドッグヴィル』自体生っぽい映画だったので、この映画でどこが本編でどこがそうではないのか、つまり役者が演技中なのか素の状態なのかの区別がつきにくい。
 だから、時間が経つにつれて次第に役者たちのフラストレーションが高まっていって、撮影終了を迎えてホッとするというその原因も解り難いのだが、感じとしてはトリアーがリハーサルをしないので役者の役への理解が無いうちに撮影が進んでいくこと、演出が即興的でアイディアが固まるまで待たされたりすること、トリアーが役者のフラストレーションをケアすることが、自分の創作に集中することに比べて優先されないこと(ただし、これは意図したことなのか無頓着なだけなのかは不明)。
 でも、以上のことは監督の実力の問題というより、そういう演出スタイルだということに過ぎないと思う。
 それに、役者にとっての撮影中の苦労は、役作りのために手習いをしなければいけないとか、体を作るためにトレーニングしなければいけないとか、そんな役者には付き物の苦労の1つに過ぎない。
 そもそも専ら観客側の私は、結果があってこその製作過程の苦労であって、監督が責められるとしたら役者の苦労を無にするような不出来な映画を作ってしまうことが一番だと思う。
 逆に言うと、『ドッグヴィル』は十分苦労に報いる映画だったと思う。(まあ、二度と一緒に仕事をしたくないと思っても構わないけど。)
 それから、ドキュメンタリーの作り手の意図としては、例として撮影の途中の記者会見で、ニコール・キッドマンが発言して次に発言がトリアーに移ったときに、ニコールの表情が固まってそこに重い音楽がかぶさるというシーンがあって、それは彼女とトリアーの間に大きな溝があったということを示す演出なのだろうが、ドキュメンタリーではそういうことはナレーションを使ってでもまず事実を明確にすべきで、前述のように事実が曖昧なままで音楽を使うイメージ的な演出に走ることは非常に問題で、このドキュメントが事実を編集という演出で捻じ曲げていると疑われても否定できないものになっている。
お早よう 監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 1959 日(松竹) カラー 1:1.33 2005/07/09(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/07/10
ストーリー 感想
 同じ形の平屋の建売住宅が並ぶ住宅地の一角。
 三宅邦子が集めて組長の杉村春子に渡した婦人会の会費が無くなったことで、杉村の家が買った洗濯機に使われたのではないかと奥様方に疑われた。
 子供たちの間では、おでこを押されたらオナラをするのが流行ってたが、三宅と笠智衆の夫婦の杉村の息子の実は、杉村の息子の幸造と共にアパートに住む失業中の佐田啓二に英語を教わりに通うはずが、子供たちは近所で唯一テレビのある大泉滉の家に入り浸っていて、そこに現れた杉村にどやされてしぶしぶ佐田の所に行く。
 実と幸造は、実の友人の善一のガス会社に勤めている父が自由自在にオナラを出せて、それは軽石を粉にして食べているからだと言ったのを真に受けていたが、そのせいか幸造はいつも下痢腹で、パンツを汚しては杉村に怒られていた。
 杉村が三宅の家に来て、杉村が会費をくすねたとのあらぬことを三宅が言いふらしていると文句を言ったが、会費は三宅が杉村の母で助産婦の三好栄子に渡して三好が持ったままだということが判って和解する。
 実と弟の勇がテレビを買ってくれとごねたことに、笠が男の子はぐずぐず文句を言うんじゃないと怒り、実が「大人だって『おはよう。いい天気ですね。』などと無意味なことばかり言っている。」と反発して、それ以来2人は家はおろか学校でも口をきかなくなり、給食費を親にもらうにもジェスチャーで説明する始末。
 そんな杉村が話しかけても無視したことで、杉村は杉村のことを根に持った三宅が子供たちを使って嫌がらせをしていると言いふらして、奥様方は三宅を白い目で見るようになった。
 相変わらず軽石を食べている実に、佐田はおなかに石が溜まって死んだ動物園のアザラシの話をし、実と勇は軽石を食べるのをやめることにする。
 休日、実と勇が家でおなかをすかせていたところに、実の先生が口をきかなくなったことで家庭訪問に来たので、2人はおひつを持ち出して近所の河川敷でご飯を食べていたところ、警官に目をつけられておひつを置いて逃げ出し、夜になっても帰って来なかったので、佐田や三宅の妹で佐田のアパートに翻訳を頼みに出入りしている久我美子が探し、佐田が2人を見つけて家に連れ帰る。
 すると、笠が一億総白痴化の元と毛嫌いしていたテレビを、定年して電化製品のセールスマンになった近所の東野英治郎から買ったのを見て、2人はご機嫌になってしゃべりだし、近所の奥様方もその豹変振りの原因を詮索する。
 2人と幸造が登校途中にオナラを出し合ったが、幸造は出せずにウンコもらしてしまい、家に戻って学校を休むのだった。
 一億総白痴化(MSのIMEは白痴を変換できないぞ。日本語をなめてるのか?)などと言われていたり、テレビが家に無くてテレビのある家に行って見せてもらったりしていた時代に、「テレビ買って!」と子供がゴネるというのが、オナラをネタにするのと共にいかにも子供らしい可愛らしさにあふれている
 それに、周りに家の少ない東京の郊外の堤防の開けた風景と、その近くにある同じ形の平屋の家が整然と並ぶモダンな人工的なイメージ(まるで、ジャック・タチの映画みたい)との対比が素晴らしい。
 しかし、そんなほのぼのムードが全体を覆っている映画の裏では、「おはよう。こんにちは。いいお天気ですね。」みたいに、意味は全然無いが人と人との間の潤滑油になるようなコミュニケーションや、それとは似て非なる奥様方の井戸端会議で繰り広げられるような、根拠の無い憶測+妬みによるお互いの蹴落とし合いなどの、大人に向けた深いメッセージが込められている。
 特に後者は、人間関係を悪くしたり他人を傷つけたりという深刻な問題が、国家の指導者のような表立った人によってあからさまに行なわれるとは限らず、むしろ社会の片隅での何気ない会話の中で無自覚に行なわれることが余計始末に悪い。
 テレビやガセだらけの噂話などの間接的な情報が蔓延する中で世の中をどう見るか、それを踏まえて他人とどういうコミュニケーションをとるかということは、テレビの登場する以前からあった、そして今でも相変わらず世の中に横たわる大きな問題であることを、小津らしいさりげない姿勢でしっかりと描いている
怒れ!力道山 監督:小沢茂弘 1956 日(東映) モノクロ 1:1.33 2005/07/07(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/07/08
ストーリー 感想
 力道山が子供たち相手に開いたプロレス教室に、ある少年が忍び込んでチャンピオンベルトのおもちゃを盗んで捕まるが、それが少年の友達の小児麻痺の少年のためだと知って、力道山は少年に会って立って歩くように励ます。
 来日した太平洋チャンピオンのハンス・メッガー(ラッキー・シモノヴィッチ)と戦うための遠征先で、身体障害者の子供の施設の人と知り合うが、力道山の知り合いの議員(早川雪州)がその施設のために慈善興行を開いたというのは嘘らしいことを聞かされる。
 試合は引き分けになって、再試合が大阪で開かれることになり、力道山は施設のことで議員に掛け合うが取り合ってもらえず、新聞記者たちから議員が施設の補助金をピンはねしているのがバレそうになり、プロレスの売り上げを工作資金にしていたことがわかった。
 力道山はそんな試合を辞退しようと思ったが、代わりに勝った時はファイトマネーを全額もらって施設に寄付し、負けたときは一銭も受け取らないという条件で試合に出ることにする。
 力道山を負かそうとする者たちが横浜のキャバレーに騙して連れて行き、拳銃などで襲い掛かるが、力道山は負傷しながらも一人で大暴れして撃退する。
 大阪での試合で力道山は勝利し、控え室に帰る途中、彼を殺そうとした殺し屋や議員たちが逮捕される。
 力道山が本人役で出ている何本かの映画の1本で、中には荒唐無稽な映画もあったようだが、これはギャングと乱闘になるくらいで、全体的に普通過ぎて面白味が無い。
 実際のプロレス中継と違って、客席が何故かリング上と同じくらい異常に明るい照明。
 出演者は、 力道山はじめ、多くのレスラーが本人役で出演。
 外人レスラー役は実際に力道山と戦うので、演じるラッキー・シモノヴィッチは本物のレスラー。
 彼のマネージャー役がヴィクトル・スタルヒンで、こちらはプロレスはもちろん野球もしないが、日本語の台詞がある。
 スクリプターは小山内美江子。
ひばりの森の石松 監督:沢島忠 1960 日(東映) カラー 1:2.35 2005/07/04(月) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/07/06
ストーリー 感想
 石松が清水次郎長(若山富三郎)のところに子分になるために向っている途中の街道で、3人の男たちに襲われていた男の助太刀に入って逃がすが、男たちは次郎長の子分たちで、逃げた男は3人の1人増川の仙右衛門の親の仇の神沢の小五郎だった。
 そそっかしい石松は、しかし次郎長親分に気に入られて子分になり、小五郎を探し続け、跡目相続争いで追っ手から追われている盲目の姫の一行と知り合う。
 船着場で盲目の男が泥棒に疑われているところを石松が助けたが、実は彼は目明きで牛若の三次(里見浩太朗)という泥棒で、小五郎の居場所が甲州だと彼から聞いた石松は独断で現地に向かい、小五郎が世話になっていた現地の親分たちと乱闘になり、石松を追ってきた次郎長一家たちも加わって、仙右衛門は仇を撃つことが出来た。
 石松は次郎長に命じられて金毘羅様にお金を奉納しに行くことになり、途中やはり四国に向っていた姫たちが追っ手に襲われているところに出くわして助けようとするが、姫の家来たちはみんな死んでしまい、石松が彼女を連れて行くことになる。
 途中、三次と再会して一泊するが、持っていたお金がなくなっていて、三次が地元の泥棒一家に単身殴りこんで奪い返す。
 三次が姫の使いを呼びに先に行き、2人が乗った四国行きの船で、石松が一番強いと言う江戸っ子に気を良くして、酒を飲んで竜宮城に行った夢を見る。
 四国に着いてボウリング場で三次を待っていると、姫を奪おうとする追っ手が現れて石松は応戦し、三次が姫の臣下たちを連れて来て、姫は無事引き渡され、石松は善行をしたことに感激して金毘羅様に奉納しに行くのだった。
 ひばりの男役は申し分ないんだけど、ストーリー的な面白さに欠けるのがいたい。
リアリズムの宿 監督:山下敦弘 原作:つげ義春「会津の釣り宿」「リアリズムの宿」 1952 日(松竹) モノクロ 1:1.33 2005/07/02(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/07/07
ストーリー 感想
 相手の顔が判る程度の面識しか無い自主映画監督(?)の山本浩司と長塚圭史が、プロダクションに入る予定の俳優に旅に誘われ、現地の鳥取の寂しい温泉町の駅で待ち合わせるが、当の俳優は現れず2人は宿に向った。
 会話もかみ合わず気まずい時間を宿で過ごし、翌日近所の浜をぶらづくと、洋服やかばんを海に流されたという尾野真千子が、パンツ一丁で2人に走り寄って来て、彼女も一緒に宿に泊まることになり、3人でまったりした時間を過ごすが、会って2日目で3人がバスを待っているとき、彼女だけ乗ってどこかに行ってしまう。
 残った2人の持ち合わせが少なくなってきたところ、地元の人に食事をおごってもらって、さらに泊めてくれると言われ連れられて行くが、小さな子供たちがいていづらくなったので、1室しかない安い民宿(?)を教えてもらって、あまりのボロさに苦笑する。
 翌朝、宿を経って駅前を通りかかると、高校の制服を着た尾野と再会し、言葉も交わさず2人はその場を離れてあてもなく歩くのだった。
 全体的にとぼけた調子で進む映画で、とぼけたギャグの数々に何度も笑ってしまった。
 2人はお互いの作った映画の話をするのだが、その内容が現実とはかけ離れた頭でっかちなもの(ただし、セミプロなのでレベルは知れている)なのに対し、そんな2人が現実のさまざまな出来事に翻弄されておろおろするさまが面白い。
お茶漬の味 監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 1952 日(松竹) モノクロ 1:1.33 2005/07/02(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★☆ 2005/07/02
ストーリー 感想
 妙子(木暮実千代)と姪の節子(津島恵子)が銀座のアヤ(淡島千景)の店に向う途中、タクシーの窓から通りを歩くのんちゃん(鶴田浩二)を見かけた。
 店に着いて、節子がひとり映画を観に出かけた後、残った2人が節子が修善寺で腹痛になったことにして修善寺に行こうと企み、妙子が夫の茂吉(佐分利信)の会社に電話を入れるが、彼は外出して同郷ののんちゃんとバーで会っていて連絡がとれなかった。
 その夜、妙子が茂吉の帰宅を迎えたところに、修善寺にいるはずの節子にアヤが口裏を合わせていなかったため急に泊まりに来てあわや嘘がばれそうになったところを妙子はしらを切り通し、結局別の友達の高子(上原葉子)を盲腸に仕立てて4人で修善寺に行き、一泊して節子以外の3人がナイターを見に行くと、その客席でアヤの夫が女性と2人でいるところを目にしてしまい、妙子が帰宅するようにとの場内放送で帰る。
 彼女を家に呼んだのは節子で、母が見合いをしろと言っていることに対し、見合いで結婚した妙子やアヤが結婚生活に不満を漏らしていることを聞いて、見合いは絶対に嫌だと言い、妙子はこう見えても結婚は幸せだとそのうち解ると言った。
 茂吉の会社にのんちゃんが訪ねてきて、2人でパチンコをしていると、その店主が茂吉の戦友の笠智衆だった。
 妙子が姉の千鶴(三宅邦子)を訪ねると、節子がしぶしぶ見合いに同意したと言った。
 しかし当日、のんちゃんが家にいた茂吉を競輪に誘っていたところに抜け出した節子が現れ、茂吉は戻るように説得したが、結局彼女も競輪を見ることになり、パチンコ屋までついて来て茂吉は1人で帰り、残った2人はラーメン屋で語り合った。
 節子は親に怒られるのが怖くて茂吉の家に泊まりに来て、2人が一緒だったことが妙子にバレて、きつく言われた茂吉は、「嫌々結婚したって僕らみたいな夫婦がもう1組できるだけ。」と言ってしまい、それ以来妙子は茂吉と口をきかなくなる。
 妙子はアヤに「自分も嘘をつくのに夫の嘘を責めるのは勝手」と言われ、長野の田舎育ちの茂吉が汁かけご飯を食べるのをお嬢様育ちの妙子が嫌がることに対し、茂吉が「気軽にしたいことを解ってほしい」と言ったことに反発して、家を出てしまう。
 茂吉がウルグアイへの海外出張を命ぜられ、妙子以外のみんなが飛行場で見送り、千鶴と節子が家で待っていたところにようやく妙子が帰ってきて、「もういい、しょうがない。」と言ったのを聞いて千鶴と節子は帰っていった。
 その夜、飛行機の故障で茂吉が家に帰ってきて、寂しさで気持ちの高まりが納まっていた妙子は、悪かったと言って普段はお手伝いのふみ(小園蓉子)任せだった台所で2人で夜食のお茶漬けの準備をし出し、夫に付き合ってお茶漬を食べるうちに、気取らないことの良さをしみじみと口にする妙子に、茂吉は「わかった」とだけ言った。
 翌朝、妙子だけに見送られて茂吉がたった後、家に集まった節子と千鶴と高子に妙子は昨夜のことを話し、のんちゃんに会うために帰ろうとする節子には、夫は中身の頼もしさで選ぶように言うのだった。
 一言で言って、さすがの小津作品。
 夫婦の間に隠し事があること、たとえ隠していなくても、専業主婦が見ている夫の姿は、家の中だけのごく一面に過ぎないこと。
 お互いのことをすべて知っているわけでもなければ、食べ物などの趣味やお金の使い方などの生活スタイルも違う他人の2人が夫婦をやっているということを、明暗裏表、絶妙のバランスとテンポで描き出す。
ラストシーン 監督:中田秀夫、製作・原案:一瀬隆重 2001 日 カラー 1:1.85 2005/06/25(土) HDDレコーダー(テレビ東京) ドラマ系 ★★ 2005/06/28
ストーリー 感想
 1965年、日活のスターの西島秀俊は、コンビを組んでいた麻生祐未が結婚引退し、より若手のコンビが台頭してきて、彼らのサポート役を要請されるなどして、酒におぼれスタッフや大部屋出身の妻の若村麻由美にも当り散らして、妻が自殺し彼もまもなく映画界を去る。
 時がたって2000年、小道具係の麻生久美子は、日活撮影所で撮影中のテレビシリーズの劇場版の撮影に加わっていたが、威張り散らす小日向文世のテレビプロデューサーや、やる気のないテレビ出身監督やテレビタレントたちに嫌気が差して、仕事をやめようと考えていた。
 そこに、かつてのスターの西島秀俊だったジョニー吉長が、脇役の瀕死の老人を演じるために、何故か35年ぶりに撮影所に現れ、彼と接していた久美子は彼の思いをいろいろと聞かされた。
 ジョニーがベッドに横たわっているシーンの撮影中、彼は何度もNGを出してプロデューサーや監督にあきれられるが、かつて彼に殴られたことのある照明マンを含め映画のスタッフたちはジョニーをかばい、ジョニーは妻の幻影にも助けられ、ついに彼の登場シーンを撮り終えたとき、実際に病に冒されていた彼は息を引き取り、彼の死を看取った久美子は映画の仕事を続けることを誓うのだった。
 日本映画にとって1965年という年は、それ以前の撮れば多くのお客さんに受け入れられるという手ごたえのあった時代から、それ以降のテレビなどの影響で映画に対する世間の関心が一気に薄れていった境目の頃で、映画会社も黒澤明、木下恵介、三船敏郎、石原裕次郎、中村錦之助など、専属だったトップ監督やトップスターたちを独立させて人員削減し始めていた。
 そういった時代と現代とを対比して描くことの意味は、一言で言えば「ぼろは着てても心の錦 どんな花より綺麗だぜ」で、往年の映画全盛期に比べれば制作費やスケジュールの制約で思うように撮影できない現状でも、失われることのない作り手の心意気を誇高く謳い上げる、活動屋による活動屋のための映画になっている。
 それはそれでいいのだけど、では映画ファンにとってこの映画はどうかというと、正直言って遠い世界の話に思えてしまった。
 この登場人物が全員映画の作り手たちの中に、1人観客側の人物を配して、その人に感情移入することによって作り手たちの気持ちが通じやすくした方がよかったのでは?と思ってしまうほど彼らの世界が実感できない。
 もしくは、諏訪太郎演じる古株のスタッフが若いスタッフに(画面では見えないかもしれない)時計の針がシーンの時間帯に合っていないことに対し、「映らないからいいということじゃないんだ!」と怒鳴るところがあるが、目に見えないはずの「気合い」とか「心意気」といったものがどういうわけかスクリーンを通して観る者に通じて胸を熱くするということをもっと明確に描くことで、映画ファンは作り手たちの努力の恩恵に預かっていることを明確に描いた方が良かったのではないだろうか。
 (逆に、作り手の心意気が無くなってしまうことが映画の死を意味することを明らかにして危機感をあおるとか。)
 こういうことは「精神論」の言葉であっさり否定してしまう人も多いかもしれないが、スポーツ選手が肉体の能力を最大限に出すためにメンタルトレーニングをするように、技術を超えたところで出来が左右されると私は信じるし、逆に技術ばかりで心意気がないものを観ることで感動できるとは思えないということは解ってもらえるのではないだろうか。
四つの恋の物語 監督:西河克己、原作:源氏鶏太「家庭の事情」 1965 日(日活) カラー 1:2.35 2005/06/25(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2005/06/25
ストーリー 感想
 一代(芦川いづみ)、二美子(十朱幸代)、三也子(吉永小百合)、志奈子(和泉雅子)の四姉妹は、志奈子を生んでまもなく死んだ母に代わって男手一つ育て、定年を迎えて再就職する父(笠智衆)と、いとこの隆太(浜田光夫)の6人で暮らしていた。
 父は、退職金の250万円から、結婚資金として娘にそれぞれ50万円ずつ渡し、一度結婚に失敗した一代は喫茶店を開くことを何となく考えていて年上の男と不倫をしていた、二美子は結婚しようとしていた下請工場の息子の長田(おさだ、藤竜也)に援助した。
 三也子は父が勤めていた会社に出入りしていた重役の息子の尾崎(関口宏)に見初められたが、彼女が世話を焼いていた隆太は三也子のことが好きだった。
 志奈子は競馬に夢中で、尾崎にくっついて三也子に結びつける見返りに、グライダーのクラブの会費を払わせていた。
 就職を控えていた隆太は、電車でチンピラに絡まれていた女学生を助けようとして刺されて入院したり、三也子がプロポーズされたと知って動揺して思うように就職できなかった。
 二美子は、長田が工場への融資を得るために親会社の社長令嬢と結婚することになったことを知った。
 隆太は、学生運動をしていた経験から組合をスパイする目的で就職したことがばれて組合員から殴られて入院し、看病に行こうとする三也子を、一代は尾崎と一緒にするために止めようとするが、振り切っていった三也子を結局認める。
 父は行きつけの料理屋の女将の玉子(横山道代)に言い寄られてデレデレだったが、彼女は彼の退職金が目当てで、無いと判ったとたんあっさりと別れた。
 一代は志奈子からお金を借りて喫茶店を開くことを決め、隆太は三也子に伴われて退院した。
 四姉妹をはじめとするキャストは豪華だが、それ以外は全くといっていいほど盛り上がりもなければ内容も薄くオチも弱い。
 タイトルから、四姉妹のそれぞれの恋物語のように思えるが、四女の和泉雅子は対象外で、代わって対象になっていたのは笠智衆だった。
山猫は眠らない2 狙撃手の掟 (原題:Sniper 2)   2002 米 カラー 1:1.85 2005/06/23(木) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/06/24
ストーリー 感想
 疾病除隊になった元狙撃手のトム・ベレンジャーは、軍に呼び戻されユーゴスラビアで民族浄化と称してイスラム教徒を殺している将軍の暗殺を命ぜられ、相方として現地語を話す死刑囚の狙撃手が同行することになった。
 2人はヘリから降下し、現地の連絡員の助けで暗殺は成功するが、現場から逃げるとき相方が捕まってしまう。
 トムが護送中の彼を救出するが、彼の本当の目的はわざと捕まって捕らわれている政治犯を連れ出すことだった。
 執拗に迫る追っ手を振り払いながら逃げ、ついにヘリの待ち合わせ場所に迫ったとき、敵の狙撃手との対決になって相方が撃たれ、トムは敵を倒して重症の相方と政治犯をヘリに乗せ国外に逃げ去った…。
 前作の『山猫は眠らない』(1992 米)は、狙撃手のストイックさをピリピリする雰囲気の中で描いていて、監督のルイス・ロッサに注目したのだが、結局彼はその後『スペシャリスト』(1994 米)、『アナコンダ』(1997 米)止まりになってしまった。
 そして、別スタッフで作られたこの続編は、わざわざ10年ぶりに作ったにしては、全くありきたりな暗殺モノ、敵陣脱出モノに過ぎなかった。
 この調子じゃ、近々公開されるシリーズ3作目も思いやられる。
 トム・ベレンジャーって、確か20年ぐらい前にはもうすぐ俳優を辞めるかもしれないみたいなことを言ってたはずだけど、今こんな映画に出てるということは、心境が変わったということか? まあ、変わって続けてもらう分には一向に構わないけど。
散り行く花 (原題:Broken Blossoms) 監督:D・W・グリフィス、原作:トーマス・バーク 1919 米 白黒、サイレント 1:1.33 2005/06/20(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/06/24
ストーリー 感想
 中国人僧侶のチェン・ハン(リチャード・バーセルメス)は、非暴力の御仏の教えを布教するために、欧米列強が進出していた上海を出てロンドンに来て数年、彼は挫折して阿片窟や賭博場で過ごしていた。
 一方、甲斐性なしのボクサーのバローズ(ドナルド・クリスプ)は、逃げた女が残した赤ん坊のルーシー(リリアン・ギッシュ)を15歳になる今まで殴って当たり散らしながらこき使っていた。
 チェンは寂しそうに通りを歩くルーシーをいつも眺めて恋心を抱くようになった。
 ある日、ルーシーは試合を控えたバローズの手に誤ってやけどを負わせてしまい、父のお仕置きが怖くなってその夜家を抜け出し、チェンが経営する店に転がりみ、生まれて初めての親切を彼から受けることができ、チェンも困っている人を助けたいという初心を取り戻した。
 しかし、バローズの友人がチェンの店にルーシーがいることに気付き、バロースは試合に勝った後の夜、チェンの留守中に店に行き、チェンが戻った時にはルーシーが家に連れ戻された後だった。
 ルーシーは自宅でバローズに折檻され、銃を持って駆けつけたチェンが駆けつけたときには彼女は息を引き取っていて、バローズがチェンに襲い掛かろうとするところを撃ち殺し、ルーシーの亡骸を抱いて自分の店に帰り、自らの命を絶つのだった。
 なにしろ、人物の顔が画面いっぱいに映し出される「クローズアップ」が画期的な新手法だった時代の映画なので、今の映画と同じ尺度で採点することなど不可能。
 というわけで、この映画で一番印象的なのはリリアン・ギッシュの可憐ではかない魅力で、笑顔を忘れた彼女が愛想笑いをするのに2本の指で両方の口角を上げる有名なしぐさや、悲劇的な死に様など、彼女を見るための映画としては十分堪能できる。
”アイデンティティー” (原題:Identity) 監督: 2003 米 カラー 1:2.35 2005/06/17(土) HDDレコーダー(WOWOW) ミステリー系 ★★★ 2005/06/20
ストーリー 感想
 ある死刑囚の犯行当時の日記が見つかったことで、弁護士がその日記を死刑にできない精神状態だったことを示す新たな証拠として取り上げ、裁判官と検事を相手に翌日の死刑執行を差し止める再審理をしていたが、出席するはずの当の死刑囚が現れなかった。
 一方、ネバダ州の北部で大雨で道路がふさがれ、人里はなれた一軒家のモーテルに女優と彼女の運転手(ジョン・キューザック)、彼がひいて重症を負わせた女と彼女の夫と小さな息子、売春婦、結婚したばかりのカップル、それに囚人を1人護送中の刑事(レイ・リオッタ)が集まり、モーテルの主人を合わせて11人が電話も無線も通じない状況で一夜を過ごそうとしていた。

<<< ここから、未見の人には読まない方がいいかもしれないことを、一応警告 >>>

 やがて手錠でつながれていた囚人が脱走して殺人が起こり、人々が次々と死んでいく…。
<<< 未見の方は以下の感想を読まずに、白紙の状態で観ることを勧めます >>>

 この映画は、クライマックス直前に明かされる物語の真相に関する映画のように見えて、実はアガサ・クリスティのあの作品の事実上の映画化(もしくは、過去の映画化作品のリメイク)であるミステリー作品と考える方が正しいだろう。
 結論を知らない状態でストーリーを追っていって、時々明かされるサプライズに驚きながら事件の真相を推理するという、典型的なミステリーの楽しみ方をすべき映画であって、そういう点でミスディレクションがいくつも巧みに盛り込まれていて良く出来ている。
 犯人が殺す相手をある場所にわざわざ集めるという元のストーリーに比べ、この映画では複雑な精神病という設定を利用して、人々が偶然集まったようになっているが、これはそんな設定が許されるようになった現代向きの、より自然なストーリーと言えるだろう。
油断大敵 監督:成島出 2003 日 カラー 1:1.85 2005/06/13(月) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★☆ 2005/06/15
ストーリー 感想
 平成4年。2年前に妻に死に別れた役所広司は、駐在から刑事になって1年になるが、不規則な勤務時間と一人娘の菅野莉央との育児との両立が難しく、警備会社への転職を勧められていた。
 娘の乗っていた自転車が壊れて、それを直した柄本明が泥棒の道具を持っていたことから役所が柄本を連行し、指紋の照合で窃盗の常習犯だとわかった。
 ところが、柄本は現場に指紋を残していても言い訳をして犯行を認めず釈放されることが多かったのだが、自転車のお礼を素直に言う役所のために、多数の余罪を含めて白状した。
 しかし、実は柄本は痔で、健康保険が使えないので、捕まって警察病院で治療を受けようとしたのだった。
 莉央は教会の保育園の夏川結衣先生に夜遅くまで預かってもらうことが多く、ある日莉央が病気で一緒に家で看病していたときに役所は彼女と結ばれ、夏川は家に入り浸るようになったが、莉央は父が彼女と再婚することに反対した。
 柄本は役所に一件一件の犯行現場に連れて行かれ取調べを受けるうちに、わざと脱走してみせたりして、役所に泥棒刑事としての心得を教える先生のようになっていた。
 年が経って、柄本が出所して警察署の役所に挨拶しに来て、高崎市の別の管轄の工場で窃盗を始めたが、吐血をするようになって、行きつけの居酒屋の主人の淡路恵子に、顔を出さなくなったら預けている500万円を使っていいと言い残して去った。
 彼女を介して柄本とコンタクトをとっていた役所は、柄本が胃ガンらしいと感じたと彼女から告げられる。
 柄本は捕まり、取調べをした役所は、今では18歳になって看護学校に通っている娘(前田綾花)が、自分の意に反して外国で看護活動をしようとしていたり、それでもこれまで彼女は自分のことを思ってくれていたことや、柄本の泥棒になったいきさつなどを話すと、柄本は泣き出して自白した。
 しかし、柄本は胃ガンではなく胃かいようで、また警察病院でただで治療することになり、娘は旅立った。
 現場に柄本を連れて取り調べた役所は、彼に学んだように油断せず、お互いに健康に気をつけて頑張ろうというのだった。
 なんといっても柄本明演じる泥棒のキャラが面白くて、仕事に対してプロとしての姿勢を持ち、腕が落ちたと感じたときは潔く辞める覚悟を持っているが、なぜか役所広司演じる泥棒刑事に捜査の手ほどきをする師匠としての振る舞いをするというとんでもない役。
 しかし、この映画の主役はあくまで役所広司で、映画全体に占めるエピソードの割合は柄本よりも役所がらみの方が大きいのだが、残念ながら柄本以外の登場人物がらみのエピソードはというと、妻を亡くした役所が夏川と再婚しようとして娘に反対されたり、娘が大人になって自分の元を離れようとすることに役所が反対するなど、ありきたりで弱いのがなんとも残念。
 役所が柄本によって刑事として成長することと、娘が看護の仕事を進路に選ぶことが、柄本が泥棒家業を「天職」と言うのと合わせて、3人の天職についての話なのだが、それぞれのエピソードが結び付けられていない構成になっているのがもったいない。
 のんびりした雰囲気がいい映画なのだが、関連性をもたせるとか、さもなければ柄本がらみのエピソードの比重を増やすとかの方が絶対に面白かったと思う。
若い東京の屋根の下 監督:斎藤武市、原作:源氏鶏太「緑に匂う花」 1963 日(日活) カラー 1:2.35 2005/06/13(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/06/13
ストーリー 感想
 19歳のOLの蕗子(吉永小百合)の乗った自転車が、出会いがしらに下宿を追い出されて引越し中の大学生の三上(浜田光夫)のリアカーとぶつかって一悶着するが、彼の引っ越し先は彼の大学の先輩で蕗子の兄の次郎(近藤宏)の紹介で、蕗子が両親(伊藤雄之助、三宅邦子)と弟の四郎(太田博之)と住んでいる家の、蕗子の兄で山で遭難して死んだ三郎の部屋だった。
 父が定年間近で家計の助けになることもあって下宿が決まるが、他の家族が三上を気に入ったのと違って、蕗子は彼に敵意むき出しだった。
 蕗子がかつての同級生の金谷(山内賢)たちと入院した青山先生(内藤武敏)の見舞いに行くと、そこで結婚前の恋人に密かに見舞いに来ていた兄の太郎(下元勉)とばったり会った。
 蕗子が父の誕生日に太郎を除いた次郎、律子(初井言栄)たち兄弟の家族を呼び寄せ、定年後の両親の生活のことで話し合い、生活費を蕗子が兄弟から毎月集金することになり、裕福だが会社重役令嬢の妻(山岡久乃)と愛情がない太郎や、放送作家志望で生活苦で妻とギクシャクしている次郎らの家庭を目にした。
 蕗子は相変わらず三上に冷たかったが、彼のバイト先の野球チームと自分の会社のチームの試合で三上を応援してしまったり、三上が同級生の渡瀬(松尾嘉代)と仲良くするのを見るとやきもちを焼いた。
 太郎の息子が両親が嫌いになって家出し、蕗子が家に連れて行って兄夫婦に子供に愛情がないことを批判し、兄たちは目覚めて子供を抱きしめた。
 重役令嬢の渡瀬が蕗子の父の再就職を世話したことで、蕗子は三上をでしゃばりだと反発し、蕗子のことを思う三上は悩みを抱えたまま同居することがつらくなって引っ越そうとするが、蕗子を巡る三上の恋敵だった金谷が蕗子の本心を知って彼女を炊きつけ、蕗子は三上に告白して引越しを思いとどまらせるのだった。
 吉永小百合&浜田光夫らの持ち味を生かしてそつなくまとめられた明朗青春映画だが、それ以上の何かが無いのがつらいところ。
 ラストシーンで、小百合&橋幸夫が歌う主題歌に乗って、完成したばかりでガラガラの首都高速を車が走る。
喧嘩太郎 監督:舛田利雄、原作:源氏鶏太 1960 日(日活) カラー 1:2.35 2005/06/10(金) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/06/11
ストーリー 感想
 商事会社に勤める石原裕次郎は、子供のころから喧嘩っ早く「喧嘩太郎」と言われていて、カーッとなったときは母親を思い出して喧嘩を自制していた。
 ボクシングの試合を見に行ったときに、チンピラが男の子に手を上げたことを止めようとして喧嘩になって警察に行き、警官の芦川いづみの取調べを受ける。
 その子は、ライバル会社の東洋物産社長の隠し子で、社長を警察から引き受けに来た娘の中原早苗に隠すために、とっさに男の子は裕次郎の息子にさせられ、新聞に載ってしまったことで、普段から裕次郎の遅刻をとがめていた課長の東野英冶郎はカンカン。
 しかし、裕次郎が社長室に呼ばれると中原がお礼を言いに来ていて、社長と芦田伸介部長は裕次郎に、東洋物産が国の賠償品の売り込み先の東南アジアの要人相手に開くパーティーに出席して、中原に接近して情報を入手するよう命令した。
 後日、裕次郎は電車の中で芦川を見かけて話しかけるが、彼女はスリを追っていたところで、おかげで警官だとばれてしまい、このことで同僚と彼女をデートに誘えるかで賭けをしてデートをすることになった。
 デートの最中、中原と彼女の友人で芸者の白木マリに偶然会い、裕次郎を気に入った中原は倍の給料を出すから東洋物産に来ないかと言うと、裕次郎はキッパリと断る。
 中原は、父の愛人親子と一緒に住むことになったことを祝う席に裕次郎を招待するが、中原との結婚を狙う秘書の神山繁が、中原に接近しているのは出世のためだろうと裕次郎をののしり、裕次郎も彼らの生活が合わないから二度と会わないと行って去り、中原は神山にキッパリと結婚を拒否する。
 東野が寂しい定年退職を迎えたとき、彼に暖かく接した裕次郎と飲んで、国の資金が使われる取引で儲けようとする社長たちに対する公憤から、裕次郎に触発されて「喧嘩買います」のプラカードを持って通りを歩き、すし屋の夫婦喧嘩を止めに入ったことがこじれて大乱闘になって留置所に入れられ、裕次郎は引受人として芦川を呼ぶ。
 釈放されて裕次郎が出社した後、東野は芦川に、裕次郎を自分のように課長止まりで終わらせないように、中原と結婚させて出世させてやりたいから身を引いて欲しいと言うが、芦川は裕次郎が自力で出世するための内助の功では負けないと言い張る。
 一方、裕次郎はスリの藤村有弘から、芦川から逃がしてくれたお礼に、彼が芦田部長から盗んだ鞄に入っていた汚職の証拠書類を渡され、そのことで話し合うために料亭で社長たちを待っていると、代わりに芦田に裕次郎を骨抜きにすることを頼まれた白木と、彼女が連れてきた中原が現れ裕次郎に正式に求婚するが、裕次郎は断る。
 そして、別室で社長と芦田部長と、中原に振られて寝返った神山と贈賄相手の政治家が会っていて、そこから裕次郎の部屋に来た社長と部長が金でかたをつけようとするのに裕次郎は怒って辞表をたたきつけて出て行くと、何者かに連れ去られて監禁、直後に貿易省の局長が汚職で逮捕される。
 事件で国会の証人喚問が行われるが証拠不足で、証人に立った中原は「芦川がいるからと裕次郎に振られた。」と当日のことを話して、傍聴席にいた芦川の誤解を解いた。
 裕次郎が自力で一味を全員殴り倒して脱出して証言するも証拠の書類は奪われていて、万事休すかと思ったとき、白木が料亭で撮っていた写真に会合の現場が写っていたことが決め手になって汚職は明らかになり、裕次郎は会社に戻ることになり、芦川と2人で国会議事堂を後にするのだった。
 裕次郎が国会の証言で、自分が小学生だったころに今(1960年当時)の年寄りが始めた戦争の賠償を利用して、年寄りが私服を肥やしたり国会で派閥争いの茶番劇をしていると言い、正義感にあふれる裕次郎演じる若者と対比させて批判していて、東野英治郎も酒場で社長令嬢と結婚しようとしない裕次郎に「おまえはバカだ。でもバカな奴が好きだ。近頃はバカな奴が少なすぎる。」と言ったりする。
 裕次郎は、『狂った果実』『俺は待ってるぜ』のようなクールな役や、『赤いハンカチ』のような渋い役もやったが、この映画や『あいつと私』のように青春モノでの軽い役が一番魅力的かも。
 メインの女優3人も東野英治郎も持ち味を発揮していて、デートでのお化け屋敷などのコミカルなシーンも数々あって、舛田監督によるテンポのいい上出来の映画。
 デートで最初に丸の内日活で『赤い夕陽の渡り鳥』(1960年7月1日初日。『喧嘩太郎』は1960年8月10日初日)の小林旭と宍戸錠が荒野で撃ち合っているシーンを見るのだが、裕次郎は映画より隣の芦川いづみにちょっかいを出すほうに熱心だった。
 それから、1950年代後半に頂点に達した日本映画産業は、下り始めた1960年ごろから映画の中に広告らしいものが挿入されるようになり、この映画でも井関農機、日立、いすゞなどのマークが、ちょっと不自然に大きめに登場する。
この世の外へ クラブ進駐軍 監督&脚本:阪本順治 2003 日(松竹)、カラー 1:1.85 2005/06/04(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/06/09
ストーリー 感想
 復員してきた萩原聖人は、進駐軍相手にジャズを演奏していた楽隊の先輩の松岡俊介の紹介で、村上淳やMITCHと一緒のジャズバンドに加わり、和太鼓しかたたいたことのないのに、お金につられてドラマーになりすましたオダギリジョーも加わった。
 彼らは兵隊や下士官相手に基地で演奏するが、聞いていたラッセルは本物のジャズには程遠いことを指摘した。
 オダギリは松岡の部屋に転がり込み、村上は生き別れた弟を探していた。
 バンドはジャズクラブで演奏するようになったが、そこのオーナーに村上が引き抜かれ、他の4人は首になり、オダギリも松岡の部屋を出てメンバーはバラバラになった。
 村上は浮浪児になっていた弟と再会し、MITCHはヒロポンで行き倒れてたのをラッセルが見つけ、メンバーたちが弔いに行きつけの飲み屋に集まった。
 ラッセルは萩原に「この世の外へ」の楽譜を渡した直後に死んでしまい、メンバーは基地で朝鮮戦争に出征するかつての聴衆たちの前でその曲を演奏した。
 エンドクレジットで、ジョージ川口など終戦直後にバンドで演奏していた人たちの最近の演奏の映像が映され、「この人たちの往年の物語だったんだ」と、人間と時代とドラマが初めてリンクして実感が湧いたんだけど、それは映画の本編ではそんなリンクは感じられなかったということで、観ている間ずっと「この実感の無さは何なんだろう?」と思っていた。
 セットなどは頑張って作られているんだけど、腹が減ったとか金が無いとか戦争に負けたとか、バンドマンたちをはじめとする日本人たちの生活の切羽詰った感が全く感じられず、「戦後のドサクサごっこ」をしているようにしか見えない。
 最近の映画だと、同じオダギリジョーが出ていた『血と骨』では人間が生きている感じがちゃんと出ていたから、両者の違いは一言で言ってやはり演出によるものということになるのだろう。
 あと、「ラッキーでストライクじゃないか!」という台詞や、審査中の笑顔があだとなって落ちたりなど、カッコつけたり笑いを取ろうとした狙いがすべって浮いてしまったのも原因かも。
黒船 (原題:The Barbarian and the Geisha) 監督:ジョン・ヒューストン、原作:エリス・セント・ジョセフ 1958 米、カラー 1:2.35 2005/06/04(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/06/09
ストーリー 感想
 ペリーとの条約に則って、タウンゼント・ハリス(ジョン・ウエイン)と通訳のヒュ−スケン(サム・ジャフェ)が総領事として下田に来航したが、下田奉行田村(山村聡)は上陸は認め家を貸し与えたものの総領事としては扱わず、村の人々には彼らに物を売らせなかった。
 ハリスからの手紙が届けられた江戸幕府では、彼の扱いを討議した結果、田村にハリスを厚遇させて結論を先送りした。
 田村は宴席でハリスに芸者の唐人お吉(安藤永子)を紹介し、彼女にハリスの家に住まわせて情報を得ようとし、ハリスもこれを受け入れた。
 ハリスとお吉は会話を交わすうちにお互いを理解するようになったが、村の人々はハリスたちだけでなくお吉にも嫌がらせをするようになった
 下田に入港した外国船から持ち込まれたコレラ菌が蔓延し、ハリスたちは村人たちを看病し、家に火を放って感染を抑えたことで、村人たちは彼を慕うようになり、田村は家来を引き連れてハリスたちを江戸に連れて行くことにした。
 ハリスは将軍に貢物を差し出し、開国が日米両国を進歩させると訴えたたが、ハリスに理解を示していたキーパーソンの四条がやぶさめの最中に反対派に暗殺され、田村は状況をこじらせないためにハリスたちを下田に帰した。
 幕府の協議の結果アメリカとの新条約が結ばれることになったが、田村は主君にハリスの暗殺を命じられ、お吉に手引きを頼んだ。
 田村が忍び込んだハリスの寝室には代わってお吉がいて、駆けつけたハリスを田村は斬ることが出来ず、家を出て切腹する。
 そして、田村を裏切って死に追いやったお吉もハリスの元を去るのだった。
 現代のBarbarian(野蛮人)とは、日本人から見たアメリカ人ハリスのこと。
 でも、この映画でのハリスは、野蛮人どころかとても紳士的で、彼が日本の庶民のために手を尽くしたりして、友好的に日本との関係を深めようとする当たり障りのない内容の映画なのだが、そのせいか映画としての魅力も当たり障りのないものになってしまって、『ラスト サムライ』とは正反対の結果になってしまった。
 ジョン・ウェインが日本人の大男と拳で殴り合って倒したあと、大男の相棒の小男に柔道で投げられて完敗するシーンがあり、喧嘩すれば負けないイメージがある彼にとっては珍しい。
 撮影はすべて日本で行なわれたので、変な発音の人が少しいる以外間違った日本のイメージはほとんどない。(東大寺の南大門や大仏が江戸の建物として現れるけど、これはわざとだから間違いのうちには入らない。)
 お吉役の安藤永子は、出演作はどうやらこれ1本だけのようで、メークがアメリカっぽかったから、ひょってして日系人?といったことすら判らない。
バーバー吉野 監督&脚本:荻上直子 2003 日、カラー 1:1.85 2005/06/04(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2005/06/07
ストーリー 感想
 ある山村では、約100年間「バーバー吉野」が代々、男の子たちをマッシュルームカットのような「吉野刈り」の髪型にして、男の子たちが山の神に祈る祭りで、何故かハレルヤを合唱する風習があった。
 そこの小学校に、東京から茶髪の男の子(石田法嗣)が現れて、先生たちと吉野のオバサン(もたいまさこ)はしきたりだからと彼も吉野刈りにしようとするが、彼はその決まりに疑問を感じて拒否した。
 同級生たちも彼を仲間はずれにするが、やがてオバサンの息子を含む4人が彼と仲良くなり、自分たちもかっこいい髪型になりたいと思い始め、隣町の床屋に行くと、そこの子供に髪型をバカにされたりして、結局切れなかった。
 それでも、祭りの日に5人は髪を染めて現れ、他の子供たちも「本当は吉野刈りが嫌だった」と口にし出し、男の子は吉野刈りをしなくてもよくなったが、テレビではパリの最新の髪型として、吉野刈りそっくりの髪型が紹介されていた…。
 子供が色気づいて髪型を気にするようになるまでを可愛らしく描くことを目指した映画で、あくまで子供向けの映画で深く考えるようなものではないのかもしれないが、それでも大人の目で内容的に真面目に観ると、色々と見過ごせない点が多い。
 というのも、基本的に理不尽な校則が中心となっている話で、それは表現の自由にも係わる人権問題、規則や道徳をたてに出る杭を打とうとする差別問題、長年の伝統だというだけで惰性で続けて変化しようとしない日本人にありがちな問題、都会の文化に比べて引け目を感じてしまう田舎人のコンプレックスなど、実はかなりシリアスな問題の数々に触れるストーリーなのに、この映画ではそれらの方面には深く突っ込まずに、代わりにオチからも解るように吉野刈りが悪いのは単に「カッコ悪いから」ということになっている。
 ほほぅ。個人の選択の自由よりも、(所詮は世間が決めることである)センスの良し悪しの方が優先されるってか?
 制服ををカッコ良く作ることで人々の心を惹きつけたナチスみたいなことは、企てた方も支持した方も理に適ってるってこと?
 最初に書いたように、思い付きをそのまま映画にしただけの、軽く観られるつもりで作った映画なのかもしれないけど、映画という形で自分が表現していることは何を意味するのか、もうちょっと考えた方がいいんじゃないの?
プレイタイム 監督:ジャック・タチ 1967 仏、カラー 1:2.2(放映版は1:1.66にトリミング) 2005/06/03(金) HDDレコーダー(NHK-BS2) 感覚系 ★★★ 2005/06/05
ストーリー 感想
 パリの空港にアメリカからのツアー客が着き、バスで市内に着いた頃、そこのオフィスビルにユロ(ジャック・タチ)が男を訪ねてやって来た。
 その人は現れたが、ユロは間違ってエレベーターに乗ってしまったためすぐにはぐれてしまい、パーティションで死角だらけのオフィスを探し歩いたり、ビルの中を探し回って展示場をうろつく怪しい男に間違われたり、展示場の係員に間違えられたりする。
 男には会えず、夕方になってビルを去ると、偶然に戦友に会って、彼のマンションの一室に招待されるが、その隣の部屋に探していた男が住んでいることに気付かないまま帰ると、偶然犬の散歩をしていた男と、その夜に開店するために突貫工事の真っ最中のクラブの前でやっと会うことが出来た。
 そのクラブでは、工事が終わってないのに客を入れ始め、床がはがれたり様々な設計ミスが発覚したりウエイターが慣れてなかったり、客が多すぎて食材が無くなったりで、てんやわんや。
 ユロは男と別れると、クラブで働いている別の戦友と会って店に招待され、アメリカのツアー客たちとフロアで踊るはめになり、背の高い彼が天井の飾りを取ろうとして天井が落ち電線から火花が飛び出すが、それでも客たちは乱痴気騒ぎ。
 いい気分のユロとツアー客たちが外に出ると夜が明けていて、ユロは知り合った女性が帰るバスに乗る前にお土産を渡して別れた。
 前半の舞台になるビルの内装が、ほぼメタリックっぽい色一色で、外に見えるビルの外壁や、通りを走る車も原色のものがほとんど走っていないなども含めて、大半が彩度の低い色で覆われている画面に、まず何より強い印象を受けた。
 それは、ビルの壁面が一面ガラス張りだったり、操作方法で戸惑うほど複雑な電子制御板だったり、オフィスがパーティションできれいに区分けされていたりなどと合わせて、モダンでスマートな印象の反面、温かみの欠ける違和感もさりげなく感じさせている。
 ビルがガラス張りなのはギャグにも多く生かされていて、ガラスのドアが開いていると思ってぶつかったり、向こうの話し声が聞こえなくてサイレント映画のように見えたり。
 ジャック・タチ演じるおなじみのキャラクターのユロおじさんは、何を目的に行動しているのかもわからず、その場その場で周りに調子を合わせるとぼけた役で、そんな彼をはじめ、多くの人たちが上に述べたガラスのギャグのようなとぼけたギャグを、映画の中のあちこちで多数見られるのも楽しい。
 ユロおじさんは、これまで『ぼくの伯父さんの休暇』でしか見たことがなくて、一言もしゃべらなくてあまり動かない印象があったが、ここでは動かないということはなく、台詞のあるシーンも1つあった。
幕末 監督&脚本:伊藤大輔、原案:司馬遼太郎 1970 日(東宝)、カラー 1:2.35 2005/06/02(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/06/05
ストーリー 感想
 幕末の土佐藩では、勤皇派の武士が現れ旧来の藩士たちとの対立が始まっていた。
 足を怪我していた商人に下士の中平が情けで下駄を履かせたところ、通りですれ違った上士の山田(山形勲)に、武士以外にはご法度の下駄を履いていたことで因縁をつけられ斬り殺され、駆けつけた中平も身分が上の山田に逆らえずに斬り殺されるが、駆けつけた中平の弟が山田を槍で刺し殺す。
 中平は勤皇派の武士たちの集まる屋敷に逃げこんで、坂本竜馬(中村錦之助)は捜索中の役人に引渡しを拒否するが、中平は切腹した。
 竜馬は藩内の小さな争いに嫌気がさして脱藩し、江戸に行って千葉道場に落ち着き、対立する勝海舟(神山繁)を斬ろうとう屋敷に乗り込むむが、国内外の状況を的確に捉えて日本の将来を考えている勝に共感した。
 竜馬は長崎に行き、海援隊の足がかりとなる海運業の亀山社中を始めたが、各地を飛び回る竜馬に代わって留守を守っていた近藤長次郎(中村賀津雄)を、勤皇派の仲間が町人上がりと馬鹿したことに嫌気が差して外国船に乗ろうとしたことを規約違反として自害に追い込み、それを知った中岡慎太郎(仲代達矢)は怒って彼らを罵った。
 竜馬は京都に行って薩長同盟の立役者になり、寺田屋の女中で竜馬を救ったお良(吉永小百合)と共に鹿児島に逃れて結婚し、戦火を避けるために徳川慶喜に大政奉還させるように働きかける。
 竜馬は京都の近江屋で、海外でうまくいっている外国の国のように、侍も天皇も含めすべての人が平等な国を目指すことを中岡相手に説いたが、そこに刺客たちが現れ2人は暗殺された…。
 始まってすぐの山形勲がらみの殺陣が、泥酔した山形が千鳥足で刀の刃を無抵抗の相手の体にそっと押し付け、ゆっくり刀を引くと着物が音もなくパックリ割れて相手が苦しみだすということを、1人を斬り殺すまでに2、3回、しかもこれを2人に対して同じことを延々と繰り返すもんだから、あまりの不気味さにこれは凄いと見入ってしまった。
 でも、そんなアクションの見せ場はここまでで、あとはご存知竜馬の人生を描いた映画で、映画のかなりのシーンが竜馬を中心に新しい日本について熱く語ったり討論を戦わせることに当てられている。
 しかしこれがなんともしっくりこない気分にさせられたのは、50〜60年代の中村錦之助は大好きなのだが、萬屋錦之介に改名する直前の1970年のこの作品あたりからオーバーアクトになってきて、いや必ずしもオーバーアクトが常に悪いというわけではないのだが、大声を張り上げて討論する彼の演技は、カリスマ的な魅力とは逆の豪快もしくは神経質な印象だし、天皇が現人神である限り日本を神の国と思う過ちを避けるために天皇制廃止と口にする自分におびえる繊細なキャラとも反する。
 クライマックスにはその語りの演技のテンションが最高潮になり、斬られて動かなくなって死んだかと思ってから、再度2人が動き出してお互いの名を叫び合ったり、窓から落ちて屋根を這い上がったりと、本当に死ぬまでなんと5分半にも渡っていろんなことをする。(やり過ぎ!)
 これらの点に関して、これが遺作になった伊藤監督の演出に疑問を感じてしまうが、ひょっとして中村プロ製作の映画だから、監督より錦之助の発言力が大きかったってことなのかなぁ?
女と三悪人 監督&脚本:井上梅次 1962 日(大映)、カラー 1:2.35、103分 2005/05/30(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/06/05
ストーリー 感想
 小判の金の含有量が減って物価が上がり続けていた幕末の江戸両国の通称泥棒横丁町。
 芝居の女座長の喜久之助(山本富士子)は、借金をしている但馬屋(三島雅夫)の愛人だったが、小判の偽造をしている竜運和尚(勝新太郎)や浪人の鶴木勘十郎(大木実)も彼女を取り巻いていた。
 追われていたスリの生首の銀次(小林勝彦)に財布を懐に入れられたことからスリと間違えられた芳之助(市川雷蔵)は、目明しに追われて喜久之助の芝居小屋の楽屋に逃げ込み、どうらんを顔に塗って逃げおおせるが、匿ってもらったお礼に、好きな喜久之助に冷たくされ芝居を拒否する主役の楽之助(島田竜三)に代わって、もっと見事に弁天小僧を演じ、終わるやいなや姿をくらました。
 その夜、お光(中村玉緒)が女中をしている居酒屋に勘十郎や銀次たちが飲んでいるところに芳之助が現れて意気投合。
 そして喜久之助も現れ、彼女が但馬屋に向うのに芳之助を同行させ、身の上話をするうちに2人の間に愛が芽生え、その夜は別れたが、喜久之助の期待通り芳之助は翌日一座に加わるために芝居小屋に帰って来た。
 恋敵同士の芳之助と勘十郎は、喜久之助の借金返済の金を作るために竜運の賭場に行って、サイコロのいかさまを見破って勝ち続け、竜運は主役の座を取られた楽之助を芳之助と戦わせ、芳之助は楽之助を殺してしまい、勝敗を賭けて勝った芳之助たちは竜運から百両を勝ち取り、芳之助は喜久之助と会って喜ぶが、かつて恋敵を殺して女に去られたため芝居をやめて旅するようになったことを思い出し、喜久之助から身を引こうと思うようになる。
 但馬屋は喜久之助から返された百両が偽金だと気づいて、目明しに通報して金を工面した恋敵の芳之助を捕らえさせ、勘十郎は竜運に自首を迫って、竜運はそれに同意して偽金作りを名乗り出て芳之助を釈放させる。
 勘十郎は芳之助を喜久之助に会わせて結び付けるが、芳之助に恋心を抱いていたお光が嫉妬のあまり竜運の手下から聞いた楽之助殺しを密告して、目明したちが芳之助のいる芝居小屋に向かい、喜久之助は芳之助に成りすまして舞台に立って目明したちの注意を引き付けているすきに、再会を約束して芳之助を逃がす。
 勘十郎は喜久之助の元を去り、米を買い占めて値上がりさせていた勘十郎の店に押し入って彼を斬る。
 竜運が護送中、彼の寺から火の手が上がり、混乱に紛れて手下たちが竜運を逃がす。
 江戸のはずれで勘十郎と竜運と芳之助がばったり会い、芳之助は旅に出てあとの2人は江戸に残り、喜久之助は芳之助と再会する日を思いながら舞台で舞うのだった…。
 山本富士子&雷蔵の美男美女コンビがツーショットも単独ショットも本当に美しいったらありゃしない。
 特に、2人が一緒に夜道を歩いているときに、雨に降られて雨宿りをするところはうっとりするほどで、時代劇で男女が雨宿りをすると名シーンになることが多いようだ。
 雷蔵は弁天小僧も演じてみせるおまけまである。
 他には、勝新が悪ぶっているが庶民のことを考えないお上に反抗するアウトロー、大木実が真面目で義理堅い浪人と、共にぴったりの役柄。 
アンテナ 監督:熊切和嘉、原作:田口ランディ 2003 日、カラー 1:1.85 2005/05/30(月) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/05/31
< ストーリー : (ニフティ・シネマ・トピックス・オンライン) >
 形だけの心の傷や家族の崩壊とそこからの再生のカタルシス。偶然を無条件に信じたり、性的な陶酔を霊的なものに結びつけたりの安直な神秘主義。
 実態の無いものを安易に信じるほど私はバカじゃないのでね。そういえば、同じ原作者の『コンセント』も胡散臭い神秘趣味だった。
 映画の表現としてはともかく、ストーリーだけなら最低評価の(☆)。
かまち 監督:望月六郎 2003 日、カラー 1:1.85 2005/05/27(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/05/28
ストーリー 感想
 山田かまち(谷内伸也)は成績優秀な中学生だったが、人生の意味を考えていて、沸いてくる詩やイメージが頭の中をかけめぐり、受験に落ちて浪人生になり、予備校で菅野洋子(姫野史子)に出会って彼女を思うようになってついに告白し、最初は受験生だからといって断っていた彼女とも親しくなり、2人は高校に合格したが、かまちは1977年に17歳で自宅でギターの演奏中に感電死する。
 時が経って現在、洋子(壇ふみ)は予備校の講師になっていて、かまちの元友人の医者(石原良純)の息子(中土居宏宜)は引きこもりで、迷える子供たちを導くハーメルンの笛吹き男を名乗ってWebサイトを開いていた。
 壇の生徒の木下みゆき(大沢あかね)は、かまちの詩集に出てくる名前から洋子がかまちの恋人ではないかと気づき、かまちで検索してみつけた笛吹き男のサイトの、一緒に逃亡しようとの笛吹き男の呼びかけで前橋駅に行くと、そこに同級生の佐山勇一(古屋敬多)も現れた。
 しかし笛吹き男は現れず、彼を罵る書き込みに対し、笛吹き男は病院から盗んで常用していたハルシオンを彼らに売って、それで現実から逃亡することを呼びかけた。
 それを飲んだみゆきが予備校で倒れ、自宅に連れて行った洋子は、生きる意味が解らないと言うみゆきに、自分はかまちに思われていることを彼の絵や詩から感じ、彼が死んだとき自分もハルシオンで死のうと思ったが死ねず、「生きることを生きろ」の彼の言葉から、間単に死のうと思わずに自分で自分の人生を生きることを彼女に訴える。
 一方、勇一は笛吹き男に代わって渋谷で大きなことを起こすとサイトで予告するが、ドラッグを買おうと接触したチンピラに殴られ金を盗まれる。
 サイトを見たみゆきの知らせで渋谷に行った洋子は、探し回ったあげく路上ライブの会場で座り込んでいる勇一を見つけ、彼に手を差し伸べようとするが勇一は彼女を避ける。
 洋子は勇一に友達になろうといって握手をした後、勇一は一人走り去って行くのだった。
 ひょっとしたら、現代の悩める少年少女にかまちの遺した言葉が道しるべになる、といった意図で作られた映画なのかもしれないと思える出来上がりになっているのだが、それにしては過去と現代の関連性があまり感じられない。
 私にはむしろ、若い頃には人生や社会に「正解」があると信じるあまり、それを求めて妄想に溺れがちなことは、かまちも今の子供も同じだということを示すために、2つの時代を描いた映画に思えた。
 (それは、かまちのシーンでも彼のイメージがデジタル合成で挿入されたり、文字通り踊るような字幕で詩が映されたりといった手法が使われているのだが、でもそれってリアリティの無さが強調されて、かまちが地に足がついていない「痛い」人間という気持ち悪さを感じたのと、また詩の内容も意味が有りそなことも無さそなことも構わず並べられた印象を受けたから。)
 そして、根本的にかまちと今の子供は同じでも、妄想の向かう先が芸術なのか、ネット上の妄言なのか、ドラッグなどの自傷行為なのか、自分は平凡な人間だということを無意識に避けることによる誇大妄想なのか、それらの違いは結局個人に帰すると。
 でも、それだと単に「悪い大人には気をつけよう」と言っている映画か、もしくは「不幸になるもならないもあなた次第。答えは自分で見つけてね。」と言っているだけの何にも導きの無い映画なの?って不満が残る結果になるんだよなぁ。
 まさか「不幸な結果になりたくなかったら、子供は妄想するな。夢も希望も捨てろ。」なんて言えないし。
 それに、大人だって道を踏み外す人がわんさといるくらい難しいことなのに。
 それから、かまちは茶髪で、学校も制服も今っぽいから、時代の格差が感じられない。
手討 監督:田中徳三、原作:岡本綺堂「お菊と播磨」 1963 日(大映)、カラー 1:2.35 2005/05/22(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/05/22
ストーリー 感想
 前田加賀守が能を舞っているのを見ていた旗本の1人進藤源次郎(城健三朗(若山富三郎))があくびをしたことで、加賀守が兵を挙げてでも源次郎を討ち取ると言ってきたので、出来たばかりで外様たちのコントロールも未だ確立していない幕府は源次郎に切腹を申しつけ、大久保彦左衛門(菅井一郎)と青山播磨(市川雷蔵)は旗本たちを代表して幕府の重役に切腹の撤回を直訴するも拒否され、源次郎は場所を加賀藩の屋敷の前と自ら指定してそこで切腹し、旗本たちの中には自分たちの存在を示すために、誰彼構わず因縁をつけては斬りつけようと画策する白柄(しらつか)組を結成する者が現れ、公儀の旗本に対する目が厳しくなった。
 播磨も白柄組に誘われ、最初は渋っていたが、荒れる旗本たちを抑えるためと、平和な時代になって存在価値をなくしている旗本たちに同情して参加することになる。
 やがて、彦左衛門が「旗本は幕府にたてつくことはできない時代になった」と言い残してなくなるが、白柄隊はその遺言や播磨の制止を無視し、出くわした加賀守の行列を襲う。
 この対立に対し、幕府は旗本と大名の和解を目指すことにし、そのために鯖江藩の姫を播磨の嫁にしようとするが、播磨は使用人のお菊(藤由紀子)と相思相愛で、旗本の身分を捨ててまでも結ばれたいと将来を誓い合っていた。
 播磨はお見合いの席で縁談を断るが、お菊はそれを知らずに家康からもらった青山家の家宝の10枚組みの高麗皿の1枚を故意に割ってしまい、播磨は将来を誓い合った自分を疑ったことを告白したお菊を手討にし、自らは白柄組の責任をすべて背負って切腹することを願い出て、花嫁衣裳を着たお菊の亡骸が横たわる屋敷で切腹して、約束どおりあの世でお菊と永遠に結ばれるのだった…。
 国家や幕府といった巨大組織の維持を優先する状況では、有能な人間の命や個人のささやかな恋愛などはかなく消え去ってしまうという話で、丁寧に作られてはいるけど、面白味には欠けるなぁ。
忠直卿行状記 監督:森一生、原作:菊池寛 1960 日(大映)、白黒 1:2.35 2005/05/17(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/05/18
ストーリー 感想
 家康の孫の松平忠直(市川雷蔵)は、大坂夏の陣で真田幸村を討ち取った手柄を上げ、越前の城下の槍試合でも彼に敵う家臣はなく有頂天だったが、その家臣がわざと負けたことを話し合っているのを立ち聞きしてしまい、家臣の誰もが自分に対しておべっかを使っていたことに気づいて人間不信になり、真槍で試合をして手加減する相手を傷つけたり、酒に溺れたり、服従するだけでない女を求めて狩に出たときに百姓の娘をさらったり、結婚相手の決まった家臣の娘を側に仕えさせたりしたが、行動がエスカレートするほど周囲の者が離れていって、自分の気持ちが理解されない孤独感に襲われるのだった。
 忠直が乱心したとの評判は江戸城まで知れ渡るようになり、お家おとり潰しを逃れるために、忠直の幼なじみの与四郎(小林勝彦)は、国家老の命を受けて江戸にいる忠直の母の清涼尼(水谷八重子)に会って、忠直の様子を見るように働きかけたが、家臣の小山田多聞(稲葉義男)が忠直にこのことを、忠直を裏切って公儀に訴えに行ったのだと嘘を言ったため、忠直は国家老を斬りつけ、多門は忠直の様子を公儀に報告していたので、公儀は直ちに越前に使者を送ることになった。
 与四郎の妻の志津(山内敬子)は忠直に会いに城へ行き、忠直は彼女に襲い掛かるが、志津は他の女と違って殿が自分を襲うことを防ごうと反抗した。
 越前に帰った与四郎は、志津が城から帰って来ないと知って城に行って忠直に会い、自分を裏切り者といって信じようとしないことで、忠直に対して剣を抜いて妻を取り戻そうとし、忠直は与四郎の本気を感じて志津を返す。
 そこに、公儀の使者が大軍を引き連れて越前に入り、忠直は合戦の態勢を取らせるが、家臣たちが使者の真意を聞くようにと忠直に対して懇願したので、忠直は城の門を開けて場内に入れる。
 使者は清涼尼で、忠直を押し込みの処分にすることを告げ、母として無益な合戦をしないようにと諭し、忠直もこれを受け入れ、家臣たちに同じ過ちを繰り返さないために、後を告ぐ弟と心の溝を作らないようにと言い残し、城を離れるのだった…。
  話としてはとても面白くて、人々の上に立つということは、その人々に対する責任に縛られるということで、殿様がありのままの自分でいたいという自我に目覚めてしまったことにより、そうした縛りと激しくぶつかることになる。
 周りの人間がおべっかばかり使って、腹を割った接し方をしてくれない殿様の心の痛みは出ていたと思うが、その描き方がもっとじっくりとネチネチと殿様の心理を描いて欲しかったとも思う。
 そうならないで荒削りな感じの映画になったのは、雷蔵主演の時代劇ということで、彼の陰陰滅滅な姿を延々と観客に見せて間延びした印象を持たれるより、テンポを上げて娯楽映画として観易くするという配慮からだろうか?
鯉名の銀平 監督:田中徳三 1961 日(大映)、白黒 1:2.35 2005/05/16(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/05/17
ストーリー 感想
 江戸時代の下田。地元の大鍋一家が漁場を巡って他所から来た帆立一家から喧嘩を売られていた。
 船大工の銀平(市川雷蔵)は、お市(中村玉緒)に仲の良い卯之吉(成田純一郎)と自分とどっちが好きかと問い詰めたが彼女は答えず、後日、親分の勧めで卯之吉と結婚することを知り、喧嘩をしないという親分の命令を無視して、銀平は敵に決闘を申し込んだ。
 大勢の敵を相手に単身乗り込んだところに、加勢に来た卯之吉とそれにお市も現れ、銀平は卯之吉が殺されそうになるところを見殺しにしようとしたが、あわやというところで命を救い、2人を残して1人渡世人となった。
 それから4年後、下田に帰って来た銀平は、大鍋の親分が死んで代わって帆立一家が下田で幅を利かせていると聞いた。
 卯之吉は堅気になってお市の店の仕事をしていたが、帆立一家に脅され下田を立ち退く約束をした。
 お市は銀平に会いに行って助けを請うが断られ、そのすきに銀平に嫉妬した卯之吉は帆立の丑松(安部徹)親分を殺そうと単身乗り込んだが逆に捕まってしまい、銀平が助けに来て帆立一家は全滅し、銀平は一人で罪をかぶって役人に捕まるのだった…。
 これといってコメント無しです。
ボクの女に手を出すな 監督:中原俊 1986 日(東映)、カラー 1:1.85 2005/05/14(土) HDDレコーダー(TV東京) ドラマ系 2005/05/15
ストーリー 感想
 元不良のひとみ(小泉今日子)が、首にされたスーパーに夜中に忍び込んで高級洋酒を盗み出すところを店長に見られ、警察に捕まりそうになったところ、偶然出くわした弁護士の加島(石橋凌)がかばってくれた。
 彼が顧問弁護士を務める信州の米倉家の妙子(森下愛子)を通して、父が死んだため当主になった進(山田哲平)の家庭教師をすることになった。
 進は甘やまされて小学校にも行かずわがままのし放題だったが、元不良のひとみなら進を教育できるかもしれないとのことで、進に厳しくすることをひとみに許可して、進を池に放り込んだことがきっかけでなつくようになる。
 ひとみと進が家の外に出たところに、ひとみの恋人の佑介(山田辰夫)たちの車が通りかかって、一緒にドライブすることになるが、佑介は進を誘拐して身代金をとるつもりだから協力して欲しいとひとみに話し、ひとみは監視の隙をついて進むを連れて逃げ出す。
 そこに、佑介のボスの白木(河原崎次郎)が現れて逃げた2人を追うが、予定通り2人を殺そうとする白木と、ひとみを助けようとする佑介がもめるうちに白木だけが生き残る。
 執拗に追う白木から逃げて2人は東京まで列車で逃げ、ひとみの友達の美知子(金子美香)の家から妙子に電話をかけて、翌日待ち合わせ場所に行くとそこに白木が現れた。
 逃げたひとみは加島の事務所に行き、待ち合わせ場所を教えた妙子が黒幕だと話して、加島は米倉家の別荘のある島に行って身を隠すように言う。
 しかし、島への船着場に白木が現れ、もみ合ううちに2人が乗ったエンジンつき小船に引きずられて白木が溺れ死に、漂流している2人を妙子が操舵する船が拾うが、ひとみを殺そうとした妙子が逆に死に、暴走した船は先回りしていた加島が待つ島の浜に乗り上げる。
 悪人たちは死んだかと思われたところに白木が現れ、2人に襲いかかろうとしたところを加島が刺し、白木は加島を裏切り者呼ばわりしてもみ合って殺し、白木は一連の事件を追っていた刑事(夏八木勲)が島に駆けつけて射殺し、信じていた加島が犯人だと知って呆然とするひとみを島から連れ出すのだった…。
 ストーリーが一部偶然頼みの展開で穴だらけだったり、映画の中心にある子供たちを囲む大人たちのキャラが揃いも揃って大人の魅力に欠けるから映画に締りがないなど、欠点を挙げればきりがないのだが、そんなことよりなんといったって(東映=バーニングプロ提携作品にも関わらず)主役の小泉今日子に魅力が感じられる映画に全然なっていないないのが致命的。
 元不良という設定にリアリティを持たせる演出はなされてないし、だから男の子とのドラマを盛り上げることに全然貢献していないし、だからといってベタに可愛く見せることすらもしていない。
 映画から感じられる作り手の意気込み0%の映画だった。
 他の出演者として、島に行く船着場で襲われたキョンキョンを助ける2人組がウッチャンナンチャン、デートクラブのコンパニオンの客で、ホテルの風呂からバスタオル1丁で出てきてキョンキョンに股間を膝蹴りされる役で高田純次など。
少林寺2 監督:チャン・シンイェン 1983 香港=中国、カラー 1:2.35 2005/05/07(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 ★★ 2005/05/06
ストーリー 感想
 少林派と武当派という仲の悪い武術家たち同士が川を挟んで住んでいた。
 少林派は、かつて盗賊に襲われて親を亡くしたリー・リンチェイはじめ約10人の男の子たちを引き受けて育てていた。
 一方の武当派は女の子ばかり約10人で跡取りがいなかった。
 子供たちがお互いからかっているうちに、親に内緒で一緒に遊んだり、少林派の子供たちの叔父が武当派の娘と愛し合うようになって、お互いの兄弟たちの手助けで駆け落ちする。
 盗賊たちは最終的に両派を倒すためにお互いを対立させようと思い、やっと生まれた武当派の男の子を誘拐して、その子を助けて武当派に返した少林派を、村の長老に成りすました盗賊団の首領が誘拐犯に仕立てたため、少林派はその地を去ることになった。
 盗賊団は残った武当派を襲い、あわやというところで少林派が戻ってきて盗賊団たちを倒し、両派は和解して、少林派の叔父と育ての父は、武当派の娘たちと結婚式を挙げ祝福されるのだった…。
 原題は『少林小子』で、 少林寺の寺自体は全く出てこないので、一見前作のような同じリー・リンチェイ主演の『少林寺』(1982 香港)の続編では全くない。
 ストーリーだけ見ると、家族間の子供たち中心の無邪気な対立や、そんな状況での恋もあって面白そうだし、チビッコ出演者たちも武術を見せたりするし、リー・リンチェイなどもすごいアクションだけでなくコミカルな演技もみせるのだが、アクションシーンもそれ以外のドラマ部分も、力が入っている割には展開にメリハリがなくていから、ドラマが盛り上がらなかったりアクションが観ていて飽きてくることになるのが最大の欠点。
 それさえ工夫すればもっと面白くなりそうだったのに。
ゴルゴ13 九竜の首 監督: 1977 日(東映)、カラー 1:2.35 2005/05/05(木=祝) HDDレコーダー(TV東京) ドラマ系 ★☆ 2005/05/06
ストーリー 感想
 マイアミでゴルゴ13(千葉真一)は麻薬組織の人間から、組織の香港支部長が横流ししていて、組織に狙われていることから警察へ保護を頼むことを避けるために、彼の暗殺を依頼される。
 ゴルゴが狙撃しようとしたとき、別の人間が支部長を射殺したことから、黒幕が別にいるとにらんで、捜し出して暗殺することになる。
 ゴルゴは支部長の妻にコンタクトを取ると、彼女に殺されそうになり、彼女がポーラニア国の領事ポランスキー(ジェリー伊藤)に電話したことから、彼を追って日本に向かい、またゴルゴの正体に気付いた香港警察のスミニー(嘉倫)も日本に向かう。
 ポランスキーは、外交特権を利用して麻薬の密輸をしていたことがバレるのを恐れてアメリカ亡命を画策して香港に戻り、スミニーは日本ではダメだったが香港でゴルゴを逮捕するが、証拠不十分でまもなく釈放する。
 ポランスキーは香港のアメリカ領事館に亡命しようとしたがスミニーたちが妨害し、アジトのある島に逃げたことを知ったスミニーたちが包囲して銃撃戦になり、ポランスキーはヘリで脱出しようとするが、この行動を読んで待ち伏せしていたゴルゴはポランスキーを射殺する。
 ゴルゴの協力で組織を壊滅したスミニーは、空港に現れたゴルゴ殴って次の機会に逮捕することを言い、ゴルゴは香港を経つのだった…。
 先日の高倉健主演の『ゴルゴ13』に比べると、こちらはゴルゴにもかかわらず千葉ちゃん得意の空手アクションがふんだんに見られて見せ場が多い分面白い。
 あと、千葉ちゃんはもみ上げと眉毛を書き込んで、思いっきりゴルゴに似せている。
デスペラード 監督:ロバート・ロドリゲス 1995 米、カラー 1:1.85 2005/05/05(木=祝) HDDレコーダー(TV朝日) 感覚系、ドラマ系 ★★☆ 2005/05/06
ストーリー 感想
 歌手のマリアッチ(アントニオ・バンデラス)は、ブチョ(ジョアキム・デ・アルメイダ)という麻薬密売のボスを捜すために、銃を隠したギターケースを片手に、ならず者が集まるメキシコの酒場を回っては撃ち合いを繰り広げていた。
 そして、ブチョの手下のいる酒場に来て撃ち合いになり、手下たちを全員撃ち殺すが、彼も傷ついて通りがかった本屋を経営し、実はブチョの麻薬の取り引きに協力しているキャロリーナ(サルマ・ハエック)に助けられかくまわれる。
 やはりブチョの命を狙っていたコロンビアのナイフ使いの殺し屋が、マリアッチの協力者のブシェーミ(スティーブ・ブシェーミ)を殺すが、ブチョの手のものが殺し屋を殺す。
 キャロリーナの店に来たブチョはそこにマリアッチがいることを見抜き、部下を使って襲わせ、愛し合うようになったマリアッチとキャロリーナは危うく脱出し、マリアッチは店のそばでブチョが来るのを待つが、現れた彼の顔を見て何故か撃つのをためらった。
 マリアッチは、やはりマシンガンとミサイルを仕込んだギターケースを持つ2人の男を呼び寄せ、ブチョの手のものと撃ち合って倒すが、マリアッチがその町で知り合った少年が巻き添えを食って傷つく。
 マリアッチとキャロリーナはブチョのところに行って、マリアッチはブチョを撃ち殺し、2人は町を出た。
 やはりこの映画の1番の見どころは銃撃戦で、今ではありふれてしまった横撃ちを最初にやったのはこの映画だろうか?
 後ろの敵を見ないで撃ったり、敵が撃ってくるのを逃げようとせずにギリギリで弾をよけたりなど、非現実的なアクションの数々が面白くて、かといって変な感じはせずむしろカッコいい。 公開当時話題になったのも納得。
クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦 監督&脚本:原恵一  原作:臼井儀人 1999 日(東宝)、カラー 1:1.85、99分 2005/05/03(火=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、感覚系 ★★★☆ 2006/10/08
 日本の温泉を守る「温泉Gメン」と、温泉嫌いのテロリストとの戦いに巻き込まれたしんちゃんたちの話。
 「温泉は日本人の心」という理屈にならないが説得力は絶大な理念を掲げたのをいいことに、なんでもアリのストーリー展開で大いに楽しませてくれる。
 その理念に説得力を持たせる役割を果たしているのが、その名も「温泉の精、『丹波』」のキャラで、吹き替えた丹波哲郎ならではの理屈を超えた魅力にあふれていた。
<キネ旬データベース>
エル・シド 監督:アンソニー・マン 1961 米、カラー 1:2.2 2005/04/30(土) NHK-BS2 ドラマ系 ★★☆ 2005/04/30
ストーリー 感想
 イスラム教徒のムーア人が半分を支配していた11世紀のスペインは、アフリカのイスラム教徒による世界征服の野望に燃えるユサフ(ハーバート・ロム)の侵略の脅威に襲われていた。
 そのカスティリャで、愛し合うシメン(ソフィア・ローレン)との婚礼のために彼女の家に向かっていたロドリゴ(チャールトン・ヘストン)は、ムーア人の王を捕虜にしたが、彼を殺す虚しさよりも釈放を選び、王は攻めないとの約束と共に「エル・シド」の称号をロドリゴに与えた。
 この件でオルドネス(ラフ・ヴァローネ)はロドリゴに反逆者を言い渡してシメンを自分のモノにしようとし、シメンの父で剣士のゴルマスはロドリゴを厳しく糾弾して、反発したロドリゴの父を決闘で殺し、ロドリゴの謝罪要求を突っぱねたゴルマスをロドリゴは戦って殺し、シメンはロドリゴを父の仇として憎む。
 カスティリャの隣国アラゴンとカラホラの街の領有を賭けての1対1の代表による戦いに、汚名を晴らすために志願したロドリゴは勝って剣士として認められ、父を殺した者はその娘を保護しなければならないという決まりからシメンを妻にすることを国王フェルナンド(ラルフ・トールマン)に認めさせ、シメンもこれに従ったが心は決して開かなかった。
 ユサフとつながりのあるムーア人から税を徴収するための遠征にでたロドリゴに王の長男のサンチョ(ゲイリー・レイモンド)とオルドネスが同行し、オルドネスはムーア人たちと共にロドリゴを殺そうとしたが、そこにムーア人の王の軍が現れてロドリゴたちは救われ、彼はシメンからの依頼での暗殺を白状したオルドネスを殺さずに釈放する。
 国王が死に、サンチョがすべての跡を継ぐことに次男のアルフォンソ(ジョン・フレーザー)は王の遺言通り姉のウラカ(ジュヌヴィエーヴ・パージュ)も含めて領地を3分割することで対立し、サンチョは自分に刃向かったアルフォンソカを投獄しようとするが、ロドリゴが護送中の彼を救い出し、共にウラカの治めるカラホラの城に向かう。
 そこにサンチョが現れてアルフォンソの引渡しを要求するが、スペインの内部分裂を狙うユサフの殺し屋が兄を暗殺し、ロドリゴは王座に就いたアルフォンソに対する人々の疑いの目を晴らすために、公の場でアルフォンソに対し潔白を聖書に誓うことを強要する。
 しかし、やり方が強引過ぎたためにロドリゴは王に追放され、同行したシメンは彼を愛するようになり穏やかな日常を満喫するが、ロドリゴについて来た者が大勢現れ、彼はシメンを修道院に残し、再び国のために彼らと行動を共にする。
 スペインに攻め込んできたユサフに対抗するために、ロドリゴは王の下に現れムーア人らと協力することを願い出るが、王はスペインはキリスト教徒だけで守るとこれを拒否したため、彼は独断で敵の拠点のバレンシアを攻める。
 戦いで負傷した王は、シメンと彼女の子供たちを牢に入れて人質にし、バレンシアからロドリゴを引き戻そうとするが、シメンは夫をバレンシアに戻すためにオルドネスの助けで脱獄する。
 ロドリゴは兵糧攻めで人心をユサフの手先だったバレンシア大公から引き離すことに成功して、大公の王冠をスペイン国王に捧げてスペインへの忠誠を示す。
 バレンシアに現れたユサフの大軍と戦ってロドリゴは矢を受けるが、抜いて延命するより翌日も陣頭に立つことを選び、改心して駆けつけた王とも死の床で和解して、翌日、死んだはずの馬上の彼の姿にユサフたちは恐れおののいて退散するのだった…。
 1960年頃に多作されたハリウッドの史劇大作の1つで、大規模な合戦シーンはもちろん、1対1の対決などその他のアクションも見応えあり。
 でも、それだけならこの手の長尺作品は持たせられずに、冗長な大味映画という結果に終わるのだが、ここぞというところで画面を圧倒する表情を見せるヘストンと、愛憎渦巻く感情を表現していたローレンが支えていた。
 ハリウッドが宗教戦争を描くと、異教徒を悪役にした勧善懲悪なマッチョ映画を連想してしまうが、この映画は敵や裏切り者を赦すことをしたり、イスラム教徒と同盟を結ぶという小異を捨てて大同につくことをするなどマッチョに反する内容で、これはひょっとしたらケネディ政権当時の雰囲気が反映されているのだろうか?
ユンカース・カム・ヒア 監督:佐藤順一、原作:木根尚登 1995 日、カラー 1:1.85 2005/04/29(金=祝) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/04/30
ストーリー 感想
 小学6年の女の子ひろみは、それぞれ仕事を持っていて家に不在がちの両親に代わって、住み込みの家庭教師の圭介と家政婦の文江と言葉を話す犬のユンカースたちと暮していたが、一見しっかり者のようで内心は家族3人一緒の時間を欲していた。
 ユンカースは3回奇跡を起こすことが出来るとひろみに話し、圭介に恋心を感じていて彼の婚約者に嫉妬したひろみは、1回目の奇跡で2人を破談させるが、後悔して自宅のクリスマスパーティーに2人を招待し、2つ目の奇跡でよりを戻させる。
 しかし、両親はそのパーティーに帰宅できず、代わりにひろみの母はひろみと一緒の時間を増やす意味もあって、サンフランシスコのホテルの支配人の職に就いてひろみも連れて行き、そしてこの際離婚することを電話で話した。
 涙にくれたひろみが昔のように3人でいたいと言ったのを聞いたユンカースが奇跡を起こして、離れていた3人が宙を飛んできて会い、ひろみの涙ながらの訴えを聞いた両親は離婚をやめることにした。
 中学になって、ひろみは母と言葉を話せなくなったユンカースと共にサンフランシスコに行くのだった…。
 小学6年という主人公の年齢設定で、愛情を必要とする子供の心に応えない親と、わがままな考え方から自立した考え方をするようになる子供の成長を同時に描けてはいるが、映画としての出来はファンタジー風アニメとしては「無難」どまりで、(かわいそうだけど判りやすいから)宮崎駿を比較対照にすると、いわゆる「力技」というものが演出にもストーリーにも全く感じられないのがなんともつらい。
陽気な殿様 監督:森一生、原作:五味康祐 1962 日(大映)、カラー 1:2.35、90分 2005/04/25(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/04/26
ストーリー 感想
 姫路藩の若殿の榊原隼之介(市川雷蔵)は、屋敷から江戸の街に出て、幼なじみの町人の八五郎(小林勝彦)と三次(佐々十郎)のところに行って遊び呆けていたが、藩に帰らなければならなくなり、家来たちには半日遅れで後をつけるように言って、自分は八五郎と三次と気ままな旅をすることにした。
 途中、剣の腕を磨くために辻斬りをしている浪人の挙手田多門(こてだ、天地茂)と剣を交えそうになり、その浪人さえ斬るのを諦めるほどただならぬ雰囲気の坊主(荒木忍)に対し、自分の修行の手ほどきをしてほしいと頼むが、坊主は殿を芸者遊びに連れて行き、殿は危うく童貞を失いそうになった。
 翌日、松前藩の国家老に招待され、彼から金の隠し場所の唯一の写しを体に彫っている腰元の八重(高田美和)を与えられ、幕府との問題を避けるために彼女を密かに幕府に引き渡して欲しいと頼まれ引き受けるが、八重はさっそく襲われて怪我を負い、有馬温泉で療養するために八五郎と三次たちと共に一足先に旅立った。
 その後、殿は宿場町で幼なじみのゆき(藤原礼子)とその子供が旅をしているところに出会い、彼女の家に居候してたいた浪人の伴角右ヱ門(かくえもん、千葉敏郎)が彼女に言い寄ったために夫に追い出された逆恨みで夫は斬られ、浪人は明石藩にかくまわれて何もできずに江戸に向かうところだと聞かされたので、殿は須磨の別荘に向かっていた明石藩の弥々姫(坪内ミキ子)を誘拐して浪人と交換しようとするが、その時挙手田が勝手に殿に加勢して、予定外の刃傷沙汰になってしまう。
 姫は別荘で松平長七郎(宇津井健)との気のすすまない見合いをするところだったので、さらわれたことをむしろ喜び、2人は有馬温泉に行って八重たち合流する。
 好きな人と一緒になるべきと言う姫を殿は気に入り、後日長七郎の立会いで角右ヱ門と会わせる約束の元に引き取られていった姫は名残惜しそうだった。
 殿は長七郎に会う時に彼に八重の身を預けることにし、彼女と相思相愛になっていた八五郎を説得する。
 殿は角右ヱ門と会って対決するが、現れた挙手田が角右ヱ門を斬り、殿は角右ヱ門を斬って、明石藩の家来を斬ったのは角右ヱ門で殿が潔白であることが明らかになった。
 八重は八五郎と一緒になり、殿は今回の騒ぎで国表謹慎になるもむしろ幸いと思っていたが、長七郎がやって来て、姫を譲るから姫と一緒になるには殿でなければず、それならとまた殿様に戻るのだった。
 今回の雷蔵演じる殿様は、軽〜いとぼけたキャラで、(劇団ひとりの笑顔のような)微妙にバカっぽい表情がなんとも言えず、また違った魅力を見せている。
 映画の内容も、「大鵬」「弁慶シー」などの時代考証無視の台詞が平気で出てくるほどの軽妙も見せて期待させたのだが、残念ながら面白さはほとんど雷蔵自身によるところに限られていた。
キリクと魔女 監督&脚本&原作:ミッシェル・オスロ 1998 仏=ベルギー=ルクセンブルグ、カラー 1:1.66 2005/04/24(日) HDDレコーダー(WOWOW) 象徴系、ドラマ系 ★★☆ 2005/04/25
ストーリー 感想
 ある裸族の村、お母さんの体内にいた時から言葉を話し、自分で生まれて自らキリクと名乗った赤ん坊は、父や兄弟がみんな、村の水を止めている魔女のカラバを退治しに行って逆に食べられてしまったと聞かされ、身内の男で唯一生き残っている叔父さんが退治に行く後を帽子に隠れてついて行き、機転を働かせて叔父を村に連れ帰る。
 魔女は魔法の帽子を奪おうとするが、ただの帽子だとわかって今度は村にある金を要求し、隠し持っていた家を焼き払う。
 キリクは村の子供たちとも遊んでもらえなかったが、川に流れてきた魔女の舟に知らずに乗った子供たちがさらわれるのを助けて子供たちから喝采を受ける。
 しかし、彼らが村に帰る途中に、キリクが止めるのも聞かずに登った木が子供たちを捕まえて連れ去ろうとするところ、再びキリクが助けて喝采を受ける。
 キリクは「呪われた泉」と言われている枯れ泉の穴に入っていくと、奥で水を飲んでいる大きな怪物を見つけ、キリクは溺れ死にそうになりながらそれをやっつけて泉は復活し、村人たちの喝采を受ける。
 キリクは何故魔女が意地悪なのかを疑問に思い、母は「意地悪なのは魔女だけではなく村人もで、人はそんなもんだ。」と答え、本当の答えは魔女の小屋の向こうの山にいる「お山の賢者」と呼ばれている祖父だけが知っていて、賢者は真実を言うので、人々に迷信を信じさせたい魔女は邪魔をしていると言った。
 キリクは魔女に見つからないように地下の巣穴を通って山に行き、大アリ塚に入ると賢者が現れ、魔女は泉を枯らしたり男たちを食べたりしておらず、みんなにそう思わせているだけで、その理由は自分が苦痛を感じているから他人にも苦痛を味あわせたいと思っているからで、その魔女の苦しみとは背中に刺されて自分では抜くことができない毒のトゲで、それを抜けば魔力がなくなるが、抜く時に男たちに押さえつけられてトゲを刺されたことを思い出すことを嫌って、抜く者は殺すだろうと言った。
 そして、お守りを必要とする心こそ人身を騙そうとする魔女に対する弱みとなり、それを持っていないことがキリクの力だと言った。
 キリクは床下から魔女の小屋に侵入して宝物を盗み出して森の中に隠し、魔女がそれを掘り返そうとしたすきに背中の毒のトゲを抜き、魔女は一瞬痛みを感じたがやがて完全に無くなって普通の女のカラバに生まれ変わり、キリクにお礼を申し出ると彼は求婚し、カラバにキスをしてもらうとキリクは大人の男になった。
 2人は村に行くと、元魔女と見知らぬ男のため村人たちは罵声を浴びせ、悪行に対する恨みからカラバを殺そうとした時、賢者が魔法が解けて人間に戻った男たちを連れて現れ、みんなは村で平和に暮した…。
 ひえー!こりゃまた難しい映画。
 他の部族や文化を恐れて拒絶することがより大きな不幸を作り出すとか、ヒーローを都合よく祭り上げたかと思うとあっという間に蔑んでみたりと、それら現代の文明社会でも当たり前のように行われていることを、裸族の物語という形を用いて、浅ましい心を太古の昔から相変わらず持ち続けている人間という生き物の、全くといっていい程の進歩の無さぶりをより明らかにしている。
 それだけでも難しいのに、子供にしか通れないような穴を通らなければ事態を解決できないなどの設定から、子供のときにしか出来ないことと、大人になることは子供ではなくなるという損失以上に得るものがあるのか?といった、大人と子供を分けるものをも意味している内容で、こんなに多くのことを比喩的に語っているから、それらを読み解くことに気を取られて、おかげで色鮮やかな切り絵のような映像の方に目がいきにくく、一言で言って頭でっかちな映画の印象を持ってしまった。
 日本での配給はアルバトロス・フィルムだけど、「提供」としてスタジオ・ジブリが大々的に表記されていて、日本語字幕担当と、日本語吹き替え版の演出は高畑勲が担当。
蛇娘と白髪魔 監督:湯浅憲明、原作:楳図かずお「ママが怖い」「赤ん坊少女」 1968 日、白黒 1:2.35 2005/04/23(土) HDDレコーダー(WOWOW) 少年漫画系 ★☆ 2005/04/23
ストーリー 感想
 ある夜ある屋敷で、お手伝いさんが長い爪を持つ何ものかに毒蛇を投げつけられ噛み殺されたが、死因は心臓麻痺とされた。
 数日後、孤児院で孤児として育てられた少女の小百合(南条小百合)は、実の両親のいるその屋敷に引き取られていったが、記憶喪失の母の夕子は(浜田ゆう子)は何故か彼女をタマミと呼んだ。
 父(北原義郎)の仕事は毒のある生物の研究で、小百合を名残惜しく思いながら毒蛇の研究のためアフリカに旅立ってしまった。
 その日から、小百合は母が夜中に仏壇にお供え物をしてそれがあっという間に無くなったり、寝室に蛇や牙の生えた女が現れたりし、母に聞くと天井裏に姉のタマミ(高橋まゆみ)が隠れ住んでいて、小百合が良ければ父がいないときには一緒にいていいことになった。
 しかし、タマミは小百合にきつく当たり、彼女の背中には鱗の様な模様があるのを見てしまったが、婆やのしげ(目黒幸子)に言っても相変わらず取り合ってもらえず、タマミはついに自分は蛇だと言って小百合に襲いかかった。
 小百合は孤児院の事務の仕事をしている達也(平泉征)に相談し、彼が院長(三宅邦子)に話すと、タマミは子供の頃から蛇が好きで自分は蛇だと思うようになり、施設に入れていたのを母親が内緒で引き取ったらしいことを話した。
 小百合はタマミの顔にアザがあるのを見て、彼女が自分に嫉妬しているのを理解するが、家でさらに白髪の女にも襲われるようになり、孤児院に逃げた彼女と達也は、院長からタマミは姉ではなく産院で取り違えられ実の娘でないと知った両親が、孤児院にいた百合を捜し当てて引き取ったことを聞いたが、その直後院長は白髪魔に殺される。
 孤児院に母が倒れたとの知らせが入り、罠だと感じつつ小百合と達也が家に行くと2人は捕らえられて、タマミが小百合の顔を酸で焼こうとし、タマミを操っていた白髪魔の正体はしげで、財産狙いの彼女はタマミが娘でないことがバレないように、2人を閉じ込めて家に火を放つ。
 かろうじて全員脱出したところ、しげが小百合に襲いかかって近くのビルの工事現場の上から落とそうとして、止めに入ったタマミが代わりに落ち、下で母が受け止めようとするがタマミは死んでしまい、しげは逮捕される。
 母が病室で目覚めて彼女の記憶も戻り、タマミの安らかな死に顔を見て、彼女は少し心が歪んでいただけの良い子だったと感じるのだった。 
 原作は楳図かずお、監督は『ガメラ』などでおなじみな湯浅憲明なので、出来上がりは子供向けの怪奇モノ。
 今となっては子供ですら通用しないかもしれないほど特撮が原始的過ぎるし、大人の目で見たら怪奇シーンがストーリー矛盾していて必然性が無いとかボロだらけだけど、それは言ってはいけない。
 今では濃い中年キャラの平泉成が若かった頃の、ちょっと爽やかででもやっぱり濃い姿を思いがけずに見ることができた。
蛇姫様 監督&脚本:渡辺邦男、原作:川口松太郎 1958 日、カラー 1:2.35 2005/04/23(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/04/23
ストーリー 感想
 烏山藩に江戸から来たばかりの琴姫(嵯峨三智子)は、国家老(河津清三郎)が藩の財政のためと称して密貿易などの不正をはたらいていると睨んでいて、幕府の隠密の目が光っていることもあって姫が出した藩政改革案を受ける受けないで対立していた。
 姫の側に仕えるおすが(中村玉緒)が実家の宿のひのきやに帰ったとき、家老の次男の彦次郎(浜田雄史)が彼女に無理矢理酒席の相手をさせようとしたために揉め事になり、すがの兄の千太郎(市川雷蔵)が彦次郎を斬りつけて、彼はかつての藩士で江戸で千太郎の剣の師匠だった一刀斎(黒川弥太郎)のところに逃れようとしたが、すがが姫に千太郎の行き先を話したことを聞いた侍女から情報が漏れて千太郎に追っ手が迫り、彼は危うく旅芸人の楽屋に隠れて、一座のお島(近藤美恵子)に一目ぼれされて役者になって人気が出て一緒に旅をすることになった。
 家老たちの不正の調査のために姫が呼び寄せた一刀斎が密かに藩に入ったとの情報が流れ、姫は彼がなじみのひのきやと連絡を取るはずだと睨んで、すがに手紙をひのき屋に届けてもらったが、家老たちはすがを斬り殺した。
 そして手紙を奪おうとしたところ、すがの霊がのり移った蛇が手紙を守り、駆けつけた一刀斎の手に渡ったが、家老たちは一刀斎をお尋ね者に仕立てて、ひのき屋がかくまっているとして押し入って主人を殺し、一刀斎は銃で撃たれるがその場を逃れ、すべてを姫の仕業だという噂を広めた。
 一座は烏山藩にやって来て、女形をしていた千太郎がすがに瓜二つだとの噂を聞いた姫が一座を城に呼びつけ、千太郎も家族の仇に近づくために誘いを受ける。
 役者を買ったことが問題になり、姫は藩にいられなくなって江戸の上屋敷に戻り、家のために京極(田崎潤)との縁談を申し付けられ、彼女の弟の小太郎(舟木洋一)の下屋敷に行った時に、屋敷の外を通りかかった千太郎が吹く笛の音を聞いて彼を屋敷に入れ、話し合ううちにお互いの立場がわかって千太郎が姫に斬りかかろうとしたところ、蛇が現れて彼はためらい、姫が事情を説明して本当の仇は家老たちだというこを知る。
 家老の屋敷で、一刀斎は密貿易に使う偽の幕府の札を見つけ、姫は家老を倒すために京極に縁談を延ばしてもらい、藩に帰ろうとする。
 姫の到着が密貿易品の焼き物の出荷日の前になることを知った家老たちは、国境の川の船に細工をして沈めようとしたが千太郎が見破り、また船着場のそばにあった窯でも、証拠隠滅のために監禁して働かせていた職人たちを毒殺しようとしたのを一刀斎と隠密が見破って、一同入りみだりになって斬り合い、家老たち悪人は斬られて、藩は小太郎が継ぎ、姫は京極家に嫁入り、千太郎は役者として旅を続けるのだった。
 演出やカメラワークが平板で、60年代に入ってからの三隅研次作品などと比べると、盛り上がりも映像の力もなくかなり見劣りがする。
 雷蔵も、女形の芝居や、役者になってからの日常生活もなよっとした感じになるなど、幅のある演技を見せるも力及ばず。
中山七里 監督:池広一夫、原作:長谷川伸 1962 日、白黒 1:2.35 2005/04/18(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/04/19
ストーリー 感想
 江戸の材木商の総州屋でく政吉(市川雷蔵)は、「飲む打つ買う」が好きな人気者で、丁半博打の賭場にいたところ、岡っ引の藤八(とうはち、杉田康)親分のガサ入れがあって逃げ出した通りで出会ったおしま(中村玉緒)が嘘のアリバイ証言をしてくれたので捕まらずに済んだ。
 お礼に政吉はおしまが女中をしている料亭に行くと、そこに藤八と賭場の男が現れて2人がグルだとわかり、2人の帰り道に殴って懲らしめるが、実は賭博の元締めをしている総州屋の主人の安五郎(柳永二郎)に、殴ったのは政吉らしく、安五郎が惚れているおしまが政吉に取られそうだということが告げられた。
 政吉は仕事が終わるやいなやおしまの所に飛んで行ってはイチャイチャし、結婚の約束をしたが、安五郎が座敷でおしまに迫って力づくで犯してしまい、そこに現れた政吉は怒って安二郎を刺し殺し、おしまの家に行くと彼女は自害していて、悲しみにくれながら江戸から逃げ去った。
 木曾街道の中津川に流れ着いた政吉は、慣れない博打で二十両の借金の証文を書かされた徳之助(大瀬康一)と会い、賭場から出るとおしまと瓜二つのおなか(中村玉緒)が倒れたので、彼女を家へ連れ帰って寝かせ、現れたおなかと恋仲の徳之助とおなかに賭場で稼いだ二十両を渡す。
 翌日、徳之助が金を返しに行くと、証文は百二十両に書き換えられていて、おなかが借金のかたにされようとして親分のところに行くと、そこには政吉を追って来た藤八たちがいて、おなかがおしまと似ていることに驚いた。
 事態を知った政吉は親分の家に忍び込んで徳之助とおなかを救い出して、3人は政吉のなじみの吉五郎を頼って高山へと向かうが、それは徳之助と仲違いをした父だった。
 父との再会をしぶる徳之助に代わって政吉が吉五郎のところに行き、そこに先回りしていた藤八と中津川の親分の追っ手を追い払って吉五郎夫婦に会い、助けを拒否する吉五郎に代わって、妻から近くの蓮華谷の家事で焼けた部落に隠れるように指示を受ける。
 夜が更けて、結局吉五郎が食べ物を運びに蓮華谷に向かうと、張り込んでいた追っ手たちが後をつけ、政吉たちの居所がわかったところで政吉と斬り合いになり、政吉は1人立ち去るのだった…。
 今回も雷蔵が素晴らしく、前半は本当に可愛い玉緒とラブラブのとぼけたキャラ、後半は渡世人になって、死んだ恋人と瓜二つの女に、自分でも気付かずに想いを寄せてしまうしっとりとしたキャラと、2つも楽しめる。
 さらに、クライマックスの崩れ落ちそうな家の室内での殺陣のシーンも素晴らしく、家が崩れる寸前に2階から雷蔵が飛び降りて助かるというカットもある。
 欲を言えば、大瀬康一の役が恋敵としては情けなさ過ぎる。
大菩薩峠 完結篇 監督:森一生、脚本: 衣笠貞之助、原作:中里介山 1961 日、カラー 1:2.35 2005/04/16(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/04/18
ストーリー 感想
 兵馬(本郷功次郎)と相対していた竜之助(市川雷蔵)の背後の断崖の縁が崩れて、竜之助はその土ぼこりの中に消えて、お豊(中村玉緒)に連れられて逃げのびた。
 連れ去られたお松を探しに伊勢の古市に来た七兵衛(見明凡太朗)が忍び込んだ大廓の備前屋に遊女になったお豊がいて、病で寝込んでいた彼女を気の毒に思って彼女に二十両を渡して去っていき、その後お豊の所にやってきたお玉(近藤美恵子)に二十両と書置きを渡して、伊勢大湊の与兵衛のところにいる浪人に内密に届けて欲しいと頼み、お玉が去った後自害する。
 お玉は途中で、備前屋で神尾主膳(島田竜三)の財布と印籠を七兵衛に盗まれたことを調べている役人に番屋に連れて行かれそうになるところ愛犬のムクに救われるが、二十両とムクが咥えて来た印籠を落としてしまう。
 追っ手から逃れながら与兵衛のところにたどり着いたお玉は竜之助に会ったが、彼女は字が読めなかったので、手紙は書置きでお豊は自害したらしいことを告げる。
 お玉が去った後そこに七兵衛が現れ、竜之助は彼に自分は東海道を下るから兵馬が来たらいつでも相手になると言って、翌日朝早く虚無僧姿でムクと共に遠州行の船に乗り、その後お玉も清水の船大工のところに船で向かい、さらに追って来た兵馬もその船に乗り、七兵衛はお松を探すために陸路を行く。
 浜松で因縁をつけられた侍たちを木刀で倒したのを見ていたお花の師匠のお絹(阿井美千子)の家に世話になり、彼女が江戸で顔見知りだった島田虎之助が毒殺されたことを聞かされた。
 七兵衛は、お絹に惚れて追いかけているがんりきの百(小林勝彦)に付きまとわれるようになり、旅に出たお絹が竜之助を連れていることを知った2人は、百の案で駕篭かきに頼んで2人を三保の松原まで乗せて、七兵衛が清水で待ち合わせている兵馬をそこに連れてきて待ち伏せることにしたが、籠に付いて行った百は七兵衛を出し抜いて竜之助の籠だけ甲州に向かわせた。
 2つの籠が離れたことに気付いた竜之助は怒って百の右腕を切り落とすが、そのとき自分も崖下に転落し、通りかかった行商のお徳(矢島ひろ子)に救われ、彼女とその子供の蔵太郎に自分の子供への想いを重ねながら、目に効くという湯治場でひと時の安らぎを感じていた。
 そこで行われていた、地元の金山を管理している望月家の息子の婚礼の最中に、甲府勤番の神尾主膳の配下が、不正を働いていると因縁をつけて金品を巻き上げようとしていて、竜之助が乗り込んで婿を助けて槍で全員殺すが、短銃を持っていた主膳に捕まり、甲府勤番頭駒井能登守(三田村元)の暗殺を頼まれ名刀を渡されたところ、竜之助は「頼まれては斬らない。斬りたくなるから斬るまでだ。」と答え辻斬りを続けた。
 兵馬と七兵衛は辻斬りが竜之助とにらんで足取りを追うが、世話になっていた慢心和尚(荒木忍)は「仇討ちはよしなさい。愛しむ心と憎む心で人は悩む。」と説いた。
 竜之助が借りていた刀の持ち主で、主膳が財産目当てに結婚しようとしていたお銀(中村玉緒)が主膳の屋敷に来て結婚を断ったので、主膳は彼女を捕らえて金と引き換えにしようとしたので、屋敷内を逃げ回って竜之助に助けを求め、お豊に声が似ていることと、お銀の顔のあざを見られなくていいということで惹かれた2人は屋敷を抜け出したところ、能登守の籠に出くわし、竜之助は彼を斬ろうとするが逃げられた。
 その頃、竜之助を追って主膳の屋敷の前に来た兵馬は、辻斬りと間違えられて逃げ去る。
 竜之助とお銀は、お銀の馴染みの家に世話になるが、そこは妻のお浜の実家だと知った竜之助はお銀を家に帰そうとするもお銀は離れようとせず、ある娘が辻斬りにあったことから、お銀は竜之助が辻斬りだと気付いた。
 七兵衛とお玉と僧侶になりすました兵馬が大菩薩峠に来ると、そこには与八(真塩洋一)と竜之助の息子の郁太郎がいて、お松も帰ってきていると聞かされた。
 そのとき一帯を暴風雨が襲い、竜之助のいた家の雨戸が破られ、狼狽して今まで斬り殺した者たちの幻を見た竜之助は刀を振り回し、駆けつけた兵馬と剣を合わせるが、濁流が家を襲って兵馬はあわやというところで脱出し、流されていく屋根の上で、竜之助は郁太郎の名を叫ぶのだった…。
 三部作の完結篇。
 監督が三隅研次から森一生に交代。
 主人公の竜之助は、剣で人を斬ることの快感の虜にはなっているが、武士としての忠誠や出世には興味がなく、安らぎのある生活に満足感を覚えたりもする、ある意味善悪を超えたようなキャラで、時代劇の主人公としても一際魅力的。
 一方の兵馬も、仇討ちこそ武士の正義と信じつつも、兄の妻と仇との間にできた子供をいとおしいと思ったりと複雑な状況。
 善とされていることは正しいとは限らないとか、善とされていないことでもしてしまうように、人間の行ないおいうのは善悪だけでは割り切れない。
 複雑に絡み合っている多数の登場人物の中には完結仕切れていない人がたくさんいて、それは原作が未完だからなのか?
 主要な役のお松が今回は画面に現れなかったのは、山本富士子のスケジュールが合わなかったのだろうか?
 中村玉緒が一人三役というのも珍しい。
大菩薩峠 竜神の巻 監督:三隅研次、脚本: 衣笠貞之助、原作:中里介山 1960 日、カラー 1:2.35 2005/04/15(金) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/04/16
ストーリー 感想
 竜之助(市川雷蔵)と兵馬(本郷功次郎)の対決は、芹沢たちの加勢が入って壮絶な斬り合いになり、竜之助は狼狽しながらも靄に紛れて逃げ去った。
 七兵衛(見明凡太朗)は兵馬とお松(山本富士子)に、竜之助はお松の祖父を大菩薩峠で殺したことを告げ、七兵衛はお松を身請けし、兵馬は新選組を抜けて3人で竜之助の後を追うことにする。
 京から大和の国の八木宿に逃げた竜之助は、街道で出くわした浪人の酒井新兵衛(小堀阿吉雄)に剣の試合を挑まれるが、仲裁に入った植田丹後守(石黒達也)に2人は招かれ、竜之助は屋敷に厄介になることになった。
 竜之助はお豊(中村玉緒)と再会して、助けてもらったお礼を言いに来た彼女から、心中して自分だけ助かって、旅籠を営んでいるおじのところに世話になっていて、庄屋の息子の金蔵(片山明彦)のストーカー行為から逃れるために丹後守の屋敷にかくまってもらっていることを告げ、竜之助はお豊に、彼女が亡き妻のお浜と瓜二つで、子供がいることを告げた。
 お豊とおじのゲンタロウが実家の伊勢に向かい、江戸に向かうついでに2人に同行した竜之助が2人から離れたすきに七兵衛が現れて、竜之助は彼に自分は江戸に向かうから、兵馬が仇を討ちたいのなら相手になるから追いかけて来いと言った。
 そのとき、金蔵と彼が雇った猟師の放った銃弾がゲンタロウを撃ち、竜之助が駆けつけたが2人はお豊をさらうことに成功し、山小屋で猟師がお豊に襲いかかるのを金蔵が止めに入って猟師を殺し、山中をお豊を連れ回して。
 戻った七兵衛と兵馬とお松が丹後守を訪ね事情を話すと、丹後守は兵馬に槍の秘伝を教える。
 1人はぐれた竜之助が泊まった宿の隣の部屋に天誅組が泊まり、その中に新兵衛がいたので、竜之介は彼らに同行することになるが、大和の国で幕府による天誅組の討伐が始まり、竜之助を追って来た兵馬と七兵衛が幕府方に着いて行き、1人茶屋で待つことにしたお松が男に騙されて伊勢へと連れ去られて女衒に売られようとしたところ、通りがかった芸者のお玉(近藤美恵子)に救われた。
 竜之助たちが立て篭もった山小屋が爆破されて、竜之助は両目を潰されながらも包囲していた幕府の手の者たちを切り捨てて、竜神の森に逃れた。
 竜神村の宿に泊まった兵馬は、その宿の主人の甥である金蔵の妻になったお豊に話しかけ、彼女にお浜と竜之助のことと翌日に竜神の森を山狩りすることを話す。
 そのとき、竜神の森の上空に「きよ姫の帯」という不吉な前触れの雲が現れ、お豊は竜之助の災いを取り除くために、言い伝えどおり竜神の滝つぼで誰にも見られずに水浴びをしていると、そこに竜之助が現れて、兵馬たちが竜之助を追っていることと、自分を江戸に連れていって欲しいと頼むが、竜之助は妻を殺したことを告白する。
 そこに追っ手たちが現れ、竜之助はこれを斬り捨て、さらに現れた兵馬にも立ち向かっていった…。
 三隅監督の演出は相変わらず手堅い上に、壁面が灰色一色の道場の中での緊張感あふれるツーショットや、画面の手前に玉緒、奥に断崖絶壁を背にした雷蔵と彼と剣を合わせ追い詰める本郷の3人をワンショットに納めるなど、凝った映像の数々も楽しめ、それにやっぱり雷蔵の魅力もたっぷりと拝める。
 なにしろ、山小屋を爆破されて埃だらけになって、目が見えない状態で山をさまよったはずなのに、山の中に着いたときには何故か純白の着流し姿なのだから、これも雷さまの成せる技!
男と男の生きる街 監督:舛田利雄、脚本:熊井啓、舛田利雄 1962 日、カラー 1:2.35 2005/04/15(金) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/04/15
ストーリー 感想
 神戸の新聞記者の岩崎(石原裕次郎)は画家の朝倉が殺された事件を担当して、間もなく刑事の北川(加藤武)が容疑者の松丸(平田大三郎)を逮捕した現場に居合わせるが、物証がいくつかあり、平田がが否認の後に自白に転じたにもかかわらず、岩崎は彼が犯人でないと直感して事件を追う。
 北川は5年前に追っていた密輸事件の捜査中、同僚の刑事だった石原の父(稲葉義男)を誤って撃ち殺した過去があったが、岩崎が今回の殺人事件を捜査すると、朝倉がフランスから帰国したときに乗っていた船が、生前の父が北川と捜査していた密輸事件に関係していて、証拠不十分で現行犯逮捕できなかったことで北川が父を恨んでいたかもしれないことを知った。
 岩崎は北川と会ってそのことをぶつけてみると、北川は否定した。
 岩崎が被害者の妹の和恵(芦川いづみ)と会って朝倉の墓参りに行くと、そこには朝倉の恋人の冴子(渡辺美佐子)と釈放された彼女の弟の松丸がいて、松丸は姉をかばうために殺してもいないのに自白したと言ったのを立ち聞きした。
 岩崎は名誉毀損で訴えられることを覚悟で、朝倉が日記に書き残していた坂口物産社長(大坂志郎)に直接会い、彼の愛人だった冴子がパリで朝倉と出会って恋に落ち、坂口が2人を引き離すために冴子を連れ帰ったことと、坂口物産が海外との貿易に乗り出してから、倒産寸前だった会社が上向きになったことを指摘した。
 新聞社へのクレームにより岩崎が退職届を出そうとしたとき、松丸が殺されたとの連絡が入り、彼のところに冴子が現れ、坂口が朝倉に手を引くことを迫って、逆に密輸をネタにゆすったので彼を殺したのだと言った。
 そこに、坂口の手下(高品格)が現れ2人を坂口のところに連れて行き、実行犯でヤク中の岡野(井上昭文)と北川も現れ、火薬庫で岩崎と北川と冴子とそして岡野も口封じで始末しようとして、岡野は岩崎の父を撃ったのは坂口の手下(長門勇)だったことをばらし、坂口が冴子だけ助けて全員殺そうとしたことをきっかけに一味は仲間割れを起こし、坂口は自ら火を点けて自爆するが、岩崎と冴子と北川は脱出した。
 悪くはないんだけど、いいところもこれといってないとしか言えない。
 すみません。
渋谷怪談
渋谷怪談2
監督:堀江慶 2003 日、カラー 1:1.66 2005/04/14(木) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/04/13
ストーリー 感想
<渋谷怪談> 水川あさみ、柏原収史、森下千里ら男女3人ずつの大学生が、キャンプから帰ってきて荷物を預けていた渋谷のガード下のコインロッカー前で解散したが、その後次々と原因不明の死をとげる。
 そのコンロッカーは、好きな人へのプレゼントを入れると恋が実ると密かに知れ渡っていたが、どうやらかつて赤ん坊が捨てられていたところらしく、最後に生き残った水川と柏原がロッカーを開けると、中から長い髪の女の子が現れ、2人とも彼女に呪われてしまう…。
<渋谷怪談2> 家庭教師をしていた水川の生徒だった高校生の堀北真希が病室で水川の死を看取ったとき、彼女からコインロッカーの鍵を受け取る。
 ロッカーを見つけ出して開けたが中には何もなく、その直後さっそく縁結びを信じる女の子たちが使ったのを見た。
 堀北はそれ以来赤ん坊の泣き声を聞いたり女の子の姿を見たりするようになり、ロッカーを使っていた人が次々と死んだことも聞かされ、掘北を好きだった松山ケンイチが堀北へのプレゼントをロッカーから出したのを見て受け取らずに鍵を放って立ち去り、彼を好きだった木村茜が堀北の家に来て松山の死を告げたとき、目の前で木村がベッドの下に消えていった。
 その頃、水川をはじめ変死した人たちを診察していた医師の永澤俊矢とインターンの原史奈も、コインロッカーの呪いと警察が捨て子に「さっちゃん」と名付けたことを知って、ロッカーを見に行ったことによって原も死に、永澤が再びロッカーに来たところで堀北と出くわし、そこにさっちゃんが現れて逃げた2人のうち永澤だけが車にひき殺される。
 病室で目を覚ました掘北は、水川の霊が自分を救ったことに気付くが、同時にまだ堀北を呪い続けているさっちゃんの姿も見るのだった…。
 全体的な印象は、脚本を単に映像化しただけといった感じ。
 ホラーシーンの命である「カット割り」も、お客さんが見たいと思うカットを見せてくれず不満が残る。
 これだけなら監督がホラーに向いてないだけとも言えるのだが、それ以外のドラマのシーンの演出でも、「さあ!頑張って作った俺の映画を見てくれ!」という気合いが画面から全然感じられない。
 結局、この映画で良かったシーンと言えば、堀北真希が普通に演じているのを普通に撮っているところで、アップに耐えられる彼女の表情さまさまといったところか。
大菩薩峠 監督:三隅研次、脚本: 衣笠貞之助、原作:中里介山 1960 日、カラー 1:2.35 2005/04/13(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/04/13
ストーリー 感想
 剣にとりつかれた机竜之助(市川雷蔵)は、大菩薩峠で巡礼の老いた男を辻斬りし、彼と共に旅をしていた幼い孫娘お松は、通りがかった怪盗の七兵衛(見明凡太朗)に拾われる。
 竜之助の家に宇津木文之丞(丹羽又三郎)の妻お浜(中村玉緒)が訪ね、家の存亡のために奉納試合で腕に劣る夫に負けて欲しいと願い、竜之助は「剣の試合で手心を加えないことは、女にとっての操と一緒で守るべきもの。そなたは操を捨てられるか?」と言って断り、岐路に着くお浜を下男の与八(真塩洋一)を使ってかどわかして水車小屋で犯す。
 その帰り道に、竜之助はすれ違った七兵衛を斬って傷つけるが、七兵衛は竜之助の家から短剣を盗んでいて、大事に持っているようにとお松に渡す。
 家に帰ったお浜の様子からすべてを悟った文之丞は彼女を離縁し、竜之助は奉納試合で文之丞を木刀で一撃で殺すが、審判の中村一心斎(荒木忍)から勝ちを認められず、憤慨してうろついていた森の中で闇討ちに来た者たちを斬り捨てて、現れたお浜と共に江戸へ出る。
 帰省した文之丞の弟の兵馬(本郷功次郎)は、竜之助の父の弾正(だんじょう、笠智衆)の紹介で江戸の島田虎之助(島田正吾)の道場に入門し、時が経ってお浜との間に赤子ができた竜之助は、何もせずに新徴組の芹沢隊長たちと関係を持っていたが、やはり新徴組の近藤勇や土方歳三が出入りをする島田道場に行き、そこにいた兵馬とお互いの関係は知らずに飛び込みで竹刀で手合わせをして倒す。
 成長したお松(山本富士子)は、七兵衛に連れられて訪ねた彼女のおばさんお滝の店の番頭に門前払いをくらったので、七兵衛は仕返しにお滝と番頭を素っ裸にして通りに吊るし、その後お松は神尾主膳(島田竜三)の屋敷に奉公するが、カルタに負けたら服を脱がされる遊びで辱めを受けて屋敷を飛び出してきたところに、弾正が死んで江戸へ出てきた与八が彼女を助け、翌日共に江戸を出ようとして与八が兵馬に別れを言いに道場に行ったすきに、店を逃げ出したお滝と番頭がお松と再会して、お松を恨む2人は彼女を自分の家に連れて行く。
 ある夜、新徴組が勤皇の志士に通じていた裏切り者の清岡八郎を暗殺しようとして、間違って島田虎之助を襲って、土方と竜之助を残して全員島田に斬り捨てられる。
 新選組に加わるために単身京都に行こうとする竜之助をお浜は罵った上に刺し殺そうとして逆に竜之助に斬られてしまい、残された赤子は故郷に帰る与八が連れ帰ることになった。
 京都への道中、竜之助は男と逃げているお浜にそっくりのお豊(中村玉緒)が籠かきに絡まれているのを助け、宿で隣の部屋になったお豊たちが心中しようと話し合っているのを聞いてしまう。。
 竜之助を追って京に来た兵馬は、京に売られてきたお松とかつて彼女に雨宿りをさせてもらって以来再会し、七兵衛もまたお松と再会して、彼女をなんとか身受けすると話す。
 お松は酌をしていた宿で、泊まっていた竜之助が兵馬を斬る話をしていたのを偶然に立ち聞きしているのを見つかって竜之助に捕まってしまい、一室で2人きりになったところで、竜之助がお浜と子供のことを思い出して狼狽して庭に飛び出したところで兵馬と出くわし、2人の対決が始まるのだった…。 <第二部へ続く>
 内田吐夢監督版の『大菩薩峠』(1957 東映)シリーズと同じ中里介山の原作なので、ストーリーが似ているのはもちろん、数多くの登場人物が複雑に絡み合っているのも一緒だが、こちらはその複雑さは煩わしいほどではない。
 水車小屋で、解かれた帯が回転する水車の軸に絡みつくように動くといった凝ったショットや、剣を構える雷蔵の緊迫感あふれる姿など、映像面で見どころが多い。
昼下りの決斗 監督:サム・ペキンパー 1962 米、カラー 1:2.35 2005/04/07(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2005/04/08
ストーリー 感想
 自動車が通りを走り始めた頃のアメリカ西部の町に、引退した元保安官のスティーブ(ジョエル・マクリー)が、金鉱から銀行まで金の輸送の仕事に就くためにやって来た。
 その町で、かつての部下だったギル(ランドルフ・スコット)と再会して、彼と彼の知り合いの若者ヘック(ロナルド・スター)を安全のために雇ったが、ギルは密かに金を横取りすることを狙っていた。
 往路の途中に立ち寄った家で、ヘックはその家の娘のエルサ(マリエット・ハートリー)に一目惚れするが、彼女は金鉱にいるビリー(ジョン・デイヴィス・チャンドラー)と結婚したいと思っていて、厳格な父親(R・G・アームストロング)に結婚を反対されていたので、ついに家を出て3人に同行して金鉱へ向かった。
 金鉱でエルサはビリーと再会して、判事(エドガー・ブキャナン)の立会いで結婚式を挙げるが、金鉱はならず者の溜まり場で、ビリーもそんなならず者の1人だと気づいて、再び3人と共に金鉱を離れる。
 帰路の夜、ギルはヘックをそそのかして2人で密かに金を奪って逃げようとしたが、感づいたスティーブは2人を捕まえる。
 そこにビリーとその兄弟(L・Q・ジョーンズ、ウォーレン・オーツ)たちがエルザを奪い返そうとして撃ち合いになり、スティーブは盗みを反省しているヘックに銃を渡して加勢を頼むが、ギルには銃を渡さなかった。
 ビリーたちを追い払うことに成功した後、みんなが寝ている間に、ギルは撃たれて死んだビリーの仲間の男の銃と馬を拾って逃げ、残った3人はエルザの家に行くと、そこにはビリーたちが待ち伏せていてエルザの父は殺されていた。
 撃ち合いは不利な状況になり、スティーブとヘックが痛手を負ったところにギルが駆けつけ、ギルとスティーブは保安官時代に得意としていた、相手に決闘を申し込んで向かい合って打ち合って倒す作戦に出て、敵を全滅させるもスティーブも撃たれて、ギルが金の輸送を引き継ぐとの約束を聞いた後に息を引き取るのだった…。
 かつて仲間だった者同士が年老いてから再会して、反目し合って対立するも最後には友情に目覚めるという、『ワイルドバンチ』に似たストーリーの映画で、さすがにあの映画に比べれば地味だが、それでもクライマックスで2人が並んで敵に立ち向かうという友情を感じさせるシーンの自然な盛り上がりがカッコ良くて素晴らしい。
遙かなる国の歌 監督:野村孝 1962 日(日活)、カラー 1:2.35 2005/04/01(金) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/04/02
ストーリー 感想
 宿無しのトランペット吹きの小林旭は、飛び込みで入った神戸のバーで流しのバンドと意気投合してバンドを結成し、キャバレーで演奏するまで人気が上がって、東京から来ていた芸能記者の笹森礼子に東京の芸能プロを紹介するとスカウトされる。
 旭は最初は断るが、店で喧嘩して神戸で仕事ができなくなったので誘いに乗ることにし、東京でも次第に人気が上がっていくが、キャラのアップを社長の宮城千賀子に断られて仕事が減るのを覚悟で独立することにし、笹森が口を利いた店で客と喧嘩をして演奏する場所がなくなる。
 そこに、神戸で旭と知り合った密入国のフィリピン少年の山内賢が旭の所を訪ね、彼が日本人の実の母を捜していることを聞いた旭は、彼をバンドのボーカルにして母捜しの話を笹森の雑誌をはじめマスコミで広めることで、山内の手助けとバンドの人気アップの一石二鳥の作戦を立て成功する。
 旭が調べた結果、笹森の雑誌の出版社の社長夫人の奈良岡朋子が山内の実の母だとわかるが、彼女は今の生活を守るために打ち明けられない思いを旭に話した。
 その頃、旭に利用されていると思った山崎が自力で母を捜すために失踪し、山内に麻薬の運び屋をさせていた組織も、有名になった彼から密輸ルートが漏れることを恐れて山内を捜しに旭たちの家に現れたので、旭たちは先に山内を見つけるために、母が見つかったと記事を流し、それを見た山内が帰って来るが、家の前で組織に連れ去られる。
 しかし旭が後を追って山内を連れ戻し、奈良岡と再会させて、奈良岡の家族も山内を受け入れることになって、彼は歌手活動を続けるのだった。
 ストーリー的には盛り上がりも小さく見せ場も少なくて全くパッとしないのだが、斜め構図や、室内での格闘シーンなどで真上から俯瞰で見下ろすなど、凝ったカメラアングルを有効的に多用しているところに野村監督の演出の冴えを感じられるし、ギターだけではなくトランペットを演奏する姿もアキラはカッコいい。
ゴルゴ13 監督:佐藤純彌、原作&脚本:さいとうたかを、脚本:K・元美津 1973 日(東映)、カラー 1:2.35(1:1.85で放映) 2005/03/28(月) HDDレコーダー(テレビ東京) ドラマ系 2005/03/30
ストーリー 感想
 武器の密輸や女を誘拐しての人身売買などをしている組織のボスのマックス・ボアのところに次々とスパイを送り込んでは殺されていた某国の要人は、ボアが本国のイランに入国したために捕まえてもすぐに釈放されることになるため、ゴルゴ13(高倉健)を雇ってボスを殺させることにした。
 ゴルゴはイランに入国してボスの居所を探るうちに刑事に目をつけられるが、彼の妻も組織に誘拐される。
 ゴルゴはボスを狙撃するが、それは影武者を使った罠で、ゴルゴは捕まって拷問を受けるも自力で脱出。
 やがて刑事とゴルゴはそれぞれ誘拐された女たちが囚われている砂漠の中の遺跡を突き止めて一味と対決。
 1人生き残ったゴルゴはボスのいる別荘まで砂漠を徒歩で歩きボスを狙撃した…。
 オールイラン(イスラム革命前のイラン帝国)ロケで、出演者も高倉健のみが日本人で、外国人俳優の台詞はすべて日本語吹き替え。
 内容面に対しては何もコメントなし。
怪談蚊喰鳥 監督:森一生 1961 日(大映)、白黒 1:2.35 2005/03/18(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★☆ 2005/04/02
ストーリー 感想
 江戸で常磐津の師匠をしている菊次(きくじ、中田康子)は遊び人の孝次郎(小林勝彦)に惚れていたが、彼が商人の娘と一緒になろうとしていることを薄々感じつつ、金の無心をする彼に金を渡していた。
 ある晩、盲目で顔にあざのあるなじみの按摩の辰の市(船越英二)が菊次の家にぶらりと現れて、菊次は彼に揉んでもらうが、眠った彼女が目覚めたときに、あざがない以外辰の市と瓜二つの弟で盲目の按摩の徳の市(船越英二)がやって来て、辰の市は菊次に恋こがれて三日前に死んだことを告げ、さっきの辰の市は幽霊だったことに気づく。
 その後、徳の市は菊次の家に入り浸って彼女をくどくようになるが、金貸しもやっていた辰の市の遺産を引き継いだ徳の市の金目当てで、菊次は金をせびる孝次郎を自分のものにするために、いやいやながら徳の市を自分の家に住まわせることにする。
 だんだん図に乗って菊次にべたつく徳の市に孝次郎は嫉妬して彼を家から放り出すが、再び現れた徳の市は、辰の市から菊次に渡すということで預かった金を渡すことを条件に、孝次郎が菊次から手を引くと一筆書くことを持ちかけ、2人はその話に乗る。
 しかし、徳の市は貸し金の取り立てが思うようにいかないと言って約束の金を渡すことをしぶり、孝次郎と菊次はある晩ついに徳の市に毒入りのなまず鍋を食べさせて殺し、近々埋めることになっていた近くの枯れ井戸に死体を投げ捨てるが、現場を見ていた者がいたと孝次郎が言い出して後を追い、菊次がひとり家に帰るとそこに辰の市の霊が現れ、菊次は正気を失って井戸に身を投げる。
 翌日、井戸は埋めずにもっと深く掘ることになったと聞かされた孝次郎が井戸の底に下りると、そこに菊次を見つけて驚いて這い上がったところに辰の市が現れ、孝次郎は驚いて井戸の縁にかけていた手を離して底に落ちて死ぬ。
 翌日の役人の調べで、徳の市を殺した晩とその次の日に井戸に現れた辰の市は、菊次と手を切って商人の娘の婿になるために、孝次郎が雇った役者がなりすましていたものだとわかった。
 タイトルに「怪談」という文字はあるが、幽霊が怖がらせる映画ではないので、内容的には怪談とは程遠い。
 それよりも、金と色を巡って3人が虚々実々の駆け引きが面白く、それがやがて殺しにまで発展してしまう欲深い人間の方が幽霊よりも怖いという映画。
 しばしば出演作の中でユニークな演技を見せる船越英二は、ここでの按摩の演技はその中でもひときわユニーク。
忍者秘帖 梟の城 監督:工藤栄一、原作:司馬遼太郎 1963 日(東映)、カラー 1:2.35(1:1.66で放映) 2005/03/12(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/03/13
ストーリー 感想
 羽柴秀吉の軍によってほぼ全滅させられた伊賀の生き残りの1人の重蔵(じゅうぞう、大友柳太朗)は、信長に代わって天下を取った秀吉に十年にも渡って復讐しようとしていて、そんな彼に師匠の下柘植次郎左衛門(原建策)は、堺の商人の今井宗久(三島雅夫)が彼を助けくれると紹介した。
 待ち合わせの場所に行くと、そこに謎の女の小萩(高千穂ひずる)が現れ彼を案内するが、町方が現れて包囲された。
 逃げ延びた重蔵は宗久の寝室に忍び込み、小萩が彼の養女であることと、朝鮮との貿易が出来なくなる出兵をやめさせるために秀吉を殺して欲しいことを聞かされるが、重蔵は宗久の背後に家康がいるのではと見抜く。
 一方、次郎左衛門の娘の木さる(きさる、本間千代子)の許婚だった五平(大木実)は、忍者の身分に飽き足らずに、伊賀を裏切って京都所司代(菅貫太郎)に仕え、重蔵の暗殺を密かに食い止める任を得て、侍として出世しようとしていて、重蔵と対決する。
 秀吉と家康と両天秤にかけるために五平とも通じていることを重蔵に見抜かれた次郎左衛門は、京都所司代に仕える甲賀の摩利洞玄(戸上城太郎)の寝込みを襲うが返り討ちにあい、五平は木さるに父の死を告げて去って行く。
 重蔵は小萩に、彼女が洞玄の弟子であることを知っていると告げ、2人は逃げて愛を貫いて共に暮す道を考えつつ、お互いの任務のために殺しあうかもしれないと語り合った。
 そこに、五平と洞玄率いる甲賀が、伊賀の集会場所を包囲して倒そうとしているとの知らせが入り、味方の死を目にした重蔵は洞玄を倒すが、五平の毒手裏剣を受けて命からがら小萩の元に逃げ込み、小萩は味方を裏切って重蔵を助ける。
 回復した重蔵は伏見城の秀吉(織田政雄)の寝室に忍び込むが、秀吉の老いぼれぶりと、彼を殺したところで世の中が良くならないことを悟って、殺さずに城を抜け出そうとすると、彼を殺そうと現れた五平が同じ忍者装束のせいで重蔵と間違えられて捕まり、所司代にも見捨てられる。
 重蔵は小萩と共に、木さるの住む人里離れた家に向かうのだった…。
 篠田正浩監督の『梟の城』(1999)と同じ原作で、違いは篠田版が重視ていたのが復讐や忍者としての使命に身を捧げる生き方と、世の中の大きな動きのような自分以外のもののためでなく本当の個人の幸せを目指す生き方との間で心が動く人間像だったのに対し、こちらはそれよりちょっとだけストーリー重視で娯楽映画寄り。
 とは言っても、登場人物が内心を吐露するシーンがアクションに比べて相対的に多いので、重くて地味で娯楽映画にしては中途半端な印象。
 忍者モノとしては、数々の小道具を使って忍び込むシーンや、ワイヤーやトランポリンを使ったアクションなど見どころも多く、そんな見せ場をメインにした方が良かったかも。
三匹の侍 監督:五社英雄 1964 日(松竹)、白黒 1:2.35(1:1.66で放映) 2005/03/08(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/03/09 作成
2005/04/02 更新
ストーリー 感想
 年貢の取立ての厳しい代官(石黒達也)に対して年貢を減らすことを訴えるために、百姓3人が代官の娘の亜矢(桑野みゆき)を誘拐して小屋に隠れているところ、通りがかった浪人の左近(丹波哲郎)が百姓たちに肩入れして一緒に立てこもる。
 代官は娘を救い出すため浪人たちを雇って小屋を襲わせ、百姓の事情を知ったその中の1人の農民上がりの京十郎(長門勇)も寝返るが、鋭之助(平幹二朗)は代官側に残った。
 代官たちは百姓の娘おやす(香山美子)を捕らえて亜矢と交換しようとするが、おやすが父を助けるために舌を噛み切って死んだので、父の五作が亜矢を殺そうとしたところ、左近が亜矢を救って代官に返し、自分が百叩きの罰を受ける代わりに百姓たちの罪をとがめないことで話がついた。
 しかし、代官は左近を牢にいれ、3人の百姓は代官が遣わせた浪人たちに殺され、その浪人たちも報酬をもらう代わりに代官の手の腕利きに殺される。
 左近を助け出すために京十両が屋敷に忍び込むと、そこには京十郎が誤って斬った男の妻のおいね(木村俊恵)がいて、京十郎が暴れるすきにおいねが地下牢の佐助を逃がすも自身は命を落とし、百姓に同情的になった亜矢に助けられる。
 鋭之助も代官の手下たちに命を狙われ、左近のいる小屋に行って合流し、そこを代官の手の者たちが襲うがこれを撃退し、左近は代官の屋敷に乗り込んで殺そうとするが、亜矢が父の命乞いをしたので、代官の髪を切って人前にさらすことにする。
 3人の浪人たちは、当てもないまま村を去っていくのだった…。
 なんか、農民たちに入れ知恵して助けるところなんか『椿三十郎』みたいだし、痛めつけられて捕らわれていた状態から逃げ出すのは『用心棒』みたいと、なんとなくそのあたりの黒澤明作品に似ているような気がする。
 ただし、こっちはいかにもその2作品のような凝っている話の面白さを狙った感じはするが、ストーリーが作りこまれていないので、かえってストーリーが全体的にこじれて、すっきりとした楽しい映画になりそこねた。
大江戸の侠児 監督:加藤泰 1960 日(東映)、白黒 1:2.35 2005/03/08(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/03/09
ストーリー 感想
 田舎の百姓暮らしでは食うに食えず、江戸に出て博打打ちになった次郎(大川橋蔵)は、博打の帰り道に仲間の権(ごん、多々良純)と、武家屋敷の女中の寝姿を除くために忍び込む。
 そこにいた御中老(香川京子)は、彼が田舎に残してきた許婚のおたか(香川京子)にそっくりで、彼女は次郎にお金を渡して逃がす。
 里心がついた次郎が田舎に帰ると、まさにおたかが借金のかたに売られようとしていて、次郎は彼女とその弟の吉五郎(住田知仁)を連れて村を逃げ出す。
 道中、次郎に惚れていて彼の行き先を知る権を連れて江戸から追って来た文字春(青山京子)と鉢合わせになり、彼女はおたかに、次郎には自分という女がいて、おたかにそっくりな御中老にも一目ぼれしたと言い、それを真に受けて1人宿を抜け出すと、彼女を追ってきた女衒に捕まってしまう。
 悲しむ吉五郎に、次郎は江戸に行けばおたかに会えると言い、御中老の寝室に再び忍び込んで、彼女が奥方のお参りに同行するために屋敷を出るときに、おたかとして吉五郎の前に現れる約束を取り付ける。
 しかし当日、御中老は殿の目に留まって酌の相手をすることになって屋敷を出られず、屋敷の前に来た吉五郎が待ちきれずに門から入ろうと飛び出すと、飛び出した馬にひき殺されてしまう。
 御中老に裏切られたと思った怒りから、次郎は武家屋敷に次々と忍び込んで金を盗んでは庶民にばら撒き、鼠小僧と呼ばれるようになる。
 彼がおたかを探す旅の途中の宿場で権と再会し、文字春はおたかを探すために宿場女郎になって客から情報を得ようとしていた。
 鼠小僧が御中老の寝室に忍び込むと、そこにいた別の女から、彼女は殿の子供を産んだ後に難産の末に死んだことを聞かされた。
 文字春のいた女郎宿に、次郎から預かった身請けの金を持って来た権と、ろくに客の相手をしないためにおたかが売られて来て、十手を預かる親分(上田吉次郎)がおたかの先約だと女将(浪花千栄子)は身請けを断り、自分は鼠小僧だとハッタリを言った権が捕まって、鼠小僧を捕まえる囮にされる。
 そこに次郎が流れの渡世者に化けて親分のところに潜入し、すきを見て捕まっていた権とおたかと文字春を逃がし、一味を切り捨てて逃げる。
 不本意にも人を斬ってしまったことから、次郎はおたかと別れて1人になると言い出すが、おたかがずっと次郎と会うことを願って生きてきたことを知って、2人で旅立つのだった…。
 クライマックスでの屋根の上を走る鼠小僧と、香川京子がらみのしっとりしたシーンの数々が見どころ。
富士に立つ若武者 監督:沢島忠 1961 日(東映)、カラー 1:2.35(1:1.85で放映) 2005/03/06(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/03/07
ストーリー 感想
 平治の乱に敗れて都を追われた源氏は追っ手に追われて討ち死にし、1人雪山ではぐれた頼朝(大川橋蔵)も平家に捕まって伊豆で軟禁される。
 10年後、彼を囲む配下たちは兵を挙げて平家を倒そうと迫るが、頼朝は平家と源氏が入れ替わるだけの争いにむなしさを感じていた。
 平家の命令で頼朝を見張っている伊豆の豪族の北条時政(三島雅夫)の娘の政姫(三田佳子)とも出会って消極的な態度を責められるが、やがて2人は愛し合うようになる。
 時政は平家との関係を密にしようと、政姫を伊豆探題の平兼隆(安井昌二)と結婚させようとし、政姫の兄の宗時(岡田英次)は妹のために頼朝に一緒になるよう迫る。
 時政が涙ながらに政姫に乞いて政姫が受け入れ、兼隆との結婚式が行われている屋敷についに頼朝が政姫を取り戻すために馬を走らせて乗り込み、宗時や源氏の軍勢も加わって平家たちを倒し、頼朝は打倒平家を目指して軍勢を率いるのだった…。
 これはストーリー的にあまり面白くないなぁ。
 見せ場がクライマックスの斬り合いぐらいしかなくて、全体的にほとんど展開に動きがない。
 相変わらずスピード感のあるカメラワークのアクション、それにラブシーンも、特にこれというものがなかった。
暴れん坊兄弟 監督:沢島忠、原作:山本周五郎「おもいちがい物語」 1960 日(東映)、カラー 1:2.35 2005/02/26(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/02/27
ストーリー 感想
 のんびり者の江戸詰めの侍の典木泰助(のりきたいすけ、東千代之介)は、家督を継いだばかりの松平長門守知宣(中村錦之助)から、どういうわけか昼行燈だからという理由で、初の国入りを控えて国詰めを命ぜられた。
 国おもてでは、彼は切れ者との間違った噂が流れて、藩の帳簿の不正を働く役人をはじめ、家臣たちは何が起こるのかと戦々恐々。
 城下に入った泰助はいきなり忍者たちに襲われるが、それはそこに助けに入った勘定奉行(原建策)が、彼の国詰めの真意を探るためにかまをかけたのだった。
 泰助は彼の亡き父の親友の家老の山治(進藤英太郎)の家に世話になり、何も考えていない天然な言動が、益々ただ者ではないと皆に勘違いされるが、勘定奉行たちの汚職を知りながら浪人になりたくないばかりに何も出来ない青年隊たちに呼び出され袋叩きにされ、百姓の娘から藩が山の木をたくさん切っているために洪水で困っていることを聞かされ、翌日山を見に行ったことが、勘定奉行や材木の横流しの張本人の城代家老の稲葉兵部(山形勲)の耳に入る。
 彼らは江戸から泰助が昼行燈との情報を聞き、その噂が広まって家臣たちは掌を返したように馬鹿にしだすが、泰助を心配して長門守の許しを得て追ってきた弟の泰三(中村賀津雄)が、兄とは正反対の粗忽な性格のため、怒って家臣たちを次々と殴り倒す。
 汚職のことを聞いた泰三は、兄のことを思って独断で山で横流しの見張りをしていた家臣2人を捕まえて表沙汰にしたために、稲葉たちは彼らを汚職の張本人に仕立てて自害に見せかけて殺し、泰助は出過ぎたまねをした泰三をしかる。
 勘定奉行の側で裏帳簿をつけていて悪事の一部始終を目撃しながら、子供たちを育てるため告発できなかった下島孝之進(田中春男)は、ついに見かねて証拠の帳簿を持ち出すが見つかって斬られてしまうも、その帳簿は山治のところに届き、また、なじみの孝之進が斬られて泰助の怒りが爆発して、悪人たちが宴会をしていた相模屋に殴りこんで、泰三、山治、それに青年隊も駆けつけ一味は捕まり、兄弟で山治の娘たちと結婚して、泰助は長門守から城代家老に任ぜられるのだった。
 クライマックスで、東千代之介がそれまでののんびりキャラから、いきなり狂ったようにハイテンションになって、雄たけびを上げながら巨大な丸太を槍のように振り回す展開の切り替えの鮮やかさと、立ち回りの迫力とスケール感とスピード感がとにかく凄いなぁ。
 時代劇でおなじみの、立てかけられた木材が倒される見せ場もふんだんにあるし。
 登場人物たちのキャラも面白いが、これだけ面白い要素が多いと更に欲が出て、キャラの絡み方を工夫したりとか、ピーター・セラーズの『チャンス』と同様の勘違いの面白さのエピソードを増やしたりとか、不正を告発できないことから正義は単純に実現できないことをもっと描いて物語に深みを出すことなど、もっと面白い映画に出来たんじゃないかと思えてくる。
大佛開眼 監督:衣笠貞之助、製作:永田雅一 1952 日(大映)、白黒 1:133 2005/02/12(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★★ 2005/02/13
ストーリー 感想
 奈良時代、都が紫香楽から奈良に移されたのを期に、天災、疫病、反乱などで悪化する世の中を救う願いをこめて、巨大な盧舎那仏を日本独力で奈良に建立することになった。
 大僧正の行基(ぎょうぎ、大河内傳次郎)の寺で働く楯戸ノ国人(くにひと、長谷川一夫)は、麻夜賣(まやめ、京マチ子)と出会って愛し合うようになるが、国人が彫った仏像が造仏長官の国中ノ公麿呂(小沢栄)に認められ、大仏のデザインを頼まれる。
 麻夜賣は自分の姿を彫って欲しいと国人にせまるが、大事な大仏の仕事に没頭して相手にされず、大仏が成功して国人の位が上がれば身分の低い自分と一緒になれなくなるとイライラは募る。
 また、大仏建立を進める藤原氏と対立する橘の奈良麿呂(岡譲二)は、巫女で愛人の大宮ノ森女(もりめ、日高澄子)に妨害の祈りをさせ、流し込んだ銅が漏れ出して国人が火傷を負う。
 国人は大仏に心酔した橘ノ咲耶子(さくやこ、水戸光子)に呼び出され、自分の像を作らなければ大仏の仕事に就けなくさせると脅されたため渋々受け入れ、それを知った麻夜賣は咲耶子の屋敷に忍び込むと、咲耶子が国人を誘惑しているところを見かけてしまう。
 悲しむ麻夜賣に、国人に実力で破れ、以前から麻夜賣を密かにものにしようと狙っていた新城ノ小楠(あらぎのおぐす、植村謙二郎)が声をかけて、麻夜賣が踊って皆の注意を引いている隙に自分が型の中に砂を流し込んで、大仏の右手を崩れ落ちさせて恨みを晴らそうと持ちかけ、この企みを嗅ぎつけた奈良麿呂たちの密かなサポートもあって右手は崩れ落ちる。
 事故は大宮ノ森女の呪いのせいだとの噂が起こり、役人たちが彼女の潜む洞窟を発見するが、直前に奈良麿呂が彼女の口を封じる。
 工事は中止になり、国人は咲耶子の像を完成させて麻夜賣のところに戻ってくると、罪の意識に襲われた彼女が小楠とのことを打ち明け、命を縮めてまでの行基の訴えも届いて工事は再開される。
 国人は位を得ずに自分のしたい仕事をすること、麻夜賣は国人についていくことを誓い合う。
 奈良麿呂は獄中の小楠から、金メッキがのらないように銅に混ぜる鉛の分量を増やす妨害方法を聞いて実行し、銅を型に流し始めたときに気づいた国人が急いで止めたために大火傷を負ってしまい、最後の顔の型が外されるのを見て息を引き取り、麻夜賣も3年がかりでやっと完成した大仏の手の上で大仏をいとおしむのだった…。
 観る前の印象は、大映が『羅生門』(1950)で国際的に評価されたその路線で作った『地獄門』(1953)、或いは『釈迦』(1961)などの歴史スペクタクル大作の路線の映画で、ただしこの2本は大作にありがちな大味な映画だったので、『大佛開眼』もそんな映画なのかも?という懸念があった。
 ところが観てみたら、ストーリーは仕事を取るか愛を取るかというだけではありふれた映画になるところ、その一方の京マチ子が、胸元が開き気味の薄い着物姿で、野性的な表情で男勝りな行動をしたり、興奮する男たちに囲まれて流し目で踊ったり、「私を彫るのよ」と言って寝そべったり、雨の中で濡れたまま立ちずさんだり、顔を泥まみれにしながら働いたり、ラストは髪を振り乱して夢うつつの中で妖艶に踊ったりと、セクシー&ワイルド&キュートとありとあらゆる魅力を見せて観る者を圧倒する点では空前絶後。
 仕事に燃える長谷川一夫がそんな攻撃をまともに受けるのだから、彼の葛藤がいかに深刻かが判ろうというものである。
 的確なアングルの撮影も影をうまく出している照明も京マチ子の魅力を出すのにしっかり貢献していて、全くもって素晴らしいとしか言いようがない。
 劇中カタカナが出てくるという時代考証上の間違いあり。
猿飛佐助 監督:井上梅次、製作:水の江滝子 1955 日(日活)、白黒 1:133 2005/02/11(金=祝) HDDレコーダー(NHK-BS2) 感覚系 ★★ 2005/02/12
ストーリー 感想
 信州松代藩の新手村。娘たちにモテモテで怒った親から追い回される猿飛佐助(フランキー堺)は、幼なじみの生臭坊主の三好清海(市村俊幸)と共に、絶世の美女と評判の郷士の娘のかめ女(かめじょ、矢吹寿子)の婿の座が懸かった武芸大会に出て2人とも優勝するが、かめ女が凄い醜女と知って、藩の兵の募集に逃げ込む。
 訓練中に色目を使ってきた飯炊き女のあざみ(広岡三栄子)につられて、夜になって2人は別々に女装して女人の詰め所に会いに行って、待ち合わせ場所の米倉で鉢合わせするが、やはりあざみを口説きに来た隊長(有島一郎)に見つかって営倉入りになり、罰として人質の白菊姫(遠山幸子)の籠の警護を命ぜられるが、隊長たちが忍者に扮して襲ってきたところを見事撃退する。
 その夜、お礼を言うために姫に接見した2人は、姫が隠し持っている唯一の大坂城の絵図面を、徳川家康に渡すために藩の侍に狙われていると聞かされ、褒美に姫からかんざしをもらう。
 その帰り、あざみに誘われて酒を飲むと、眠り薬で眠らされ山塞に連れて来られ、絵図面の在りかを問い詰められるが、頼りない見た目の2人に渡したはずがないとなって殺されそうになるところ逃げ出そうと乱闘になり、佐助は銃で撃たれて谷底に落ちる。
 目が覚めるとそこに閻魔大王(市村俊幸)が現れ、女癖の悪さで地獄行きになりそうになったところ、コイントスの賭けに勝って、また目を覚ますと戸沢白雲斎(小川虎之助)と、家出して彼に拾われて親子のように一緒に住む楓(雨宮節子)の家で看病されていた。
 白雲斎は佐助に甲賀忍術の後継者にしたいと言い出し、嫌がった佐助も免許皆伝をもって楓を嫁に出来ると聞いて修行に励む。
 何年修行しても上達しないところ、近くを通りかかった白菊姫が襲われているところに佐助が駆けつけ、真田幸村の息子大助(北原隆)の勇士たちも加勢して敵を追い払う。
 佐助は真田九勇士の一員になっていた清海とも再会し、姫は元領主の白雲斎の娘で、姫も大助も絵図面が気がかりで白雲斎に会いに来て、姫は佐助が持っていたかんざしに仕込まれた絵図面を取り出し大助がそれを受け取った。
 姫と2人っきりになった佐助は、姫から大助が好きだと打ち明けられがっかりする。
 白雲斎の家に忍び込んだ忍者が図面を盗み、後をつけた佐助があざみたちの山塞をつきとめ、大助と九勇士たちが安来ルンバを踊る旅芸人に化けて山塞に忍び込む。
 しかし、入れ違いに山塞の賊の頭目の石川五右衛門(水島道太郎)が、白雲斎を殺して姫を奪って山塞に連れ帰り、争いを好まなかった佐助も五右衛門を追って山塞に現れ乱闘となり、佐助は姫と絵図面の半分だけ奪い返し、残りの半分を持って五右衛門は逃げ去る。
 楓も実家に帰ることになり、大助たちは佐助に勇士に加わってほしいと請うが、争いを好まない佐助は楓と行動を共にし大助たちと別れる。
 しかし楓に、大助たちと共に行くべきだと言われて、佐助は大助たちの後を追うのだった…。
 前半はドタバタミュージカル(主題歌が「忍術マンボ」?で、作曲・編曲は岩井直博、演奏がフランキー堺とシティ・スリッカーズ)な展開で面白かったのだが、後半は面白味がトーンダウンしてしまった。
 クライマックスで、佐助と五右衛門がスローモーションのような動きの殺陣をしていたのはちょっと面白かったんだけど。
 最後は真田十勇士が誕生して、いかにも再び五右衛門たちと戦う続編につながるような終わり方だが、結局続編はなかったみたい。
踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ 監督:本広克行 2003 日、カラー 1:1.85 2005/02/05(土) HDDレコーダー(フジ) ドラマ系 2005/02/08
 前作と同様、同時多発的に複数の事件が起こる展開で映画に緊張感を持たせ、組織の下層部に位置する所轄と彼らの現場の労を理解しない上層部という組織の問題点を描くというスタイルを今作でも踏襲。
 ただし出来はといえば、この基本ルールだけ押さえてさえいれば、それ以上作りこまなくても客なんかごまかせるだろうという精神で作ったんじゃないかとしか思えないほどのおざなりなヒドイもの。
 やっぱり、複数の事件を並列に進行させるという複雑な展開とか、大仰で無駄の多いくどい演出やカメラワークとかって、観る者を楽しませるというよりごまかそうという意図なんですかね?
 それから、組織の問題も単に真矢みき演じるリーダーが無能だということに終始していて、さんざん憎まれ役を演じた挙句ついにお払い箱になって、真のリーダーが現れて事件解決って、これ「水戸黄門」なんですか?
 真矢みきの描き方にしても、部下たちを平気で面と向かって消耗品呼ばわりして、そんな部下の心理をコントロールできないリーダー像がリアリティあると思ってるんですか? 現場を仕切る監督がそんなことも知らないって、馬鹿ですか? それとも、この程度のいい加減なキャラ設定でも通じると思っているほど観る者を馬鹿にしてるんですか?
陰陽師U 監督:滝田洋二郎 2003 日(東宝)、カラー 1:1.85 2005/01/19(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/02/09
 前作の陰陽師同士の対決というストーリーは、人間臭さがなくて面白くもなんともなかったのだが、今回は大和に滅ぼされた出雲の復讐、人の心と鬼の心の間で心が動く須佐(市原隼人)と彼と心が通じる姉の日美子(深田恭子)というように、かなり人間っぽくはなった点は改善されたが、それでもどうでもいい感は相変わらず。
時代屋の女房 監督:森崎東 1983 日(松竹)、カラー 1:1.85 2005/01/19(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2005/02/09
ストーリー 感想
 東京の大井町を通りがかったとき拾った野良猫を、その近くの「時代屋」という名の古道具屋に引き取ってもらいに来た真弓(夏目雅子)は、店の主人の安さん(渡瀬恒彦)の女房のように振舞って野良猫のように居ついてしまった。
 彼女はまた時々野良猫のように店を出ては何日も帰ってこないことが何度もあって、彼女が留守のとき、安は行きつけの居酒屋に美郷(夏目雅子)という真弓そっくりの女がぶらりと現れ、安は翌日実家のある盛岡に結婚するために帰る彼女と一夜を共にする。
 美郷を駅まで見送って帰ってきた安を待っていた喫茶店のマスター(津川雅彦)から、真弓から電話があったことを聞き、店を閉めて小樽に行くことになったマスターと一緒に、真弓に会いに車で盛岡に行く。
 夕べ真弓が泊まったという旅館に行くと、美郷の婚約者の鈴木(平田満)が現れ、美郷から他に好きな男が出来たから盛岡には帰らず、その男は盛岡の旅館に泊まっているとの電話を受けたと言った。
 翌日、マスターと別れて1人東京に帰ると、店には「やっぱり盛岡に帰る」との美郷の書置きがあった。
 数日後、盛岡の旅館にあったはずの南部鉄瓶を抱えた真弓が時代屋に帰ってきたのだった…。
 夏目雅子を見る映画としてはいいかな?
 数多くの登場人物のエピソードがそれぞれもっと立っていれば良かったと思うけど。
man-hole 監督:鈴井貴之 2000 日、カラー 1:1.85 2005/01/18(火) HDDレコーダー(TV神奈川) ドラマ系 ★☆ 2005/02/07
ストーリー 感想
 札幌の交番に勤務する正義感に燃える警官の小林(安田顕)が巡回中に高校生の希(のぞみ、三輪明日美)のカバンがひったくられるのを目撃して犯人を追跡してカバンを取り返すが、希はカバンを持って黙って立ち去ってしまう。
 希は、世間体しか気にしない教師の父親(本田博太郎)に嫌気が差していて、寒河江(大泉洋)が管理するデートクラブでバイトをしていたが、その事務所で傷害事件が起きたときに、野次馬にまぎれていた希を小林が見つけて話しかけると、希は逃げ去って落とした生徒手帳を小林に拾われる。
 小林は希と会ってバイトのことをたしなめるが希は聞き入れず、小林がこのことを希の名前を伏せて載せたWebサイトを希が目にして、逆に小林を中傷するページを作って、小林は上司から謹慎処分を受ける。
 希はついに父親と衝突して家を飛び出し、小林と会って願いがかなうと言われているマンホールを2人で探しに行くことになる。
 希が子供の頃のかすかな記憶を元に描いた絵と同じ場所をみつけ、そこのマンホールに入って2人は願いをかける。
 しばらくして、小林は卒業して絵の道に進んだ希と再会するのだった…。
 鈴井監督の第1作目で、ストーリーが親への反抗や進路を決めるための通過儀礼のようなものが、ステレオタイプっぽい絵がかれ方で語り口がつたなく、それに新人らしいというよりはっきり言ってかなり青臭い。
 でも、青臭いといっても悪い面ばかりではなくいい面も表れていたと思うので、次に期待しよう。
 特に、映像的には1作目と気負って変なことをせずに、素直なアプローチできっちり見せていて、映画の内容にも合っていた。
1980 監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 2003 日、カラー 1:1.85 2005/01/17(月) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2005/02/09
 80年代にケラ名義でミュージシャンをしていた頃から、自分の趣味を前面に押し出した活動をしていただけに、そんな彼のいわば青春時代の1980年が舞台の映画とくれば、さぞかし懐かしいアイテムをちりばめた自己満足ノスタルジー映画なのでは?という懸念はあったのだが、観てみたら時代を感じさせるアイテムは必要最小限しか登場せず、杞憂に終わった。
 しかし、それではこの映画は何の映画かと言えば、ともさかりえ演じる主人公の淫乱な元アイドルが男を次々漁る話もどうでもいいし、ましてや演じる彼女の妹で高校生の蒼井優が所属する映画部がアーティスト気取りでシュールな映画を作る話なんて、どうでもいい上に映画ファンにとっては近親憎悪以外の何ものでもなく、そんな話が延々と続くのは観ていてかなりつらい。
 演出的にも、監督が舞台出身だからというせいにするのもなんだが、映画のリズムをカット割りで取るという発想がないのか長回しが多く、代わりに早口で間合いを開けずに台詞を言うことでリズムを取るという演劇的な演出になっている。
 でもその結果はというと、この演出スタイルが映画としてハマることって難しいんだろうなぁ、と思ってしまうものになっている。
 そんなわけで、なんじゃこの映画?と思いながら観ていたのだが、ラストに2人と長女の犬山犬子を加えた恋に破れた三姉妹が、想像することも難しい20年後の世界は良くなっているだろうと漠然と思うシーンを見て、自分がその21世紀の人間になってしまったんだなぁと、20年前とこの20年間のことを思ってしまうことを狙った上での1980年を描いた映画なのか?と、かろうじて思うことはできたってことにしとこう。
夢の女 監督:坂東玉三郎 1993 日(松竹)、白黒 1:1.85 2005/01/14(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/02/10
ストーリー 感想
 明治の終わりごろ。旦那が死んだために、妾のお浪(吉永小百合)は手切れ金と共に関係を断ち切られ、赤ん坊のお種とも引き離され、岡崎の実家に一旦帰ったが借金のためその後上京して州崎で花魁の楓になる。
 楓はずっとお種を引き取りたいと思っていたが、金銭的にもそれは無理だった。
 楓には身請けをしたいという馴染みの客(永島敏行)がいたが、借金を増やすために年期を延ばしたことを楓から聞かされ、これ以上つぎ込むことのできない彼はその場で首を吊って自殺し、ケチのついた楓には客が寄り付かなくなってしまう。
 しかし、そんな楓の評判を気にも留めない上郷(安井昌二)が楓を気に入って身請けする。
 数年後、築地の待合の女将になったお浪が州崎を訪れ、世話になったお松(樹木希林)と二代目の楓(片岡京子)に、お種や岡崎の家族を引き取った今の暮らしや、自分にとっての幸せを語って去るのだった。
 坂東玉三郎監督の『外科室』に続く2作目で、主演は引き続き吉永小百合、前作に続いて(こだわりの?)モノクロ、1993年松竹=セゾングループ提携作品、と、製作背景もそうだが、出来上がった映画の出来もなんともバブリーなスカスカな感じ。
お吟さま 監督:田中絹代 1962 日(松竹)、カラー 1:2.35(1:1.66で放映) 2005/01/13(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/02/10
ストーリー 感想
 勢力を伸ばしていたキリシタン大名に対し秀吉が圧力を強めようとしていたころ、利休(二代目中村鴈治郎)の娘のお吟(有馬稲子)は、妻がいる幼友達のキリシタン大名の高山右近(仲代達也)とずっと慕い合っていて、お吟は自分の恋の想いを告げるが右近はキリストの教えに従って拒み続け、お吟は廻船問屋万代屋(伊藤久哉)との縁談をしぶしぶ引き受けることになり、やがてキリシタンは禁制となり右近は領地を取り上げられる。
 秀吉が開いた茶会でお吟は秀吉に見初められ、石田三成(南原宏治)と万代屋は偽の手紙で右近とお吟を寺で密会させ、東国征伐の戦大名として復帰しようとしていた右近を潰して南蛮貿易を独占し、右近を思い続けるお吟を秀吉の側室に差し出させる口実にしようとしたが、2人は危ういところ寺を抜け出し、お吟は右近から愛を告げられる。
 右近は加賀の前田家に逃れるが、右近が寺に落とした十字架が万代屋の手に渡り、それをネタにお吟を側室にと迫るが、お吟は右近への想いを貫き万代屋と離縁する。
 秀吉はお吟を呼びつけて、右近や利休の命と引き換えにお吟に迫るが、家に帰ったお吟を利休は加賀に行かせることにする。
 しかし利休の家が包囲され、お吟は死を選び、翌年には利休も自害するのだった。
 田中絹代監督の6作目(最後)。彼女の監督作を観るのは初めてなので、初期の作品と比べることは出来ないが、6作目ともなるせいか普通の映画と全く変わらず、何も意識せずに観ることができる。
監督:中村登 1952 日(松竹)、白黒 1:1.33 2005/01/09(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2005/01/11
ストーリー 感想
 昭和6年、深川の小学校の教師の見並行介(みなみこうすけ、佐分利信)は、貧しい家の生徒たちが売られて行くことに心を痛めていたが、そんなかつての教え子の1人きぬ子(桂木洋子)が芸者はいやだという理由で売られた信州から逃げ帰って、行き場が無くて行介の部屋に住まわせてもらううちに、2人は恋に落ちて結婚する。
 しかし、まもなくきぬ子は瀬沼涼太郎(岩井半四郎)と共に家を飛び出し、行介は彼に妻を譲ることも考えながら2人のいる伊香保に行くが、涼太郎が本気でないと感じてきぬ子を強引に連れ帰る。
 きぬ子はどちらの子供かわからない駿(すすむ)を産んでまもなく病気で死んでしまい、駿は同僚の園田(笠智衆)の紹介で、船橋に1人で住み私生児を産んだことのある野々宮昂子(たかこ、淡島千景)に預けられる。
 駿が4歳になり、昂子は駿に愛着を感じるようになり、昂子を訪ねた行介もお互いの身の上を話し合い、再婚に躊躇する気持ちを話しつつ昂子に再婚したい気持ちをほのめかす。
 その会話を隣の部屋で聞いていた昂子の妹の襲子(つぎこ、津島恵子)は、行介と共に東京に帰る途中の水郷観光で嵐に合い、2人で旅館に泊まることになって以来関係ができてしまう。
 昂子から襲子には妻のいる男と付き合っていることを聞いた行介は、襲子と会って結婚を申し込むが、家庭を持ちたくない彼女に断られ、駿を引き取ることにして、悲しむ昂子の元から連れ帰る。
 6年後の昭和18年、三鷹の小学校の教師になった行介は、難しい年頃になった駿とのことで悩むようになり、さらにその8年後の昭和26年、駿は近所の奥さんとドライブに行ったり同級生にラブレターを出したりして、自分の過去にあった恋の過ちの数々を思い出しては、駿が同じ目に合うのではと苦悩する。
 そこに、スウェーデンに行くことになった昂子が、神戸港に行く途中小田原の行介の元を訪ね、彼に駿に対して希望を抱くようにと言って、2人に別れを言って去って行き、駿に対する行介の気持ちは和らぐのだった…。
 今の目で見れば、息子は基本的に問題児でもなんでもない素直ないい子で、そんな息子の些細な行為をいちいち問題視したり、出生を重荷に感じすぎることには違和感があるし、それだけのことを描くのに何年にも渡るストーリーにすることもないだろうと思ってしまう。
稲妻草紙 監督:稲垣浩 1951 日(松竹)、白黒 1:1.33 2005/01/09(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2005/01/10
ストーリー 感想
 ある宿場町。おでんの屋台をやっているお雪(田中絹代)が神社の石段を上っていくと、旅姿の有馬又十郎(阪東妻三郎)とすれ違って、お互いに何故か相手を意識する。
 その町に、かつてお雪と恋仲だった船来(ふなき)源三郎(三國連太郎)が3年ぶりかに戻ってきた。
 彼は仕官先が決まったときに、お雪に結婚して一緒に来てくれと言ったのだが、バクチに溺れた父と病弱の弟を置いて行けないと断り、失望して1人で町を去ったのだが、その後家老を殴って逃亡の身となり、行き場が無くなって故郷の町の博打の元締めの亀六親分の用心棒になっていた。
 そして、又十郎はその藩の殿様から源三郎を斬るという秘密の任務を命ぜられて彼を探して町にやって来たのだが、その上意討ちに気乗りしていなくて、出来れば会いたくないと思っていた。
 又十郎はお雪の屋台に行って彼女と親しくなり、また宿泊先の女中でお雪の友達のおうた(小暮実千代)に惚れられる。
 そして、ついに又十郎と源三郎は宿で出会ってしまい、又十郎は源三郎に逃げてくれと懇願するが、源三郎はどこにも行かないと断り、そこに現れたお雪にも他人だから関係ないと言う。
 又十郎が町を去ろうとしたところ、源三郎の追っ手が6人現れたので出発を取り止め、又十郎は彼らに源三郎が家老を殴ったことこそ忠義で、自分は彼を斬らないと言い放つ。
 お雪は源三郎が墓参りに来たところを会って話をするが、源三郎はお雪に捨てられたことと、又十郎と親しくしていることを激しく責める。
 追っ手たちは源三郎の雇い主の親分に圧力をかけて、亀六親分が源三郎を町から逃がすと見せかけて、途中の神社の石段で待ち伏せすることを相談していて、それを宿で立ち聞きしたおうたが、そのことを源三郎に知らせて欲しいとお雪に話すが、彼女は源三郎とよりを戻すことはあきらめたと言って、屋台に現れた又十郎と飲みだし、おうたはその場を去る。
 2人は酔いつぶれて、又十郎はお雪に「好きだ」と告白し、お雪もそれに応じるが、彼女が源三郎のことを思っていることを察して屋台を去り、路上で出会ったおうたに「お雪をものにするために邪魔な源三郎を切るの?」と言われて動揺する。
 そのとき、通りかかった亀六の手下から源三郎を罠にかけたことを聞いた又十郎は、自分が代わりに石段に行って追っ手たちと斬り合う。
 そのころ、源三郎を見かけたおうたは彼をお雪に会わせ、お雪は源三郎について行くというが、おうたが待ち伏せと又十郎がそこに向かったことを言ったことから、又十郎が身代わりになったことに気づいた源三郎が石段へと急ぐ。
 彼が着いたときには、又十郎は6人を切り捨てていて、傷ついた身で源三郎に「逃げてお雪を可愛がってやれ」と言う。
 1年後、宿で働くお雪のところには、帰ってくるとの源三郎からの手紙が届き、おうたと2人で又十郎がまた現れることを祈るのだった…。
 名優の中の名優、阪妻と田中絹代をはじめとした俳優たちの貫禄に圧倒され、彼らの演技を見ているだけで、なんともいい気分になれる映画。
 特に、阪妻と絹代が神社で雨宿りをしているところや、2人で屋台で酔いつぶれているところのしっとりしたやりとりなんかたまらない。
 つくづく、今の映画ってこういう演出の映画が無くなっているという点では、明らかに退化していると思う。
 三國連太郎は、これがデビュー作らしい。
 タイトルの『稲妻草紙』は、クライマックスの対決シーンで稲妻がとどろくところから来ているようにも思えるが、「稲垣浩」と「阪妻」から1字づつ取ったということらしい。
半落ち 監督:佐々部清 2004 日(東映)、カラー 1:1.66 2005/01/03(月) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2005/02/09
 アルツハイマー病の妻(原田美枝子)を殺した群馬の刑事の寺尾聰が自首してきたが、何故か殺した後に歌舞伎町に行っていたことは口を割ろうとせず、死に場所を探して地元をうろついていただけだと言い張っていた。
 明らかに裏のある事件を、容疑者が身内ということで単純な嘱託殺人へと捏造する県警、やはり身内の汚職を県警から追及されないように県警にガサ入れしてでも事件を追及しようとする検事に圧力をかける検察、これらに対抗して真実を追究することが正義だと思っていた刑事や検察官や弁護士や新聞記者たちだったが、容疑者が真実を隠し続ける姿を見て、真実をあばくことが必ずしもいいことばかりじゃないという気持ちに変わっていく。
 このように展開する前半は、真実を追究する立場にある人たちが、自分自身で自分の行動を判断する責任を問うという、自分に対する厳しさと、社会の単純ではない厚みのある姿を描いて見ごたえがあったのだが、これが後半になると一転してアルツハイマー病の家族を抱えることの悲惨さや、寺尾の正常だった頃の妻との回想シーンなどの、ベタベタと家族愛を前面に押し出した、涙腺の弱い層を狙った甘い映画になってしまうのだから、何やってんだと言いたくなる。
 だいたい、骨髄移植のドナーと患者がお互いの身元を知らされないのは、知ってしまうことによって様々な不都合が考えられるという、「明かされない方がいい事実がある」という理由があるのに、この映画の描き方は移植によって新たな血の絆ができた者同士が会えて良かったというもので、都合よく美談にしちゃいけないことだろう、それは。
天と地と 監督:角川春樹 1990 日(東映)、カラー 1:1.85 2005/01/01(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2005/01/11
 川中島の戦いを、大量のエキストラを使って、これまでの日本映画でも実現したことがない程忠実に再現しようというという意図は感じられる。
 それは、火のついた木の巨大な玉を砦から斜面の下の敵に向けて転がしてみたり、いかだをつなげて川を渡るといった凝った他の日本映画では見たことのないような戦法を実際に映像化したり、「○○の陣」といった字幕を多用して様々な陣形を見せたり、上杉方を黒、武田方を赤と甲冑の色を使い分けて、敵味方の区別をを明確にするといった、スペクタクルシーンを見せる上での工夫などから感じられる。
 ところが、それにしてはスペクタクルシーンの割合が少な過ぎるし、その代わりに長い時間を割いているドラマ部分はちっとも面白くないし、見終わってガッカリしてしまう。
 予算が無くて仕方なくそうなったのか? それとも、何を描きたかったのかがそもそも定かでなかったのか?

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