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だいこんやくしゃ(大根役者) 歌舞伎用語。「だいこんやくしゃ」とも読む。演技の拙劣な俳優のこと。芸、興業の「当たり」に対し、大根は食って当ったためしがない。または大根の鈍重、白(素人)の形状から見立てた戯言ともいわれる。 .
だいじんばしら(大臣柱) 歌舞伎劇場では、最初能舞台を模したからこの名称が残った。右方チョボ床と舞台をくぎる柱を上の大臣といい、左方下座と舞台をくぎる柱を下の大臣という。両方の大臣柱を結ぶ線を大臣道りまたは定式線と呼び、二重、屋台はこの線より奥に飾るのが定式になっている。

だいほん(台本) 実際に上演に必要な条件、指示などが記入してある脚本のこと。上演に当たって劇の仕組み、舞台装置、せりふ、ト書きなどを完全に記録したもの。通常スタッフ・俳優に手渡されるのはこの形の脚本。 .
たかあし(高足) 大道具の標準寸法のひとつ。舞台床面から2尺8寸高いこと。舞台で御殿や寺院など格の高い屋敷の装置を組むときは、この高さにすることが多い。 .
たきぎのう(薪能) 篝火(かがりび)をたいて演じる、野外の能のこと。 .
たきすて(焚き捨) きえもの(→きえもの)と同じ。 .
たけもと(竹本) 1.義太夫節、またはその演奏者のこと。「竹本連中」などと、主に歌舞伎で用いられる。
2.義太夫節の語り手である太夫の姓。ほかに「豊竹」姓がある。
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たちいち(立ち位置) 役者や歌手が舞台に立つときの定位置。 .
たちげいこ(立ち稽古) 稽古の段階で、台詞だけの稽古の「読み合わせ」の次に行われるもので、舞台装置などの配置を仮定して動きがともなう稽古。 .
たちまわり(立ち廻り) 1.能の場合は舞の一種として扱う、切り合いの場面、演技。
2.殺陣(たて/さつじん)ともいう。映画、テレビ、舞台で演じられる喧嘩や切り合いなど格闘の場面。この場面の演技の型を殺陣という。殺陣の型を考えたり役者に指導するのが殺陣師である。
3.所作事の中で立ち廻りをする「所作立て(しょさだて)」や、暗やみの中を表現する「だんまり」などがある。
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たちみ(立見) 劇場用語。一幕を立ったまま見ること、その場所をいう。幕見、一幕見ともいう。 .
たっぱ(立端) 劇場用語。家屋などの高さを言い表す建築用語が転じたもので、たとえば背景の張り物(→はりもの)や屋体(台)(→やたい)舞台床から簀の子(→すのこ)までの高さなど、すべての高さの測定に用いる。 .
たて(タテ) 歌舞伎演技のうち、闘争を表す様式的な表現法を指す。闘争のシーンは「立ち廻り」というが、その型をタテと呼ぶ。「殺陣」の字をあてることもある。 .
たてこみ(建て込み) 大道具を組み立てること。 .
たびこうぎょう(旅興行) 本拠地を離れ地方を巡回する興業。たんに旅とも、旅芝居、巡業、巡演、地方回りなどともいう。 .
だめだし(駄目出し) 演出家が俳優やスタッフの具合の悪い部分を指摘したり、念を押したり、訂正をすることをいう。 .
たゆう(太夫、大夫) 芸人の称号、敬称。神事に奉仕する役の称号から発したと考えられる。 .
たるき(垂木) 1.2寸×1.3寸角で、長さ2間の木材のこと。 .
たんぜん(丹前) 歌舞伎演技、舞踊用語。歩く姿を様式化した歌舞伎独特の型の一種で、「六法」に似ているが、より古く柔らかい味をもつ。江戸時代始めには、湯女を抱えた風呂屋が流行したがそのうち神田の堀丹後守屋敷前の紀の国風呂に通う伊達男達の風俗を「丹前」の略語で呼んだことに始まるといわれる。これはやがて六法やだんじりと混合して、元禄期(1688~1704)ごろ所作事として完成された。 .
だんまく(段幕) 紅白横縞に縫いあわされた幕。道成寺の場面などで振落とし(→ふりおとし)や、張り幕に用いられる。 .
だんまり 歌舞伎の演出法の一つ。演目名として用いられる。暗やみの中で登場人物が宝物などを互いに探り合いながら争う動作を様式的に表す。原則として無言なので「黙り」から「だんまり」となった。 .
だんもの(段物) 日本音楽用語。三味線音楽では、一曲である程度劇的構成をとるものをいう。常磐津の「関の扉」、長唄の「勧進帳」など。これに対して、叙情的な歌う傾向の強い「角兵衛」や越後獅子は端物(はもの)という。尚、常磐津や新内などで義太夫節の一部を借りたものも「段物」という。たとえば「夕霧」「一ノ谷」など。 .