鉱物 岩石をつくる物質


 火成岩をつくっている鉱物を見てみましょう。材料は火山灰を使います。
 関東平野ほぼ全域を「関東ローム」と呼ばれる赤土がおおっていますが、これは実はもともと火山灰なのです。
 ただ、粒が砕けてしまっているものや、噴出して降り積もってからの長い間に化学変化を起こしているものがあり、これらは観察の邪魔になりますので取り除くことにします。
作業・観察

 ここに、関東ロームが乳鉢に取り分けてあります。これを各班持っていって、洗い出してもらいます。要するに米研ぎの要領です。
 まず水を入れて指でかき回します。泥が出てきますので、水と一緒に捨てます。2,3回繰り返すとあまり泥が出なくなってきます。そうしたら今度は指先で押しつぶすようにします。それで水を入れてかき回すと泥が出てきます。泥を水と一緒に捨てます。これを、水が濁らなくなるまで延々と繰り返します。(図1)
 一人でやっていると水は冷たいわ指先はすり減るわで手が痛くなるので、必ず交代しながらやって下さい。交代待ちの間に、プリントの左側に手順をかいていて下さい。

 観察はルーペと双眼実体顕微鏡を使います。まず、何種類かの鉱物があるはずですから見分けて下さい。それぞれを観察・スケッチし、教科書_ページや資料集_ページを手がかりに、それぞれの鉱物が何であるか見極めて下さい。

       * * * *  作業 ・ 観察  * * * *
                   ↓
        * * * *  プリント回収  * * * *


造岩鉱物・有色鉱物と無色鉱物

 さて、何種類の鉱物が見つかりましたか?4種類か5種類ぐらいでしょうか。そのうち名前がわかったのは何種類ありましたか?ほとんどわかっただろうと思います。
 実は、火成岩に含まれる鉱物の種類はそんなに多くはないのです。たった6種類の鉱物の組み合わせでできている場合がほとんどです。そこで、この6種類を「造岩鉱物」といいます。
 造岩鉱物をさらに「無色鉱物」「有色鉱物」に分けることがあります。無色鉱物は白っぽい、もしくは無色透明に近い鉱物です(白を「無色」というのはニホンゴとしておかしいんですけどね)。有色鉱物は濃い色の鉱物で、岩石の中に入っていると黒っぽく見えます。
 石英はSiO2(二酸化珪素・ケイ酸ともいう)の結晶です。純粋なものは無色透明で、「水晶」と呼ばれて宝石として扱われますが、大抵は不純物が入っていて、薄いピンク色や緑色などの色がついています。
 長石は白っぽい長柱状の結晶として、ほとんどの火成岩の中に入っています。この2種類が無色鉱物です。
 雲母は成分の違いで白雲母、黒雲母など何種類かあります。薄い板状にぺらぺらはがれやすいのが特徴です。
 カンラン石はきれいな緑色をしています。英語で「オリビン(Olivine)」といいますが、オリーブのような色をしているところからこの名前が付いたそうで、オリーブのことを日本語(というか、中国語)でカンランというところから「カンラン石」という日本名になったそうな。


鉱物組成

 資料集_ページを見て下さい。火成岩6種類の表の下に造岩鉱物の名前が入った表があります。ピンク色と緑色、それぞれ無色鉱物と有色鉱物です。右へ行くほど有色鉱物が多くなって、岩石の色が黒っぽくなるということをあらわしているのはわかりますね。
 無色鉱物の中でも、石英は特に白っぽい火成岩にしか含まれないのが普通です。長石はかなり特殊なものを除いてすべてのの火成岩に含まれます。
 有色鉱物についても、雲母は白っぽい火成岩にしか含まれず、逆にカンラン石は黒っぽい火成岩にしか含まれません。カンラン岩は、カンラン石を大変多く含む深成岩です。マグマが冷えるとき最初に固まるのがカンラン石なので、カンラン石の多くは地下に取り残されてしまいます。ですから火山岩にはカンラン岩並みのまっ黒いものはありません(*1)。(図2)

 (*1) これは非常に大雑把というか、ほとんどインチキな説明です。


火山灰の分布

 ところで、関東ロームのもとになった火山灰は一体どこから来たのでしょう。南関東については大部分が富士山と箱根山、北関東では浅間山や榛名山など多くの火山から放出された火山灰がもとになっているようです。遠いところでは、鹿児島の南の、今は海底に沈んでしまった火山からも来た(*2)ことが確認されています。
 日本上空はほぼ常に西風が吹いているので上空に噴き上げられた火山灰は火山の東側のかなり広い範囲にまき散らされます。富士山が正円錐ではなく東側により広い裾野を弾いている原因のひとつともいわれます(*3)。
 また、大規模な噴火があると、噴き上げられた火山灰が太陽の光を遮り、気温が下がることもあります。1991年のフィリピン・ピナツボ火山の噴火のあとに実際に観測されましたし、江戸時代の「天明の飢饉」の原因はその直前の浅間山の大噴火だという説もあります(*4)。

 (*2) 喜界火山の「アカホヤ火山灰」など。約6000年前に大噴火をし、このときには半径100kmを覆い尽くす火砕流をおこしてその地域の縄文文化を中断させたことがわかっている。(→地学閑話)
 (*3) 他の原因としては、富士山噴火前の地形があげられます。東よりにすでに山があったのです。実はこちらの方が主な原因と考えられているので、上記の説明はほとんどインチキです。^^;;
 (*4) 同じ頃、ヨーロッパでも冷害がありました。アイスランドの「ラキの大噴火」と浅間山の噴火が相まって世界的な冷害になったと考えられています。


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