火山


 日本には火山がたくさんあります。観光地として知られているところもあり、また災害の原因になっているところもあります。よくも悪くも私たちの暮らしと切り離せない火山について、まずは勉強しましょう。
火山のしくみ

 まずは火山とはどういうものなのか、という基本です。(図1)
 「火山」と書きますが、いわゆる「火」が燃えているわけではありません(*1)。地面の中から熱いものが噴き出しているのです。
 「熱いもの」は「マグマ」と呼ばれ、地下深くの岩石が融けたものです。岩石も、他の物質同様に融点より高い温度になれば液体になるのです。マグマが発生するのは地下100kmとか200kmとかの深さのところですが、そこから上昇してきて深さ10kmぐらいのところに一旦溜まります。ここを「マグマだまり」と言います。マグマだまりから、まわりの岩石の弱いところを壊して地表に噴き出してくるのですが、その噴きだし口は「火口」と呼ばれています。

 (*1) それは「山火事」といいますな。(^^;)


火山噴出物

 火口からはいろいろなものが噴き出してきます。

 「溶岩」(*2)
 熱く融けた岩石が地表を流れるものです。やがて冷えると固まりますが、冷えて固体になったものも同じく「溶岩」といいます。

 「火山灰など」
 噴き出してくる前に、マグマの一部の成分はすでに固まっています。マグマはいろいろな物質の混合物ですから、そういうことがおきるのです。あらかじめ固まったものが空中に放り出されたものは「火山砕屑物」といいます(*3)。粒の大きさにより「火山灰」「火山れき」などに分類されます。砂の大きさのものが火山灰、石ころの大きさのものが火山れきです。「火山灰」という語感からはふわふわした軽いものを想像しがちですが、実際は砂が空から降ってくるのです。

 「火山弾」
 溶岩のような融けた状態のものが空中に噴き上げられることもあります。空を飛びながら冷えて固まったものは「火山弾」と呼ばれます。表面が冷たい空気に触れて急速に固まり、つるんとしているのが特徴です。表面が固まったあとで中が膨らんで(後述)「歌舞伎揚げ」のようにひび割れるものもあります。また、飛びながら固まるので紡錘形になっているものも多く見られます。

 「火山ガス」
 見逃されがちですが、火山からは気体も大量に噴出します。「火山ガス」と呼ばれます。
 成分で一番多いのはH2O、すなわち水です。ほとんどの場合、90%以上を占めます。高温なので気体の水蒸気になっています。次がCO2、すなわち二酸化炭素です。
 これらはありふれた害のない気体ですが(*4)、有害な気体も噴出します。
 たとえばH2SSO2やHCl、COなどが大抵含まれています。H2Sは硫化水素。卵の腐ったような匂いのガスです。SO2は二酸化硫黄。はツンとくる匂いがします。「イヤな匂いだな」と感じるものは大抵有害なんですが、いずれも濃度が高いと死ぬことがある有毒ガスです。HClは知っていますね。塩酸水に溶けると塩酸と呼ばれる物質です。COは何のにおいもしませんが、吸い込むと血液が酸素を運搬するのを妨げ、死に至る危険なガスです。
 ここでちょっと注意して欲しいのは、これらすべてがマグマから出てきたものだということです。つまり、溶岩を加熱して融かしても元のマグマとおなじものにはなりません。

 (*2) 昔は「熔岩」と書きました。
 (*3) 他に、以前の噴火で火口付近に積もっていたものが吹き飛ばされるのも混じっています。
 (*4) 濃度が1%以上になると二酸化炭素も危険ですが。


噴火のしくみ

 実は、マグマの噴出にもこの火山ガスが重要な役割をしています。
 (ここで小道具を取り出す)ペットボトル入りの醤油です。…ウソです。コーラです。でもラベルを隠してあると「もしかしたら醤油かもしれない」と思ったでしょ(^^)?ところがふたを取ると一斉に泡がしゅわーっと出てきますよね。しっかり栓をしたコーラのビンの中では二酸化炭素が詰め込まれてかなりの圧力にしてあります(*5)。ふたを取ると外とおなじ圧力になりますが、そうすると溶けていた二酸化炭素が泡になって出てくるのです(*6)。それとおなじことが地下でおきているのです。
 地下深くから上がってきたマグマは、浅いところにくると圧力が下がります。そうするととけ込んでいた気体成分が泡になり、体積を増します。そしてまわりの岩石の弱いところを壊して噴出してくるのです。(図2)
 さきほど、火山弾が歌舞伎揚げになる話が出てきました。気泡の発生は一瞬のうちということではないので、火山弾が空を飛び、空中で表面が固まったあともどんどん泡が出てきます。それで膨れて歌舞伎揚げになるのです。

 (*5) 大体5気圧ぐらい。
 (*6) 溶解度が温度によって異なることは勉強しましたね。温度だけでなく圧力によっても異なるのです。


* * * * ここでビデオを見る * * * *

  「紺野美沙子の科学館」ハワイ特集(1) 1995.1.7.放送、約20分。

 ・ハワイ諸島は火山島である。
 ・一番東はじの「Big Island」ことハワイ島に、現在も活動中の火山がある。
 ・そのキラウェア火山は非常に平坦な山容である。
 ・火口は2重になっていて、外輪山の直径は1km以上ある。
 ・粘性の少ない溶岩が流れ出し、固まると真っ黒な溶岩になる。
 ・西の方の島では、溶岩が流れたあとが溶岩トンネルとして残っている。
 ・西の島ほど古い時代にできた。
 ・そのようになっている理由。(ホットスポットとプレート移動)


* * * プリント配布・記入・回収 * * *
火山がつくる景観

・カルデラ(図3)
 キラウェア火山の噴火口は2重になっていました。ああいう地形は「カルデラ」といいます(*7)。火山の上部が陥没してできる地形です。珍しい地形ではありません。カルデラの中にさらに火山が噴火した2重式火山になることもあります。
 世界最大のカルデラは九州の阿蘇山の外輪山とされています。また、近いところでは箱根もカルデラです。

・溶岩トンネル
 溶岩トンネルもよくある景観です。富士山周辺に「風穴」「氷穴」と呼ばれる洞窟がありますが、それらは溶岩トンネルです。

・溶岩樹形
 おなじ富士山麓の洞窟でも「胎内」と呼ばれるものは溶岩トンネルではありません。溶岩樹形といって、溶岩が流れてきたときに立っていた木の形が残ったものです。木は燃えてしまいますが、一瞬で燃えるわけではないので、固まる方が早ければ形が残るのです。また、溶岩の流れが木を押し倒しすなどして覆ってしまったときには空気に触れないため燃えずに炭になり、ますます形が残りやすくなります。

・柱状節理、板状節理
 溶岩が冷えて固まるとき、状態変化によくあるように体積が小さくなります。その時できるひびのため、溶岩が柱状や板状の割れ目ができることがあります。

 (*7) ポルトガル語で「鍋」の意味だそうです。


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