「お好きなようになさいまし。わたしだけは、また月を蘇らせてやりましょう」
(「ノア・ノア」ポール・ゴーガン著 前川堅市訳
岩波文庫p43)
神聖な野生 崇高な野蛮 生のよろこび 祝福された楽園のひかりと影 打ちよせる歓喜と衰退
ゴッホとゴーガンとのあきらかな違いは、ゴッホがもっぱら個人の内的な衝動に 隷属していたのに対し、ゴーガンは一見異質と思える世界に自己の内部との共通項を 見出したことにある。ゴッホはみずからの情動を絵画に叩き付けるように昇華していった のと引き換えに孤独を手にし、ゴーガンはその孤独と引き換えに自我を打ち壊し続けた。 <ポール・ゴーガン> 1848年パリに生まれる。株式仲買人として生計を立てつつ画作を重ねるが、評論家 ユイスマンスに見出されたのを機に35歳にして一切をなげうち画業に専念する。 ヴェルレーヌ、マラルメら象徴派詩人たちとの交流をもち、1891年42歳の年にタヒチを 訪れる。「ノア・ノア」は第一回目となったタヒチ紀行の記録である。 <図書> 「ノア・ノア タヒチ紀行」ポール・ゴーガン著 前川堅市訳 岩波文庫 1932第一刷発行 ISBN4-00-326491-0
Cf:ユイスマンス ヴェルレーヌ マラルメ