地震


 日本は世界でも有数の地震国です。教科書(2下)_ページの図を見てもらうと、世界の中でも日本が地震の多い地域だということがわかってもらえるかと思います。たとえばアメリカでは、太平洋岸の一部の地域を除いて、ほとんど地震が起きていないことがわかりますね。なぜそのようになっているかは次の時間に勉強してもらう予定です。
 さて、表1に大きな被害を出した地震を(恣意的に選んで)いくつかあげてみました(*1)。地震がおきれば必ず被害が出るということではありませんが、ときにはそんなこともあるので、ある程度大きな地震が起きると必ずテレビやラジオですぐに情報を流すようになっています。ご存じですね。

  表1 日本に被害を出した主な地震
(発生年)(名称)          (特徴的な被害)
 1923年 関東地震          火災 流言飛語
     (いわゆる関東大震災)   (死者14万人)
 1933年 三陸津波地震        津波
 1960年 チリ地震(*1)        津波
 1962年 新潟地震          液状化
 1978年 宮城県沖地震        ブロック塀の倒壊
 1983年 日本海中部地震       津波
 1993年 釧路沖地震         造成地の崩壊
 1993年 北海道南西沖地震      津波 火災(奥尻島)
 1995年 兵庫県南部地震       鉄筋コンクリート建造物の倒壊
     (いわゆる阪神大震災)   (死者5千人)

(*1) チリ地震」は南米チリ沖の太平洋を震源とする地震でした。約24時間後、太平洋を渡って津波が押し寄せ、三陸地方などに大きな被害を出しました。反対に、1933年の三陸地震の時は南米に津波が押し寄せて被害を出しています。三陸のリアス式海岸は津波の被害を受けやすく、1896年にも「明治三陸地震」と呼ばれる地震で津波の被害を受けています。なお、三陸の岩手県田老町には1933年の地震のあと町を守る大堤防が築かれ、その後の地震での被害を 小さくすることに役立っています。

震源

 それを聞いて疑問に思ったことはありませんか?必ずこういう風に言っているのです。
 「先ほど、○時○分、関東地方を中心に地震がありました。…」
 「頃」って?気象庁の時計って、正確に合わせてないの?…そうではないのです。ひとつの地震でも、ゆれ始める時刻は所によって違うのです。
 というのは、地震というのは地下の一箇所でおきたできごとを地上のあちこちで感じているからなのです。伝わってくるのにかかる時間が所によって違うのです。
 図1を見て下さい。地下で何がおきているのかという話はあとで致します。昔の人はナマズが暴れると思っていたそうなのでナマズの絵を描いてみましたが、その場所でナニカがおきたと思って下さい。
 そのナマズのいる場所…ナニカがおきた場所を「震源」、その真上の場所を「震央」と言います。覚えて下さい。なお、「震源地」という言葉がありますが、科学の用語としては使いません。
 震源から近いところほど伝わるのにかかる時間が短いので早くゆれはじめます。遠いところでは時間がかかるのでゆれ始めは遅くなります。それで「○時○分」という言い方しかできないのです。(図2)


P波とS波

 しかも、ゆれは速さの違う二つの波に分かれて伝わってきます。速い方が「P波(Primary WaveのP)」、遅い方が「S波(Secondary Wave)」と名付けられています。P波は縦波です。ゆれの伝わる方向と、揺れる方向が同じです。S波は横波です。ゆれの伝わる方向と、揺れる方向が垂直です。(ビデオに出てきます)
 そのため、ある場所で地震のゆれを感じるとき、まずP波によるゆれが感じられ、次にS波によるゆれが感じられることになります。S波のほうが大きなゆれを伝えてくるため、S波が来てからのゆれを「主要動」、その前の小さなゆれを「初期微動」と呼びます。P波が来てからS波が来るまでの時間を「初期微動継続時間」または「P−S時間」と言います。(図3)
 図2をもう少し見て下さい。震源からの距離に比例して、P−S時間が長くなっています。ということは、逆にP−S時間をもとに震源から観測地までの距離が計算できるわけです。次のような式にまとめられています。

    震源からの距離(km) = P-S時間(秒) × (7〜8)

 7〜8という曖昧な数字になっているのは、様々な条件…地下の岩石の種類など…によって多少違ってくるからです。このことをまとめたのは日本人の大森さんという人なので、この式は「大森公式」と呼ばれています。実際、気象庁ではそのようにして、複数の観測地の震源からの距離を計算し、震源の位置を決定しています。


 さて、ここでビデオを見てみましょう。1997年6月11日放送の「10分ボックス」です。(中で「震源地」という言葉が出てきますが、これはもちろん「震央」のことです)
(ビデオの内容)
 ・震源に近いところほどゆれが大きい。(「震度」が出てくる。これは後ほど説明。)
 ・等発震時曲線。
 ・P波とS波。バネを使った説明。
 ・P波が伝わらない所がある→地球の内部構造を解明する手がかり。(核の存在)
  →地殻・マントル・核
 ・天然の地震を待つだけでなく、人工地震を起こして地下の様子を探る。(*2)

 (*2) 火薬を使うのは、人工地震のうちでも大規模なもの。


地球の内部を探る

 今見てもらった通り、地震のゆれの伝わり方が、地球の中の仕組みを調べる手がかりになっています。そのようにして、地球の中身はタマゴのように、外から「地殻」「マントル」「核」と呼ばれる部分に区別できることがわかってきました。
 マントルと核については少々難しいので、地殻とマントルの区別のことをお話ししましょう。これに気付いたのはユーゴスラビアのモホロビチッチさんという人でした。
 図3のように、P波が伝わるのにかかる時間は距離に比例(正確にいえば「ほぼ比例」)するわけですが、うんと離れたところではそうならないことを見つけたのです(図4A)。これは一体どういうことなんだろう。
 きっと、地下深くでは地震の伝わり方が速いのだろう。うんと離れたところでは、そっちを遠回りしてきた方が速く伝わるのだろう。たとえていうなら、隣の家に行くのならわざわざ自転車を出すより歩いた方が早いけど、何軒か先へ行くなら自転車の方が早い、そういうことがおきているのだろう、ということです。
 そのように考えて調べてみると、地下のある深さを境に急に伝わる速さが違う、と考えるとよいということになりました(図4B)。そこでこの境目を「モホロビチッチ不連続面」(長いので大抵は「モホ面」と略します。(*3))、その上を「地殻」その下を「マントル」と呼んでいます(*4)。地殻とマントルは岩石の種類が違うと考えられています。

(*3) 日本語だけでなく、英語でもMOHOと書けば通じるようです。
(*4) 「マントル」の語源は衣服の「マント」と同じだとか。つまり地球の芯である「核」を包むようになっているところから名が付いたそうな。


地震の大きさ

・ゆれの大きさ
 次に地震の大きさの話をしましょう。
ビデオの中にも「震度」という表現が出てきました。これは地震の「ゆれの大きさ」をあらわす方法です。日本の気象庁では教科書_ページのような基準の「震度」を使ってゆれの大きさをあらわしています。明治時代に作られたあと何度か修正され、現在では無感地震の「震度0」から「7」まで10段階になっています(*5)。
 「震度」は実際におきた、あるいは想定される被害の様子を元に適当に区切って作った段階ですから、たとえば震度2は震度1の2倍だとか、3は1の3倍だとか、そういうことではありません。また、よその国ではそれぞれの事情に合わせた震度をつくって使っています。
 ひとつの地震でも、ところによって震度は違います。大まかにいえば、震源から近いところでは大きく揺れるので震度が大きく、離れたところではあまり揺れないので震度は小さくなります。(図5)
・規模の大きさ
 また、震源でおきたできごとが大きければ広い範囲で大きく揺れます(図7)。これは「地震の規模」とか「エネルギー」とか呼ばれます。こちらは「マグニチュード(M)」という単位であらわします。マグニチュードは震度と違って数学的な意味のある数字で、2大きいとエネルギーは1000倍と決められています。(*6)
 なお、他のものとの比較でいうと、広島に落とされた原爆のエネルギーがM6にあたるということですが…。

  (*5) 震度5と6は、それぞれ「強」と「弱」に分けられています。
  (*6) ということは4大きいと1000倍の1000倍で100万倍ということです。逆に1違うと√1000ですから素直に計算すれば31.6倍ですが、マグニチュードを正確に決定することは非常に難しいので、そういう発問は「問題のための問題」の域を出ないものになってしまうようです。


地震と断層

 震源では何がおきているのでしょう。岩石に無理な力が加わって壊れているのです。
 図7は、地下の岩石の一部を取り出して見た図だと思って下さい。実際には上下左右に詰まっているわけです。
 岩石は固体ではありますが、大きな力が加わると少しは変形します。しかし変形が大きくなると、耐えきれずに壊れます。これが地震です。壊れるときは、斜めに割れてずれることになります。この割れ目を「断層」といいます。大きな面積の断層ができるほど、また大きくずれるほど、大きな規模の地震になります(*7)。力の加わり方によって、できる断層の形は違ってきます。

 (*7) そのほかに、壊れやすい岩石かどうか、などの条件もかかわってきます。


地震の予知

 一度壊れて断層になったところは他の部分に比べて壊れやすくなっています。また、同じところに繰り返し同じような力が加わることが多いので、最近(数千年以内)動いた形跡のある断層は、近いうちにふたたび動いて地震を起こす可能性が大きいと考えられます。(図8)
 また、地震が起きる前には岩石が大きく変形しているはずですから、土地の伸縮や上下動があったり、地下水の流れが変わったりすることも多くなります。そのような前兆現象に注意していれば地震の予知が可能だという考えもあり、研究が進められています。しかし実際には地震とは関係のない要素で同じような現象が起きることも多く、現時点で地震の予知ができる見通しは立っていません。
 地震がおきてしまったときに、被害を少なくする方法を考えておく必要があります。


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