映画の感想、スクリーン以外で鑑賞 2004年 2005/02/13 更新




採点基準
  ★★★★ :人類の宝
  ★★★☆ :絶対必見
  ★★★ :観るべき映画
  ★★☆ :観ても良い
  ★★ :中間
  ★☆ :観なくてもいい
  ★ :観る価値はほとんどない
  ☆ :作者もろともこの世から消えてなくなれ
  なし :採点不能

ストーリーは、基本的にすべて書いています。当然、ネタバレの可能性あり。

文章などの内容には、時々変更や追加が入ることがあります。

タイトル スタッフ/キャスト 製作年/国/カラー/縦横比 視聴日 メディア 作品の分類 採点 更新日
ドリームキャッチャー 監督:ローレンス・カスダン、原作:スティーブン・キング 2003 米、カラー 1:2.35 2004/12/31(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2005/02/13
ストーリー 感想
 少年時代に不思議な少年から超能力を与えられた少年たちが、大人になって冬の森の中で休暇を過ごしていると、その一帯は人間に帰省して爆発的に増える宇宙生物が発生して、モーガン・フリーマン率いる軍の対宇宙人舞台が隔離していた。
 仲間たちが次々死ぬ中、大人になった例の少年と再会、実は宇宙人だった彼が宇宙生物の親玉を倒して、地球の危機は回避された。
 これといったあからさまな欠点はないし、退屈せずに観ていられるのだが、結局つまらなく感じるのは磯野貴理子の言葉を借りれば「B級映画のオーラが足りない」からだろう。
 いかにもA級っぽく作られているが、ラストまで観終わって、「なんだ、B級映画だったんじゃん。だったら最初からB級っぽく作ればいいのに。」と思ってしまった。
忠臣蔵 四十七人の刺客 監督:市川崑 1994 日(東宝)、カラー 1:1.85 2004/12/28(火) HDDレコーダー(日本テレビ) 実録系 ★☆ 2005/02/09
 松の廊下の刃傷沙汰から吉良邸討ち入りまでを実録風に描いたもの。
 資金繰りなどの細部にいたるまで、大石蔵之助たちがどこで何をしたかということを、市川監督らしい緻密な映像で丁寧に描かれているが、そういう実録モノってノンフィクションっぽいだけで、えてしてドラマチックでない面白くない映画になるというパターンに、この映画も当てはまってしまった。
 それからこれが実話かといえば、例えば当日は雪が降ってなかったはずなのに降っていたりなど、あくまで実録風というだけで、実話の再現というわけではないだろう。
ながぐつ三銃士 監督:勝間田具治 1972 日(東映)、カラー 1:2.35 2004/12/27(月) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2005/02/06
ストーリー 感想
 長靴をはいた猫のペロを前作で殺し損ねた三匹の刺客の猫は、そのことで王様にどやされて、再びペロを追うことになった。
 そのペロは、駅馬車でアメリカの西部を旅しているときにアニーと冴えない少年ジミーと知り合うが、アニーが向かっているGO GOタウンを支配するならず者たちが、駅馬車に乗って町に来る保安官を迎え撃とうと駅馬車を襲ったが、保安官はいなかった。
 町に着いたまさにその時、アニーの父が殺され、遺体の傍らにはメキシコ銀貨が転がっていた。
 ならず者たちは、アニーに町を去らせようとするが、残って父の死の謎を探るべきだとのペロの提案を受け入れる。
 アニーは町でレストランを開くも、ならず者たちにメチャクチャにされるが、町のアメリカインディアンねずみたちの助けでもちなおす。
 そこで、ならず者が落としたメキシコ銀貨が偽物だと気づいたペロは、彼らの酒場の地価にニセ金工場を見つけ、アニーの父はその秘密を知って殺されたことを知った。
 ペロはメキシコに向けてニセ金を積んだ馬車を追って食い止め、実は連邦保安官だったジミーは町でならず者と打ち合い、帰ってきたペロやねずみたちも加勢して一味を倒す。
 ペロとジミーは町を去るが、刺客たちは相変わらずしつこくペロを追うのだった。
 『長靴をはいた猫』(1969)のキャラクターで、東映動画のマークにもなったペロが出演するシリーズの2作目。
 その前作が、成長キャラの主人公と彼と恋仲になるお姫様、すましたキャラで主人公に知恵を授けて助けるペロ、悪の魔王、ペロを追うとぼけた3匹の刺客の猫とペロを助けるネズミたちのコメディリリーフ、といった具合に、映画を面白くするには、このように登場人物のキャラを立てるという見本のようなものだった。
 それがこの2作目では、刺客たちは相変わらず面白いものの、ペロが正義に燃えるストレートな普通のキャラになってしまって、他のキャラもパッとせず、すっかり面白くなくなってしまった。
 ひょっとして、『長靴をはいた猫』の原画の一番下っ端としてクレジットされていた宮崎駿の不在が響いていたりして?
 タイトルは三銃士だけど、ストーリーはアレクサンドル・デュマの「三銃士」とは何の関係もない。
カルマ 監督:ロー・リーチョン 2002 香港、カラー 1:1.85 字幕 2004/12/25(土) テレビ東京 ドラマ系 ★☆ 2004/12/26
ストーリー 感想
 カリーナ・ラムは以前から幽霊を見続けていて、引越し先を選ぶ時も霊が出るか神経質になっていたが、新居でもやはり怪しい物音に悩まされた。
 彼女は幽霊は思い込みから来る幻覚に過ぎないと言う精神科医のレスリー・チャンに見てもらうことにし、彼女が夜に家で大家の死んだ妻子の霊を見てレスリーを電話で呼び出したりしているうちに、2人は親しくなる。
 レスリーは彼女の過去に注目し、両親の不仲の不満を両親に吐かせてトラウマを解消して、それ以来彼女は霊を見なくなるが、代わってレスリーがお棺の中の女の記憶や、幽霊を見るようになり、日頃霊の存在を否定しているだけに、誰にも言えずノイローゼになる。
 さらに、覚えのない夫婦から「娘を返せ!」と怒鳴られたりするが、やがて彼が少年時代に好きだった少女の自殺の原因だったことの記憶を自ら消していたことを思い出す。
 そして、その少女の霊に襲われ、追い詰められて自らも死んで許してもらおうとすると、霊は彼を許して成仏し、レスリーとカリーナは抱き合うのだった。
 ホテルから飛び降りて自殺したレスリー・チャンの遺作で、クライマックスで精神的に追い詰められた彼がビルから飛び降りようとするシーンがあるという映画。
 妙に理屈っぽい会話が続いて話の方が進まない前半も、一転して霊がジャンジャン出て来る描写が日本のホラーに影響されているかもしれないが、比べると溜めが足りなかったり大きな音頼みだったりで、芸が足りなくて相当安っぽいのが目立つ後半も、共に今いち。
王将 監督:伊藤大輔 1948 日(大映)、白黒 2004/12/25(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2004/12/26
ストーリー 感想
 明治末期、大阪の素人将棋指しの坂田三吉(阪東妻三郎)は、妻の小春(木戸光子)の大切な仏壇をこっそり売ったお金を将棋大会の参加費にあてて、あきれ果てた小春が家出をしようとしたとき、勝ち進んで得た賞金で仏壇を買い戻して帰って来て、謝ってなんとか引き止める。
 しかし、彼が最後に対戦した関根七段(滝沢修)に千日手を仕掛けたため当時のルールで負けになってしまい、悔しさで彼はプロ棋士になって家族にひもじい思いをさせないことを誓う。
 三吉は目を悪くして、本職の草履作りに支障をきたすようになっていて、小春は子供を連れて汽車の近づく線路にフラフラと近づいて行き、小春たちが帰って来ないと知らせを聞いた三吉が家に飛んで帰ってくるとやがて無事に帰って来て、自責の念にかられて将棋の駒を燃やしてしまう三吉に、小春は好きな将棋を続けて欲しいと言う。
 三吉と対局したことのある眼科医の菊岡博士が、三吉に名人位を関東から関西に取って来るために目を治したいと申し出て手術をし、8年後の大正2年、七段になった三吉は宿敵関根八段と対戦して、小春の念仏と2五銀の妙手が功を奏して勝利を収める。
 しかし、娘の玉江(三條美紀)はそれが苦し紛れの手で、関根が間違えただけだと言って三吉を責め、三吉はそれを認めて泣き崩れ念仏を唱え出す。
 大正10年、三吉は対関根戦通産11戦7勝を成し遂げ、関東将棋界に対抗するため関西将棋界は三吉を名人にしようとするが、三吉はその器ではないと辞退し、東京での関根名人の祝いの席上を手作りの草履持参で訪ねた三吉は祝いの言葉を述べ、関根は恐縮する。
 そのとき、病弱だった小春が危篤との電話が入り、三吉が電話口で唱えた念仏を聞きながら、小春は穏やかに息をひきとった。
 ご存知坂田三吉の話で、いやぁ何といっても阪妻の演技が絶品。
 前半の下品で柄の悪い態度から、後半の落ち着いた姿勢、それにクライマックスなどのエモーションの高い演技まで、まさに硬軟緩急自由自在。
 間違いなく映画史上最高の役者ぶりを見るためだけでも必見。
キートンの強盗騒動 監督:バスター・キートン/マル・セント・クレア 1921 米、白黒、サイレント 1:133 2004/12/20(月) VHS(NHK-BS2) お笑い系 ★★☆ 2004/12/22
ストーリー 感想
 捕まった百発百中の殺人犯のダンが写真を撮られる時、ダンはたまたま鉄格子越しに中を覗いていたキートンを代わりに写して、その後脱走する。
 キートンは、通りに落ちていた鉄格子を放り投げたら警官に当たって追いかけられ、途中で男に因縁をつけられた若い娘を助けて、列車に乗ってどこかの街に逃げる。
 するとそこにはキートンの写真の手配書が貼られていて、キートンが走って逃げるときにぶつかった大男につきまとわれる。
 その大男の命を狙う男が銃を撃ち、キートンが撃ったと思った大男はキートンを追い回す。
 しばらくして、さっき助けた娘と再会して、お礼に家に彼女のホテルの部屋に招待されると、その娘の父親は大男でまたまた追い回され、エレベーターの中に大男を閉じ込めて、キートンは娘と共にホテルを出て行くのだった…。
 前半と後半に2回の大きな追っかけシーンがあって、それぞれ体も張ってるし、車やエレベーターなどの仕掛けを使って面白く見せている。
 SLが画面奥から手前に進んできて、ぶつかるギリギリで止まって先頭に座ったキートンがアップになったり、エレベーターの回数表示の針を最上階に向けて思いっきり回すと、エレベーターがビルの屋上を突き破って飛び出すといった、アイディアあふれるビジュアルも見もの。
キートンのハイ・サイン 監督:バスター・キートン/エディ・クライン 1921 米、白黒、サイレント 1:133 2004/12/20(月) VHS(NHK-BS2) お笑い系 ★★☆ 2004/12/22
ストーリー 感想
 失業したキートンが新聞で射的場の従業員の求人を見て申し込もうとしたが、射撃の名手であることが条件だったので、警官の腰の銃をこっそり盗んで試し撃ちをしてみると、弾は狙った場所とは全く違う方向へ。
 それでも射的場に行って、試験をインチキで合格すると、ギャング団「ハゲワシ団」に命を狙われている男とその娘がそれを見ていて、キートンを用心棒に雇い家の住所を渡す。
 しかし、その射的場はハゲワシ団の本拠地で、試験に合格したキートンは殺し屋として雇われ、さっきの男を殺すことを命じられる。
 家に行くと、男は用心のため家中に抜け穴を作っていて、男がキートンに撃ち殺された振りをさせて切り抜けようとするが、ハゲワシ団にばれてキートンが家の中を抜け穴を通って逃げ回りながらハゲワシ団は全員を倒す。
 見どころはクライマックスの家の中を逃げ回るところの、仕掛けを盛り込んだキートンのもの凄い身のこなしで、2階建ての家を横から見た断面が「田」の字になっている4つの部屋をグルグルとすごい速さで移動し続けたりする。
燃えつきた納屋 監督:ジャン・シャポー 1973 仏、カラー 1:1.66 2004/12/20(月) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2004/12/22
ストーリー 感想
 フランスの小さな村で、除雪車が夜に道端で頭から血を流している通りがかりの女の死体を見つけ、ラルシュ治安判事(アラン・ドロン)率らが捜査に乗り出した。
 外部の者の犯行の線が無いことから犯人は村にいると考えられ、ラルシュは現場の近くに住んでいて、犯行時刻にそれぞれ外出していた2人の息子がいたローズ(シモーヌ・シニョレ)の家に狙いを定め、雑談をしたり家に泊めてもらったりする。
 ローズと夫のピエールが、殺された女が持っていたスイスフランを次男のポールが家に隠し持っていたことを知り、ポールは死体は見なかったと言い、村を出るためにお金が必要だったポールに、ローズはそのお金の代わりに山を売って用立てると言う。
 さらに、ローズが事件の夜に11時に帰宅していたと証言した長男のルイが、その時刻に街にいたことが目撃され、警察で尋問を受けローズが面会して話をするが、妻に隠れて街で浮気をしていたことは2人とも警察には言わなかった。
 まもなく、真犯人の通りがかりの2人の家出少女が捕まり、ラルシュが村を去る際にローズに会いに来て、ポールがお金を盗んだと思っていることを言うと、ローズはお金を返してラルシュが罪を問わなかったことに感謝するのだった。
 70年代のフランスの犯罪モノは、改めて観るともの凄く地味だなあ。
 日本の2時間サスペンスドラマの方が、話に起伏があって面白いくらい。
 でも、それは逆に渋くてどっしりとしているのがこの映画の特徴とも言える。
炎と女 監督:吉田喜重 1967 日(松竹)、白黒 1:2.35 2004/12/19(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2004/12/22
ストーリー 感想
 伊吹真五(木村功)と立子(岡田茉莉子)の夫婦には1歳の息子の鷹士がいて、友人で子供のいない産科医の坂口健(日下武史)に子供がいてこそ家庭は成り立つと言うほど幸せそうだったが、実は真五は子供を作れないと坂口の師匠にあたる藤木田(北村和夫)に診断され、その子は人工授精で生まれた子供だった。
 真五は「子供が要る」と命じるように人工授精を迫り、立子は「見たこともない男の子供を産むくらいなら、自分に付きまとっている男(細川俊之)の子供がいい」と言い、結婚直前に別荘に行ったときに、衝動的に肉体関係を持った現地の男がその男かも知れないと話し出した。
 しばらくして、立子が家に1人でいるときに男が乗り込んできて、立子は彼が別荘の男とは違うと思い、結局人工授精に応じたのだった。
 ある日、立子が目を離しているときに鷹士がいなくなり、真五は連れ去った犯人の心当たりを立子に問い詰めているとき、立子は坂口の妻のシナ(小川真由美)が「私が不妊症かもしれないから、次の子供ができたら私にちょうだい。」と言っていたことを思い出し、ためらいながらも彼女が連れ去ったと答えた。
 シナはしばらく鷹士を連れ回した後、立子と真吾の家に鷹士を帰しに来て、そこにいた2人と坂口、藤木田と共に討論になり、シナは坂口が医局医で終わらず開業医になるために自分と結婚したことを責め、立子は精子提供者が坂口だと言うことを知っていたと言い、鷹士は自分の子供で血の繋がり以上に繋がっていると言い張る真五に反し、立子は皆は誰も繋がっておらず、鷹士の父親はいないのだと心に言い聞かせていた。
 後日、立子は鷹士を連れ出して列車の中にいて、彼女から連絡を受けた坂口が乗り込んで来た。
 シナは真五に、探している立子はうちにいると嘘を言って呼び寄せ、真五と寝ることで坂口が立子と浮気をして鷹士が生まれたことの復讐をしようとしたが、真五は浮気ではなく人工授精だったことをシナに告げる。
 夜に別荘で立子と坂口は抱き合い、翌朝、駆けつけた真五に立子は子供を作らずあのまま静かな生活を続けるべきだったが、一緒に帰ると言う。
 林の中で鷹士を肩車している坂口と会った真五は怒ることなく静かに「鷹士が僕の子供である事実に変わりはない。」と言って、立子と鷹士を乗せた真五の車は別荘を去っていった…。
涙を、獅子のたて髪に 監督:篠田正浩 1962 日(松竹)、白黒 1:2.35 2004/12/14(火) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2004/12/22
ストーリー 感想
 サブ(藤木孝)は、自分のせいで脚が悪くなった木谷(南原宏治)を兄貴と慕って、横浜港の日雇いに仕事を世話してピンはねしている木谷の手先となって、ストを起こそうとしている日雇いたちを仕事へと駆り立てた。
 飲食店店員のユキ(加賀まりこ)が犬に襲われていたのをサブ助けたことで2人は付き合うようになり、木谷は昔からの恋人で今ではインポの社長の妻になった玲子(岸田今日子)と会っていた。
 木谷はサブと仲間のトミイに、ストの首謀者の中島にヤキをいれることを命令するが、トミイが誤って中島を殺してしまい、水谷が中島の葬式にサブを遣いとしていかせると、そこには中島の娘のユキの悲しむ姿があり、サブは罪の意識に襲われる。
 玲子がサブを自分の家に誘い、木谷の脚はサブのせいではなくて出兵中の時のものだとわかり、そこに木谷が現れてサブは思わず彼を殺し、豹変してサブを責める玲子の態度にさらに取り乱す。
 港に行ったサブを、彼が中島を殺したと知った日雇いたちやユキが囲み、彼らに木谷を殺したことを言ってかけつけた警官に逮捕され、「ユキちゃん、好きだ!」と叫びながら連行されていき、残されたユキは泣き崩れるのだった…。
嵐が丘 監督:吉田喜重 1988 日、カラー 1:1.85 2004/12/12(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 2004/12/12
ストーリー 感想
 末法の世の中世、山に住んで神事を司る山部一族の東の荘の当主の高丸(三國連太郎)が都から帰ってきて、下賎の少年を連れ帰って鬼丸と名付けて自分の息子にし、高丸の実の息子の秀丸は彼を蔑んだが、妹の絹は鬼丸に好意を抱いた。
 3人は成長したが、秀丸(萩原流行)は父が鬼丸(松田優作)を実の息子のように扱うのに反抗して家を飛び出し、絹(田中裕子)は初潮を迎え巫女として都に行くことになっていたところ、鬼丸と離れ離れになるのが嫌で、近くにある分家の西の荘の光彦(名高達郎)に嫁ぐことにし、嫁入りの前日絹は鬼丸と結ばれる。
 高丸が勝手に神聖な山を通った侍に殺され、秀丸が妻の紫乃(伊東景衣子)と息子の良丸を連れて帰って鬼丸を追い出す。
 やがて絹が娘を産み、紫乃が山道で賊に犯されて死に、そこに鬼丸が都で手柄を立てて地頭として東の荘に帰ってきて、秀丸を追い出し西の荘に出向いて絹に会おうとするが、光彦は会わせなかった。
 光彦の妹の妙(石田えり)は鬼丸に嫁ぐつもりで東の荘を訪ね、鬼丸は妙をのかずの間に閉じ込めて、難産で体が弱くなっていた絹が死に、鬼丸は絹を思うあまり絹の墓を掘り返して棺を開け変わり果てた姿に狼狽し、妙の体を狂ったようにもてあそんだため妙は首を吊って死に、鬼丸は西の荘を襲って光彦たちを殺す。
 絹の娘で母と同じ名の成長した絹(高部知子)は、下女として東の荘に来て、鬼丸を恨む者同士である良丸(古尾谷雅人)と共に、鬼丸が掘り返して持ち帰っていた母の亡がらを隠したために、服を脱がされ鞭で折檻される。
 鬼丸が神事で夜1人で山に行ったとき、良丸は鬼丸に戦いを挑んで鬼丸の腕を切り落とし、とどめを誘うとしたとき、鬼丸が「絹が見える」を言い出して絹の名を叫び続けるのを哀れに思った良丸はその場を離れ、絹と良丸は東の荘を出てそこには誰もいなくなり、母の亡がらを埋葬しようと棺を馬に運ばせると、馬が鬼丸のところに向って走り出し、鬼丸は棺を引きずって歩き出すのだった…。
秦・始皇帝 監督:田中重雄 1962 日(大映)、カラー 1:2.2 2004/12/10(金) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2004/12/11
ストーリー 感想
 秦の国から他国に人質に取られていた少年時代の悔しさと、民が戦のない世で平和に暮すことを目指して、始皇帝(勝新太郎)は各国に攻め入って支配下に置いていき、やがて中国を統一する皇帝の座に着いた。
 彼は諸国から集めた姫3千人を住まわせる阿呆宮を建て、一人ずつ謁見する姫の仲で、やぶさめが特技だと言って披露すると見せかけて、始皇帝を狙って仇をうとうとした朱貴児(山本富士子)を一番気に入った。
 燕の国の太子丹(宇津井健)は、剣の使い手の荊軻(市川雷蔵)が刺客として始皇帝のそばに近づき、あわやというところで朱貴児が情けを請うたすきに始皇帝は逃れて、荊軻は殺される。
 太子丹は秦に大群を率いて攻め込むが、始皇帝が迎え撃って、戦車上での1対1の対決の末に太子丹は叩き落される。
 しかし、この留守中に北辺の蛮族が阿呆宮を襲って、朱貴児は殺されてしまい、始皇帝は国を蛮族から守るために30万の兵を派遣し、万里の長城を築かせる。
 しかし、長城の建設は七年経っても完成せず脱走する者も現れ、またなりふり構わず美女をかき集めたため、人々の不満は高まり、儒学者の于越(うえつ、長谷川一夫)たちが皇帝に直訴すると、皇帝は儒学を禁じ書物を焼き捨てる法を発令し、儒学者たちを大きな穴に落として生き埋めにする。
 書物を持って逃走した儒学生の万喜良(ばんきりょう、川口浩)が、逃げ込んだ家の娘の姜女(きょうじょ、若尾文子)が庭の池に落ちて服を脱いで肌を見たということと、実は書物を大量に隠し持っている家だったことの運命でその家の婿になるが、結婚式の途中で役人に見つかって引き立てられ、長城建築の人夫にされる。
 始皇帝は命を狙われるようになり、不老長寿の方法を探ろうとする。
 また、長城の工事現場が地震に襲われ、皇帝自ら現場に行って万喜良を人柱にし、それを夢で見た姜女が夫の元へ向かい、途中で追いはぎに逢うも、始皇帝のかつての家臣の息子の李黒(りこく、本郷功次郎)に助けられる。
 人柱を見つけた姜女が柱にすがって泣き崩れると、一転にわかに掻き曇り雷が長城を木っ端微塵に打ち砕く。
 皇帝が見守る処刑場で火あぶりにされようとされる姜女は、国を守るためと言いながら民を苦しめる皇帝を面と向って非難する。
 そこに李黒が現れて命乞いをして、皇帝は刑を中止し群集は喜ぶが、姜女は自ら夫の後を追う。
 夜、皇帝が1人で自分の政策を省みているときに、皇帝の命を狙う太子丹が現れて相打ちになり、反乱の知らせを受けて翌日出陣する馬上で皇帝は息絶えた。
血は渇いてる 監督:吉田喜重 1960 日(松竹)、白黒 1:2.35 2004/12/01(水) NHK-BS2 ドラマ系 ★★☆ 2004/12/06
ストーリー 感想
 会社の屋上で解雇社員に事情説明の集会が開かれているとき、社員の木口(佐田啓二)が拳銃をこめかみに当て、自分の命と引き換えに社員たちの解雇の中止を迫るが、同僚の金井(織田政雄)が突き飛ばして全治10日の怪我で済んだ。
 彼の行動は世間で様々な憶測を生むが、生命保険会社の宣伝担当の野中ユキ(芳村真理)は、木口に宣伝への起用を持ちかけ、木口は引き受けながらも元々気弱な正確な彼は、町中に張り出されたこめかみに銃を当てた写真や、テレビ出演などを重ねるにつれて、人前に出るような才能がなく思ったことをボソボソしゃべっているだけで人気が上がってきたことに不安になり、実生活でも贅沢せずに目立たないようにした。 
 しかし、水口は大衆の反応がいいことが自分に才能があるからだと思い始め、野中は水口の人気は作られたものだと釘を刺す。
 ユキは昔の恋人で記者をしている原田(三上真一郎)と、立場の違いから反目しながらも時々会っていて、ユキは水口が勝手に行動して自分から離れていく不安をベッドの中で原田に話す。
 「みんなのために」が口癖の水口を狂言自殺のまやかしと決め付けて彼を叩こうと狙っていた原田は、水口の家を訪ね妻の幾代(岩崎加根子)に会い、夫とうまくいかなくなってきた彼女の心につけ込んで彼女と関係を持ち、その時の写真をネタに水口を脅すが、水口は目の前の浮気相手に怒りもせず、妻も無抵抗な彼を非難する。
 妻の写真を金でケリをつけた後、原田は今度は酔いつぶれた彼を女と寝せて写真を撮って週刊誌に発表し、ユキと共に原田とあった水口は、話がこじれて原田を車道に突き飛ばしてあやうく殺しそうになる。
 この事件で、保険会社は水口を降ろすことを決め、水口は講演の仕事も断られるようになり、会社を辞めたユキは原田と会い、勝利宣言をする原田とは別にユキは虚しさを感じていた。
 水口は自分を信じてもらうために保険会社の重役室で前と同様に拳銃自殺を図り、金井にも同行させて彼に止めてもらをうとするが、「どうせ狂言だろ」の声に本当に頭を撃って死んでしまう。
 再び世間は騒然となって、水口の家に押しかけた記者たちに、幾代は自分や記者たちみんなが夫を殺したと言って泣き崩れた。
 ユキと原田が保険会社を通りかかったとき、ちょうどビルの壁面にあった巨大な水口の写真が撤去されて、地面に落下するのだった…。
 大衆を動かすものと動かされる大衆の、共にいい加減な者同士の共犯関係は、この頃から映画のネタにもなるような問題で、それは現に今でも変わっていないのだから、この映画が今でも通用していることに感心するというより、世間の進歩の無さを情けなく思ってしまう。
 吉田監督のデビュー作『ろくでなし』(1960)に続いて同年に作られた2作目で、この2作ともクールなストーリーや台詞といい、コントラストの強い都会的な映像といい、とてもカッコいい。
 後年の重い作品と同じ監督の作品とは思えないくらい。
 はっきり言って、こっちの方が好き。
ろくでなし 監督:吉田喜重 1960 日(松竹)、白黒 1:2.35 2004/11/30(火) NHK-BS2 ドラマ系 ★★☆ 2004/12/06
ストーリー 感想
 秋山物産社長(三島雅夫)の息子の俊夫(川津祐介)は、大学の友人3人を車に乗せて、社長秘書の郁子(高千穂ひづる)がお金を銀行に運ぶのを待ち伏せて、車に引きずり込んで金を奪おうとするが、それは彼らの遊びで、金は返して車から降ろす。
 郁子はそのことを社長に話し、俊夫たちを狼だと言うが、放任主義で好きなだけ小遣いを与える社長は俊夫に軽く注意しただけで、俊夫は自分のことを狼と言った郁子に仕返しすることを誓う。
 後日、郁子は同僚の篠原(渡辺文雄)に付きまとわれているときに、俊夫の仲間の淳(津川雅彦)が現れ、彼の運転する車に乗り込み、俊夫が開いたパーティに招待されるが、俊夫は彼女にシャンソンを歌わせて恥をかかせるつもりで、あわやというところで淳が会場の明かりを消して、その隙に郁子を連れ出して車で立ち去る。
 郁子はそんな淳に、他の仲間と違って根は不良じゃないと感じて惹かれ、彼に俊夫たちと縁を切ることを勧めるが、淳は自分はろくでなしだ、自分には関係ないと言って郁子を受け入れない。
 郁子はアルバイトを探している淳に自分の会社の求人を紹介し、自宅に招待したときに淳は力ずくで郁子の体をものにしてしまう。
 アルバイトは始めたが、郁子が口を挟むので結局すぐに辞めてしまう。
 俊夫たち4人は卒業を控えてそれぞれ自分の将来を気にしだし、俊夫も今までのような遊び呆けた毎日は続かないことを感じていたが、その中の1人森下(山下洵一郎)が、俊夫ががなんとなく欲しかって手に入れた銃を使って、もう1度本当に郁子の金を奪うことを言い出し、淳だけが誘いに乗って2人は出て行く。
 俊夫は郁子にこのことを電話で知らせて、銀行には明日行くように言うが、郁子は予定通り銀行に向かい、淳たちの誘いに乗って車に乗る。
 助手席の森下が金を奪うが、返すように言った淳をもみ合いになって淳が撃たれ、1人逃げ出した森下を淳が車で追って轢く。
 郁子は淳に、鞄の中はお金ではなくてただの白い紙だったことを告げると、淳は郁子が自分を信用しなかったことを非難し、「関係ない」と言って通りを歩き出し、力尽きて倒れて郁子に抱きかかえられながら死ぬのだった…。
人間の約束 監督:吉田喜重 1986 日、カラー 1:1.66 2004/11/25(木) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/12/06
ストーリー 感想
 河原崎長一郎の家のはなれに住む彼の母の村瀬幸子が寝室で死んでいるのが発見され、死因に不審な点があったので、刑事の若山富三郎と佐藤浩市たちが現場を調べた。
 村瀬の夫の三國連太郎に事情聴取すると、彼は自分が首を絞めて殺したと言ったが、死因は枕元の洗面器の水で溺死したようだった。
 生前、村瀬はある日突然徘徊、失禁、過食をするようになって病院に入院するが、同室の入院患者たちはボケの症状がひどく、環境は最悪だった。
 そのうち、三國もボケ始め、故郷の墓に穴を掘って、自分でその中に埋まろうとする。
 河原崎は同じ会社に勤める田島令子と昔浮気をしていたが、最近またよりを戻し、妻の佐藤オリエは以前から夫の浮気に薄々気づいていたが、ついにばれてしまう。
 ついに村瀬を退院させることにし、面倒を見ることになった佐藤がお風呂に入れているとき、村瀬が湯船に沈んでいくのをつい気づかない振りをして風呂場を去るが、我に返って三國に助け出してもらい、「死なせて。」と叫ぶ村瀬に三國は「婆さんを楽にするなら俺がする。」と言う。
 帰宅した河原崎がはなれに行くと、そこはガス臭くなっているのに気づいて、河原崎はガス栓を開けて心中しようとした三國を非難する。
 後日、河原崎は田島と縁を切って帰宅する頃、三國は村瀬が水鏡として使っていた枕元の洗面器の水でタオルを濡らして村瀬の顔を押さえつけて窒息死させようとするが殺しきれず、三國が隣の部屋に戻って眠り、河原崎が帰ってきて村瀬の寝室に行くと、彼女は洗面器に顔を突っ込んでは苦しくなって上げることを繰り返していて、彼は彼女の後頭部に手をかざし、村瀬が息絶えて立ち去ろうとした河原崎は、三國が布団の中で目を覚まして、天井を見つめているのに気づいた。
 河原崎と佐藤が警察に面会に行き、河原崎はすっかりボケてしまったような三國と2人っきりにしてもらって、「殺したのは自分で、父さんは見ていたはずだ」というが、三國は彼にも刑事たちにも「あいつが来て殺した。」と言うのだった。
 若山は「あいつ」とは河原崎のことではないかとにらんでいて、「明日事情聴取に伺う」と言って2人を帰し、河原崎は岐路の途中で車をUターンさせ、佐藤に何かを言うと、彼女は驚くのだった…。
 ストーリーや台詞がやたら象徴的な映画が多かった吉田作品の中で、これは一転、裏のないストレートな映画で、雰囲気は相変わらす重苦しいながらもいつもより軽め。
 この映画の前年に作られた『花いちもんめ』(1985)に続く老人性痴呆症の映画だが、『人間の約束』は決して病状や看護の実態をリアルに描くという映画ではなく、本人が望む安楽死を夫や子供の手で行うことについての映画。
 放映の後の監督自身によるコメントでは、「村瀬幸子は誰が殺したかははっきりしないように描いていて、殺したのは村瀬と夫の三國と子供の河原崎の共犯、例えれば『神の手』が殺した。」とのこと。
 でも、そうした映画なのはともかく、個人的な印象としては解りやすくなって良かったといっておきながら、おかげで正攻法で生真面目な面白味に欠ける、普通の映画になっちゃったかなぁ?といった感じ。
 夫の不倫のエピソードが生かされてないようで、夫婦の溝が感じられないし、2人の子供(武田久美子、杉本哲太)の杉本の方が、祖父母を人間扱いしなかったり、親に「父さんも婆さんが死ねばいいと思ってる」と痛いところを突く台詞を言ったりするのも生かされてないし、これらは映画を面白くする生かしようがあったと思う。
 三國連太郎&佐藤浩市の親子初共演って、この映画だったっけ?
ふたり 監督:ロバート・ワイズ 1972 米、カラー (TV版=1:1.33にトリミング) 2004/11/28(火) テレビ朝日 ドラマ系 ★★☆ 2004/12/06
ストーリー 感想
 マラケシュからアメリカに行くために乗ったカサブランカへの列車の1等車で、ピーター・フォンダはヴォーグの表紙も飾るモデルでアメリカに小さな子供がいるリンゼイ・ワグナーと、雑誌の編集者の2人と知り合い親しくなる。
 列車の故障で線路わきの村に行ったとき、ピーターは深くつき合うのを避けているようだった。
 カサブランカからパリへ向う途中、ピーターはリンゼイに自分はベトナムから脱走してきた兵士で、ベトナムで反戦の気持ちが芽生えて国に抗議する意味で脱走したが、今ではその意味も失い、逃げることに疲れたから自首してアメリカに向う途中だと話した。
 2人は経由地のパリで別れたが、リンゼイが教えたクラブにピーターが行くとリンゼイもそこに現れ、、2人で夜のパリを回って彼女のホテルでベッドを共にする。
 リンゼイはピーターにアメリカに帰るのはやめて2人で一緒にいようと説得するが、ピーターの決心は固かった。
 2人は翌日ニューヨーク行きの飛行機に乗り、彼女の子供が待つ家に行き、そしてピーターはタクシーに乗って出頭しに去っていくのだった…。
サムソンとデリラ 監督:セシル・B・デミル 1950 米、カラー 1:1.33 2004/11/23(火) VHS(地上波) ドラマ系、感覚系 ★★★ 2004/11/24
ストーリー 感想
 ダンの町のヘブライ人はペリシテ人に支配されていたが、ヘブライ人たちの期待を受ける怪力のサムソン(ヴィクター・マチュア)は、彼を慕う幼なじみがいるにも関わらず、ペリシテ人のセマダー(アンジェラ・ランズベリー)に結婚を迫っていて、彼女の妹のデリラ(ヘディ・ラマー)はサムソンのことを狙っていた。
 ガザの大使(ジョージ・サンダース)の獅子狩りにサムソンとデリラも参加し、サムソンが素手でライオンを倒したことを信用しない大使は、大男と戦わせるもサムソンが勝ち、その褒美としてセマダーとの結婚を認めてもらう。
 結婚式のとき、サムソンが出したなぞなぞが解けるかで賭けになりデリラはセマダーにサムソンから答えを聞き出させ、それで賭けに勝って、まんまと結婚をやめさせ、軍政官が代わってセマダーと式を挙げたと知ったサムソンは裏切りに怒り狂って暴れだし、セマダーを含む何人もの出席者が死に、デリラの屋敷や農地は火に包まれる。
 サムソンはペリシテ人を狙う盗賊になり、デリラは色仕掛けでサムソンを捕まえることを名乗り出て、デリラに心を許したサムソンは彼女に怪力の秘密が髪の毛にあることを話してしまったため、デリラはサムソンに一服盛って髪を切り、彼を殺さず血を流させないという約束でペリシテ軍に引き渡すことに成功する。
 サムソンは町の地下でこき使われるが、彼に会いに来たデリラが、彼が両目を焼かれたことを知って自責の念に駆られる。
 月日が経ち、デリラがサムソンを逃がそうと面会に来て、彼女を裏切り者呼ばわりして怒った彼に、伸びた髪の毛と共に怪力が戻ったことに気づき、サムソンは神殿で彼を辱める儀式にあえて出て、デリラには神殿に来るなと言う。
 当日、サムソンの警告に従わずデリラも主席し、彼女が彼を神殿の柱に導いて、その場を離れた振りをしたデリラが去ったと思ったサムソンは柱を倒して神殿を木っ端微塵にし、2人は大勢の観客と共に瓦礫の下敷きになる…。
 観たのは吹き替えで、30分以上カットされたもの。
 偶然にも、昨日観た『オールド・ボーイ』と同じ、復讐する者とされる者の話で、おかげで『オールド・ボーイ』に足りないと思ったことが何なのか解ったような気がする。
 その足りないものとは、ストーリーやキャラクターの描き方におけるネットリ感というかシットリ感というかコクというか、とにかく「復讐」というのは映画的に深く描ける心理なのだから、『オールド・ボーイ』はその点荒削り過ぎて、心理の掘り下げが足りなかったのではないか?
 ハリウッド製の昔のコスチューム・プレイ大作は、とかく主人公を囲む人物や時代などの背景が大きくて、エピソード中心に進みがちなところ、『サムソンとデリラ』は2人の愛憎渦巻く小さくて密度の濃い話で、こっちの方が面白い。
 サムソンに高々と持ち上げられて放り投げられる人が吊られているのがわかる放物線で飛んでいくので、ワイヤーアクションみたい。
 ライオンと格闘するシーンでは、ヴィクター・マチュアと同じ体格をした吹き替えは用意できそうにないから、ひょっとして100%本人。
 クライマックスのスペクタクルも迫力満点。
 アンジェラ・ランズベリーは、最初に見たのが確か『ナイル殺人事件』で、そこでは既におばあちゃんだったが、この頃は背の低いニコール・キッドマンみたい。
愛と死をみつめて 監督:齋藤武市 1964 日(日活)、白黒 1:2.35 2004/11/20(土) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2004/11/22
ストーリー 感想
 兵庫県の高校生の小島道子(吉永小百合)は、大阪の病院に入院しているときに浪人生の高野誠(浜田光夫)と知り合う。
 道子が同志社大学に進学した後に再入院し、左目に眼帯をした彼女は大阪でアルバイトしていた誠と再会する。
 道子は大学を退学し、不治の病に冒された彼女と別れざるを得ない状況になることを恐れて距離を置こうとする彼女に、誠はそれでも道子を愛するから気を強く持てと彼女を叱咤する。
 彼女の顔の軟骨肉腫には放射線治療だけではだめで、左側の顔を半分潰してでも手術をしなければいつ死ぬか判らない状況で、父親(笠智衆)と誠は手術を勧めるが、道子は躊躇するも、やがて生きているということを実感して手術を決意する。
 道子は気丈な態度と気弱な本心の間で揺れ動き、誠は道子のそばで励まし続けるが、手術と整形で顔が元に戻るまでの2年間は会わない約束をして、誠は東京の学校に帰り、また気を紛らすために信州の山に登ったりする。
 手術後も2人は文通を続けるが、道子は6ヶ月の入院延長を告げられ、中小事業主の父親の出費を減らすために、個室から相部屋に移る。
 医療福祉への就職を希望する道子は、相部屋のおばさんたちと打ち解けるが、軟骨肉腫は右の顔にも出来て、試験中の誠には知らせずに、21歳の誕生日の後まもなく手術を受ける。
 しかし、病状の悪化で手術は途中で取り止めになり、道子の父親が状況を説明して道子のことは忘れてほしいという手紙を誠に出したため、誠は電話口の道子に溜まった数々の不満をぶちまけながらも、謝って道子を愛し続けることを誓う。
 父親が突然訪ねて来て、2人で大阪の街に外出して楽しそうに振舞うが、内心自分の命が長くないことを悟った。
 また、彼女が宇野重吉ら入院患者の世話を進んですることを快く思わない見舞い人に脅されたりもした。
 道子の病状は電話に出るのが苦痛になるまで悪化し、彼女は身の回りの品物を燃やしたり、誠と買ったフェニックスの鉢を宇野にあげたりする。
 誠が見舞いに来たときには、道子は個室に移ったばかりで、2人で信州の山に登る夢を語り合っているうちに、道子の目が悪くなったことを気づかない振りをした誠の嘘を道子に追及されて、誠は苦悩する。
 道子は脳が冒される恐怖を感じつつも誠を東京に送り返し、まもなく1963年8月7日、誠の誕生日の前日に家族と宇野に見守られて亡くなった…。
狼の挽歌 監督:セルジオ・ソリーマ 1970 伊、カラー 1:2.35 2004/11/20(土) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2004/11/22
ストーリー 感想
 殺し屋のジェフ(チャールズ・ブロンソン)は恋人のヴァネッサ(ジル・アイアランド)と共に南の島を観光中、車の後をつけて来る車に気づいて振り切ろうととしたが、そこで直前の殺しの依頼主のレーサーのクーガンが現れて、ジェフを撃ってヴァネッサを車に乗せて走り出し、追いつかれた車の男たちに殺されそうになるところを逆に殺す。
 ジェフはクーガンがヴァネッサと以前から恋人同士で、恋敵のジェフを殺そうとしたことを知る。
 ジェフは弁護士(ウンベルト・オルシーニ)にもヴァネッサの同乗を隠し続けたので服役することになり、ムショ仲間に殺し屋家業が虚しくなったのではと言われ、最後の殺しで一瞬ためらったことを語り出す。
 釈放後、クーガンとヴァネッサへの復讐のためにニューオルリンズを訪れ、組織の人間が空港に彼を迎えに来ていたが、彼は足を洗ったと言って断る。
 レース出場中のクーガンを殺して、ヴァネッサとも再会し、彼女はクーガンに脅されて言いなりになっただけだと言い訳した。
 2人で旅行に行こうと空港に着いたとき、クーガンを狙撃しているジェフの姿が写った写真をネタに、ジェフは組織のボスのウェーバー(テリー・サヴァラス)からの招待を受けると、彼の家にはジェフの服役中にウェーバーの妻の座に納まったヴァネッサがいた。
 ただし、ヴァネッサは情婦のような夫婦関係でお互いに浮気は自由で、ウェーバーは金がかかることに愚痴をこぼす。
 ヴァネッサはジェフにまとわりつくようになり、ジェフは復讐を考えつつ彼女を受け入れる。
 ジェフがウェーバーのところに乗り込み、ウェーバーがジェフにヴァネッサを殺したかを聞き出そうとすると、ヴァネッサが後から現れ、2人でジェフの写真とネガをヴァネッサが奪って立ち去り、ウェーバーはジェフに、ヴァネッサは信用ならない女で、写真をネタに脅されるだろうと言うが、ジェフはウェーバーを撃ち殺す。
 ヴァネッサはジェフとの待ち合わせ場所のホテルではなく弁護士のところに現れ、2人はまんまとウェーバーをジェフに殺させて遺産を受け継ぐことが出来、弁護士は警察に通報して、ホテルに現れたジェフは警官隊に追われて逃走する。
 弁護士はヴァネッサに求婚するが、彼女は自分からは手を汚さない彼に心を開かず、2人で組織のビルのガラス張りの屋外エレベーターに乗っているときに、弁護士が狙撃されて死ぬ。
 ヴァネッサは、聞こえるはずはないのにジェフに「愛してる」と命乞いをするが、ジェフは彼女を撃ち殺し、その場を逃げずに駆けつけた警官に自ら撃たれるのだった…。
ゴジラVSデストロイア 監督:大河原孝夫 1995 日(東宝)、カラー 1 2004/11/19(金) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★★ 2004/11/22
ストーリー 感想
 天然ウランが埋蔵されていた孤島をゴジラが破壊し、直後、真っ赤なゴジラが香港を襲う。
 ゴジラの体内では核反応が暴走して高温状態になっていて、最悪地球全体を巻き込む核爆発を起こすことが懸念された。
 科学者の辰巳拓郎が、かつて芹沢博士(平田昭彦)が開発してゴジラを殺したオキシジェン・デストロイヤを独自に開発して、志村喬博士の孫でゴジラを研究している林泰文が、ゴジラに再びそれを使うことを進言するが、彼女の叔母の河内桃子はかつての経験から使用に反対する。
 林の姉でテレビキャスターの石野陽子も、科学の進歩に批判的な立場で辰巳に接する。
 東京湾地下トンネルの工事現場で高温のため事故が発生し、調査に乗り出した辰巳は、太古の地層にあるはずのない生物反応を見つける。
 そして、臨海副都心で謎の生物が現れて、取材に来ていた石野を襲い、あわやというところで辰巳が現れ、火炎放射器で生物を倒す。
 そこに豊後水道の原発にゴジラが現れ、自衛隊は高島政宏らが操縦するスーパーX3を出撃させ、ゴジラを凍らせて海底に沈める。
 孤島にいたリトルはウランの影響で急速に一人前のゴジラに成長してジュニアと呼ばれるようになり、御前崎に現れて生まれ故郷のベーリング海へ向っていた。
 新都心の怪物は、芹沢博士がが東京湾の海底で使ったオキシジェン・デストロイヤの影響で変異したことがわかり、巨大化してデストロイヤとなる。
 林は、ゴジラのメルトダウンを食い止めるために、ジュニアを東京に向わせデストロイアと戦わせてゴジラを東京におびき出し、デストロイアにゴジラを倒させることを進言する。
赤い波止場 監督: 1947 日(東宝)、白黒 1:1.33 2004/10/21(日) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2004/11/22
ストーリー 感想
 犯罪に手を染めながら尻尾を出さずに警察からマークされている石原裕次郎が、東京から神戸港の組に帰ってきたとき、組員が事故に見せかけて男を殺したところだった。
 彼は女に迫られても相手にしないのだが、車に惹かれそうになった男の子を助けてし知り合いになり、彼の母で先日殺された男の妹で、東京の女子大生だったのが兄の死で帰ってきて兄の港の飲食店で働くようになった北原三枝と親しくなる。
 2人で話し合ううちに、北原は彼女の兄は殺されたと裕次郎が口を滑らせたことを気にし出し、刑事の大坂志郎には別の世界の男だとクギを刺される。
 2人が祭りからの帰り道で裕次郎が襲われ、彼は銃で反撃して犯人は逃げ去り、北原はプロの腕前で手当てをする。
 翌日、北原は裕次郎に惚れている中原早苗から、兄が薬の運び屋だったったことをバラされる。
 裕次郎が北原とドライブに行くと、裕次郎を狙った殺し屋の土方弘の車が後を付けているのを裕次郎の弟分の岡田真澄が見て、裕次郎のために1人で殺し屋を倒そうとする。
 尾行に気づいた裕次郎は、彼と相対してその場はそのまま別れ、祭りの夜に土方と対決した岡田は彼に殺されてしまう。
 大坂から岡田の死を知った裕次郎は、土方を探し出して彼を倒し、裕次郎の東京の兄貴分の二谷英明が密かに神戸に来て土方とつながっているらしいことを大坂から聞いた。
 裕次郎は、二谷がいたナイトクラブに現れ殺しが失敗したことを見せつけ、そのクラブに勤める中原を自分のホテルに連れ出し、後をつけて現れた裕次郎に、親分が老い先短いので、跡目争いの邪魔になる裕次郎を殺そうとしたことを告げ、もみ合ううちに裕次郎は二谷を殺し、その現場に現れた大坂は彼を逮捕するが、中原が二谷の銃で脅して逃げる。
 警察が流した「北原重体」の偽新聞記事を目にした裕次郎は、二谷と通じていた組の親分たちを殺してから、香港行きの船には乗らず、薄々罠と感じながら、彼女のいる病院に行き、姿を窓の外から北原と息子の姿を見て、黙って立ち去り大坂に捕まるのだった…。
四つの恋の物語
(第一話「初恋」36分、
(1)監督:豊田四郎、脚本:黒澤明、出演:池部良、久我美子、志村喬、杉村春子 1947 日(東宝)、白黒 1:1.33 2004/10/31(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/11/22
ストーリー 感想
第一話「初恋」
 高校生の正雄(池部良)が家に帰ると、家にはオルゴールの音が響いていて、見知らぬ女学生の由紀子(久我美子)がいた。
 正雄の両親(志村喬、杉村春子)が彼女を預かることになったのであり、そのうち正雄と由紀子は家の中で無邪気にじゃれ合うようになり、正雄に投げ飛ばされた由紀子が、正雄のキスを待つかのように仰向けで気を失った振りをして、正雄が唇に触れて微笑むが、その手が胸に行くと悲鳴を上げて逃げ出す。
 2人の様子をずっと無言で伺っていた母が、2人の写った写真を見つけて2人の仲を非難し、正雄と由紀子は傷つく。
 後日、正雄は由紀子の部屋が空になっているのに気づくが、母が由紀子の父を呼んで彼女を連れて行ってもらったのだった。
 正雄は由紀子が残したオルゴールを聞き、「二人で聞ける日まで預けます」との書置きを読み、干したままの由紀子の下着を眺めるのだった…。
第二話
 美津子(小暮実千代)は、恋人で求職中の有田(沼崎勲)と会って、彼の浮気を許す話をしようとするが、有田に真剣だと言われて別れ話を切り出し、自分にも決まった人がいると言う。
漫☆画太郎SHOW ババアゾーン(他) 監督:山口雄大 2004 日、カラー 1:1.85 2004/11/15(日) VHS(WOWOW) 感覚系 ★☆ 2004/11/22
ストーリー 感想
<ババアゾーン>
 エロ本買蔵(15歳、矢部太郎)は、初めてエロ本を買おうとして失敗し、通りすがりに出会ったババア(根岸季衣)から度胸のつく薬をもらって飲み、夜に全裸で本屋のシャッターを叩き続け、通報で駆けつけた警官(松浦太志)に撃ち殺される。
<たのしい遠足>
 遠足のバスが崖から森の中に落ち、先生(増本庄一郎)と生徒(15歳、村上知子、大島美幸、黒沢宗子)と学級委員(前田貴寛)の5人だけが生き残って、森からの脱出を図る。
 罠に掛かったりして次々と脱落していく中、1人残った村上がおじいさん(なべおさみ)の住む家に着くことが出来、嫌いな給食のおかずの野菜汁を勧められ、仲間のためにそれを飲み干す。
 すると、事故を含めたすべては彼女の食べ残しを治すための皆が仕組んだ芝居だったことが明かされた。
<ババアゾーン2>
 レンタルビデオの店員(前田貴寛)の勧めるままにシリーズもののエロビデオ全29巻を借りてしまった津田寛治は、通りすがりに出会ったババアから性欲が無くなる薬をもらって飲み、女にもてるためのオシャレしをやめて全裸になり、通報で駆けつけた警官(松浦太志)に撃ち殺される。
<ハデー・ヘンドリックス物語>
 ロックボーカリストのハデー・ヘンドリックス(温水洋一)は、ライブハウスで歌うと我を忘れてギターで客を殴り殺して大ウケだが、メンバーにギターを壊すと赤字になることをとがめられ、おとなしい曲調に変えたら客の不評を買って店からクビにされる。
 解決策として、ギター店に忍び込んで盗もうとしたら、店主にみつかって警官に包囲され、万策尽きて警官隊を前に始めた演奏がテレビ中継されて、ハデヘンは警官隊長(ピエール瀧)を殴り殺してテレビの前の人々を熱狂させるが、例の警官(松浦太志)に撃ち殺されてしまう。
<3年B組珍八先生>
 3年B組の教室で生徒たち(近藤公園、猫ひろし、他)がエロ本を読んでいると、珍八先生(遠藤憲一)が現れ没収し、職員室で先生たち(増本庄一郎、他)と読む。
 漫☆画太郎原作のオムニバス。
 基本的な感想は下の『地獄甲子園』のものと同じです。
地獄甲子園外伝 ラーメンバカ一代 監督:山口雄大 2003 日、カラー 1:1.85 2004/11/15(日) VHS(WOWOW) 感覚系 ★☆ 2004/11/22
ストーリー 感想
 太平洋戦争で不時着した島で生き続けていた老婆は死の床に伏せていて、もう1人の生存者の孫の男の子に、死ぬ前に爺さんと食べたラーメンを食べたいと言い、孫は新宿に来てラーメン屋で修行し、20年後やっと店長に認められるが、老婆は既に死んでいた。  漫☆画太郎原作の8分の短編で、 基本的な感想は下の『地獄甲子園』のものと同じです。
地獄甲子園 監督:山口雄大 2003 日、カラー 1:1.85 2004/11/15(日) VHS(WOWOW) 感覚系 ★☆ 2004/11/22
ストーリー 感想
 甲子園出場を目指していた星道高校の校長(永田耕一)、地区予選の1回戦の相手が、試合中に相手選手を殺すことで知られる外道高校だと知って、出場辞退まで考えるが、そこに転校生の野球十兵衛(坂口拓)が現れ、番町(小西博之)を野球喧嘩で倒し、校長は彼を外道高校に対戦させるチームのメンバーに加えようとする。
 十兵衛はかつては野球少年で、あまりの剛速球のために球を受ける相手がいなくなり、父の蛭子能収が受けてやったときに、坂口の投げた球で父を殺してしまって以来野球をやめていたが、メガネ(伊藤淳史)の説得で自分から逃げるのをやめて加わることにする。
 メガネは、彼の兄が投げた球で夫が死んでしまって兄が行方不明になったことから野球嫌いになった母親に隠れて野球をしていたが、十兵衛がその兄とわかって再会を喜び、メガネも野球を許される。
 かくして、星道高校と外道高校の試合で、乱闘の末に観客を含めて大半が死んでしまうが、十兵衛の悲しみの涙で軌跡が起こってみんなが生き返り、外道高校の部員たちも改心してみんなで喜びに浸るのだった…。
 原作の漫☆(F)画太郎の漫画は見たことはないのだが、その漫画のノリを再現したようなコミカルな演出で作られたと思われる。
 それは一見まっとうな方針に思えるが、結果としては面白くないのは、単なる「実写動画化」であって、決して「映画化」ではないということなのではないだろうか?
 こう書くと「これは映画ではない」などと大仰なことを言っているように読め、それは本意ではないのだが、この映画に限らず「漫画の実写化は面白くない」とよく言われるのは、漫画では記号的な表現で十分と思う人でも、映画では表現にもっと肉付けされた深みのあるものを無意識に期待しているということなのではないのだろうか?
 例えて言えば、家では食べ物がマヨネーズ味であれば満足なマヨラーも、外食ではもっと複雑な味付けの「料理」というものを期待するということである。
 要するに、「観る者の感情を盛り上げてワクワクさせる」という映画の最終的な目的を目指すところから「映画」を作って、それが成し遂げられた完成品になってこそ映画化といえるのであって、それとは逆方向の、紙の上の静止画である漫画を映画という動画メディアに置き換えようとするアプローチでは、よほど作り手がかなりの腕前を持ってしなければ「実写動画化」止まりで「映画化」の域まで達しないのではないか?という思いに観終わって駆られた。
新選組 監督:沢島忠 1969 日(東宝)、カラー 1:2.35 2004/10/07(木) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/11/16
ストーリー 感想
 開国した幕府が朝廷と手を結ぼうとするのに反対する討幕派が、京都で幕府や公家の要人を「天誅」と称して暗殺しているのに対抗するため、浪士隊が結成され京都に向うことになり、その中に多摩の農民上がりの近藤勇(三船敏郎)、芹沢鴨(三國連太郎)、土方歳三(小林桂樹)、沖田総司(北大路欣也)もいた。
 浪士隊が京都に着くと、隊の黒幕の清河八郎は攘夷のために江戸に向うと言い出し、方向転換に納得しない近藤や芹沢ら13人は脱退して京都に残り、当初の目的を果たすために会津藩の松平肥後守御に直訴し、新選組を結成して隊員を集める。
 新選組は討幕派たちを斬る一方、局長の芹沢は酒と女に溺れていて、近藤は彼をたしなめたがますます荒れ果て、ついに近藤と土方と沖田は女と一緒の芹沢の寝込みを襲って殺し、近藤が局長になる。
 長州の志士が京都で反乱を起こす動きを察知した新選組は、手分けして封じようとし、近藤らは池田屋に斬り込む。しかし、その時沖田は喀血し、医者から2年の命を宣告される。
 その後、長州は京に攻め込んで、新選組は街に火を放って逃走し、孤軍奮闘の新選組からは脱走者も出た。
 近藤は江戸城に行って、将軍自ら軍を率いて長州と戦って後に続く藩が出ることに望みをかけなければ薩摩も討幕に加わってしまうと主張するが幕府は動かなかった。
 江戸で近藤と会った伊東甲子太郎(田村高廣)が新選組の参謀として近藤と京都に来る。
 組のお金が50両無くなったことの責任を、町人上がりで勘定方の河合喜三郎(中村賀津雄)に取らせ、実家が穴埋めする期限として近藤が決めた10日が過ぎたので、近藤の留守中に土方は決まり通り彼を斬るが、近藤は締め付けがきつ過ぎることに疑問を感じ始めた。
 そして、山南敬助(中村梅之助)も脱走して捕まって切腹し、薩摩の間者だった伊東は数人を引き連れて分派するも近藤たちは彼らを斬る。
 近藤は狙撃されて大阪で療養中、大政奉還、鳥羽伏見の戦い、将軍慶喜が京都から江戸に退却して江戸城明け渡しと続いて、新選組は江戸に帰って、近藤は賊軍ではないことを示すために甲陽鎮撫隊を率いて官軍と戦い、下総流山で立てこもる隊を救う囮になるために一人で投降し、慶応4年4月25日に板橋で打ち首にされた。
 『赤毛』と共に1969年製作の三船プロ製作の時代劇超大作で、セットも大掛かりだしエキストラも多いが、結局それらを生かしきれず、かつて見た作品では豪快なカメラワークを見せていた沢島監督にしては、ここではそんなエモーショナルな映像のシーンは少なく、結果的にストーリーをなぞるだけのタイプの映画になってしまった。
 こういう歴史モノで、エピソードの量が多いとそうなりがちだけど、やっぱり本当に大切なのは人物のキャラが魅力的か?ということで、その点では三船敏郎も『赤毛』より見劣りする。
暗殺 監督:篠田正浩 1964 日(松竹)、白黒 1:2.35 2004/11/08(月) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/11/11
ストーリー 感想
 幕末、尊皇攘夷派が天誅と称して開国派を暗殺し続けている京都を鎮めるための浪士組の結成を目指す松平主税介(岡田英次)と老中板倉周防守(小沢栄太郎)は、それを出来るのが元々尊皇攘夷派で信用の置けない清河八郎(丹波哲朗)以外にいないと思い、目明し嘉吉を斬った彼の罪を放免する。
 主税介は八郎が邪魔になったときのために、風心流の佐々木唯三郎(木村功)にいつでも八郎を斬る用意をしておけと命じるが、彼の道場に八郎が現れ、門弟たちの見守る中北辰一刀流で唯三郎をあっさり倒してしまう。
 一方、裏切られた尊皇攘夷派も八郎を斬ることを画策していたが、だけは八郎が裏切るはずはないと反発した。
 唯三郎は八郎を斬るために彼のことを調べ始め、八郎が嘉吉の首を一瞬で切り落としたことで町方が彼のねぐらに踏み込んで、そこに一人でいた妾のお蓮(岩下志麻)を拷問して行方を聞き出そうとするも彼女は命を捨てて黙秘を通した。
 押収したお蓮の日誌には、初めて人を斬ったのが嘉吉で、家に逃げ帰るなりうろたえていたと書かれていた。
 八郎の一番の門下石坂周造(早川保)は坂本竜馬(佐田啓二)に八郎の本心は何かを聞こうとすると、約1年前に八郎が嘉吉を斬ったあと京都にいたところ竜馬が偶然会い、京で急増する勤皇の志士は、彼らに反乱を起こさせ大阪にいる薩摩藩の島津久光(武智鉄二)に兵を挙げさせ討幕目指すために集めたのだと八郎が言ったことを話した。
 しかし、島津は京都の寺田屋にいた討幕派の薩摩の脱藩浪士たちを襲わせ、八郎の策は失敗に終わったのだった。
 その後八郎は江戸に戻ってきて、お蓮が八郎が江戸を離れた直後に死んだことを知りショックを受ける。
 八郎が総帥となった浪士組が江戸を出発するのを翌日に控えて、彼が裏切って浪士組を率いて暴徒と化すのを恐れた周防守は、八郎を斬る用意をし、攘夷派も八郎を襲うが、中で唯一命の恩人である八郎を信じて近づいた宮川慎吾(竹脇無我)はじめ、八郎は全員を斬り殺し、唯三郎はその様子を物陰からうかがっていた。
 浪士組を率いて京都に着いた八郎は、勤皇派のところに行き、勅諚を手に入れれは誰も手出しは出来ないというが、浪士たちは何をするかわからず面白くなってきたと言って笑い出す。
 翌日、八郎は浪士組の浪士たちに、組の目的は朝廷側につくことだと言い出し、ついに勅状が手に入るが、浪士組に潜入した唯三郎は、人が変わったように「攘夷」を口にして八郎を斬る機会を狙い、酒に酔った帰り道に話しかけ、笠の紐に手をかけた瞬間に斬り殺すのだった。
 清河八郎の本心を知ろうとする複数の人たちが、同時並列的に彼の過去を回想するという、時間的に前後する複雑な映画で、さらにコントラストの強い照明や非対称な構図などの凝った映像に、武満徹のおどろおどろしい音楽と、緊張感の高い映画になっているが、観終わっての印象は、なんか何も残らない映画になってしまっている。
 結局、清河八郎という人は、何かを成し遂げようという目的に向って行動しているのではなく、策を仕掛けて人々を思うままに動かすという、策に溺れた人ということを描いているのだろうが、策自体の面白さや清河という人物の面白さのどちらも感じられなかったということなのだろう。
エノケンの法界坊 監督:齋藤寅次郎 1938 日(東宝)、白黒 1:1.33 2004/11/02(火) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2004/11/11
ストーリー 感想
 法界坊(榎本健一)は江戸の町をうろついて釣鐘建立の寄付と称して金をねだっては、町人たちに嫌われて川に放り込まれたりもした。
 一方、永楽屋には家宝の掛軸を探して武家を再興するために使用人になった要助(小笠原章二郎)がいたが、その掛軸を持ってきた源右衛門(中村是好)が、交換条件に一人娘おくみ(宏川光子)を嫁にしたいと言い、おくみは要助を連れて逃げるようにお参りに行く。
 その頃、町方に追われているスリのすった財布を預けられた法界坊は、後で取り返しに来たスリたちから逃げるが、捕まって釜揚げにされるも、釜の底から地中を通って脱出。
 逃げる途中、恋仲になったおくみと要助が人殺しの現場に居合わせて、おくみは要助の手を取って逃げたつもりが、相手が法界坊だったのでビックリして気絶し、法界坊は彼女を自分の長屋に連れて行って、彼女に恋心を抱いた。
 翌朝、目を覚ましたおくみは、生臭坊主だと思っていた法界坊が一睡もせずに見守っていたので彼を見直し、彼に恋の悩みを打ち明ける。
 おくみを迎えに来た番頭の長九郎(如月寛多)の謝礼もその時は断って送り出すが、おくみが帰ると源右衛門は要助が探している掛軸と交換におくみとの縁談を決めようとしていて、永楽屋で長九郎からもてなしを受けた法界坊はそのことを知る。
 結納の日、法界坊は貸衣裳屋から借りた立派な僧の扮装で料亭に潜入しておくみに恋文を渡すが、おくみはそれを読まずに投げ捨てる。
 法界坊は源右衛門に、おくまには要助という別に好きな人がいると言って、その証拠に要助からの恋文を読ませるが、長九郎が法界坊からの恋文とすり替え、正体もばれてしまった法界坊は、掛軸を盗み出して逃げる。
 法界坊は掛軸と引き換えにおくみを要求するが、取引場所で偽物の掛軸を長九郎に渡しておくみをものにするも逃げられててしまい、翌日再度取引に来た長九郎と要助に掛軸も取られてしまう。
 そしてその後、長九郎は要助や源右衛門や法界坊も殺して、要助が死んだと聞いたおくみは長九郎と祝言を永楽屋で挙げる。
 そこに殺された法界坊が化けて出て長九郎は悪事を白状し、おくみは帰ってきた要助とそのまま祝言を挙げ、法界坊の言い残した希望に従い、浅草の寺には鐘楼が寄贈されるのだった…。
 元々東宝作品なのだが、放映されたものにはマツダ映画社のロゴが映されたので、ということは16ミリのプリントで、35ミリプリントは東宝にも無いということか?
 そのせいかプリントの状態は著しく悪く、台詞をほとんど聞き取れないシーンがかなりあって、ストーリーを理解するだけでも大変だった。(したつもりだけで、本当は間違っているかも。)
 映画の形式はミュージカル、というよりレビューの映画版なのだろうが、この映画のエノケンも、残念ながら動きや表情の見せ場は少なかった。 
エノケンの孫悟空
(『孫悟空 前篇』、『孫悟空 后篇』)
監督・脚本:山本嘉次郎 1940 日(東宝)、白黒 1:1.33 2004/11/01(月) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★★☆ 2004/11/03
ストーリー 感想
<前篇>
 天竺にお経を取りに向かう三蔵法師(柳田貞一(エノケン一座))に、お供を付けさせるとの観世音菩薩(花井蘭子)のお告げがあり、まず岩に閉じ込められた孫悟空(榎本健一)を助け、娘をかどわかそうとした猪八戒(岸井明)を懲らしめて仲間にし、船に乗っているときに沙悟浄(金井俊夫(エノケン一座))が現れて、3人はお供になる。
 モンゴルらしいところき来て、「この饅頭食えるか?」の問いかけに八戒が乗って食べているうちに囚われの身となり、三蔵所有のテレビジョンでこのことを知った悟空が、如意棒を飛行機に変えて悟浄と共に奇怪国の珍妙大王(高勢実乗)の洞窟に助けに行く。
 如意棒を機関銃に変えて大王の手下たちを皆殺しにし、大王との変身合戦で悟空の嫌いな蟹に化けた大王を、悟浄が叩きつけて勝利を収めるが、乱暴な孫悟空の頭には悪さをすると痛みを与える冠が付けられる。
 次にたどり着いた女たちがいるオアシスで歓待され悟空たちが踊っているうちに、悟空を除いた全員がいなくなってしまう。
 女たちが仕える煩悩国妖々女王(三益愛子)は、三蔵が立派なので彼の后になるために誘拐したのだが、三蔵に断られたので、食べてしまって三千年の命を得ようとする。
 捕らえられていた八戒は煩悩国の女(李香蘭)の歌う姿のとりこになっていたが、虫に化けた悟空が飛んで来て目を覚まさせ、悟浄も含めた3人で三蔵を助けようとするが2人は失敗し、残された悟空が困って観音様に祈ると、悟空と三蔵は観音の元に逃れ、女王の正体の金魚の姿も暴かれ、4人は旅を続ける。
<后篇>
 一行が森の中で寝ているところに、キノコの娘たちが歌う「星に願いを」で目を覚ますと、「あなた」という名の老婆に続いて、百科辞典の精、袖珍(中村メイコ)が現れ、彼女の案内で「ハイホー」を歌う小人の靴屋たちや、ナイチンゲールの精、金鈴(渡邊はま子)などの森の住人、そしてお伽の国の姫(高峰秀子)の城に連れられる。
 金角大王(中村是好(エノケン一座))と銀角大王(如月寛多)によって犬の姿にさせられた姫の呪いを解くことを三蔵は引き受け、そのお礼に支那人形(汪洋)が歌を歌って聞かせた。
 3人は飛行機で金角銀角科学研究所がある山に向ったが、八戒と悟浄が捕まってしまい、助けに行った悟空共々オペラガズを吸わされ、3人は研究所の中の舞台でオペラを演じる。
 さらに、ロボットたちに捕まって頭脳改造機に入れられ、目的を忘れさせられて釈放される。
 そこに袖珍が現れ、持って来たホウレンソウの缶詰を食べた3人は元気を取り戻し、鷹の羽根ももらってそれを金角銀角に見せると、正体が雀の彼らは羽根を怖がって戦闘機で逃げ出す。
 悟空は研究所の機械を滅茶苦茶にいじって研究所を破壊し、飛行機で追いかけ空中戦の末金角銀角の戦闘機を撃ち落とし、姫の呪いを解くことに成功する。
 しかし、この暴れっぷりが三蔵の耳に入り、帰ってきた悟空は破門されて、猿の国に帰った悟空は、猿たちを率いて宇宙の支配に向けて決起しようとしたその時、悟浄が来て三蔵と八戒が捕らえられたことと、悟空は怖がっているのだろうと敵が言ったことを伝えると、孫悟空は2人が囚われた大谷石採掘場に行き、囮になって敵を引き付けて殺さずに三蔵たちを助けることが出来、そのため悟空の冠は消え失せた。
 そこに袖珍が現れ、姫の呪いは解け山を1つ越えれば天竺だと告げ、お経を手に入れた帰りに彼女の招待で姫の城を訪れ、姫と配下の者たちの歌う「ハイホー」でもてなされるのだった…。
 前篇(73分)と后篇(67分)から成る、135分(計算が合わないのは、后篇のタイトル部分がカットされたせいか?本編部分がカットされたのか?理由は不明。確かにカットされたようにも思える部分がある。)の超大作で、出演者ももの凄く豪華。
 基本的にはミュージカルで、踊り手も多数出演して、まさにゴージャスな作りの娯楽大作といった感じで、まるでインド映画みたい。
 セットも大掛かりで、ロケも大谷石や、あと紫禁城らしく見える場所も一瞬映る。
 スタジオ以外のかなりのロケ地は中国かもしれない。
 ついでに、円谷英二が特撮を担当している。
 それでも、ストーリーや映像的には、今観るとさすがにしょぼかったり、盛り上がるべきシーンが唐突に終わったりと、不備に感じるところもあるのだが、それとは逆に、ストーリーは時代考証を積極的に無視することで、信じられないくらい自由奔放なものになっていて、これは公開当時よりむしろ今の方が面白く感じるかもしれない。
太陽の季節 監督&脚本:古川卓巳、製作:水の江滝子、原作:石原慎太郎、出演:長門裕之、南田洋子 1956 日(日活)、白黒 1:1.33 2004/10/30(土) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2004/11/01
ストーリー 感想
 高校生の長門裕之は、遊び仲間のボクシング部の男たちと、南田洋子たち年上の女3人を路上でナンパして夜遊びをするする。
 やがて彼も部員になって大会に出場し、応援に来ていた南田たちの前でTKOで逆転勝ちを収める。
 その夜、長門と南田はデートをして、2人とも愛に真剣になれないことなどを話し合い、南田が葉山でのヨット遊びからの帰りに逗子の長門の家に行くことを約束する。
 南田は葉山の別荘に帰るつもりで家に来たが、結局長門の家でベッドを共にする。
 しかし、南田は長門に愛を感じられないと言った。
 ボクシング部の連中たちとナイトクラブで飲んだくれていたときに、バンドマスターの岡田真澄が南田にアプローチしていたのを見た長門は彼を殴り倒し、乱闘になったフロアを、長門と南田はその滑稽さに笑いながらその場を立ち去る。
 後日、2人でヨットに乗ったとき、南田は長門に愛を感じることが出来たと言ったが、その後長門は次第に南田と会わなくなる。
 南田は長門の兄の三島耕とも付き合うが、長門が兄とどちらの元に南田が来るかで賭けて長門が勝つ。
 南田は長門の子供を身ごもったことを告げるが、長門の態度の冷たさにおろすことを決意する。
 南田は長門の気を引こうと、お金を送りつけて心を買おうとする。
 やがて、南田が急に入院して死んだという知らせが長門の元に入り、葬式に参列した長門は動揺して遺影を壊して立ち去るのだった…。
 石原慎太郎の原作小説の初映画化作品で、いわるゆ「太陽族」の元になった映画で、原作者本人もチョイ役で出演し、その弟の石原裕次郎もボクシング部の部員として、台詞もある脇役で映画初出演。(ただし、このあたりは詳しくなく、根拠無しに言っているので、「初…」というのは間違いかもしれません。悪しからず。)
 どうしても同じ年に作られた『狂った果実』と比べてしまうと、映画の持つ雰囲気の面で分が悪いが、男と女がすんなりと異性を愛せないとか、あっという間に愛が冷めてしまうといった、恋愛の描き方がストレートではないストーリー的なことが、公開当時には衝撃的だったのかなぁ?
 そして、それこそがこの映画の意義なのかも。
 高校のボクシング部のメンバーは、最初見たときには長門裕之は大学生で他はプロボクサー、佐野浅夫はトレーナーのおやっさんかと思った。
エノケンのちゃっきり金太 監督・原作・脚本:山本嘉次郎 1937 日(東宝)、白黒 1:1.33 2004/10/25(月) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★☆ 2004/10/29
ストーリー 感想
 1868年、官軍がやって来ようとしている江戸で、スリの金太(榎本健一)は、薩摩の侍から密書の入った財布をすってしまって追われる身となり、上州屋の娘の助けで江戸を出て大井川の手前の宿場で雨のために足止め。
 証拠がないために捕まえることが出来ず、金太に付きまとい続ける岡っ引も後を追ってやって来る。
 金太はニセ近藤勇に絡まれている女を助ける。
 金太は、追っ手が宿にいるのを知って江戸に戻る。
 途中の宿でお金を盗まれてしまい、岡っ引と一緒に逃げるように江戸へ向う。
 その頃、江戸の人々は上野の戦いを避けるために家から逃げようとしていたが、上州屋の娘は金太を迎えるために残ろうとしていた。
 そこに、官軍の兵士になりすました金太と岡っ引が江戸に入るが、娘は金太の追っ手に捕まり、金太たちが助け出す。
 時は過ぎて明治20年、金太は相変わらずスリをしていたのだった…。
 日本映画データベースによると、この映画は
 「エノケンのちゃっきり金太 前編 第一話 まゝよ三度笠の巻 第二話 行きはよいよいの巻」(63分、1937/07/11公開)
 「エノケンのちゃっきり金太 後篇 第三話 帰りは怖いの巻 第四話 まてば日和の巻」(61分、1937/08/01公開)
の前後編を1つにまとめた72分の総集編で、現存するのはこのヴァージョンだけのようだ。
 そのせいか、ストーリーがかなり飛び飛びで解り難く、エノケンの見せ場も少ない。
故郷 監督:山田洋次 1972 日(松竹)、カラー 1:2.35(1:1.85で放映) 2004/09/20(月・祝) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2004/10/28
ストーリー 感想
 精一(井川比佐志)と民子(倍賞千恵子)の夫婦は、幼い子供2人と元船乗りの父(笠智衆)と共に瀬戸内海の島に暮していて、夫が船長で妻が操舵する、石船と呼ばれる小船で石くずを埋立地まで運んでいた。
 危険な仕事のうえに、最近は大型の船に仕事を取られて運送料も削られ、そのためかつて船に乗っていた弟の健次(前田吟)は、広島に出て工場勤めをするようになり、精一はそんな彼を軽蔑していた。
 しかし、長年使っていた船が壊れてしまい、修理費もかさむので修理もできず、船長としての誇りより家族の生活を選び、かねてから勧められていた尾道の造船所の職に就くことにする。
 夫婦と子供2人は、父を島に残して船で島を後にするのだった…。
 島に魚を売りに来る渥美清の、「こんなに素敵な故郷を、何故みんな捨てて出て行くのか?」という台詞がテーマを表している映画。
 経済的効率の面で大企業に有利で、個人の事業が圧迫されて自由がきかなくなるという世の中の流れは、今でも変わらないどころか、国際間の競争が加わった今の方が、製作当時の約30年前よりもさらに厳しいかもしれないぐらいであろう。
 いかにも山田洋次らしい、社会的弱者に肩入れした内容の映画だが、船を90度近くまで横倒しして、船のデッキに山積みされた石を埋立地の海底に沈めるのが、迫力あるクライマックスになっている。
危険な関係 監督:ロジェ・ヴァディム 1959 仏、白黒 1:1.33 2004/09/14(火) NHK-BS2 ドラマ系 ★★ 2004/09/21
ストーリー 感想
 外交官のバルモン(ジェラール・フィリップ)とジュリエット(ジャンヌ・モロー)の夫婦は、お互いに相手の恋愛行動に寛容だった。
 ジュリエットは、自分のかつての恋人コート(ニコラス・ヴォーゲル)が17歳の清純なセシル(ジャンヌ・ヴァレリー)と婚約したことが面白くなく、バルモンにセシルを誘惑させた。
 スキー場でセシルに接近したバルモンは、若いダンスニ(ジャン=ルイ・トランティニャン)が本命のフィアンセだと彼女から聞く。
 バルモンはセシルがダンスニからのテープを聞くためのレコーダーを夜の彼女の寝室に持って行き、寝室に入れたことをバラすと脅して彼女をものにする。
 バルモンとの関係を嫌がるセシルに、ジュリエットは心ではダンスニ体はバルモンと、愛を使い分ければいいと教える。
 しかし、その後バルモンはマリアンヌ夫人(アネット・ヴァディム)に心ならずも夢中になり、ジュリエットも彼の浮気に嫉妬するようになり、二人の関係を引き裂こうとした。
 ダンスニがバルモンとセシルの関係を知ってバルモンを殺し、マリアンヌは手紙を燃やそうとして火だるまになり、顔にやけどを負ってしまったのだった。
 元々フランス貴族の話であるピエル・コルデロス・ド・ラクロの原作を、何度も映画化されたものの1つ。
 ちなみに、それらはわかっているものだけでも、
 『危険な関係』(1959 仏):現代のフランスが舞台。
 『危険な関係』(1978 日):現代の日本が舞台。
 『恋の掟』(1989 仏=英):フランス貴族社会が舞台。
 『危険な関係』(1988 米):フランス貴族社会が舞台。
 『クルーエル・インテンションズ』(1999 米):現代アメリカの高校生の話
 『スキャンダル』(2003 韓国):韓国貴族社会が舞台。
 最近、純愛とは名ばかりの薄っぺらいだけの恋愛モノにうんざりしているので、含みのある会話が出てくるこんな映画を観ると余計にうれしい。
黒の盗賊 監督:井上梅次 1964 日(東映)、白黒 1:2.35 2004/09/09(木) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/09/13
ストーリー 感想
 関が原の戦いの後の江戸城の一番工事が終わり、工事を請け負った5人の棟梁が、城の秘密を守るために殺されようとしていたところ、徳川に逆らって江戸を荒らしていた「黒の盗賊」たちが江戸城に攻め入り、一方、天海僧正(千秋実)らが進める大衆に厳しい政治に反対する旗本の立花次郎(大川橋蔵)が別に黒の盗賊になりすまして工事人たちを逃がし、彼らはそのまま黒の盗賊の隠れ家に逃げることになる。
 盗賊たちは服部半蔵(藤山寛美)が警備に着いた天海僧正の籠を襲って誘拐し、隠れ家で僧正が見た黒の盗賊の覆面の下の小太郎(大川橋蔵、二役)の顔は次郎にそっくりだった。
 武蔵一族の追放の免除を条件に僧正の引き取りの役目に次郎が任命され、小太郎と対峙して徳川は武蔵一族の身を保証すると約束して僧正を引き取るが、まもなく徳川勢が武蔵一族を捕らえようとするのを知って次郎は止めに入ったため、小太郎からは裏切り者と思われ、徳川側からも黒の盗賊の正体と思われて捕らえられる。
 小太郎は、実は次郎の兄で武蔵一族にもらわれたことを知り、次郎に成りすまして将軍秀忠の前に現れ次郎の無実を証明し、同時に武蔵一族が牢屋から次郎を救出する。
 2人は会ってお互い入れ替わって元に戻るが、小太郎はもう1度次郎になりすまして江戸城へ行き、大御所家康を誘拐しようとする。
 しかし、家康は徳川の支配の安泰を狙って、諸大名や庶民を甘やかさない方策を「徳川万世の訓」にしたため、秀忠に庶民に手厚い政策を吹き込んだ者として次郎になりすました小太郎を捕らえる。
 江戸城に忍び込んでいて武蔵一族は徳川万世の訓を盗み出して持ち帰り、それを読んだ次郎は徳川を見限り、自分が黒の盗賊になりすまして江戸城に忍び込んで小太郎を救出し、徳川万世の訓を公表しない代わりに、武蔵一族の追放を免除し、江戸城の増築をやめて江戸の街づくりに力を入れることを勝ち取った。
 次郎は武蔵一族の新たな当主になり、小太郎たちは新たな土地を求めて旅に出るのだった…。
 脇役にドジな半蔵役の藤山寛美をはじめ、千秋実や多々良純を配して、コメディリリーフとして使っているのと、盗賊たちがターザンのように縄にぶら下がっての大掛かりなアクションが楽しさを増しているところがポイント。
怪人二十面相 第一部 人か魔か?
怪人二十面相 第二部 巨人対怪人
怪人二十面相 第三部 怪盗爆砕
監督:弓削進 1954 日(松竹)、白黒 1:1.33 2004/09/09(木) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2004/09/10
ストーリー 感想
<第一部 人か魔か?>
 怪人二十面相による盗難事件を解決するため、外国に行っている明智小五郎に代わって少年探偵団が捜査に乗り出す。
 二十面相は羽柴博士の超原子炉の設計図を狙い、復員してきた彼の息子に成りすまして盗み出すが、探偵団が庭に仕掛けたとらばさみに掛かって傷つき、運転手に変装して探偵団に所属する博士の息子の荘二を乗せた車を運転して屋敷を抜け出す。
 次に、荘二と引き換えに屋敷にあるミイラの像を盗み出すが、アジトに持ってきた像の中から明智小五郎が現れ、設計図を取り戻す。
 しかし、アジトの床が割れる仕掛けにはまった明智は、水攻めに合う。
<第二部 巨人対怪人>
 明智からの無線を傍小林少年が傍受し、警官隊がアジトに踏み込んで一味との銃撃戦の末に明智を救出するが、二十面相はたちは逃げた。
 後日、二十面相が明智の前に現れて、山奥におびき出して明智を滝から突き落とす。
 そして明智になりすまして、山中の研究室の保管庫から書類を盗み出す。
 明智は実は二十面相にやられた振りをしていて、事務所に帰って来て、手下の男に二十面相のアジトを突き止めさせる。
 その頃、二十面相は明智の秘書の玲子を誘拐し、さらに博士の娘で探偵団員の早苗もお菓子をえさに誘拐するが、玲子は隠し持っていた伝書鳩を放って助けを求めた。
<第三部 怪盗爆砕>
 二十面相は人質と引き換えに設計図を手に入れようと、無線で明智に港での取引を持ちかけるが、小林少年たちは2人を救出、二十面相は気球に乗って警官隊が包囲するアジトから逃げ出す。
 二十面相は、設計図が銀座の美術商の店に展示されている黄金の塔に隠されていることを超人的能力でかぎつけ、塔もろとも盗み出すことを予告する。
 美術商は塔を自宅に持ち返り、さらに偽者を作って本物を床下に隠したが、二十面相の一味はトンネルを掘って床下の塔を盗んだ。
 しかし、明智はひそかに2つを入れ替えていて、現場にいた二十面相の正体を見破り、二十面相は床下の穴から逃げるが、待ち伏せていた少年探偵団に捕まるのだった…。
 第一部(1954/12/08公開、1189m=3901ft.、3901/1.5=2600秒=43分)。
 第二部(1954/12/15公開、1146m=3760ft.、3760/1.5=2507秒=42分)
 第三部(1954/12/22公開、1134m=3720ft.、3720/1.5=2487秒=41分)
の3部作を122分の1本の映画にしたもの。
 二十面相が、原口あきまさと原田泰造をたして眉毛を太く吊り上げた感じで、カリスマ性もなければ、明智小五郎共々華もないのが、観ていてなんとも情けない気分にさせられる。
 (だいたい、あの眉毛じゃあ、変装しても特徴が隠しきれずにバレると思う。)
 でも、基本的には子供向けの映画で、現実の子供が決して手にすることの出来ない無線機を探偵団が駆使していたり、明智が捉えられているアジトに踏み込む警官隊に、小林少年が「先生は不死身だから、(身の安全を気にせずに)踏み込んで下さい。」というところの「不死身」という言葉に、ヒーローは特別で憧れるものだと感じさせる懐かしい響きが新鮮だった。
お染久松 そよ風日傘 監督:沢島忠 1959 日(東映)、カラー 1:2.35(1:1.85放映) 2004/08/08(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/08/09
ストーリー 感想
 油屋の娘お染(美空ひばり)は丁稚の久松(里見浩太郎)に池の岸から舟を引かせて、久松の故郷の野崎参りを妄想していた。
 店に帰ると、来ていたお染に夢中の山家屋(やまがや)の若旦那の清吉(徳大寺伸)をお染は冷たくあしらい、兄の多三郎(田中春男)が遊びの金を山家屋から借りてるだけでは足りずに、お染の着物を盗み出そうとしているところを見つける。
 お染は占い師からロマンスの相手は家の中にいると言われる。
 そこへ、200両持ってこなければ殺されるとの多三郎からの手紙が届けられ、久松とお染を先頭に店のみんなで救出に向かうが、それは狂言だったと判る。
 お染は久松に好きだと打ち明けるが、彼はドギマギしながら「わかってるでしょ!」としか答えない。
 旗本の鈴木弥忠太(原健策)が橋本屋の小糸を身請けする資金として、お染の店の質屋に質入した刀を、やはり小糸に惚れている多三郎が持ち出したのを見つかって、野崎村から来た八百屋の荷車にとっさに隠して、刀は久松の父の久作(新藤英太郎)と、久松の許婚で妹のような仲だったお光(美空ひばり、二役)の元に渡る。
 鈴木が刀を取り返しに来ることになり、店が取り潰しになるのを避けるためにひばりが清吉の嫁になってお金で解決することにするが、そこに久作が刀を持って現れる。
 しかし、久松がお染との仲が噂になっていると知った久作は、久松を連れて帰りお松と祝言を上げさせるが、お染のことが忘れられない久松の気持ちを知ったお松は、かけつけたお染に久松を譲り、村を離れる久松を見て泣き崩れるのだった…。
 映画の冒頭とラストを江戸時代の芝居小屋のシーンで挟むことによって、映画全体が舞台で繰り広げられる芝居だという設定になっているのだが、その意味はなかったような。
 それに、美空ひばりの二役も、あごのホクロの有無しか違わないのに、そっくりだと誰も言わないので、それなら二役の意味がないような。
 沢島監督の演出は、群集シーンに早い動きのカメラワークや、人々の動作を機敏にするだけでなく動きを揃えて、(おまけに「ロマンス」とか「電撃的」とか現代っぽい台詞を使って)軽快さを出してはいるが、この映画ではそうした見どころは少なくて、終盤には湿っぽくなってしまったのは残念。
シクロ 監督:トラン・アン・ユン 1995 仏=香港=ベトナム、カラー 1:1.85(1:1.66放映) 2004/08/03(火) VHS(WOWOW) 感覚系 ★★ 2004/08/04
ストーリー 感想
 ホーチミンでシクロ(輪タク)の運転をしている青年(レ・ヴァン・ロック)の家族は、自転車修理をしている祖父と、露店で料理を作っている姉(トラン・ヌー・イェン・ケー)と、飲食店の隅で靴磨きをしている妹の4人家族だった。
 ある日彼はシクロを盗まれてしまい、貸主の女将からいつも鼻血を流しているヤクザ(トニー・レオン)に身を預けられ、隠れ家に住まわせられて犯罪がらみの数々の仕事をさせられた。
 姉もそのヤクザの下で、体は売らないものの客を相手に変態行為をさせられたが、彼女はヤクザのことが好きになった。
 女将が溺愛していた知能障害のある彼女の息子が、はずみで道路に飛び出して車に惹かれて死んで女将は悲しみ、姉に乱暴した客の男を刺し殺したりしたヤクザも、ヤクザ稼業に疲れて自分の部屋に火をつけて自殺し、青年はヤクザ稼業の深みにはまっていき、薬におぼれるようになって銃で自分のわき腹を撃ってしまう。
 青年は元の生活に戻ることが出来、シクロを手に入れ、家族4人は元のようにすごすのだった…。
 1995年ヴェネチア映画祭金獅子賞だそうな。
 前作『青いパパイヤの香り』で、フランスのスタジオに作られたベトナムのセットで全部の撮影を行なったトラン・アン・ユン監督が今度は一転してベトナムロケを行なった作品なので、ベトナムの底辺の人々の生活感を感じさせる社会的な映画なのか?と思いきやそうではなかった。
 前面に出ているのは、こじつけかもしれないが、主人公が青いペンキを顔に塗りながら死のうとするのが『気狂いピエロ』を思わせたり、トニー・レオンに刺し殺された男が、身悶えながら地面を這い回るのが『灰とダイヤモンド』を思わせたりといった、そんなヨーロッパ映画のフィルムノワールっぽい渋い味わいの雰囲気の中、犯罪社会の深みに落ちていく人々を描いていたことだった。
 前述の地面を這い回る男を見下ろすカメラアングルで長回しで撮ったり、ホーチミンの通りをビルの上から見下ろして撮ったところなど、冴えたショットが所々見られるのは良いのだが、残念なことにそれはあくまで「所々、たまに」で、全編に渡って冴えたショットが見られるわけではないのと、ショット以外のストーリーとかキャラクターとかには、現実感の無さゆえか、全く惹かれるものがないというのが難点だった。
風流深川唄 監督:山村聰、脚本:笠原和夫 1960 日(東映)、カラー 1:2.35(1:1.85放映) 2004/07/31(土) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2004/08/01
ストーリー 感想
 第一次世界大戦の頃の大正時代、料理屋深川亭の娘の美空ひばりと板前の鶴田浩二はお互いに好き合っていて、ひばりの父の石志井寛も2人を結婚させようと思っていたが、鶴田は使用人と奉公人の立場をわきまえて断った。
 かつて店がお金に困っているときに救ってくれた議員の山村聰が、普通選挙の実現を目指して党を離れたのに、父がお金の援助したことが原因で店の家財道具を差し押さえられた。
 親戚たちの手はずで、深川亭を守るために常連客の若旦那にひばりを嫁入りさせて借金を肩代わりしてもらうことにし、それを知った鶴田は深川亭で取り乱して、店を辞めて別の店に移る。
 ひばりは会ってくれない鶴田になんとか会って、彼の気持ちが動かなかったことで嫁入りすることにするが、花嫁行列に鶴田が乱入して人力車を奪って走り去り、婿からもらった金に手をつけていなかった父はそれを返し、後日ひばりたちは深川を離れ、小料理屋を営むのだった…。
 身分の違いが恋愛の障壁になったり、恋愛と老舗ののれんを守ることのどちらを取るかの葛藤があったりの映画。
 そして、その結果主人公2人ともじっとこらえて恋愛から身を引く話なので、公開当時でも一見して古い映画だったと思う。
 それでも、身を引く姿勢に強い覚悟を感じられる描き方なら良かったのだが、それはどちらかと言えば形だけで、反面さんざんこらえていたのが最後の最後にあっさりひっくり返って、めでたしめでたしで終わりなのにはガッカリ。
うたかたの恋 監督:テレンス・ヤング 1968 英=仏、カラー 1:2.35 2004/07/28(水) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2004/07/29
ストーリー 感想
 19世紀末、オーストリアの皇太子ルドルフ(オマー・シャリフ)は、皇帝である父(ジェームズ・メイスン)に逆らって、国内で反乱を起こしている自由主義者や無政府主義者やユダヤ人たちに協力し、妻とは仲が悪く多くの多くの愛人たちがいた。
 彼は市中でマリア(カトリーヌ・ドヌーヴ)を見かけて一目惚れし、彼女を呼び寄せては関係を結び、関係がばれて他の愛人とは違う特別な関係のため皇帝に密かに追い出された彼女を追ってベネチアまで追いかけて行った。
 やがて彼女は身ごもったが、皇帝たち周りの人々はルドルフに彼女とは手を切り、国のために皇族として振舞ってほしいと言う。
 ルドルフはマリアと会う最後のチャンスとして、山の中のマイエルリンクに彼女を迎えた。
やがてハンガリーが民衆による反乱寸前の状態になり、ルドルフは内戦で国が壊れるのを避けるため、自分がハンガリー国王となって治めることを狙って、ハンガリー民衆に決起を呼びかける手紙を使者に預けるが、彼らの行動を探っていた男たちに道中で阻止され、手紙は奪われ反乱は失敗に終わった。
 ルドルフとマリアは、引き裂かれて別々に生きるより、山小屋で死ぬことを選ぶのだった…。
 一般庶民の目から見れは、国のことをすべてうっちゃって恋に走る皇太子なんて全くの無責任に思えるが、そこは皇族は制約の多いがんじがらめの生活をしていて、恋愛も自由にできない立場の人間ならではの悲劇といえる。
 この映画は歴史映画的な面はあくまで時代背景で、本筋はあくまで悲恋ものなのだろうけど、それでもヨーロッパの歴史を知らない者にとっては、ところどころストーリーがわからないところがあった。
 とはいっても、カトリーヌ・ドヌーヴの役がぱっとしなくて、悲恋ものとしてもさっぱり盛り上がらなかった。
カリブ・愛のシンフォニー 監督:鈴木則文 1985 日(東宝)、カラー 1:1.85 2004/07/22(木) テレビ東京 ドラマ系 ★☆ 2004/07/24
ストーリー 感想
 松田聖子は自分のデザインを盗まれて人間不信になって、目指していたデザイナーを辞めて単身メキシコに行き、有名デザイナーの宍戸錠と、画家の父親に会おうとした。
 空港に彼女を迎えに来るはずだった神田正輝が遅れて聖子が困っているところ、空港で出合わせた記者の峰竜太の世話になって、彼のアパートに泊めてもらうことになったが、それを見かけた正輝が峰を誘拐犯だと思って、部屋に踏み込んで2人は大乱闘。
 宍戸はニューヨークに行って会えず、正輝と峰は聖子の父親探しに協力してついに居場所を見つけるが、父は10日前に死んだばかりだった。
 聖子は会うことが出来た宍戸に挨拶して日本に帰ろうとするが、正輝に引き止められ父の足跡をたどることにし、父のようにメキシコに残って頑張ろうと思い、宍戸に言われてデザインを描く。
 峰が正輝に、日本に転勤になって、聖子にプロポーズして連れて帰りたいと言う。
 正輝は聖子と遺跡にいたとき、恋人同士の2人が別の男の横恋慕で男が殺されても、女は男を愛し続けた話をして、2人は自分も愛する人を思い続けると言った。
 正輝が世話になっている家の娘の誕生パーティーで、正輝と一緒にいる聖子に嫉妬した娘が、聖子に正輝と婚約する予定で妊娠もしていると嘘をついた。
 正輝は、身を引く決心をした峰から聖子の手紙を受け取り、帰国しようとしていた聖子を探して、闘牛場で見つけてお互いの愛を確かめ合った。
 2人が結婚する教会へ急ぐ、正輝の運転する車が事故に合い、聖子は亡き恋人と会えたおかげで自分の将来が開けたことに感謝するのだった…。
 これは確か劇場で観ていて、同時上映はどうやら『さびしんぼう』(1985)。
 今回改めて観た目当ては、監督の鈴木則文。
 異国の地で観光名所を回りながら進む恋愛モノという、アイドル映画&旅行映画にはよくあるパターンで、鈴木監督としてはおちゃらけが少ない。
 とりあえず、メキシコに行ってみたい気にさせられる。
 松田聖子は、最初は台詞がたどたどしかったが、表情はまずまずで、映画が進むにつれて気にならなくなった。(成長するキャラという狙い?)
太平洋のかつぎ屋 監督:松尾昭典 1961 日(日活)、カラー 1:2.35 2004/07/18(日) VHS(東京MX) ドラマ系 ★★ 2004/07/20
ストーリー 感想
 日新航空のパイロットの小林旭は、独立系航空会社パシフィック・ポーターズのジムが機長を務める双発のプロペラ飛行機に副操縦士としてアメリカに向けて飛んだが、視界のきかない中でホノルルに着陸しようとしたジムのミスで墜落した。
 旭はジムを助け出したが荷物が炎上し、ジムの嘘の証言ですべての責任を旭が負わされクビになる。
 ジムに真実を証言して欲しいと頼むために、パシフィック・モーターズの事務所を訪ねてると、そこには旭が長年探していた宍戸錠がパイロットとして雇われていたが、錠は旭を避けた。
 旭のもとに、彼が生徒としていた宮崎の航空大学の学長の娘の浅丘ルリ子が来て、請われて旭は学長の家に住んで教官として働き、学長にパイロットには忍耐も必要だと言われる。
 ルリ子も錠と旧知の仲で、旭は彼女に錠を見つけ出して居場所も知っていると言った。
 卒業式の日、旭はパイロットに戻りたいという気持ちを抑えられなくなり、勝手に飛行機で飛び出したことを責められ、ついに旭は東京に戻ることにするが、彼を雇う会社はなく、パシフィック・ポーターズの岡田真澄にスカウトされてそこで働くことになる。
 ルリ子も上京して、かつて旭と同様に墜落事故が原因で今の職場に流れ着いた錠に会って旭と助け合って欲しいと言うが、錠はルリ子にほっておいてくれと言って避けた。
 ルリ子は記者として就職し、旭のような「かつぎ屋」と呼ばれるパイロットたちの密輸の実態の取材を早速任され、パシフィック・ポーターズに取材に来たところで旭とバッタリ出くわし、彼女を巡ってジムと争って曲芸飛行対決で勝つが2人は打ち解ける。
 仲間のチャンバーノの飛行機が空中爆発し、彼が男を乗せて密入国させようとしていたことを知った旭は、黒幕がジムか錠かで錠と殴り合いになる。
 そこに沖縄が津波にあって救援物資を運ぶ仕事が舞い込み、全員で飛び立ったところ錠が遭難して、旭とジムは台風が近づく中を水上機で捜索に飛び立ち、錠のゴムボートを見つけて、暗くて波が高い中で着水に成功し、錠を救出する。
 旭の実力が証明され、ジムもハワイでの自分の非を認めたが、旭は日新航空からの復帰要請を断るのだった…。
 この映画で一番インパクトがあるのが、旭が歌う主題歌の歌い出しの、♪な〜〜〜なつのそ〜ら〜を〜♪の「な〜」のものすごいハイトーンボイス…ということでは本当は困ってしまうのだが、それでも退屈しないで楽しめる映画になっている。
続・座頭市物語 監督:森一生 1962 日(大映)、白黒 1:2.35 2004/07/12(土) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2004/07/18
ストーリー 感想
 座頭市(勝新太郎)が乗っていた渡し舟に旅がらすの一団が乗り込んできて、因縁をつけてきた男に対して市は顔を斬って川に飛び込んで逃げる。
 市が川原で服を脱いで乾かして昼寝をしていると、追って来た一団が彼を見つけ仕返ししようとするが、通りかかった片腕の浪人(若山富三郎)が彼らを追い払い、その隙に市は姿をくらました。
 市が参勤交代中の殿様の按摩に呼ばれるか、その殿様が頭がおかしいことの秘密を守るために、家中の3人が帰り道の市を殺そうとするが、逆に斬られる。
 総出で捜索された市は酒場の女のお節(水谷良重)にかくまわれるが、その酒場で浪人とかち合い、二人はどちらもお節とそっくりだったお千代という女と恋仲だったことを知った。
 市は、お千代を横取りしようとした男を斬り殺していた。
 翌朝、市とお節が一夜を明かした川原の小屋を、家中に頼まれた勘兵衛一家の者が取り囲むが、市はこれを追い払い、市はお節と別れて彼が斬った平手神酒の一周忌が行われる寺へ向かう。
 一方、浪人も手配されていて追っ手が迫っていることが、世話になっていた勘兵衛(沢村宗之助)に知られて、そこを立ち去って市を追うことになる。
 市の行き先を知った勘兵衛一味、市のいた寺を取り囲み、市は彼らを次々と斬り殺すと、そこに浪人が現れ市と対決する。
 実は彼は市の実の兄で、彼が市からお千代を奪ったのだったが、市は兄を斬るとそこへ兄の追っ手が現れ、市は兄と川に飛び込んで共に逃げるが、まもなく兄はお千代はどこかで生きていると言い残して死んでしまう。
 市は寺に戻って、そこに現れた勘兵衛を斬るのだった…。
 座頭市とからむ相手が、女が、前半のお節から後半のおたね(万里昌代)へ、敵役が武士たちからヤクザたち、最後は町方と、次々と変わるのは、映画に1本筋が通ってないように見えて、やっぱりマイナスになっちゃうかなぁ…?
キートンのハード・ラック 監督:バスター・キートン、エディ・クライン 1921 米、白黒 1:1.33 無声 2004/07/06(日) VHS(NHK-BS2) お笑い系 ★☆ 2004/07/08
ストーリー 感想
 自殺癖のあるキートンは、毒と書かれたビンに隠された酒を飲んで陽気になって、狩りの大会の開催を相談していた博物館の会議に紛れ込んで、その大会に参加することになった。
 大会に行く途中、キートンは釣りをして、釣った魚をえさにして次々次第に大きな魚を釣り上げて、最後はキートンが引っ張り込まれる。
 狩りの出発地でヴァージニア・フォックスと知り合い、馬に乗るのに手間取っているうちに1人出遅れて、投げ縄で熊を捕まえてしまって、狩猟者たちの別荘に逃げ帰るが、そこが盗賊たちに襲われ、キートンの機転で一味をやっつける。
 キートンは助けられたことを感謝するヴァージニアに求婚するが、彼女には夫がいて、絶望したキートンはプールの飛び込み台からプールサイドに向かって飛び込み、開いた穴の奥深くへと消えて、数年後に中国で見つけた妻と子供たちを連れて穴から出てきたのだった…。
 面白いギャグはほとんどないし、ストーリーは無茶苦茶なのだが、唯一キートンがプールサイドに飛び込むところは、本当に頭から地面に突っ込んだように見える。
 どうやって撮ったんだろう?
フリック・ストーリー 監督:ジャック・ドレー 1975 仏=伊、カラー 1:1.66 2004/07/04(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2004/07/04
ストーリー 感想
 1947年のパリ、警察庁の刑事のアラン・ドロンは、服役中で病院から脱走し、再び強盗団のリーダーになって殺人までするようになったジャン=ルイ・トランティニャンを追った。
 アジトを突き止めて急襲するも、トランティニャンはあと一歩のところで逃げ、密告者を殺しながら強盗殺人も続け、ドロンは上司に責任を問われ続ける。
 しかし、ついにトランティニャンとのつながりのある人を通しておびき寄せて逮捕することに成功し、ドロンが彼を尋問したが、彼はある種の理解を持って接し、尋問は粛々と行われ、彼は死刑になった。
 犯人を追い詰めるのがメインの普通の刑事モノで、ドロンはこれといったことが何もない役で、トランティニャンの今で言えばジョン・マルコビッチのような冷酷な悪役振りが唯一の見どころ。
キートンの化物屋敷 監督:バスター・キートン、エディ・クライン 1921 米、白黒 1:1.33 無声 2004/07/04(日) VHS(NHK-BS2) お笑い系 ★★☆ 2004/07/04
ストーリー 感想
 ある街の銀行の出納係が、仲間と偽札作りをしていて、そのアジトの家に警察を近づけさせないために、その家を化物屋敷に仕立てていた。
 しかし、偽札が銀行の札に紛れ込んでいることが頭取にバレたことに気づいた。
 その頃、窓口係のキートンが、札を数えるために手を濡らすところを間違って糊をつけて、札や床やお客さんまで糊だらけで大混乱のだったが、そこに出納係が仲間を強盗に入らせて金を奪おうとしたが、糊まみれになって失敗し、すると出納係はキートンを偽札作りの犯人に仕立てて、キートンは逃走して化物屋敷に逃げ込むと、追っ手は怖がって入れなかった。
 そこでは、お化け役の人々が脅かしたり、階段が滑り台になる仕掛けなどで、キートンは大混乱し、さらにそこに「ファウスト」の舞台が無茶苦茶になって観客に金を返せといわれて屋敷に逃げ込んできた役者たちも加わる。
 さらに、頭取たちや、キートンを助けようとした頭取の娘のヴァージニア・フォックスも屋敷に入り、出納係が正体を明かして彼らを銃で脅すと、キートンが逆に一味を一網打尽にして濡れ衣を晴らした。
 しかし、逮捕される間際に出納係はキートンを殴って彼は天国の階段を昇っていくが、天国の入り口で滑り台になって地獄まで滑り落ちて…、といったところで目が覚めた。
 キートンの体を張ったギャグの数々が見もの。
 例えば、糊のついた手をポケットに入れて取れなくなったところに、強盗が来て手を上げようとしてひっくり返ったり、滑り台になる階段を2階から滑り降りたり、逆に2階に駆け上がったり、怪物に捕まって走って逃げようとしても、床が回転して前に進まずにその場で全速力で走ったり、など。
咬みつきたい 監督:金子修介 1991 日、カラー 1:1.85 2004/07/03(土) VHS(テレビ東京) ドラマ系 2004/07/03
ストーリー 感想
 ルーマニアのチャウセスク政権の崩壊に紛れて、安田成美の指示で執事の天本英世がドラキュラの血を手に入れて持ち帰り、安田はその血の持つ未知のパワーを、亡き父の遺志を継いで研究する目的で保管する。
 その頃、緒形拳が指揮を執る新薬の開発の認可に関わって、その製薬会社に贈賄疑惑が起こり、緒形は車にひき殺されて、彼の単独犯行にさせられる。
 しかし、ドラキュラの血が紛れ込んで輸血されたために1年後に生き返り、安田や生前仕事に忙しくて構ってやれなかった娘の石田ひかり達の助けを借りて、血を清めて人間に戻ろうとする。
 そこに、殺し屋がもう1度現れて彼を撃ち殺すが、彼はドラキュラとして行き続け、安田と共に会社に乗り込み、彼女の血を吸って力を付け、贈賄と殺人の張本人で、今は社長になった森本毅郎元専務の罪を、インタビューに来ていたテレビカメラの前で生放送で暴く。
 その後、石田の前からいなくなった緒形は、安田と共に偽の献血カーで血を得て暮らすのだった…。
 緒形拳の吸血鬼はトボケた味も見せいていて、それを生かせば現代の日本を舞台にした異色の吸血鬼モノになったかも知れず、また仕事一筋だった彼が家族を顧みる家族愛の映画になったかも知れないなどと、がんばって作っていれば面白くなりそうな可能性はある話しなのだが、結局頑張らなかったからか、どんな映画にもなっていない中途半端な思いつきだけの映画になってしまった。
 話しの繋がりもところどころおかしいし、登場人物にも魅力を感じられない。
孔雀城の花嫁 監督:松村昌治 1959 日、カラー 1:2.35 2004/06/27(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2004/07/24
ストーリー 感想
 上野の国の孔雀城の領主の松平信直(中村賀津雄)のところに、わがままで乱暴で手に負えなくなった和姫(美空ひばり)が、将軍家から嫁入りを前提にやってきた。
 ある晩、一室に2人きりになって、信直が口吸いをしようとしたら庭に投げ飛ばされた。
 会ってくれなくなった姫を帰すことも出来ず、困って自殺しようとした殿様は、城下で占い師(杉狂児)に、関東一の美女和姫をものに出来ると言われて城に忍び込んだ猟師の半助(大友柳太朗)と庭で鉢合わせし、半助が雪山の中の自分の家に姫を連れ去って、姫のじゃじゃ馬を直すことで合意した。
 姫は脱走を試みたり、食事も断ったりで抵抗するが、やがて自分の分と吹雪で逃げ込んできた4人の山賊(山形勲、他)の分の飯炊きまでするようになる。
 しかし、姫の言葉遣いや山狩りをしていたことから、城から連れ去られてきた女だと見抜いた山賊は、姫を奪おうとするが、半助と祖父(薄田研二)と妹(桜町弘子)たちが戦って撃退する。
 姫は山での生活がすっかり気に入ったが、山賊の案内で追っ手が山小屋に迫り、連れて行って欲しいと頼む姫を柱に縛って、民衆の生活を思う良い姫になるようにと言って逃げて行く。
 殿と姫の結婚式が行われているとき、実はかつての家臣だった男の息子だった半助たちは江戸へと向かっていた。
 美空ひばりはいいんだけど、1曲しか歌わないとなんか損した気になる。
 じゃじゃ馬のはずの姫が、山に連れ去られたとたん、ほとんど無抵抗であっという間に従順になるのは、なんかつまんない。
 ていうか、そのじゃじゃ馬ぶりを徹底的に激しく楽しく描いて、そこから変わる落差でまた楽しませるというのが、この手の映画の一番のポイントであるはず。
僕は天使ぢゃないよ 監督:あがた森魚 1974 日、カラー 1:1.33 2004/06/22(火) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★☆ 2004/06/23
ストーリー 感想
 漫画家を目指す一郎(あがた森魚)と、OLで組合員として会社の合理化と戦っている幸子(斉藤沙稚子)は、アパートで同棲していた。
 幸子は姉から縁談を持ち掛けられ、収入のない一郎との結婚は反対だった。
 一郎は漫画が受け付けられず、幸子の会社に就職する。
 一郎の父が病気になり、一郎は田舎に帰るが、父は死んで、父を恨んでいた一郎は、母と姉妹にもう帰って来ないと言って去る。
 2人は喧嘩もしたりして、幸子は置手紙と最後の食事の用意をして家を出るのだった…。
 あがた森魚の第1回監督作品で、先に観た『オートバイ少女』(1994)、『港のロキシー』(1999)と同様の、意味がありそでなさそな台詞やイメージを、映画の進行に沿って時々ポン、ポンと置いていくようなスタイルの映画だが、90年代の2作品には良さを感じなかったけど、70年代のこの作品なら、それまでの日本と時代が変わったような当時の風俗にマッチしていて、リアルタイムで観ていたら意味ありげなことに意味があると信じることができて、良いと思ったかも。
 結局今観ると、意味ありげなことに意味を信じられなく、意味ありげなことを本気でやっていることに対して、なにやら思い込みの激しい人たちの映画に見えてしまうのだが、こうした時代の変化は映画という虚構にとっては不幸なことなのかもしれない。
港のロキシー 監督:あがた森魚 1999 日、カラー 1:1.33 2004/06/22(火) VHS(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 2004/06/23
ストーリー 感想
 東京から来て、函館のストリートでインラインスケートに乗っている仲間の1人橘人(岡和則)は、姉の菜穂子(藤丸美哉)と一緒に住んでいたが、地元のやよい水産のアイスホッケーチームのキャプテンでオリンピック選手候補の健三(河原孝俊)と街で喧嘩し、健三は3ヶ月の自宅謹慎処分になる。
 その後、ドライブをしていた健三をスケートに乗った橘人たちが襲うが、健三もスケートを履いて逆に襲い、そんな喧嘩を繰り返すうちに2人は友人になり、健三は橘人たちのインラインホッケーチームのコーチをしたりする。
 健三は菜穂子が橘人の姉とは知らずに町で出会って恋人同士になる。
 橘人と菜穂子の父が作ったタンカーが海水浴場の沖で事故を起こしたのがきっかけで、父は失業し両親は離婚し、中学生だった2人は叔父叔母の家で育てられたのだが、その過去を振り切るために3人で海に行く。
 健三たちは、函館山から大沼公園までスケートでレースをして、橘人と激しくぶつかり合いながらも、2人は並んでゴールする。
 演技にリアリティを求めない演出も脚本も、映画の全体の演出のトーンが統一されていないのも、本筋のシーンとイメージシーンがバランス悪く共存してるのも、あくまでイメージ優先で、雲をつかむようなストーリーが取って付けたように思えるのも、ずっと我慢して観ていたが、途中でついに、ストーリーを噛みしめることもなく「この映画、どうでもいいや!」ということになってしまった。
 映画の中の話とはいえ、市街地で無断でレースをして、老人の通行人なんかにぶつかったらどうするんだ?!
大菩薩峠 第二部 監督:内田吐夢 1958 日(東映)、カラー 1:2.35 2004/06/20(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/06/21
ストーリー 感想
 ほとんど失明して、天誅組の残党として追われる机竜之助(片岡千恵蔵)は、紀州竜神の山中にお豊にかくまわれていたところ、それを知った夫の金蔵が嫉妬に狂って彼の湯屋は全焼、逃げたお豊を追った金蔵は竜之助に斬られて、2人は逃走する。
 伊勢古市の宿で弱った体を押して女中として働いていたお豊は、宿泊客の神尾主膳(山形勲)に見初められてお金につられて座敷に上がって体を奪われ、お金と手紙を竜之助に残して自害する。
 お豊の手紙を言付かった芸者のお玉は、百蔵が神尾主膳から盗んで落とした印籠を彼女の愛犬ムクが拾ったために犯人と間違えられ、彼女のお供をしていた米友が彼女をかばって捕まる。
 お玉からお豊のことを聞いた竜之助は、虚無僧姿でムクと共に東海道を江戸に向かい、お玉も船で江戸へ向かう。
 そんな彼の姿を、七兵衛(月形龍之介)が見ていて、それを七兵衛から聞いた兵馬(中村錦之助)とお松(丘さとみ)は船で清水に先回りした。
 浜松で、米友は百蔵の盗みの濡れ衣を着せられ屋根の上に逃げたのを見た女軽業師の一座に拾われ、彼はムクを、女軽業師一座で働く百蔵は竜之助が神尾主繕のなじみの婦人お絹に拾われて彼女の屋敷に入って行くのを見かけた。
 お絹も竜之助と共に神尾主繕に会いに江戸へ向かい、偶然七兵衛と一緒に後を追った百蔵が掛川の宿で2人の寝床に忍び込むが、気配を感じた竜之助に気付かれその場を逃げ去る。
 百蔵は竜之助とお絹を甲州方面へ案内し、山中でお絹だけを先に行かせるが、企みが竜之助にばれて腕を切り落とされる。
 七兵衛は清水港で待ち合わせた兵馬に竜之助の行方を知らせて後を追うように言い、お松を連れて江戸へ帰る。
 竜之助が山中で倒れているところ、一人息子の蔵太郎を抱えた薬売りのお徳(小暮美千代)が彼を拾って家に連れて行く。
 お玉はムクとムクを追って来た米友と再会した。
 甲州の天領を治める神尾主繕の上に、新たな年下の旗本の駒井能登守(東千代之介)が甲府に派遣されて来ることを知って面白くない主繕は、金山を持つ望月家の婚礼が豪華なのは不審だと因縁をつけて、花婿(里見浩太朗)を人質にとって身代金を要求する。
 そして、花婿のいる温泉場の村に向かっていた花嫁も主繕の配下が誘拐しようとするが、通りかかった兵馬が救って、花嫁のお供をする。
 また、温泉宿にお徳親子と泊まっていた竜之助は、その地で一緒に静かに暮らしたいと話していたが、痛めつけられる花婿の声を聞いて彼を救い出しに行き、主膳の配下を数人斬ったところ、主繕は竜之助を手下にして能登守を斬るように言う。
 しかし竜之助は、「人に頼まれたから斬るのではなく、斬りたいから斬る。」と言うのだった。
 竜之助のもとを去ったお徳親子は、兵馬と出会って竜之助が甲府へ行ったと告げるのだった…。
 中里介山原作、内田吐夢監督の三部作の2作目。
 感想は、前作の『大菩薩峠』と同様に、これも大量の登場人物による同時進行の展開で全体を把握するのが難しく、ストーリーもところどころ飛躍していて、本当に話しが判り辛い。
 千恵蔵の立ち回りは動きは少ないが、それでも特にクライマックスなど、ただならぬ迫力を見せている。
オー!ゴッド 監督:カール・ライナー 1977 米、カラー 1:1.66 2004/06/17(木) NHK-BS2 ドラマ系 ★★★ 2004/06/21
ストーリー 感想
 スーパーの副店長のジョン・デンバーは、教会にも行かず信心深くなかったが、善人だという理由だけで神と名乗る者から呼び出され、救世主として指名された。
 最初は信じなかったが、待ち合わせ場所の17階のビルに27階を作ったのを見て、信じるようになった。
 そして神はとりあえずジョージ・バーンズの老人の姿になって家に現れ、自分の存在を世の中に知らしめ、人々に世界を正せとのメッセージを伝えることを依頼した。
 しかし、妻のテリー・ガーも2人の子供も信じず、他の人には姿も見えず声も聞こえない神と会話しているところを見られて変に思われ、新聞社に訴えても冗談として取り上げられるが、評判だけは広がった。
 宗教各派の代表に呼び出され、証拠として50の質問を神に答えさせる宿題を出し、神はその回答を、派手な格好で寄付を要求する牧師(ポール・ソルビノ)に返させるようジョンに頼み、「インチキ」の言葉も伝えさせた。
 ジョンは名誉毀損で訴えられ、ジョンは弁護士も付けずに戦うが、法廷に神が現れて奇跡を起こし、彼は無罪になる。
 仕事もやめ町を出て行こうとするジョンの前に、神が現れて祝福するのだった…。
 
スウィートヒアアフター 監督:アトム・エゴヤン 1997 加、カラー 1:2.35 2004/06/17(木) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★★ 2004/06/21
ストーリー 感想
 1995年12月、弁護士(イアン・ホルム)は凍った湖に沈んだスクールバス事故の遺族たちに訴訟を持ちかけるためにある小さな町に来た。
 彼は事故の責任をバスのメーカーに負わせようとしていた。
 1997年11月、彼は飛行機の中で、父と反目し合って家を出た娘ゾーイ(カーサン・バンクス)の友人と隣り合わせになり、娘が麻薬に溺れてやりきれない気持ちや、娘が小さいころ毒クモに刺され緊急措置としてのどを切りそうになった話しを彼女にした。
 事故の直前の夜、生き残ったニコール(サラ・ポーリー)は、ベビーシッターをして「ハメルンの笛吹き」の本を読んできかせていた子供に、「笛吹きはなぜ子供たちを連れ去ったの?」と聞かれ、「罰」「仕返し」と心もとなく答えた。
 ある遺族やバスの運転手ドロレス(ガブリエル・ローズ)は、訴訟によって町の外の人間が事件に関ることに反対するものもいた。
 親が原告団に加わっていたニコールは、バスが猛スピードを出していたと嘘の証言をして、訴訟は無しになる。
 飛行機から降りた弁護士は、ドロレスが空港バスのドライバーに復帰しているのを見た。
 町はもとの通りの静けさの中にあった…。
 
酔いどれ2人組 監督:チャールズ・チャップリン 1915 米、白黒 1:1.33 無声 "A Night Out" 2004/06/15(火) VHS(NHK-BS2) お笑い系 ★☆ 2004/06/16
ストーリー 感想
 チャーリーとベン・ターピンは、既に酔っ払った状態でレストランに飲みに来て、他の客と揉め事を起こし、レストランから追い出される。
 2人はホテルに行き、チャーリーは向かいの部屋のエドナをくどくが、部屋から夫のレストランの店長が現れ、チャーリーはホテルから逃げ出し別のホテルに移る。
 しかし、店長夫婦も偶然にまた向かいの部屋に移ってきて、エドナの犬がチャーリーの部屋に入ったのを追ってエドナも入り、チャーリーとばったり。
 店長の居ないすきにエドナだけでなくチャーリーも向かいの部屋に移り、戻ってきた店長に見つかって、チャーリーは窓から突き落とされる。
 感想は下の『役者』と同じ。ストーリーはわかりやすかったけど。
 エドナ・パーヴィアンスは、これがひょっとしたらデビュー作で、チャップリンとの初共演作。
チャップリンの役者 監督:チャールズ・チャップリン 1915 米、白黒 1:1.33 無声 "His New Job" 2004/06/15(火) VHS(NHK-BS2) お笑い系 ★☆ 2004/06/16
ストーリー 感想
 おなじみの扮装で映画俳優のオーディションを受けるチャーリー。
 しかし、彼は大道具係になって働いていると、突然主役に抜擢される。
 しかし、彼はうまく演じられず、役を降ろされる。
 チャップリン初期の作品で、どうも入り込めないのは、放送された版がオリジナルのサイレントに音楽を追加して、英語字幕を訳しているだけで活弁がなくてわかりにくい、その字幕も後年に比べてインサートされる回数が少なくてストーリーがわからない、ギャグも動きが大きくないので画的にわかりにくい、録画したテープがトラッキングがずれて画面がわかりにくい、などの理由による。
オートバイ少女 監督:あがた森魚 1994 日、カラー 1:1.33 2004/06/15(火) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★☆ 2004/06/16
ストーリー 感想
 17歳のみのる(石堂夏央)は、元漫画家で今では函館の映画館で看板を描いたりしているまだ会ったことのない父親の長田(あがた森魚)にオートバイで会いに行く。
 しかし、彼はどこかに引っ越していて、函館の街をさまよい、映画館の人から噴火湾沿いの町の臼尻の映画館に出かけたと聞く。
 そこに行くと父親は行き違いで函館に戻っていた。
 函館に戻るために乗せてもらったトラックの運転手から、彼には別の脚が不自由な娘がいることを知る。
 函館に戻って父に会い、2人は距離を置いて少しずつ話し合い、自分は高校の画一的な雰囲気になじめず辞めたことを話すが、家族を去ったことや妹のことを父ははっきりと説明せず、雲をつかむような会話ばかりする。
 それでも彼女は父を恨んでいるわけでもなく、今の父を受け入れて函館を去っていく。
 詩的な会話や映像による詩的なイメージを狙った映画なんだろうけど、そういうのってしっかりした映画を作る技術やセンスや意志がないと、見るものに訴えられない結果になってしまう。
 うかつに映像的に凝ったことをすると、イメージ先行の映画に感じられて、たちまち観る者との距離が開いてしまう。
 そんな映画でした。
笑いガス 監督:チャールズ・チャップリン 1914 米、白黒 1:1.33 無声 "Laughing Gas" 2004/06/14(月) VHS(NHK-BS2) お笑い系 ★☆ 2004/06/15
ストーリー 感想
 歯医者助手のチャーリーが、客ともめて殴ったり、麻酔でもうろうとしている患者を殴ったり、薬を買いに行った間に通行人を殴って逃げたり、歯医者のふりをして患者の若い娘にキスをしたり、男の患者の歯を巨大ペンチで抜こうとする。  チャップリンがおなじみのスタイルで登場し、おなじみの迷惑なキャラのギャグを見せるが、カメラワークや編集が平板なのか、見た目のインパクトに欠ける。
二組の夫婦 監督:チャールズ・チャップリン 1914 米、白黒 1:1.33 無声 "The Rounders" 2004/06/14(月) VHS(NHK-BS2) お笑い系 ★☆ 2004/06/15
ストーリー 感想
 廊下を挟んだ部屋に泊まるチャーリーとファッティーの2人の紳士が、それぞれ酔っぱらって妻の待つ自分の部屋に帰ってくる。
 それぞれ妻ともめているうちに、2人の紳士は意気投合して、妻の財布から金を盗んで一緒に飲みに出かける。
 レストランで暴れた2人は追われて逃げ出し、手漕ぎボートで池に漕ぎ出して寝そべって隠れるが、浸水して眠ったまま沈んでしまう。
 浮浪者スタイルではないが、チャップリン得意の酔っ払いモノ。
 とはいえ、アクションはまだそんなに派手ではない。
決闘 高田の馬場 監督:マキノ正博、稲垣浩 1937 日本(日活京都)、白黒 1:1.33 2004/06/07(月) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★★★ 2004/06/15
ストーリー 感想
 飲んだくれたり他人の喧嘩に首を突っ込んだりの中山安兵衛(阪東妻三郎)が、唯一の身内で頭の上がらない伯父(香川良介)から説教を受けてへこむ。
 一方、武家の娘おたえは父親に自分の婿は自分で決めると言っていたが、路上で喧嘩を止めていた安兵衛のたちまわりを見て一目惚れ。
 伯父が剣の御前試合で倒した相手の一門から果たし状を受け取り、安兵衛の長屋に会いに来るも留守で、手紙を残して1人高田の馬場に向かう。
 その後、飲んだくれて帰って来た安兵衛に、長屋の人がなんとか手紙を読ませて、安兵衛は高田の馬場に向かって一目散に走るが、伯父は安兵衛の腕の中で息を引き取った。
 安兵衛は居合わせたおたえからたすきを受け取り、全員を斬り倒すのだった。
 もう、なんといっても阪妻!
阿片戦争 監督:謝晋 1977 中国、カラー 1:2.35 2004/05/30(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/05/30
ストーリー 感想
 イギリスが密輸する阿片によって、清国には中毒患者があふれ、多額の銀が国外に流出していった。
 1838年、皇帝(スー・ミン)からの命を受けた湖広総督の林(パオ・クオアン)は、阿片撲滅に向けて密輸に関わった商人や役人たちを処刑し、イギリス人たちを自宅に軟禁し、1939年6月に押収した1000トン以上の阿片を破棄した。
 このことをイギリスの財産の侵害として、1840年4月10日にイギリス議会は清への艦隊の派遣を決定し、イギリス軍が勝って香港の割譲を要求する。
 その後も清の抵抗が続くが、イギリス軍には歯が立たず、1842年8月29日に香港一帯は1997年7月1日までイギリス領となるのだった…。
 1997年香港返還記念映画。
 まあ、このような悲劇を二度と繰り返さないためには、中国人は私服を肥やそうと私利私欲に走ることなく、国益最優先で一致団結して富国強兵を目指そう、という映画なんでしょう。
大菩薩峠 監督:内田吐夢 1957 日(東映)、カラー 1:2.35 2004/05/29(土) NHK-BS2 ドラマ系 ★★ 2004/06/21
ストーリー 感想
 机竜之助(片岡千恵蔵)は、奉納試合の前日に大菩薩峠で巡礼中の老人を突然切り捨てる。
 彼が屋敷に帰ると、父に心の乱れを指摘される。
 そこに、明日の試合の相手の宇津木文之丞の妹が来て、試合で腕の劣る自分の夫に手加減して欲しいと頼むが、竜之助は彼女に、「剣の勝負は女にとっての操と同様、情けより優先する。それともお前は夫のためなら操を破るのか?」と問い返す。
 竜之助はこの答えを知りたがり、下男の与八に文之丞の妻お浜を誘拐させ、夫を取るか操を取るかを問う。
 その頃、竜之助が老人を斬ったのを見ていた盗賊のがんりきの百蔵は、竜之助の屋敷に忍び込んで短刀を盗み、それを老人が連れていた孫娘のお松に渡して、「将来意味が解るから、大事に持っていろ。」と言った。
 家に帰ったお浜は、夫に竜之助との仲を疑われたのと、手加減を頼んだことが原因で、彼の元を追い出される。
 翌日の試合は、竜之助が文之丞を一撃で倒すが、審判は竜之助の負けを宣告する。
 国を出ることになった竜之助の後を、捨てられたお浜がついて来て、文之丞の手下達が襲ってきたところを逆に切り捨てる。
 お松は百蔵に連れられて江戸に行き、彼女の伯母のお滝のところに連れてくるが、引き取らなかったため代わりに近くの女が引き取ることになり、百蔵は仕返しとしてお滝に人前で恥をかかせる。
 やがて、江戸に出た2人の間に赤子が授かるが、竜之助は用心棒稼業をするまでに身を落としていて、通りがかった島田虎之助(大河内伝次郎)の道場で稽古に励む文之丞の弟兵馬(中村錦之助)と手合わせすることを願い出る。
 兵馬が木刀を振りかざしたその時、適わないと見た虎之助は試合を中止する。
 その頃、成長したお松(丘さとみ)が神尾主膳(山形勲)の腰元に雇われるが、彼が腰元たちの服を脱がせるゲームを始めたためお松は拒否し、そこへ百蔵が現れて彼女は屋敷を逃げ出し、竜之助の行方を捜す与八と、それに兵馬にかくまわれる。
 竜之助は新徴組に雇われ、共に虎之助の闇討ちに向かうが、彼と土方歳三を除いて全員返り討ちに合う。
 お松は商売が出来なくなったお滝伯母さん夫婦と再会するが、彼女達は追われているお松をどうにかしようと相談した。
 ねずみにかじられた竜之助の赤子を診たとの道庵先生(左卜全)の言葉から、兵馬はかつて手合わせした男が兄の仇の竜之助と知り、果たし状を送りつける。
 それを見たお浜は取り乱して、竜之助は彼女を斬ってしまい、果し合いはせずに江戸を離れ、土方と共に京に向かった。
 その途中、竜之助は心中で死に損なったお浜に瓜二つのお豊と出会い、彼は彼女を連れて旅をするが、お豊は金蔵という男にかどわかされて竜之助と別れる。
 兵馬はお松が家を出たことを知って愕然とするが、与八と共に竜之助の後を追う。
 その途中でお松と再会し、仇討ちの事情を聞かされたお松は、竜之助と土方が泊まっている宿に行って会話を立ち聞きするが、捕まってしまう。
 竜之助は彼女を斬ろうとしたとき、彼女の祖父をはじめとした斬られた者たちの幻影に襲われる。
 兵馬は残党狩りに加わって竜之助たちのいる古屋を包囲するが、竜之助は包囲を破って姿をくらますのだった…。
 中里介山原作、内田吐夢監督の三部作の1作目。
 しかし、左のストーリーを見てもわかるように、登場人物も多くて見分けがつきにくく、ストーリーもそんな多くの人たちによっていくつも並行して進むので、全体像が判りにくい。
 さらに、ところどころ展開が唐突だったり話しがつながらなかったりで、まるで元々3、4時間あった映画を2時間にカットしたような印象を受ける。
 有名な話だからそんなことが許されるのだろうか?
和製喧嘩友達 監督:小津安二郎 1929 日(松竹)、白黒 1:1.33 無声 2004/05/28(木) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2004/06/15
ストーリー 感想
 オリジナルは77分(2114m=6936ft⇒4624秒=77分)
AIKI 監督:天願大介 2002 日(日活)、カラー 1:1.66 2004/05/28(木) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★☆ 2004/05/28
ストーリー 感想
 ボクサーの加藤晴彦は、対戦に勝ったあと、乗っていたバイクが車と衝突し、下半身不随になって車椅子の生活を余儀なくされる。
 自暴自棄になって退院後も生活は荒れ果て、盛り場でチンピラに殴られていたところを、テキヤの桑名正博に助けられる。
 桑名は加藤に露天商の仕事を紹介し、神社の境内で商売をしているとき巫女のともさかりえと知り合い、次第に生活を立て直していく。
 彼はボクシングを再開しようとするが車椅子では無理なことを知り、他の格闘技を探していたときに、境内で石橋凌が合気道の技を披露していたのを見て、彼に弟子入りする。
 加藤はともさかと愛し合うようになるが、イカサマ博打が得意な彼女がトラブルを起こしたらしく、失踪してしまう。
 来日中のアフリカの某国の皇太子が、数々の日本の武道家たちを大使館に招いたとき、打撃系の武道家に因縁をつけられた加藤は彼と対決して見事に破る。
 加藤は、ともさかを探すために旅立つのだった…。
 エンドクレジットに映される、デンマークの車椅子の合気道家がモデルの日活創立90周年映画。
 挫折からの立ち直りというストレートなストーリーで、襲ってくる敵を跳ね返すのではなく受け入れるというAIKIの極意を、恋人との関係をはじめとする人間関係に重ねているのがミソ。
 挫折や復活のエピソードや演出や盛り上げ方は丁寧に作られていて、こうしたストレートな話には、凝った演出なしでも、これだけでグイグイ引き込まれる。
 特に、加藤晴彦に本格的に車椅子の操作をさせているのが効果的。
 ただし、入院中に加藤に関わる患者の火野正平が、重要な役なのに映画にうまく絡んでいなかったり、加藤を殴ったチンピラや因縁をつけた武道家などが、この手の映画には似合わないいかにもな悪役として描かれ、しかも何度も安っぽく登場させたりするなど、シーンが無駄に感じられたりと、シックリこない点が多いのも事実。
二人の瞳 監督:仲木茂夫 1952 日(大映)、白黒 1:1.33 2004/05/23(日) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2004/05/23
ストーリー 感想
 1950年夏、ケイティ(マーガレット・オブライエン)がアメリカから日本に住む父親を訪ねてやって来た。
 一方、阿部マリ枝(美空ひばり)率いる孤児たちが、孤児収容所の募金と偽って街頭でお金を集めていると、彼らにイカサマを教えた男達が現れて逃げていた孤児たちを連れ戻そうとして、みんなは逃げ出しマリ枝はケイティの家の庭に逃げ込んで、そこで2人は知り合う。
 後日、孤児の1人の忠雄がスリで捕まったことで、マリ枝はケイティに無実の忠雄を助けて欲しいとお願いしたことがきっかけで、孤児たちがケイティの家に世話になる。
 大人たちが孤児たちを収容所にいれようとしたとき、マリ枝はとっさに犬と離れたくないから収容所に入りたくないと嘘を重ねる。
 ケイティは父のコネを利用して、日本政府の大臣や牧師達にはたらきかけてたり募金を集めたりして、新しい収容所が建設されることになった。
 しかし、マリ枝達は嘘を反省して収容所完成を目前にケイティの家を出る。
 ケイティは子供達に罪はないと言い、マリ枝は牧師に相談して、ケイティのためにも収容所に入ることにした。
 ケイティの帰国の際に牧師がそのことを伝え、飛び去っていく飛行機をマリ枝たちは遠くから見送るのだった…。
 美空ひばりとマーガレット・オブライエンの、共に1937年生まれの日米スターの共演。
 オブライエンは日本語を少し勉強したという設定で、とおりゃんせの歌も1曲歌うが、何が原因かはわからないが、なんか精彩が無い。
 実際、彼女はこの直前の『若草物語』(1949)あたりを最後に、その後作品に恵まれずに引退することになるのだが。
 映画の内容は、当時は浮浪児に対する世間の態度が冷たかったから、こんな映画が作られたのかな?
GUN CRAZY Episode3 叛逆者の狂詩曲 監督:室賀厚 2003 日、カラー 1:1.85 2004/05/22(土) VHS(WOWOW) 感覚系 ★★ 2004/05/23
ストーリー 感想
 父親と親子2代の警察キャリアの仲根かすみは、射撃訓練はトップの成績で、警官から刑事になって早速、おとり捜査が潜入している麻薬密輸の現場に同行することを志願したが、そこに超小型の液体爆薬の密輸を依頼したテロリストが現れて密輸団を皆殺しにし、乗り込んだ彼女は死体を見て急に怖気づく。
 そして、おとり捜査官の体に仕掛けられた時限爆弾を刑事達が外している時、1人だけ吹き飛んだ倉庫から逃げ出すことが出来たが、自分のとった行動を話さなかった。
 密輸の現場を外され、命令無視の常習犯の布施博刑事と組まされるが、彼と話すうちに爆破事件を追う決心をし、現場に落ちていたマッチのクラブに向かう。
 そこには、海外の環境保護団体の挫折からテロリストになったボスの本宮泰風と、彼のテロ活動を止めるために帰国した元環境保護団体メンバーで本宮の恋人だった大谷みつほが会っていたが、爆破現場を立ち去る本宮の顔を見ていた仲根が呼び止めたことがきっかけで銃撃戦になり、2人は一緒に逃走して布施が撃たれて入院する。
 本宮が東京への送電を4週間不能にするために変電所に爆弾を仕掛けて金を要求するのを阻止しようとした大谷は逆に撃たれてしまい、傷を負った彼女は外出禁止にされていた仲根の自宅に行って助けを求め、2人は変電所へ向かう。
 そこには本宮たちと、彼が病院から連れ出して体に爆弾を仕掛けた布施がいて、仲根は今度は時限装置を止めようとして成功する。
 大谷と仲根は逃げる本宮を銃撃戦の末に追い詰め、大谷は本宮と抱き合って彼を撃ち殺し、彼女も隣に寄り添って死ぬ。
 仲根は布施と再びコンビを組んで、現場に戻って行くのだった…。
 先月観た『GUN CRAZY Episode4 用心棒の鎮魂歌』と同時上映された69分の映画で、こちらも『ep4』同様、デカい爆破にカースタント、そしてちゃんとさまになっている銃撃戦と、アクションは申し分なし。
 問題は主役の2人で、どうしても演技にぎこちなさを感じてしまうのだが、それでも片や刑事の現実に直面して自信を失う駆け出し刑事、もう1人も元恋人の愚行を銃を突きつけてでも阻止しようと行動を起こしたばかりという役柄なので、それを考慮してさらに寛大な心で見てあげれば、ぎこちなさもギリギリセーフといった感じ。
 オープニングのタイトルバックが『007/ドクター・ノオ』みたいで、エンドクレジットでも「BUT ANOTHER GUN CRAZY WILL RETURN IN "THE MAGNIFIGENT FIVE STRIKE"」と、007シリーズを思わせるお遊び付き。
ブーメランのように 監督:ジョゼ・ジョヴァンニ 1976 仏、カラー 1:2.35 2004/05/18(火) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★☆ 2004/05/19
ストーリー 感想
 運送会社社長のアラン・ドロンの17歳の息子が、パーティーで酒とマリファナでラリって銃で警官を撃ち殺してしまう。
 殺人ではなく事故を主張するが、裁判に有利な状況とは言えず、さらにドロンはポーランドから移り住んで、ギャングになって服役し、20年前に出所たことが世間に知られてしまった。
 ドロンはかつての経験を生かし、自力で麻薬の売人を突き止め麻薬を捨てさせる。
 そのうち、息子が拘置所で自殺を計り、息子の精神が限界だと思ったドロンは、息子が病院に移される途中の路上で護送車を襲って脱走させ、山の国境を徒歩で越えて2人でイタリアに逃げようとするが、追ってきたヘリからの銃が2人を狙う…。
 タイトルの意味は、「元に戻る」ということなのか?
 それ以外は、特にコメントなし。
 追悼、ジョゼ・ジョヴァンニ(2004/04/24没)。
豚の報い 監督:崔洋一 1999 日、カラー 1:1.85 2004/05/17(月) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2004/05/17
ストーリー 感想
 沖縄。5人の姉がいて、望まれずに豚小屋で生まれた大学生の正吉(しょうきち、小澤征悦)が、ミヨ(あめくみちこ)、暢子(上田真弓)、和歌子(早坂好恵)が切り盛りするなじみのスナックに行くと、トラックから逃げ出した豚が迷い込んできた。
 彼は墓参りで親戚に、故郷の真謝島にある父親の骨を拾って来いと言われたこともあって、豚の厄払いのために3人を連れてその島に行く。
 泊まった民宿のカメおばさん(吉田妙子)と4人が飲んだくれて女達が欲情してきたところ、カメがベランダから落ちて、正吉は彼女を診療所に担ぎ込む。
 留守中、4人で料理を作って食べたら、正吉を除いて豚のチム(肝)が原因と思われる食あたりで倒れてしまった。
 正吉は女達の看病をするうち、彼女達の昔の男との身の上話を聞かされる。
 正吉は診療所の医師(岸部一徳)から、父は共同墓地の崖下で風葬にされ、海で死んだ者は12年間墓に入れないので、今でもそこに骨があることを聞く。
 彼は父の骨を見つけるがそのままにしておくことに決め、手製の小さなウタキを作る。
 みんなの怪我や病気も治って女達も今日にも帰ると言い出し、正吉は自分の作ったウタキでよければ、神様になった父がみんなを救ってくれると言って女達を連れて行く
 映画の出来以前の問題なんだけど、崔洋一による映像は相変わらずアップとカット割が少なく、そんな映像では誰がしゃべってるのかも判りにくいこともあるのに、台詞(しかも方言)で「誰それがどうした」とストーリーに関わることを言ったりするので、何がなんだか解らなくなってくる。
 解りやすくするのなら、台詞を言っている人をカットを割ってアップにして、言われている人がその場にいなくてもフラッシュバックで挟み込むとか、いくらでも方法があるのに。
 実際にローカルな用語が何の説明もなく発せられたりするので、彼は不親切なことを承知で、解り易さよりも映画のスタイルを重視したのだろうけど、正直「何とかならんかなぁ?」と思う。
 結局、登場人物達が過去を振り切るという、心情がしっかり描かれなければならないような話なのに、彼らの気持ちに迫ることが出来ず、「何とかならなかったのかなぁ?この映画。」となってしまった。
突貫小僧 監督:小津安二郎 1929 日、白黒 1:1.33 無声 2004/05/16(日) VHS(NHK-BS2) お笑い系 ★★ 2004/05/16
ストーリー 感想
 かくれんぼをしていた子供達の1人(青木富夫)を、人さらい(斎藤達雄)が言葉たくみに連れ出し、途中警官に怪しまれながらも、いたずらをする子供をものを買ってやったりして、親分(坂本武)のところに連れて行く。
 しかし、そこでも子供は親分相手にいたずらし放題で、手に負えなくなった親分は、ひとさらいに子供を戻して来いと言う。
 人さらいはもとの場所に戻すが、他の子供達も彼にものを買ってとせがむのだった…。
 オリジナルは1031m=3383ft⇒3383秒=56分ぐらいで、放映されたのは現存する14分の短縮版。
 警官を笑いのアクセントに使うのはチャップリンの影響なのかもしれないが、アメリカのサイレント喜劇と比べると、ギャグが小さくて見劣りする。
 青木富夫は、何も考えてない演技をしてない感じがいい。
鑓の権三 監督:篠田正浩 1986 日、カラー 1:1.85 2004/05/15(土) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★☆ 2004/05/16
ストーリー 感想
 18世紀の江戸時代、権三(郷ひろみ)は鑓の使い手で、茶道の腕にも長け、容姿も良く女たちの羨望の的のだった。
 彼は伴之丞(火野正平)の妹お雪(田中美佐子)と結婚することになっていて、お雪の乳母(加藤治子)の助けを借りて2人は密会もしていたが、彼は伴之丞に結婚の許しを得ることは簡単ではないと先延ばしにしていた。
 伴之丞は、茶道の師匠である市之進(津村隆)が江戸勤めで留守なのを狙って、妻おさゐ(岩下志麻)に手紙を出すなどして迫っていた。
 江戸屋敷にいる殿に待望の世継ができたとの知らせが入り、国元でのお祝いの茶の湯を、市之進の家に伝わる茶道の極意「真の台子(しんのだいす)」に従って取仕切る役目を、代わりとして弟子の権三と伴之丞が争うことになる。
 伴之丞は、権三を出し抜いて出世しようと狙うが、お雪から権三と結婚を約束したと聞き、権三はふさわしくない奴だと猛反対し、一方の権三は遊郭で女郎を買っていたりした。
 権三に真の台子の巻物を見せて欲しいと頼まれたおさゐは、娘のお菊(水島かおり)の婿に権三をと思いつつ、自らも密かに権三のことを想っていたので、娘のお菊の婿になれば、一子相伝の真の台子を今晩見せてもいいと言い、権三はその申し出を承知する。
 しかし、権三が去った後、お雪の乳母がおさゐのところに来て、権三は既にお雪と枕を共にしたのに、仲人が決まらず結婚話が進まないので、仲人になって欲しいと言う。
 真の台子の秘密を守るために真夜中におさゐは権三を屋敷に招き入れ、真の台子を見せる。
 しかし、彼女はついに耐え切れず、権三をののしって彼が締めていたお雪からもらった帯をはずして庭に投げ捨て、自分の帯を解いてそれを締めろと言い出す。
 権三はそれを拒んでやはり庭に投げ捨てると、そこに真の台子を狙って忍び込んだ伴之丞が2本の帯を拾い、不義密通の証拠を得たといって逃げ去った。
 権三は自害しようとするが、おさゐは夫の名誉回復のために、彼に討たれて欲しいと権三に頼み、2人は屋敷を後にする。
 江戸から戻った市之進は、お菊の弟の虎次郎を残して、お菊と妹のお捨て(浅川奈月)をおさゐの家財道具とともにおさゐの実の父の岩本忠太兵衛(大滝秀治)のところに送り返す。
 忠太兵衛の息子の甚平(河原崎長一郎)は、逃走中の伴之丞とお雪を追い詰める。
 甚平からの知らせを聞いた忠太兵衛が伴之丞を討ちに行こうとするところに、市之進が来て彼を気遣って引き留め、そこに甚平が伴之丞の首を持って帰る。
 市之進は殿からお閑をもらったので、虎次郎は茶道家の弟子に出し、甚平と共に権三とおさゐを討ちに出かける。
 権三とおさゐは京に逃げ、市之進に討たれることを考えていた権三に対し、おさゐは権三に対する想いををぶつけ逃げ延びることを言い出し、宿で2人は抱き合う。
 しかし、大坂に逃げようとした2人は追ってきた甚平を見かけ、引き返して市之進と相対して斬られる。
 原作は近松門左衛門の世話浄瑠璃「鑓の権三重帷子」。
 溝口健二の『近松物語』のような、不義の疑いをかけられた2人の逃避行もの、というのは表向きのストーリーで、相変わらず武士のしきたりに縛られながらも、天下泰平の江戸時代で、もはや武術よりも茶道などの方が出世につながるような空疎な武士の社会で、博打や不義で身を崩した者、崩しかけようよしている人々を描いた映画で、『鑓の権三』のタイトルには役に立たないものの皮肉が込められている。
 宮川一郎カメラマンによる映像も美しく、良く出来ているとは思うのだが、どうも映画としてわかりにくいし、なんか観ていても入り込めないようなものになっている。
 それは、まず展開が飛んでいてちょっと説明を追加すればいいのにとか、ややこしい内容を短時間に台詞だけで表現してたりと、ストーリーがわかりやすく提示されていないから。
 それから、郷ひろみは目張りをバッチリ入れたいかにも主役といった外見なのに、そんな彼も含めて理性の欠いた登場人物だらけ(それが狙いなんだからしょうがないんだけど、だったら権三はもっと抑えたキャラにすべきだったんじゃないの?)で、感情移入する対象がいないから。
 それに、クライマックスの殺陣もなんかチグハグしてるし。
 篠田正浩監督作品は、相変わらず武満徹の音楽が、映画の雰囲気を決める最大の要素になっているのが、なんだかなぁ…。
頭山 監督:山村浩二 2002 日、カラー 1:1.33 2004/05/13(木) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★★☆ 2004/05/14
ストーリー 感想
 何でもかんでも拾ってくるケチな男。ある日拾ってきたさくらんぼを食べて、種ももったいないので食べてしまった。
 すると、禿げた頭から芽が伸びてきて、最初のうちは切ってたのだが、そのうち気にする時間ももったいなくなって放って置いたら、成長して木になった。
 やがて、冬が過ぎて春が来て、サラリーマンたちは男の頭の上で花見を始めてやり放題。
 頭に来た男は桜を抜いてしまうと、今度は抜いた跡の穴に水が溜まって、そこで人々が泳ぎだす。
 男は何もかも嫌になって、自分の頭の水の中に身を投げて死んだとさ…。
 上映時間10分の、2002年度アカデミー短編アニメ賞ノミネート作品。
 ホラ話のようなナンセンスな落語を実際に映像にしてしまっては、ある意味おもしろさが台無しになるものだが、出来上がった作品はそれでも面白さを損なってないように感じる。
 短編アニメの場合、アカデミー賞の受賞はアニメの技術に対する評価だろうが、技術的なことはよくわからない。
アレクサンドル・ネフスキー 監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン 1938 ソ連、白黒 1:1.33 2004/05/12(水) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★★☆ 2004/05/14
ストーリー 感想
 13世紀のロシア、モンゴルの支配を退けた後、ゲルマン民族が攻め込んできて、アレクサンドル・ネフスキー公爵はかつて彼らと戦っていたが、今では魚獲りをしている身だった。
 ノブドロゴの町にも敵が迫り、権力者は分割統治に応じようとするが、市民たちはアレクサンドル公爵を呼んで戦おうとする。
 ブスコフの町は敵の手に落ちて子供は焼き殺された。
 ペレヤスラブリにいたアレクサンドルはノブドロゴからの使者の要請で、農民たちと共にゲルマン人を討つことにし、大軍を引き連れてノブドロゴに入る。
 ノブドロゴの人々は次々と志願し、そんな中でブスライとガブリロの二人の友人同士の男は同時にオリガに求婚し、彼女は勇敢な方と結婚すると答えた。
 1242年4月5日、凍りついたチュドスコエ湖で敵の大軍を迎え撃ち、激しい戦いの末これを撃破し、退却した兵士たちは割れた氷の下に沈んでいった。
 アレクサンドルは兵を引き連れて捕虜や戦死者たちと共にブスコフに凱旋し、祖国のために戦わないロシア人は自分の死後であっても罰せられると演説し、指導者のみを処刑して捕虜たちを釈放する。
 ブスライは、戦場で勇敢だったのは一番は司令官の娘ワシリサで二番目がガブリロだと言い、オリガはガブリロと、自分はワシリサと結婚することにした。
 見どころはクライマックスの戦争シーン。
 13世紀の戦いは、片手に盾、もう片方は大きな剣か斧を持って、斬り合うというより殴りあうといった感じで、大勢のエキストラによる、そんな見た目に重い映像がこの映画では延々と続くのは、迫力もあるがハッキリ言ってかなり疲れる。
 でも、エイゼンシュテインって、サイレントの方が映像の力がこもっているような気がする。
 台詞があると、そっちに気を取られるからか?
 第2次世界大戦直前の製作なので、ゲルマン民族(史実ではスウェーデン人らしい)の侵略をナチスドイツ脅威に見立てていて、実際にナチが攻めてきたら、ソ連は一致団結して戦おうというメッセージが込められていると思われ、実際にナチスの鳥の紋章のようなものが敵の盾に描かれていたりする。
ファンダンゴ 監督:ケヴィン・レイノルズ 1985 米、カラー 1:1.85(放映版1:1.33) 2004/05/11(火) NTV 感覚系、ドラマ系 ★★★ 2004/05/14
ストーリー 感想
 1971年5月15日テキサス州オースチン、大学の卒業と翌日のワグナーの結婚を祝う学生寮のパーティで、ワグナーとガードナー(ケヴィン・コスナー)にベトナムへの召集礼状が来たことをきっかけに、彼らを含むグルーバーズの5人は勢いで当てのないドライブに出て、メキシコ国境に埋めたクルーバーズ結成の記念の「ドム」のあるところに行くことにする。
 しかし、すぐにガス欠になり、通りがかった列車に牽引してもらおうとしたが失敗し、ガソリンスタンドまで押して、仲良くなった葬儀屋の娘の女の子たちと夜中に花火で撃ち合う様子がベトナムでの戦闘に見えた。
 車が直って、閑古鳥の鳴いているパラシュート降下1日体験コースに、今回の子供っぽい行動をとがめるフィルを無理矢理入門させ、パラシュートに不備があるも、なんとか予備で助かる。
 その後、目的地に着いて、シャンパンのドム・ペリニヨンを掘り起こし、若い時代の終わりに乾杯する。
 しかし突然、結婚を放り出してきたワグナーがそのことを後悔し、仲間たちは式の準備をし、パラシュート学校のパイロットもセスナで花嫁を連れてきて式を挙げる。
 式は終わり、ガードナーはかつて恋人だったワグナーの花嫁を影で見送り、他のメンバーたちも青春が終わったことを感じるながら別れるだった…。
 まさに『ファンダンゴ』(バカ騒ぎ)といった感じの、どちらかといえばヒネリのないたわいもない青春ものなのだが、冒頭テキサスの荒野を走る車に始まって、列車、花火、スカイダイビング、滑走路の人文字、低空飛行するセスナなど、疾走感たっぷりの映像や、荒野の真ん中でドムで乾杯するところや、ラストの別れのなどの感傷的シーンも満載で、映画ならではの面白さにあふれている。
ソロモンとシバの女王 監督:キング・ヴィダー 1959 米、カラー 1:2.35 2004/05/09(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/05/09
ストーリー 感想
 紀元前1000年頃、イスラエルとエジプトは両国の国境で戦争を続けていて、そこではイスラエルを統一したダビデ王の長男アドニア王子(ジョージ・サンダース)と、その弟で王位は兄が継ぐものと思っているソロモン(ユル・ブリナー)が戦っていた。
 そこに王の危篤の報が届き、ソロモンはすぐにイスラエルに戻ったが、アドニアは捕虜の中にシバ人を見つけ、退却するシバの女王マグダ(ジーナ・ロロブリジーダ)を追って、エジプトとの同盟の破棄を要請するが、彼女はそれを拒否する。
 アドニアもエルサレムに戻り、ダビデは神のお告げに従い王位をソロモンに譲ると発表すると、アドニアは反感をむき出しにするが、ソロモンはそんな兄に軍の責任者として国に仕えて欲しいと頼む。
 ソロモンはエホバの神殿を建てて国民の信頼を集めつつ、戦争のない最中でもイスラエルは軍備を増強していた。
 エジプトと同盟国は直ちにイスラエルに攻めようと話し合う中、マグダは自分がエルサレムを訪問してソロモンの弱点を探ることを提案する。
 ソロモンとマグダは国を背負う身でありながら公然と愛し合うようになり、イスラエルの部族たちの心は王から離れていく。
 この機会に、アドニアはソロモンに刺客を送るが暗殺に失敗して国外に追放される。
 マグダは、シバの神の儀式を行うために帰国する代わりにエルサレムで行ないたいと言い出し、ソロモンも誘われるように儀式に出席する。
 ダビデの養女アビシャグは、「ソロモンの代わりに自分に罰を」と神に祈り、落雷でシバの神の像とエホバの神殿が崩れ落ち、彼女は下敷きになって死ぬ。
 マグダは使命を果たしたのにエルサレムを離れず、エジプト軍を率いたアドニアは、ソロモンの打倒を目指してイスラエルに侵攻する。
 迎え撃つソロモンに続くイスラエル兵は少なく、対戦してほとんど全滅になり、アドニアは王になることを宣言するためにわずかの兵を連れてエルサレムを目指し、残りのエジプト軍に残党狩りをさせる。
 ソロモン軍が敗れたとの知らせを聞いたマグダは、神殿に行ってエホバの神にソロモンの無事を祈る。
 その願いが届いて、ソロモンは盾の反射で敵の目をくらませる名案を思いつき、エジプト軍は谷底へと落ちて全滅する。
 エルサレムに着いたアドニアは王になったことを宣言し、民衆たちをあおって神殿から出てきたマグダに向かって投石させる。
 そこにソロモンたちがエジプト軍旗を持ってエルサレムに帰って来て、ソロモンはアドニアと一騎打ちをして倒し、傷ついたマグダを神殿に運ぶ。
 すると、奇跡が起こってマグダの傷は治り、彼女は神に約束したとおり、おなかの中のソロモンとの子供と共にエホバの神の信仰を自分の国に広めるために、エルサレムを去って行くのだった…。
 映画産業絶頂期らしいコスチュームプレイのハリウッド大作。
 良く言えば、そんな映画らしいゴージャスな物語を、ジーナ・ロロブリジーダのようなゴージャス俳優を使って、戦闘シーンも迫力で見せる、典型的な映画。
 最近で言えば、『ロード・オブ・ザ・リング』がいいという人は、こういうのもいいと思うのかな?
 でも、悪く言えば登場人物の心理描写は全然深くなくて、全体的にストーリーをなぞっているだけの印象なのも、この手の映画の典型。
 なにしろユル・ブリナーなんて、最初から最後まで眉毛釣り上げてこわばった表情で固まっているようにしか見えないんだもんなぁ。
 シバの儀式が、女王が半裸になって踊って、他の人たちが男と女が1対1の組み合わせで乱交みたいになり、マグダもソロモンを誘惑したりして、ソロモンの信仰心が崩れそうになる一番の見せ場だけど、今だったらもっと過激に面白く出来るかな?
 エジプト軍の戦車が次々谷底に落ちていくシーンは、ミニチュアの崖に、土ぼこりと一緒に数多くの小さい人と馬を落として、かなり出来が良くて迫力もある。
寒い国から帰ったスパイ 監督:マーティン・リット 1965 英、白黒 1:1.33 2004/05/08(土) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/05/09
ストーリー 感想
 西ベルリンの国境の検問所で、イギリス諜報部のリーマス(リチャード・バートン)は東側から帰る諜報員リーメックの帰還を迎えようと待っているところ、正体がばれて射殺されるのを目の当たりにする。
 イギリスに帰ったリーマスは、現場を離れることを勧める上司に、ドイツ(=寒い国)に残って同僚たちを殺した東ドイツの諜報員で元ナチスのムント(ピーター・ヴァン・アイク)との対決を希望する。
 しかし失職した彼はイギリスで図書館の仕事に就き、そこの同僚でコミュニストのナン(クレア・ブルーム)と愛し合うが、飲んだくれる生活で、商店の主人を殴って服役する。
 しかしこれらの行動は、彼が東側に寝返りそうな元スパイになりすまし、ムントがコンタクトしてくるのを待って彼に接近し、ムントの副官でムントに反感を抱いているユダヤ人のフィードラー(オスカー・ウェルナー)に、ムントが有罪になるような偽情報を流すことが目的だった。
 出所後、さっそく出所者支援団体「リンク」が接近してきて、彼に取材の仕事を持ちかける。
 彼はオランダに行ってムントの組織の人間と接触し、イギリスの諜報員への送金係だったふりをして尋問を受ける。
 そのころ、イギリスの新聞にリーマスが行方不明になったとの記事が載り、彼に捜査の手が伸びるのを恐れてリーマスを東ドイツへ移す。
 そこにフィードラーが現れてリーマスを尋問し、彼はナンのことについても話すが、そのナンは休暇をとって東ドイツの共産党との交流のために、東ドイツへ行こうとしてた。
 リーマスの証言を聞いたフィードラーは、かつてムントがイギリスで捕まったときにイギリスの二重スパイになり、リーマスと共有していた銀行口座経由で金を受け取ったと思い込み、ムントを逮捕させて査問会にかける。
 そこで、ムント側の弁護人はリーマスの企みを見抜いて主張し、その証人としてナンを呼び出し、リーマスが首になった後も、イギリス諜報員のスマイリーと関係があったことを証言する。
 リーマスはナンをかばうために総てを白状し、彼とナンとフィードラーは逮捕される。
 しかし、ムントはリーマスとナンを牢屋から逃がし、2人に脱出の手はずと車を提供し、実はムントは本当にイギリスの二重スパイで、彼に疑いを抱いたフィードラーたちを抹殺して、ムントの疑いを晴らすことが本当の作戦の目的だったことを知らされる。
 ムントの指示を受けたベルリンの壁の警備員が、2人に壁を越える方法を教えるが、彼はナンだけを射殺、壁の向こうで迎えていたスマイリーを見たリーマスは、スパイでいることに嫌気がさして東ベルリン側に戻っていき、警備員はやむなく彼を射殺するのだった…。
 『エスピオナージ』(1973)タイプの、虚々実々のスパイ戦を描いた映画。
 アクションシーンがないだけではなく、ストーリー的にも映像的にも大きな盛り上がりはなく、全体的にクールで重い作りになっているのだが、ちょっと地味すぎる印象を受けた。
 それから、リーマスのキャラクターも、そんな映画の雰囲気にふさわしく、陰の存在であるスパイとしての務めをきっちり果たそうとするものなのだが、ラストで突然、非人間的に利用されるスパイの立場に幻滅するという結末は、映画の雰囲気とは合わないのがマイナス。
クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡 監督:原恵一/演出:水島努/脚本:原恵一/絵コンテ:原恵一 1997 日(東宝)、カラー 1:1.85 2004/05/05(火) VHS(WOWOW) お笑い系、感覚系 ★★★ 2004/05/06
ストーリー 感想
 珠黄泉族の者たちが、世界制服の野望の鍵になる球を日本に持ってきたヘクソンという男を成田空港で迎えたとき、珠由良族のオカマ3人が球を横取りして逃げる。
 そのころ、発掘されたばかりの、下腹部に2つの穴があいている埴輪が何者かに盗まれた。
 翌朝、しんちゃんが散歩していると、3人のオカマの1人であるローズが川原で寝ているのを見つけ、そばに落ちていた球をしんちゃんが持ち帰ってしまい、その球をひまわりが知らない間に飲み込んでしまう。
 その夜、珠由良族の3人が野原家を訪れ、ひまわりが球を飲み込んだことを知って、一家を新宿2丁目のアジトに連れて行き、太古の昔に両種族が魔人ジャークを埴輪と2個の球と珠黄泉族の持つマンボーに閉じ込め、珠黄泉族がそれらを全部揃えてジャークを復活させて世界制服をたくらんでいることを話す。
 そこを珠黄泉族一味が襲って、みんなが逃げた先の健康ランドで、成田空港の騒動を捜査していた千葉県警の刑事、東松山よねも珠由良族側に合流し、もう1個の球がある青森県「あ、それ山」の珠由良族本部に車で逃げる。
 しかし、人の心が読めるヘクソンが彼らを追ってきて、ひまわりともう1個の球を奪って行き、しんちゃんたちは後を追って東京の臨海副都心に行き、ひまわりを救出して、球も奪い返すのだった…。
 シリーズ5作目。
 監督が前作までの本郷みつるから、前作まで演出を担当していた原恵一に交代(といっても、監督と演出ってどう違うのか?)
 ギャグを繰り出す間の的確さ、おかまネタや下ネタなどのしょうもないギャグ、摩天楼アクション、キャラが立ちまくっている登場人物たち、さりげなく描かれる家族愛、子供の自由な発想に対する尊重、等々、前作までの要素を今回も徹底して取り込み、しかも面白く仕上がっている作品が連発されているシリーズなので、ここまで来ると決してまぐれなどではない。
 欠点といえば、クライマックスでちょっともたつくぐらい。
 今回の特別ゲストは、原作者の臼井儀人が本人役で出演。
 青森が舞台という設定に対して、珠由良の母のかなり津軽弁っぽい台詞や、特急はつかりや、家の壁に貼ってある「金鳥」などのホーローの広告など、なんかやたら細かい。
仔犬ダンの物語 監督:澤井信一郎 2002 日(東映)、カラー 1:1.85 2004/05/05(火) TV東京 ドラマ系 ★★★ 2004/05/06
ストーリー 感想
 小学生の真生(嗣永桃子)は、両親の離婚に反対して、群馬のおじいさんの家に住むことにしたが、転校先の生徒たちとはなじもうとしなかった。
 彼女がコンビニにいたとき、同じ学校の千香(清水佐紀)が、団地で飼えないので隠れて飼っている目の見えない仔犬ダンに飲ませる牛乳を万引きしているのを見かけ声をかける。
 真生も家で伯父夫婦に世話になっているので飼うことも出来ず、2人で新しい飼い主を探して預けるが、千香とダンはお互いに必要とし合っていることに気付き、再び引き取って団地の自治会長(柄本明)に飼うことを直談判する。
 自治会長も団地の大人たちも、2人の犬を思う気持ちに打たれて、犬を飼えることになった。
 真生は、兄と住んでいる母(原田美枝子)と違って、富山で1人暮らしをしている父(榎木孝明)が自分を必要としていると思い、短い間に出来た友人たちと別れを惜しみつつ、富山へ行くのだった…。
 公開当時、「子役の演技が学芸会」と散々の評価だった一方、ごく一部で傑作と言われていた作品。
 で、観てみると、演出はオーソドックスで乱れることなくしっかりしているし、それよりも人情話としていい話で、映画の出来がどうかを置いといて、自然に心を打つような映画になっている。
 子供に見せるものとしても、内容的に申し分ない。
 私としては、「評価」なんて言葉を振りかざすより、どう受け止めたかの方を重視するので、この映画を支持する側の方。
 でも、これだけだと圧倒的に不評だったこの映画を持ち上げるには説得力がないので、後で気の利いたコメントとを思いついたら追加します。
ミニモニ。じゃ ムービー お菓子な大冒険! 監督:ヒグチしんじ 2002 日(東映)、カラー 1:1.85 2004/05/05(水) TV東京 感覚系 ★★☆ 2004/05/06
ストーリー 感想
 ミニモニ。の4人が切り盛りするミニモニ。カフェの開店2周年パーティの前日にケーキ作りが終わったその夜、ケーキが嫌いな女王のナカジェリーヌ29世がやって来て、魔術でケーキを台無しにしてしまい、お城の形のケーキの中に住み込む。
 警報が鳴ってやって来たミニモニ。の4人と、カフェのケーキの秘密を知ろうと忍び込んだ高校生の高橋も魔法で小さくさせられ、5人は魔法を解くために入って女王と対決し、実はケーキ好きだったことを女王に思い出させて、魔法が解ける。
 脱出した5人と共について来た女王の家来4匹も人間の子供の姿に戻り、店長の矢口は子供たちの面倒を見るためにカフェを去り、代わりに高橋がミニモニ。に加わるのだった…。
 ミニモニ。と高橋愛の5人と、彼女たちの出演カットの小道具のみが実写で、それ以外の背景などは、ブルーバック(実際には緑)でCGアニメを合成。
 しかも、彼女たちの出演シーンは冒頭とラストのみで、その間の彼女たちが縮小されている映画の大部分の時間は、アニメキャラが代わって演じる100%CGアニメになる。
 子供向け映画に違いないのだが、ストーリーは単純で、映像的にも見た目が楽しいので、誰にでも楽しめる映画になっている。
 でも、結局お菓子は元に戻らなかったみたいだけど、それってストーリー上問題ないの?
十月 監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン、グリゴーリー・アレクサンドロフ 1928 ソ連、白黒 1:1.33 サイレント 2004/05/04(火) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★★★ 2004/05/06
ストーリー 感想
 1917年、二月革命で社会主義革命が初勝利を納める。
 臨時政府は、引き続き第1次世界大戦の連合国の一員としてドイツと戦い続け、庶民は飢えに苦しみ続けていたところ、4月3日にレーニンはフィンランドで臨時政府の打倒と社会主義革命を訴える。
 7月、革命の機運は下からも盛り上がるが、党は蜂起は時期尚早と抑える。
 しかし、革命派と反革命派の間で大規模な衝突が起こり、革命派は敗れた。
 7月6日、ケレンスキー率いる臨時政府はレーニン逮捕を命じ、彼は地下に潜伏する。
 10月、ボルシェビキの武装蜂起についての話し合いで、トロツキーは時期尚早と反対するが、レーニンの蜂起の主張が採択される。
 10月24日、ついに革命軍が都市に集結し、民衆もこれを支持してケレンスキーは逃亡。
 ソヴィエト大会の選挙でボルシェビキは社会革命党とメンシェビキを破り、革命軍は臨時政府を転覆して、露暦10月25日(西暦11月8日)レーニンによる革命は実現された…。
 1917年のロシア革命10周年記念映画として、10月革命前後の出来事を再現した映画を、さらに革命50周年の際にG・アレクサンドロフが音声を追加したもの。
 見どころは前半の市街地での衝突シーンで、すさまじいばかりのモンタージュで圧倒し、特に跳ね橋に馬が宙吊りになったりするところは圧巻。
 ただし、後半のクライマックスのスペクタクルシーンは、顔のアップでつなげるだけのようなシーンばかりで、正直がっかりした。
全線 監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン、グリゴーリー・アレクサンドロフ 1929 ソ連、白黒 1:1.33 サイレント 2004/05/04(火) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★★★ 2004/05/06
ストーリー 感想
 ソ連の農家は貧富の差が激しく、小農は兄弟同士で土地や家畜を分け合うと、家畜を分け与えられなかった農家は土地を耕すこともできず、ますます苦しくなっていった。
 そこで共産党員は、それぞれが小さな土地を所有し合うのをやめ、コルホーズを結成して農地や農具を共有することを呼びかけたが、賛同者は少なかった。
 農民たちは、干ばつが起こると相変わらずキリスト教の教会に雨乞いを頼んだりしていたが、そんなもので雨が降るわけもなく、コルホーズが所有する牛乳分離機の効果を目の当たりにして、次第にコルホーズへの参加者は増えていった。
 しかし、ちょっと上手くいきだすと、人々はさっさと金を分けてしまおうと色めき立ったが、お金を分けずに種牛を飼うために使おうという女マルファの呼びかけに従う。
 そしてそのコルホーズは、さらに大規模に機械化されたソフホーズから最初の共有の種牛を共有する。
 コルホーズは、都会の企業の労働者の休日勤労の力も借りて牛舎を建て、さらに大きな農機も購入していく。
 それでも年寄りたちは、自分の体を頼って機械購入には反対し、鎌で草刈りをしていたが、目の前で草刈り機が一瞬で草を刈り取っていくのを見て、機械の購入に賛同する。
 しかし、刈り取り機が収穫に間に合わずに困って、マルファは都会に行って直談判し、官僚たちが奮起して書類を作成して手に入ることになった。
 その頃、コルホーズの成功を妬んだ富農たちは呪いをかけ、種牛が死んでしまった。
 しかし、やって来たトラクターは威力をみせつけ、細かく農地を区切っていた柵をなぎ倒し、工場で大量生産された農機がソ連の農地を力強く進んで行くのだった…。
 公開時の邦題は『古きものと新しきもの 全線』。
 いかにもエイゼンシュテインらしい、アップを多用した構図とモンタージュによるプロパガンダ映画。
 映像的にはもちろんいいんだけど、でも他の彼の作品と比べても似たようなものなので、観て良かったという気持ちには今さらどうしてもなれないのが困りもの。
クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険 監督:本郷みつる/演出:原恵一/脚本:本郷みつる&原恵一/絵コンテ:本郷みつる&原恵一&湯浅政明 1996 日(東宝)、カラー 1:1.85 2004/05/04(火) VHS(WOWOW) お笑い系、感覚系 ★★★ 2004/05/06
ストーリー 感想
 しんちゃんの幼稚園が、群馬のテーマパーク「ヘンダーランド」に遠足に行く。
 しんちゃんが1人みんなとはぐれてしまい、未完成のサーカスアトラクションに入ると、そこにあった人形のお姫様が涙を流したのを見た。
 そこでオカマ魔女のマカオとジョマの手下たちと、人形のトッペマ・マペットの戦いを見たしんちゃんは、魔女たちはしんちゃんが見たメモリ・ミモリ姫の世界を征服して姫を閉じ込め、この世を征服するための秘密基地としてヘンダーランドを作ったことを知るのだった。
 しんちゃんはトッペマから、魔法を信じる人間の心を必要とする魔法のトランプを使って、魔女たちを倒すことを頼まれる。
 そのトランプを狙って魔女の手下のス・ノーマンが春日部に親しげに現れ、みんなは彼をいい人だと思うが、しんちゃんだけは悪者だと見破った。
 ひろしとみさえがス・ノーマンの招待を受けてしんちゃんを連れてヘンダーランドに行き春日部に帰ってくるが、両親は人形にすりかわっていた。
 しんちゃんは1人でヘンダーランドに両親の救出に向かい、トッペマと魔法のトランプの力を借りて救出に成功し、魔女たちも倒すのだった…。
 シリーズ4作目。
 冒頭、幼稚園で先生がおとぎ話を聞かせた後で、園児たちは「『愛し合う2人はいつまでも仲良く暮らしました、めでたしめでたし。』なんてことあるわけがない。リアリティがない。」などと、可愛げのないことを口々に言うのだが、今回の作品はそんな今どきの考え方の子供に対して「夢を信じよう」というテーマ。
 ギャグはますます洗練されてきて、しかも「魔法」という設定をいいことに、やりたい放題といった感じで、破壊力もアップ。
 おかまネタやチンチンなどの下ネタといった、わかりやすいとはいえちょっとリスクがあるネタもさらりとやってのける。
 さらに、かつての東映動画をほうふつとさせるような摩天楼アクションにも手を出してきた。
 今回の特別ゲストは、雛形あきこが本人役で出演して、エンドクレジットの歌も歌っている。
クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望 監督:本郷みつる/演出:原恵一/脚本:本郷みつる&原恵一/絵コンテ:本郷みつる 1995 日(東宝)、カラー 1:1.85 2004/05/03(月) VHS(WOWOW) お笑い系、感覚系 ★★★ 2004/05/04
ストーリー 感想
 タイムパトロールのリング隊員は、戦国時代に異常を発見するが、そこからの攻撃を受け、現在の野原家の地中に不時着する。
 彼女はマイクロマシンを地上に送り、シロに取り付いてしゃべらせることで野原家の人たちとコンタクトを取り、代わりに戦国時代に行って歴史が変えられることから阻止することを依頼する。
 戦国時代の春日部城の焼け跡に3人と1匹が着いて早々、忍者軍団に襲われたところ、城主春日家の生き残りの吹雪丸に助けられる。
 戦国時代の異常の原因は春日家を滅ぼした雲黒斎らしいということがわかり、春日家古来の言い伝えで、3人と1匹の勇者が春日家存亡の危機を救うことになっていた。
 吹雪丸としんちゃんは雲黒城に乗り込んで雲黒斎と対峙し、その正体が30世紀から来て過去の歴史に自分の名前を残そうとする、歴史マニアのヒエール・ジョコマンだということを知る。
 しんちゃんは雲黒斎との一騎打ちで敵を天守閣から突き落とし、歴史は元に戻ったことで任務は終了し、一家全員現在に戻ってくる。
 しかし、そこはすっかり様子が変わっていて、その原因は生き延びたヒエールが今度は現在に来て歴史を変えようとしたためだった。
 野原一家は再びリングの助けも借りてヒエールと巨大ロボット対決をし、しんちゃんの活躍で敵を倒し、現在は元の様子に戻るのだった…。
 シリーズ3作目。
 前作がジャンルものとして意外に本格的だったことのさらに上をいって、タイムトラベルものとしてSFっぽさをかなり強調している。
 そのために、わざわざひろしを中学時代にSFクラブに所属していたという設定にして、タイムパラドックスに直面したりなどのSF的に込み入った展開になると、彼にコメントを言わせてSF的に深みを持たせるようにしている。
 それから、クライマックスでしんちゃんの感性がそのまま物質化することを利用した巨大ロボットで戦うという設定のように、子供の発想を思わせるような飛躍した展開が多いが、それは大人が問題視するしんちゃんの言葉遣いが、子供の発想の自由なことへの尊重と、それに対する大人の寛容さをうねがすという、しんちゃんシリーズのベースのメッセージとも合致していて良いと思った。
 チビッコたちも面白く観れたのではないだろうか?
 ギャグも前2作よりぎこちなさが無くなって、いい意味でくだらなさが増してよろしい。
ある殺し屋 監督:森一生 1967 日(大映)、カラー 1:2.35 2004/05/02(日) VHS(NHK-BS2) 感覚系、ドラマ系 ★★★ 2004/05/03
ストーリー 感想
 殺し屋の塩沢(市川雷蔵)は、仕事のために港のそばの空き地に囲まれたぼろアパートを借り、そこに圭子(野川由美子)が訪ねてくる。
 圭子は、かつて無銭飲食をして体で払おうとしたところ、居合わせた塩沢が代わって支払って以来、金目当てで彼に付きまとって彼が経営する小料理屋で女中になって居座り続けたのだった。
 塩沢のアパートには前田(成田三樹夫)も訪ねて来たが、彼は圭子とつながっていて、塩沢と組んだ3人での仕事の後に、2人で塩沢を始末する手はずになっていた。
 塩沢が前田と知り合ったきっかけは、前田が組員の木村組から、対立する大和田組の親分(松下達夫)を殺す仕事を依頼されたことだった。
 塩沢は、常に大和田を守っていたボディガードたちの注意をそらし、音も立てずに大和田を殺すことに成功する。
 前田は、塩沢の腕前に惚れ込み、塩沢に断られながらも弟子入りを志願し続け、そのために女中の圭子に接近する。
 圭子は前田から塩沢の裏の仕事のことを知り、前田と2人で塩沢から金を巻き上げることを画策する。
 そして前田は、大和田組が扱っている麻薬を横取りする話を、木村親分にも話さず塩沢に持ちかけ、塩沢はその話に乗り、圭子も仲間に引き入れて、取引現場の港のそばにアパートを借りたのだった。
 3人は麻薬を奪い取り、アパートに戻ってくると、前田は塩沢から用心のためにと渡された銃で塩沢を撃とうとするが、2人に心を許していなかった塩沢は、前田に弾丸を抜いた銃を渡していたのだった。
 塩沢は2人に落とし前をつけさせずに、3人で麻薬を山分けして別れようとすると、前田の裏切りをかぎつけた木村親分(小池朝雄)と組員たちが取り囲み、麻薬を要求し、塩沢には正体を警察にバラしたという。
 塩沢と前田は、格闘の末全員を倒し、塩沢は前田ときっぱり決別し、麻薬を置いて1人で去っていく。
 前田も圭子と手を切って手ぶらで1人で去り、圭子も残された麻薬に気付かずに去っていくのだった…。
 典型的なハードボイルド作品で、クールな殺し屋の雷蔵といい、宮川一夫の撮影によるクリアな映像といい、雷蔵が小さな武器でかすみ切りのように一瞬で相手を殺すシーンのカッティングの鮮やかさといい、そして数々の大映時代劇でコンビを組んだ主演&監督によるシャープでダイナミックなクライマックスの立ち回りといい、どこをとってもとにかくカッコイイ。
 増村保造&石松愛弘による脚本は、時間が前後するちょっと複雑な構成だが、登場人物も少なくてストーリーもシンプルなので問題なし。
 でも、主要登場人物4人を演じた俳優のうち、存命なのは野川由美子だけなのかぁ…。
クン・パオ!燃えよ鉄拳 監督:スティーブ・オーデカーク 2002 米(FOX)、カラー 1:2.35 2004/05/02(日) VHS(WOWOW) お笑い系 ★★ 2004/05/02
ストーリー 感想
 悪の武術家イテテ師(Master Pain)は、「選ばれし者」である、舌に顔のある赤ん坊を探し出し、家族もろとも殺そうとするが、赤ん坊は自らこれを撃退し、1人だけ生きて逃げおうせる。
 赤ん坊(スティーブ・オーデカーク)はネズミに育てられて成長し、親の敵を探す旅をしている。
 彼はベティに改名したイテテ師を見つけ出すが、カンフーで劣ることを自覚して鍛錬に励む。
 そして対決のとき、ベティの胴体にあるピラミッド型の急所を攻めると、ベティの背後にいた世界制服を狙う悪の軍団「フランス人」のピラミッド型のUFOが多数現れる。
 しかし、選ばれし者の舌がUFOを追い払い、ベティも倒すが、話はさらに『クン・パオ2!怒りの舌』へと続くのだった…。
 基本的に、ZAZの映画のようなくだらないナンセンスなお笑いネタは好きで、かなり良く出来たネタ満載で面白いと思うのだが、何故か不思議と笑えない。
 何が原因かといえば、役者の表情が抑え気味だったりするなど、凝ったネタをスマートに見せるという「知性」を前面に出している感じがすること。
 笑いというものは、役者が大げさなリアクションなどでバカになってみせたり、映画の展開も無駄に勢いがあるなど、すました「知性」よりもなりふり構わない「勢い」が感じられなければならないのではないだろうか?
 演出や編集などがちょっと違うだけで笑える映画になったかもしれないと思うと、お笑いって本当に難しい。

 監督&主演のスティーブ・オーデカークは『親指スター・ウォーズ』などを作った人で、彼がジミー・ウォング監督&出演"Tiger and Crane Fist"(1977 香港)の権利を買い取り、ブルーバックで新たに撮影したものをオリジナルに合成して、勝手に英語の台詞をアフレコして、全然別な話の映画にしてしまったもの。
 合成とは感じられないほどの一体感もさることながら、英語のアフレコとオリジナルの広東語の口の動きが合わないことを再現するために、オーデカークも英語でない口の動きをしたり、エンドクレジットでワザと作ったNGシーンを流したりと、芸が細かい。
 オリジナルの扱い方にも、香港映画に対する好意が感じられる。
クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝 監督:本郷みつる/演出:原恵一/脚本:本郷みつる&原恵一/絵コンテ:本郷みつる 1994 日(東宝)、カラー 1:1.85 2004/05/02(土) WOWOW お笑い系、感覚系 ★★☆ 2004/05/06
ストーリー 感想
 南の島のブリブリ王国の秘宝を狙うホワイトスネーク団は、鍵を握る王子を誘拐し、粘土板に描かれた少年の姿にそっくりのしんちゃんを狙って、商店会の福引の特賞に当選させ、野原一家をブリブリ王国への旅行に招待する。
 旅客機がブリブリ王国の上空に来たところでしんちゃんを奪おうとするが、一家はパラシュートでジャングルの真っ只中に脱出する。
 食べ物も無く困っていたところ、猿に古代遺跡へと導かれ、鉄道のある方角を教えられる。
 列車の中で出会った親衛隊のルル少佐から、しんのすけにソックリのスンノケシ王子の誘拐に関連してしんちゃんが狙われたことを知った。
 そこに、しんちゃんに発信機を仕掛けていたホワイトスネーク団が現れ、列車からしんちゃんを奪っていく。
 ブリブリマウンテン島にある秘宝が眠る宮殿の扉が開かれ、ホワイトスネーク団の首領アナコンダ伯爵が、壺から出てきて願いを1つ叶えるブリブリ魔人に世界制服を頼もうとするところ、横からしんちゃんが小宮悦子のサインを頼んでしまう。
 しかし、魔人の壺はもう1つあり、アナコンダ伯爵自身が魔人と化して、しんちゃんを追ってきた両親とルルもろとも全員を殺そうとするところ、悦ちゃんのサインを渡そうとする最初の魔人が対決する。
 王子の持つものと、しんちゃんがジャングルで猿からもらった2つの鍵で魔人を封印し、海に沈む宮殿から
 シリーズ2作目。
 今回は、お笑いよりも、宝探しや宮殿に仕掛けられた罠を突破すること、それに巨大宮殿の崩壊などといった、インディアナ・ジョーンズシリーズやハリーハウゼンのシンドバッドものや『天空の城ラピュタ』などをほうふつとさせる面白さの方が見どころで、チビッコたちにもウケたのではないだろうか。
 ただ、クライマックスなどで、ちょっと無駄な遊びが多すぎて展開が遅くなったりしたのが残念。
 特別ゲストで、小宮悦子が本人役で出演。
クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王 監督:本郷みつる/演出:原恵一/脚本:もとひら了/絵コンテ:原恵一 1993 日(東宝)、カラー 1:1.85 2004/05/01(土) WOWOW お笑い系 ★★ 2004/05/01
ストーリー 感想
 特撮ヒーロー番組「アクション仮面」の撮影中、謎の怪人が現れてアクション仮面の俳優を襲って、彼の力の源アクションストーンを奪って行き、俳優は足を負傷したため代役を立てて撮影を続ける。
 その回のテレビで観たしんちゃんは、アクション仮面が代役であることを見抜き、また怪人が一瞬映っていたのを目にする。
 夏休みに入り、しんちゃんとみさえが買い物に行ったとき、路地の奥に駄菓子屋を見つけて、そこでカード菓子「チョコビ」を買うと、中から黄金のアクション仮面のカードが出てきた。
 しかし、これはアクション仮面とその相棒の少女ミミ子役の俳優コンビが仕組んだもので、2人はその後もしんちゃん一家を密かに誘導し、彼らをアクション戦士としてパラレルワールドへ送り込む。
 その目的は、宇宙から来たハイグレ魔王に侵略されている別世界の地球を救うために、役になりすましていたが実は本物だったアクション仮面を別世界に連れ戻す手助けをしてもらうためだった。
 しんちゃんはアクション仮面を呼び戻すことに成功し、2人で力を合わせてハイグレ魔王を地球から追い払う…。
 毎年1本づつ公開されてきたクレしんシリーズの1作目。
 今と比べると、しんちゃんのボケにいちいちすましたような突っ込みを入れるパターンが鬱陶しい。
 ボケっぱなしとか、ボケたら瞬間的にコケてサッと切り替えるみたいな方がいい。
 とはいえ、下ネタは大人も子供も楽しめるのがいいやね。
クルーゾー警部 監督:バッド・ヨーキン 1968 英(UA)、カラー 1:2.35(放映版1:1.33) 2004/04/29(木) VHS(NHK-BS2) 感覚系 ★☆ 2004/05/01
ストーリー 感想
 イギリスの強盗団の犯行計画をつかんだロンドン警視庁は、内通者がいる可能性があることから、フランスからクルーゾー警部(アラン・アーキン)を呼んで捜査責任者にする。
 彼は捕まった一味のスティール(バリー・フォスター)から、謎の首犯ジョニー・レインボーの名前を聞く。
 007のような秘密兵器をウィーバー警視(フランク・フィンレイ)から支給され、刺客を偶然に撃ち殺し、ケーキに仕込まれた毒薬も見つけるが、女に引っかかって顔の型を取られる。
 クルーゾーは刺客のフレンチーの遺体を追ってフランスへ行き、インターポールのモレル警部補(デリア・ボッカルド)と協力して捜査にあたる。
 強盗団は、全員クルーゾーのマスクを被ってスイス中の銀行からお金を騙し取る計画で、そのためにクルーゾーをスイスにおびき寄せ、一味のウィーバーが列車から彼を落として変装して彼になりすます。
 一味は金を盗むことに成功し、板チョコに見せ掛け川を下る貨物船に積み、国外に持ち出そうとする。
 犯人に間違えられ警察署に連行されたクルーゾーは、そこでウィーバーと出くわして倒し、彼のマスクで疑いが晴れる。
 街でスティールに出くわしたクルーゾーは、彼を追って金を積んだ船に行くと、レインボーこと刑務所の息子に捕らえられる。
 そこには、先に捕らえられたモレルがいて、クルーゾーは船を沈めて脱出し、事件は解決する…。
 ご存知、クルーゾー警部の『ピンクの豹』(1963)、『暗闇でドッキリ』(1964)に続くシリーズ3作目。
 ただし、ブレーク・エドワーズはクルーゾーというキャラクターの原案としてでしか関わっていない。
 それから、クルーゾーはピーター・セラーズではなくアラン・アーキンが演じていて、フランス訛りの英語をしゃべったりして、頑張って役作りをしている。
 といっても、この「頑張っている」という感じが見えてしまっていることが、まるっきり天然の異常者に見えるピーセラのクルーゾーと比較して差がつけられる結果になってしまった。
 ストーリーがでたらめなのはいいとしても、ギャグは全くと言っていい程面白くなく、ナンセンスなのに押しが弱くて中途半端だったり、さりげないギャグであるべきものがぎこちなかったりといった具合だった。
GUN CRAZY Episode4 用心棒の鎮魂歌 監督:室賀厚 2003 日、カラー 1:1.85 2004/04/29(木) VHS(WOWOW) 感覚系 ★★☆ 2004/05/01
ストーリー 感想
 治安の悪い東南アジアのある国に進出した日本企業の支社長(寺泉憲)の娘の恵理(上杉梨華)が、武装集団に身代金目当てで誘拐される。
 会社はうわべだけの交渉をして身代金を払うつもりは無く、心臓発作で倒れた父に代わって恵理の親友の加藤夏希が、外国にコネのある風俗店店長の江原修、そこに勤める風俗嬢で元自衛隊員の原史奈、店長の紹介による外国との裏稼業をしている又野誠治たちと共に、恵理が囚われているジャングルの中のアジトに攻め込んでいく…。
 上映時間70分の作品なので、ストーリーは無いに等しいほど簡単なもので、戦闘シーンが見せ場の映画。
 で、その戦闘シーンはこれといった欠点が無く、十分に迫力がある。
 それに、なにより出演者たちがみんなとても魅力的に描かれていて、主役の加藤夏希と原史奈は、ただでさえキャリアが短い上にアクションの経験も少ないだろうが、しっかりと表情を作るように監督に演技付けをされていると思われ、2人もそれに応えているので、アクションでもちゃんとさまになって見える。
 全国公開するような邦画でも、俳優の表情や台詞が緩んでいるのが平気で通ったりしてるくらいだから、こっちの方がよっぽどまし。
 又野誠治の見た目は、脇はもちろん主役を張れるほどの申し分の無さなのに、これが遺作(?)なのはなんとも惜しい。
沓掛時次郎 遊侠一匹 監督:加藤泰 1966 日(東映)、カラー 1:2.35 2004/04/27(火) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2004/04/28
ストーリー 感想
 渡世人の沓掛時次郎(中村錦之助)と道連れの身延の朝吉(渥美清)が世話になったお葉(弓恵子)の一家の出入りの助っ人に、一宿一飯の恩義で借り出されそうになるところ、朝吉を堅気にしたかった時次郎は2人で立ち去る。
 しかし、朝吉1人が戻って1人で殴りこんで殺され、後を追ってきた時次郎は相手を全員殺してしまう。
 旅を続けた時次郎は、途中でおきぬ(池内淳子)と1人息子と知り合う。
 次に時次郎の世話になった鴻巣一家でも、頼まれて1人で対立する一家を守る三蔵(東千代之介)を斬り、とどめをさそうとした鴻巣一家の男の腕も切り落とす。
 三蔵が死ぬ間際に彼の妻への言伝を聞いた時次郎が妻に会うとそれはおきぬで、彼はおきぬ親子を三蔵の伯父のところに連れて行く。
 しかし伯父夫婦は死んでいて、さらにおきぬは労咳で伯父の息子のところで寝込む。
 時次郎は追って来た鴻巣一家に袋叩きにあうが、立会人の地元の下仁田の一家の静止で命拾いをする。
 時次郎とおきぬはお互い愛を感じるようになるが、ある日時次郎の留守中におきぬは息子を連れて立ち去る。
 それから1年、時次郎は高崎の八丁徳一家にわらじを脱ぎつつ、おきぬが帰ってくるのを待っていたところ、角付けをしていた彼女と再会する。
 時次郎はおきぬの薬代のため、八丁徳の出入りの助っ人になるが、彼が帰ってくる前におときは亡くなってしまう。
 時次郎は残されたおきぬの子供を連れて、刀を捨てて旅立つのだった…。
 60年代の後半にもなると、時代劇も血糊がどんどん使われたり、人を斬る時の効果音が入ったりで、殺陣のシーンがリアルになって、かなり迫力がある。
 加藤監督のローアングルの構図も効果的。
 それに、錦之助の演技も堂々としていて、特におきぬに去られた心情を宿の女主人の清川虹子相手にしみじみと語るところの長回しによるシーンは絶品。
 きちんと作られたことの良さが光る映画。
黄線地帯 監督:石井輝男 1960 日(新東宝)、カラー 1:2.35 2004/04/22(木) WOWOW ドラマ系 ★★ 2004/04/23
ストーリー 感想
 殺し屋(天地茂)が東京で神戸税関長を殺した直後、依頼人の阿川(大友純)に裏切られて警察に追われ、公衆電話で恋人の新聞記者(吉田照雄)に電話をしていたダンサーのエミ(三原葉子)を脅して、彼女が行こうとしていた神戸に一緒に行き、カスバのホテルに泊まる。
 エミは東京駅のホームでハイヒールの片方、神戸の靴屋で助けをメモした百円札を残す。
 記者は、エミの神戸の仕事を募集していた芸能事務所が、外人相手の神戸の売春組織「黄線地帯」と関係があると知って、その取材も兼ねて神戸に向かう。
 百円札は、売春組織にさらわれたOLの手から、外国船に売春婦たちを引き連れて行く男、そして波止場の煙草売りの女と伝って、記者の手に渡る。
 記者はその後知り合った黒人の売春婦から、阿川の売春組織を突き止める。
 一方殺し屋とエミも、阿川を脅してそのボスの社会事業家の家に乗り込み2人を殺す。
 そこに、記者と警官隊が来て、殺し屋はエミを人質に抵抗するが、エミに情が移った殺し屋は彼女を殺せず、警官隊に射殺される…。
 タイトルは「おうせんちたい」とも読むが、正確には「イエローライン」と読む、新東宝の「地帯(ライン)」シリーズの1本。
 石井監督のロケを多用した手堅い演出と、天地茂の濃い魅力が光る。
 むちむちした感じが魅力の三原葉子の、ダンスシーンでの肌の露出も欠かせない。
美貌に罪あり 監督:増村保造 1959 日(大映)、カラー 1:2.35 2004/04/18(日) VHS(東京MX) ドラマ系 ★★☆ 2004/04/20
ストーリー 感想
 東京で日本舞踊を習っている菊江(山本富士子)が師匠の勘蔵(勝新太郎)を連れて、かつては地主だった郊外の実家に帰ってくる。
 彼女の母のふさ(杉村春子)は、菊江の父と敬子(若尾文子)の父の2人の夫と死に別れ、花の栽培を営んでいるが、思うように稼げず、土地を借りているかつての小作人の隣の家の土地ブローカーの吉造(潮万太郎)から、畑を売ることを勧められている。
 吉造の息子でふさのところで蘭の栽培を手伝っている周作(川崎敬三)は、菊江と結婚するものと周りは思っているが、菊江にはその気はなく、また勘蔵も菊江に思いを寄せていたが、彼は小さい頃から育てられた料亭の女将のおくめ(村田知英子)から娘の春枝(三宅川和子)と結婚して後を継いで欲しいと迫られていた。
 また、吉造はふさに、周作に住宅公団の人間の娘との縁談話がきているので、菊江とのことで早く返事を聞きたいと迫った。
 そこに、戦争でかつての小作人の親を失ってふさのところで育てられた忠夫(川口浩)の妹で、周作に思いを寄せているかおる(野添ひとみ)が、通っていた聾学校からふさの家に帰って来た。
 菊江と勘蔵はお互いの思いを確認し合って結婚することにし、勘蔵は春枝との縁談を断っておくめとの縁を切る。
 2人はお金に困ったので、菊江は実家に帰って自分が権利を持っている土地を売りたいと言うが、何より家と土地を守りたいふさは断る。
 敬子と忠夫はいい仲だったが、家を出たがっていた敬子がスチュワーデスの採用試験に合格し、東京で豪華な暮らしをするようになって、忠夫ももっと稼ぎたいと思うようになり、家のことを彼に任せたいとおもっているふさと意見が食い違う。
 敬子があるパーティーに出席すると、そこには安いギャラで踊りを見せている菊江と勘蔵がいた。
 菊江はパーティーで知り合ったセールスマンとデートの最中に襲われそうになったところに警官が踏み込んで彼を横領の罪で逮捕し、男に騙された自分の愚かさにショックを受ける。
 忠夫は八丈島で花を栽培しようと思い、周作も父の持ってきた縁談を決め、彼はかおるに蘭の栽培の手ほどきをするが、かおるが枯らせてしまったため、ついにふさは土地を売ることを決意する。
 家を明け渡す前に一同が実家に集まり、仕事が思わしくなかったことから菊江と仲が悪くなっていた勘蔵も、彼女の陰での苦労を知って駆けつけ、敬子も忠夫との仲を修復して1年後にスチュワーデスを辞めて忠夫のもとに行くことを誓い、聾学校に帰ろうとしたかおるの恋心を知った周作は、縁談を断ることにする。
 ふさ、忠夫、周作の3人は家を後にし、八丈島へと向かうのであった…。
 60年代以降にドロドロ路線になる前の増村保造監督作品。
 とはいえ、男だけでなく女も自分の人生を力強く進んでいくところは、その後の増村作品にも通じる。
 始まってすぐ、登場人物が多数登場するので、物語を追うのが大変かと思っていたが、実際にはそれほどではなかった。
 日本の大半が農家で先祖代々の土地を守ってきた時代から、戦後2次産業や3次産業が中心になって人口が都会に集中するようになる時代の変わり目で、人々の生活も変わっていくという話で、終盤近くまではストーリーをなぞっているような映画かな?と思っていたのだが、明け渡しが決まった家の中で、遠くで盆踊りの囃子が聞こえてきた時、「若い頃は村でも評判の盆踊りの踊り手だったそうだから、一緒に踊って。」と山本富士子の娘に言われた杉村春子が、それまでのにこやかな笑顔から、一転真顔になって、2人で見事な盆踊りをするところの凄みは、さすが大女優。
 ところで、タイトル『美貌に罪あり』って、内容に合ってないような…。
真田風雲録 監督:加藤泰 1963 日、カラー 1:2.35 2004/04/17(土) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★☆ 2004/04/19
ストーリー 感想
 関ヶ原の戦いの直後、戦死者たちから刀などを盗んでいたみなし児たちが、人の心を読むなどの超能力の持ち主の佐助と知り合って別れる。
 それから十数年後、ずっと佐助のことが忘れられたかったお霧(後の霧隠才蔵)(渡辺美佐子)とその仲間は、猿飛佐助(中村錦之助)と再会し、徳川が天下を取るような夢のない世の中をひっくり返そうと真田幸村(千秋実)に仕え、大坂冬の陣が始まろうとしている中を大坂に行く。
 しかし、豊臣の幹部たちは誰も真剣に勝とうとしていない者ばかりで、幸村の奇襲の主張も豊臣を率いる大野修理(佐藤慶)に抑えられる。
 真田十勇士たちが単独で徳川の陣地に乗り込んで混乱に陥れるが、本陣に斬り込もうとしたところ、服部半蔵(平幹二郎)軍団に阻まれ、佐助は傷つく。
 お霧が佐助を看病しているうちに、二人は体を重ねあう。
 両軍幹部が裏取引で大坂冬の陣を終えようとしているところ、幸村が独断で突撃して行き、修理は幸村の独断を許さず排除するが、実は彼は内心では幸村たちに続く兵が続出して抑えられなくなるのを期待して、実際わずかだったことに失望していたのだった。
 大坂城の堀が埋められ、夏の陣で幸村たちはせめてカッコよく死にたいという思いで突撃して行く。
 佐助とお霧は千姫(本間千代子)を連れ出す任を与えられていて、姫を徳川に引き渡す時に、江戸に行きたいと思ったお霧の心を読んでしまった佐助は自分に嫌悪して姿をくらます。
 佐助は半蔵と、共に役目を失った者同士で一騎打ちをして半蔵を倒し、佐助は一人ぼっちで当てもなくさまようのだった…。
 かなり何度も観ている映画だが、やはりこの映画は文句なしにホントに面白くて、時代劇のなかでも日本映画史上トップクラスの面白さ。
 それに加えて、大きな権力が世の中を動かし、庶民の意志ではどうにも動かないという窮屈な思いが強い昨今の状況では、なおさらあっけらかんとした反発精神で溢れるこの映画が身に染みる。
 ひょっとして、60年安保の直後の製作ということが影響してるのか?
 さらに改めて気づいたのは、錦之助が他の映画では見られない様なもの悲しいニヒルな表情をしていて、お霧との恋愛にももの悲しさを感じられてとても良い。
 それに、千秋実演じる真田幸村も、ホントにかっこ悪くて良い。
 何度観ても面白いシーンの1つ、ジャズダンスを踊りながら真田十勇士に襲いかかってくる服部半蔵軍団を演じているのは、江口音也バレエ団。
ブレージングサドル 監督:メル・ブルックス 1974 米、カラー 1:2.35 2004/04/14(水) VHS(WOWOW) お笑い系 ★☆ 2004/04/18
ストーリー 感想
 鉄道工事が行われている1874年の西部、不動産業も行っている検事(ハーベイ・コーマン)が、流砂を迂回するため突然線路の通り道になった町の土地の値上がりを狙い、住民を暴力で追い払って自分の土地にしようとしていた。
 住民たちが町に新しい保安官を派遣することを州知事(メル・ブルックス)に要請し、代わって検事が任命したのは、鉄道工事で働いていて、検事の手下の工事責任者(スリム・ピケンズ)を殴ったことでまさに縛り首にされようとしていた黒人のバート(クリーボン・リトル)だった。
 検事の狙い通り、町の人々はバートを拒否したが、彼は牢屋に囚われていた早撃ちのウェイコ・キッド(ジーン・ワイルダー)を仲間にし、送り込まれた凶暴な刺客のモンゴ(アレックス・カラス)も仲間に引き入れ、歌手(マデリーン・カーン)の色仕掛けも逆に一晩で彼女を虜にしてしまい、次第に町の人々の信頼を得る。
 検事たちが、ナチスドイツ、イージーライダー、KKKなどならず者たちを集めて町を襲うことを、町の人々が察知して罠を仕掛け、殴り合いが始まる。
 一同は乱闘しながらオープンセットを出て、隣のスタジオで撮影中のミュージカル映画の出演者も巻き込み、ワーナーの撮影所の人々と共にパイ投げ合戦が始まる。
 乱闘から検事が抜けて、元の映画の中に逃げるために、『ブレージングサドル』を上映中のチャイニーズシアターに入る。
 スクリーンには、バートが居場所を嗅ぎつけてチャイニーズシアター前に着いたシーンが映っていて、検事が劇場前に出て迎え撃つも一騎打ちで破れる。
 バートとキッドは劇場に入って、2人が町を離れ自動車に乗って荒野の道をどこかに向かって去って行くラストシーンを観るのだった…。
 前から観たかったメル・ブルックス作品。
 ジャズのBGMに乗ってバートが町に向かって来ると、何故か荒野の真ん中にそのBGMを演奏しているジャズバンドが現れるといった、後のZAZみたいなナンセンスギャグが多いのだが、実のところ余り笑えない。
 映画の中の登場人物が、その映画自身を観るというギャグは、後年の『スペースボール』でもあった。
 ナチスやKKKの登場や、その他台詞の中にも人種差別をからかった内容が見られるのは、メル・ブルックス監督作品によく見られた特徴だったはずだけど、何の映画だったかは思い出せない。(『大脱出』は覚えてないけど、そんな映画だったかな?)
水の女 主演:UA 2002 日、カラー 1:1.85 2004/04/11(日) VHS(NHK-BS2) 感覚系 2004/04/12
ストーリー 感想
 魚座生まれの清水涼(UA)は雨女で、彼女が親不知を抜いたせいで雨になった日に、許婚をトラックの事故で亡くす。
 彼女の経営する銭湯を休業し、記憶の中におぼろげに残っている、富士山の見える草原を探す旅に出る。
 引き込まれて入った森の中で女に出会う。
 彼女は、「初対面の人のことをあれこれ聞いてはいけない。」と言って名乗らず、一緒に旅をして目的の場所を見つける。
 その記憶は、どうやら涼が生まれる前に、両親がそこに来たときのものらしい。
 家に帰ると、中に見知らぬ男(浅野忠信)がいた。
 出て行った男を追いかけ、彼が「火を見ていると落ち着く」と言うのを聞いて、銭湯の釜番として雇って銭湯を再開する。
 男も、交通事故で母を失って自分は助かったと話す。
 銭湯の常連のしゃべらない老婆(小川真由美)について、男は彼女は地震の避難所でひどい目に合って、そこを逃げてここにたどり着き、頭のおかしい振りをしていると話し出す。
 旅の女が訪ねて来て、彼女はあの時自殺するつもりで、出会ったことへの感謝を涼に語った。
 ある日、涼は指名手配書の中に男の顔写真を見つけるが、彼にずっとここにいればいいという。
 しかし、老婆が手配書を見つけて男に襲い掛かり、男は出て行って煙突に登り、雷にうたれて炎に包まれて落下する…。
 始まってすぐに、水の様々な表情や森の木々など、自然現象をイメージ映像的に見せることに大きな比重を置いている映画だと感じた。
 この手の映画は、そんな映像表現が観る者を引き込むことが出来るか、狙いが見え透いていたり、見てくれのこだわりの割りに内容の無さがバレバレだったりするか、勝敗は映画の早い段階で決まってしまうと思うのだが、この映画はわずか15分位で後者の負けパターンとの判断に至った。
 全く心に響かない、凝っていることがことごとく上滑りする自己満足映像。
 一言で言ってセンスがない。
 水の女と火の男なんて設定も、深みがなくて陳腐。
真実の瞬間 監督:フランチェスコ・ロージ 1965年 伊、カラー 1:2:35(放映版1:1.85) 2004/04/10(土) VHS(TBS) ドラマ系、ドキュメント風 ★☆ 2004/04/11
ストーリー 感想
 スペインの田舎での畑仕事に嫌気がさしたミゲルは、都会に出て職を探す。
 失業者であふれる状況でいい職はみつからず、闘牛士になれば大金を手に入れることが出来ると思い、地下室で闘牛を教えている有料の教室に通う。
 犬を相手の訓練に飽き足らなくなった彼は、闘牛場に客席から乱入し、彼の師匠も大目玉を食らうが、ミゲルの若い情熱を尊重してかばい、絶対闘牛士にすると言う。
 ミゲルは小さな町の脇役の闘牛士に採用されるが、新人の主役が恐れをなして逃げ出し、彼に主役が回って見事に役目を果たす。
 里帰りし、心配する両親のために電話を引いたりする。
 村の人々は相変わらず畑仕事をしていた。
 もともとある程度稼いだら引退するつもりだったが、怪我を負いながらも順調にキャリアを重ねていき、しかし次第に闘牛士であることに迷いや恐れを感じるようになる。
 そんな気持ちのまま闘牛に挑み、角で刺されて命を落とすのだった…。
 主人公を演じているのは本物の闘牛士で、闘牛シーンは闘牛場にお客さんを入れて彼が実際に闘牛をしているのを、ドキュメンタリーのように撮影している。
 なので、本物には違いないのだが、モンタージュなどで闘牛しているように見せるのと比べて、映像的には平板でメリハリの無い印象を受ける。
 監督がフランチェスコ・ロージなので社会性の強い映画を想像していたのだが、それはあまり感じられず、闘牛士としての心構えやモチベーションなどの精神面がメイン。
 引退を考えながら闘牛を続けるのが『ローズ』を思わせる。
 出演者はスペイン人だが、台詞はイタリア語に吹き替えられているようだ。
悲しき口笛 主演:美空ひばり 1949年 日(松竹)、白黒 1:1.33 2004/04/09(金) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2004/04/10
ストーリー 感想
 「悲しき口笛」を作曲した復員兵の健三(原保美)は、生き別れた妹のミツコを探して横浜をさまよう。
 金も無いのにウエイトレスの京子(津島恵子)とその父でバイオリンの流しの修(菅井一郎)がいるビアホールで飲んだくれ、居合わせた客の吉村(徳大寺伸)が勘定を払い、健三をどこかに連れて行く。
 その頃、浮浪児のミツコ(美空ひばり)は、外人墓地で野宿をしていたところ、京子と修に拾われる。
 ある晩、酔っ払った修を健三の運転するトラックがひきそうになり、修がミツコが歌っていた「悲しき口笛」を歌っていたのを耳にするが、確信が無かったのでそのまま別れる。
 修の飲んだ酒はメチルで体を壊し、ミツコは歌を歌ってお金を稼ごうとするが、京子がビアホールのマスターを通じて宮本の仕事を世話され、多額の前金をもらう。
 宮本を訪ねると、仕事とは密輸で、断った京子は船に監禁されるが、そこにいた健三にに助けられ、2人は組織から逃げるために横浜を離れ、相模湖にいる健三の友人山口(神田隆)を訪ねる。
 そのころ、家に1人いた修がランプを倒して家は全焼するが、命は助かる。
 そのことを知った京子は1人で横浜に戻り、健三も警察に自首するために後を追うように横浜に行く。
 家を失った修とミツコは街角でバイオリン演奏で稼ごうとするが、ミツコがキャバレーに飛び込んで歌を歌ったらこれがウケる。
 そこにミツコたちを探していた京子が見つけて声をかけるが、待ち伏せていた吉村の手下に捕まって連れ去られる。
 それを見たミツコは、浮浪児の頃の日雇い仲間にミツコを助けてほしいと頼み、警官隊と共に宮本たちを捕まえる。
 キャバレーではミツコが歌を披露するパーティーが開かれ、そこに釈放された健三がやって来て、京子に山口のところで働くから一緒に来てほしいと言って、彼女も承諾する。
 その時、ミツコが歌う「悲しき口笛」のメロディが流れてきて、健三は妹のミツコと再会するのだった…。
 美空びばりが天才少女ぶりを発揮してブレークした作品。
 「悲しき口笛」の曲も、今でもDonDokoDon山口がモノマネのネタにするほど有名。
 でも、今となっては映画としてはそれ以外にこれといった見どころが無い。
 1949年製作で、50年代の日本映画の街の風景と比べても、野宿をする人がゴロゴロいたりで、「戦後」という感じが圧倒的に感じられる。
 
変態家族 兄貴の嫁さん 主演:周防正行 1984 日、カラー 1:1.85(放映版1:1.66) 2004/04/06(火) VHS(WOWOW) パロディ系 ★★ 2004/04/09
ストーリー 感想
 結婚式の日の夜、会社が忙しくて新婚旅行にもいけず、家の2階で嫁の百合子(風かおる)と初夜を迎えている幸一(下元史朗)を、下の階で父の周吉(大杉漣)と妹の秋子(山地美貴)と弟の和夫(首藤啓)が見守っている。
 周吉は、百合子も行きつけのバーのママ(麻生うさぎ)も亡くなった妻に似ていると言うが、周りの人は必ずしも賛同していない。
 秋子は、結婚して主婦のままで一生を終えるような人生が嫌になって、会社を辞めてソープ嬢になる。
 幸一は、母に似ているとの周吉の言葉でママの店に行って、ムチで打たれるために入りびたって家に帰ってこなくなり、周吉は百合子を慰める。
 秋子は、嫁入りの前夜に周吉とふとんを並べて寝ながら語り合い、翌日の式場で相手がソープの支配人だということを周吉たちは知る。
 和夫は家を出て1人で勉強することにし、周吉は百合子に実家に帰ることを勧めるが、百合子は夫が戻ってくるまで周吉と2人で暮らすと言う…。
 周防正行監督のデビュー作のピンク映画を、WOWOW放映のためにからみに大きなボカシを入れて、R-15相当にしたバージョンで、日本映画データベースによれば62分だが、放映版は57分。
 小津安二郎監督のパロディとして有名で、確かに構図やセットなどうまく真似できていて、特にバーのカウンターに座った人を映した構図や、「そうかね?」「そうよ。」といった台詞は、かなり上手く真似ている。
 しかも、ストーリーを見れば判る通り、『晩春』『東京物語』の重要シーンをそっくり真似て取り込んでいる。
 しかしこの映画、パロディで徹底しているかといえばそうでもなくて、エッチシーンになると女優の顔がアップになったり、カメラがあおりになったり俯瞰になったりするのはしょうがないのかもしれないが、それ以外のシーンでもローアングルのはずがカメラの位置が高かったりなど、構図が小津作品のパターンを時々はずしているのは何故だろう?
 ピンクなのでパロディを押し通すほどの余裕、もしくは強いこだわり無かったのかもしれないが、パロディ以外はこれといった見どころがないのだがら、徹底してほしかった。
 ちなみに、監督助手が富樫森、製作担当が磯村一路。
あいつと私 監督:中平康 1961年 日(日活)、カラー 1:2.35 2004/04/03(土) VHS(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 ★★★ 2004/04/03
ストーリー 感想
 1960年5月、都心から離れた大学での授業中、生徒たちがお金をいくら使うかという話になって、黒川(石原裕次郎)がひねくれて月2、3万も使うし女も買ったと吹いて女子学生たちの反感を買い、プールサイドで昼寝をしているところを突き落とされる。
 彼女たちに女物の洋服をとりあえず借りて、女子学生の1人の浅田(芦川いづみ)の家に行って父親の服を借りる。
 浅田を連れて自分の家に帰ると、有名な美容師の母モトコ(轟夕起子)のところに、恋人の1人園城寺(庄司永建)が来たので、気の小さい黒川の父(宮口精二)がいつものように家を出ると言い出すが、モトコは愛しているのは夫だけと言って仲直り。
 6月15日、女子学生の1人のバンビ(笹森礼子)の結婚式の帰りに、黒川と浅田と金沢(小沢昭一)が、安保反対のデモに参加している元村(吉行和子)が気になって国会議事堂に行く。
 1人張りきった金沢が突進して黒川が後を追い、浅田は家に電話をかけて、母に子離れしてほしいと言う。
 金沢が傷を負って3人は元村の家に行くと、彼女は同居人の金森(伊藤幸子)とデモではぐれて先に帰っていた。
 やがて傷ついた金森が帰って来たが、彼女は男子学生数人と酒を飲んで、連れ込み宿で犯されたのであり、後日彼女は大学を辞めた。
 夏休みになって、黒川は自分のベンツに金沢や浅田たち5人を乗せて各人の実家を回り、最後に黒川の軽井沢の別荘に着いた。
 そこにモトコと円城寺とモトコの弟子の松本(渡辺美佐子)が来て、すぐに3人はホテルに行く。
 浅田が松本と黒川の仲に気付いて、関係を黒川に問い詰めると、モトコは忙しかったので子供に手をかけられない代わりに欲しいものは何でも買い与え、松本を黒川にあてがって性欲を発散させていたことをみんなに告白した。
 浅田は黒川を「不潔」と非難して雨の中に飛び出し、黒川は浅田に強引にキスをして黙らせる。
 翌日、とりあえず女子たちは黒川を許し、松本は浅田にぶたれて浅田の愛情を確認して和解する。
 別荘から帰って、モトコの誕生日に浅田と円城寺、それにモトコのかつての恋人で、アメリカから休養で帰国していたホテル経営者の阿川(滝沢修)も集まった。
 パーティーの席で、阿川は黒川に自分のホテルの後継者になるためにアメリカに来て欲しいと言い、モトコは激しく反対する。
 その夜、モトコは浅田に、黒川はモトコが今の夫との再婚の直前に、彼に内緒で阿川との子供が欲しくなって作った子供だということを告白し、黒川のことをよろしくという思いを伝えるが、通りがかった黒川はそれを立ち聞きしてしまう。
 翌朝、黒川は立ち聞きしたことは言わず、家を出て行こうとする父を止めるドサクサに紛れて、浅田と婚約しアメリカには行かないと宣言するのだった…。
 原作は石坂洋次郎。
 この映画、何がショッキングかといって、(映画なので現実とは違うのかも知れないが)当時の人々の話し方だ。
 もの凄い早口でしかもちゃんと内容がある会話をしていて、「あ〜…、ん〜…」などの言葉はもちろん、つまらない無意味な会話はほとんど無い。
 しかも、そのやりとりに大人らしい距離の取り方が感じられる。
 こうしてみると、日本映画の衰退うんぬん以前に、日本人自体が衰退したのであって、そんな衰退した日本人を描いて、衰退した日本人のお客さんに向けて作られた最近の日本映画が衰退して見えるのも無理が無いと思えてしまう。
 速いのは会話だけではなくて、中原康監督による映画の展開も、安保反対運動も含め、恋愛やセックスなど学生たちの風俗をたっぷり盛り込んだ内容を、もの凄くスピーディーに進めている。
俺は待ってるぜ 監督:蔵原惟繕 1957年 日(日活)、白黒 1:1.33 2004/03/29(月) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2004/03/30
ストーリー 感想
 石原裕次郎は、波止場で何をするでもなくずぶ濡れで立っていた北原三枝を見つけ、休ませるために自分の洋食屋に連れて行く。
 ブラジルに行った裕次郎の兄が、もうすぐ彼を迎えに来ることになっていて、三枝は歌手として働いているキャバレーの男を鈍器で殴り倒して逃げてきたのだった。
 翌朝、行く当てもない様子で出て行こうとする三枝を裕次郎が引きとめ、その日から彼女は店の仕事をするようになる。
 三枝は、裕次郎が元ボクサーで、相手選手を殴り殺したためライセンスを剥奪され、ボクサーの道を経たれたことを知る。
 裕次郎が兄に出した手紙は、宛先人不明で戻ってきて、これまで何度も裏切られて他人を当てにしようとしない裕次郎は、兄は自分を裏切ったのだと思い込む。
 裕次郎がラジオをつけると「カルメン」が流れ、三枝はそれが1年前の自分の歌声で、病気で声が出なくなって恋人だった歌の先生に捨てられた過去を話す。
 裕次郎が三枝に声をかけたのは彼女に期待していたからだが、やはり信じることはできなかった。
 そして、キャバレーの経営者で元ボクサーの二谷英明率いる男たちが裕次郎の店に来て、三枝を連れ帰る。
 その後、裕次郎の店の常連の医者が、兄を日本で見たという証言から調べなおすと、兄が乗ったはずのブラジル行の船には乗ってなくて、残された荷物の中から、今では三枝が歌っているキャバレーの名詞が出てきた。
 裕次郎はそのキャバレーに行って三枝に会い、彼女を殴った男が自分が兄に渡したメダルらしきものを持っていたので、確認を頼む。
 メダルは確かに裕次郎のもので、持っていた男を問い詰めると、二谷の子分で喧嘩で殺されたテツという男からもらったものだった。
 裕次郎は警察に行って、テツが殺された3ヶ月前に、たいして腕力のない彼が、1年前に裕次郎の兄が出発する前に彼を殴り殺したとして出頭し、正当防衛で不起訴になったことを知った。
 裕次郎は、テツを殺してやはり正当防衛で不起訴になった竹田という男を探す。
 一方、二谷たちも竹田を探していて一足早く見つけ、口封じで酔って海に落ちたように見せかけるが、そこに現れた裕次郎が竹田を救う。
 竹田は裕次郎に、テツを殺したのは二谷で、彼はテツが連れて来た裕次郎の兄も、さそった博打がイカサマだとバレて殴り殺し、テツも自分も二谷をゆすっていたことを告げる。
 裕次郎は二谷のキャバレーに行き、二谷と殴り合って倒し、三枝と一緒にその場を後にする…。
 キネ旬データベースによると、裕次郎が歌った同名のヒット曲をヒントに、石原慎太郎が脚本を書き下ろした映画。
 そして、蔵原惟繕監督の第1回作品。
 冒頭、ミステリアスに現れた北原三枝と、柔らかな物腰で彼女に接する裕次郎のやりとりにまず惹かれる。
 そして、心の傷を抱える裕次郎に、三枝の思いが傾いていくところもいい。
 しかし後半になると、なにやらややこしい謎解きモノになってしまって、前後で分かれてしまっている印象。
 だいたい、裕次郎の心の傷はどこに行っちゃったの?
 でも、クライマックスの格闘シーンでの、暗いキャバレーのフロアの床に照明があることによるシャープな印象の映像など、蔵原監督の演出は第1作目から光っていた。
銀嶺の果て 監督:谷口千吉 1947年 日(東宝)、白黒 1:1.33 2004/03/28(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2004/03/29
ストーリー 感想
 冬のある日、3人組による銀行強盗が起こり、北アルプスの山奥の温泉宿の電話が通じなくなったことから、犯人はそこに逃げ込んだと思われた。
 そこへは1本道しかなく、その奥は山小屋が2軒あるだけで、冬山のプロにしか抜けられそうになかった。
 宿のラジオが壊されていたのに気付いた客が、3人組の客を怪しんで、彼らの1人の右手袋を脱がない野尻(志村喬)が、犯人の1人の特長である右手の薬指のない男ではないかと思い、確認しようとした。
 まさにその3人は強盗犯で、旅館の客たちの服を奪って風呂に入れて動けなくしたすきに、山奥の1番目の山小屋に行き、金を3等分して山奥へと逃げる。
 1人遅れた高杉(小杉義男)が迫る追っ手に発砲すると、雪崩が発生して高杉は呑み込まれる。
 残った2人が更に山奥のスキー小屋にたどり着くと、そこには小屋の主人の老人と女の子の春坊(若山セツコ)と常連客の本田(河野秋武)がいた。
 雪崩のため、本田は1週間は下山できなくなった。
 小屋のラジオは半年前から鳴らなかったが、伝書鳩がいたので、江島(三船敏郎)が夜のうちに殺してしまう。
 生き生きとした春坊に心が和む野尻と、冷酷であり続ける江島との仲が次第に険悪になる。
 江島は春坊を脅しの材料にすることで、本田に山の走破の案内をさせる。
 3人はザイルで繋がって登るが、江島が滑落したことで本田が腕を骨折する。
 本田を連れて行こうとする野尻を、江島は銃で脅して金を独り占めして逃げようとし、野尻が銃をはらったはずみで発射された弾丸が本田の脚に当たる。
 野尻と江島が取っ組み合いになって2人とも滑落し、本田がザイルを握って野尻だけが助かった。
 野尻は本田を背負って下山し、本田に自分たちを助けた理由を訊くと、山の男は死んでもザイルを離さないからだと言った。
 スキー小屋に近づくと、そこには警官隊が来ていて、野尻は捕まるが、本田たち山小屋の3人は、彼を山男として受け入れるのだった…。
 放映されたバージョンは、クレジットのタイトルが『銀嶺の果て(新版)』となっていたが、時間は88分で、日本映画データベースとキネ旬決算号によると、2425m=7956ft.⇒7956/1.5=5304秒=88分なので、短くはなっていないようだ。
 ただし、メインタイトルのクレジットの文字は入れ替えられているようだ。
 その理由は、当時は「若山セツコ」だったはずなのに、後の「セツ子」表記になっていたから。
 また、主役はどう観ても志村喬だが、三船敏郎が単独で最初にクレジットされていたのも、後に彼がスターになったから作られたクレジットだからだろう。
 三船敏郎のデビュー作だが、新人らしいぎこちなさが全く感じられず、既に迫力ある演技で志村喬と対等に渡り合っているのが凄い。
 雪崩に巻き込まれるシーン、断崖を登るシーン、志村と三船の格闘シーンなどの迫力もさることながら、若山セツ子の可憐さに心が和むシーンもしみじみとして、印象に残る映画。
ロイ・ビーン 監督:ジョン・ヒューストン 1972年 米、カラー 1:1.85 2004/03/28(日) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★☆ 2004/03/29
ストーリー 感想
 1890年、テキサスの西側の無法地帯の、メキシコ人の農民たちが住む村に一軒ある酒場に、逃亡中のロイ・ビーン(ポール・ニューマン)が現れるが、酒場のならず者たちに身ぐるみはがされリンチにかけられる。
 しかし命拾いをして、メキシコ娘のマリー・エレーナ(ヴィクトリア・プリンシパル)から渡された銃で彼らを殺す。
 初めての殺人に考えを改め、酒場を法廷に改造して、メキシコ人の農民が暮らすその村の判事兼酒場のオーナーになる。
 そして、自分なりの正義と憧れの歌手のリリー(エヴァ・ガードナー)のポスターに従い裁きを下そうとし、バーテンに雇ったテクター(ネッド・ビーティ)以外のお尋ね者たちを保安官に任命して、ならず者を捕まえさせては死刑にして所持金を彼らと山分けした。
 ロイは稼ぎをつぎ込んで村を発展させ、善良な人々も住む町の実力者になり、マリーと山男(ジョン・ヒューストン)が置いていった熊と幸せな日々を送る。
 一帯の土地の権利書を手に現れた弁護士ガス(ロディ・マクドウォール)を脅して、依頼主の財産を山分けすることで合意し、ガスは街に事務所を開きつつ、仕返しを狙って保安官たちの妻である元娼婦たちを味方につける。
 そしてある夜、殺し屋をロイの元に送るが、熊が命と引き換えにロイを守った。
 町に鉄道が通り、ロイは巡業中のリリーの公演を見にサン・アントニオまで行ったが、満席で見られず騙されて有り金を全部取られてしまう。
 帰ると、留守中にマリーはロイとの間にできた女の子を難産で産んでいて、彼に抱かれて息を引き取った。
 それに、ガスが保安官たちを丸め込んでガスを市長にし、ロイは街を追い出される。
 20年後の1919年、ガスは石油を掘り当て、禁酒法下の裏商売をしてギャングを雇って街を支配していたが、テクターに育てられたロイの娘のローズ(ジャクリーン・ビセット)は抵抗していた。
 そこに、今では乗る者もいない馬に乗ってロイが戻って来て、捨てられた保安官たちと共に、ガス率いる警官隊たちと撃ち合い、街は火の海になり、ローズとテクターら少数を残して全員死ぬ。
 更に約10年後、ローズは既に嫁いで行き、ほとんど誰もいなくなった町でテクターが館長を務めるロイ・ビーン記念館を、彼からのファンレターをもらっていたリリーが訪れる。
 そこはローズのポスターとロイの遺品が残されていて、彼女は死の直前に彼女宛に書かれた手紙を読んで、会ったことのない彼のことに思いをはせるのだった…。
 いやぁ、面白い。
 銃が支配していた西部が、やがて法律が支配する時代になって、文明化されてみんなが幸せになれるかといえば、権力者たちの私利私欲によって踏みにじられるのは何も変わらない。
 それどころか、仮にもロイ・ビーンが心に抱いていた「誇り」とか「正義」が、権力者たちから影を潜めてしまった。
 そのやるせなさや寂しさを、全体的にとぼけた感じで描いていて、古き良き西部の伝説といった趣がある。
 ローズの結婚相手として写真の被写体としてのみの出演で、当時ジャクリーン・ビセットの同棲相手だったマイケル・サラザン。
男はつらいよ 寅次郎紅の花 監督:山田洋次 1995年 日(松竹)、カラー 1:2.35(トリミング1:1.85) 2004/03/28(日) VHS(TV東京) ドラマ系 ★★☆ 2004/03/29
ストーリー 感想
 1995年の1月半ばに、寅さんが神戸からお菓子を送って以来音信不通になって8ヶ月、くるまやの人たちがテレビで神戸の震災直後の映像を見ていると、ボランティアとして働いている寅さんが映っていた。
 ちょうどそこに、神戸でパン屋を開いていて寅さんのお世話になった宮川大助がくるまやを訪ねてきて、寅さんはある日神戸を出て行ったことを話す。
 名古屋から泉(後藤久美子)が満男を訪ねて上京してきて、見合いをしたことを満男に話すが、満男は泉の気持ちも知らずに心ならずも結婚を勧めてしまい、泉は東京を離れ、しばらくして満男はいなくなってしまう。
 岡山の津山で結婚式に向かう泉の車を、満男の運転する車が行く手を阻んで式は中止、泉は名古屋に帰ってしまう。
 満男は奄美大島に行くと、そこでリリー(浅丘ルリ子)とお互いに相手が誰だか気付かずに知り合う。
 リリーの家にお世話になることになると、そこには1ヶ月前から居候している寅さんがいた。
 満男が泉の結婚式のことを話すと、寅さんは男は引き際が肝心と言うが、リリーは男と女の仲はみっともなくてもいいじゃないと言う。
 泉は、くるまやを訪ねて満男の居場所を聞き、満男の前に現れる。
 泉が、「なんであんなことしたの?!」と厳しく責め立て、満男の「愛しているから。」との告白を聞いて笑顔を浮かべる。
 寅さんがリリーと帰って来るという知らせを聞いて、柴又の人たちは浮き足立って寅さんが結婚するとの期待を膨らませる。
 リリーは東京の老人ホームにいる母親に会うために来たのであって、寅さんもさくらに訊かれて恋愛関係はないと否定する。
 しかし、リリーが女友達の家に泊まったのを、浮気したと寅さんが言ったことで喧嘩になり、リリーが帰ることになるが、さくらが寅さんを説得して、ついて行くことになる。
 翌年の正月、満男は泉のいる名古屋に行き、さくら宛にリリーから届いた手紙には、その後寅さんは喧嘩をして出て行き、自分もいつまでも奄美にいるとは限らないけど、またどこかで会うだろうと書かれていた。
 寅さんは、被災地ながらも正月のお祝いに沸く神戸長田区を訪ね、大助花子夫妻らと再会するのだった。
 シリーズ48作目で、渥美清の遺作。
 今回の放映版は2、3分ほどカットされたもの。
 今回の満男は情けなさが堂に入っていて、ここぞというときに前に踏み出せず、結局後で後悔しては、仕事まで投げ出して血迷った行動に走ってしまう。
 これまで恋愛から身を引く一方だった寅さんに対して、そんな満男のような枯れていない生き方を突きつけられる形になる。
 だから、寅さんとリリーが柴又から帰るときに、寅さんがリリーの家の玄関まで見送ると言ったのは、照れ屋の彼にしては恥ずかしさやカッコ悪さよりも自分の意志を貫いた思い切ったことだったわけだ。
 でも、そこまでしても結局一人旅の暮らしに落ち着いてしまうのは、シリーズの最後にふさわしい結末。
 寅さんたちが、リリーと会ったときのことをかつての出演作3本分それぞれ話したり、その他のマドンナたちの思い出話をしたりするのも、渥美清の体調が悪くなっていよいよ今回が最終作かもしれないという思いがいい形で表れている。
 冒頭の寅さんが映っているテレビは、村山首相が神戸を訪ねた映像に、彼の隣に寅さんを合成させて作っているという、『フォレスト・ガンプ』方式。
 砂浜に満男が1人でいるところに東京から着いた泉が駆け寄るところで、『モロッコ』のように途中で靴を脱ぐという軽いネタもあった。
 ラストシーンで、阪神淡路大震災の被災地を寅さんが訪れるというのは、既によそでのロケが決まっていたにも関わらず、現地の人の要請で急遽変更になったことによるもの。
 そこでの正月祝いが、空き地で韓国の民族衣装を着た人たちが輪になって踊るというもので、この行事は長田区では毎年行われているのだろうか?
 レギュラー陣は、笹野高史が泉の結婚相手の父親、神戸浩が、リリーの隣に住む彼女に密かな思いを寄せる男役。
 それから、純の父さん黒板五郎こと田中邦衛が、奄美大島の渡し舟の船長役で出演。
 クレジットでは元ちとせも出演しているはずなのだが、姿は確認できなかったので、歌声だけの出演かも。
イバニエズの激流 主演:グレタ・ガルボ 1926 米、白黒/サイレント 1:1.33 2004/03/23(火) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/03/24 作成、2004/03/25 更新
ストーリー 感想
 バレンシアの川沿いの村、農夫モレーノの娘のレオノーラ(グレタ・ガルボ)は、父の友人の床屋のキューピード(ルシアン・リトルフィールド)の教えの甲斐あって歌がうまく、幼なじみのドン・ラファエル・ブルル(リカルド・コルテス)と恋仲だった。
 しかし、彼の母で地主のブルル夫人(マーサ・マトックス)は、モレーノ家の借金を盾に、レオノーラの母(ルーシー・ボーモン)以外を家から追い出し、レオノーラは単身パリに行って歌手を目ざすことになる。
 出発直前、ラファエルはレオノーラからの手紙を受け取るが、それをブルル夫人に見つかって、レオノーラのことを諦めさせられる。
 ラファエルが見送りに来なかった失意を引きずってレオノーラはパリへ行き、父の死後に多くの男を踏み台にラ・ブルーナという名のオペラスターになり、ある日故郷に帰って来る。
 ラファエルは母親の意向通り国会議員に当選し、養豚業者の娘のレメーディオス(ガートルード・オルムステッド)と結婚の約束をしていた。
 2人は再会し、レオノーラはラファエルに軽蔑の笑みを投げかけ、2人は表面的には恋が終わった態度をとるが、2人とも内心は未練が残っていた。
 ある日大雨が降り、ダムが決壊したらレオノーラの家が危ないと思ったラファエルは、キューピードとボートを漕いで救出に向かう途中ついに決壊。
 レオノーラの家にたどり着くと、彼女は「何度も激流が来ても100年間建っていたから大丈夫」と落ち着きはらっていた。
 そこで、ラファエルのレオノーラに対する恋が再燃するが、レオノーラは相変わらずラファエルを責める。
 レメーディオスとの結婚式の途中抜け出したラファエルはレオノーラの所へ行き、ついに2人は愛を確かめ合う。
 しかし、レオノーラは彼女の母親にラファエルとの関係を責められ、マドリッドの家へ帰りそしてアメリカ行きを決意する。
 そこにラファエルが来て、アメリカに一緒に行くと言い出すが、レオノーラは内心は嬉しかったものの、ラファエルには残って出世してもらいたいと思っていた。
 しかし、彼女がそれを切り出す前に、ラファエルは留まることを説得されて、また約束をやぶって逃げたのだった。
 月日は流れて、「カルメン」の公演で凱旋帰国したレオノーラの楽屋を、疲れ果てた風貌のラファエルが訪ねた。
 地位と家族を得たラファエルと、名声と若さを持つレオノーラは、他人の目には幸せそうだったが、2人とも愛は得られなかったのだった…。
 グレタ・ガルボ(1905生まれ)のアメリカデビュー作。
 邦題はキネ旬データベースでは『イバニエズ…』、NHKの放映時とallcinema ONLINEでは『イバニエス…』。
 原題は、"Torrent"(IMDb)、"The Torrent"(allcinema ONLINE)、"Ibanez' Torrent"(放映版のクレジットとキネ旬データベース)。
 ちなみに「イバニエズ」は原作者の名前。
 放送時間は73分、IMDbでは87分もしくは2063.19m=6769ft.=6769秒=約112分、allcinema ONLINEでは110分、といった具合に、情報がバラバラ。
 時間に関しては、キネ旬データベースに書かれているストーリーが放映されたものにないことが書かれていたり(とはいっても、この頃はビデオが無いので、ストーリーを細かくチェックできなくて、採録者の思い違いによって間違ったストーリーが書かれていることがあるのだが。)、レオノーラの父親が死ぬシーンがなかったりで、放映された73分版は短縮版かもしれない。
 というこのバージョン、ストーリーは2人のついたり離れたりの繰り返しで、平板で単調。
 タイトルにもある「激流」については、ミニチュアによるダム決壊と実写によるボートの合成は当時としては良く出来ているが、激流シーンはあっという間に終わってしまう。
 まあ、ガルボ目当てだったら観てもいいといったところ。
蝿男の逆襲 主演:ヴィンセント・プライス 1959 米 (日本未公開)、白黒 1:2.35 2004/03/15(月) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2004/03/17
ストーリー 感想
 前作『蝿男の恐怖』で、物質転送機のせいで蝿男になった科学者アンドレ。
 彼の自殺に手を貸し、その事件の詳細を唯一知っていた妻エレーヌが亡くなってしまう。
 2人の息子のフィリップは、アンドレの兄で事件の一部を知るフランソワ(ヴィンセント・プライス)が止めるのも聞かずに、助手のアランと父の研究を再開し、フランソワも手を貸すことになる。
 しかし、アランの正体は殺人も犯したこともある冷酷な犯罪者で、研究成果をほかに売り飛ばそうとして、密かに設計図を写真に撮っていた。
 その時、彼を追っていた刑事が研究室に現れ、アランを逮捕しようとするが、逆に捕まって殺されてしまう。
 死体を始末しに夜遅く出歩いたために、フィリップに怪しまれてついに正体がバレ、しかしフィリップを気絶させて蝿と一緒に転送機にかけ、研究室から逃げ出す。
 かけつけたフランソワが転送機からフィリップを戻そうとすると、現れたのは頭と左腕と右足が蝿の形の蝿男で、そのまま研究室から逃げ出す。
 そして、アランと彼と通じていた悪徳業者を殺し、研究室に戻って来る。
 フランソワは、予め捕まえていた「人間バエ」と蝿男を転送機に入れ、フィリップは元の姿に戻る…。
 『蝿男の恐怖』(1958 米)の続編で、あちらがカラーだったのに対しこちらはモノクロ。
 前作が、蝿男になって次第に理性を失っていく夫を、妻の目から見た描き方をしているかなり悲痛な物語だったのに対し、こちらは善玉と悪玉が対決したり、モンスターが人を襲うという、単純な話。
 モンスターものの典型といった感じで、特筆すべきことはこれといって無く、それなりに楽しめる。
 辻褄が合っていないとは言わないが、アランと通じていた葬儀屋の正体をフィリップが見破ることができたのは何故か?そしてそこにアランが現れるのを知っていたのは何故か?少年時代から10年以上物体転送の研究をしていたフィリップが完成せずに悩んでいる段階で、研究に関わったばかりのフランソワが、同じ転送機で蝿男を分離できたのは何故か?など、ストーリーで引っかかる点が多い。
 なぜ登場人物がフランス人の名前なのか?と思っていたら、どうやら舞台がモントリオール近郊だから。
 ただし、台詞は英語。
 
薄桜記 監督:森一生 1959 日(大映)、カラー 1:2.35 2004/03/15(月) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★ 2004/03/21 作成、2004/03/22 更新
ストーリー 感想
 中山安兵衛(勝新太郎)が、伯父の助太刀のため高田の馬場に向かう途中、彼のたすきが緩んでいるとすれ違った丹下典膳(市川雷蔵)が声をかける。
 気になった典膳は決闘の場へ行くが、彼の決闘相手が知心流の同門の村上兄弟と知ると、地方への公儀御用の旅に出るところでもめごとに巻き込まれるのを避けてその場を離れる。
 決闘を見ていた堀部弥兵衛からたすきを受け取り、決闘に勝った安兵衛は、米沢上杉藩の屋敷の門前で自害しようとするが、家主の江戸家老の千坂兵部に止められる。
 この一件で、安兵衛の堀内一刀流の評判が上がったので、知心流の一派が典膳に対し、逃げたことを責めて安兵衛との一騎打ちを持ちかけるが、彼は断る。
 一方の安兵衛は、今では江戸の娘たちに追っかけられるアイドルとなっていたが、両派は争いを避けるためにそれぞれ2人を破門する。
 安兵衛の師匠の堀内源太左衛門は、彼の仕官先として申し出てきた兵部の名代、長尾竜之進とその妹の千春を引き合わせ、安兵衛は彼女に一目ぼれする。
 その千春が野犬に襲われたところ、典膳と安兵衛が偶然通りがかって典膳が犬を斬り殺し、安兵衛は生類憐みの令から典膳を守るために、彼を逃がして後始末をする。
 その直後、安兵衛は知心流の一派に襲われるが、今度は典膳が代わって彼らに傷を負わせる。
 安兵衛は、千春が兄の古い友人である典膳に輿入れすると知って、上杉藩への仕官を断念し、堀部家の養子になって播州浅野家に仕える。
 典膳が御用の旅に出ている間に、彼に傷つけられて道場を破門された一派が、留守の屋敷に忍び込んで千春を手込めにしてしまう。
 彼らはまた、千春は安兵衛と不義密通をはたらいていたと噂を立てて、2人を戦わせようとしていた。
 江戸の屋敷に戻った典膳は、千春の親類たちの目の前で用意した狐を斬り殺し、不義密通の噂を狐に化かされたせいする。 しかし、犯された千春とは一緒にいられないとして彼女を実家に帰し、別れる理由を千春の父と兄に問われても話さなかったので、兄は典膳の右腕を斬り落とすが、典膳はそのまま姿をくらます。
 その頃、江戸城で浅野内守が上杉藩主の父の吉良上野介に斬りつけ、安兵衛たち赤穂浪士は吉良邸のそばで見張っていたが、吉良家と茶の湯の付き合いがあった千春が屋敷から出てきたのを安兵衛は見た。
 死の床にあった兵部は千春を呼び出し、典膳が隠れ住む米沢の湯治場に彼を迎えに行き、吉良邸の警備に紹介した知心流の一派たちを斬るように言う。
 上野介が茶会を開くために吉良邸にいるときこそが討ち入りの日に最適ということで、安兵衛は千春からその日にちを聞き出すために近づこうとするが、彼女が別れたと知っていた彼は、千春への未練が再燃した。
 典膳は、知心流の2人だけをおびき出して殺すが、残りの者に銃で脚を撃たれてしまい、通りかかった千春に助けられる。
 彼女が典膳を看病しているところに、吉良邸警護の上杉藩士全員が踏み込み、典膳は瀕死の状態ながら応戦する。
 そこに安兵衛が現れ全員を斬り殺すが、銃で撃たれた千春が茶会は14日に開かれると安兵衛に言い残し、死んだ典膳の手を取って息絶える。
 2人の死を見取った安兵衛は、堀部家の小さな娘と結婚式を挙げ、吉良邸への討ち入りに向かうのだった…。
 一言で言えば、忠臣蔵外伝のストーリー。
 見どころは、片腕片脚の雷蔵が20人ぐらいを相手にする立ち回りで、ほとんど仰向けに寝転がった状態のままで、向かってくる相手を次々に斬る。
 勝新は、不知火検校(1960)も座頭市物語(1962)もまだで、二枚目スターだったの頃の作品。
少女〜an adolescent〜 監督:奥田瑛二 2001 日、カラー 1:1.85 2004/03/14(日) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★ 2004/03/15
ストーリー 感想
 瀬戸市で派出所の警官をしている友川(奥田瑛二)は、非番の昼間に女子高生(小沢まゆ)に突然援助交際を持ちかけられホテルに行くが、結局何もせずに眠ってしまっている間に彼女はお金を置いて帰ってしまった。
 彼女の名は陽子で実は15歳の中学生で、友川の派出所に入り浸っている知恵遅れの兄の助政(小路章)と共に、2週間前から親から離れて葬儀屋の祖父の昌三(室田日出男)のところにいて、陽子は昌三の手ほどきで遺体に死に化粧をする仕事をしていた。
 昌三は彫り物師でもあり、陽子は家のアルバムの中に、彼が彫った背中の刺青のある友川の写真を見つけた。
 祖父は陽子の裸を時々覗いていたが、体が弱くてついに倒れてしまう。
 母親の幸枝(夏木マリ)と再婚相手の寺岡(金山一彦)が駆けつけるが、陽子は寺岡と関係を持っていて、彼から逃げるために祖父のところに来たのだった。
 友川の知り合いのチンピラが交通事故で死んで、葬儀屋に行って陽子と再会し、孤独だった陽子は友川と関係を持ち続けるようになる。
 退院した昌三は、陽子の背中に刺青を彫りたいと思って彼女の裸を覗いていたのだが、それを持ちかけるも陽子に断られる。
 しかし、彼女は友川の刺青が雄の半身の鳥であることを知っていて、対になる雌の半身の刺青を自分が入れたら結婚してくれるかどうかを友川に尋ねる。
 友川の家に来た助政は、そこで2人が抱き合っているのを見てしまい、子供の頃父の死の直後に母親が男とセックスしているのを見て以来セックスにトラウマがある彼は、かつて父親が首を吊って死んだ工場の煙突にの上に立てこもって、大勢が見守る中2人の秘密をばらして飛び降りるが、命は助かる。
 夜、友川が派出所で1人でいると、幸枝が現れ友川を刃物で脅して陽子との関係を責めながら犯してしまう。
 その後幸枝は陽子に、自分はかつての友川の恋人で、半身の刺青を入れるはずだったこと、陽子が母親への腹いせに寺岡と関係を持ったのを知っていたことを言って責める。
 陽子は友川を求めるが、彼は助政のために身を引くことにしたと陽子に言った。
 陽子は昌三に友川と対の刺青を彫って欲しいと頼み、体が利かなくなった後は友川が協力して完成させる。
 まもなく昌三は亡くなり、葬式の席で葬儀屋を売る話をつけていた幸枝と寺岡を見て、友川と助政と陽子は暴れて殴り倒す。
 助政は友川が陽子とセックスしないとの約束を聞いて彼を受け入れ、3人は香典や遺骨を持ってトラックで街を出る。
 荷台で友川と陽子がキスをしたりしているところに、1発の銃声がかぶる…。
 まず思ったことが、陽子と友川のキャラクターの背景は一応形の上では描かれているのだが、それでもまだキャラクターの肉付けが足りなくて、彼らが何に満たされていなくて、お互いのどこに惹かれてたのか?といった、真の具体的な動機となっているものが見えてこない。
 これでは、単に「孤独だから」ということだけで、彼らはこんなことをしたとしか見えず、それが話を弱くしてしまっていて、一言で言えば物語が表面的で、作り物っぽい映画のように感じた。
 それでも、この映画はそうした点も含めて明確さよりも曖昧さを狙って作られたとも考えられるが、その一方で、例えばどうも必要以上に入浴シーンが多かったりするなど、明確な狙いがあると感じさせる部分もあって、曖昧さと明確さが変な具合に同居しているのが気になるし、物語をさらに薄く感じさせている気がする。
 小沢まゆは、この映画のオーディションで選ばれてデビューしたのだが、特に可愛いわけでもないなりに、せつなさと色気があってよろしい。
 でも、結局印象に残るのが彼女の色気というのでは、奥田瑛二第1回監督作品というより、奥田瑛二エロ列伝の新たな1ページとしての印象の方が強くなってしまいそうだなぁ。
 ちなみに、映画では小沢まゆ演じる少女は最初は陽子と名乗らず、友川が「眉毛がきれいだから」という理由で勝手に「眉子」と名付けられるのだが、「小沢まゆ」という芸名もそこから来ているのだろうか?
 彼女の出演作は、映画に限れば今のところこの『少女』と、奥田監督の次回作『るにん』のみ。
見ざる言わざる目撃者   1989 米、カラー 1:1.85 2004/03/12(金) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★☆ 2004/03/15
ストーリー 感想
 売店の店員をしている耳が聞こえないジーン・ワイルダーが、目が見えないリチャード・プライヤーと意気投合して、彼も店で雇うことになる。
 謎の金貨の争奪戦で、彼らの店で殺人事件が起き、金貨を手にした2人は犯人に間違えられて逮捕され、真犯人たちにも狙われるが、警察から逃げ出して真犯人たちを捕まえる…。
 目が見えない男と耳が聞こえない男が、協力して悪人たちと渡り合う、と聞けば面白そうに思えるが、ジーン・ワイルダーは読唇術が使え普通にコミュニケーションがとれたりして、設定がそれほど面白さにつながっていない。
 悪役の1人がケヴィン・スペイシー。
男はつらいよ 拝啓車寅次郎様 監督:山田洋次 1994 日(松竹)、カラー 1:2.35(トリミング1:1.85) 2004/03/06(土) VHS(TV東京) ドラマ系 ★☆ 2004/03/06
ストーリー 感想
 営業の仕事に就職して半年の満男だが、仕事の意欲に欠けていることを専務(すまけい)に見抜かれ、辞めるなり続けるなり真剣に考えるように言われる。
 そこに寅さんが帰ってきて、セールストーク勝負で寅さんに完敗。
 寅さんは、またおいちゃんたちと喧嘩をして、すぐにくるまやを出てしまう。
 琵琶湖畔の長浜に来た寅さんは、風景写真を撮っている人妻のかたせ梨乃と出会い、腕を怪我した彼女と行動を共にする。
 満男も、長浜にいる先輩(山田雅人)から相談があると呼ばれて来て、妹の牧瀬里穂と親しくなる。
 梨乃は夫(平泉成)との仲が冷めているかもしれないと寅さんに言い、怪我の知らせを聞いたその夫が駆けつけて、梨乃に代わって車を運転して鎌倉に帰る。
 満男と里穂が祭りを見物しているとき、寅さんとバッタリと会うがすぐに見失ってしまう。
 祭りに通い詰めだった雅人が満男を呼んだ理由は、里穂と結婚して長浜で一緒に事業を手伝ってくれというものだった。
 満男は返答せずに東京に帰り、雅人も家族に話して、里穂は勝手に話を進めた兄と満男のことを怒る。
 梨乃がくるまやに寅さんに会いに来たり、東京に出てきた雅人が、満男は里穂に嫌われたと言ったり、寅さんが帰ってきて、満男の運転で鎌倉にいる梨乃に会いに行く。
 でも、寅さんは車中から梨乃の姿を眺めるだけで立ち去り、そのまま鎌倉から旅に出ることにする。
 駅での別れ際、「恋愛は疲れるから、ふられてほっとした」と言った満男を、寅さんは「若い者は恋にのめり込め。」と一括する。
 翌年の正月、里穂が満男を訪ねて柴又に来て、喧嘩別れはやめて仲良くなりたいと言った…。
 シリーズ47作目で、マドンナはかたせ梨乃。
 今回のテーマは、一応「仕事も恋も長続きしない、こらえ性のない満男」といったところ。
 でも、冒頭の仕事の進路での悩みはいつの間にかどこかへ消えてしまい、その後の展開も、左のストーリーに書いたように、出会いと別れの羅列といった感じの、なんとも冴えない映画。
 そんなパッとしない映画で、牧瀬里穂がメリハリの利いたはじけたキャラの例の持ち味を出していても、無意味に終わってしまっているのがもったいなさ過ぎる。
 渥美清は、前作同様マフラーをしていたり、激しい動きのカットが遠景なので代役にも見えたりで、体調が悪かったと言われればそんな感じにも見える。
 前作同様、亡くなった笠智衆は出演しないが、御前様は帝釈天にいることになっている。
 出演者は他に、冒頭とラストに巡業中の歌手役で小林幸子、長浜で寅さんたちを泊めるのが、『たそがれ清兵衛』にも出ている山田ファミリー(?)の神戸浩、牧瀬たちの父の郵便局長が河原崎長一郎。
 ちなみに、牧瀬里穂の出演やタイトルからもわかるように、今回は郵便局が協力している。
 すまけいと山田雅人が携帯電話を使っていたのはシリーズ初か?
愛と誠 完結篇   1976 日(松竹)、カラー 1:2.35 2004/02/29(日) WOWOW ドラマ系 ★★ 2004/02/29
ストーリー 感想
 花園実業高校に、砂土谷(さどや)峻(柴俊夫)率いる緋桜団が高校の乗っ取りを狙って現れ、早乙女愛と誠(加納竜)たちと対立する。
 峻は高校の理事長で政界の黒幕の座王与平(大滝秀治)が女中に産ませた子供で、由紀への片想いで彼女の子分だった腹違いの弟の権太と扱いが違うと、小さい頃から父を逆恨みしていた。
 誠が、彼を捨てた母の大賀トヨ(根岸明美)が飲み屋で働いているの姿を、向かいの店から密かに見ては涙を流していることを、岩清水(内田善郎)と愛に知られてしまう。
 誠と峻は果し合いをして、2人とも警察に捕まる。
 愛の父の将吾(根上淳)と与平の汚職が国会で追及され、愛の母の美也子(白木万理)は実家に帰り、将吾は自殺を図るが、愛が「世間に背いてでも生きて欲しい」と説得して思いとどまる。
 しかし、与平が自殺したことで、将吾は汚職に関わった者達の全貌を公表することを決意する。
 その頃、飲んだくれて息子と別れたことを嘆いているトヨを、誠は物陰から見ていた。
 記者会見の直前に、愛の身を守るために誠が愛の家に来るが、美也子が人質に取られて将吾は公表をやめて醜態をさらす。
 開放されて自宅に戻って来た美也子を将吾は受け入れるが、愛は責任を曖昧にする親たちを批判して飛び出す。
 愛を追って浜辺に来た誠は、自分が汚職の黒幕を暴くと言って、翌日浜辺で再会することを約束して立ち去る。
 誠は、美也子を乗せて来た外車から、汚職の黒幕の大臣と湊川会の親分(汐路章)を付き止め、ゴルフ場で2人がいるところを襲って、大臣に公表させようとする。
 そこに、湊川会に入り美也子の誘拐を進言した峻が現れ、与平を殺したのは大臣だとの誠の言葉も聞き入れず誠と対決。
 結局峻も大臣も死に、誠は傷つきながら翌朝浜辺にたどり着いて、一晩中待っていた愛を受け入れる。
 愛は誠と抱き合い続け、嬉しさのあまり誠が死んだことに気づかないのだった…。
 三部作を観終わって、愛と誠をはじめとした、自分の信念を守ることを第一に生きる人たちの、かなり濃い物語を堪能した。
 『完結篇』に政治の話題を持ってきたあたり、周りに流されずる賢く生きる人たちとは違って、信念に生きるということを強調して描いて、その気高さを表現したかったのだろう。
 早乙女愛は、2作目3作目と目ばりがきつくなって、3作目ではお嬢様らしいとはいえウエービーヘアーになっていた。
 今回の誠役の加納竜は、かなり様になっていた。
続愛と誠   1975 日(松竹)、カラー 1:2.35 2004/02/26(木) WOWOW ドラマ系 ★☆ 2004/02/29
ストーリー 感想
 名門青葉台学園を追い出さされた誠(南条弘二)は、謎のスケバンが取り仕切る不良だらけの花園実業に転校し、彼を追って早乙女愛も転校する。
 愛は、文学少女の高原由紀(多岐川裕美)と親しくなるが、彼女こそ影の大番長だと知り、自分が身代わりになるから、誠に乱暴しないで欲しいとお願いする。
 由紀は、孤児院から男の子と脱走して食べ物を盗んだとき、男の子に裏切られ自分だけ少年院に入れられて以来、他人を信用しなくなっていた。
 由紀たちは、愛を人質に取って誠を呼び出してリンチを加え、代わりに愛をリンチにかけて欲しいと頼めばやめると言う。
 しかし、誠は愛に恩を着せられることを嫌って拒否し、由紀は2人を解放し、誠のことを好きになっても2人の誇りの高さに破れることを恐れて自殺する。
 誠のアパートに看病に来た愛は、由紀の自殺の責任を誠に感じて欲しいと言うが、誠は余計なお節介だと言って愛を追い出す。
 しかし、誠はアパートの窓から愛の後姿を見続けるのだった…。
 前作と比べると、愛は誠を不良からまともな高校生にしようと思っていたのに、今回は誠の身の安全を守ろうとし、誠は生徒たちの頂点に立とうとしていたのが、今回はスケバングループの攻撃に対してほとんど防戦のみと、大幅に後退してしまった。
そのせいか、ストーリーも盛り上がりに欠け一本調子だし、登場人物たちも、早乙女愛もパッとしないし、誠もパッとしないのは前作の西城秀樹から南条弘二(新スター)に替わったせいだけではないだろう。
 多岐川裕美もいまいちパッとしない。
つばさ   1927 米(パラマウント)、白黒 1:1.33 2004/02/21(土) VHS(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 ★★★ 2004/02/22
ストーリー 感想
 アメリカの地方の町、ジャックは飛行機乗りに憧れていて、自分の車を改造して「流星号」と名づけていた。
 彼の隣に住む幼なじみのメリーはジャックのことが好きだったが、ジャックは都会から来たシルヴィアのことが好きだった。
 しかし、そのシルヴィアは、地元の金持ちの息子のデヴィッドと相思相愛だった。
 1917年、アメリカは第1次世界大戦に参戦し、ジャックとデヴィッドは空軍に志願する。
 シルヴィアはデヴィッドのために裏に愛の言葉を書いた写真を用意するが、ジャックが現れて自分のお守りとして強引にもらってしまう。
 流星号はメリーに預けられたが、メリーはジャックの後を追うために自動車部隊に入隊し、ヨーロッパで医薬品の運搬をする。
 同じ部隊に配属されたジャックとデヴィッドは、シルヴィアのことで仲が悪かったが、やがて親友同士になり、コンビで戦闘機を操縦して手柄を立て続ける。
 メリーが来た村に対してドイツ軍の爆撃機による空爆があり、そこに現れたアメリカ軍の戦闘機に流星が描かれていたことで、メリーはついにジャックの居場所を突き止める。
 休暇でパリに行ったジャックの後をメリーも追っていくが、女と一緒に飲んだくれて、メリーのこともわからないほどだった。
 連合軍の総攻撃が迫っていて、休暇中の兵士たちに緊急招集がかかっていたので、メリーは正気を失ったジャックをホテルまで連れて来るが、2人が一室で一緒だったところを憲兵に見られたため、メリーは除隊させられる。
 隊に戻り、デヴィッドはジャックが持っていたシルヴィアの写真の裏のデヴィッドへの言葉を見てしまい、ジャックがそれを見てがっくりするのを避けるために写真を破り捨ててしまう。
 ジャックの怒りが納まらないまま2人は出撃し、デヴィッドが撃墜されてしまうが、彼は生きていて敵陣をさまよい続けた。
 そしていよいよ連合軍の総攻撃が始まり、デヴィッドが死んだと思ったジャックは敵討ちに燃える。
 デヴィッドはドイツ軍の戦闘機を奪って自陣に向かって飛んでいると、流星の描かれたジャックの飛行機が迫るのに気づくが、ジャックはデヴィッドに気づかずに撃ち落す。
 撃墜場所に来たジャックは、初めてデヴィッドの存在を知り、彼の腕の中でデヴィッドは息を引き取り、デヴィッドの遺した手紙から彼のジャックに対する思いやりを知るのだった。
 英雄として故郷に帰ったジャックだが、デヴィッドを死なせた自責の念にとらわれていた。
 しかし、デヴィッドの両親は彼を許し、メリーとの愛にも目覚めるのだった…。
 第1回アカデミー作品賞受賞作品。
 邦題から優雅な映画を想像していたのだが、実際には空中戦のシーンをふんだんに取り入れ、多数のエキストラによる大規模な地上戦シーンもある、戦争スペクタクル大作だった。
 飛行機のシーンは、操縦士のアップのカットは、背景がスクリーンプロセスによる合成だろうが、大半が実際に飛行機を飛ばせた実写によるもの。
 空中戦のシーンでの、数機の戦闘機がさながら曲芸飛行のように飛んでいるさまは圧巻。
 しかも、撃墜されて煙を吐きながらきりもみで急降下したり、地面に激突するカットまである。
 ジャックがパリで酔っぱらっているときに、人やモノを揺するとそこから空中に泡が立つのが見えて喜ぶのがユーモラスだが、この泡はアニメを二重焼きしたものだろう。
男はつらいよ 寅次郎の縁談 監督:山田洋次 1993 日(松竹)、カラー 1:2.35(トリミング1:1.85) 2004/02/21(土) VHS(TV東京) ドラマ系 ★★ 2004/02/21
ストーリー 感想
 満男は就職試験をいくつも受けるが、落ちてばかり。
 博とさくらが押し付けるから、行きたくもない大学に行っていたと言って喧嘩になり、当てもなく家を飛び出す。
 1週間後、寅さんが柴又に帰って来たとき、満男からの小包が届き、発送元の瀬戸内海の琴島に寅さんが説得しに行く。
 満男はほんの1、2日のつもりで島に来たが、漁や畑仕事の手伝いをして若い働き手のない村の人に感謝され、看護婦の亜矢とも親しくなって帰る気がしなくなっていた。
 満男の居候先には、年老いた1人暮らしの男と、彼の娘で神戸の料理屋の女将をしながら時々帰ってきている病弱の松坂慶子がいて、寅さんもそこに泊まることになった。
 島の人たちは東京から来た2人が珍しいこともあって、みんなで松坂の家に集まってドンチャン騒ぎ。
 松坂も寅さんのことが気に入り、2組の仲はうまくいっていたが、満男は就職活動などの東京での暮らしが、寅さんは積極的になれないことから、結局2人は島を後にする。
 満男は寅さんと高松で別れて1人で柴又に帰り、就職活動を再開する。
 翌年の正月、松坂は寅さんに会いにくるまやに来るが、四国で商売をしていた寅さんは、恋人を連れた亜矢と再会するのだった。
 シリーズ46作目。
 大学を出て就職するという人生が嫌になった満男が、家出をして別の人生と恋を手にしたように見えながら、結局それを捨てて元の生活に戻る理由が、「何となく」というのは、なんか観ていて歯がゆいなあ。
 まあ、本来よそ者の彼があのまま島に居続けたとして、うまくいきそうにないのは確かなんだけど、物語的な恋の決着のつけ方としてはすっきりしない。
 というより、船が出る直前に「残った方がいいんじゃないか?」と言った寅さんが、船が出てから「やっぱり残る。」と言った満男に「男は諦めが肝心」と言ったりと、山田&朝間コンビもよく解らないで脚本を書いたんじゃないの?
 寅さんの方の破局の原因も、満男が松坂に「実は寅さんはあなたが好き」と言ったことがお節介だからというのも、なんかいい加減。
 まあ、優柔不断で何となく失恋する寅さんのパターンが、満男に遺伝したかのように似てきて、そのことがこの先面白くなりそうなのは確かなんだけど。
 データベースのサイトには、出演者が10人ぐらいしか載っていなくて、満男の恋人の亜矢を演じた人が判らなかったのだが、城山美佳子という浅野愛子に似た感じの人。
 その他、寅さんが通りがりに見かけた花嫁の父ですまけい、島の駐在(と、小包を届ける郵便配達員の二役?)で笹野高史、島の人々で桜井センリ、松金よね子、神戸浩なども出演。
 1作目のマドンナで御前様の娘の演じた光本幸子が、同じ役で柴又に里帰りするシーンで特別出演。
 その御前様役の笠智衆は、この映画の撮影前の93年3月16日に亡くなって、前作の『寅次郎の青春』の出演が最後だが、この映画では登場はしなくても御前様はまだいることになっている。
 寅さんは、今回から襟巻きをするようになり、トランクも満男が持ったりでなるべく持たないようにしていて、渥美清の体調が悪くなってきたのだろうか?
おもいでの夏   1971 米、カラー 1:1.85 2004/02/19(木) NHK-BS2 ドラマ系 ★☆ 2004/02/21
ストーリー 感想
 1942年の夏のある島、15歳のハーミーはオスキーとベンジーの3人組で、医学書を読んでセックスの知識を得たり、同年代の女の子3人組を映画館で引っ掛けて一緒に映画を観ながら触ろうとする。
 しかしハーミーは、丘の上の家に住み、夫を戦場に送り出した人妻のジェニファー・オニールに夢中になり、彼女と知り合って彼女の家に行くことに成功し、その後も彼女の家に通っては家事の手伝いをする。
 ある日、家を訪ねると、夫の戦死の電報を見つけ、現れたジェニファーはハーミーをベッドに誘う。
 そして、彼女はその地を離れるのだった…。
 ミシェル・ルグランの美しいテーマ曲で有名な作品。
 けれども、内容といえば少年たちの童貞喪失ものの、その後バリエーションが豊富になる前の元祖の作品といった感じで、例えばコンドームを買うのに10分ぐらいかかったりなど古典的だが、このジャンルの古典は古臭かったりシンプルすぎたりで面白くない。
愛と誠   1974 日(松竹)、カラー 1:2.35 2004/02/19(木) WOWOW ドラマ系 ★★☆ 2004/02/21
ストーリー 感想
 9年前の1965年、早乙女愛は父の別荘のある蓼科でスキーをしているときに、急斜面に入って危ないところを地元の少年に助けられるが、彼は額に傷を負ってしまう。
 愛はその少年に、助けたことを口外するなという約束をさせられ、それを守りながら彼に対する憧れを抱いて高校生になる。
 合宿で蓼科に来ていたときに、バイクにのったチンピラたちに襲われたところ、フーテンタイガーこと太賀誠(西城秀樹)率いる不良たちが用心棒代欲しさに助ける。
 誠の額の傷を見た愛は再会に驚くと共に負い目を感じ、逮捕されて少年刑務所に入れられそうになるところ、父親に頼んで代議士に手を回して救い、東京の同じ名門青葉台高校に入学させる。
 編入早々、先生を殴り倒したりするが、愛が自分のことを愛していて、愛の父の後ろ盾で退学にならないことを知って校内でのさばり、生徒たちの支配を狙う。
 そして愛には、愛を助けたことを隠したために、治療費で家計が苦しくなって家庭が崩壊したせいで自分がこうなったと言う。
 愛は誠への好意を公表して学園のアイドルの名を汚し、ラグビー部とボクシング部から勧誘を受けながらバイトのため入部できないと言う彼に代わってバイトまでする。
 学園の風紀を乱しながらも人気を集めていく誠を快く思わないラグビー部の高岡健二とボクシング部の織田あきらは誠に果たし状を出す。
 このことを誠から知らされた愛は、「君のためなら死ねる」と愛を愛している秀才の岩清水(仲雅美)に助けを求め、2人は対決の地の川原に止めに行く。
 岩清水は地面に突き立てたナイフに後ろ向きに倒れるという命懸けの決闘を誠に申し込み、結果は引き分け。
 話がまとまりかけたが、誠の手下たちが誠の制止を無視して助っ人に入り、高岡&織田の一派と乱闘。
 全員が倒れる中、誠は巻き込まれて傷ついた愛を抱きかかえるのだった…。
 梶原一騎原作の同名の漫画の映画化で、続編も作られた。
 観始めたときは70年代らしい表現が古いと思ったが、観ていて話の面白さに次第に気にならなくなった。
 愛にとっては、ダメな男を立ち直らせるために、自分が犠牲になってダメになって行くのを自覚しながらも後には引けない、といった話で、基本的にそういう話は面白いのである。
 最近の日本人はすっかり打算的になって、愛のような損な役回りは「ありえない」の一言で、共感できないということで拒否するだろうが、「愛することは理屈じゃない」と受け入れてしまう方が、絶対に映画を楽しめる。
 早乙女愛は役名をそのまま芸名にして、クレジットで通常の(新人)ではなく(新スター)と紹介されるほどさすがに可愛い。
 「フーテンタイガー」って、つまり「フーテンの寅さん」ってことなのね。役柄のタイプは全然違うけど。
男はつらいよ 寅次郎の青春 監督:山田洋次 1992 日(松竹)、カラー 1:2.35(トリミング1:1.85) 2004/02/16(月) VHS(TV東京) ドラマ系 ★★ 2004/02/21
ストーリー 感想
 オープニングコントは、活弁つきのサイレント映画風。
 明治時代(?)、ハムレットの翻訳をしていた寅次郎博士のところに、甥の満男が親の決めた結婚を嫌がった泉(後藤久美子)を連れ出して、追っ手から逃れて助けを求めて来た。
 柔道の使い手でもある寅さんは、追っ手たちを次々と水中に投げ捨てて…、というところで夢から覚める。
 満男は、東京のレコード屋に勤める泉を、寮の食事は不味いだろうということで、さくらの料理を食べさせるために家に泊まらせる。
 泉は、高校時代の親友が宮崎で挙げる結婚式に出ると満男に言うが、1人になった彼女は寂しそうだった。
 油津の喫茶店で「いい男いないかなあ」と言って現れた風吹ジュンと、そこにいた寅さんが知り合い、彼女の床屋に泊めてもらう。
 翌日、2人が観光しているところに泉が現れるが、寅さんが足をくじいて病院に運び込まれる。
 このことを泉がくるまやに電話で知らせると、そこにいた満男が電話をとって、泉に会いに行く口実を作るために、重体であるかのように話を大きくしてしまう。
 油津で泉に会った満男は、泉が風吹の弟の船乗りの永瀬正敏と親しくしているのを見て嫉妬し、泉と一緒にいようとしない。
 しかし、永瀬に婚約者がいると知ったとたん、泉のもとへ走っていく。
 風吹は、5、6年前前「一緒に暮らそう」と言った見ず知らずの客のことが忘れられないと泉に話す。
 泉はそのことを満男に話し、自分はそんな幸せが来ることを待つより、自分で幸せをつかみたいと言う。
 寅さんは満男たちと一緒に帰ることにし、「風吹が1人で寂しそうだからつい長居してしまった。」の言葉に、風吹は同情されたことに腹を立て、立ち去ってしまう。
 きょとんとする寅さんに、泉は「寅さんのことを愛してることに気づかないの?」と残るべきだと言うが、満男は「最初は良くても最後にはいつものようにうまくいかない。」から帰るべきだと言う。
 松葉杖をついた寅さんと満男が柴又に帰って来るが、タコ社長と喧嘩をして足が治っていたことがバレてしまう。
 名古屋にいる泉の母の夏木マリが心臓の手術をすることになり、泉に帰って来て欲しいと電話をかけてくる。
 泉は休暇がとれず、レコード屋を辞めて名古屋に帰ってそこで仕事をみつけることにし、そのことを知った満男は東京駅に急行する。
 ホームで、何もしてやれないことを嘆いた満男に、泉はキスをして別れる。
 満男がくるまやに帰って来たのと入れ違いに、寅さんが旅に出る。
 見送りで駅まで付いて行った満男は、寅さんに苦しい胸の内を吐露する。
 翌年の正月、下呂温泉で商売をしている寅さんは、新婚旅行中の永瀬と再会し、風吹がある客と突然結婚して博多に移り住んだことを聞かされた…。
 シリーズ45作目。
 風吹ジュンは恋愛に積極的なタイプの役なので、寅さんとの恋愛も盛り上がりかけるのだが、完結しないまま途中で突然終わるのが中途半端で大いに不満。
 しかし、満男と泉の恋愛は、泉にしてみれば満男に積極的に引っ張って欲しいと思いながらそうはしてもらえず、しかし満男の誠実さは痛いほどわかるから、なかなか先には進まなくても満男のことを大事に思っている、と、せつなくなってきた。
 2人の行く末が気になるところだが、どういうわけか後藤久美子の出演はここでひとまず中断し、次回は3年先の男はつらいよ最終作(1995)。
 そして、その頃アレジと一緒になって、女優業もとりあえず辞めてしまう。
 「バブルがはじけた」なんて台詞が飛び出すので、シリーズを続けて観ていると世相がわかって面白い。
カルテット 監督:久石譲 2000 日、カラー 1:1.85 2004/02/13(金) VHS(NTV) ドラマ系 ★☆ 2004/02/14
ストーリー 感想
 カルテットのコンクールでメンバーが失敗した3年後、その4人である袴田吉彦はコンサートマスターとして所属していた盛岡の交響楽団が仙台との合併で人員削減の対象に、桜井幸子は演歌歌手のバックバンドに嫌気がさして辞め、大森南朋は大学の助手の仕事が人員削減の対象に、久木田薫は社長令嬢で音大に通っているが目が出ない。
 交響楽団のオーディションで4人は再会し、落ちた4人は賞金目当てにかつて出場したコンテストを再び目指す。
 4人の中で一番の実力の持ち主の袴田は、カルテットはソリストになれなかった者がやるものとバカにしていて、練習中に他の3人のミスを厳しく指摘する。
 そんな彼は、少年時代にバイオリニストであった父から厳しくバイオリンの指導を受けていて、コンサートで演奏しようとする曲は父の作曲したものだった。
 4人は大学の恩師の三浦友和の紹介で、地方のイベントで演奏をするドサ回りの仕事をする。
 その最終日の盛岡で、袴田はかつての同僚の藤村俊二から、父はオーケストラでの人間関係に悩み、気の合う藤村らと一緒にお金にならないカルテットのメンバーになったことを聞かされる。。
 家族よりも自分の目指す音楽を大切にし、そのために母親が出て行ったことで、袴田は父を憎んでいたが、彼にとっても音楽が第一だった。
 そして、カルテットの曲は父が袴田のために書いたもので、最後の部分は未完でバイオリンのソロのような終わり方だった。
 東京に帰って、袴田にオーディションを受けた新東京管弦楽団のコンサートマスターに雇うという話が来て、そのお披露目のコンサートがコンクールの日と重なった。
 そのことをどちらにも何も言えずに、当日袴田はコンクールに行かず管弦楽団に行く。
 しかし、演奏途中で気が変わって抜け出し、棄権になる直前にコンサート会場に着いて演奏し、袴田が曲を書き直した通り、ソロで終わるのではなく4人が同時に演奏を終えるようになっていた。
 ある1つのことを成し遂げ人生の節目を迎えた4人は、各自はそれぞれ別の人生を歩むのだった…。
 久石譲が監督した、音楽家としての自分の生涯を反映させていると思われる作品。
 演奏家になる人は、小学校に上がる前の自分の進路も判断できない頃から、親の意向でみっちり教え込まれるものだが、大きくなって自我に目覚めると、そんな少年時代が屈折した形で影響することが考えられる。
 そんなことを思わせる点では、音楽家が作った映画ならではということが感じられたのだが、それ以外の「音楽は1人でやるものではなく、みんなの気持ちを1つにしてやるもの」とか、「音は楽器が出すのではなく、心が出すもの」とか、上っ面な言葉だけのことを浅く取り上げただけの様々な要素を、これら以外にもあれこれ詰め込み過ぎ。
 音楽を優先した父のわがままを嫌っていることを袴田は自覚しているくせに、自分も同じ態度をとってしまうのは、どうも納得しづらい設定なのだが、それだけ屈折してるってことなのか?
 イベント会場巡りのドサ回りは、誰も演奏を聞いていないような状況ばかりなのだが、熱海の花火大会で久石作曲の『となりのトトロ』を演奏すると、子供たちが注目しだす…って、結局曲目次第で演奏なんてどうでもいいってこと?それじゃ、映画の内容的にマズいだろう。
 かなりの比重を占めているドサ回りのシーンも、ストーリー上重要とは思えず、単に田舎の風景を入れたいがためだけにそんなエピソードを入れただけとしか思えないイメージ映像的なシーンが多くて、この点でも余計なものを詰め込みすぎ。
 不用意な表現やわざとらしい表現が多く見られ、全体に詰めの甘い出来上がり。
 まあ、本職外の監督作品だから、こうなるのもしょうがないかなぁ?
 作らせる側のプロデューサーの考えの甘さの方は問題だけど。
勝手にしやがれ!! 強奪計画 監督:黒沢清 1995 日、カラー 1:1.85 2004/02/11(水・祝) VHS(WOWOW) お笑い系 ★★ 2004/02/11
ストーリー 感想
 哀川翔と前田耕陽は、ゆすりをしたことでヤクザともめて袋叩きにあう。
 傷を負った哀川が倒れこんだ幼稚園の七瀬なつみ先生に看病されて、彼女の真面目さに一目ぼれ。
 一方の前田は、キャバクラのホステスと結婚すると言って哀川に紹介すると、それは七瀬だった。
 彼女は、父親をアメリカで手術させるために3千万円必要なので、夜の仕事もしているのだった。
 そこに突然、父親の病状を悪化させた元医者の菅田俊が現れ、七瀬を助けたいと付きまとうが、彼女は悪運続きの彼を貧乏神と言って拒否する。
 会社をクビになってなんでもすると言う菅田に哀川たちは仕事を世話するが、気弱な彼は思うようにできない。
 一方、七瀬は競馬のノミ屋に気楽に賭けて、2百万円の借金を作ってしまう。
 困った哀川は、大杉漣と洞口依子から百万円で運び屋の仕事を引き受け、引渡し現場が女性専用パブなので七瀬も仲間に引き入れる。
 しかし、ブツが5千万円ぐらいする覚せい剤だと知った七瀬は、ブツを渡さずに持って来てしまう。
 取引相手の國村隼は、菅田を誘拐してブツを要求し、電話を受け取った七瀬はブツを持たずに行って捕まってしまう。
 哀川と前田は國村のところに行って、國村にブツを投げ渡すが、受け損なって床に開いた穴に落とし、床下の運河に沈めてしまう。
 國村は七瀬を人質にし、もう一度陸揚げされるブツを哀川たちに横取りさせようとする。
 しかし、その横取りしようとした相手は女装した大杉で、彼に頼んでも譲ってもらえず、仕方なくニセモノのブツを手作りする。
 七瀬の解放と同時に、今度は投げるのではなく國村手作りの雨どいを転がしてブツを渡すが、國村は七瀬につないでた紐をたぐり寄せて、彼女とブツを手中に。
 しかしブツは実はビックリ箱で、國村が驚いたのと突如菅田が乱入したことで4人は逃走。
 逃げる4人に向けて國村が発砲した弾が七瀬に当たり、反撃した哀川に國村は逃げ去って、ブツを失った落とし前を恐れて警察に出頭。
 後日、菅田の生き別れた伯父がハワイのパイナップル農場主で、命を取り留めた七瀬と共に渡米して父の手術費用を出し、そのままアメリカに永住することを哀川たちは知るのだった…。
 黒沢清監督の、『地獄の警備員』(1992)と『CUREキュア』(1997)の間に作られた、「勝手にしやがれ」シリーズの1作目。
 一応チンピラたちの話なのだが、とぼけたストーリー展開でまずまず可笑しい。
 アップやカット割りの少ない映像は、他のタイプの黒沢作品と同じテイスト。
シベールの日曜日   1962 仏、白黒 1:2.35(トリミング1:1.33) 2004/02/09(月) NHK-BS2 ドラマ系、感覚系 ★★★☆ 2004/02/21
 ベトナムで操縦していた戦闘機が墜落して記憶喪失になったピエール(ハーディ・クリューガー)と、親に寄宿学校に捨てられた女の子のフランソワーズ(パトリシア・ゴッジ)が、日曜日ごとに校外で会うという、おなじみの物語。
 子役といえば、『禁じられた遊び』のブリジッド・フォッセイか、この『シベールの日曜日』のパトリシア・ゴッジ(当時12歳ぐらい)かと言われるだけあって、彼女がハーディ・クリューガーと会って楽しそうにしているところなんか、可愛いったらありゃしない!
 ハーディ・クリューガーならずとも、ずっと彼女のそばにいて助けてあげたいと思って、夢中になって会っちゃうよなぁ。
 お互いにかけがえのない存在の者同士が森の中であってファンタジックな会話をするシーンの、可愛らしさと物悲しさの混じった雰囲気が映画全体を覆っていているのがたまらない。
 そしてあの有名なラスト、もう何十回見たかわからないけど、それでもまた何度も見てしまうほど、本当に素晴らしい。
ロミオとジュリエット 監督:フランコ・ゼフィレッリ 1968 英=伊、カラー 1:1.85 2004/02/07(土) VHS(WOWOW) ドラマ系 ★★★★ 2004/02/14
 実は、フランコ・ゼフィレッリ監督って嫌いなんだけど・・・くさいし・・・なんとなくだけど・・・。
 でも、この映画はもちろん好きで、他の作品も今見直したら嫌いじゃないかも。
 で、何度も観た『ロミオとジュリエット』を久しぶりに観て、今回は字幕に注意して観ていたのだが、2人が最初に会う仮面舞踏会のシーンやその後のバルコニーのシーンが改めて観て本当に素晴らしくて、いつの間にか字幕そっちのけで映像の方に食い入ってしまった。
 躍動感と情感にあふれていて、今観ても全然古く感じない。
 この映画の2人、特にジュリエットの方は、古典に対するゆったりしたイメージとはまるで違って、頭で考えずに反射神経で行動しているんじゃないかと思うくらいリアクションがとにかく速くて、仮に2人が死なずに済んで一緒になったとしても、あんなに激しい性格のジュリエットだったら、ロミオがちょっとでも浮気心を見せようものなら、いきなり刃物をつきつけられてロミオは平謝り、なんて、とても仲睦まじい夫婦にはならなかったのでは?
 そんな主に激情一直線のジュリエットが、一転してキョトンとしながら首を傾けて正面をみつめたり、すましたような笑顔なども時々見せたりして、表情の豊かさがすごい。
 オリビア・ハッセーって、可愛いだけじゃないことを改めて思い知らされて、これじゃ公開当時人気が爆発したのも無理ないなぁ。
 こんなジュリエットを日本人に演じさせるとしたら、池脇千鶴ちゃんに是非。
 すると、ロミオはやっぱり妻夫木くんかな?
 それから、ジュリエットの乳母は柴田理恵か篠原ともえに。
けものがれ、俺らの猿と   2001 日、カラー 1:1.85 2004/02/03(火) VHS(テレビ東京) 不条理系 ★☆ 2004/02/11
ストーリー 感想
 大家から立ち退きを要求されていても、「私はもっと有意義な人生を送りたい」と書かれた紙を貼ったボロ屋に住み続ける仕事のない作家(?)の永瀬正敏のところに、映画プロデューサーの小松方正が、ゴミ処分場をめぐる社会派娯楽映画の脚本の執筆を依頼し、ロケハンに出るように言う。
 ロケハンの先では、突然の監禁と拷問、助けたと言い張っての謝礼の要求、同行した小松の発作、電話を探してたどり着いた鮫肌実の家での脈絡のないやりとり、小松との待ち合わせ場所の喫茶店の店番になっててんてこ舞い、などの災難に次々と襲われる…。
 変な演技、変なカメラワークと編集、変な衣裳などで、主役の永瀬正敏がイライラし、そんな彼を通して観ているこっちもイライラさせるのが目的(恐らく)の映画。
 一見、新しいタイプのようにも見えるが、昔ながらの不条理劇にも見える。
 数々のエピソードを通して、社会に翻弄される現代人の映画にも見えるが、単なるナンセンスにも見える。
 結局、直感的に面白くないので、深く考える気はない。
コンドル 監督:ハワード・ホークス 1939 米、白黒 1:1.33 2004/01/27(火) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2004/02/21
ストーリー 感想
 南米の港町、バランカ。
 定期船の数時間の寄航の間、パナマの仕事に向かうアメリカ人の歌手のボニー(ジーン・アーサー)は、山奥との間で郵便物を運んでいるセスナのパイロットたちと酒場で知り合う。
 この地での飛行は、一帯に常に霧が立ち込め、山奥に向かうのに峠を通り抜けなければならないので、峠に見張りを置いて霧が晴れているかを確認しながら飛ぶという危険なもので、この時も霧で引き返してきたセスナが着陸に失敗して、知り合ったばかりのパイロットが死ぬのを目の当たりにした。
 ボニーは危険な仕事をするパイロットたちを理解に苦しみながらも、パイロットのリーダーのジェフ(ケーリー・グラント)が気がかりで、船には乗らずに飛び立った彼の帰りを待った。
 翌日、補充で雇ったパイロットのマクフィアソン(リチャード・パーセルメス)は、かつて彼が操縦していた飛行機が墜落して、同乗していたキッド(トーマス・ミッチェル)の弟を見殺しにしたと言われ、パイロットたちに嫌われていた。
 そして、彼について来た妻のジュディ(リタ・ヘイワース)は、かつてのジェフの恋人で、ジェフの飛行の度に心配するのが嫌になってジェフを捨て、ジェフはそれ以来女を避けるようになった。
 キッドは目が悪くなっていたことがジェフにバレて操縦を止められたこともあって、マクフィアソンを雇うことを認める。
 ジュディはマクフィアソンに対して、ボニーはジェフに対して、かつてジュディがジェフに対して抱いていた不安な気持ちに襲われるようになった。
 長雨が続き、峠を通らずに温存していた新型機で山の上を飛ぶしかなくなり、ボニーは銃でジェフを脅して止めさせようとして、誤って彼の肩を撃ってしまう。
 代わりに、マクフィアソンとキッドが飛んだが、山を越えるのは新型機でも無理なことがわかり、やむなく視界ゼロの峠を通ると、そこに棲むコンドルが飛行機を直撃。
 キッドは傷つき、飛行機は炎に包まれたが、マクフィアソンはパラシュートで脱出せずに、飛行場まで引き返して不時着に成功するも、まもなくキッドは死ぬ。
 ボニーの乗る船が入港し、別れの挨拶をしつつもジェフに引き止めてほしいと言ったとき、峠の霧が晴れたとの無線が入り、ジェフはコインを投げて表が出たから残れとボニーに言って飛び立つ。
 ボニーは、そのコインが両面とも表であることに気づいて喜ぶのだった…。
 原題は"Only Angels Have Wing"で、コンドルはほとんど関係ない。
 最初はいがみ合っていた男と女が次第に愛するようになるという、恋愛モノの王道。
 パイロット仲間が死んだときに、彼がいなかったことにして酒場でドンチャン騒ぎをして悲しみを紛らすという、男の心意気でも魅せる。
 飛行機にまつわるシーンは、実際の飛行機が飛んでいるのを撮影したものと、ミニチュアによる特撮を合わせて使い、どちらも見事。
 ミニチュアの方は、同時期に作られて、後に見たアメリカ人が実写だと思ったという、円谷英二による『ハワイ・マレー沖海戦』(1942 日)に勝るとも劣らない出来ばえ。
上を向いて歩こう 監督:舛田利雄 1962 日(日活)、カラー 1:2.35 2004/01/26(月) VHS(NHK-BS2) ドラマ系 ★★★ 2004/02/10
ストーリー 感想
 少年鑑別所から集団脱走した中の2人、浜田光夫と坂本九は、少年保護士をしている魚河岸の運送業の社長の芦田俊介にかくまわれる。
 怪我をした九ちゃんを置いて浜田だけは逃げ出し、九は芦田の元で運送の仕事をする。浜田はドラマーになることを夢見て、かつて彼にドラムを教えたドラマーである牧を訪ねて、ひとまず彼の所属するバンドのバンドボーイになる。
 しかし、牧はヒロポンを買う金欲しさに、高橋英樹が取り仕切るスポーツ賭博にはまっていた。
 その高橋も、かつては芦田の世話になっていたが、そこを飛び出したのだった。
 妾の子供で、その母親に捨てられた高橋は、正妻の子供である兄のように親に愛されず、兄と同じ大学を受けて合格したことで、ノミ行為の足を洗って父に受け入れられようとする。
 芦田の娘の吉永小百合は、高橋の兄と大学での知り合いだったが、その兄から高橋の話を聞き、彼女ももらい子で芦田の実の娘である妹がいることもあって、高橋に同情して親しくなる。
 吉永の勧めで高橋は兄の誕生パーティーに出席するが、兄に冷たくされ飛び出し、吉永は兄をののしる。
 浜田は牧を怒らせてバンドボーイをクビになり、芦田のところに行くも従業員たちに冷たくされて飛び出し、高橋のところで賭けたことがきっかけで、高橋たちは牧の借金のかたに彼のドラムを取り上げる。
 浜田はドラムを取り戻すために、九に車泥棒をまたやるのを手伝ってくれと持ちかけるが、九は断る。
 そのころ、芦田の従業員たちが、策略で高橋のところで賭けて大勝ちし、金が払えないのでドラムを持ち帰る。
 九はそれをもらって浜田のところに返しに行くが、入れ違いで浜田は九に与えられた新車の軽トラックを出す。
 しかし、警察に追われて車は横転。
 浜田は九が取り戻したドラムを見て喜ぶが、そこに現れた九が怒ってドラムを叩き壊して2人は殴り合い。
 一方、高橋たちも芦田の所に来て、その中の1人と高橋が一騎打ち。
 やがて彼らは、殴り合いにむなしさを感じ手を取り合うのだった…。
 言わずと知れた、同名の世界的ヒット曲から作られた映画。
 愛情を与えられない者たちの疎外感から来るイライラと、反逆精神のギラギラした雰囲気が全編を覆う。
 日中の東京ロケを多用し、大胆なアングルのカメラワークで躍動感を出した舛田利雄監督の演出が素晴らしい。

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