☆★☆★☆★ Cepheus2001 ★☆★☆★☆

双眼鏡・小望遠鏡で充分に手の届く
『二重星』『有色星』『星雲・星団』などを
勝手気ままに書き連ねる!

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Vol.07 2001.05.29

 オホーツク海高気圧が張り出し、まだ冷たい北洋の海水で冷やされた高湿度の空気が、北〜東日本の太平洋側にやってきます。この北東から吹いてくる風(東北では“やませ”と言います)のせいで、何だかピリッとしない夜が多いです。
 でもいつかは晴れる!そしてその晴れ間は、大気の塵が綺麗にとれていて、絶好の観望条件のはずです。

★ かんむり座R RCrB (双)(望・低〜)
 ご存じ不規則変光星の代表です。普段は6等近い明るさなのですが、数ヶ月〜数年ごとにいきなり暗くなり、14等以下にまでなってしまうこともあります。不規則に爆発し、主に炭素ガスが光を遮るからと考えられています。
(→詳細は、下方の【解説】をご覧下さい。)
 双眼鏡などを持っていたら、とりあえず覗いておきましょう。あなたが最新の減光の第一発見者になるかも???
(ところで、かんむり座の略号“CrB”について、何で3文字目の“B”も大文字なのでしょう? →答えは下の方のどこか)
【見つけ方】
 かんむり座の、冠の中です。ガンマ(γ)とエプシロン(ε)とで作る直角三角形の、直角のところに当たります。
(赤経15h48m34s 赤緯+28度09.4分 2000.0年分点)

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★ おとめ座ガンマ γVir (望・中〜)
 同光(3.5等)同色(ちょっと黄色)のペア。『ポリマ』という別名があります。連星で、どんどん離角が小さくなっています。1997年では2.3秒でした。2008年には0.4秒になります。見ておくなら今のうちかも。
 10cm50倍から、倍率をあげてみよう。
【見つけ方】
 スピカとβLeo(デネボラ)のちょうど中間あたり。この辺には3等星はこの星だけです。
(赤経12h41m44s 赤緯-01度27.5分 2001.5年分点)

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★ てんびん座アルファ αLib (眼)
  てんびん座ベータ  βLib (望)
 この2つは、最初はさそり座の爪の先だったので、αは『ズベン・エルゲヌビ(南の爪)』、βは『ズベン・エルシャマリ(北の爪)』と、天秤とは全く関係ない呼び名が付いています。
 共に3等星です。
 αLibは肉眼二重星で、よく見ると西北西に5等星がくっついています(そのせいで、主星を詳しく表示すると“α2Lib”となります)。
 βLibは緑色の美しい星です。ある程度倍率を上げて楽しみたいですね。
【見つけ方】
 さそり座(もう!さそり座の話題が出てきたぞ!)の東側に、『逆“く”の字』があります。その、上の2つです(βが上側だよ)。
α2(赤経14h50m58s 赤緯-16度02.9分 2001.5年分点)
β(赤経15h17m05s 赤緯-09度23.3分 2001.5年分点)

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★ M5 (双)(望・低〜)
 へび座(頭)にある、見応えのある球状星団。双眼鏡でも一発でわかりますが、ここは一つ、15cmくらいの反射望遠鏡を奢ってみましょう。息を飲むほどにビッシリ詰まった星々が壮観!
【見つけ方】
 へび座αの南西約8度のところです。
 もしくは、てんびん座の『逆“く”の字』の星、α・β・σ(シグマ)と、その真北にあるM5とで、随分と潰れた平行四辺形が作れます。
(赤経15h18.6m 赤緯+02度05分 2001.5年分点)

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トピック!
【さそり座デルタ、有史以来初の増光!】
 さそり座デルタ(δSco)はアンタレスの西側に南北に3個並んだ中央の星で、「さそり座」の輪郭を形作る、肉眼でもよくみえる星です。
 今、この星に異変が起きています。
 最初に気付いたのはオテロ(Sebastian Otero)氏(アルゼンチン)です。彼は、1.8等まで増光し星座の印象を変えるほどになっていると報告しました。
 その後、一時的に明るさが元に戻りましたが、現在再び増光しています。2001年4月下旬には1.77等という報告もあり、すでに記録された明るさを超えて、観測史上最も明るい状態となっています。オテロ氏は、これまでの光度観測を解析し、この星の活動に75日の周期性があることを示唆しています。
 これからの季節、しばらくの間はいつもの年とはかなり違ったさそり座を目にすることができるでしょう。現在は22時過ぎくらいの時刻から見ることができますので、天気のよい時を狙ってぜひ確認してみてください。
(→詳細は、下方の【解説】をご覧下さい。)

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 ところで。
 『RCrB』の問題の答えですが、実は『みなみのかんむり座』というのがありまして、これが『CrA』なんですね〜。で、それぞれを学名で記すと『かんむり座』は“Corona Borealis”、『みなみのかんむり座』は“Corona Austrina”となるのでした(「北の冠」と「南の冠」という意味です)。
 どちらも“トレミーの48星座”の頃から親しまれている由緒正しき星座です。

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神話コーナー【おとめ座、あぁ麗しき!】

 おとめ座は、翼を持つ女神の姿をしています。 左手に麦穂を持っていることから、農業の女神デメテルであるとか、右手に持つ羽根ペンと東隣のてんびん座との関連から、正義の女神アストレアであるとか言われています。(星座絵を見ると、翼が身体の前面に生えている!とつっこみを入れる人もいます・・・)
 デメテルは「大地の母」ともよばれ、植物・穀物・果物など、大地から伸び出すものはすべてこの女神の恵みでした。デメテルが空に見える春〜秋は地上が暖かくなり作物が育ち、姿が見えない冬は寒くて作物が育たないのだと言います。
 一方、アストレアは、人間の良き友として正義を教えていました。その昔「金の時代」には世の中すべてがまるく治まり、人間はなんの心配もなくのどかに過ごしていました。神々も地上で人間と一緒に暮らしていました。
 やがて「銀の時代」になると、地上には四季ができ、人間は家を建て畑を耕し、強い者が弱い者を虐げ始めました。神々は愛想を尽かし、次々と天へ引き上げていきました。しかしアストレアは望みを捨てず人間の世界にとどまり、熱心に正義の道を説いていました。
 しかし「銅の時代」となり、人間が嘘と計略と暴力を用い、武器を作り、戦いを始めるようになると、さすがのアストレアも耐えられなくなってしまいました。ついに彼女は、白い翼を羽ばたかせ、天高くかけのぼり、おとめ座になったということです。
 高い空から私たち人間界を見つめている正義の女神アストレア。つまらない権力にしがみついたり、目の前の利益をむさぼる人が少なくない今の世の中を、彼女はどんな気持ちで見つめているのでしょうか?

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【解説】
◎RCrBについて
 RCrBは、ふだん6等くらいの一定光度で輝いていますが、ある時突然減光します。それはほんの1〜2等程度のわずかな減光の場合もあれば、暗くなる時は14等以下にまで減光することもあります。減光するとそのふるまいは全く予想がつかないものになります。増減光を繰り返しながらふだんの明るさに戻る場合もあれば、あっさりと元に戻ってしまうこともあります。また減光の頻度も全く不規則です。
 現在、RCrBとおなじ種類の変光星は20個ほど知られており、これらはまとめて「RCB型」変光星と呼ばれています。RCB型変光星は、そのスペクトルを見ると、水素の吸収線が著しく弱く、逆に炭素の吸収線が強いことです。これはRCB型変光星の大気にはたくさんの炭素が含まれていることが考えられます。この星の大気中にある炭素が大気上層に達すると、炭素が冷やされて「ススの雲」をつくります。これが濃くなって星の放つ可視光線を遮り暗くなるのです。その後「ススの雲」が大気下層に来ると星の温度が高いので炭素は再び蒸発し、「ススの雲」は消えて星の明るさが元に戻ると考えられています。
 発見者:エドワード・ピゴット(1795年、イギリス)

◎さそり座デルタと、カシオペヤ座ガンマ型変光星
 さそり座デルタ星(δSco)はさそり座のアンタレスの西側(「さそり」の「はさみ」の方向)に南北に3個並んだ中央の星で、「さそり座」の輪郭を形作る、肉眼でもよくみえる星です。今、この星に異変が起きています。
 異変に気付いたのはアルゼンチンのSebastian Oteroで、眼視観測中にこの星が星表の光度よりも明るいことに気付きました。Oteroの観測によれば、この星はさらに光度を増し、その後1.8等に達し、星座の印象を変えるほどになっていると報告されました。
 その後の観測からこの星のスペクトルが、普段は普通の B型星であったこの星が、水素の輝線を示すBe型と呼ばれる天体に変貌していることを確認しました。Be星とは高速自転する高温度の明るい星で、星の周囲に円盤が形成され、それが変光につながります。スペクトルに大きな変化が見られること、明るさにも顕著な変動が見られたことから、Be型の中でも、特に「カシオペヤ座ガンマ型」と呼ばれる爆発型変光星に属するものと考えられます。
 新星を除いて、このような肉眼ではっきりと変光のわかる明るい変光星が発見されることは極めてまれなことです。また「カシオペヤ座ガンマ型」の増光現象のなかでも、歴史的に最も明るい現象の一つです。代表星のカシオペヤ座ガンマ星(カシオペヤ座のW字の中央の星)自身は1937年4月に1.6等星に達する増光を示し、星座の印象を変えるほどであったと報告されていますが、今回の現象は63年ぶり、それに並ぶ明るさのものになりました。
 さそり座デルタは、一時的に明るさが元に戻りましたが、その後再び増光しています。2001年4月には1.77等という報告もあり、すでに記録された明るさを超えて、観測史上最も明るい状態となっています。この星の変光の発見者である S. Otero(オテロ)氏は、これまでの光度観測を解析して、この星の活動に75日の周期性があることを示唆しています。
 これからの季節、しばらくの間はいつもの年とはかなり違ったさそり座を目にすることができるでしょう。現在は22時過ぎくらいの時刻から見ることができますので、天気のよい時を狙ってぜひ確認してみてください。

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参考文献
『天文年鑑2001』(誠文堂新光社)
『天文年鑑2000』(誠文堂新光社)
『星座への招待』村山定男・藤井旭 著 (河出書房新社)
『STAR ATLAS 2000.0 実用全天星図』(誠文堂新光社)
『奇妙な42の星たち』岡崎彰 著 (誠文堂新光社)
『AAVSO chart』(American Association of Variable Star Observers)
『VSOLJ-News』No.43,50 (日本変光星観測者連盟)
『星座の神話』(恒星社)


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