地層・堆積岩


 足元の地面がすべて火成岩でできているわけではありません。水がつくる岩石や、それにかかわるいろいろのことも知っておきましょう。

水の作用

 まず最初に、流れる水が地形に及ぼす3つの作用を確認しておきましょう。小学校で勉強しているようですが、新しいことばが出てきますので注意していて下さい。
 3つの作用は「削る・運ぶ・積もらせる」です。それぞれ「侵食」「運搬」「堆積」と言います。3つのうちどのはたらきがあらわれるかは、主に水の流れる速さで決まります(*1)。流れが速いとき、水は土地を削って運び去ります。流れが緩いところでは水は土地を削ることができず、他で削って運んできたものを運び続けることができなくなります。
 (*1)他に、地面の堅さや粒の大きさとも関係があります。


水がつくる地形

 図1は、地形をきわめて模式的にあらわしたものです。山地があって平地があって海があります。ここに雨が降ったらどうなるか考えて下さい。
 雨はいろいろなところに降ります。山にも降ります。その水は、一部は地中にしみこんで地下水になりますが、一部は(多くの場合)表面を流れます。いま問題なのはこちらです。

 山地を流れ下るときは、傾斜が急なので流れが速く、侵食作用が主にはたらきます。谷はますます深くなり、両岸が崩れてV字型の断面を持つようになります。このような谷をV字谷といいます(*2)。(このあたりが川の上流です)

 平地に出ると流れが緩くなりますので、上流で削ってきたものの大部分が運べなくなり、堆積作用が主にはたらくようになります。特に、山地から平地に出るところで流れが急に緩くなりますので多くの堆積物を堆積させるようになります。堆積作用で川底が高くなると川は流路を変えます。そこの川底も高くなるとまた川は流路を変えます。そのようにして、谷の出口から下流に向かって扇形に広がった地形がつくられます。扇状地といいます。(このあたりが川の中流です)

 そして平地を川は流れてゆきますが、川は平地の中でも低いところを流れてゆくことになります。そして海に近づくにつれ、流れがだんだん緩くなってゆきます(*3)。ですから川底に少しずつ堆積物が溜まってゆくことになります。川底が高くなると(中略)平地は、川のはたらきでより平らになってゆきます(*4)。(このあたりが川の下流です)
 (*2)氷河が削るとU字型の断面になります。U字谷といいます。
 (*3)平衡に達していない河川では必ずしもそうなりませんが、大まかには間違いではありません。
 (*4)このようにしてできた平らな地形を「氾濫原」といいます。


地層

 それでも川は流れていますから、最後まで運搬されてゆくものもかなりあります。海や湖などはほとんど動きのない静水ですから、ここへ来るとそれらも堆積することになります。
 比較的粒の粗いものは海に出てすぐのところに堆積しますので、多くの場合、河口には浅瀬や砂州が広がることになります。川はその上を流路を変えながら流れるので、三角形に近い形の砂州ができることになります。これを三角州といいます。
 粒の細かいものはしばらく水中を漂ってから沈むので、河口から離れたところにも堆積します。海底の地形に沿って堆積しますが、凸凹があるところでは低いところに溜まりがちになるのでやがて凸凹がならされ、海底に水平に堆積してゆくことになります。当然のことながら、新しい堆積物は古い堆積物の上に、やはり水平に堆積します。また、川の流れの状況などによってもたらされる堆積物が変わりますので、上から下まで同じものが堆積するとは限りません。そこで、異なる堆積物が「ひしもち(*5)」のように積み重なった構造ができてゆくことになります。これを「地層」といいます。

 環境によって堆積物の様子が変わる、言い換えると堆積物を見れば堆積環境がわかる例として、一枚の有名な風景写真を出しておきます。この場所にかつて大洪水があった証拠として発表された写真です。大きな石の積み重なり方に傾向があらわれていますよね。(図3)
 (*5)菱形だからではなく、本来「菱の実」を材料につくったから菱餅と言うのです。(^^)b


堆積岩

 地層はやがて堅い岩石に変わってゆきます。堆積物が固まってできた岩石を堆積岩といいます。固めるはたらきはおもに二つあります。

 ひとつは、オニギリを握るように押さえて固めるはたらき(圧密)。上に乗った地層の重みで締め固められてゆきます。
 もうひとつはオコシ(*6)をつくるように、粒と粒をのりのようにくっつけるはたらき(膠結)。のりの役目をするのは炭酸カルシウム(CaCO3)などです。炭酸カルシウムは私たち脊椎動物のホネの主成分であり、貝殻やタマゴの殻の主成分である物質です。水に少し溶けますが、溶解度はさまざまの条件で変わってきます。たとえば水温によって変わります。また、砂粒の表面に吸着しやすい性質を持っています。堆積物の隙間の水に溶けている炭酸カルシウムが固体となって沈殿し、砂粒の隙間を埋めると、オコシのような堅い岩石になるのです。他に、ケイ酸(SiO2)もわずかに水に溶ける性質があり、同様に堆積物を膠結する作用があります。

 地層が堆積岩になるまでの時間は条件によってさまざまです。粒が粗くて隙間が大きすぎたり、逆に粒が細かくて隙間が小さく、水の出入りがなさ過ぎたりすると100万年たってもボロボロのままと言うことも珍しくありません。逆に沖縄では海岸の堅い堆積岩の中からコーラのビンが出てきたりするそうです。
 (*6)浅草名物雷オコシは有名かと。穀物の炒ったものを飴で固めた菓子です。


風化

 山が削られて谷ができるのは、水の流れだけがはたらいているわけではありません。硬い岩石を細かい礫や砂、泥に崩すはたらきもかかわっています。「風化」といいます。
 風化には大きく分けて化学的風化と物理的風化があり、さらに細かい分類があります。

 化学的風化は化学的に岩石が崩れてゆくものです。たとえばほとんどの火成岩に含まれている長石は水と二酸化炭素と反応して粘土になり、流失します。長石が抜けた火成岩は崩れやすくなります。このようにして、たとえば花崗岩が風化してゆくと石英がのこり(*7)、マサと呼ばれる白い砂の山になります。
 また、石灰岩は水に溶けます(溶けてできた洞窟が鍾乳洞です)。

 物理的風化は力が加わって岩石が崩れるものです。たとえば、岩の割れ目にしみこんだ水が凍ると堆積が増して割れ目を拡げます。もっと単純に昼夜や季節の温度差による伸縮でも崩れてゆきます。

 物理的風化の中に生物的風化とよばれるものがあります。その名の通り、生物のはたらきによる風化です。たとえば、岩の割れ目に植物が根を張ることがあります。松などは成長に伴ってかなり大きな力で割れ目を拡げることがあります。

 (*7)雲母も粘土になります。


堆積岩の分類

 いま話したようなのが堆積岩の代表的なでき方です。そうにしてできた堆積岩を砕屑岩といいます。標本箱の中の< >番< >番< >番が代表的な砕屑岩です。…違いがわかりますか?ルーペで見たり、さわったりしてご覧なさい。
 まず礫岩。小石のような粒が入っていますね。「礫」とは「石ころ」のことです。砂岩と泥岩はどうでしょう。砂岩は見てもさわってもざらざらした感じ。泥岩は粒がはっきりしませんね。泥岩の方が粒が細かいのです。つまり、粗い方から順に礫岩・砂岩・泥岩と、粒の大きさで分類されています(*8)。

 砕屑岩以外の堆積岩もあります。
 まず火山砕屑岩。川が削って運んできたのではなく、火山からもたらされた堆積物が積もったものです。つまり、火山灰や火山礫が積もって固まったものです。ですから必ずしも水中に堆積したとは限りません。顕微鏡で見ると比較的粒の形が壊れていない鉱物が多いのが特徴です。火山灰が堆積したものは凝灰岩、火山礫が堆積したものは火山角礫岩や火山円礫岩(*9)といいます。特に火山灰は広い範囲にまき散らされるので離れた場所に同じ凝灰岩が分布することが珍しくありません。堆積した時代を知る手がかりになります。

 生物岩。生物のはたらきで材料が集められたものを言います。たとえば貝殻は炭酸カルシウムが主成分ですが、貝殻がたくさん溜まって堆積し、固まると炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とする堆積岩ができます(*10)。石灰岩といいます。
 他に、珪藻(資料集_ページに顕微鏡写真が出ています。ケイ酸の殻を持つ植物プランクトンの微生物です)の死骸が集まって固まるとケイ酸(SiO2)を主成分とする非常に硬い堆積岩ができます。チャートといいます。また、酸化鉄を体内にため込む細菌がいるのですが、そういうものの死骸が集まって鉄の鉱山になっている場合があるそうです。(うーむ。微生物、あなどりがたし)

 化学岩というグループもあります。条件による溶解度の違いなど、化学的な過程が大きくかかわっているものです。たとえば海水が干上がって食塩(NaCl)が固まった岩石ができることがあります(岩塩とよばれます)。石灰岩やチャートも、溶けたり沈殿したりという過程が重視されて化学岩に分類されることもあります。

 (*8)砂岩と泥岩の間に「シルト岩」という分類を設けることもあります。
 (*9)火山れきが水に運ばれ、円磨されているものを火山円礫岩といいます。
 (*10) ほかにサンゴの骨格、有孔虫という単細胞動物の殻(「星の砂」)、石灰藻の殻なども石灰岩の材料になります。


化石

 地層や堆積岩の中に、昔の生物の証拠が残っていることがあります。そのようなものを化石と言います。

 生物の体や、体の一部(*10)(骨や歯、貝殻など硬い部分は残りやすい)が残っているものの他、本体が腐ってしまう前についた形が残っているもの(印象化石)、足跡や巣穴、糞など生活の痕跡が残っているもの(生痕化石)も化石です。

 化石から堆積当時のその場所の様子(堆積環境)がわかることがあります。そのような化石を示相化石といいます。たとえばサンゴは現在暖かく浅い海にいますので、サンゴの化石が出たら、当時そこはそのような環境だったに違いない、と推定されます。他にもシジミは汽水、針葉樹は涼しい〜寒い気候などと考えられます。
 また、ある時代にしかいなかった生物もいます。時代を知る手がかりになる化石を示準化石といいます。たとえば、ほ乳類は比較的新しい時代にしかいなかったことがわかっています。その前の時代にはは虫類が栄えていました。

 (*10)体のすべてが残っていた例として、シベリアで発見された冷凍のマンモスがあります。


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