映画の感想、スクリーン以外で鑑賞 2008年 2008/12/31 更新




採点基準
  ★★★★ :人類の宝(最高)
  ★★★☆ :絶対必見
  ★★★ :観るべき映画
  ★★☆ :観ても良い
  ★★ :中間
  ★☆ :観なくてもいい
  ★ :観る価値はほとんどない
  ☆ :作者もろともこの世から消えてなくなれ(最低)
  なし :あえて採点せず

ストーリーは、基本的にすべて書いています。当然、ネタバレの可能性あり。

文章などの内容には、時々変更や追加が入ることがあります。

タイトル・邦題 (原題) 採点 スタッフ/キャスト 製作年/国/カラー/縦横比 視聴日 メディア 作品の分類 更新日
HAZAN ★☆ 【監督&脚本】五十嵐匠 2003年 日、カラー、1:1.85、108分 2008/12/31(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/12/31
ストーリー 感想
 板谷波山(榎木孝明)は陶芸家の道を進むべく、教職を辞して上京して教員の仕事をしながら自宅の窯で陶芸に励むことになり、妻のまる(南果歩)も子供と共に波山に付いて行った。
 波山の作品は認められはしたが、金銭的には窯の薪の調達にも苦労するほどで、日々の暮らしはツケでまかなっていた。
 まるは、生活をおろそかにしてまで陶芸の完成度を追求する夫に対して、反発と誇りの相反する気持ちを抱いていた。
 やがて、波山の作品を全部買い取るという実業家(加瀬亮)も現れた生活のめどが立ってきた頃、ある和尚(早川純一)がかつて金策のためにまるがひそかに持ち出した波山の失敗作を返しに来た。
 波山はそれを割ろうとするが、結局工房に飾っておくことにした。
 板谷波山(1872-1963)の生涯を文字通り淡々と、ダイジェスト的に、「特にこれを訴えたい」というような作り手の思い入れが伝わってこない形に描かれた映画。
スマイル 聖夜の奇跡 ★☆ 【監督&脚本&原作】陣内孝則 2007年 日(東宝)、カラー、1:1.85、125分 2008/12/30(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、お笑い系 2008/12/30
ストーリー 感想
 2007年のクリスマス。アイスホッケー選手の昌也(坂口龍二)は、スケート場ですべるフィギュアスケーター(原田夏希)を見て、1987年を回想する…。
 ひざの故障でタップダンサーを辞めることになった修平(森山未來)は、北海道でフィギュアスケートのコーチをしている静華(加藤ローサ)との結婚を静華の父(モロ師岡)に認めてもらおうとするが、父がオーナーの弱小少年アイスホッケーチームの監督になって優勝することが条件だと言われた。
 ホッケーの経験の無い修平に娘を渡さない狙いだったが、修平は独自のコーチングで勝利を重ねていく。
 チームの昌也(綿貫智基)はフィギュアスケーターの礼奈(岡本杏理)と相思相愛になるが、白血病で余命わずかだと言われている礼奈をチーム全員が励ました。
 そして優勝がかかった、修平の恋敵(RIKIYA)の監督率いるエリートホッケーチームとの試合で、修平のチームは勝利を収めるが、礼奈は病院で息を引き取った。
 弱小スポーツチームが強くなる、ご都合主義な展開、ライバルチームは憎たらしい、解りやすい映画の盛り上がり、細かいギャグ、などなど、ありとあらゆるベタな手を使って、ストレートに面白い映画を狙った映画。
 その狙い自体は問題ないんだけど、よっぽど上手く作らないと単なる「図式だけの映画」になってしまうという結果になってしまったようだ。
忠臣蔵 (天の巻・地の巻) ★★ 【監督】マキノ雅弘(天の巻)、池田富保(地の巻) 1938年 日(日活)、モノクロ、1:1.33、87分 2008/12/23(火=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/12/13
ストーリー 感想
<天の巻> 吉良上野介の理不尽に怒った浅野内匠頭(片岡千恵蔵)が殿中松の廊下で吉良に斬りかかって、切腹と浅野家断絶を言い渡される。
 赤穂城では、大石内蔵之助(阪東妻三郎)を中心に主君の敵討ちを誓う血判状が作られる。
<地の巻> 内蔵之助は放蕩三昧の生活をするなどして敵討ちの意志が無いように見せかけ、そして江戸の吉良邸に討ち入りをして主君の敵討ちを果たす。
 おなじみのストーリーで、一番の見どころは、内蔵之助が立花左近になりすまして江戸に向かっているところに、本物の左近(片岡千恵蔵、二役)が宿泊先の宿に来て内蔵之助を問い詰めようとして1対1で相対するシーン。
 お互いに自分が本物だと主張するうちに、内蔵之助が身分書だと言って勧進帳のように白紙の巻紙を見せると、家紋で内蔵之助の正体を見破った左近が、内蔵之助の敵討ちに肩入れして、自分が内蔵之助だと言って自分の身分書を内蔵之助に差し出すまでのやりとりがいい。
 忠臣蔵の重苦しい雰囲気とは違うとぼけた感じの音楽が流れるシーンが2、3あるのもユニーク。
次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路 ★★☆ 【監督】マキノ雅弘【原作】村上元三 1953年 日(東宝)、モノクロ、1:1.33、87分 2008/12/12(金) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、お笑い系 2008/12/13
ストーリー 感想
 清水の祭りで、次郎長(小堀明男)もしばらく絶っていた酒を飲むなど、一家はすっかり祭り気分だった。
 しかし、甲州の賭場で問題が起きて、お仲(久慈あさみ)がまずそこに行って壺振りとしてもぐりこんで様子を見ることになった。
 しかし、お仲の正体がバレて、一家がお仲の救出に向かい、壮絶な斬り合いの結果次郎長一家の勝利に終わったが、豚松(加東大介)の命と石松(森繁久彌)の左目が失われ、一家は喧嘩の罪を問われ追われる身となった。
 前半は祭りに浮かれている緩い展開だったが、クライマックスで大勢の敵が目潰しの粉袋を次郎長一家に向かって一斉に投げまくる中での斬り合いの映像が物凄い。
次郎長三国志 第三部 次郎長と石松 ★★ 【監督】マキノ雅弘【原作】村上元三 1953年 日(東宝)、モノクロ、1:1.33、87分 2008/12/10(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、お笑い系 2008/12/13
ストーリー 感想
 森の石松(森繁久彌)は旅の途中で出会った次郎長一家と別れて一人旅を続けていると、女に一方的に好かれて、その兄の大岩に追われている追分の三五郎(小泉博)を助けて、怪我をした追分三五郎(小泉博)を連れて宿場に泊まる。
 2人はそこの賭場で流して壺振りと門付けをしているお仲(久慈あさみ)と知り合い、酔うとほれっぽくなるお仲は、翌日発つ時に石松について来て欲しいと言い、三五郎を見捨てられない石松は待ち合わせの場所に行って宿場に残ることを告げて別れる。
 しかし、そのすきに三五郎が石松から預かった財布を持ち逃げしてお仲を追うが、お仲は三五郎には気が無く、脚の悪い彼を置き去りにして行く。
 次郎長を探して旅をしていた張子の虎三(広沢虎造)が三五郎を拾って宿場に戻り、石松から次郎長一家の居場所を聞いて向かった。
 おもとと大岩が三五郎と石松を探し出し、三五郎と、全員賭場で捕まって牢屋に入っていた。
 虎三は、牢屋の門番を殴って捕らえられて牢に入り、次郎長に清水に帰って縄張りが荒らされようとしているのを何とかして欲しいと伝えた。
 一家は二十たたきの刑で釈放され、清水に向かって旅立った。
 主に森繁の石松を中心に、可笑しいやりとりが繰り広げられる。
 あと、牢屋に入って、威張っている牢名主に最初はペコペコしてみせながら、しばらくして逆襲してみせるところも見どころ。
おかしな泥棒ディック&ジェーン 原題"Fun with Dick and Jane" (意味:「ディックとジェーンの楽しみ」) ★☆ 【監督】テッド・コッチェフ 1977年 米、カラー、1:1.85、95分 2008/12/09(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/11/08
ストーリー 感想
 宇宙航空会社の重役ディック(ジョージ・シーガル)は、宇宙計画の縮小で会社の首切りの中に含まれ、高級住宅地の家の庭木までも差し押さえで持っていかれ、一転生活苦になった。
 最初はプライドが高かったディックも、妻のジェーン(ジェーン・フォンダ)と共に消費者金融に借金をしに行くが、そこに強盗が入って、ジェーンが逃亡する人質にとられる。
 彼女はすぐに解放され、そのとき強盗が落としたお金をネコババして、これがきっかけで2人は強盗になろうとし、最初はままならないながらも、次第に成果を上げていった。
 そして、ディックが勤めていた会社の社長が贈賄のために隠し持っていたお金を盗むことを最後に足を洗おうとし、招待されたパーティを抜け出して社長室に忍び込んで金庫から盗み出すが、警備員が空の金庫を見つけて会場から出られなくなった。
 2人は警察に金庫破りを通報して、隠し金の存在がバレては困る社長は2人を逃がして、後日辞任しディックが復帰して後任の社長になった。
 突然会社をクビになって、そこから何とかしようと悪戦苦闘する展開は『トウキョウソナタ』(★★★)と同じ。
 ただし、可笑しさはあれにはかなわないし、あんなに深刻さは感じられない。
名もなく貧しく美しく ★★ 【監督&脚本】松山善三 1961年 日(東宝)、モノクロ、1:2.35、129分 2008/11/08(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/11/08
ストーリー 感想
 3歳のとき熱を出して以来耳が聞こえなくなった秋子(高峰秀子)は、夫が亡くなって終戦の頃に実家の母(原泉)と姉(草笛光子)と弟(沼田曜一)のところに戻ってくる。
 やがて、同じ聾唖者の道夫(小林桂樹)と知り合って再婚し、赤ん坊を授かるが、耳が聞こえないせいで事故で亡くなっしまう。
 2人目の息子は育児に手を焼きながらも成長し、小学校の卒業式を迎えるが、秋子が道路に飛び出して車にはねられて死んでしまう。
 遺された子どもは、母の分まで一生懸命生きようと決意した。
 ラストで、高峰秀子の母親を死なせる展開に違和感を感じた。殺す必然性がないと思った。
 そのことに狙いがあるとすると、「不慮の死」「片親」「体の障害」「低所得」といったハンデを背負った人たちは、タイトルが示すように「美しい」人たちで、そうでない例えば「金持ち」みたいな人は「汚い」人に違いないという、はっきり言うと「逆差別」的な発想があるからなのではないか?
 そのことの別な根拠として、高峰秀子の姉の草笛光子が、高級マンションに1人で住んでいて香港人の妾になるというのを聞いて、夫婦で「裕福だけど幸せそうでない」、「私たちは幸せよね。」などという会話をするシーンがわざわざあったりする。
 まあ、この映画の公開当時は、貧しさが切実で、ほとんどの人たちが貧しかった世の中だったとすれば、「心が美しい貧しい人こそ素晴しい人」という詭弁が、みんなを幸せにすることに対して有効だったかもしれない。
 でも、「人の幸せは人それぞれで、自分にとっての幸せを自分でつかむもの」という今の時代には、この映画はもう通用しなくなっていると思う
 実際、五体満足でも自分が幸せでないと思っている人はたくさんいるし、そんな人たちの直接的な助けにはならないだろうから。
キサラギ ★☆ 【監督】佐藤祐市【脚本&原作】古沢良太【出演】小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅、香川照之、宍戸錠、他 2007年 日、カラー、1:1.85、108分 2008/09/17(水) HDDレコーダー(テレビ東京) ドラマ系 2008/09/21
 評判の良かった映画だけど、謎解きとしてもアイドルマニア映画としても中途半端な感じ。
 ところで、「アイドル映画」…っていうとアイドルが主演の映画にありがちなパターンの(安直な)映画って意味になっちゃうけど、そうではなくて「アイドルにまつわるストーリーの映画」は、ストーリーが作りやすそうだからたくさんあっても不思議じゃないのに、全然思い浮かばない。
 唯一思いついたのは『PERFECT BLUE』ぐらい。
 それ以外だと『東京上空いらっしゃいませ』とかだと、アイドルの要素はガクンと減ってしまう。
 『ローズ』もそれっぽいけど、ロックシンガーとアイドルは別に考えた方がいい?
 こうなると、アイドルといえば「片想い」「虚構」という言葉で置き換えるとすると、『さびしんぼう』なんかアイドルファンが主役の映画と言えるかもしれない。(望遠レンズ付き一眼レフ越しでのぞいているし)
 以上の「アイドル映画」は総じて「重い映画」である。
 それはアイドルの立場では「虚構」という重荷を背負わされること、ファンの立場では「片想い」叶うことのない思いを抱え続けなければならないのと、「虚構」が崩れたときにショックを受けること、「アイドル映画」はこれらの要素のいずれかが欠かせないと言えるかもしれないことによる。
 で、話を『キサラギ』に戻すと、アイドルに対する「片想い」も描かれているし、謎解きに伴ってファン自ら「虚構」を崩していくストーリーであるにもかかわらず、そんな「重さ」が全然足りない。
 冒頭はミーハーだったファンたちが、アイドルの実像に迫るにつれて重くなっていく映画にすべきだと思うのだが、クライマックスに至るまでミーハー度が強いままだった。
 それとも、私の考えはアイドルファンを「恋する男たち」だとみなしてのことであるが、そうではなくて作り手の意図は「アイドルファンなんて所詮ミーハーな欠陥人間」として描くこと、それに合わせて軽〜い映画にすることだったってこと?
 私は、たとえ相手がアイドルであろうと、そのアイドルが大多数の人々にとっては全然たいしたことのない人であろうとも、アイドルとしての存在が「虚像」に過ぎないと薄々感じながらであろうとも、人が人を好きになるということは、素朴なものとして尊重すべきであると思う。
 だから、本来大事であるそんな思いを汲み取ってあげようとする態度は、この映画でも無かったわけではないが、なんか形だけで真に迫るものが無かった感じ。
 それどころか嘲笑のネタとしか思っていないととられかねない描き方をしているようにも思え、そんな作品はどうしても認めるわけにはいかない。
 (ついでに、ちょっと関連した話をすると、「ストーカー」という言葉が浸透して以来、映画のようなフィクションの世界でも、ストーカー的な行為をする登場人物に対して、人々は「ストーカー」という言葉であっさりと切り捨てるようになってしまった。
 でも、ストーカーが誰もストーカーになることを最初から目指していたわけではなく、最初は普通の恋愛感情だったものが心ならずもストーキングにまで発展したであろうということを考えると、ストーカーを切り捨てることなんて簡単に出来ないと思う。
 もしストーカーを全否定するのなら、それは人間の「恋愛感情」も否定しなければならないことを意味するだろうが、自分自身も含んで人間の恋愛感情を否定しながら生きている人なんてほとんどいないと言っていいだろう。
 ましてや、映画などのフィクションの世界では、誰にも迷惑をかけているわけではないのだから。)
四谷怪談 お岩の亡霊 ★☆ 【監督】森一生【出演】佐藤慶、小林昭二、浜村純、他 1969年 日、カラー、1:2.35、93分 2008/08/23(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/08/23
 中川信夫版の『東海道四谷怪談』との違いは、あちらが小心者の伊右衛門が悪魔のささやきのような誘いにそそのかされて悪事に走り、お岩を死なせてしまったことに後ろめたさを感じて、おびえるがあまりの幻覚にによって彼女の霊が見えてしまうのだと解釈できるのに対し、こちらは伊右衛門が根っからのワルで、そんな彼が当然のように呪い殺される映画。
 単純になった分、怖さの深みが浅くなった感じ。
枢機卿 (原題:The Cardinal 意味:「枢機卿」)) ★☆ 【監督&製作】オットー・プレミンジャー【原作】ヘンリー・モートン・ロビンソン【出演】トム・トライオン、キャロル・リンレイ、ジョン・ヒューストン、ラフ・ヴァローネ、ロミー・シュナイダー、ジョン・サクソン、ドロシー・ギッシュ、他 1962年 米、カラー、1:2.35、字幕、181分 2008/08/16(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/08/17
 カトリックの神父が、難産の妹を救うために胎児を殺せなかったり、KKKやナチスと対立したりなどの経験を経て、やがて枢機卿になるまでの物語。
 もともと宗教だとか主義だとか体制とかなんて、詭弁、まやかし、独善としか思えないので、そんな領域の中だけの映画の登場人物の苦悩を見ていても、こっちにはさっぱり。
 でも、ロミー・シュナイダーってやっぱりキレイだな。
バス男〜ナポレオン★ダイナマイト〜 (原題:Napoleon Dynamite 意味:(主人公の役名)) ★★ 【監督&脚本】ジャレッド・ヘス 2004年 米、カラー、1:1.85、字幕,
95分
2008/08/16(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、ゆるゆる系 2008/08/17
 うわぁ、なんだか変な映画。
 どこにも収束しない、筋の通っていないストーリー。
 面白いんだか面白くないんだか。でも、なんか気になってしまう。
 「電車男」に引っ掛けた邦題だけど、バスは全くといっていいほどストーリーに無関係。
トイ・ストーリー2 (原題:Toy Story 2 意味:「オモチャ物語その2」) ★★☆ 【監督】ジョン・ラセター 1999年 米、カラー、1:1.85、日本語吹替、92分 2008/08/12(火) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、子供向け系 2008/08/14
トイ・ストーリー (原題:Toy Story 2 意味:「オモチャ物語」) ★★☆ 【監督】ジョン・ラセター 1995年 米、カラー、1:1.85、日本語吹替、81分 2008/08/12(火) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、子供向け系 2008/08/14
 ストーリーも良くまとまっているし映像的にも上出来だけど、オモチャのアイデンティティというストーリーの要素は、大人にとっては単純すぎて擬人化にもなってなく、どーでもいいとしか思えない。
 オモチャはオモチャなだけ。人間は人間なだけなのと一緒。人間はオモチャになりえない。私は人間。
誕生日はもう来ない(原題:Happy Birthday to Me 意味:「誕生日おめでとう…、私の。」) 【監督】J・リー・トンプソン【出演】メリッサ・スー・アンダーソン、グレン・フォード、他 1981年 加、カラー、1:1.33、35ミリ撮影、モノラル、字幕 2008/08/08(金) フジテレビ ドラマ系、ホラー 2008/08/09
感想
 5人ぐらい次々と殺されるのだが、その度に何故犯人はターゲットがそこに行くことを知っていて待ち伏せしていたのか?とか、どんでん返しが連発されるたびに、びっくりさせようという狙いに反して「なんじゃそりゃ?」と腰が砕けそうになったりとか、観ていてガックリくる。
 ホラー演出も1981年の製作当時において既に古臭い。
反撥 (原題:Repulsion 意味:「嫌悪」) ★★★☆ 【監督&脚本】ロマン・ポランスキー 1955年 英、モノクロ、1:1.85、35ミリ撮影、モノラル、101分、字幕(古田由紀子) 2008/08/05(火) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、ドラマ系 2008/08/07
感想
 主人公のカトリーヌ・ドヌーヴは、同居している姉の恋人をはじめとして、男たちを嫌悪していて潔癖症のような行動をとったり妄想にとらわれたりする。
 映画が進むにつれて異常性がエスカレートしていく一方、彼女の嫌悪の具体的な内容や原因といったものは一切説明されないままなのだが、代わりに狂気を内に秘めたカトリーヌ・ドヌーヴの迫真の演技が映画に説得力を持たせている。
嵐を呼ぶ男 ★★ 【監督】舛田利雄【原作】井上梅次 1966 日(日活)、カラー、1:2.35、95分 2008/08/02(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/08/02
ストーリー 感想
 ジャズバンドのマネージャーの美弥(芦川いづみ)は、ドラマーのチャーリー梅田の素行の悪さに悩んでいて、彼がすっぽかした演奏の穴を埋めた正一(渡哲也)を新たに採用することにした。
 正一とチャーリーがドラム対決をすることになったが、前日に出くわした2人が喧嘩して、正一はチャーリーの仲間たちに右手を傷つけられてしまった。
 正一はドラム演奏に苦しむが、突然歌いだして観客が沸き、正一がドラマー日本一に輝いた。
 正一の弟の英次(藤竜也)が大学を辞めてレーサーになると言い出し、そのことで子供たちに普通の進路を望んだ母(山岡久乃)は正一のせいだと責め正一は反発するが、家を捨てて出て行った父(宇野重吉)の自分勝手な生き方の慣れの果てのようなさまを見て、正一も動揺する。
 美弥をモノにしたがっていた音楽評論家の左京が、正一に手伝わなければ英次のレースの妨害をすると言って脅したが、断ったため右手を傷つけられた。
 レースの当日、正一の弟思いの行為を知った母は、父とレースのテレビを観ていた正一のところに美弥と共に尋ねて彼を許した。
 ドラム合戦が繰り広げられるまでの前半は、喧嘩っ早い豪快な哲也演じる役のキャラと、そんな彼に対して憧れる周囲の人々のキラキラしたキャラによって、高揚感あふれる展開になっていい。
 しかし、後半はそれが失われてしまったのが残念。
大女侠(原題:金燕子 / The Golden Swallow) ★★ 【監督】チャン・チェ【出演】 ジミー・ウォング、チェン・ペイペイ、他 1968 香港、カラー、1:2.35、104分 2008/07/22(火) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2008/07/23
 武侠映画で、ジミー・ウォングが体を左右に回転させながら大勢の敵をあっという間に斬り殺していく殺陣が見どころ。
the EYE 3(原題:The Eye 10 / 見鬼10) ★☆ 【監督】オキサイド・パン、ダニー・パン 2005 香港=タイ、カラー、1:1.85、84分 2008/07/17(木) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2008/07/17
ストーリー 感想
 タイを旅行中の若い男女5人が、夜、暇つぶしに、入手した「幽霊を見る10の方法」の本の内容を実行することにした。
 何人かは実際に幽霊が見え、次々実行していくうちに1人の男が森で行方不明になり、4人は香港に帰国した。
 香港でも幽霊は現れ続けもう1人が行方不明になり、残った者がタイに戻って事態収拾にのりだし、冥界で行方不明だった人たちと再会する。
 冥界から無事帰ってきたかに見えたが、実際には全員霊になってしまっていた。
 前作の『the EYE 2』とも共通するのだが、「霊が現れたら怖い」という前提で発想が止まっている。
 外国ではそれで通用するかもしれないが、少なくとも日本では「霊を怖いものとして見せるにはどうすればよいか?」といったレベルまで発想を進めて作らないと全然通用しない。
 結局パン兄弟の特長といえば、映画にに緊張感を出すためのショットの作り方といった、ホラーというジャンルに限ったことではなく映画の基本的な面でちょいと見どころがあるといった程度のようだ。
 さて、今後はホラーを更に追求するのか?別ジャンルに乗り出すのか?
the EYE 2(原題:The Eye 2 / 見鬼2) ★★ 【監督】オキサイド・パン、ダニー・パン 2004 香港=タイ、カラー、1:1.85、95分 2008/07/16(水) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2008/07/17
ストーリー 感想
 妻がいる男に別れを告げられたスー・チーが、旅行先のタイのホテルで自殺を図り、一命をとり止めた。
 しかし、その自殺のせいか、あるいは妊娠しているせいか、それ以来彼女は人には見えない霊が見えるようになって神経をすり減らした。
 その中でも彼女につきまとう女の霊が恋人の妻が夫の浮気に悲観して自殺したもので、その霊はスー・チーの赤ちゃんに転生しようとしていた。
 スー・チーはそれを拒んだが、転生すれば前世の悲しい記憶が消えることが判り、霊を受け入れて出産をした。
 ストーリーは、この手のホラーにしてはシンプルでひねりがないが、パン兄弟の演出はショットに力があるのがいい。
稲妻 ★★ 【監督】成瀬巳喜男【原作】林芙美子 1952 日(大映)、モノクロ、1:1.33、87分 2008/07/15(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/07/16
ストーリー 感想
 はとバスのガイドの高峰秀子は、姉が2人とも夫に関する名前を抱えているのを見て、結婚してもいいことはないと思っていた。
 長男を含めてそれぞれ父親が違う子供を4人産んだ母の浦辺粂子に、結婚して子供を産んでも自分を含めて不幸な子供ばかりだと当たったが、すぐに気を取り直し、母と並んで夜道を歩きながら亡き父親のことを語り合った。
 女たちの物語の映画だけあって、対照的に男のダメ具合も効果的。
 映画の出来とは関係ないけど、女が結婚するぐらいしか人生の選択肢が無かった当時と比べると、今はいい時代になったとつくづく思う。
アメリカの影(原題:Shadows) ★★ 【監督】ジョン・カサヴェテス 1959 米、モノクロ、1:1.33、81分 2008/07/10(水) HDDレコーダー(WOWOW) 即興演出系 2008/07/11
感想
 ジョン・カサヴェテスの監督デビュー作品で、脚本無しで即興的な演出で撮影された。
 それによって、登場人物にネットリと絡みつくようなカメラの視点が感じられ、普通のハリウッド映画とは違うインデペンデントっぽい感触の映画になっている。
明日の記憶 ★★ 【監督】堤幸彦【原作】荻原浩
【出演】渡辺謙、樋口可南子、吹石一恵、坂口憲二、水川あさみ、袴田吉彦、市川勇、松村邦洋、遠藤憲一、木野花、木梨憲武、及川光博、渡辺えり子、香川照之、大滝秀治、田辺誠一、他
2005 日(東映) カラー 1:1.85、122分 2008/06/27(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/06/28
感想
 50歳前後でアルツハイマーに冒されたサラリーマンと、彼の介護をすることになるその妻の話。
 もちろん重い話になってしまうのだが、こういう病気では症状と介護の実情に対してリアリティのある描き方が要求されると思う。
 リアリティ無しで、ただただ「大変だ」というだけの映画にだと、絵空事にしか見えず、難病をネタにしたお涙頂戴を狙った映画だと思われるかもしれない。
 その点でこの映画は、テクニカルな情報のバックボーンが不足しているのでは?と思った。
 その最たるものが、夫を家に一人で置き去りにして妻が働きに出ることで、夫の身に危険が起きるかもしれないという素人考え通りの展開になるし、夫の身に起こるトラブルによって結果的に妻も精神的に潰れてしまうことが予想され、そんなリスキーなことを安易にする展開には、病気や介護の実情が何も解っていないのでは?という疑問を持ってしまう。
 だからといって、実情を描くだけの映画だとドラマとしてのボリュームが相対的に減ってつまらない映画になってしまい、この映画ですらそうした不満も感じてしまった。
 難病モノって、フィクションとリアリティの両立という難しい課題をクリアしなければならないジャンルなのだろうか?
マーティ (原題:Marty) ★★ 【監督】デルバート・マン 1955 米 モノクロ 1:1.33、94分 2008/06/19(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/06/19
感想
 アーネスト・ボーグナインのアカデミー主演男優賞受賞作品で、作品賞なども受賞。
 恋愛下手で結婚できない肉屋の厳つい30男が、やはり婚期を逃しかけている自称29歳の教師と知り合う物語として進むが、エンディングに至ってはなんだか「いい大人は刹那的な恋愛なんかしてないで、所帯を持て!」と訴えている映画のように思えた。
 主人公がイタリア系のカソリックという設定と関係あるのだろうか?
 ちなみに、この年のアカデミー作品賞ノミネート作品は、
  『慕情』(昔観た印象ではつまらなかった)
  『ミスター・ロバーツ』★☆
  『ピクニック』★★★
  『バラの刺青』(未見)
なのだが、なんで『エデンの東』や『理由なき反抗』がかすりもしてないんでしょうかねぇ?
青春怪談 ★★ 【監督】市川崑【脚本】和田夏十【原作】獅子文六 1955 日(日活) モノクロ 1:1.33、115分 2008/06/05(木) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/06/07
ストーリー 感想
 三橋達也の母の轟夕起子と、北原三枝の父の山村聡は、子供同士を結婚させようとするが、子供たちも相方に死に別れた親同士をくっつけようと考えていた。
 子供たちは結婚式場を予約するところまで進んだが、それぞれ北原の友人のシンデ(芦川いづみ)の病気や仕事などで、まだ若いし結婚するのは先でもいいということで結婚話をやめることを決め、いい仲になっていた親たちに式場の予約を譲り、式の後2人は別れて行った。
 まあ、会話や三橋達也のとぼけた感じのキャラなどを軽く楽しめる。
 全然怪談っぽくないのに、このタイトルの理由は不明。
鰯雲 ★★ 【監督】成瀬巳喜男【脚本】橋本忍【原作】和田伝 1958 日(東宝) カラー 1:2.35、129分 2008/05/10(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/05/11
ストーリー 感想
 厚木付近。戦争で夫を失って姑(飯田蝶子)と暮らす八重(淡島千景)は、農家の生活の実態を取材に来た新聞記者の大川(木村功)に素直に不満をしゃべって2人は親しくなり、兄(小林桂樹)の縁談をまとめるために2人で見合い相手を訪ねて行ったときに旅館で結ばれた。
 彼女の父(中村鴈治郎、二代目)は元地主の本家だったが農地改革で田んぼが減り、お金には苦労していた
 彼は三男を経済的に余裕のある分家の娘(水野久美)と結婚させようとしたが、彼女は勤め人の二男と親しくなり、本家としての見栄から盛大な結婚式を開こうとしていた父をよそに、ジミ婚を強行してしまう。
 父は自分の元を離れていく子供たちに抗して田んぼは売らないと言っていたが、時代の変化を感じ、子供の資金のために一部売ることを決めた。
 大川が東京へ転勤することになり、八重は東京に行くことも考えたが、出発の日に駅に見送りに来た人々の中に八重の姿はなく、彼女は一人田んぼで草取りに励んでいた。
 農家の、「先祖からの土地を守りたい。農民は土地がなければ何も出来ない」という思いと、産業構造が変わって農業以外の仕事に就く子供たちのような考え方との葛藤を描く。
 そのどっちがどうということはともかく、この頃に比べれば今は世間体だとかしがらみだとか、個人の自由を束縛するモノが少なくなったことは、本当にいい時代になったと思う。
 物語は、田おこしから田植えの後に苗が少し伸びた頃なので季節は春で、それなのにタイトルが秋を思わせる「鰯雲」なのは何故だろう?
 一面田んぼの中を昔のロマンスカーが走って行ったり、厚木駅の前には食堂が一軒ぐらいしかなかったり路面はもちろん土だったりなど、昔の様子も興味深い。
松川事件 ★★☆ 【監督】山本薩夫【脚本】新藤兼人、山形雄策
【出演】小沢弘治、宇野重吉、宇津井健、下元勉。西村晃、多々良純、加藤嘉、殿山泰司、北林谷栄、稲葉義男、名古屋章、他
1961 日 モノクロ 1:1.33、162分 2008/04/27(日) HDDレコーダー(WOWOW) 社会派系 2008/05/05
ストーリー 感想
 昭和24年8月17日、福島県松川駅付近で集団的な妨害工作による列車脱線事故が発生し、三鷹事件との類似点から同様に労働組合や共産党の犯行との線で捜査が進められた。
 事件直前に列車の転覆を口にしていたとの証言で元国鉄労組員の赤間勝美(小沢弘治)が取調べられ、刑事の脅しで国鉄と東芝の労組員たちが線路をはずして脱線させたとの供述書が作られ、一同は逮捕されて一審で被告たちは刑事に脅されて自供させられたとして無実を主張したが、裁判官はあくまで自供を尊重し有罪になった。
 二審では、無罪を示す新たな証拠が追加されたが、有罪判決は覆らず、裁判所の前では被告人支持者たちの集会が開かれた。
 冒頭、松川映画を作ろうとする全国の会員券の購入で作られたとの字幕が出る。
 自供は脅されたものとの主張と、物証と食い違うことから、かなり疑わしいにもかかわらず有罪になることへの批判がテーマの映画。
 高裁の判決言い渡しで、裁判長の加藤嘉が裁判としての手続きに則って判断したと発言するのに対し、被告たちは情を前面に出して自分たちが無実なのは自分で知っていると声高に主張するクライマックスシーンの激しいやり取りが一番の見どころで、作り手の主張は非情な裁判所を批判し大衆の情に訴えて無罪判決に向けて盛り上がろうとするものかもしれないが、裁判員制度が始まろうとしている今の私の視点では、感情を配してルールに則って判決を出そうとする加藤裁判官の厳格さの方が、感情重視の人たちよりよっぽど求められると思う。
 今のままだと、裁判員制度って冤罪を増やすだけなんじゃないの?と思ってしまう。
 映画は高裁で有罪判決を受けたところで終わるが、映画製作当時で最高裁の高裁への差し戻し判決が出ていて、映画公開後に高裁、最高裁で無罪判決が出された。
真昼の暗黒 ★★ 【監督】今井正【脚本】橋本忍【原作】正木ひろし「裁判官-一人の命は権力で奪えるものか」
【出演】草薙幸二郎、松山照夫、左幸子、内藤武敏、加藤嘉、織本順吉、山茶花究、芦田伸介、飯田蝶子、北林谷栄、山村聡、殿山泰司、他
1956 日 モノクロ 1:1.33、124分 2008/04/26(土) HDDレコーダー(WOWOW) 社会派系 2008/05/05
ストーリー 感想
 老夫婦が惨殺され、まもなく逮捕された小島(松山照夫)は金目当てに寝込みのところを忍び込んで、見つかったので殺したと犯行を自供した。
 しかし、警察は彼が仲間をかばっていると決め付け、厳しい追及の結果、前科者の植村(草薙幸二郎)を含む小島の顔見知りの4人が逮捕され、身に覚えのない犯行を自白されられ、植村は死刑、他の4人は無期懲役の刑を受けた。
 控訴審で、刑事たちは取調べ中の拷問の事実を否定し、最終弁論で弁護士は自白どおりの犯行では辻褄が合わないことだらけで、5人の自白は信用できず小島の単独犯と4人の無罪を主張した。
 無罪は確実と思われたにもかかわらず覆ることはなく、植村は最高裁に望みを託した。
 「警察怖い」「冤罪怖い」「裁判怖い」と見終わって確実に思える思える映画。
 でも、結局は過去の話で現在に置き換えにくいというか、人ごとというか、無力感というか、「じゃどうすればいいの?」とか、つまり「怖い」以上に惹かれる要素がない。
(ペン偽らず) 暴力の街 ★★ 【監督】山本薩夫【原作】:朝日新聞浦和支局同人「ペン偽らず」
【出演】小沢栄、池部良、宇野重吉、船越英二、三島雅夫、殿山泰司、滝沢修、根上淳、三条美紀、多々良純、藤原釜足、安部徹、大坂志郎、花澤徳衛、志村喬、他
1950 日 モノクロ 1:1.33、111分 2008/04/25(金) HDDレコーダー(WOWOW) 社会派系 2008/05/05
ストーリー 感想
 ある地方の町は警察と警察後援会というヤクザを率いる組織などが牛耳っていたが、ヤミ織物の運び屋が捕まったことから記者が取材に乗り出し、やがて1つの新聞社が告発に乗り出し、それに呼応して若者を中心とした人たちも、暴力に屈している現状を打破しようと住民たちに訴え始めた。
 町のことが全国的に知れ渡るようになる中、反権力の住民たちにも暴力、脅し、警察による嫌がらせなどの策略が激しくなった。
 しかし住民たちの活動はますます広まり、やがて警察後援会は解散され、署長や検事たちも罷免された。
 原作は本庄事件を取材した記者たちによるルポルタージュ。
 製作は日本映画演劇労働組合で、東宝、日映、大映、松竹、さらには劇団などのスタッフやキャストが大勢関わっている。
 権力に立ち向かい真実を伝えるマスコミが支持をされ、大衆と共に社会を良くしていく、ということを訴えている映画だが、いかんせんマスコミ自体がろくでもない権力と化してしまった今となっては、隔世の感がある。
 権力が誰であろうとも、それにのみこまれないためには大衆は賢くなければならないということは変らないけど。
帝銀事件 死刑囚 ★★☆ 【監督&脚本】熊井啓
【出演】信欣三、鈴木瑞穂、庄司永建、内藤武敏、藤岡重慶、高品格、草薙幸二郎、笹森礼子、他
1964 日(日活) モノクロ 1:2.35、109分 2008/04/24(木) HDDレコーダー(WOWOW) 社会派系 2008/05/05
ストーリー 感想
 帝銀事件は、昭和23年(1948年)1月26日に豊島区で起き、新聞記者たちは犯行手口が七三一部隊のものであることを突き止めて取材を進めるが、GHQから打ち切りの圧力を受けた。
 やがて、人相が似ているということで平沢貞通が逮捕されて自白に追い込まれるが、裁判では無実を主張するも、死刑判決を受けた。
 平沢死刑囚が存命中に作られたこの映画は、自白が事実と異なっていることや、彼の犯行を否定する数々の物証を一つひとつ示すことにより、彼の命を救うことだけを目的に作られたような映画で、映画的な面白さを目指したような味付けは何もないという割り切りぶりである。
ダメジン ★★ 【監督&脚本】三木聡【出演】佐藤隆太、緋田康人、温水洋一、市川実日子、篠井英介、ふせえり、笹野高史、岩松了、山崎一、片桐はいり、麿赤兒、謙吾、村松利史、迫英雄、加藤歩(ザブングル)、菅原洋一、岡田眞澄、嶋田久作、伊東美咲、吉岡秀隆、園子温、他 2006 日 カラー 1:1.85、94分 2008/03/29(土) HDDレコーダー(テレビ東京) ネタ系 2008/03/31
感想
 まるで小ネタの数々を見せることが目的の映画で、ストーリーはその小ネタの数々をつなぐ「つなぎ」に過ぎないかのように行き当たりばったりな展開をみせる。
 こう書くと、筋の通っていないしまりのない映画のように思えるが、実際にはなんか不思議な魅力にあふれた映画になっている。
 行き当たりばったりとはいえ、気持ちいい方向に流れようとしているかのようなストーリー展開が観る者を自由な気分にさせ、それが映画の内容に合っているからだろうか?
鳶がクルリと 【監督】薗田賢次【原作】ヒキタクニオ 2005 日(東映) カラー 1:1.85、117分 2008/03/23(日) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、ドラマ系 2008/03/16
感想
 良い映画の条件とは、良い監督でもなく、良い脚本でもなく、良いキャスト&スタッフでもなく、十分なお金でもなく、作り手の思い入れでもない。
 答えは、「出来上がったモノが『何か』面白いこと」が必要条件で、それを満たしてなければ映画としての価値がゼロ。
 そして、「『何か』面白い」モノがどういうモノかを理解できて、それを実現できる人が「プロ」で、それを出来ない人は例えまぐれで面白いモノが出来たとしても映画の専門知識がある人でも「アマチュア」。
 この映画は、以上2つの条件どちらも満たしていませんでした。 みなさん、おつかれさまでした。
同じ月を見ている ★☆ 【監督】深作健太【原作】土田世紀 2005 日(東映) カラー 1:1.85、1分 2008/03/15(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/03/16
ストーリー 感想
 黒木メイサは心臓に穴が開いていて、山奥の一軒家の自宅にこもりっきりだった子供の頃、彼女を治そうと医者になる道を選ぶことになる窪塚洋介と、貧しいが絵が上手くて人の心が読めるエディソン・チャンと知り合い、3人は幼なじみとして成長した。
 エディソンは、窪塚が彼をイジメたことなどの罪の重荷を自ら進んで請け負い続け、ついには窪塚の火遊びが原因の山火事で黒木の家が自宅になり彼女の父が死んだ罪を被って刑務所に入る。
 やがてエディソンが描いた絵を黒木たちに届けようとして脱走し、黒木の彼氏になっていた窪塚は彼女に会わせないためにエディソンを追い払うが、窪塚は隠していた山火事の件を黒木に告白して2人でエディソンの逃走先に向かい、山火事を起こした心臓の悪い少年が小屋の中で火に包まれたところを助けようとエディソンが飛び込み、窪塚も彼を追ったがエディソンを救うことができず、エディソンの心臓は彼の能力と共に少年に引き継がれた。
 窪塚の復帰第一作で、彼は最初脇役のエディソンの役をオファーされたのだが、くせがあって演じやすい役より、心の弱みを持った普通っぽい主役を選んだことは正解だっただろう。
 そんな主役の設定を軸に映画全体に深みを持たせることも出来るストーリーだと思うが、結果的には映画の全体的な印象はスカスカで、結局窪塚の選択も報われることは無かった。
 「フィクション」の嘘臭さ作り物っぽさを、「演出」の力で説得力を持たせてカバーすることが映画の勝敗を左右するとすると、この映画はエディソンの役の純粋な善人ぶりという嘘臭い要素が強いにも関わらず、演出が全然カバーできてないという感じ。
 結局深作監督の実力は、このようなドラマ的な映画ではなく、「映画なんて嘘っぱち」と開き直ったような『エクスクロス〜魔境伝説〜』のような映画で発揮できるのかもしれない。
エコール (原題:Innocence) ★☆ 【監督&脚本】ルシール・アザリロヴィック【原作】フランク・ヴェデキント 2004 ベルギー=仏=英 カラー 1:2.35、120分 2008/03/02(日) HDDレコーダー(WOWOW) 象徴系 2008/03/03
ストーリー 感想
 森の中の寄宿学校で、6歳から12歳までの少女たちがバレエや、「幼虫が蝶になるように少女も変態すること」などの勉強をしていた。
 生徒たちは敷地外に出ることが出来ず、卒業生たちが消えるように去って行ったり、夜に上級生が呼ばれてどこかに行ったりなど、校内の出来事に不信感を持ったり、脱走をする者もいたが、あくまで一部で基本的には皆穏やかな生活を送っていた。
 校内の劇場でのバレエの発表会には謎の観客たちがやってきて、彼らのカンパが学校の運営費に当てられていた。
 卒業生の中の一番容姿の美しいものが校長によって選ばれ、残りの生徒たちは校外に連れ出されそのまま開放された。
 子供を大事にしたいと思う大人の意志によって、子供のうちは生きる世界を制限されて、やがて思春期を向かえるころにはそれまでの小さな世界からもっと大きな世界へと踏み出すことになる、ということを象徴的に描いたのだろうか?
 それにしても違和感を覚えるのは、いかにも子供が束縛されているような閉ざされた状況において、より発揮されるはずの子供ならではの能力である「想像力」がほとんど行使されていないこと。
 生徒たちは外の世界にあこがれるなど、現状に不満を感じてそれを打破する妄想を繰り広げたりも少しはあるのだが、全体的には大人たちが押し付けた世界に対して驚くほど従順。
 子供だけの出演シーンが大半の映画なら子供の自由な発想が映画を支配することが多いが、『エコール』はほとんど登場しない大人が映画の主導権を握っている。
 このことによって勘ぐってしまうのは、映画の作り手は「ありのままの子供」が好きなのではなく、「子供を何かのための『道具』として見ている」のではないか?ということ。
 その『何か』とは、例えば表面的にはチャイルドポルノ一歩手前な映画になっているが、実は「チャイルドポルノそのもの」が撮りたかったのであり、それをしぶしぶ抑えて完成させたのでは?とか。
 そうではなくても、普遍的な意味を持った映画を作ろうとしたというよりは、作り手の個人的な「事情」「嗜好」に則った映画(つまり、たいして深くない映画)のように思えてならない。映画の最後には「ギャスパー・ノエ(監督とは私的な仲)に捧げる」の字幕が出たりするし。
 仮に「ロリコン映画」とみなして語ると、男を翻弄するような奔放な少女ならばロリコンの対象になるかもしれないが、この映画の少女たちは従順すぎて全然エロくない。
 でも、それは私がロリコンのことを解ってないだけだったりして。
キャッチボール屋 ★★ 【監督】大崎章【出演】大森南朋、キタキマユ、寺島進、松重豊、光石研、水橋研二、内田春菊、庵野秀明、峰岸徹、他 2006 日 カラー 1:1.85、105分 2008/03/01(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/03/01
ストーリー 感想
 元野球部員の大森南朋は、酔っ払って昔の恋人に会いに東京に出て来たが、公園のベンチで目覚めた時には何故そこにいるのか忘れていて、成り行きでそこで10分100円でキャッチボールの相手をしていた庵野秀明の仕事を引き継いでキャッチボール屋になり、彼を含め過去にこだわる人々による物語が繰り広げられる。  公園という場所とキャッチボールという行為を通じて、人々が触れ合って物語が進むという自然な感じはいいが、人と人とのつながりは確かに感じられてもその中身が感じられず、物語の外枠だけが浮いてしまった印象を受けた。
 今後いいストーリーと出会えれば傑作のつくり手となり得るかも。
天河伝説殺人事件 ★☆ 【監督】市川崑【脚本】久里子亭、日高真也、冠木新市【製作】角川春樹 1991 日(東映) カラー 1:1.85、110分 2008/02/25(月) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、ドラマ系 2008/02/26作成
2008/03/01更新
感想
 大林宣彦監督の『金田一耕助の冒険』の中で、「横溝正史作品は、なぜ血縁関係が複雑だったり、事件が過去の怨念にまつわったり、被害者が変った殺され方だったりで、やたらおどろおどろしいのか?」ということが問われていたが、その横溝作品でおなじみの市川監督による別作家の推理小説の映画化作品であるこの映画を観ると、その答えはずばり「その方が面白いから。そうじゃないと面白くないから。」
 横溝作品から上に述べた特徴をそっくり抜き去ったような映画で、その結果、ちっとも面白くない映画になってしまった。
 実際、浅見光彦シリーズにする気まんまんのエンディングだったが、2作目が作られることはなかった。
 市川監督による映像は、暗い室内に真横から当たる照明で青みがかった色、ときに速いカット割りと、晩年の作品でおなじみのスタイルだが、こうも面白味に欠ける内容だと、凝った映像が上滑りに見える。
ニライカナイからの手紙 ★☆ 【監督&脚本】熊澤尚人【撮影】藤井昌之 2005 日 カラー 1:1.85、112分 2008/02/24(日) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、ドラマ系 2008/02/24
ストーリー 感想
 竹富島に住む南果歩は、カメラマンの夫と死に別れて、小さな娘を義父に預けて東京に働きに出たが、娘の誕生日に手紙が届くだけで島に帰ることはなかった。
 高校卒業を控えた娘(蒼井優)は、なんとなく好きなカメラの仕事がしたかったのと、母に会いたいという思いから東京に行こうとするが、祖父は反対し母の消息についても教えてくれなかったので、蒼井は反対を押し切って上京した。
 しかし、手紙の住所から母の消息はつかめないまま、カメラマンの助手の仕事に忙殺されながらも、20歳の誕生日に会えるという思いを頼りに頑張った。
 約束の日、待ち合わせの場所に現れたのは祖父で、母のことを隠したままの祖父に業を煮やして島に帰った蒼井は、母が東京に出てまもなく亡くなり、子供を悲しませないために手紙を託された東京の郵便局長が毎年出し続けていたことを知った。
 自分に対する母の思いを知った蒼井は、東京に戻って自分の写真を撮り始めた。
 ストーリー的には、親子モノにしても、進路モノにしても、上京モノにしても、故郷モノにしても、地方風土モノにしても、スッカスカで内容が全く無い(ついでに、ラストのネタバラシも、最初からタイトルから読み取れる予想の通りで、バレバレ。)ので、唯一の見どころの映像に関して。
 撮影の藤井昌之は今は亡き篠田昇カメラマンの助手をやっていた人で、逆光、軟焦点、手持ちの映像は正に師匠風で、たとえコピーだとしてもこの映像はやっぱり強力。
 これなら篠田カメラマンの損失が日本映画にとって致命的にならずに済むかもしれない。
 以下に篠田ファミリーをまとめてみた。
名前 担当 主な作品
篠田昇 撮影 『Love Letter』『PiCNiC』『スワロウテイル』『死国』『四月物語』「ノースポイント つばさ」『クロエ』『世界の中心で愛を叫ぶ』『花とアリス』
岩井俊二 監督 『Love Letter』『PiCNiC』『スワロウテイル』「毛ぼうし」『四月物語』『花とアリス』
製作 『虹の女神』
福本淳 撮影助手 『Love Letter』『スワロウテイル』『春の雪』
撮影 『ひまわり』『閉じる日』『贅沢な骨』『ロックンロールミシン』『セブンス アニバーサリー』『きょうのできごと』
行定勲 助監督 『Love Letter』「毛ぼうし」
監督 『ひまわり』『閉じる日』『贅沢な骨』『ロックンロールミシン』『セブンス アニバーサリー』『きょうのできごと』『北の零年』『世界の中心で、愛を叫ぶ』『春の雪』『クローズド・ノート』
長澤雅彦 プロデューサー 『Love Letter』『PiCNiC』
監督 「ノースポイント つばさ」『ココニイルコト』『卒業』『夜のピクニック』
藤井昌之 撮影助手 『スワロウテイル』
撮影 『ニライカナイからの手紙』『虹の女神』
熊澤尚人 監督 『ニライカナイからの手紙』『虹の女神』
中村裕樹 照明 「毛ぼうし」『スワロウテイル』『四月物語』『死国』『クロエ』『ココニイルコト』『卒業』『北の零年』『世界の中心で、愛を叫ぶ』『春の雪』『夜のピクニック』『クローズド・ノート』
銀色の髪のアギト 【監督】杉山慶一 2005 日 カラー 1:1.85、95分 2008/02/22(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/02/24
感想
 日本のアニメのダメなパターン。
 「世界観」というものを意識し過ぎて、設定やストーリーはやたら細かいが、非現実性ばかり追求して、結果的に頭で考えただけのような映画で、生身のリアリティを作りこむ技量は全く乏しい。
 映像的にも、どこかで見たようなものを拝借しただけで、それ以上のものは無い。
 上記の2つを主な原因として、「新しさ」「驚き」「自由」「型破り」といったものが全く感じられず、映画は「感じるもの」だということが抜け落ちているようだ。
 「アニメ」という枠内に留まっていれば、日本の保守的な固定アニメファンがそれなりに支持してくれるから御の字、なんて意識でこんな映画を作っていると、日本のアニメなんかあっという間にダメになるぞ。
修羅城秘聞 双龍の巻 ★☆ 【監督&脚本】衣笠貞之助【原作】山手樹一郎「桃太郎侍」 1952 日(大映) モノクロ 1:1.33、95分 2008/02/19(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/02/21
続 修羅城秘聞 飛雲の巻 1952 日(大映) モノクロ 1:1.33、95分 2008/02/20(水) 2008/02/21
ストーリー 感想
 丸亀藩の大殿が藩の乗っ取りをたくらむ主膳によって天守閣に幽閉されて、江戸屋敷にいる若殿(長谷川一夫)が乱心したと吹き込まれ、その若殿は主膳の右腕の伊賀半九郎(大河内伝次郎)に一服盛られて以来、人前に現れず死んだと思われていた。
 江戸の長屋に住む正義感の強い浪人は、捨て子だったため桃から生まれた桃太郎(長谷川一夫)を名乗っていたが、丸亀藩の江戸家老の娘が襲われているところを助けたか事から、彼が生まれてまもなく捨てられた若殿の双子の弟だとわかり、若殿に成りすまして藩に戻り藩の危機を救うことを頼まれ、桃太郎は気ままな暮らしがいいと断ったが、悪者退治と父に会いたいという思いで引き受けた。
 道中、半九郎たちに邪魔をされ、やがて偽者だとを見破られながらも藩に着き、後を追って来た若殿と共に入城して悪だくみは阻止された。
 公開当時はともかく、この手の特徴の無い時代劇は、今観て面白さを感じることは難しい。
どろろ 【監督&脚本】塩田明彦【脚本】NAKA雅MURA【原作】手塚治虫 2007 日(東宝) カラー 1:1.85、138分 2008/02/11(月=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/02/11
感想
 架空の設定に基づく非現実的な映画は、現実的な映画では描けない物語も描くことが出来るが、その反面現実的な映画に比べてリアリティを感じにくく絵空事になりやすいというハードルの高さと、そんな不利な映画をあえて作った理由や目的意識をより厳しく問われることになる。
 例えて言えば、ありふれた弁当ならばちょっと不味くても「こんなもんか?」で済まされるが、デコレーション弁当を作るとなると見た目に凝り過ぎると調理時間が長くなってご飯がパサパサになったりで不味くなりがちだったり、結果不味かったら味を二の次にした作り手の本末転倒ぶりに怒りが倍増する、といったところ。
 で、『どろろ』をデコ弁に例えると、空の弁当箱の中にデコ弁の写真を貼り付けてそれっぽく見せただけで、味がどうこう以前に「空腹を満たす」という弁当本来の目的すら達成できてない、といった感じ。
 「観て楽しむ」ものにすることが映画の作り手の仕事だってことが抜け落ちているような結果だった。
トッポ・ジージョのボタン戦争 (イタリア語タイトル:"Topo Gigio, la Guerra del Missile") ★★ 【監督&脚本】市川崑【脚本】永六輔、アルベルト・オンガロ、フェデリコ・カルドーラ【人形操作】マリア・ペレゴ、他【ナレーション】小林桂樹 1967 日=伊 カラー 1:2.35、90分 2008/02/07(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) 感覚系 2008/02/11
ストーリー 感想
 19XX年のある都会での夜、家ネズミのトッポ・ジージョ(声:中村メイコ)は床についたが、物音やノミに悩まさせれて眠ることができず、街へと飛び出しもの言わぬ赤い風船と出会って、女の子に見立てて会話を楽しんだ。
 その頃、ボス(大平透)の無線での指令の元、5人の手下たちが留置場から銀行の金庫室へ『黄金の七人』のようにトンネルを掘って金庫破りをしようとしていた。
 5つの核保有国がお互い相手の核に疑心暗鬼になって、核発射ボタンを1ヶ所に集めて管理することが国連で決まり、その金庫室に保管されていたボタンを奪うことがボスの目的だった。
 金庫室の扉を爆破しようとしているところに出くわしたジージョは、国防省に電話をかけ、強盗を挑発して発砲させ、その銃声を電話で聞いて駆けつけた警備員たちと撃ち合いになった。
 ジージョが強盗たちに放り投げられて落ちたところが現場に現れたボスの車で、ネズミが嫌いなボスは運転を誤って事故を起こし、車から降りて逃げ去った。
 手下たちは捕らえらたが、風船はドサクサの中で踏みつけられてぺしゃんこになり、ジージョはそれを持ち帰って、改めて友達のように親しんだ。
 日本語版のフィルムは一般には存在しないようで、英語版のフィルムにフィルムセンター所蔵のプリントのサウンドトラックの日本語音声を追加して、デジタルの原版を製作した
 主人公はパペットのトッポ・ジージョで、相手役はただの風船、そしてその他大勢は実際の人間が演じるのだが、人間たちは足元部分かシルエットが大半で顔はほとんど判別できない。
 映像的には『雪之丞変化』の殺陣のシーンのように、画面の大半が黒バックで一部分のみ照明が当たっていて、そんな画面を細かいカット割りによるモンタージュで見せている。
 これは全編夜だからという理由のほかに、ハッキリ見せすぎると人間と人形の共演に違和感が出るからとか、人形を操演する人を隠すため、セット代をケチるためなどの理由があるかもしれない。
 そして、この映画は以上のような「映像」がすべてと言っていいほどで、ストーリーなどのそれ以外の要素はほとんど意味がない。
 結果は、アニメ監督出身の市川崑ならではのそんな映像は悪くはなく、思い入れが感じられるものの、暗いし目まぐるしいしで正直見づらくて落ち着かないし、それだけで90分はさすがに持たせられないなぁ、といったところ。
三年身籠る ★☆ 【監督&脚本&原作】唯野未歩子【出演】中島知子、西島秀俊、木内みどり、塩見三省、奥田恵梨華、 丹阿弥谷津子、鈴木一真、綾田俊樹、関敬六、戸田昌宏、猫田直、三浦綺音、他 2005 日 カラー 1:1.85、100分 2008/01/29(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/30
 登場人物のほとんどが自分に甘くて他人に厳しく、他者が自分の理想とずれていることを過剰に嫌って、不満をあらわにして相手に理想に近づくように変ってもらうか、あるいは他者との関わりを避けようとしている。
 そんな人々の最たるものが、生まれてくることを拒否して胎内で成長する赤ん坊で、つまりはこの非現実的な設定はストーリーを語るための象徴的なものとして作られたように思える。
 しかし実際のストーリーは、妊娠期間が長引いたことでマスコミに騒がれたり、元彼が実は宇宙人でその子供なのではないかと真剣に疑ったりなど、「三年間身籠る」という発想からストーリーを具現化したら、当初の予定とは違う変な方向に転がってしまったような、つまりストーリーが設定に引きずらて映画の目的を見失ったような結果で、主客転倒のチグハグな印象を受けた。
戦国無頼 ★★ 【監督&脚本】稲垣浩【脚本】黒澤明【原作】井上靖 1952 日(東宝) モノクロ 1:1.33、105分 2008/01/27(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/01/27
ストーリー 感想
 浅井長政の小谷城が織田信長の軍勢に囲まれ、佐々木疾風之介(三船敏郎)は恋人の女中可乃(浅茅しのぶ)を連れて立花十郎太(三國連太郎)と3人で城外に逃げようとしていたが、鏡弥平次(市川段四郎)と意気投合して2人を逃がして城に残り、落城後落ち武者になって逃げ延びた。
 疾風は盗賊団の娘のおりょう(山口淑子)たちに拾われ一員になることを勧められるが断り、藤十(東野英治郎)が娘のおりょうと恋仲であるかを疾風之介に問い詰めてもみ合ううちに藤十が自分の刀を刺して死に、おりょうは疾風を愛しながらも父の仇として追うことになった。
 おりょうは別の盗賊団の親分になっていた弥平次に捕らえられ、彼女が疾風を追っていると知った弥平次は彼女を手厚く扱った。
 十郎太は、身を寄せていた研ぎ師の惣治(志村喬)に世の中を上手く渡って出世すると言い信長の軍に加わり、疾風も武田軍に加わっていて、可乃と弥平次の元を抜け出したおりょうも疾風を追って信濃に向かった。
 長篠の戦いで武田が敗れ、十郎太は長篠から発つ途中で疾風を探していたおりょうりょうと出会い、安土城の石垣工事で出世して惣治に丹波の八上(やかみ)城攻めに出陣すると報告しに行くと、惣治から加乃が八上で活躍している疾風の元に向かったと聞かされた。
 弥平次はおりょうと再会して、途中加乃を盗賊たちから救って彼女から疾風が八上にいることを聞き、立ち聞きしていたおりょうが八上へと馬を走らせた。
 おりょうを捕らえた十郎太は彼女を囮に疾風を場外におびき出したが、弥平次が助けに入って鉄砲の弾が外れて十郎太に当たり、まもなく城攻めが始まって3人は落とされた城を離れ、途中傷ついた十郎太が加乃の名前を言って死ぬのを看取った。
 おりょうは疾風から父の死が事故だったことを聞いて、仇討ちの意味が無くなって疾風を加乃に譲って崖から身を投げ、疾風は加乃と共に何処かへと旅立っていった。
 テーマとしては、出世することを目指して戦に出て行くような「太く短い」生き方の虚しさが感じられるところが『七人の侍』や『隠し砦の三悪人』などにもつながるし、この映画も波乱万丈なストーリーなのだが、そのわりには上に述べたテーマも「なんとなく」程度で、全体的に掴み所がなく、観終わって「なんか色々起きた話の映画だった」という感想しか持てなかった。
銀座の恋の物語 ★☆ 【監督】蔵原惟繕【脚本】山田信夫、熊井啓【企画】水の江滝子 1962 日(日活) カラー 1:2.35、94分 2008/01/21(月) HDDレコーダー(日本テレビ) ドラマ系 2008/01/22
ストーリー 感想
 石原裕次郎は店舗の飾りつけなどのバイトをする傍ら画家をめざし、クラブでピアノを弾いているジェリー藤尾と銀座で同居していたが、2人とも芽が出なかった。
 裕次郎は向かいの洋品店で裁縫の仕事をしている浅丘ルリ子と結婚するために就職して故郷の信州に2人で行くために新宿駅で待ち合わせをしたが、遅れそうになったルリ子が車にひかれそうになって駅には現れなかったばかりか、そのまま姿をくらましてしまった。
 ジェリーはクラブの契約を打ち切られ部屋からピアノを借金のかたに持ち出されてしまい、嫌気がさして部屋を出てニセ洋酒の仕事に加わった。
 裕次郎はずっとルリ子を探していて、デザインを請け負った銀座松屋にいたとき、そこでアナウンス嬢をしてたルリ子の声を聞いてついに再会するが、彼女は別名を名乗っていて裕次郎のことを覚えていなかった。
 ルリ子は記憶喪失と診断され、裕次郎はかつて描いた彼女の肖像画を見せれば記憶が戻ると思って、持っていたジェリーの家を訪ねると警察が家宅捜査をしていてジェリーも絵もなかった。
 裕次郎が再びルリ子をモデルに絵を描いていたろことにジェリーが現れて絵を置いて走り去り、警察に自首しに行った。
 ジェリーが作曲した「銀座の恋の物語」のメロディでルリ子の記憶が戻り、2人は銀座の街を歩いた。
 主題歌はご存知「銀座の恋の物語」。
 途中でルリ子が行方不明になるだけでも激しいストーリー展開なのに、さらに後半はルリ子の記憶を取り戻そうとする展開も加わり、そんな大げさなストーリーが幅をきかせ過ぎて、苦しい生活の中で成功しようと努力したり恋愛を育むといった地道な要素がすっかり台無しになってしまった印象を受けた。
新・夫婦善哉 ★★☆ 【監督】豊田四郎 1963 日(東宝) モノクロ 1:2.35、118分 2008/01/14(月=祝) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2008/01/14
ストーリー 感想
 昭和12年。蝶子(淡島千景)は法善寺横町の小料理屋の帳場を任され、果物屋を開くことを夢見て資金を貯めていたが、夫の柳吉(森繁久彌)はミツバチを飼って一山当てると言い出し、その資金を商店の実家に無心しに行くも勘当した息子には出せないと断られ、蝶子は堅実に生きるべきだと言って貯金を出さず、柳吉は家を出て浮気相手のお文(淡路恵子)と東京に行った。
 2人は東京に下宿を借りたが、金づるになる男を探して大阪に行っていたお文が連れて帰ってきたのが仕事もしない柳吉だったことを彼女のヒモの伸一(小池朝雄)に責められたが、お文は柳吉に情を感じていた。
 柳吉とお文が言い合いになってお文が狂言自殺を図ったところに蝶子が現れ、柳吉にお金を渡すと彼は大阪の実家に行って、縁談が決まった一人娘のみつ子(中川みき)に会うが、彼の妹に縁談の妨げになるからと言われてすぐに去り、患者の振りをして結婚相手の開業医(藤田まこと)の病院に行って探り、結婚式の当日家から嫁ぐ姿を見送ることだけを許され、その日のうちに実家が売りに出され、柳吉は帰る家を失った。
 蝶子は東京で柳吉に逃げられたことで女としての自身を無くし、ミツバチの資金として貯金を柳吉に渡すことに決め、東京に帰った柳吉からお文が通帳を持ち逃げしたが、伸一と天秤にかけて柳吉を選んだお文が戻ってきたときは、柳吉が下宿を出た後だった。
 房州の養蜂場にいるとの柳吉からの手紙を受け取った蝶子は、彼を見放そうとしたが結局会いに行き、柳吉の心中の誘いを受けて2人で浜から海に入るが、あっという間に気が変わり、ようやく養蜂という定職についた柳吉に蝶子はついていこうと思った。
 タイトルに「新」がついているが、前作『夫婦善哉』(1955、原作:織田作之助)の人物設定そのままの、オリジナル続編作品。
 甲斐性のない夫と、彼に愛想をつかしつつ見捨てることの出来ない妻の、「おもろい夫婦」関係の話で、夫に女を惹きつけてやまない魅力的な男に描いて観る者に説得力を持たせなければならないという条件がついて回るのだが、その難しい課題は芝居のやりとりをしっかり描くという的確な演出でクリア。
 おまけに妻以外にもう1人彼に惹かれる愛人も用意するという念の入れようも見せる。
ただ、君を愛してる ★☆ 【監督】新城毅彦【原作】市川拓司「恋愛寫眞 もうひとつの物語」 2006 日(東映) カラー 1:1.85、117分 2008/01/12(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/13作成
2008/01/14更新
ストーリー 感想
 玉木宏は持病の皮膚病の塗り薬の臭いを気にして、大学に入って以来人と関わるのを避けていたが、同様にボサボサ頭でメガネで友達のいなかった同級生の宮崎あおいと友達になって、彼の趣味の写真撮影を教えたりした。
 玉木は同級生の黒木メイサに片思いしていて、やがて彼女たちのグループと親しくなり、放っておかれた宮崎はやきもちを焼いたが、彼女は黒木と親しくなった。
 宮崎は家出をして、玉木は借りている一軒家に黒木たちに内緒で彼女を住まわせることになり、ある日、宮崎が自分をモデルに恋をしている女性の写真を撮影して応募するので、誕生日プレゼントを兼ねて玉木にキスの相手を頼み、初めてメガネをはずしてキスをしたが、宮崎の心はシャッターよりもキスの方に無我夢中だった。
 その夜、玉木との恋が進展しないと思ったのか、玉木が帰宅した時には家を出ていて大学も退学して音信不通になり、玉木は卒業後も同じ家で宮崎を待ち続けると黒木に言って別れた。
 カメラマンになった玉木のところに、ニューヨークの宮崎から写真の個展を開くとの手紙が届いてすぐに玉木が会いに行くと、彼女のルームメイトになっていた黒木が迎えに来て、実は宮崎が1ヶ月以上前に、成長すると悪化する持病のために死んだことを知った。
 玉木と出会ってから成長を抑える薬をやめて自分の人生を生き抜いた宮崎の個展の作品の中に、多数の大学時代の玉木の写真と2人がキスした写真を見た玉木は、彼女の思い出を胸に帰国した。
 玉木宏は薬の臭いのため自ら他人との間に壁を作って人間関係に悩み、黒木を好きだが宮崎のことが放っておけない。
 宮崎あおいは、素敵な女性にあこがれているがそうなろうとしているようには見えず結局コンプレックスを抱え続けるることになり、玉木の黒木に対する思いを知って一歩身を引きつつやきもちの感情は露にする。
 それぞれ自分自身で無理やり勝手に自分自身の心を乱しているように感じられ、まだ20歳前後で精神的に成熟していないからだろうとこじつけながら観ていたのだが、やっぱり焦点をはずした登場人物たちによるドラマを見せられているときの気分はきつかった。
 こうした登場人物の設定に象徴されるように、作り手が目指しているのは、無理やりにでも登場人物の設定を手の込んだものにし、登場人物を追い込んでドラマチックな展開にし、演出的にも大げさに解りやすくして(あおいちゃんがメガネをはずして別人に変身するというのは解り易いし、玉木はオーバーアクトな演技をさせられている)観る者を惹き付けようということ。
 つまり、恋人の片割れが死ぬ、いわゆる「難病モノ」や「韓流」などと同様の、最近はやりの部類の映画。
 まあ、こういう力技が成功する場合もあるけど、「人間を生身に近い形で描く」こととは正反対のアプローチであり、むしろ人間を(映画の中のとはいえ)「ドラマチックな悲劇のための道具」としてしか見ていない、つまり一番肝心なことが軽視されている「中身カラッポ映画」と感じることになりがちで、この映画もそうだった。
 あと、あおいちゃんの個展の写真が全然たいしたことがなく、特に一番盛り上がるはずのシーンには、気分をそぐような穴をあけないように細心の注意を払わないと。
 10代のあおいちゃんをファンタジックな風景の中で可愛くフィルムに収めたことだけは評価。
ドクター・ブル ★★ 【監督】ジョン・フォード【原作】ジェームズ・グールド・コゼンス 1933 米 モノクロ 1:1.33、78分 2008/01/09(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/13
ストーリー 感想
 アメリカの田舎町の医者のブル(ウィル・ロジャース)は、重病者から些細な些細な体調不良、出産から牛の診断まで、彼を頼る多くの人のために走り回り、未亡人のジャネット(ヴェラ・アレン)の家で自家製のリンゴ酒で一日の疲れを癒すのが唯一の憩いだが、そんな彼をろくに診断もしないで女の家に入り浸っていると悪い噂を立てる者もいた。
 ジャネットの兄のバニング議員の娘ヴァージニアが親に縁談を押し付けられ、ブルが喧嘩していた恋人との仲をとりもって2人が結婚したため、ブルはバニング家の怒りを買った。
 大雨でバニング議員が主導した工事現場の排水が水源に流れ込み、町にチフスが流行っていることに気づいたブルは予防接種などの措置をとるが、バニングたちは町の衛生責任者のブルの怠慢だとして彼の医師免許を取り上げる集会を開き、ジャネットの弁護もむなしく賛成多数の結果に終わった。
 しかし、怪我で何ヶ月も脚が動かなかった男に、同じ症状の牛に有効だった薬を処方して治したことでブルが有能であることが認められ、ブルもジャネットと結婚を決めハネムーンへと旅立った。
 スーパーマンでもない主人公が彼なりに誠実に自分の職務を遂行していくが、周囲の人々は完全ではない彼のマイナス要素ばかりに目がいって、価値が理解されない、という話。
 とはいっても、ガチガチに社会派というわけでもなく、ドラマチックでもなく、全体的な印象はアッサリ(し過ぎ?)。
東京の休日 ★☆ 【監督&脚本】山本嘉次郎【脚本】井手俊郎 1958 日(東宝) カラー 1:2.35、85分 2008/01/07(月) HDDレコーダー(テレビ東京) 感覚系 2008/01/08
ストーリー 感想
 アメリカから東京への日系人の観光ツアー客の中に、田舎に親の墓を作るために来た有名なデザイナーのメリー川口(山口淑子)がいた。
 メリーのホテルの部屋に、幼なじみでデザイナーのマダム蝶子(久慈あさみ)が現れ旧交を温めたが、後日演出家の小松原寛(上原謙)と共に彼女と合同のファッションショーを開くことをもちかけた。
 メリーは最初は乗り気ではなく、この話が人づてに広がって、商売っ気の多い人が話に乗ることを狙っていた。
 メリーの故郷から住職である叔父の代理でやって来た泉二郎(小泉博)がメリーのマネージャーを買って出て、ショーに関わろうとする人々を信じるなと忠告したが、彼女はファッションショーに乗り気になっていてショーは開かれた。
 メリーが感謝のパーティーを開いているところに、住職(柳家金五楼)と本物の二郎(三船敏郎)が現れ、メリーと気持ちを交わし合っていたニセ二郎は持ち逃げするはずだったメリーの所持金を置いて姿をくらまし、メリーは故郷への思いに胸が熱くなってツアー客たちと共に帰国した。
 李香蘭⇒山口淑子の映画生活20年記念作品であると同時に結婚引退記念作品で、東宝のスターがほぼ全員と言っていいほど大挙出演している。
 おまけに、森繁久彌のインチキくさい芝居の中国人の料理屋の店名が「李香蘭」だったり、ファッションショーでの山口の登場の曲が「蘇州夜曲」だったりなど記念作品らしい趣向もあるのだが、それ以上に彼女には無関係なミュージカルシーンが多く、全体的にはレビュー映画の印象の方が強くなっているのは、果たしてゆったりした映画にするために効果的だったのか?それとも方向性がズレる結果になったのか?
花ひらく娘たち ★☆ 【監督】斎藤武市【原作】石坂洋次郎 1969 日 カラー 1:2.35、83分 2008/01/05(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/06
ストーリー 感想
 清水市に住む吉永小百合は和服姿で自宅でこもりっきりで和文タイプの仕事をしているかたぶつで、一方会社勤めの妹の和泉雅子はデートに誘われっぱなしで、和泉がおおっぴらに婚前交渉の話題をすることに吉永は戸惑った。
 吉永が欲求不満だと思った2人の弟の沖雅也は松原ノボルは、それぞれ高校の同級生の川口晶と川島育恵に、それぞれの兄で元同級生同士の浜田光夫と杉良太郎を家に連れて来させて吉永に会わせた。
 帰宅後、それぞれどちらの男、そして吉永と和泉のどちらがいいか話題にして、後日4人でデートをした帰り、医者である父が倒れたとの知らせを聞いた浜田はその場で吉永に父のためにすぐにでも結婚したいと申し出て、吉永は突然の求婚に驚きながらも承諾した。
 しかし、浜田の父が死んだ後2人は会わなくなり、和泉は杉に話してそれぞれ2人を連れてバーで会わせて久しぶりに会話をした。
 しかし後日、浜田の母が新任の医者と付き合っていることを知った浜田は、家を出て杉の家に居候し、例のバーで飲んだくれる日々を送った。
 バーの女主人の弟で東京から帰ってきた渡哲也は吉永が気に入って、バーで浜田が酔いつぶれたから
迎えに来てほしいと吉永を呼び出して、吉永が行くと浜田の姿は無く、親の恋愛にメソメソしている浜田より自分の方がいいとアタックするが、脈がないと感じるとすぐに身を引いて、奥の部屋で寝ていた浜田に会わせて、吉永は浜田を連れ出した。
 吉永が家に帰って親に浜田と結婚することにしたと言い、和泉にはその晩浜田と婚前交渉があったことを告白した。
 浜田は母親の恋愛を許し、和泉と杉も結婚することにして2組で合同結婚式を開いた。
 「婚前交渉」が取り上げられてりることが映画の特徴なのだが、それに対するけんけんがくがくも無いまま是非の結論らしきものも無くうやむやな状態で結婚してめでたしめでたしで終わりなので、結果的に男女何組かがくっついたり離れたりするだけの映画になってしまった。
大空に乾杯 ★☆ 【監督】斎藤武市原作若山三郎 1966 日 カラー 1:2.35、96分 2008/01/05(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/06
ストーリー 感想
 全日空の新米スチュワーデスの吉永小百合は、彼女の教官だった広瀬みさと先輩の十朱幸代の乗る便で初飛行を迎えた。
 吉永の家の家の庭の手入れに来た園芸大学生の浜田光夫は、それ以来たびたび吉永と出くわし、吉永は園芸に情熱を燃やす浜田に惹かれていった。
 広瀬の妹で高校生の和泉雅子は恋愛にあこがれていて、広瀬の恋人でパイロット葉山良二を好きになったが、浜田と出会ってあっさり乗り換えて、吉永とピリピリした関係になった。
 乗客だった財閥の社長が吉永を気に入って末っ子の平田大三郎とお見合いをさせ、吉永は彼に惹かれるが、結局片思いの浜田を選んだ。
 吉永の母の佐々木すみ江は吉永の結婚相手の家柄を気にするあまり平田との縁談を断ったことに反対し、父の下元勉は恋人を捨てて病院の娘の佐々木と結婚したが妻に気兼ねし続けたことから貧しい浜田との結婚に難色を示した。
 吉永は、そんな愛の無い結婚生活を続ける両親に離婚届をつきつけた。
 吉永と和泉の助けの甲斐もあって、浜田はヒマラヤ産のベゴニアの花を日本で始めて咲かせることに成功し、広瀬は元恋人との仲を問題にしなかった葉山と新婚旅行で吉永の便に乗り、代わって和泉がスチュワーデスになってその便で初飛行を迎え、パイロットの川地民夫に一目惚れし、それぞれ恋や友情の情熱を貫いていった。
 打算的な恋より情熱的な恋を、という映画。
 役的には、片思いの妄想シーンを数々見せる和泉雅子の方が吉永より面白いが、そんな工夫も含めて、テーマを膨らませるべき要素がうまく働いていないので、テーマが浮かび上がってくる感じが弱い。
親指さがし ★☆ 【監督&脚本】熊澤尚人【脚本】まなべゆきこ、高橋泉 2006 日 カラー 1:1.85、96分 2008/01/03(木) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/03
ストーリー 感想
 お盆に開かれた地方の小学校の同窓会に出席した20歳の5人(三宅健、伊藤歩、松山ケンイチ、永井流奈、尾上寛之)は、8年前にゆみこに誘われて「親指さがし」がいる部屋に行く集団催眠のような儀式をして、そこから帰って来なくて家出扱いになったゆみこのことを思い出ていた。
 5人の中の1人が公園の公衆便所で親指を切り落とされて殺され、その直前に三宅が肩に手形をつけられゆみこの霊の声を聞いていたことから、親指さがしの部屋から帰ってこなかった子供が呪われて、大人になって仲間を皆殺しにするらしいとの情報を得て、4人で親指さがしの部屋があるとにらんだサキの家に行き、三宅は再び肩に手形をつけられた。
 後日再びサキの家がある村を訪ねた伊藤は、村の男からサキは彼女の母が病死して依頼虐待するようになった父に親指を切り落とされ、その後その家で無理心中していて、サキへの虐待やイジメを見て見ぬ振りをした村人たちの心の闇が呪いの実態だと話した。
 三宅と松山は、親指さがしの儀式をしたホテルの屋上に行き、今は廃墟のその一室に親指さがしの部屋を見た三宅は、幻覚に襲われ松山を襲った。
 一方、儀式はゆみこが身を隠して三宅に探してもらうためだったと思い出した彼女も空きホテルに行き、三宅に襲われながら、ゆみこの隠れ場所だった排気口の最下部にあたる部屋に行き、そこでゆみこの死体を発見した。
 ゆみこを約束どおり見つけられたかった後悔と、自分とは違ってゆみこを忘れつつある人々への反発から、呪いを信じ込んで仲間を殺していた真相に気づいた三宅は窓から身を投げ、ゆみこが隠れていたことを知っていながら彼女を探せなかった伊藤も後を追おうとしたが松山に止められた。
 オカルトホラーのように始まって、ミスディレクションの数々を散りばめたミステリーとして進むが、観終わってみれば、後で後悔するようなことを不本意にもしてしまうことや、後悔に囚われる人の心の暗い一面を描いたことがメインの印象が強い。
 最初からそれが強調されていれば筋の通った映画になったかもしれないが、結局邪魔に思えるホラーや謎解きの要素は、映画が注目を浴びるための保険だったのかも。
 監督:熊澤尚人(『虹の女神』)、伊藤歩(『スワロウテイル)、制作:IMJエンタテインメント久保田修(『スワロウテイル』)と、岩井俊二がらみの布陣だが、画作りや芝居は丁寧なだけに、もっと何とか出来た気がする。
うず潮 ★☆ 【監督】斎藤武市【原作】NHK連続テレビ小説「林芙美子作品集」 1964 日(日活) カラー 1:2.35、97分 2008/01/03(木) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/03
ストーリー 感想
 幼い頃各地を転々としてた林フミ子(芙美子、吉永小百合)は12歳から尾道に住み、大正11年県立尾道高等女学校4年生の19歳だったが、母(奈良岡朋子)の再婚相手の義父(東野英治郎)は行商人で、来る修学旅行の旅費も工面できず、シジミ獲りなどで生計を支えていた。
 そんな彼女に、質屋の息子で帝大生の大杉光平(こうへい、浜田光夫)と、網元の次男の佐々木二郎(山内賢)は好意を示し、また国語教師の森(二谷英明)は彼女の文才を認め、童話の懸賞に応募することを勧め、森にあこがれて彼が得意なバイオリンを弾く練習を始めた。
 フミ子は工場で働いて旅費を捻出したが、岡山の店舗を買う資金を義父に頼まれ、お金を渡して旅行には行かないことにしたが、その店舗は抵当に入っていたことが後日判った。
 光平の母は、フミ子との付き合いを反対して光平の縁談を決めたことを知ったフミ子は、自分が光平を好きだったことを感じつつも、学校を卒業して岡山に引っ越すので、光平が嫌がるような縁談を持ち掛けないでほしいと光平の母に頼んだ。
 まもなく、フミ子の童話が入選になり、フミ子は賞金の半分を父の開店資金に残して、東京で勉強しながら暮らすために親に黙って旅立った。
 林芙美子の高等女学校時代の物語で、女学生たちは花嫁修業のために学校に行っていると思われていた時代に、自分の才能を生かして自立していこうとする姿を描いているが、そんなにタイトな映画にはなっていない。
潮騒 ★☆ 【監督】森永健次郎【原作】三島由紀夫 1964 日(日活) カラー 1:2.35、82分 2008/01/02(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/02
 三島由紀夫原作の2度目の映画化で、他の映画化作は
  『潮騒』(1954東宝)【監督】谷口千吉【主演】久保明、青山京子
  『潮騒』(1971東宝)【監督】森谷司郎【主演】朝比奈逸人、野里みどり
  『潮騒 しおさい』(1975東宝)【監督】西河克己【主演】三浦友和、山口百恵
  『潮騒』(1985東宝)【監督】小谷承靖【主演】鶴見辰吾、堀ちえみ
で、全部で5作品。
 浜田光夫演じる新治が、吉永小百合演じる初江の父の漁船に乗り込むのではなく、嵐でとも綱が切れて流された漁船まで新治が浜から泳いでつなぎとめるのがクライマックスで、82分の尺に納めるためなのかストーリーが簡略化されているのが特徴。
 そのせいか、もっと人間関係を深く描くことによって、規律とパッションの両立した理想郷を実感できる作品になったかもしれないのに物足りない、というのが感想。
トラック野郎 故郷特急便 ★★ 【監督】鈴木則文【脚本】中島丈博、松島利昭 1979 日(東映) カラー 1:2.35、103分 2008/01/01(火=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/01
ストーリー 感想
 東京から高知行きのさんふらわあ号に乗った桃次郎(菅原文太)は、船上でキャバレー回りの歌手の石川さゆりと出会って一目惚れした。
 一緒にいたジョナサン(愛川欽也)がモノがダブって見えるようになって、トラックに乗れないと思って足摺岬から身を投げようとしたところ、ドライブインのウエイトレスの森下愛子が止めに入って、桃次郎は彼女にも一目惚れ。
 桃次郎が外人のお遍路を載せて札所に連れて行くと、そこにドサ回りのついでに八十八箇所巡りをしている石川と再会した。
 森下は隣の家のおじさんが息子の嫁にしようと考えていたが、息子は刑務所を出たきり行方不明で、それ以前に森下は寝たきりの母と2人暮らしで結婚はできないと思っていた。
 東京に戻った桃次郎は、これまで何度かいざこざがあったトラック野郎の原田大二郎と会い、彼が行方不明の男だと気づいたが、桃次郎の帰省の勧めを原田は聞き入れなかった。
 森下の母が、亡夫が好きだった「南国土佐を後にして」を聞きたいと言い出し、桃次郎が石川がキャバレーから連れ出して歌わせ、その間に母が息を引き取った。
 原田が高知に帰って来て、職場放棄した石川をクビにしたキャバレーのオーナー安部徹所有の土佐犬と原田の犬が闘犬で戦ったが不正で犬を殺されて、安部を刺そうとして刑務所に入り、その復讐で新たな土佐犬で再戦するために帰ったことを森下に話し、結果原田の犬が勝って横綱になって、不仲だった父親とも和解した。
 森下が原田とキスをしてるのを見た桃次郎は、気を取り直して石川に求婚しに行くが、石川の歌を聞いた先日の外人のお遍路が実は音楽プロデューサーで、石川をデビューさせるために大阪に呼び寄せたにもかかわらず、石川はそのチャンスを捨てて桃次郎と結婚すると言い出した。
 桃次郎は約束の時間までに石川を大阪に行かせるため、トラックに乗せて高松のフェリー乗り場まで急ぎ、すがる石川をおいて走り去った。
 大阪の舞台に立った石川は、桃次郎たちのことを思い「南国土佐を後にして」を歌った。
 トラック野郎10本記念映画で、残念ながらシリーズ最終作。
 一目惚れ、バカ丸出しの恋愛アタック、ライバルとの殴り合いと和解、地方の風物詩、求婚と失恋、そしてデコトラをドロドロにしながらの爆走のクライマックスなど、シリーズ共通のストーリー要素をパターン通りにつなげた感じのストーリーはちょっと安直だが、グッと泣かせるシーンなどはキッチリ作っているのはさすがの鈴木監督。
 それにしても、『トラック野郎』シリーズは、恋ありアクションあり笑いあり涙あり人情ありで、映画に必要なものが揃っていて、映画なんて「トラック野郎シリーズ」以上のものは何も必要ないように思える
トラック野郎 一番星北へ帰る ★★ 【監督&脚本】鈴木則文【脚本】掛札昌裕、中島信昭【助監督】澤井信一郎 1978 日(東映) カラー 1:2.35、103分 2008/01/01(火=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/01
ストーリー 感想
 桃次郎(菅原文太)がジョナサン(愛川欽也)の妻の春川ますみの紹介で、常磐ハワイアンセンターでお見合いをしたが、彼は見合い相手の付き添いの大谷直子の方に一目惚れして破談になった。
 花巻でリンゴの積み出しをしていると、りんご園で働きながら幼稚園児の男の子を育てる未亡人の大谷がいて、彼女の家に行くと、アメリカかぶれで鼻につくトラック野郎の黒沢年男がいて、彼女の古い知り合いのように振舞っていた。
 黒沢は、運転手がこき使われないためにも大型車で効率を上げるアメリカ流を主張し、その結果仕事を奪われたトラック野郎たちのためと恋敵でもある彼と桃次郎が殴り合いをし、負けた黒沢が大谷から身を引くことになった。
 桃次郎は大谷親子を会津若松の亡夫の実家までトラックで乗せ、帰りに彼の故郷があったダム湖に連れて行って、その後下北に行って漁船の遭難で父が死んで母親に育てられた生い立ちを話した。
 年が明けて大谷の家に行くと、すでに会津若松に引っ越して再婚の意思がないとの置手紙があった。
 200キロ離れたところの危篤の患者のために2時間以内に人工透析機を運んでほしいとの花巻病院の医者の依頼を桃次郎が受け、彼の逮捕に執念を燃やす交通課の田中邦衛が執拗に追跡し、危篤の患者が邦衛の妻だと判ってパトカー先導の命令が出ても、邦衛は従わずに交通違反取締りのほうを優先した。
 人工透析機が間に合い、桃次郎に殴られた邦衛は桃次郎に手錠をかけつつ礼を言った。
 まもなく、桃次郎は再びトラックを走らせていた。
 シリーズ8作目。
 正直言ってストーリー展開がパターンのみになって、乱闘シーンなど以前ならギャグが盛り込まれて面白かったのだがそれもなく、決着のつき方もあっけなくて、全体的にサービス不足の感じがする。
 それでも、クライマックスのトラック爆走シーンで、大事なデコレーションが台無しになっても構わず他人のためにトラックを飛ばすシーンは、毎度のことながら自然に胸が熱くなる。
 今回、桃次郎はラストに逮捕されるという珍しい終わり方だったのだが、まさかこれでシリーズ終了の可能性でもあったのかな?
トラック野郎 男一匹桃次郎 ★★ 【監督&脚本】鈴木則文【脚本】掛札昌裕 1977 日(東映) カラー 1:2.35、103分 2008/01/01(火=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/01
ストーリー 感想
 桃次郎(菅原文太)が熊本でインチキ賭博師の左とん平をかくまって、そのお礼に湯原昌幸のドライブインでフグの肝をおごってもらったら毒にあたり、毒抜きのため砂浜に埋められているところ、夏目雅子と出会って一目惚れしてしまう。
 とん平から、彼女は唐津藩の剣豪の子孫で剣道が強いと聞いた桃次郎は、唐津の道場に行って夏目に手合わせを頼むがこてんぱんにやられてしまい、山ごもりをして滝に打たれているときに滝から落ちてきた木の実で頭を打って気絶して川を流されていたところを、トラック運転手の若山富三郎と小さな息子に助けられた。
 鹿児島の剣道大会に行った夏目をトラックで追うと、彼女は若山のトラックに乗っていたが、若山が借金で酒びたりだったときに家出して消息不明の妻は夏目の姉だった。
 ジョナサン(愛川欽也)が小料理屋の浜木綿子に夢中になって入りびたりになっていることを知った妻の春川ますみが怒って実家に帰ろうとしたところ、子供たちが桃次郎と浜を連れてきて、ジョナサンは桃次郎と浜の間をとりもっていただけだと嘘を言ってとりつくろった。
 浜が若山の妻だということが判り、若山が会いにいくが浜は戻らないと言い、桃次郎が説得して子供に会いに行くと、母を振り払って道路に飛び出した子供を助けようとして浜が車にはねられた。
 桃次郎が夏目に求婚しに行くと、鹿児島にいる夏目の恋人の清水健太郎がブラジルで一旗あげようと旅立つところだということが判り、桃次郎は恋を貫くべきだと言ってトラックに夏目を乗せて鹿児島に向かい、若山やとん平らのトラックのパトカーの妨害も功を奏して、鹿児島空港で夏目が清水と共に旅立つことになった。
 シリーズ6作目。
 まあ、例の調子だといういうことでコメントが足りるぐらい、若干パワーダウン気味なところが気になる。

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