そのような、自然の正常な回復力の鍵は、「物質の循環」です。例えば、有機物の主要な元素である炭素のことを考えてみましょう。
植物は大気中から二酸化炭素を吸収し、太陽の光のエネルギーを利用して炭水化物にします。この有機物を、すべての生物が利用しています。そこで、植物は「生産者」と呼ばれることがあります。
作った有機物は、一部は自分の体を作る材料として利用し、一部は別の化学反応のためのエネルギー源、すなわち呼吸の燃料として利用します。燃料に使われたぶんに含まれていた炭素は、再び二酸化炭素として大気中に放出されます。
材料になったものの一部は、動物に食われます。食われなかった場合も、枯れて落ちたあとダンゴムシなどのエサになります。動物は有機物を作らず、植物の作った有機物を食うことで生きています。そこで、動物のことを「消費者」と呼ぶことがあります。
動物が植物を食って取り入れた有機物は、やはり一部は材料、一部は燃料として利用します。燃料になったぶんに含まれていた炭素は、やはり二酸化炭素になって大気中に放出されます。材料になった方は、他の動物に食われることもありますし、天寿を全うした場合にはアリのエサになったりします。一部は、日常の新陳代謝にともなって、糞などとして体外に出されます。
そんなこんなで動物たちの間でやりとりされたあと、最終的に有機物はカビや細菌が利用します。やはり材料と燃料にするのですが、彼らは体が小さいので材料にするぶんはほぼ無視してかまいません。すべて呼吸に利用して二酸化炭素に変えてしまうと考えてもらってよろしいです(*6)。菌類や細菌類はこのような働きをするので「分解者」と呼ばれることがあります。
このように、生物同士が食う・食われるの関係でつながっていることを「食物連鎖」と言います。60,61ページに食物連鎖の例の図が出ています。また、1段階ごとに有機物の量は目減りしてゆきますので(呼吸に使われた分ね)、62ページの図5-31のように、消費者よりも生産者がたくさん存在する必要があります。
ここでは炭素に注目しましたが、水素(呼吸に使われると水になる)や窒素(アンモニアや硝酸化合物になって植物の肥料になる)も同様に、生物の世界と周囲の世界との間で循環しています。(68,69ページの図を参照のこと)
(*6)「ナタデココは?」というツッコミは歓迎いたします。(ま、そういうこともあります)
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