火成岩
結晶

 まず見てもらいたいものがあります。
 教卓の上のシャーレを各班一組ずつ持っていって、机の真ん中の、みんなから見えるところにミとフタを別にして置いて下さい。
 さて、ここで煮えているのは、硝酸カリウム(*1)の濃い水溶液です。これを今からそのシャーレに入れてゆきますので、どんなことがおきるか見ていて下さい。体に悪いから飲んではいけません。皮膚につくぐらいなら問題ありませんが、もし口や目に入ったら、すぐに水道の水で洗って下さい。

* * * * 硝酸カリウム水溶液を配る * * * *

 さあ、どうなりました?固まりましたね。化学で勉強したように、物質が水に溶ける量には限度があります。そしてその限度は温度によって違い、固体の物質はほとんどの場合温度が高いほどよく溶けるんでしたね。
 今の場合、温度の高い水に溶けていた硝酸カリウムが、冷えたために溶けきれなくなって固体になったのです。
 もうひとつ行きます。この青いのは硫酸銅(*2)の水溶液です。これも飲んではいけません。目や口に入ったら水道の水で洗って下さい。それともう一点、硝酸カリウムと混ぜないで下さい。

 (*1) 硝酸カリウムを溶かすときは、ビーカーに水を入れて加熱しながら溶かしましょう。
 (*2) 重金属ですので扱いは慎重に。

* * * *  硫酸銅水溶液を配る  * * * *

 さて、どうなりました?やはり固まりましたね。
 ではここで問題です(^^)b。目の前にあるふたつのシャーレ、どちらが硝酸カリウムでどちらが硫酸銅か、見分けがつきますか?…簡単ですね。色が全然違います。でももし色の見分けがつかなかったとしても、わかるんですよ。形です。
 硝酸カリウムは細長い柱状もしくは針状(*3)に固まっていますね。一方硫酸銅はもっとコロコロっとした、平行四辺形を潰したような形になっていますね。このように、物質が固まるときにはそれぞれ特有の色や形になる性質があります。そしてそれぞれの性質に従って固まったものを「結晶」といいます。(図1)
 資料集_ページを見て下さい。結晶の形はいろいろですが、必ずいくつかの平面で囲まれた形になっていますね。

  (*3) 「シンジョウ」とよみます。
    「はりじょう」と読むと「玻璃状」すなわち「ガラス状」の意味になります。


火成岩

 さて、本題です。前回、マグマが冷えると溶岩という岩石になる話が出てきました。溶岩の成分はマグマの成分とは少し違うということも勉強してもらいましたね。
 そのようにマグマの一部や、全部が冷え固まった岩石を「火成岩」といいます。今回は火成岩について勉強することにしましょう。
      * * * *   標本箱を開ける   * * * *

 標本箱の中から< >番< >番< >番< >番< >番< >番< >番の石を小さな箱ごと出して下さい。その7種類が代表的な火成岩です。それと、ここ(教卓の上)に「黒曜岩」という石があります。歴史で出てきた、石器の材料の「黒曜石」と同じものです。これを各班ひとかけらずつ持っていって下さい。
 出したら標本箱のふたを閉めて、そのうえにプリントの枠とおなじ並べ方で並べて下さい。…その並べ方の意味というか、根拠というか、わかりますか?よーく見たらわかるんじゃないかと思うんですが、いかが?(図2)
 ではよーく見てもらうことにしましょう。漠然とよーく見るよりもスケッチしながら見るとよいので、前半の時間の残りで8種類全部見てスケッチして下さい。少しヒントを言うと、ポイントは中に入っている結晶です。全体の形ではなく、石の中身がどうなっているかに注目して、1cm四方ぐらいのところをルーペで拡大して見て下さい。


火山岩と深成岩

 さて。その並べ方の意味はわかったでしょうか。
 まず上の段のグループと下の段のグループの違いはどうですか?結晶に注目して下さいね。
 下の段のグループの、たとえば花崗岩にはどんな結晶が入っていますか?黒い結晶が入っているのがわかりますね。他には?灰色っぽいというか透明っぽい結晶も入ってますね。その隙間は?白い結晶が埋めているんですが、わかりますか?(わからない?じゃ、もういっぺん見てごらん。…1分で!)
 上の段のグループはどうでしょう。たとえば玄武岩。白っぽい結晶がちらほらあって、その隙間は…結晶がはっきりしませんね。安山岩は?やはり結晶がちらほらあって、その隙間は結晶がはっきりしませんね。
 この違いは、冷え方のちがいによるものです。ゆっくり冷える場合は結晶ができるのもゆっくりです。そういうときは形の整った大きい結晶ができますが、急に冷えるときは、それぞれの性質に合った形になる余裕がなくて結晶になれなかったり(その場合ガラスになります)、なったとしても小さな結晶にしかならないのです。
 先ほど冷たいシャーレに出された水溶液は、すぐに冷えて固まりました。残りはビーカーに入ったままここにあります。これはそれに比べるとゆっくり冷えたので幾分大きな結晶になっています(帰りがけに見ていってください)。マグマの場合も同様に、火山から噴出し冷たい地表に出て固まったものは上段の岩石のように小さな結晶になり、地下で溜まったまま固まったものは下段の岩石のようになります。そこでそれぞれのグループをまとめて「火山岩」「深成岩」と言います。
 火山岩の、はっきりした結晶(「斑晶」)がちらほらあり、隙間を微少な結晶やガラス(「石基」)が埋めているつくりを「斑状組織」、深成岩の、比較的大きな結晶が集まっているつくりを「等粒状組織」といいます。
 黒曜岩は結晶がほとんど含まれず、全体がガラスになっています。特に急激に冷えたため結晶になれなかったのです。


色による分類

 横方向はわかりますね。色です。左側は白っぽい岩石、右は黒っぽい岩石です。岩石をつくっている物質を「鉱物」といいます。深成岩を見てもらうとわかりやすいと思うんですが、岩石全体が白っぽいか黒っぽいかは、白っぽい鉱物が多いか、黒っぽい鉱物が多いかで決まります。中間の色の鉱物はあんまりありません。これは元のマグマの成分で決まります。


マグマの成分と粘性・噴火の様子

 さてここで問題です。(^^)b
 前回ビデオで見たハワイの溶岩は、この分類に当てはめるとなに岩になるでしょう。
 溶岩ですから火山岩です。では色は?…そうです。玄武岩です。
 もうひとつ問題です。ハワイの溶岩の性質はどんなだと紹介されていましたか?…粘性が小さいさらさらの溶岩だというのでしたね。それで山の形が平べったくなる、と。溶岩の粘性もマグマの成分によって決まります。
 マグマの成分によって火山岩の色が決まり、マグマの成分によって粘性が決まる。そこで、火山岩の色と粘性に関係があることになります。
 ハワイのような黒っぽい岩石になるマグマ(玄武岩質マグマ)は粘性が小さく、噴火の時はさらさらの溶岩がだらだら流れ出るような穏やかな噴火(*4)をします。ですから山の形は平べったく広がったようになります(楯状火山と言います)。玄武岩質溶岩は大量に噴出することが多く、楯状火山には大きなものが多いことも特徴です(*5)。ビデオでも、ハワイの最高峰(最後にちょっと出てきた天文台のある山)は海抜4200なんメートルとか言ってましたよね。海底から測ると約10000メートルになります。ハワイは実はものすごく大きな火山なのです。
 白っぽい岩石になるマグマほど粘性が大きく、流紋岩質マグマでは爆発的な噴火になります。これはマグマの中にできた気泡が容易に抜け出せず、大きく育つからです。爆弾と同じです(*6)。噴出物は空中に放りあげられる火山灰などが多くなり、火口のまわりに積もってゆきますのであまり広がらないこんもりした形の山になります。
 極端な場合は爆発することすらできず、半固体状のマグマがにょきにょきっと出てくるだけと言うこともあります。雲仙・普賢岳の「溶岩ドーム」です(専門的には溶岩円頂丘とか鐘状火山とか火山岩尖とか言います)。あそこの岩石はかなり白っぽいものでしたよね。
 また、中間の安山岩質マグマの場合は多くの場合、溶岩と火山灰の両方を噴出します。交互に噴出して交互に積み重ねたような仕組みになり、「成層火山」と呼ばれます。富士山のように裾野を引いた形になります。

 (*4) ハワイの噴火は火山の噴火としては安全なほうです。飛び散るものが少ないので、直接溶岩が降ってくるところと溶岩流の通り道以外は安全です。
 (*5) 玄武岩質マグマが大量に噴出する理由は、結晶分化作用などが絡んで難しいので中学校の授業ではふれないことにします。
 (*6) 爆弾は、火薬を容器に詰めてつくります。ただ火薬を集めて火をつけただけでは大したことにならないそうで。また、太平洋戦争当時、金属が不足した日本では陶器製の爆弾を試作したものの、強度不足のため威力が不十分で使えなかったとか。


index

地学目次へ

previous

前の項目へ

next

次の項目へ