映画の感想、スクリーン以外で鑑賞 2007年 2008/06/12 更新




採点基準
  ★★★★ :人類の宝(最高)
  ★★★☆ :絶対必見
  ★★★ :観るべき映画
  ★★☆ :観ても良い
  ★★ :中間
  ★☆ :観なくてもいい
  ★ :観る価値はほとんどない
  ☆ :作者もろともこの世から消えてなくなれ(最低)
  なし :あえて採点せず

ストーリーは、基本的にすべて書いています。当然、ネタバレの可能性あり。

文章などの内容には、時々変更や追加が入ることがあります。

タイトル・邦題 (原題) 採点 スタッフ/キャスト 製作年/国/カラー/縦横比 視聴日 メディア 作品の分類 更新日
トラック野郎 天下御免 ★★☆ 【監督&脚本】鈴木則文【脚本&助監督】澤井信一郎 1976 日(東映) カラー 1:2.35、105分 2007/12/31(月) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/01
ストーリー 感想
 宇和島まで荷物を運んだ帰り、マッハ文朱の運転する生コン車と桃次郎(菅原文太)のトラックが追い越し合いをして、生コン車軍団に囲まれ、桃次郎はマッハにいきなりキスをして対抗した。
 その後、桃次郎は高松に向かう女子大生2人(鶴間エリ、他)のヒッチハイカーを乗せた途中で、お遍路の由美かおるに一目惚れするがすぐにわかれ、由美は母とジョナサン(愛川欽也)のトラックに乗せてもらった。
 倉敷のドライブイン「かざぐるま」で、オーナーの鳳啓介&京歌子夫妻からジョナサンの子供を1人養子にもらいたいと懇願され、夫妻から電話で直接頼まれた頼まれたジョナサンの妻の春川ますみは、子沢山の生活苦もあって一番おっとりした三女を養子に出すことに承諾した。
 そこに、デコトラ相手に勝負をしかけるコリーダ(杉浦直樹)が現れ、桃次郎とトラック競争をしたが、その最中に臨月の千津(松原千恵子)が桃次郎のトラックに向かって身を投げてきたので、桃次郎は産婆(浦辺粂子)を呼んで運転席で出産させた。
 千津は熊本の人吉で夫と2人でトラックを運転してたが、借金で人の変わった夫が出て行ったのであり、かざぐるまでウエイトレスとして働くことになった。
 倉敷の花むしろの工房で見習いをしていた美大出身の由美も啓介歌子のかざぐるまでウエイトレスをすることになり、桃次郎は彼女へのプロポーズの手紙を書くが、文面の「ちづにみだれる(千々に乱れる)」の誤字から手紙は千津の手に渡たり、千津も桃次郎のことを好きになった。
 そこに由美の後輩のがマッハが兄のコリーダに連れられて現れ、桃次郎に惚れたマッハを嫁にすることを賭けて再レースをすることになったが、約束の日にコリーダが由美を乗せて松山へと経ってしまったので、桃次郎が後を追ってみかんの集荷場で大乱闘になるうち2人は和解し、マッハも桃次郎が由美のことを好きなことに感づいて身を引いた。
 由美は親の勧めでお見合いをしたことを桃次郎に話し、彼のトラックに絵を描いた。
 ジョナサンが由美と撮った写真を見た妻が子供たちを捨てて家出し、ジョナサンはデコトラを降りて運送会社に勤めることになり、運送の途中脱輪したところをトラック運転手の男が手を貸した。
 ジョナサンがかざぐるまに来たところを見計らって、桃次郎が嘘の電話で妻子を呼び、子宝を授かった歌子啓介も実の親を恋しがっていた三女を返して一家は元通りになった。
 由美の縁談が親の借金解消のためだと知った桃次郎は、トラックを担保に入れて宇和島の闘牛に出るコリーダ所有の牛に賭けて勝ち、お金を持って由美にプロポーズしに行くと、彼女は花むしろ工房の誠直也と結婚を誓い合っているところに出くわして身を引いた。
 ジョナサンが以前知り合った運転手が千津の夫だと気づき、京都で彼が重傷との知らせをジョナサンから受けた桃次郎は、千津を乗せて境港から京都まで彼が運ぶ予定だった鮮魚を大急ぎで代わりに運び、夫婦は再会して桃次郎は闘牛で得たお金を2人に残して去って行った。
 シリーズ4作目。
 左記のように、ストーリーはものすごく盛りだくさんだけど、手際よく展開していって、盛り込みすぎ感は全く無い。
 桃次郎が巡礼姿のマドンナに一目惚れすると自分も巡礼姿でドライブインに現れるなど、相変わらずバカな主人公による下世話な見てくれの映画だけど、そんな人々のの熱い心意気や喜怒哀楽もたっぷりと描かれているところがなんとも魅力的。
トラック野郎 爆走一番星 ★★ 【監督&脚本】鈴木則文【脚本&助監督】澤井信一郎 1975 日(東映) カラー 1:2.35、96分 2007/12/30(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2008/01/01
ストーリー 感想
 桃次郎(菅原文太)がやもめのジョナサン(愛川欽也)と立ち寄った姫路のドライブンでウエイトレスのあべ静江に一目惚れをして、彼女が好きな太宰治のにわかかぶれになった。
 桃次郎が見合い写真をあべに渡すようにジョナサンに頼むが、ジョナサンはバキュームカーを運転している加茂さくらが相手だと勘違いして写真を渡す。
 桃次郎があべのことで加茂のところに相談に行き、間違えてバキュームカーのバルブを開けて糞尿まみれになり、加茂の家で風呂に入っているところを、加茂に片思いをしていた巡査のなべおさみが失恋したと勘違いをし、加茂は桃次郎のことが好きになっていた。
 川崎のジョナサンの家で、桃次郎はジョナサンの勘違いに気がついて、ジョナサンと妻の春川ますみと9人の子供たちを長崎までハネムーンのためにトラックに乗せてやるついでに、帰りに姫路に寄って訂正することにした。
 桃次郎たちは、途中山口で出稼ぎで出てきた失業間近の男と知り合い、長崎で父親が出稼ぎに出て2人暮らしをしている小学生の姉弟と知り合った。
 加茂は桃次郎との結婚を承諾するが、桃次郎はあべを好きなことを聞いて失望する。
 ジョナサンが花巻の交通課の警官だった頃に捕まってなけなしのトラックを台無しにされた恨みを持っているトラック野郎のボルサリーノ2(田中邦衛)が現れるが、桃次郎が喧嘩の肩代わりをして、ボルサリーノとのトラック競争で片をつけることになったが、ジョナサンが割って入って桃次郎とボルサリーノは和解した。
 桃次郎はあべをトラックに乗せて長崎の姉弟と再会し、写真から姉弟の父親がジョナサンの新婚旅行と途中で会った出稼ぎの男だと気づいた。
 姫路に行った桃次郎を、勤務中にやけ酒で酔ったなべが追ったことから、なべが懲戒免職になったものの、桃次郎たちが加茂との仲をとりもってなべは彼女と結婚式を挙げた。
 桃次郎があべにプロポーズをしに行くと、あべは義理の兄を好きになって、彼がいる富士山の観測所に行くと言った。
 桃次郎は、姉弟の父親が当たり屋をしているところに出くわし、彼を乗せて子供たちがいる長崎に向けてトラックをとばした。
 トラックは警察に追われたが、ボルサリーノたちトラック野郎がジョナサンのためにパトカーの妨害をし、男は子供たちとの約束どおり正月に帰ることができた。
 シリーズ2作目。
 桃次郎はマドンナが太宰が好きだと知ると学ランを着て太宰全集を抱えてマドンナの前に現れるし、気落ちすると「生まれてすみません」の行灯をトラックにつけたりで、バカバカしいくらいに単純だし、おまけにギャグはことごとく下品。
 でもそれだからこそこのシリーズはやっぱり面白い。
 まあ、もうちょっとパワーがあってせービス精神盛りだくさんだったら良かったかな?とは思ったけど。
ガメラ対深海怪獣ジグラ ★☆ 【監督】湯浅憲明【脚本】高橋二三 1971 日(ダイニチ(大映)) カラー 1:2.35、88分 2007/12/29(土) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2007/12/29
ストーリー 感想
 日本が作った月面基地を宇宙船が襲って破壊した。
 鴨川シーワールドにある海洋動物研究所の研究員石川とトムの2人とそれぞれの子供の健一とへレンの4人が、鴨川沖に宇宙船が着水するのを目撃し、ボートで調べに行って宇宙船に捕獲される。
 中には八並映子がいて、惑星ジグラが海洋汚染で住めなくなったので、地球の海に住むために東京に大地震を発生させて人類に降伏を迫った。
 石川とトムは八並の催眠術で朦朧としたが、健一とヘレンが父親たちを連れて脱出し、八並はボスから子供たちを殺すよう命令されシーワールドに潜入した。
 そのころ、ガメラが海中の宇宙船を発見して破壊し、乗っていたジグラ星人が巨大化して怪獣ジグラになって、ガメラに光線を発して海中に沈めた。
 飼育係が催眠状態の2人が超音波で障害物を察知するイルカの行動に似ていることに気づき、トランシーバーを使って超音波を聞かせると催眠が解け、八並も催眠術をかけられて操られていた月面基地の隊員だったことに気づいた。
 2組の親子4人が潜水艇に乗り込んでガメラをよみがえさせようとしたとき、ジグラに襲われて浮上できなくなってしまうが、深海怪獣ジグラが光に弱いことに気づいた。
 ガメラが落雷で目覚め潜水艇を救出し、ジグラを抱えて地上に連れ出し、火炎放射で倒した。
 ガメラシリーズ7作目で、まもなく大映が倒産したのでこれが最終作。
 ストーリーも何もかもパターン化されてきて、ジグラもイルカ型なので陸上では動きが鈍すぎる欠点が、同じく後頭部が刃物になっている5作目のギロンを思わせ、向上心が感じられない。
 今回の数少ない特徴は、八並映子が海中から来て地上に潜入するときに、海岸の女性からビキニを奪って制服から着替え、その姿でシーワールドまで来て、そこで再び通りがかりの女性からミニスカートを奪って着替えて子供たちを追い回すというところと、当時深刻な問題だった公害を絡めているところ。

 でも、改めてガメラみたいな子供向け映画を観てみると、採点するという客観的な観方と、子供のような純粋な気持ちで映画を観ることとのギャップついて意識せざるをえない。
 後者、つまり子供が喜んだら、前者の低評価なんて何の意味もないのだから、なるべく後者に近い観方をしようと思うのだけど、すれた大人にとってはそれが難しい。
ガメラ対大魔獣ジャイガー ★☆ 【監督】湯浅憲明【脚本】高橋二三 1970 日(大映) カラー 1:2.35、86分 2007/12/28(金) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2007/12/29
ストーリー 感想
 大阪万博の陳列品として、ムー大陸の遺跡とされるウェスター島の謎の石造「悪魔の笛」が運び込まれることになったが、それを知った現地の代表は「ジャイガー」と言って怒って席を立った。
 ウェスター島から悪魔の笛が運び出だされようとしたところにガメラが現れて作業を妨害しようとし、さらに悪魔の笛のあった地中から怪獣ジャイガーが現れ、ガメラの両手両脚に針を打ち込んで空を飛べなくし、ジャイガーは悪魔の笛を追って大阪へと向かった。
 ガメラも針を抜いて大阪へと飛んで再び対決するが、ジャイガーの尻尾の針を刺され、ガメラは海岸で仮死状態になり、ジャイガーは悪魔の笛を海中に投げ捨てた。
 ウェスター島の運び出しの現場責任者の学者の子供のトミーは、友達の弘と共に、万博会場での乗り物として弘の父親の大村崑が製作した潜水艇に乗り込んで、ガメラの口から体内に入り、そこに寄生していたジャイガーの子供が2人を襲うが、トランシーバーの雑音に弱く死んでしまった。
 悪魔の笛を運搬していた人々が次々と体調を壊していたのは、それが空気が流れ込むとジャイガーの嫌いな音を発することで封じ込めるためのものだと判り、ガメラに電気でエネルギーを注入して目覚めさせ、ガメラが海中から笛を見つけ出してそれでジャイガーを倒し、ジャイガーを抱えてウェスター島へ飛び去った。
 ガメラシリーズ6作目。
 ジャイガーもあんまり魅力的ではないし、怪獣の弱点があっさり判ってそれであっさりやっつけるという展開がやっぱり安直。
 今回の目玉は人間が潜水艇でガメラの体内に入り、外部でレーダーで追跡するのが『ミクロの決死圏』そのまんまの絵づらで、それでも設定としては目新しい。
ガメラ対宇宙怪獣バイラス 【監督】湯浅憲明【脚本】高橋二三 1968 日(大映) カラー 1:2.35、81分 2007/12/27(木) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2007/12/29
ストーリー 感想
 地球に接近した宇宙船に乗るバイラス星人が地球を侵略目標として攻撃をしようとしたとき、ガメラが現れて撃墜した。
 しかし、第2の宇宙船が現れ、海底に眠るガメラを光線で拘束して、ガメラの記憶を探ってガメラが人間の子供に弱いことをつきとめた。
 キャンプ場を提供した海洋研究所の潜水艇にまんまと乗りこんで海中でガメラと遭遇したボーイスカウトの正夫とジムが宇宙船に拉致されて、ガメラは受信機をつけられてコントロールされて暴れ、国連は人質の命を尊重して降伏するとにした。
 2人はイタズラ好きの知恵をはたらかせて、ガメラのコントロール装置に細工をして自力で脱出し、自由になったガメラが宇宙船に攻撃すると、バイラス星人たちが合体して巨大な怪獣バイラスになった。
 ガメラはバイラスと共に上空高く飛び上がってバイラスを凍らせ、海面に叩き落して倒した。
 ガメラシリーズ4作目。
 宇宙人とガメラや人間との対決は、人質をとられてすぐに無抵抗になるので、量的にとても少ないこともさることながら、一方的なので面白味に欠ける。
 その穴埋めなのか、ガメラの記憶を探るところで、前3作の名場面集のようなガメラの回想シーンを長々と流したり、さらにはガメラがダムや街を破壊するところで前3作のシーンを使いまわしたりで、なんかやる気がない。
 結局一番の見どころは、デビューしたての渥美マリがガールスカウトのおねえさんという、珍しく健全な役で出ていたりすることか?
 今作から「ガメラマーチ」が主題歌になり、ガメラが子供の味方という設定が完全に定着し、子供が主人公であり続けるのだが、常に日本人の男の子に加えて白人(のハーフ?)の組み合わせなのは、非日常的なイメージを出したかったからだろうか?
大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス ★★ 【監督】湯浅憲明【脚本】高橋二三 1967 日(大映) カラー 1:2.35、86分 2007/12/27(木) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2007/12/28
ストーリー 感想
 富士山が噴火した衝撃で、地下で眠っていたギャオスが山中に現れ、そこにいた男の子があわや食べられるというところに、噴火のエネルギーに引かれてガメラが現れ、ギャオスに傷つけられながらも少年を助けて甲羅の上に乗せて飛び去り村で降ろした。
 山に居座るギャオスに自衛隊が攻撃するが、口から出す超音波や翼による強風に太刀打ちできなかった。
 名古屋に飛んだギャオスとガメラが戦い、切り落とされたギャオスの足を研究した結果、ギャオスが紫外線に弱くそのため夜行性であることがわかり、日の出とともに地中に逃げ帰るギャオスを足止めさせて日光で倒す作戦が実行された。
 作戦は失敗かと思われたとき、ガメラが現れてギャオスを抱えて噴火口に飛び込んで倒し、飛び去っていった。
 ガメラシリーズ3作目。
 突然怪獣が現れてガメラがやって来て対決し、平行して人間たちが怪獣対策に乗り出して弱点を突き止め、最終的にガメラと協調して怪獣を倒す、というストーリーが前作と全く同じ。(さらに、この後のシリーズ作品にも見られる。脚本がシリーズ全作品とも高橋二三によるためか?)
 でも、前作の『ガメラ対バルゴン』の面白味がなかった点は克服されていて、何より相手役のギャオスがバルゴンに比べて強さが判りやすい。
 それに、ギャオスが空を飛んで光線技を駆使するというのが、肉弾戦向きの見た目ではないガメラの相手役としてはうってつけで、そこが今だにガメラのライバルの第一人者の地位を確保しているゆえんだろう。
 さらに、1作目で子供を主要登場人物にしていたのを2作目ではやめて大人だけにしたのだが、今作で復活してさらにガメラは子供の友達というキャラもにおわせている。
 大人たちがムッツリ顔でああだこうだ言っているシーンが続くより、子供を主役にする方が子供にとって飽きずに観られる映画になるかもしれない。
大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン ★☆ 【監督】田中重雄【脚本】高橋二三【特撮監督】湯浅憲明 1966 日(大映) カラー 1:2.35、100分 2007/12/25(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/12/26作成
2007/12/29更新
ストーリー 感想
 戦時中ニューギニアで見つけられた大きなオパールを取りに3人の日本人が向かい、原住民の江波杏子らの静止を振り払って奥地へと入り、隠し場所の洞窟にたどり着いた。
 そこで、3人の1人小野寺がオパールを奪って洞窟を爆破して入り口をふさいで逃げ、1人本郷功次郎だけが助けられて江波に事情を話すと、オパールと思われたのは実は怪獣バルゴンの卵で、彼女は事態収拾のために本郷について日本に来た。
 その頃神戸で卵がかえり、あっという間に巨大化して神戸そして大阪の町を荒らした。
 そこに、宇宙に打ち上げられたガメラのロケットに隕石がぶつかって、自由になったガメラが地球に戻って、バルゴンの発する虹光線のエネルギーに引き寄せられ2匹は対決し、バルゴンの冷凍液でガメラは凍りついた。
 江波の助言で、彼女が持ってきた巨大なダイヤの光でバルゴンを引き寄せ、水に弱いバルゴンを琵琶湖に沈める作戦が実行された。
 しかし、オパールを失ってダイヤを奪おうとした小野寺の妨害で作戦は失敗し、万事休すかと思われたとき、ガメラが復活してバルゴンを琵琶湖に沈め、そして飛び去っていった。
 ガメラシリーズ2作目。
 バルゴン対策に人間たちが様々な作戦を実行するのがメインで、その反面怪獣同士の対決はおろか、ガメラの登場シーン自体がやけに少ない。(ラストの対決なんて、あっさりと勝負がついてあっけなさ過ぎ。)
 その結果、やけにまじめに淡々と展開していく、あまり面白味のない映画になってしまった。
 バルゴンも、頭デッカチで目が離れていて、全然強そうに見えないのがマイナス。
赤い手裏剣 ★☆ 【監督】田中徳三【原作】大藪春彦「掟被り」 1965 日(大映) カラー 1:2.35、87分 2007/12/25(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/12/26
ストーリー 感想
 ヤクザの組が対立する宿場町に、腕の立つ浪人の浪人の市川雷蔵が現れ、用心棒としてそれぞれに売り込んで一稼ぎしようと居座った。
 雷蔵は策略を練って片方の組に対立相手に殴り込みをかけさせ、片方を全滅させると態度を翻して残った組を全員斬り捨てた。
 そして、町のそばの廃坑に隠されてた御用金を町の人々に残して去っていった。
 ストーリーは『用心棒』とそっくりだが、それだけでは面白くならないということを示す結果になってしまった。
 やっぱり、演出やエピソードのディテールまでしっかり作り込まないとダメだということだろう。
大怪獣ガメラ ★★ 【監督】湯浅憲明【脚本】高橋二三 1965 日(大映) モノクロ 1:2.35、79分 2007/12/25(火) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2007/12/26作成
2007/12/28更新
ストーリー 感想
 北極上空で国籍不明機が米空軍戦闘機に撃墜され、墜落して核兵器が爆発し、その衝撃で氷の下に閉じこねられていた、アトランティスに伝わる怪獣ガメラが現れた。
 一方、北海道の亀好きの少年が、拾ってきた亀を親に言われて海の岩場に隠したところ、そこにガメラが現れて暴れたが、少年が灯台から落ちたところを救ったので、少年はガメラは亀の生まれ変わりで悪者ではないと思った。
 ガメラは攻撃された兵器も含め、あらゆるエネルギーを吸収するので、発電所などが襲われてもなすすべがなかった。
 科学者たちは対策を考え、東京に現れたガメラを炎で伊豆大島におびき寄せ、怪獣を追っていた少年も船にもぐりこんで伊豆にやって来た。
 大島に上陸したガメラをカプセルに閉じ込め、そのままロケットで宇宙に打ち上げた。
 少年は、ガメラが殺されずに宇宙に行ったことに満足した。
 ガメラシリーズ1作目
 核兵器で目覚めた怪獣が暴れるという設定はゴジラと同じだが、同時に少年の味方かもしれないという設定もある。
 この両者の混在は、ガメラのキャラをぼやけさせることになり、大人にとっては男の子の役は不要に思えるが、それよりも怪獣にあこがれる男の子という役を作ることで、映画を見た子供が彼を通してより親近感を持てる映画にすることを優先させる、「子供向け映画」を目指した結果だろう。
 このガメラ第一作が成功したことでシリーズ化されたのだが、成功の理由はガメラの見た目と特撮シーンの出来の良さだろう。
日曜日には鼠を殺せ (原題:Behold a Pale Horse) ★☆ 【監督&製作】フレッド・ジンネマン【原作】エメリック・プレスバーガー 1964 米 モノクロ 1:1.85、121分 2007/12/24(月=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/12/24
ストーリー 感想
 1940年、スペインの内戦に敗れた人民軍ゲリラはフランスへと亡命した。
 20年後、亡命した一団のリーダーのマヌエル(グレゴリー・ペック)の潜伏先を白状しなかったために拷問を受けて死んだ男の小さな息子パコは、フランスに密入国してマヌエルのもとを尋ねて父の仇の警察署長(アンソニー・クィン)を殺すことを頼んだが、4、5年に1回の遠征だけしか出来なかった彼はもう若くなく情熱を失っていたので断った。
 その頃、マヌエルの母が危篤になり、署長は病院の周りに狙撃手を配置して彼を待ち伏せた。
 ペックの母は、フランスに行く直前の神父(オマー・シャリフ)に、危険だから帰郷するなとマヌエルへの言伝を残して息を引き取った。
 神父はマヌエルの家に行き、そこにいたパコにマヌエルへの手紙を託すが、パコはマヌエルを帰郷させるために手紙を破り捨てた。
 しかし、マヌエルが経とうとしているところに、署長の内通者のマルコスの姿を見たパコは母の死と罠のことをペックに話し、ペックは神父を強引に連れてきて真相究明にあたると、正体を見破られたマルコスは逃亡した。
 マヌエルは隠していた銃を持って徒歩でピレネー山脈を越えてスペインに入り、夜に病院に潜入し署長を狙撃して撃ち合いになって撃ち殺された。
 命に別状のなかった署長は勝利を誇ったが、街の人々の反応は冷ややかだった。
 まず、第一の印象は、見せ場がクライマックスの撃ち合いしかない(それもナイトシーン)ので、かなり地味。
 マヌエルは聖職者を嫌っているのだが、それは内戦中にカトリックがフランコ側に協力したということらしいということが、観終わって調べるまでは知らなかったが、そんなハンデを考慮しても、グレゴリー・ペック演じる主人公の心情を描くことが不足していたのか解りにくく、地味な映画にとってこれは致命的。
夜よ、こんにちは (原題:Buongiorno, Notte) ★★ 【監督&脚本】マルコ・ベロッキオ 2003 伊 カラー 1:1.66、107分 2007/12/16(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/12/16
ストーリー 感想
 1978年、赤い旅団がキリスト教民主党首モロを誘拐し処刑を予告するが、メンバーたちの予想に反して民衆から彼らに追随する者は現れず、殉教者を生む処刑は自分たちに不利になると思われ、またメンバーの中には個人的な行動に走る者も現れた。
 メンバーの1人で図書館に勤める女性が若い物書きの男と知り合い、想像することを彼から触発された彼女は、同情を感じ始めた党首を想像の世界で釈放するが、実際には党首は処刑され、メンバー全員が終身刑に処せられた。
 現実の事件を犯人側から実録風に描いていて、過激派の陥る誤った信念だとか、現実離れした信念に対抗する想像の力などを改めて感じるが、まあそれだけの映画といった感じ。
白銀に躍る(原題:Kauf dir einen bunten Luftballon) ★☆ 【監督&脚本】ゲザ・フォン・ツィフラ 1961 西独 カラー 1:1.66、97分 2007/12/12(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、パフォーマンス系 2007/12/13
ストーリー 感想
 スキーも得意でアイスホッケー選手もしている舞台装置担当のハンス(トニー・ザイラー)は、スケートリンクの終了時刻の後にフィギュアスケートの練習をしているインゲ(イナ・バウアー)を見初め、彼女が昼間にコーチをしてるスケート教室に初心者のふりをして受講して彼女に近づいた。
 彼女は叔父の勧めで選手として出場間近だったが、彼女自身は舞台女優にあこがれていたのを知ったハンスは、彼女を舞台裏に招待した。
 その頃、自分の女のミアが音痴のくせにミュージカル女優にあこがれていることを諦めさせるために、彼女を主役に抜擢して舞台を失敗させることを条件に出資するというスポンサーの申し出を受け入れた劇団長は、現れたインゲをそのミアだと思ってインゲと契約し、彼女の美貌と美声に団員たちは魅了された。
 しかし、結局ミアが主役についてインゲはクビになったが、団員たちは舞台の本番でミアの邪魔をしてインゲをステージに立たせ、そこにミアが乱入した滑稽さに観客たちは大受けだった。
 予定と違ったのでスポンサーが降りて劇団は劇場を追われたが、ハンスが舞台装置をアイスショー向けに作り変えてスケートリンクでショーが開かれて大成功に終わった。
 しかしインゲは叔父にハンスは求婚しないと言われて連れ出され、ハンスはスキーで彼らの乗る列車に追いつき、インゲと抱き合った。
 先日の『空から星が降ってくる』(1962)と同じ監督と主役による作品で、スケートやスキーやミュージカルシーンなどの見せ場がメインであるのも含めて同じ構成の映画。(ちなみに、イナ・バウアーの映画出演は、確認できたのはこの2作品のみ。)
 その反面、それ以外の普通のドラマシーンがあまり面白くない上に結構長くて見せ場がお預け状態にされるのが不満。
時をかける少女 ★☆ 【監督】細田守【原作】筒井康隆 2006 日 カラー 1:1.85、100分 2007/12/11(火) HDDレコーダー(フジテレビ) ドラマ系 2007/12/12
 大林宣彦版とはストーリーが大きく違うので、比較するのは筋違いだろうが、それにしてもこの映画、アニメというシンプルかつ記号的な表現だということを考慮しても、かなり子供っぽくて深みがない印象を受けた。
 「青春映画」「恋愛映画」というよりは、「恋愛ごっこ映画」「『高校生ならではの悩みを描いたからといって悩める青春映画といえるとは限らないだろ』映画」といった感じ。
 大林版と全く違う点として、主人公のキャラに代表されるように全体がノー天気でしんみり感が排除されていることだが、そのくせストーリーは「後悔」というものが重要な要素になっていたり、結局は「切なさ」に収束したりで、「全体的には軽いのに重要ポイントでは重くあるべき展開にもかかわらず、軽さに引っ張られて重くなりきれない」といった、陰と陽の同居がしっくりしていない印象を受けからだろう。
佐賀のがばいばあちゃん ★☆ 【監督】倉内均【原作&脚本】島田洋七【脚本】山元清多 2006 日 カラー 1:1.85、102分 2007/12/10(月) HDDレコーダー(日本テレビ) ドラマ系 2007/12/11
 原作は未読で、おそらく小説ではなくエピソードの羅列ではないかと思われるが、映画化にあたってはストーリーのある普通の映画となっている。
 そのような映画だと、島田洋七少年が小学生から中学卒業までにおばあちゃんと一緒に暮らした期間の、ホームシックや貧しさの中での心境の変化や成長というものが描かれることに期待するが、人物の深い部分を描いている感じが物足りなかった。
 ストーリー性があるとはいえ、エピソードの断片の連続という印象もあった展開だったので、ぶつ切り感が悪く作用したのだろうか?
プリースト判事(原題:Judge Priest) ★★ 【監督】ジョン・フォード【原作】アーヴィン・S・コッブ「太陽は光輝く」「神の思し召し」「マサックからの暴徒」 1934 米 モノクロ 1:1.33、80分 2007/12/01(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/12/03
ストーリー 感想
 1890年代のケンタッキー。
 プリースト判事(ウィル・ロジャース)は見た目は威厳がないが、被告人に対して偏見を持たず、公正な裁判をしていた。
 彼は民主党を支持する政治活動もしていて、次期判事選挙に立候補しようとしているメイデュー検事(バートン・チャーチル)は、かつて連邦議会に落選したのは判事のせいだと思って憎んでいた。
 判事の甥のローム(トム・ブラウン)が北部の法学校を卒業して弁護士になるために帰って来て、彼は判事の隣に一人で住む私生児のエリー・メイ(アニタ・ブラウン)を密かに好きなことに気づいた判事は2人をくっつけようと画策するが、ロームの母(ブレンダ・フラワー)は素性のわからないエリー・メイを嫌っていた。
 エリー・メイの父親のようなそぶりをしていることに判事が気づいたボブ・ギリス(デヴィッド・ランドー)が、彼女ををからかった男たちを刺した罪で捕まり、ロームが弁護人になったが、ギリスに同情的だった判事は担当を外れることになった。
 ギリスは秘密を守るために自分に有利になる証言を断っていたが、ロームの助手になった判事が、その秘密を知る牧師を証言台に呼んだ。
 牧師は、ギリスは無期懲役の刑を受けながら兵隊不足の南軍のために戦った英雄で、匿名で娘のエリーの養育費を出していたことを証言し、ボブの人格が認められて彼は無罪を勝ち取った。
 『風と共に去りぬ』(1939)と同じ、南部の人たちを誇り高く描いている映画で、南北戦争が終わって70年ぐらい経ち、両者の対立は過去のものになったからこそ、そのような内容の映画が作りやすくなったといえるだろう。
 さらに、民主党に肩入れして共和党をコケにしているふしがあるが、これは南部がそうだということなのか?(リンカーンは共和党)それとも、ジョン・フォードの意向なのか?
白銀は招くよ! ザイラーと12人の娘(原題:12 Madchen und 1 Mann) ★☆ 【監督】ハンス・クェスト【原作】ヴォルフガング・エーベルト 1959 西独 カラー 1:1.33、86分 2007/11/30(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 2007/12/01
ストーリー 感想
 犯罪もないため閉鎖が検討されている山村の2人の警官が失業を恐れて狂言盗難事件を起こし、その村に12人の若い女性たちがスキーに来ていることを知ったプレイボーイで警察のスキー教官のトニー・ザイラーが、まんまと事件の捜査の担当になって現地に潜入し、捜査と恋の二股をかける。
 やがて本当の密輸団がいることに気づいたザイラーは彼らを逮捕し、女性グループのリーダーとの恋も実った。
 トニー・ザイラー主演の映画と聞いて予想される通り、スキーと恋とお笑いが繰り広げられる、当たりさわりのない映画。
 テーマソングはご存知「白銀は招くよ」。
空から星が降ってくる (原題:Ein Stern fallt vom Himmel) ★☆ 【監督&脚本】ゲザ・フォン・ツィフラ 1962 オーストリア=西独 カラー 1:1.66、94分 2007/11/29(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、パフォーマンス系 2007/12/01
ストーリー 感想
 フィギュアスケーターのヘルガ(イナ・バウアー)は、規定種目が嫌になって引退してしまう。
 このニュースを聞いたアイスショーのスポンサーは、出資依頼をしてきた2人の興行師相手に彼女と契約できた方に出資するという契約を結び、うち1人のバルシュとその甥のパイロットのハインツ(トニー・ザイラー)はヘルガの母に断られたので、契約書の不備を突いて、同姓同名のデザイナーのヘルガと衣裳デザインの契約し、ショーの会場の山岳リゾート地に行った。
 ハインツはそこのホテルのフロントの女性と親しくなるが、彼女こそヘルガだと知った。
 そこに、違うヘルガのことをかぎつけた競争相手のクラッペがスポンサーを連れてきて不正を暴こうとするが、ハインツのためにヘルガが滑って見せて難を逃れた。
 クラッペは初演の会場に向かうヘルガを誘拐させ、ハインツたちはセスナとスキーで誘拐犯の車を追って彼女を奪還し、既に始まっていたショーの会場にヘルガがセスナからパラシュートで降下して彼女はそのまま滑り出し、締めくくりにハインツも彼女と共に滑ってショーは成功し2人の恋も実った。
 2人の主役のうちクレジット順はイナ・バウアーの方が上で、ザイラーもスキーでジャンプして道路を飛び越えるなんて見せ場もあるが、ラスト25分ぐらいあるアイスショーがメインで、これを見せるためだけの映画と言ってもいい。
 ちなみに、荒川静香でおなじみの技「イナ・バウアー」も一瞬見られる。
16ブロック(原題:16 Blocks) ★★ 【監督】リチャード・ドナー 2006 米 カラー 1:2.35、102分 2007/11/27(火) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、ドラマ系 2007/12/07
 どうもちぐはぐな印象を受ける。
 証人役のモス・デフが、逃走中だというのにどうでもいいことをしゃべり過ぎで緊張感がそがれる。
 悪役のデヴィッド・モースたちの妨害行動が不相応に派手過ぎ、等々。
 悪い映画じゃないんだけど、改善すればかなりいい映画になったのでは?と思わされるポイントが色々目についた。
野望の系列(原題:Advise & Consent) ★★ 【監督】オットー・プレミンジャー【原作】アレン・ドルーリー 1961 米 モノクロ 1:2.35、138分 2007/11/24(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/11/24
ストーリー 感想
 国務長官が亡くなって、病を抱える大統領(フランチョット・トーン)は独断で協調主義のレフィングウェル教授(ヘンリー・フォンダ)を候補者に指名し外交を託そうとしたが、彼に個人的な恨みがあるクーリー上院議員(チャールズ・ロートン)をはじめ、与野党共に彼は東側に譲歩するとして反対する議員が多く、議会の承認結果によっては大統領自身の立場も危うくしかねない状況だった。
 レフィングルが適任かを問う聴聞会が開かれ、クーリーはレフィングウェルが共産主義者だという証人のゲルマン(バージェス・メレディス)を用意したが、レフィングウェルは実は1度集会に出席してすぐに手を切った事実を隠して偽証して難を逃れた。
 クーリーはレフィングウェルに口封じでゲルマンの再就職を世話した財務省のフレッチャーが集会に出ていた共産党員だと突き止め、彼を脅した。
 一方、アンダーソン議員(ドン・マーレー)は偽証したレフィングウェルの候補をやめるべきとの大統領への進言を断られたが、レフィングウェルの邪魔をやめなければ軍隊時代の同性愛をバラすとアッカーマン上院議員が匿名で彼を脅迫し、アンダーソンは自殺してしまう。
 与党のマンソン院内総務(ウォルター・ピジョン)は党議拘束をはずせばフレッチャーのことは伏せるとのクーリーの取引に応じ、投票結果は賛否同数で議長を務める副大統領(ルー・エイヤース)に委ねられたが、国会中継のラジオを聴いて気をもんだ大統領が急死したとの連絡を受けた彼は承認を否決し、新大統領として新たに国務長官を選ぶことになった。
 アメリカの国会を舞台にした映画は珍しくて興味を覚えるが、同じような裏取引モノとしては、例えば山崎豊子原作作品などと比べると、超大国の最高機関にもかかわらず、どうも淡白な印象で弱い。
フライトプラン ★☆ 【監督】ロベルト・シュヴェンケ 2005 米 カラー 1:2.35、98分 2007/11/21(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/11/23
 一番に感じた問題点は「観ていて楽しくないこと」
 演出や『バルカン超特急』と同じ流れのストーリーはそんなにひどい出来とは思わなし、事件の真相も反則とは言わないけど、もう1回観たいとは決して思わない
 観るものの心を惹きつけようとか楽しんでもらおうと思ったら、映画作りのセオリーとしては例えば登場人物の少なくとも誰か一人に感情移入するようにするとか、脇役にコメディリリーフを配したりなどの工夫があってしかるべきだと思うが、前者に対してはジョディ・フォスター演じる主人公に「迷惑妄想女」の疑いを持たせるのは感情移入反するし、後者にいたっては脇役が誰一人としてキャラが立ってない。
 映画の目的としては、お客さんに満足してもらうことが重要で、それに比べたらストーリーがどうかなんてどうでもよく、辻褄なんか合ってなくてもいいのに、お客さんの満足を差し置いてストーリーに凝ることの方に専念しちゃったみたい。
ソウ3 (原題:Saw III) ★☆ 【監督】ダーレン・リン・バウズマン【脚本&原案&製作総指揮】リー・ワネル【原案&製作総指揮】ジェームズ・ワン【製作】マーク・バーグ、オーレン・クールズ、グレッグ・ホフマン【製作総指揮】ピーター・ブロック、ダニエル・ジェイソン・ヘフナー、ステイシー・テストロ、ジェイソン・コンスタンティン 2006 米 カラー 1:1.85、114分 2007/11/20(火) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、ドラマ系 2007/11/23
 「なんかやっつけ仕事だなぁ」というのが観た後の感想。
 まるで、「ソウ」シリーズの新作を作るにあたって、
  (1)まずはおなじみ、手の込んだ殺人装置を2、3考える。
  (2)そしてやはりおなじみの、クライマックスでネタバラシをしてビックリさせるストーリーを考える。
  (3)単なる殺伐とした殺人映画だと思われないよう、「復讐は虚しい」というメッセージをこめて、人間味のあるストーリーだと思わせる。
 といったことを踏まえてちょちょいと脚本を作り、映像面はカット割りを細かくしてなんとか持たせよう、程度の安直な考えで作られたように思える。
 だから、おどろおどろしいシーンが続くけど、全体的に盛り上がらなくて一本調子に感じた
新選組始末記 ★★ 【監督】三隅研次【原作】子母沢寛 1963 日(大映) カラー 1:2.35、93分 2007/11/18(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/11/18
ストーリー 感想
 浪人の山崎蒸(市川雷蔵)は、近藤勇(城健三朗(若山富三郎))の純粋さに惹かれて新選組に入ったが、恋人の志満(藤村志保)は人殺しの仲間になることに反対だった。
 新選組の局長の芹沢鴨(田崎潤)らが、立場を利用して脅し取った金で遊興にふけっていて、近藤と土方歳三(天地茂)が芹沢たちの寝込みを襲って暗殺し、局長になった近藤が追悼文を読み、土方が嘘泣きをしてみんなの心をつかんだ。
 これら一連の事情を知っていた山崎は、手続きを無視した独善的な行為を非難したが、近藤は「奇麗ごとだけではダメだということがそのうち解る。」と答えた。
 ある夜、隊員が町方と揉め事になって捕らえられ、沖田総司が山崎を連れて番所を襲って局長の命令だといって山崎に町方を斬らせ、土方は山崎に責任を負わせようよしたが、近藤は山崎は逃亡したと嘘を言って身柄の差し出しを拒み、山崎には勤皇派の内情調査を命じた。
 その結果、池田屋に勤皇志士が集まる報告が上がったが、土方は新選組を恨んでいる山崎が嘘の報告で罠にかける疑いがあると言った。
 土方は捕らえた勤皇志士の古高を拷問にかけて集合場所が四国屋だとの自白を信じたが、近藤は山崎の調査を信じ、二手に分かれて池田屋には近藤が6人の隊士と共に襲うことにした。
 池田屋を張り込んでいた山崎も斬り合いに加わって新選組の勝利に終わり、山崎は土方ら隊士らの信頼を取り戻すが、新選組は会津藩にとっては使い捨ての駒に過ぎないことと、引き上げる山崎が群集の中の志満と再会して言葉も無く別れたことに、新選組と庶民との間の溝の大きさも感じるのだった。
 斬り合いなどの見せ場を入れながら新選組の活動にまつわるストーリーを進めることで手一杯といった感じで、登場人物たちの苦悩ややり取りなどに関してはあまり描かれてなく、雷蔵の持ち味も出せていないことが残念。
やくざ絶唱 ★★ 【監督】増村保造 1970 日(ダイニチ(大映)) カラー 1:2.35、93分 2007/11/18(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/11/18
ストーリー 感想
 高校生の大谷直子は、異父兄弟の兄の勝新太郎がやくざで家に愛人のホステスの太地喜和子を住まわせていたり、男と付き合うのを禁じるほど可愛がられ過ぎていることにうんざりしていて、教師の川津祐介に処女を捧げて、相手を伏せて勝新に告白して反抗した。
 怒った勝新は大谷に嫉妬して喧嘩別れした太地のバーに行き、対立組織のボスを始末する仕事を控えていたにもかかわらずその組織の組員たちや通報で来た警官を殴って逮捕された。
 勝新から交流を禁止されていた父の加藤嘉は、唯一の実子の大谷を改めて娘として一緒に住むことを申し入れたが、大谷は就職先の紹介だけを頼んでそれ以外の援助は断った。
 まもなく加藤ががんで死に、彼の養子の田村正和が大谷を亡き父に会わせようとしたが、加藤の妻の荒木道子は妾の子供の大谷を拒絶した。
 殺しをしたくなくて逮捕されたと組から笑われていると拘置所に面会に来た舎弟から聞かされた勝新は、保釈を受け入れて改めてボス殺しを組長から命じられた。
 大谷と田村は相思相愛になって、結婚をしたいと2人で勝新に申し出ると、勝新は田村を殺すと言い、大谷は田村をかばうために勝新を選ぶと言って田村を帰した後に勝新を殺そうとした。
 勝新は家を出て外にいた田村に大谷のことを頼むと言って、敵のボスのところに行って殺し、直後にその組員に撃たれて死ぬのだった。
 表向きは勝新が主役となっているが、ストーリーは恋愛や人生の障害として家族が邪魔者として立ちはだかり、家族への愛憎に悩まされるというもので、渥美マリや関根恵子らが主役の増村作品でおなじみの展開で、よって実質的主役は大谷直子の方。
 でもその結果、名目主役の勝新のパートが多いことで大谷のドラマが相対的に薄まってしまい、渥美・関根主役作品の濃厚ストレートな味わいと比べるとかなり物足りない。
逆転 (原題:The Prize) ★★ 【監督】マーク・ロブソン【原作】アーヴィング・ウォーレス「小説ノーベル賞」 1963 米 カラー 1:2.35、135分 2007/11/17(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) 感覚系、ドラマ系 2007/11/17
ストーリー 感想
 ノーベル賞受賞者が授賞式に出席するためにストックホルムに集まったが、戦後ドイツからアメリカに渡った物理学賞受賞者(エドワード・G・ロビンソン)が東側のスパイ組織に捕らえられ、偽者(ロビンソン二役)が授賞式で反米的な発言をしようと企んでいた。
 別名で推理小説も書いているアメリカ人の文学賞受賞者(ポール・ニューマン)だけがすり替えに感づき、誰にも信じてもらえられない状態で、授賞式までのタイムリミットで本物を捜索した。
 明らかに『北北西に進路を取れ』などのヒッチコック作品の亜流で、いかに影響されているかというと、
●【出演】ポール・ニューマン:『引き裂かれたカーテン』で、東側に亡命したと見せかけて数式を盗み出す高名な数学者の役。ただし、1966年製作なので『逆転』よりも後。
●【出演】ダイアン・ベイカー:『マーニー』(1964)これも『逆転』の後。
●【出演】レオ・G・キャロル:『レベッカ』(1940)以来のヒッチコック作品の常連としておなじみ。
●【ストーリー】主人公だけが事件が起きていることに感づくが、周囲の人にはなかなか信じてもらえないという展開は、『北北西に進路を取れ』『裏窓』などヒッチコックが多用している。
●【シーン】敵に追われて絶体絶命の主人公が集会での奇行で通報されて来た警官に連れ出されて脱出するというアイディアが『北北西に進路を取れ』のオークションのシーンそのまんま。
●クライマックスに「ノーベル賞授賞式」という大舞台を用意しているのが、『知りすぎていた男』のアルバート・ホール、『北北西に進路を取れ』のラシュモア山などを思わせる。
●サスペンス映画であると同時に、随所にユーモアが散りばめられている。
●主人公と恋に落ちるヒロイン(エルケ・ソマー)がブロンド(ヒッチ作品の定番)。
…といった具合。
 出来としては、そんなに傑作というわけでもないが、車に隠れてニューマンとソマーが脱出する緊張感が高まるはずのシーンで、密着する羽目になった2人がのんきなやりとりをしたり、主役を食ってしまうほどの凄い演技を見せることが多いエドワード・G・ロビンソンもここでは悠々と演じていたりなど、ゆったりと楽しめる映画になっている。
若き日の信長 ★☆ 【監督】森一生【原作】:大佛次郎 1959 日(大映) モノクロ 1:2.35、97分 2007/11/14(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/11/14
ストーリー 感想
 信長は今川義元の脅威に襲われて、「うつけもの」と呼ばれる奇行のため家臣の中にも信長の命を狙う者がいた。
 信長はそんな身内の困難をはねのけ、ついに攻め込んできた今川の大軍に対し、桶狭間へと出陣していった。
 合戦シーンなどはなく、全体的に抑えた作りの映画。
 そのせいか展開や演出にもっとメリハリがあった方が、映画に集中出来て話も解りやすかったかも?と正直思ってしまった。
紅の拳銃 ★★ 【監督】牛原陽一 1961 日(日活) カラー 1:2.35、87分 2007/11/11(日) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、ドラマ系 2007/11/11
ストーリー 感想
 軍隊時代には射撃の名手だったが今では右腕を失った石岡(垂水悟郎)は、かつての上官で東京の組織のボス小寺(芦田伸介)から、神戸の組織のボスの陳万昌(小沢昭一)を殺して香港と直接取引することを企み、そのために足のつかないフリーの殺し屋を作り上げることを依頼され、クラブで飲んでいた中田(赤木圭一郎)の目つきを気に入ってスカウトした。
 そのとき、そこのホステスの千加子(白木マリ)が男たちに追われていると2人に助けを請い、中田は追い払って千加子のマンションに付き添い、そこで千加子は神戸の組織のボスの女で、口封じで狙われていると告白した。
 中田は石岡の家で指導を受けめきめき上達し、彼の妹で盲目の菊代(笹岡礼子)とお互いに恋心を抱き合ったが、中田は殺し屋という正体を彼女に隠さなければならないことに苦しんだ。
 大仕事の前の小手調べとして、陳から小寺経由で依頼された千加子殺しを石岡から命じられた中田は、彼女を殺す代わりに陳のところに連れて行って監禁された。
 石岡は小寺に対する落とし前として中田を始末するのと、神戸の眼科医に手術してもうらために菊代を連れて神戸に来たが、陳の手下に捕まって中田と再会し、香港の組織のボスの劉(小沢栄太郎)を暗殺して帰国した陳の弟の大隆(草薙幸二郎)が3人を山中で殺そうとすると、そこに劉の手下のキム(藤村有弘)が現れて3人を助けた。
 小寺は石岡に、以前に石岡が仕込んで殺された殺し屋だった男の弟だと告白し、石岡や小寺たちを恨んでいると言ったが、菊代の手術台を工面するために、実は生きていた劉と、その妻でかつて中田に別れを告げられた美津(吉行和子)が泊まっている大阪のホテルに行き、小寺も現れて陳殺しを依頼された。
 劉一味が陳の家を襲って打ち合いになったが、中田は刑事だという正体を明かして一堂は警官隊に逮捕され、釈放された石岡と共に列車で東京へと向かう目が見えるようになった菊代が、車内で中田と気づかずにすれ違っていった。
 良く言えばそれなりに退屈せずに最後まで見られる映画になっているが、悪く言えばそんな盛りだくさんの映画にもかかわらず何かもの足りない。
 どんでん返しが2回もあったりなど、手が込んでいるものの効果的に働いてなく、アクションなども含めて映画のポイントとなる要素が無かったからだろう。
俺の故郷は大西部 【監督】西河克己【原作】野村耕三 1960 日(日活) カラー 1:2.35、63分 2007/11/07(水) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2007/11/08
ストーリー 感想
 現代(1960年)のテキサス。ワイアット・アープの子孫にあたる和田浩治は、父から彼の日本人の妻を紹介してくれた松山という元刑事の恩人にお金を渡すために、東京へ行くことを頼まれた。
 東京に着くと、なぜか彼が大金を持っていることがOK商会に知られていて彼らに狙われた。
 和田は、知り合いになった清水まゆみがOK商会の人質として捕らえられている富士山ろくの大川牧場に行き、OK商事に雇われていたクライトン兄弟の末裔のE・H・エリックらと戦って倒した。
 松山はOK商会によって殺されていたことがわかったが、和田が主催する歌謡ショーの舞台の上から、客席にいた大川牧場の東野英治郎に向かって、松山の友人だった彼の孤児院にお金を寄付すると言い、観客たちと一緒に蛍の光を歌って別れを惜しみ、そのステージを和田の父がアメリカでTVで見て"Good Job"と言った。
 ストーリーが飛躍しまくっているのは、決してぼけっと見ていて節目を見逃していたわけでは無いと思う。
 なにしろ、当時テレビの衛星中継なんかまだ無かったころにアメリカで日本のテレビが見られるなんてでたらめを平気でやってるくらいだし。
 「故郷は大西部」とは言っても、20世紀のテキサスもはや大西部のはずがなく(しかもアメリカロケは無しで屋内シーンのみ)、富士山ろくのOK牧場ならぬ大川牧場で西部劇の格好をして決闘をしても、全然西部劇っぽさが足りない。
 平尾昌章、森山加代子、田代みどり他、約6人もの歌手が歌うシーンが長時間にわたってあるのも、本筋を無視してタイアップかなんかで無理やりねじ込んだ感じだが、その中でもスーツに七三分けで♪ちょ、ちょ、ちょ♪と「結婚してチョ」という歌を歌っている、スパイダース結成前のかまやつひろしが見どころ。
 とまあ、欠点っぽいことばかり書いたけど、尺が63分しかないことからも明らかなように、2本立ての添え物として作られた映画なので、こんなもんでしょうと許される。
続サラリーマン清水港 ★☆ 【監督】松林宗恵【脚本】笠原良三 1962 日(東宝) カラー 1:2.35 90分 2007/11/06(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/11/07
 前作に比べて出演者の芝居の見どころが無く、全体的にかなり見劣りがして、ストーリーを追う気もなくなってしまった。
パリところどころ (原題:Paris vu par...) ★☆〜★★ 【製作】バーベット・シュローダー、ジャン・ルーシュ 1965 仏 カラー 1:1.33、96分 2007/11/03(土=祝) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/11/04
 ヌーベルバーグの監督たちによるオムニバスで、ストーリーが尺が短いことに対する物足りなさに加え、「どうでもいい話だなぁ」と思ってしまうものが多かった。
サンドニ街 (原題:Rue Saint Denis) ★☆ 【監督&脚本】ジャン=ダニエル・ポレ       ドラマ系 2007/11/04
ストーリー 感想
 男が娼婦を家に呼ぶが、女性経験が少ないことを隠そうとするもバレバレ。
 すぐには行為に及ばず食事を作ってあげたりし、やっと始めようというときに停電で真っ暗になってしまい、「待とうか?」などと言ってしまう。
 コメント無し。
北駅 (原題:Gare du Nord) ★★ 【監督&脚本】ジャン・ルーシュ       ドラマ系 2007/11/04
ストーリー 感想
 朝、妻は家の外が工事でうるさいこと、職場の不満、夫婦生活に飽きいっそ外国に行きたいなどと愚痴り、夫と喧嘩して帰らないと言って出勤する。
 途中の道で車にひかれそうになり、運転していた男と話して、男は自殺を考えていたが、一緒に外国に言ってくれれば考え直すと言った。
 女が断ると、すぐに男は橋の上から身を投げた。
 結局これが一番ドラマチックで、前半が家の中での会話劇、後半が路上で並んで歩きながらの会話劇という展開もメリハリがきいていて、一番面白かった。
サン・ジェルマン=デ=プレ (原題:Saint Germain-des-Pres) ★☆ 【監督&脚本】ジャン・ドゥーシェ       ドラマ系 2007/11/04
ストーリー 感想
 パリに絵の勉強に来ていたアメリカ娘のキャサリンは、出会った男ジャンと彼の家のベッドの上で目覚めた。
 彼女はジャンの家に居座るつもりだったが、彼が追い出すためにメキシコに経つと言ってキャサリンは出て行った。
 美術学校に行くと、ヌードモデルがなんとジャンで、キャサリンは驚いて教室を飛び出し、彼女を口説いた男の家について行くと、そこは今朝ジャンといた家で、キャサリンはその家を出て学校に戻ると、ジャンが別の女と歩いていた。
 ナレーションのシーンが何故長いのか?
エトワール広場 (原題:Place de L'Etoile) ★☆ 【監督&脚本】エリック・ロメール       ドラマ系 2007/11/04
ストーリー 感想
 ジャン・マルクが出勤途中地下鉄の駅から出て男とぶつかって、もみ合ううちに男が倒れて起き上がらなかったので、ジャンは職場へと逃げ去った。
 新聞記事をチェックしたが何も載ってなく、地下鉄に乗るのも避けた。
 2ヶ月後、地下鉄に乗ると社内で男と会って何も無かったことが判った。
 コメント無し。
モンパルナスとルヴァロワ (原題:Montparnasse et Levallois) ★☆ 【監督&脚本】ジャン=リュック・ゴダール       ドラマ系 2007/11/04
ストーリー 感想
 2人の彼氏に速達を出した直後に封筒と便箋を入れ違えたことに気づいたモニカ(ジョアンナ・シムカス)は、まずイヴァンのところに先回りし、もう一人の男とは会って別れを言うつもりだと言うと、イヴァンは浮気に怒ってモニカを追い出した。
 次にもう一人の男のロジェのところに行き、同じようにもう1人の男とは別れるつもりだと言うと、ロジェに届いた手紙は入れ違ってなかった。
 ロジェも浮気を知ってモニカを追い出した。
 ゴダールらしい内容はいいんだけど、男が最後に怒って失恋という展開は、唐突過ぎる印象で面白さは弱かった。
ラ・ミュエット (原題:La Muette) ★☆ 【監督&脚本】クロード・シャブロル       ドラマ系 2007/11/04
ストーリー 感想
 男の子の両親は口げんかばかりで、嫌気をさした男の子は耳栓をした。
 父の出かけがけに喧嘩して、母は階段から落ちて瀕死の状態になったが、男の子は物音に気づかず出かけて行った。
 製作当時のフランスの時事が関係ありそうな・・・判らないからコメント無し。
しのび逢い リポア君の恋愛修行 (原題:Monsieur Ripois) ★★☆ 【監督&脚本】ルネ・クレマン【脚本】ヒュー・ミルズ【原作】ルイ・エモン 1954 仏 モノクロ 1:1.33、104分 2007/10/31(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/11/01
ストーリー 感想
 フランス人のアンドレ・リポワ(ジェラール・フィリップ)は、フランスが嫌で戦後イギリスに残って事務の仕事をしていた。
 彼は女性を積極的に口説いて、付き合ってはすぐに飽きて別の女に乗り換えるということを繰り返していた。
 そしてついに資産家のキャスリン(ヴァレリー・ホブソン)と結婚して裕福な生活を手に入れたが、気持ちは妻の友人のパトリシア(ナターシャ・パリー)に傾いていて、アンドレとの離婚を決意したキャスリンはパトリシアにアンドレに用心するように言った。
 エジンバラにいたキャスリンからロンドンの家のアンドレに離婚の通告の電話がかかった後、アンドレはロンドンのホテルにいたパトリシアを自宅に呼んで夕食を食べ、自分の女性遍歴を語った。
 そして、今までどの女性にも満足できなかったが、パトリシアこそ探し求めた理想の女性だと告白した。
 パトリシアは彼に好意を抱きつつも、もう浮気はしないというアンドレの言葉を信じることが出来ず家を去っていき、アンドレは失恋の気持ちを示すためにバルコニーから飛び降りようとして落ちた。
 翌日ロンドンに来たキャスリンは、アンドレとの間には何も無かったというパトリシアの言葉から、アンドレは離婚を苦に自殺したと思って、改めて彼との結婚を続ける決意をし、キャスリンが押す車椅子の上でアンドレはうかない顔だった。
 新しい恋の駆け引きがうまくいきそうな期待感ににんまりしたり、抱き合いながらも愛が冷めたことを感じてうつろな表情をしたりなど、ルネ・クレマン監督による多彩な感情情表現のシーンと、それに応えるジェラール・フィリップがいい。
サラリーマン清水港 ★★ 【監督】松林宗恵【脚本】笠原良三 1962 日(東宝) カラー 1:2.35 92分 2007/10/28(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/10/28
ストーリー 感想
 山本長五郎(森繁久彌)社長率いる酒造会社清水屋のことろに、日本の酒を探しに来た香港のバイヤーの邱(フランキー堺)が現れたが、接待で飲ませた結果マズいと酷評だった日本酒とウィスキーは清水屋のもので、反面ライバル会社の黒駒醸造の酒は好評だった。
 清水屋の創立五十周年パーティが清水港で開かれたが、秘書の石井松太郎(小林桂樹)の片思いの女子社員が同僚の追分(夏木陽介)と結婚することがわかって、その夜清水屋の焼酎「清水港」で一人飲んだくれているところに邱が現れて清水港を気に入り、邱のホテルで2人で飲んで騒いだ。
 その隣の部屋で芸者の〆蝶(新珠三千代)と密会中だった山本が騒いでいた2人を見つけ、翌日石松を叱責中に邱が現れ清水港を大量に買い付けるとだけ言い残して去っていった。
 急遽清水港の原料の干芋の調達のために四国へ向かった石松は、連絡船内のすし屋で清水屋の「次郎長正宗」が最高という都田京子(司葉子)に石松はおごったが、京子は干芋会社の社長令嬢だった。
 2人で金平様に酒の奉納をして、松山で都田社長(有島一郎)の接待を受けていると、清水屋の芋購入を察知した黒田駒造(東野英治郎)が現れて、黒駒醸造が全部の芋を買い取ることになったと言った。
 石松は大阪で〆蝶と密会中の山本に電話して、山本が松山に来ると、都田は山本を接待中と称して芸者と会っていることが判り、山本は都田の妻(一の宮あつ子)にばらして、京子を加えた家族3人の取締役会を開いて、芋はすべて清水屋に売ることに決まった。
 山本と石松が東京本社に戻ると、〆蝶との浮気を知った妻蝶子(久慈あさみ)が待ち構えていたが、山本は妻愛しさのあまり蝶のつく名前の女としか浮気をしないとの大柾専務(加東大介)の機転で蝶子の怒りを収めた。
 森繁、小林桂樹、加東大介、三木のり平、フランキー、有島一郎などの芸達者なコメディ芝居が見どころ。
栄光のジャングル (原題:The Big Gamble) ★☆ 【監督】リチャード・フライシャー【製作】ダリル・F・ザナック 1961 米 カラー 1:2.35 100分、日本未公開 2007/10/28(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、感覚系 2007/10/28
ストーリー 感想
 スティーヴン・ボイドが妻のジュリエット・グレコと共に15歳で家出して以来アイルランドに戻ってきたのは、未開のアフリカでトラック輸送をして一山当てようと思い、その資金の無心のためだった。
 実家の家族は彼らに冷たく当たったが、母の理解を得て、長年銀行マンだった兄(デヴィッド・ウェイン)が同行して資金を監視するという条件で家族が出資することになった。
 トラックを購入して船でアフリカに運び込み、缶ビールを大量に買って奥地で高く売ろうと出発したが、様々な困難が襲ってその旅に3人はいがみ合った。
 命からがら目的地の目の前まで着くことが出来たが、トラックは故障し、積荷のビールも人足やガイドの費用などに当てたため半分になっていた。
 それでも、3人は団結して危機を乗り越えたことに満足した。
 原題の"The Big Gamble"が示すとおり、主人公のスティーブン・ボイドは、アフリカをなめてるとしか思えないほど下準備も確信もなしにひたすら前進するキャラで、そのせいで困難を招いても同情し難いことが映画にとってマイナスに働いてしまっている。
 スリラーとしては、崖っぷちの細い道で切り返しでUターンをするシーンが、同様のシーンがある『恐怖の報酬』(1953仏)に比べて顔とタイヤのアップばかりで、トラック全体の動きが判らないのでダメ。
 でも、川を渡るシーンと、下り坂でブレーキが効かないシーンはまずまずだった。
キング・オブ・デストロイヤー コナンPART2 (原題:Conan the Destroyer) ★☆ 【監督】リチャード・フライシャー【原作】ロバート・E・ハワード【製作】ラファエラ・デ・ラウランティス【撮影】ジャック・カーディフ 1984 米 カラー 1:2.35 101分 2007/10/28(日) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系、ドラマ系 2007/10/28
ストーリー 感想
 コナン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、立ち寄った国のタラミス女王(サラ・ダグラス)に、生贄になる姪のジェナ姫(オリヴィア・ダボ)が儀式に必要なダゴスの角を持ち帰るお供をして欲しいと頼まれ、コナンの死んだ恋人のヴァレリアを生き返らせることと引き換えに承諾した。
 その旅には、コナンの道連れの泥棒のマラク(トレーシー・ウォルター)の他に、道中で旧知の魔術師アキロ(マコ)と、棒術の達人ズーラ(グレイス・ジョーンズ)も加わった。
 苦労の末に角のありかにたどり着いたが、アキロはそこに「角と生贄の娘で悪魔が甦り世界を征服する」という言葉が書かれているのに気づいた。
 ジェナが角を手に入れた直後、最初からコナンたちを使い捨てるつもりだった女王の手下が角とジェナを奪って女王の元に戻った。
 コナンたちは女王の城に忍び込み、儀式の途中で甦りつつある悪魔と対決し、弱点の角をもぎ取って倒し、女王も死んだ。
 新たに女王になったジェナはマラクとアキロとズーラを側近として迎え入れ、コナンは一人旅立った。
 映画としては、大作の割りに一本調子で意外に盛り上がらなくて、全然たいしたことないんだけど、登場人物のキャラにメリハリがあって面白いことだけは、『ロード・オブ・ザ・リング』や『スター・ウォーズep.1&2』なんかよりずっとまし。
台所太平記 ★★ 【監督】豊田四郎【原作】谷崎潤一郎 1963 日(東宝) カラー 1:2.35 110分 2007/10/27(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/10/27
ストーリー 感想
 作家の千合磊吉(森繁久彌)と妻(淡島千景)は、京都とその後伊豆山の一軒家に住んだが、その間常時2人ぐらいの女中たち(森光子、乙羽信子、京塚昌子、淡路恵子、水谷良重、団令子、大空真弓、池内淳子、中尾ミエ)が働いてはやがて去って行き、入れ替わりに新しい女中が来るということを繰り返していた。
 夫妻は女中たちを自分の娘のように思っていて、女は結婚してこそ幸せという考え方が当たり前だった最初の頃は結婚相手の世話もしていたが、時代が進むにつれて女中たちは家を去るにあたって自分の生き方を自分で決めるようになった。
 年老いた夫妻は、そんな時代の流れを受け止め、女中に頼らず一軒家でなくアパートにでも住もうと話し合った。
 数多い女優たちによるさまざまなエピソードを軽快に見せる。
 中でも水谷良重目当てに働かせてくれとやって来たレズで無愛想の淡路恵子の役が面白い。
狐のくれた赤ん坊 ★★ 【監督】三隅研次【原作】谷口善太郎、丸根賛太郎 1971 日(ダイニチ(大映)) カラー 1:2.35 84分 2007/10/24(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/10/24
ストーリー 感想
 大井川の川越人足の寅八(勝新太郎)は、夜に酒場で飲んでいるときに近所で狐が出たと聞かされて、度胸を示すためにそこに行き、捨てられていた赤ん坊を狐が化けていると思って連れ帰った。
 しかし、狐になるわけでもなくやがてもてあますようになって再び捨てたが、なぜか寝床の中に戻っていた。
 そのうち子供に情が移って善太と名づけて、酒や喧嘩や博打もやめて育てた。
 旅の途中の関取の賀太野山(田子ノ浦忠雄)が、なぜか毎年善太に焼き物の人形を持って来た。
 善太が大名行列に対して土下座をしなかったことで引っ立てられ、寅八は自分の命を賭けて善太の免罪を申し出たところ、その心がけを受け入れられて2人とも釈放され、その夜、寅八は気持ちが大きくなって、酒の勢いで善太は実は大名の子供だと言いふらした。
 しかし、賀太野山が侍たちを連れて現れ、善太は彼の妹が腰元をしていたときにはらんだ子供で、奥方の息子との跡取り争いを避けるためお暇をもらい、赤ん坊を産んで妹が死んで賀太野山が困って寅八に赤ん坊を託したと話し、奥方の息子が死んで跡取りが善太しかいないので返してほしいと寅八に頼んだ。
 寅八も善太もずっと一緒にいたいと思ったが、侍には逆らえず、善太は籠に乗って去って行き、寅八は物陰でそれを見ていた。
 勝新のコミカルな持ち味も見られる。
無頼の谷
(原題:Rancho Notorious)
★☆ 【監督】フリッツ・ラング【原作】シルヴィア・リチャーズ 1952 米 カラー 1:1.33 89分 2007/10/20(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/10/20
ストーリー 感想
 雑貨屋を営むフィアンセを2人組の強盗に殺されたヴァーン(アーサー・ケネディ)は単独で追跡した。
 仲間割れして撃たれた片割れが死ぬ間際に、「もう1人はチャック・ア・ラックに行った」と言った言葉を頼りに捜査を続けた結果、オルター・キーン(マレーネ・デートリッヒ)の牧場のことだと判り、その場所を知っている獄中のフレンチー(ホセ・フェラー)に接触するために、酒場で発砲した。
 2人は脱走に成功し、フレンチーが連れて来たところがまさにオルターの牧場で、そこで彼女はお尋ね者たちを匿って、彼らが犯罪で得た儲けの一部を分け前としてもらっていた。
 ヴァーンが恋人にあげたブローチをオルターが身につけていたので、ヴァーンは彼女に気があるそぶりをして接触して誰からもらったかを聞き出そうとしたが、各人の秘密は守る約束になっていた。
 フレンチー以下お尋ね者たちが銀行強盗をはたらき、フレンチーが撃たれて単独で逃げ、一味は身動きがとれなくなって、ヴァーンが1人でオルターに分け前を届けに来た。
 そこでヴァーンは、ブローチの送り主が仲間の1人のキンチだと聞き出し、犯罪者に手を貸すオルターを罵倒して牧場を去り、キンチを問い詰めて保安官に突き出した。
 オルターがヴァーンの言葉に打ちのめされて牧場を去ろうとしたところに、彼女を想いヴァーンに嫉妬するフレンチーが現れ、さらにキンチを奪還して裏切ったオルターのところに来た一味が2人と対立し、そこにヴァーンも加わって3対一味の撃ち合いになり、3人が勝ったがオルターがフレンチーをかばって死んだことで彼の嫉妬も解け、2人は牧場を後にした。
 特にコメントすることは無し。
 フリッツ・ラングは、アメリカに渡ってからはこれといった成果は無かったのだろうか?
恐怖の土曜日
(原題:Violent Saturday)
★★ 【監督】リチャード・フライシャー【原作】ウィリアム・L・ヒース 1955 米 カラー 1:2.35 90分 2007/10/03(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/10/05
 三人の男(リー・マーヴィン、他)がアメリカの小さな町の銀行を襲うべく町にやって来た。
 彼らが強盗の準備を進めるのと平行して、戦争中に出征せずに町の銅山で働いていた父(ヴィクター・マチュア)を尊敬できない男の子、銅山のオーナーの息子と夫婦仲の冷めた妻、その妻の魅惑的な妹と彼女の家を覗き込む妻子もちの銀行の店長、その店長に返済の催促を受けて盗みをする女、強盗たちの逃走経路になる農場のアーミッシュ(アーネスト・ボーグナイン)など、町の人たちが描かれる。
 強盗が銀行を襲ってバラバラに描かれた人々が絡み合う後半を期待させる前半の展開に惹きつけられるが、結局後半の強盗たちとヴィクター・マチュアの対決は意外に盛り上がらなく、町の人々のドラマも、何しろ人数が多過ぎで各々の存在が薄まったので膨らまなかった。
千姫御殿 ★☆ 【監督】三隅研次 1960 日(大映) カラー 1:2.35 分 2007/09/30(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/10/05
ストーリー 感想
 大坂城落城後、千姫(山本富士子)を救えば嫁にもらえるとの約束を家康に破られた坂崎出羽守が千姫の行列に割り込んで柳生但馬守に斬り殺された。
 千姫は本多再婚したが、波乱の半生を経て生きる目的を見失い、別居して吉田御殿で役者などを呼んで遊びに明け暮れ、悪い噂が広まっていた。
 ある晩、御殿に誘われて一晩姫の世話をした町人の芳之助が翌日死体で見つかり、また姫と刺し違えようと御殿に来た本多の家来の小林万次郎も、姫と会って虜になり、やがて沼で死体で見つかって、姫は本多家と離縁させらた。
 浪人の田原喜八郎(本郷功次郎)も御殿に招き入れられ、姫は彼を気に入って舞の指導を受けることになった。
 ある夜、芳之助の許婚だったおかつ(中村玉緒)が姫を殺そうと屋敷に忍び込んだが捕らえられ、彼女から男たちを連れ込んでは殺しているという濡れ衣を着せられていると聞かされた姫は、自分は芳之助を帰し殺してはいないと言っておかつを帰した。
 その後、おかつは夜道で侍たちに襲われるが、実は姫を調べるために本多佐渡守(志村喬)が放った隠密の旗本だった喜八郎が現れて彼女を救い、姫は怪しくないと本多に伝えた。
 姫を気に入っていた家康(中村鴈治郎)が亡くなって、悲しさで馬を走らせ、姫を追った喜八郎は姫とお互いに愛し合っていることを確認した。
 喜八郎は嘘の噂を広めているのが、姫に仕えていて実は坂崎出羽守の姉の如月(山田五十鈴)だということを突き止め、如月がまさに姫を殺そうとする寸前で彼女を斬った。
 姫の無実は晴れたが、幕府は事件を公にしないために姫を尼寺に入れることにし、本多は邪魔な喜八郎を閉門にし、姫に正体を明かして、裏切られたと思った姫は尼になる件を承諾した。
 それを知った喜八郎は謹慎を破って御殿に行こうとしたが、拒まれて切腹を申し付けられ、喜八郎の手紙を託されたおかつが、剃髪を終えた姫に手紙を渡し、姫は喜八郎の愛を知って尼寺へと向かった。
 千姫が男を連れ込んでもてあそんでは殺しているとか、彼女にかかってはどんな男も虜になってしまうとか、エロチックな期待も抱かせるのだが、残念ながらそんなに盛り上がらず、悪役の暗躍や立ち回りやかなわぬ恋など、それ以外の要素についても今一で、全体的に見どころが少ない。
スパルタ教育 くたばれ親父 ★☆ 【監督&脚本】舛田利雄【原作】石原慎太郎「スパルタ教育」 1970 日(ダイニチ(日活)) カラー 1:2.35 87分 2007/09/29(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/09/29
ストーリー 感想
 石原裕次郎は後輩にもきびしいプロ野球の審判員で、日曜も仕事でナイターで帰りは遅く、起きるのも遅くて5人の子供と触れ合う時間が少なかった。
 同僚が危篤状態になり、彼の娘の有川由紀を呼びに学園紛争中の高校に乗り込んで無理やり連れ去り、それがきっかけでその高校生たちの指導を頼まれ、シンナー遊びなどにも毅然とした態度で応対した。
 子供たちの成績が下がっていたずらにも明け暮れ、一緒にいてくれないことに文句を言われた裕次郎は、妻の若尾文子まかせだった子育てを、一転自らスパルタ式教育を施した。
 そんな父親が判定をめぐって突き倒され観客にも野次られて翌朝飲んだくれて帰ってきたのを見てがっかりした子供たちは、夏休みで母と有川と共に裕次郎の父(田崎潤)の実家に行った。
 しかし、その町で暴れ回って住民たちと対立していた不良たちが、田崎の家に乗り込んで人質に有川を連れ去っていった。
 翌朝、裕次郎が来て不良たちに立ち向かって有川を助け、それを見た子供たちは父を尊敬するようになった。
 子供にも厳しく悪事にも毅然とした態度であたる大人の姿を、公正さを象徴するアンパイアという設定を通して描いた映画。
 石原慎太郎原作だから、とにかくスパルタ絶賛で子供の人権なんて無視して構わないという内容か思いきや、そんな無茶なことはなく、それなりに子供や若者の立場にも立っている。
 とはいえ、結局は教育に対して主張しているだけの映画という印象で、映画としての面白味は無い。
ミラーを拭く男 ★☆ 【監督&脚本】梶田征則 2003 日 カラー 1:1.66 116分 2007/09/29(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/09/29作成
2007/10/08更新
ストーリー 感想
 運転していた車で子供に当ててしまった緒形拳は会社にも行かなくなり、やがて交通事故の被害者や加害者の苦しみを癒すかのように、日本中のカーブミラーを拭く自転車の旅に出た。
 しかし、それを取材するテレビクルーや、旅先で知り合った津川雅彦がテレビを巻き込んでミラー拭きの同士を募り出し、緒形はとまどう。
 主人公の緒形は、自分の活動が自己の反省と他者への貢献と考えたのだろうが、一方では自分の事故そのものや家族から逃げ出した男だ。
 この映画は、そんな緒形や彼が知り合う無粋な人々を通して、「善意は自分が思っているほど他人のためではなくむしろ自分のためだったりする。」、「他人に対する共感は、思っているほど正しくなく、想いはズレているものである。」ということを訴えたかったのだろう。
 でも、映画として最大の問題点は、緒形拳の役が共感を覚えにくいこと。
 彼の目を通して描かれる人々のいかがわしさは、彼に共感できてこそ自然に感じられるはずだし、だいいち主人公に対してイライラさせられっぱなしなのだから、ドラマとして面白くないのも無理はない。
 ついでに、映画の出来には関係ないけど、この映画の脚立の使い方は間違っているので、何度か脚立が倒れて落ちていたのも「さもありなん」と言われるかも。
ゲルマニウムの夜 ★★ 【監督】大森立嗣 【原作】花村萬月 2005 日 カラー 1:1.85 107分 2007/09/15(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、観念系 2007/09/17
 本能とか欲望などの人間の自然な感情と、それらに制限を加える側である戒律とか道徳などを対比させると、私は後者が前者を抑えもうとしても、それがどこかで歪を引き起こし、後者の重圧を打ち破ろうとするものだと考えている。
 「宗教や道徳が無ければ無法状態になる」と言われればそうかもしれないが、でも人間の自然な感情を抑圧する不自然な状態が人々を不幸にすることの方が目立つ。(例えば、国が情報を制限したりすること。)
 この映画では、キリスト教の戒律が登場人物の前に立ちはだかって板ばさみ状態になったりするのだが、私にすれば「苦悩するための戒律」というものの存在に不自然さを感じる。つまり、「戒律さえなければ、苦悩なんか最初からないじゃん。なんのための苦悩なの?」ということ。
 新井浩文演じる主人公は、そんな戒律の意義に疑問を感じ、打ち破るための数々の挑戦をするのだが、そんな彼の存在を含む映画全体は、まさに戒律の是非の板ばさみにあっている一人の人間のようで、上に述べた理由によりそんな映画自体には共感が持てないようだ。
キクとイサム ★★ 【監督】今井正【脚本】水木洋子 1959 日 モノクロ 1:2.35 2007/09/09(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/09/15
ストーリー 感想
 磐梯山の近くの部落。小学6年の男勝りのキク(高橋恵美子)と4年のイサム(奥の山ジョージ)は黒人のアメリカ人と亡くなった母との間に生まれ、足腰の弱った貧しい農家の祖母のしげ子(北林谷栄)と3人暮らしだった。
 しげ子が町に行商に行くついでに病院に行ったとき、連れて行ったキクを見慣れていない町の人々は、村人たちとは違って好奇の目で見た。
 病院で院長がしげ子に、混血児をアメリカの養父母への養子縁組の斡旋する国の機関のことを持ちかけた。
 やがて村に見知らぬ男が現れキクとイサムの写真を撮って去り、やがてイサムにアメリカに行って養子になる話が舞い込んできた。
 今の貧しい生活よりはアメリカに行った方がいいこと、日本でもアメリカでも差別があることなど、話し合った結果イサムにアメリカへの憧れの気持ちもあったことから、アメリカに出すことになった。
 しかし、出発の汽車に乗ると急に行きたくないと言い出したが、そのまま汽車は走り去っていった。
 キクは働いて小学校にも行かなくなり、ある日子守をしていた赤ん坊をトラックの荷台に置いてそのトラックが走り去って赤ん坊が一時行方不明になるという事件が起こしたにもかかわらず、キクは頑なになって謝ろうとせず、しげ子の手に負えなくなって、近所の人々は尼寺に入れることを勧めた。
 嫁に行く望みも薄いキクは首を吊るが失敗し、農家を継ぐことを勧めたしげ子に従うことにし、意気揚々と野良仕事に出るのだった。
 この映画で一番魅力を発揮しているのが、イサム役の奥の山ジョージと共に主役に抜擢され(2人とも出演はこれ1本のみ)たキク役の高橋恵美子で、東北訛りの台詞や芝居の名台詞も言ったりするなど、要求レベルの高い面白いキャラを見事にこなしていて、素人の子供に対して何ヶ月も訓練するなど苦労をしたらしい。
 映画の内容は混血児に対する差別を描くことが大きなテーマではあるものの、それは同級生のイタズラだったり養子縁組斡旋の役人が子供思いに見えなかったり程度に抑え目で、メインはあくまでキクとイサムを中心に描くドラマになっている。
 でも、それでももっとキクちゃんのことをいとおしく思える映画になっていたらなぁ、という不満が残る。
 そんなのびのびした感じがいまいちで、なんか窮屈な印象を受けるのは、これでも大人のシーンが多く子供の目線重視が不足しているからだろうか?
 今井正監督は、この映画を含め、キネ旬ベストワン作品歴代最多を誇るのだが、個人的に他の巨匠たちと比べて特長が感じられず、そのせいか世間的にも話題になることが少ない。
 『キクとイサム』は日本映画の名作ということになっているが、同じ田舎の子供が主人公の映画なら、正直『天然コケッコー』の方が見ていて実感が持てる演出だと思う。これって時代の違いなのだろうか?
尻啖え孫市 ★☆ 【監督】三隅研次【脚本】菊島隆三【原作】司馬遼太郎【製作】永田雅一【撮影】宮川一夫【音楽】佐藤勝 1969 日(大映) カラー 1:2.35、105分 2007/09/06(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/09/15
ストーリー 感想
 織田信長(勝新太郎)の城下の岐阜に、目立つ行動をする男が現れたが、それはどの大名にも就こうとしない有能な鉄砲隊、紀州雑賀衆の頭目・雑賀孫市(さいかまごいち、中村錦之助)だった。
 信長は木下藤吉郎(中村賀津雄)に、彼が来た目的を探るのと、雑賀衆を味方につけることを依頼した。
 その結果、孫市は京都で信長の妹の足の美しさに一目惚れし、彼を妻にするために来たのだった。
 藤吉郎は姫に京都で会わせると言って孫市を引きとめ、孫市も鉄砲の腕前を見せるものの、信長に就くのは姫に会ってからだとじらし続けたが、2人の仲は良くなっていった。
 京都で孫市は姫と会うが、偽者だと気づいて信長には就かないと藤吉郎に言い残して紀州に帰った。
 紀州では、領民たちが大阪名山本願寺の僧・法専坊信照(本郷功次郎)率いる一揆に加わることになり、孫市は大将になって攻めてくる信長と戦うことを請われたが、門徒宗に入信するのを嫌って断り、境に鉄砲の買い付けに行った。
 そこで法専坊の妹の小みち(栗原小巻)に会い、実は彼女が京都で見初めた女だと判り、一揆の大将になって戦に勝ったら妻になるとの申し出を孫市は受け入れた。
 戦が始まり、孫市は夜に信長を狙撃したが影武者だったので失敗し、逃げるときに羽柴秀吉と再会して、お互いの健闘を言って別れた。
 そのころ、戦場に出ていた小みちが流れ弾に当たって死に、孫市はその後8年間、信長が死ぬまで戦い続けた。
 孫市と藤吉郎の関係はコミカルだし、合戦シーンもお金がかかっているし、面白くなりそうな要素が多いにもかかわらず、どうにも一向に盛り上がらない。
 ストーリー的にも、これから面白くなりそうだと思ったところで、字幕で後日談を説明して唐突に終わったのには面食らった。
 まるで二部構成の前半部分だけみたいな映画で、続編は存在しないのだが、急遽製作中止で前半のみ公開にでもなったのだろうか?
俺に賭けた奴ら ★★ 【監督】鈴木清順 1962 日(日活) カラー 1:2.35、分 2007/09/02(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/09/02
ストーリー 感想
 集団就職で上京して佐野浅夫の電器屋に勤める和田浩治は、ボクシングの試合を見たことがきっかけで、葉山良二のジムに入ってチャンピオンを目指した。
 マンションに住むナイトクラブの歌手の南田洋子のところに和田がテレビの修理に行ったことで彼女と知り合い、彼女は彼をサポートしてチャンピオンにすることを、今の自堕落な生活から抜け出すための希望の糧にした。
 葉山の妻の白木マリが、トレーナーの高品格と浮気をしているところを和田に目撃され、口封じのために和田に口説かれたと葉山に言い、それ以来和田と葉山の仲が悪くなり、さらに和田が試合前に足をくじき試合中に逃げ出そうとしたことで、和田は葉山にクビにされ八百長疑惑で出場停止になった。
 酒場で和田がバーテン(青木富夫)に八百長呼ばわりされて殴り、それを目撃した八百長を手がける安川興行の手下たちは、通報しない代わりに自分たちのところに所属させようとしたが、手下の一人でボクサーくずれの川地民夫が、自分のようになって欲しくないと思って独断で彼を逃がした。
 高品が葉山に浮気のことを告白したことで葉山の誤解が解け、和田も電器屋の娘の清水まゆみに説得されて葉山のところに戻ることにし、世間の風当たりが強い中、和田は勝ち進んでチャンピオンと対戦することになった。
 試合の前日、安川が葉山を呼びつけ、8ラウンドにわざと負けなかったら殴られたバーテンが知的障害者になってしまったことをバラし、試合後に和田や葉山を射殺すると言って脅した。
 和田に告白された葉山は脅しに屈せず勝ちを目指せと言ってリング上に送り出し、8ラウンドあわやというところで八百長を知った川地がバーテンが正常だとのメモを葉山に送り、和田を殺しに行こうとする手下たちと相撃ちになった。
 安川が和田に向かって発砲したことで、葉山の通報で待機していた警官たちが八百長組織を一網打尽にし、観客も和田を応援して和田は試合に勝ち、客席に来ていた清水の和田に対する想いの強さを見た南田は黙って会場を後にした。
 1962年頃の清順作品は、「らしさ」と言えるのはまだ、南田洋子のマンションやクラブの壁面が真っ赤だったりとか、ボクシングの試合会場の控え室がやたら横方向に長く、そこで10人ぐらいの人を動かして横移動で撮影するといった程度。
 それ以外は、ボクシングものにありがちな、精神的にくじけそうになることに対抗しようとする話で、普通に良く出来た映画になっている。
みんなわが子 ★☆ 【監督】家城巳代治【原作】「学童疎開の記録」 1963 日 モノクロ 1:2.35、93分 2007/08/30(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/08/31
ストーリー 感想
 1945年、東京から学童疎開に来ていた国民学校の児童たちは、空襲、空腹、病気、ホームシックなどに苦しんでいた。
 宿舎の旅館で特攻に出る兵士の出陣祝いがあった夜、その兵士と恋人が心中したので、遺体を引き取りにきた隊の兵たちは彼を非国民呼ばわりした。
 児童たちは、空襲を逃れてさらに山奥へと疎開し、生活はますます苦しくなった。
 終戦を迎え、先生たちは神妙な気持ちになったが、生徒たちは家に帰れるとみこしを持ち出して大はしゃぎだった。
 疎開の大変さを描いた映画だけど、こういう映画って「反戦」の役割を果たしているのだろうか?
 「ひもじい思いをするはめから、戦争反対」と言うのなら、「負けてたから物不足になったのであって、勝てる戦争ならしても良い」ということになるんじゃないの?
 戦争へと向かわせるものは何か?ということを明らかにすることこそ反戦だと思うのだが。
レッツゴー!若大将 ★☆ 【監督】岩内克己 1967 日(東宝) カラー 1:2.35、90分 2007/08/23(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、感覚系 2007/08/24
 シリーズ9作目。ストーリーはいつもと同じ。今回、若大将と青大将はサッカー部所属。香港ロケがあり。
 今回は極めて低調な出来で、その理由は、
(1)まず、なんといっても引っかき回し役の青大将の引っかき回し具合が、量的にはともかく質的に工夫が足りなくて今いち。
(2)第2の引っかき回し役の澄ちゃんも、ヤキモチの焼き方が単調。
(3)サッカーという競技の性格上、若大将をアップにすると足元が移らないので本当に上手いかどうかがわからず、かといって引きの映像にすると、若大将の顔が小さすぎて若大将がプレイしている印象が薄い。
(4)若大将の歌のシーンが多く、オープニングではドラムソロを見せていたり、また香港の観光映画としてのシーンも多いことから、音楽と観光地に頼りすぎて、その反面、本筋への力の入れ方が弱い印象を受けた。
俺たちの血が許さない ★★ 【監督】鈴木清順【原作】松浦健郎【美術】木村威夫 1964 日(日活) カラー 1:2.35、97分 2007/08/22(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/08/24
ストーリー 感想
 高橋英樹は仕事での失敗が常習ののんきなサラリーマンで、同僚のミエ(長谷百合)と仲が良かった。
 彼の父はヤクザの組長で、飛田丑五郎(井上昭文)というヤクザが18年前に父を刺し殺して組を潰したことを詫びるために家に現れ、敵をとろうとする高橋を、クラブの支配人をしている兄の小林旭が静止した。
 高橋が社員旅行で熱海に行ったとき、ぼったくりバーの男たちを、偶然居合わせた丑五郎と共に高橋が殴り倒したことで、ヤクザの息子が暴力沙汰を起こしたとの新聞記事が載り、会社をクビになってしまった。
 旭は父がヤクザだったせいで公務員試験が不合格だったことに失望し、ヤクザになることを決意し、それを聞かされた高橋は兄に反発した。
 旭は秘書の松原智恵子と愛し合っていたが、彼女は旭に、自分は旭のボスの小澤栄太郎が派遣したスパイだと告白し、裏切られた小澤は部下に彼女をひき殺させた。
 旭は小澤を裏切ることを決意したが、それを察知した小澤は高橋を連れて来て、兄を殺されたくなかったら、信州の松原の実家にいる旭のところに一緒に行って、兄を連れて来いと脅した。
 単身旭のところに乗り込んだ高橋に、旭は小澤の麻薬組織の全貌を書いたメモを警察に届けるように言って渡し、高橋を守るために家を飛び出して行き、包囲していた小澤の手下たちに撃たれた。
 高橋は兄を救おうと後を追ったが、見つけることが出来ずに原野をさまよった。
 一方、信頼していた旭がヤクザだったことを知った母(細川ちか子)は、高橋とミエの結婚には反対だったが、好きな人同士が一緒になった方がいいのかもとミエに言った。
 鈴木清順らしさが出始めてきたのが1963年頃の作品からなので、それからまだ間もないこの作品では、異次元空間的な画作りや原色を使った背景などが見られるもののほんの3ヶ所ぐらいしかない。
 それ以外には、高橋英樹のコミカルな演技なども見られるものの、見どころと言えるものがこれといって無いのが残念。
新のんき大将
(公開時タイトル:
のんき大将 脱線の巻)

(原題:Jour de Fete)
★★☆ 【監督&脚本&主演】ジャック・タチ【脚本】アンリ・マルケ、ルネ・ウェレル 1949製作/1994カラライゼーション、仏、カラー、1:1.33、80分 2007/08/19(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) 感覚系 2007/08/20
ストーリー 感想
 郵便配達員のフランソワ(ジャック・タチ)は、郵便配達の傍ら村の祭りの準備も手伝ったりの、のんきな配達業務をしていた。
 アメリカでのスピーディーな郵便配達のニュース映画が村で上映され、それを見たフランソワも自転車から降りずに郵便物を配るなどの方法でアメリカ式を目指すが、乱雑なうえに勢い余って自転車に乗ったまま川に突っ込んでしまい、うまくいかなかった。
 まず数々のバージョンについて。
 IMDbによると、1949年に製作された当時はトムソン・カラーとという方式と予備のモノクロフィルムの2台のカメラで同時に撮影されたが、カラーが実用段階には至らず現像できなかったために、モノクロで撮影されたものを編集して公開された。(邦題は『のんき大将 脱線の巻』)
 その後1961年にカラー版が公開。(おそらく、手作業による着色)
 さらに1994年に、ジャック・タチの娘らの手によって、発見されたカラーフィルムを復元し、不足分はコンピューターによるカラライゼーションでモノクロ映像に着色したカラー版が公開された。(邦題『新のんき大将』)
 映画の出来については、『ぼくの伯父さんの休暇』(1952)の感想でも述べたとおり、ギャグがメリハリなく続くので苦手なのだが、この作品では途中自転車で失踪するシーンのギャグがスラップスティックっぽいので、幾分楽しめる。
ガラスの中の少女 ★☆ 【監督】若杉光夫【原作】有馬頼義 1960 日(日活) モノクロ 1:2.35、64分 2007/08/18(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/08/29掲載
2007/09/11更新
ストーリー 感想
 小さな工場で働く浜田光昿(浜田光夫)が、高校生の吉永小百合と駅ですれ違い、中学時代に友達同士の罰ゲームで吉永にラブレターを書かされたことを謝ったが、それ以来2人はつき合うようになった。
 吉永の父(信欣三)は、吉永を貞淑な女性にすべく熱心に躾け、悪い虫のような男との交際には反対で純潔を守るべきだと言ったが、吉永は実は父が母(轟夕起子)の再婚相手で実の父ではないことに感づいていた。
 また、浜田も仕事をしない父がいる貧しい家庭があり、工場でも新米で仕事が思うようにいかず、吉永にかまってばかりもいられなかった。
 父が北海道の大学で教授になることになり、酔って帰って家族に報告し、喜びのあまり吉永を抱きしめた時、吉永は思わず父を避けて部屋を出た。
 引越しが迫ったころ、吉永は浜田に会いに行って湖まで遠出をし、ボート遊の上で将来に希望を持てないと話し合い、用意した薬を飲んで入水心中してしまう。
 父は、自分が吉永を縛りすぎたことを後悔しながら湖へと向かった。
 箱入り娘ならぬ、純潔を守れと躾けられている『ガラスの中の少女』の話。
 吉永小百合と浜田光夫のおそらく初主演作で、彼らがその後も何度も演じることになる、身分の違いや貧しさが恋愛の障害になるストーリーだが、この作品はつくりが淡白で、映画としての面白味には欠ける。
野性の証明 ★☆ 【監督】佐藤純彌【製作】角川春樹、坂上順、サイモン・ツェー、松田文夫【原作】森村誠一 1978 日(東映) カラー 1:1.85 143分 2007/08/17(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/09/17
 高倉健は、自衛隊内に秘密裏に作られた国内の反政府勢力を制圧するための特殊部隊に所属していたが、訓練中に部落全員が殺された現場に遭遇し、唯一生き残った薬師丸ひろ子を引き取って退役した。しかし、彼らが住む地方の有力者の暗躍と、部隊の秘密が漏れることを恐れた特殊部隊に狙われることになる…。

 国民を守るはずの自衛隊が逆に脅威となりうることと、民主主義社会においても一支配者がマスコミや警察をも牛耳ることがありうるという、権力の恐怖を描いたシリアスな物語なのだろうが、薬師丸ひろ子が予知能力を発揮して危機を回避したり、後半出てくる特殊部隊が、巨大な落とし穴(いつの間にどうやって密かに掘ったの?)などを使って自衛隊員たちをバンバン殺していくといった、目立ってはいけない特殊部隊にあるまじき派手な活動など、荒唐無稽過ぎる展開でシリアスなテーマは全部ぶち壊し。
 こんなことなら、ストーリーに余計な深みなど持たせずに、後半の健さんが特殊部隊の隊員を1人ずつ殺していくことを見せるスリラーの要素に比重を置くとか、我慢に我慢を重ねた健さんの怒りがクライマックスに爆発するといった健さんの東映任侠モノのおなじみの展開をそっくり拝借してエモーショナルにするとか、単純な活劇映画にした方がよっぽど良かったと思う。
 以前は「薬師丸博子」名義だったのが、13歳頃に「ひろ子」に改名したのとほぼ同時に映画初出演した作品で、とりあえず可愛い。
人間の証明 ★☆ 【監督】佐藤純彌【製作】角川春樹【脚本】松山善三【原作】森村誠一 1977 日(東映) カラー 1:1.85 133分 2007/08/17(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/09/17
 つまんなかった印象の映画だが、見直すと案の定、本当につまんない。
 ストーリーは一応犯人探しの形なのだが、トリッキーではないので謎解きの面白さは無く、物語の中心となるのは終戦直後に占領軍に人生を変えさせられた岡田茉莉子と松田優作が、およそ30年後にそのときの出来事やアメリカ人たちと改めて向き合うことになるということなのだが、これがドラマとしてちっともふくらまない。
 彼らの心情もちっとも実感できず、その代わりにあるのが「母さん、僕のあの麦藁帽子、どうしたんでしょうね?」という詩を用いて、失った大切なものを麦藁帽子に託して語るといった、なんとも回りくどくて嘘臭い表現方法なのだから、これじゃ盛り上がるわけが無い。
愛と死の記録 ★★ 【監督】蔵原惟繕 1966 日(日活) モノクロ 1:2.35、92分 2007/08/16(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/08/16
ストーリー 感想
 広島の印刷工場に勤める渡哲也はレコード店に勤める吉永小百合と知り合って将来を誓い合う仲になったが、それを聞いた渡の父親代わりの佐野浅夫の表情が曇った。
 渡は被爆者で後遺症で入院歴があり、いつ再発するかわからなかったのだった。
 小百合はそれを知った後も自分を避ける渡と別れず、父親の反対を押し切って入院した渡の看病を続けた。
 しかし、渡の病状は悪化してついに亡くなり、小百合は悲しみから抜け出せたと思われたころ、突然自殺してしまった。
 ロングや逆光などで緊張感ある画面作りがなされているが、ストーリーは純愛モノ。
 とはいえ、被爆した本人だけでなく、第三者を含めて影響を及ぼし続けるという、原爆の意外な恐ろしさが感じられる。
戦国自衛隊 ★☆ 【監督】斎藤光正【製作】角川春樹【原作】半村良 1979 日(東宝) カラー 1:1.85、125分 2007/08/16(木) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、感覚系 2007/08/16
 「登場人物の誰がどうなろうと知ったこっちゃない」という感想しか持てない映画。
 「主役」は何も登場人物でなくても、「戦闘」だとか何にでも設定できそうだが、「これを『主役』として描こう」という作り手の思い入れが何も感じられない。どんな映画を目指したのか?
 思い入れが無いなら無いで、つまらない映画を面白く見せるための常套手段だとして、感情移入の対象を設定するものだろうが、それすらも無い。
南の島に雪が降る ★★ 【監督】久松静児【原作】加東大介 1961 日(東宝) カラー 1:2.35、102分 2007/08/16(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/08/16
ストーリー 感想
 太平洋戦争末期。ニューギニアのジャングルで孤立状態にあった日本軍は、食糧不足、伝染病、敵の空襲などで疲弊してた。
 加藤衛生軍曹(加東大介)らの発案で、兵士たちを鼓舞する目的で芝居を見せることが隊長に認められ、兵士の中から芸人たちを集めて「父帰る」が上演された。
 これが好評で常設の劇場が建設され、「瞼の母」の上演での雪景色や紙吹雪を見て、兵士たちは雪深い故郷のことを思うのだった。
 加東大介の体験記が原作で、映画としてはきわめて単調だが、食うものにも困るような極限状態でも、日本兵の故郷に対する思いの強さと、芸能の持つ力の強さを訴えている。
あゝひめゆりの塔 ★☆ 【監督】舛田利雄 1968 日(日活) モノクロ 1:2.35、125分 2007/08/15(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/08/15
 沖縄のひめゆり部隊の映画で、1968年のゴーゴーバーの若者のシーンから戦時中の沖縄に移るという始まり方。
 戦闘シーンは、かなりの爆薬を使っていたり、戦闘機からの機銃掃射が頻繁に写されていてお金がかかっていそうだが、なぜかアメリカ人の歩兵は1人も姿を現さない描き方で、それがあるだけで緊迫感がかなり上がったと思うのに。
 主人公の吉永小百合は、野戦病院での看護の仕事に昼夜を問わず携わっているはずなのに常に元気ハツラツ、「日本はもうダメだ」などと弱音を吐く者がいれば「そんなこと言うな」と恫喝、さらには洞窟に投じられたガス弾で仲間はみんな死んだのに小百合(と妹分がもう1人)だけは何故かこれといった症状もなしに目を覚まし、最期は「米兵に捕まったら犯される」という言葉を信じて妹分と手榴弾で自殺する、という、100%ピュアでクリーンなヒロインのイメージで描かれている。
 でも、本当はこんな小百合のようなキャラは「基本的に間違っている、愚かで罪深くて哀れな人」であることを、ほんのちょっとでも匂わすべきなのではないだろうか。
 現に、浜で撃ち殺された小百合の学校の校長と一緒だった浜田光夫が、遺体を置き去りにしたことを小百合が非難し、自分たちが連れて来ると言って危険な浜に行った小百合たちだったが、同行して結局浜に飛び出した浜田が撃ち殺される。
 小百合は死者を大切にするという一見人道的な考えのせいで1人の命を失わさせたことになり、しかしながらそれに対して後悔するシーンが何もない。
 これでは戦争の悲劇的な出来事を実録的に描いているだけで、問題は何でどこに向けてそれを訴えるかが示されてないと、深みのある反戦映画とは言えないのではないか。
いつでも夢を ★★ 【監督】野村孝 1963 日(日活) カラー 1:2.35、89分 2007/08/14(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/08/14
ストーリー 感想
 吉永小百合は孤児だったころ拾われた下町の病院で看護婦として働いていて、近所の工員たちの人気者だった。
 浜田光夫はそんな工員の1人で、定時制高校で小百合と同級生、橋幸夫は2人と知り合ったトラックの運転手で、2人は小百合を巡って正々堂々争うことを誓い合った。
 定時制の同級生の松原智恵子が、勤め先の紡績工場の残業が多く体を壊して入院するなど、生徒たちの状況は厳しかったが向上心にあふれていた。
 浜田は念願の大手商事会社の求人に応募し試験を受けたが、定時制は社会人としての変なクセがついているとの理由で不採用になり、気落ちして工場も学校も休んでしまう。
 小百合と橋が彼に戻ってくるように説得していたところに、家族を捨てて出て行ったことで憎んでいた父が交通事故に逢ったとの知らせが入り、父の反省の言葉を聞いて苦しんでいるのは自分だけではないと思った浜田は、父を許し工場に戻ることにした。
 特筆すべきところはないが、出演者たちの希望を信じる姿に観ている方も前向きな気分になれるし、吉永小百合や松原智恵子はすご〜く可憐に撮られているという明朗映画。
不滅の熱球 ★☆ 【監督】鈴木英夫【脚本】菊島隆三 1955 日(東宝) モノクロ 1:1.33、108分 2007/08/14(火) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、実録系 2007/08/14
ストーリー 感想
 昭和11年、第1回プロ野球公式戦巨人阪神戦が行われ、沢村栄治(池部良)はノーヒットノーランを達成した。
 彼は優子(司葉子)という女性と恋に落ちたが、優子の父は野球選手との交際は反対していた。
 昭和12年、沢村は召集され、中国での戦闘で右腕を負傷したの記事を目にした優子は、父の反対を押し切って、彼女の味方になった大連の叔父を頼って沢村を追って中国に渡った。
 昭和14年、沢村は除隊して巨人軍に戻り、腕は完治したものの成績は不振で引退を決意したところに、父に認められたことで優子が沢村のところに現れて彼を鼓舞し、結婚して子供が出来たと知った沢村はついに復調した。
 しかし、昭和16年、再び沢村は召集され、昭和19年フィリピンで戦死し、優子は赤子を抱えて夫の死を悼んだ。
 サスペンス映画の演出には定評のある鈴木英夫も、スポーツや家庭が題材の伝記モノでは、普通の映画っぽくなってあまり見るべきところはなかった。
父と娘の歌 ★★ 【監督】斎藤武市 1965 日(日活) モノクロ 1:2.35、92分 2007/08/12(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/08/12
ストーリー 感想
 高校生で音大のピアノ科を目指す吉永小百合は、クラリネット奏者の父宇野重吉と貧しい2人家族で、小百合はバイトをしながら念願の外国帰りのピアニスト神山繁の厳しい指導を受けることになった。
 宇野が心臓を患ってクラリネットを吹くのは無理だと医者に言われ、小百合にだまって工場で働くようになったが、それを知った小百合は、ジャズバンドで父と一緒だった山内賢を通して貯めたお金をひそかに父の新薬のためにまわし、練習もままならないので大学進学を考え直すも、亡き母の夢でもあったピアニストになる思いは捨てられず、バイトと練習に励んで音大に合格した。
 入学後もピアノ演奏のバイトと練習に人一倍熱心だったが、ピアノのふたに指をはさまれてピアノを弾けない日々が続いて、精神的に経済的にも追い詰められた。
 小百合は、ジャズバントに復帰した父を再びオーケストラのメンバーにするために働きかけ、父と小百合を助け続けた高校の先輩のバイオリニストの浜田光夫もオーディションに合格して、指が治った小百合が演奏をするコンサートで同じ舞台を踏んだ。
 ストーリーは、父と娘がお互いに助け合うという、ありがちな家族愛モノ。
 吉永小百合がピアノを演奏するシーンをはじめ、随所にシャープな映像が見られる。
ぼくの伯父さんの休暇 (原題:Les Vacances de Monsieur Hulot) ★★ 【監督&脚本&主演】ジャック・タチ【脚本】アンリ・マルケ 1952 仏 モノクロ 1:1.33 87分 2007/08/04(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) 感覚系 2007/08/20
 ジャック・タチ演じるユロ伯父さんをはじめ、海辺の町にバカンスにやって来た人々がさまざまな騒動を起こし、やがてシーズンの終わりと共に帰って行くまでを描いた映画。
 ジャック・タチの作品は、大笑いではなくクスリとするタイプのギャグを、ツッコミとかズッコケなどのフォロー無しに、メリハリのない形でフラットな調子で連発するという作りなので、頭では面白いとは感じられても、体はついていかないという苦手なタイプの映画。
樹の海 ★☆ 【監督】瀧本智行 2004 日 カラー 1:1.85 120分 2007/08/04(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/08/04
 富士山の樹海で半殺しで捨てられる者、自殺しようとする者、彼らと関わった者など、4つのエピソードでさまざまな人々を描こうということだが、そのドラマ自体がただただ重苦しいだけで訴える力が弱く、一向に何も惹かれない状態で時間が過ぎていく辛い思いをすることになる。
錆びたナイフ ★★☆ 【監督&脚本】舛田利雄【原作&脚本】石原慎太郎【製作】水の江滝子 1958 日(日活) モノクロ 1:2.35 90分 2007/08/02(木) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 2007/08/03
ストーリー 感想
  宇高(うだか)市の暴力団組長の杉浦直樹が逮捕されたが、報復を恐れて目撃者が現れず、すぐに釈放された。
 この新聞記事を東京で読んだ宍戸錠は、かつて北原三枝の父が自殺したのは杉浦が殺したのだと証言するという手紙を警察に送って杉浦を脅迫しようとしたが、彼が宇高に着いてまもなく口封じで殺されてしまった。
 石原裕次郎とその弟分の小林旭が宍戸と共に目撃していたのだが、石原は恋人をレイプした男を殺して刑務所に入り、出所後堅気になって小林と共にバーを経営していた。
 宍戸を殺された警察と北原は石原と小林に証言を迫ったが2人は断った。
 杉浦は小林に口止め料を渡し、それを石原に責められて、小林は恋人の白木マリと町を出ようとしたが、杉浦たちに捕まって口封じをさせられそうになった。
 そこに石原が現れて、小林を解放して検事のところに証言に行かせ、石原は杉浦を脅すと、杉浦は石原の恋人の件も北原の父の件も、すべて黒幕からの依頼でやっただけだと言った。
 石原が杉浦を引き連れて検事のところに来ると、小林が狙撃されて死に、杉浦も面会に来た黒幕の手下に警察内で殺された。
 黒幕探しに乗り出した石原は、刑事の一人が唇の動きで秘密をもらしていたことに気づいて、その刑事を締め上げて黒幕からの指令を無線で受けるところに居合わせると、そこにいた北原は声の主が自分の恋人の父で、町の有力者の間野だと感づいた。
 刑事と間野が待ち合わせて刑事が殺され、石原が間野を殺そうとしたところに北原が現れて思いとどまらせ、逃げ出した間野は自分の車にひかれ、一人去っていく石原の後を北原が追った。
 犯人探しモノとしてもラストまでうまく引っ張っているし、格闘シーンなども迫力をキッチリと出せているなど、さすがの舛田監督演出。
青いうた〜のど自慢 青春編〜 ★☆ 2006 日 カラー 1:1.85 115分 2007/07/21(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/08/02
 むつ市で高校を卒業しても仕事がうまくいかず、東京で一山当てようと上京してきたが犯罪に手を染めるようになった少年と、その少年が「木綿のハンカチーフ」のように故郷に捨ててきた恋人の物語。
 ありがちな話で共感もできるはずなのに、登場人物のキャラが身勝手で身の程知らずで同情できない結果になってしまった。
 基本的に映画のお客さんは身勝手(自分のことを棚に上げて、ダメな登場人物は否定して共感しようとしない)なので、きれいごとで騙してでも映画に引き込もうとする方がいいのでは?
マスター・オブ・サンダー 決戦!!!封魔龍虎伝 2006 日 カラー 1:1.85 92分 2007/07/21(土) HDDレコーダー(WOWOW) 感覚系 2007/08/02
 若手の出演者やスタッフに活動の場を与えるために作ったのか?製作意図がよくわからない。
 それよりも、映画の出来はというと、倉田保明がコミカルな芝居をしたり、千葉真一との一騎打ちをたっぷり見せるなどのサービス精神はあるのだが、基本的に面白い映画になってない。
 まあ、たわいもない映画の部類だから怒ることもないけどね。
メル・ブルックス 逆転人生 (原題:Life Stinks) ★★ 【監督&脚本&製作】:メル・ブルックス【脚本】ルディ・デ・ルカ、スティーヴ・ハーバーマン、ロン・クラーク 1991 米 カラー 1:1.85、92分 2007/07/21(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/08/13
ストーリー 感想
 金儲けに熱心で、そのためなら他人の迷惑も気に留めない世界一の大富豪のメル・ブルックスは、ロサンゼルスのダウンタウンのスラム街を買収して再開発することを計画していた。
 その土地の一部を持っていたライバルも同様の計画を考えていて、無一文のメルが30日間自力でスラム街で暮らし続けられるか?の結果次第で、お互いの土地を相手に譲る賭けをした。
 スラムでの生活は弱肉強食そのものだったが、レスリー・アン・ウォーレンをはじめメルに救いの手を差し伸べる人たちもいて彼らと親しくなった。
 残り2日になり、ライバルはメルの側近の弁護士たちにメルを裏切ることを持ちかけ、期日の日にメルが自宅に帰ると、メルの財産はすべて無くなったことを告げた。
 メルはホームレスたちに居場所を奪おうとする者と戦うことを訴えてライバルの再開発の起工式に押しかけ、メルとライバルがショベルカーでの対決のすえ、ライバルを宙吊りにして賭けが有効であることを白状させ、土地はメルのものになり、彼はダウンタウンをホームレスたちのための街にすることにし、レスリーと結婚式を挙げた。
 メル・ブルックスらしい人情コメディで、随所に下ネタも含めたギャグがちりばめられている。(とはいっても、そんなに面白くはない。)
46億年の恋 ★☆ 【監督】三池崇史【脚本】NAKA雅MURA【原作】正木亜都 2006 日 カラー 1:1.85、85分 2007/07/16(月=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、象徴系 2007/08/14
ストーリー 感想
 石橋凌が所長を務める刑務所に、客に襲われて逆にメッタ突きにしたゲイバーの店員の松田龍平と、石橋の妻を暴行して自殺に追いやったりの犯行を重ねて入退所を繰り返す安藤政信が、共に殺人の罪で同じ日に入所してきた。
 おとなしい松田に対し、松田を慕った安藤は囚人たちを何人も殴り倒したが、ある日松田が安藤の首を手で絞め殺し、自分が犯人だと言った。
 しかし、安藤は紐で絞め殺されていたので松田が犯人だと言う物証はなく、石橋も疑われたが、アリバイもあり、刑務所長の使命として安藤を恨むようなことは考えていないと言った。
 やがて、真犯人の囚人が自殺未遂をして、自分が安藤の首を紐で絞めたが、最後は安藤自身が自分の首を絞めて死んだと自供した。
 安藤は刑務所の隣にある宇宙ロケットを見ては宇宙に行きたいと松田に話していた。
 犯罪者が罪を償うということは、犯罪者が自分の過ちを認め反省することとも言えるが、では周りの人間が犯罪者に対してそう思わせるように仕向けることは、果たして意味があることなのか?(なにしろ、結局は当人の自覚次第なので)
 意味がなければ、反省など期待せずに社会から排除すべきなのか?
 そんな「罪の償い」に対することと、松田と安藤の恋愛感情らしいものがメインの映画なのだが、映画の作りがあまりにも作り物っぽ過ぎて、生っぽい主題が感覚的に判り難くなっている気がする。
ひばり チエミ いづみ 三人よれば ★★ 【監督】杉江敏男【脚本】笠原良三、田波靖男 1964 日(東宝) カラー 1:2.35、92分 2007/07/16(月=祝) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 2007/08/12
ストーリー 感想
 ひばり、チエミ、いづみの三人は、高校時代の恩師の清川虹子に呼び出されて久々に再開すると、高校を辞めて結婚紹介所を始めた清川に縁談を勧められ、彼がいるとの嘘で逃げ切ろうとしたが、見立ててやるから連れて来いといわれた。
 留守がちの父の田崎潤に代わって料亭を切り盛りしているひばりには恋人で日本舞踊の師匠の宝田明がいたが、婿入りを望むひばりと拒否する宝田との意見の相違で喧嘩し、テレビディレクターのチエミは同僚のカメラマンの夏木陽介を、美容院を経営しているいづみはしつこく言い寄ってくる客の俳優岡田真澄を恋人に仕立てて清川の家に連れて行った。
 清川は、チエミといづみに変な態度の彼氏たちにダメをだし、一人で来たひばりにその場にいた高島忠夫を紹介したが、ひばりはやはり宝田のことが好きだった。
 チエミと夏木が入った小料理屋に、女将と恋仲らしい田崎が手伝っているのを見つけ、チエミはその店でひばりと待ち合わせし、宝田と出くわしたいづみも宝田とひばりを会わせるためにそこで合流することになり、結局ひばりは父の恋を認め、肩の荷が下りたひばりは嫁に行くことを決意した。
 チエミといづみは夏木と岡田のプロポーズに折れて結婚を決め、弟子の女性にいちゃつかれているの見て考え直したひばりも、宝田の求婚に応じるのだった。
 三人娘の出演作シリーズ4作目で、内容はこれまでと同様、歌と踊りのシーンをからめたラブロマンス。
 ミュージカルシーンは相変わらず良く出来ていて、3人がチャップリンののような浮浪者の格好をしながらコミカルな振り付けで歌い踊るという意欲的なシーンもある。
 ラブロマンスの方の展開が、単調で安直な感じなのが難点。
大当り三色娘 ★★ 【監督】杉江敏男【脚本】井手俊郎【原作】中野実「三色娘」 1957 日(東宝) カラー 1:2.35、94分 2007/07/15(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 2007/08/12
ストーリー 感想
 家政婦の江利チエミが、スリが自分の買い物かごに隠した財布を渡さなかったことで、持ち主の宝田明と知り合って一目ぼれし、彼の引越しにつき合うことになり、その引越し先で住み込みで日本舞踊の師匠をしている美空ひばりとも知り合う。
 ひばりの家主の息子の江原達怡が、ひばりの友人で、歌手の草笛光子の家政婦をしている雪村いづみのことが好きで、ひばりは頼まれていづみを家に呼ぶが、江原が蜂にさされて病院に行き、宝田を江原だと勘違いして気に入ったいづみに、ひばりは宝田を江原として紹介した。
 草笛が夫婦喧嘩で家を出て、彼女の友人でチエミが働く家に泊めてもらうことになり、草笛の使いでチエミがいづみに会いに行って2人は知り合う。
 チエミにいづみを紹介すると言われて困った宝田は、ボートでひばりにどうすべきか相談するが、そこにチエミといづみのボートが現れて、宝田はひばりのひざにうずくまって顔を隠し、2人はひばりの熱愛シーンに驚いた。
 チエミに母の友人の缶詰屋の浪花千栄子の息子の山田真二とのお見合い話が持ちかかるが、2人とも結婚する気が無かった。
 山田は友人の宝田の下宿先をたずね、チエミといづみにボートで一緒だった恋人を紹介してほしいと言われてこまったひばりから、初対面にもかかわらず恋人役を買って出てほしいとお願いされて2人に紹介された。
 チエミが缶詰屋に客として行って強引に値切って母親に嫌われて破談にしようとするが、逆にしっかりしていると気に入られてしまい、チエミは山田から自分はひばりの恋人ではなくて宝田はひばりのことが好きだと聞かされた。
 江原が車でいづみを轢きそうになり、避けて衝突して入院し、いづみがお見舞いに行くうちに2人は相思相愛になり、チエミも山田とつき合うようになった。
 宝田はひばりにその気がないと思って彼女とのことはあきらめて引っ越してしまい、宝田のことが好きだったと気づいたひばりは失意のまま日本舞踊の発表会の舞台に立つと、その会場に宝田が現れて、3組のカップルは湖で水上スキーに興じるのだった。
 妄想として描かれる三人娘のミュージカルシーンも本格的な出来だし、ストーリーも恋の組み合わせがクルクル変わるメリハリのある展開だったりで、普通に楽しめる。
 三人のイメージカラーが、シリーズ前作『ジャンケン娘』(1955)と『ロマンス娘』(1956)では、ひばり=黄、チエミ=赤、いづみ=青、だったのが、今回からはなぜか、ひばり=青、チエミ=黄、いづみ=赤、に変わっている。
 とはいっても、色の使い分けが徹底していたのは『ジャンケン娘』だけで、それ以降はそれほどでもない。
 ラストの水上スキーは、三人が実際にやっているわけではもちろんなく、アップは陸上で撮影。
 江利チエミだけ浮き輪をつけた状態で水上スキーをやっているのは、彼女はこんな受け狙いを平気でやってしまうからだろうか?
ロマンス娘 ★☆ 【監督】杉江敏男【脚本&原作】井手俊郎【脚本】長谷川公之 1956 日(東宝) カラー 1:1.33、98分 2007/07/15(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 2007/08/12
ストーリー 感想
 女子高生の美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの3人は、男子2人と夏休みに自転車旅行に行くことにし、そのためにテニス部のコーチの大学生の宝田明の紹介で、彼の叔父が会長を務めるデパートで店員のバイトをすることになった。
 つり銭を受け取り忘れた客の家に3人が行って届けたことが新聞記事になり、会長は3人を自宅に招待した。
 会長は、家出した娘が産み残した孫を懸賞金をつけて探していて、森繁久彌が見つけたと言って会長宅に現れ、後日女の子を連れて来たが、その子は黙ってばかりで会長になつこうとしなかった。
 三人娘と宝田が女の子のご機嫌をとろうとし、遊園地に連れて行ってやっと笑顔を見ることが出来た。
 しかし、実はその女の子は偽者ではないかと宝田が疑い出し、森繁が持っていた前の奥さんの写真を見たひばりが、それはいづみの母親であることに気づいた。
 懸賞金を受け取って会長宅を発った森繁を、ひばりはいづみの母親の花屋に連れて行き、森繁は女の子は亡くなった友人の身寄りの無い子供だと告白し、懸賞金をひばりに渡して、いづみに正体を明かさずそのまま去っていった。
 会長は女の子を自分の孫として引き取ることにし、三人娘たちに宝田を加えた6人は自転車旅行をするのだった。
 『ジャンケン娘』(1955)に続くシリーズ2作目。
 三人娘のミュージカルのステージを、3人が観客として観るシーンがあったりで、随所に3人の歌と踊りを絡めて展開する。
 途中、話が湿っぽくなり、全体的に明るさや軽快さが足りないのが難点。
Jam Films S ★〜★★☆ 【プロデューサー】河井信哉 2004 日 カラー 1:1.85 118分 公式サイト 2007/07/14(土) HDDレコーダー(WOWOW) 2007/08/02
 7人の新人監督によるオムニバスだが、全体的な感想を言うと、何かを語ろうとしていることは感じられてもその語りのボリューム感が不足していて、その代わりにストーリーをヒネったりネタっぽいものをちりばめたり画面をチャカチャカした感じにしたりの小細工には熱心で、そうした手法偏重が作品に対する手ごたえを益々弱くしているという勘違い作品ばかりだった。
 映画を上手に作ろうとするより、気迫を込める方が重要なんじゃないの?
 さらに、本編がおざなりな作品に限ってタイトルのデザインに凝っていたりするのが、余計に恥ずかしい。
 結局、唯一及第点に達したのは、語り、手法の的確さ、15分間の尺のバランスがとれていた「すべり台」のみ。 
Tuesday 【監督&脚本】薗田賢次【バトンタッチャー】堤幸彦 感覚系 2007/08/02
 どうでもいい内容。
HEAVEN SENT ★☆ 【監督&脚本】高津隆一【プロデューサー】梅川治男、北村龍平、進啓士郎 感覚系 2007/08/02
 後見人の北村龍平作品風のカッコつけはそんなに悪くは無いんだけど、結果的にはやっぱり「どうでもいい話、どうでもいい映画」と思ってしまった。
ブラウス ★☆ 【監督】石井均【原案】望月六郎 ドラマ系 2007/08/02
 クライマックスまでじらしてオチで勝負、という狙いだが、もったいぶった部分が間延びして感じられ、やっぱりもの足りない。
NEW HORIZON ★☆ 【監督&脚本】手島領【脚本】行定勲 感覚系 2007/08/02
 綾瀬はるかをエロの対象として、「ハッピー・エロ映画」を目指したのは判るが、やっぱりなんか手ごたえに欠けるなぁ。
すべり台 ★★☆ 【監督&原案】阿部雄一【Special Thanks】篠原哲雄 ドラマ系 2007/08/02
 石原さとみ演じる小学生の女の子が幼なじみの柄本時生に、過去の罪滅ぼしに何でも言うことをきくと言うと、柄本は「セックスしたい」と言う、という急展開で始まり、それ以降大人ぶった子供ならではのドタバタ展開で約15分間を飽きさせずに見せる。
α ★☆ 【監督】原田大三郎 感覚系 2007/08/02
 途中、ミュージック・ビデオのような音楽と映像のシーンがあり、そこだけはエモーショナルで良かったが、それ以外は全体的に頭で考えたようなストーリーや映像のシーンばかりで退屈。
スーツ -suit- 【監督&原案】浜本生機【脚本】飯田譲治 感覚系 2007/08/02
 毎度毎度、ギャグはことごとくはずしているくせに、なんでお笑いに挑戦するのか? よせばいいのに。センス無いんだから。
黒の切り札 ★★ 【監督】井上梅次 1964 日(大映) モノクロ 1:2.35、89分 2007/07/07(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/07/07
ストーリー 感想
 難波多組からの借金で会社を潰されて放火自殺した社長の息子(山下洵一郎)と、難波多に組を潰されたヤクザ(待田京介)が、謎のバンドマスター(田宮二郎)の指揮の下復讐を始める。
 まず組の資金元の信用金庫に忍び込んで金には手をつけずに帳簿を盗み、検事(宇津井健)のところに送った。
 次に、難波多の黒幕の新日本開発会長深沢(内田朝雄)のナイトクラブに難波多が客で来たところ、そこで演奏をしていた田宮が仲間2人に難波多を襲わせて、彼らを追い払って顔見知りになった。
 宇津井がクラブを調べるために、恋人(藤由紀子)を連れて行き、宇津井の大学の同級生で藤の元恋人の田宮と再会し、深沢に家族を奪われた田宮は法の裁きは当てにならないと宇津井の協力要請を断って自力で復讐すると言った。
 深沢の手下たちが宇津井や田宮に秘密をばらしては口封じで殺され、田宮たちは深沢に自分の正体を明かして、彼のいる箱根の別荘にロープウェイで行って踏み込むが逆につかまってしまう。
 深沢たちは3人を縛って時限爆弾を仕掛けて別荘を後にするが、縄をほどいて時限装置を止めることに成功し、ロープウェイの上から下山する深沢の車めがけてダイナマイトを投げつけ崖下に落とした。
 ロープウェイの降り口にいた難波多たちは、別のゴンドラにダイナマイトを仕掛けて、田宮たちのゴンドラとすれ違いざまにケーブルを止めて導火線に火をつけると、宇津井の乗ったヘリコプターが来てハシゴを降ろして爆発寸前に救出した。
 難波多たちは捕まって自供し、田宮も法の裁きを受けると宇津井に言った。
 頭脳戦かと思っていたら、クライマックスで突然アクション映画になる展開に面食らったが、そうなってからの方が面白くて見どころ。
 全体的に楽しさが足りない。
黒の報告書 ★☆ 【監督】増村保造【原作】佐賀潜「華やかな死体」 1963 日(大映) モノクロ 1:1.2.35 92分 2007/07/01(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/07/01
ストーリー 感想
 社長が自宅で撲殺され、将来有望とされる若手の検事の宇津井健が担当に当たった。
 現場に残された指紋と毛髪、社長の秘書で実は情婦の叶順子らの証言から、犯人は元秘書の神山繁で、彼が社長の後妻と浮気をしていたことがバレてクビにされたこと、神山が社長から金を借りていたこと、後妻が離婚されそうになっていることから、2人がつるんで社長を殺したとにらみ、神山を逮捕したが彼は自白しなかった。
 裁判が始まると、弁護士の小沢栄太郎が証人たちを金で丸め込んで彼らは証言をひるがえし、神山は無罪になった。
 宇津井は控訴のために新たな目撃者を探し出し、叶も約束の金を小沢から貰えなかったかったことで、愛する社長を殺された復讐心がよみがえって、偽証罪覚悟で証言すると言うために宇津井に会いに来たが、宇津井は青森に飛ばされることになり、先輩検事の高松英郎に事件を託して去っていった。
 宇津井健が窮地を脱っしようとする手段が、語気を強くして正義感だけで相手を説得しようとする例の調子で、無能なことの罪深さの印象を強くしてしまう。
 結果、裁判が金次第でどうにでもなることの象徴である小沢栄太郎演じる弁護士の対抗者として同情を感じられない。
シティ・オブ・エンジェル (原題:City of Angels) 監督:ブラッド・シルバーリング 出演:ニコラス・ケイジ、メグ・ライアン、デニス・フランツ、他 1998 米 カラー 1:1.2.35(1:1.33にトリミング)、108分(クレジット以外はノーカット?、オリジナル:114分) 2007/06/23(土) HDDレコーダー(フジテレビ) ドラマ系、勧誘系 2007/06/24
 全編に渡って「天使を信じなさ〜い。キリスト教を信じなさ〜い。」という声が聞こえてきそうないかがわしい映画。
 『ベルリン・天使の詩』のリメイクとはいえ、こちらのニコラス・ケイジ天使は人間には見えない姿で死んだ人の霊をあの世に連れて行くという天使らしい仕事もしながら、メグ・ライアンに出会ってからは自分の女にしようと思って後をつけ回すキャラで、オリジナルのブルーノ・ガンツのムッツリ天使よりは人間くさくて敷居が低いが、煩悩丸出しなのはどうなのよ?
 オリジナルでは天使は人間とコンタクトを取るためには人間にならなければならなかったが、ニコラスは自由にメグに姿を見せてトークを楽しんだりして、、それならわざわざ人間になる必要も無さそうだと思うが、そんな天使と人間のいいとこ取りのような主人公の虫のいい設定といい、天使の存在を否定する科学の申し子のような医者のメグが、ニコラスのインチキ宗教の勧誘のような言葉で神秘主義側に転んでから生き生きする虫のいい展開といい、「困った人間は天使が見守っているのだから天使を信じなさ〜い。天使を信じない人間より信じる人間のほうがこんなにも幸せですよ〜。神を信じなさ〜い。」という方向にもっていくためのご都合主義や神秘主義がそこかしこに点在する。
 なおこの映画、関根勤が言うように、メグには見えないニコラスがメグにまとわりつくその距離の異様な近さや、メグの顔を見るときの上目使いの表情に大爆笑するという見方もあって、確かにそっちの方が素直で健全かな?
バッシング 監督&脚本:小林政広 出演:占部房子、香川照之、大塚寧々、他 2005 日 カラー 1:1.85、82分 2007/06/23(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、意味不明系 2007/06/23
 2005年の東京フィルメックス最優秀作品賞”グランプリ”受賞作品で、2005年のカンヌ映画祭コンペ部門招待作品。
 イラクで人質になった日本人ボランティア女性が開放された後に日本人から非難されたという2004年に起きた実際のエピソードを基に作られた、ボランティア女性(占部房子)が自宅に帰ってきてから家族ごと村八分にされるストーリーのフィクション。
 主人公は、いたずら電話には番号変更もしないでひたすら耳を塞いで耐え、味方のような行動をとる人には「私へのあてつけ?」と思ったかのように不快感を露に反発する。
 逃げているのでもなければ戦っているのでもない主人公の行動は、例えれば「車でおかまを掘られて『どうせ私が悪いんでしょう?!死んでお詫びするわよ!』と言ってその場で自殺してしまう」くらい支離滅裂なもの。
 別に人間はみんな器用に振舞えるわけでもないし、支離滅裂な行動をするのも特殊なことでもないので、筋の通っていない言動のキャラが主人公でも悪いとは言えない。
 でもこの映画の中盤で、人との交流を断っていた主人公が昔の恋人から再三ケータイにかけられた電話に応じ、他の第三者とは違う特別なやり取りを期待しながら見た2人の再会シーンが、恋人が世間同様の「日本人全体が迷惑した」と彼女を罵倒するというこちらの期待を踏みにじられるものであったに至って、「この映画の目的はひょっとして…」と思い始めた。
 私が思う「この映画に対する最も合理的だと思われる解釈」は、「観客をイライラさせるのが目的の映画。わけもなく不快な気分にさせるためだけの映画。」だということ。
 このストーリーを普通に描けば、観る者は「主人公を誹謗する人々が悪いのか?」「勝手に自滅する意固地な主人公が悪いのか?」の選択に直面し、この映画の作者はどちらの立場なのか?どちらでもない中立な立場なのか?といったことも気になるところだが、観る者をイライラさせるために登場人物が行動しているだけであって、それゆえ登場人物の言動は支離滅裂なのであり、そもそも作者の立場など最初から何もないと考えるのが一番自然である。
 そして、実際の事件が起きた直後に、それを基に「支持派、批判派、中立派のどの立場でもない」映画を作るなんて、誰にとっても全くの無意味だろう。
ベルリン・天使の詩 (原題:Der Himmel Uber Berlin) ★★★ 監督&脚本&製作:ヴィム・ヴェンダース  脚本:ペーター・ハントケ 製作:アナトール・ドーマン 出演:ブルーノ・ガンツ、ソルヴェイグ・ドマルタン、オットー・ザンダー、ピーター・フォーク、他 1987 西独=仏 パートカラー 1:1.66、分 2007/06/23(土) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 2007/06/23
 人の目には見えず、人の心の声を聞いてはそばに寄り添って癒そうとする天使の一人のブルーノ・ガンツが、サーカスのブランコ乗り(ソルヴェイグ・ドマルタン)を見初めたことをきっかけに、人間になることを決意する。
 世の中というものをを広く正しく認識し、間接的に関わっていく天使のような存在(たとえば映画監督なんかも?)より、小さな世界の命に限りのある小さな存在である人間でもいいから他者と直接的に関わってその手応えを実感したいと思うという個人的な内容から、第二次世界大戦とナチスドイツに代表されるベルリンという街が体験してきた過去から現在という歴史的社会的な内容まで網羅した作品。
 その大きさには感銘を受けるが、まぁ難点としては全体的に冷静、冷徹、達観といった印象で、映画として面白みに欠けるかなぁ…というところ。
三つ首塔 ★★ 【監督】小林恒夫、小沢茂弘【原作】横溝正史 1956 日(東映) モノクロ 1:1.33、83分 2007/06/22(金) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/08/13
ストーリー 感想
 黒川弁護士(小澤栄)が教授の上杉欣吾、姉の品子、欣吾の亡妻の弟の佐竹建彦のところに現れ、亡妻の父の兄の佐竹玄蔵がサクラメントで死に、亡妻の姉の娘の宮本音祢(おとね、中原ひとみ)が行方不明の高頭俊作と、所在不明の三つ首塔で結婚式を挙げることを条件に10億円の全財産を相続するとの遺言状があり、それがかなわぬ場合は第二の遺言状が有効になると告げた。
 ホテルでの上杉の還暦祝賀会で、黒川が音祢に俊作とその夜に会ってもらうように言った後、健彦の叔父の孫の笠原操が舞踊の最中毒殺され、客室で高頭俊作らしい男も毒殺されていた。
 現場にいた金田一耕助(片岡千恵蔵)に黒川が操作を依頼し、俊作の祖父高頭省三は玄蔵の商売仲間で、2人を騙した相手を玄蔵が殺して金を奪い、省三が罪をかぶって獄死したことを打ち明けた。
 音祢と俊作をかぎ回っていた堀井敬三が音祢を脅して呼び出し、自分と一緒になる運命だと一方的に言って去った。
 俊作が死んだため、黒川が血縁者を呼び出し、全財産の半分が音祢、残りの5億を弟2人の孫たち6人で分けるという第二の遺言状を発表したが、その直後堀井が音祢をどこかに連れ去った。
 相続人の一人バーの経営者の女が差し入れられた酒で、キャバレーの経営者の男が刺されてと、相続人の2人が立て続けに殺された。
 上杉宅に現れ逃げる堀井を金田一が追い、音祢と一緒にいるところを突き止めた。
 黒川は一同を三つ首塔に呼び、金田一は堀井は実は高頭俊作で、音祢の命を守るために彼女を誘拐し、犯人は建彦だと言った。
 建彦は発砲して三つ首塔に火が放たれ、一同は脱出し健彦夫妻は塔の中で死んでいった。
 『犬神家の一族』(1976)以降の金田一耕助ものとは雰囲気が全く違い、おどろおどろしさもなく、トリックや謎解きよりも背広姿の金田一が格闘するなどの明快な面白さで、スピード感がある飽きさせない映画を狙っている。
 逆に言えば、市川崑作品のような、特徴のある面白さはない。
三本指の男 ★★ 監督:松田定次 原作:横溝正史「本陣殺人事件」 出演:片岡千恵蔵、原節子、杉村春子、風見章子、他 1947 日(東横) モノクロ 1:1.33、72分(短縮版?、オリジナル:84分) 2007/06/20(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/06/22
 『本陣殺人事件』の原作が戦後まもなく発表されて、それとほぼ同時期に映画化された、片岡千恵蔵の金田一耕助シリーズ第1作目。
 原作は未読なので、1975年の高柳陽一版などと比べると、違いはまず金田一がスーツ姿、凶器が日本刀ではなくて包丁、密室殺人を構成しているはなれの周りに積もった雪がない、密室と思われたはなれには秘密の抜け道があって殺人犯がそこから逃げたこと、犯人の動機が旧本陣の長男が元小作人の娘と結婚することに反対だったからということに、戦前の封建的な考えを批判する意味があること、など。
 尺が短いので、金田一は簡単な調査でやけにあっさりと真相を見抜くが、むしろ無駄がないので緊張感も高く、千恵蔵が犯人を柔道で投げる捕り物シーンもあって、それなりに楽しめる。
 三本指の男の正体が、特徴ある声でバレバレなのはご愛嬌。
笑の大学 ★☆ 監督:星護 脚本&原作:三谷幸喜 製作:亀山千広、島谷能成、伊東勇 出演:役所広司、稲垣吾郎、高橋昌也、小松政夫、石井トミコ、木梨憲武、加藤あい、木村多江、八嶋智人、小橋めぐみ、長江英和、眞島秀和、他 2004 日(東宝) カラー 1:1.85、121分 2007/06/10(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/06/10
 つまんないなぁ。
 この手の会話劇って、先が読めない気分にさせられるのが面白かったりするのだが、この映画は逆で、閉ざされた作り物の世界の中でパターンに則った意外性の無い演出により、あらかじめ用意された結論(=作者のメッセージ)に収束していく気分で観ることになった。
 その結論とは具体的に言うと、三谷幸喜のこれまでの作品『ラヂオの時間』『みんなのいえ』などと共通の、「脚本(に相当するもの)の中身が他人によって勝手に変えられることに対する恐怖(と少しの期待)」で、そんな個人的な想いが映画が内向きだと思わせる一因になっているのでは?
 稲垣吾郎の演技も演劇調でクサいというより、映画の最優先事項がメッセージを伝えることで、そのためにはかつ舌良く早口でしゃべれて単純な感情表現をさせるといった意図からのキャスティングであり、彼がその意図通りに演じた結果深みの無い芝居が面白くなかったということだろう。
化粧師 監督:田中光敏 原作:石ノ森章太郎 出演:椎名桔平、菅野美穂、池脇千鶴、佐野史郎、柴田理恵、柴咲コウ、大杉漣、菅井きん、あき竹城、仁科貴、奥貫薫、酒井若菜、平泉成、森田直幸、岩城滉一、小林幸子、岸本加世子、田中邦衛、いしだあゆみ、他 2001 日 カラー 1:1.85、短縮版、113分 2007/05/31(木) テレビ東京 ドラマ系 2007/06/03
 最近の日本映画の一番悪いパターンで、映像はきれいに撮ってたり感動作に思われるストーリーなどで見てくれだけはいいが、とにかく映画から気迫が感じられない。作り手が気合を入れて作ったようには全く見えない。
 役者の芝居なんて、この手の映画では登場人物たちが映画の中の世界で実際に生きているように見せなければならないのに、ぶらっとカメラの前に来て一通り芝居をしてOKが出たらさっさと帰ってしまうようにしか感じられない。
探偵事務所5"〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜A File 探偵951「楽園」 監督&製作&企画&原作:林海象 脚本:天願大介、利重剛、林海象 出演:成宮寛貴、貫地谷しほり、田中美里、池内博之、佐野史郎、上原歩 、渡辺一志、橋本真実、矢島健一、SHOGO、近藤芳正、宍戸錠、宮迫博之、他 2005 日 カラー 1:1.85、76分 2007/05/08(木) テレビ東京 ドラマ系、感覚系 2007/05/13
 相変わらず林監督の演出は、美術や衣装などに凝って「カッコつける」ことには熱心なのだが、新人探偵の成宮寛貴と高校生の貫地谷しほりの凸凹コンビのやりとりを軽快に描いて「カッコいい」映画にするという点では、モタモタしたテンポで全然ダメ。
問題のない私たち ★☆ 2004 日 カラー 1:1.85、97分 2007/05/06(日) HDDレコーダー(テレビ神奈川) ドラマ系 2007/08/29
ストーリー 感想
 女子中学校の3年生の黒川芽以は、同級生の美波に対するいじめの中心人物だったが、転校生の沢尻エリカが気に入らず、沢尻をいじめるように同級生たちを仕向けた。
 しかし、逆に沢尻が同級生たちを取り込んで黒川をいじめるようになり、美波だけは黒川を助けようとしたが、いじめがエスカレートして黒川が錯乱状態に陥る。
 それを見てやり過ぎたと思ったのか、沢尻は黒川に謝って前の学校でいじめられた経験を告白するが、まもなく沢尻は黒川の幼なじみをいじめるようになり、黒川は勇気を出して沢尻を張り倒す。
 それ以来、沢尻が再びいじめのターゲットになるが、黒川は沢尻に仕返しせずに、クラスメートたちの態度を非難して、クラスのいじめは収まる。
 担任の野波麻帆が万引きをするところを黒川に目撃されてしばらく後、黒川が自習の課題を丸写ししたと野波が授業中に責め、黒川がろくでもないのは片親だからと言ったことに怒った黒川が野波の万引きのことをばらしてしまう。
 万引きの噂は学校中に広がり、黒川と野波の仲が険悪になり、クラスメートたちは野波を非難して授業をボイコットしたことで、野波は学校を辞めることを全校集会で発表しようとする中、生徒たちの非難は間違っているという美波の言葉に触発された黒川は、野波に万引きした店に誤れば済むことだと言って、その言葉に従った野波と黒川の仲違いも終わった。
 いじめのターゲットにならないように振舞って、そのためには必要ならばいじめる側に積極的にまわり、さらにはいじめる側いじめられる側がパワーバランスのくずれによって入れ替わったりするといった学校内の状況は良く描けている。
 しかし、肝心のドラマとしての出来については、全くといっていいほど見どころがない。
 他の出演作では魅力を発揮している大塚寧々を起用しておきながら、何も良さを引き出せていない。
 また、女の子たちが夏休みの旅行先の砂浜や旅館ではしゃぐ姿をBGMに乗せて台詞無しで描くイメージビデオ風のシーンがあるにもかかわらず、そんなシーンつきものの(主に女の子たちの)魅力が全く感じられないものになっているのも、致命的に面白くない出来であることを象徴している。
復活の日 ★☆ 監督:深作欣二 製作:角川春樹、岡田裕、大橋隆 原作:小松左京 脚本:高田宏治、グレゴリー・ナップ、深作欣二 撮影:木村大作 出演:草刈正雄 、渡瀬恒彦、夏木勲、千葉真一、森田健作、永島敏行、ジョージ・ケネディ、オリヴィア・ハッセー、グレン・フォード リチャードソン、ロバート・ヴォーン、チャック・コナーズ、多岐川裕美、緒形拳、ボー・スヴェンソン、丘みつ子、中原早苗、ヘンリー・シルヴァ、他 1980 日(東宝) カラー 1:1.85、156分 2007/05/05(土=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/05/06
 観直してみたけれど、以前観たときと同様やっぱりつまらなかったのは、展開が平板で、登場人物のキャラが類型的でちっとも立っていないから。
 南極に残された人類の生き残り約800人のうち女性は8人で、彼女たちが「子供を産む機械」として人類の将来にとって貴重だなどと話すのはまだしも、それ即ち「男たちのモヤモヤをスッキリさせる機械」の役割も兼ねているわけではないのに、なぜか男たちを中心に話し合ってすんなり決まってしまうという設定はひどいなあ。
 男たちは「子供をはらませる機械」に徹すればいいのであって(しかも8人で十分)、モヤモヤの方は南極観測隊員や原子力潜水艦乗組員たちなら自分で何とかするのはおてのもののはずなのに。
 それから、簡単に自殺する人たちがやたら多いのもどうなんだろ? おとなしく病気で死なせてやる脚本でもよかったのでは?
解夏 ★☆ 監督&脚本:磯村一路 製作:亀山千広、見城徹、島谷能成、遠谷信幸、桝井省志 原作&主題歌:さだまさし 出演:大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、林隆三、田辺誠一、古田新太、柄本明、松村達雄、鴻上尚史、石野真子、渡辺えり子、他 2003 日 カラー 1:1.85、114分(テレビ放映104分) 2007/05/05(土=祝) HDDレコーダー(フジテレビ) ドラマ系 2007/05/05
 出だしから主人公が難病を受け入れる悟りの雰囲気の映画なんだけど、それって観ているこっちの気持ちも映画から距離を置く結果になって、はっきり言って興ざめ。
 頭でっかちな小難しい映画で、これなら、
  大沢「俺、もうすぐ失明するんだ!死んだ方がいいんだ!」
  宇津井健「馬鹿なことを言うんじゃない!」
みたいな大映ドラマの方が感情に訴えてよっぽど面白いと思う。
 それに、全体的に抑え気味の映画なのに、臭いシーンはベタに臭いのもマイナス。
かもめ食堂 ★☆ 監督&脚本:荻上直子 原作:群ようこ 出演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、他 2005 日 カラー 1:1.85、分 2007/04/30(月=休) HDDレコーダー(WOWOW) 妄想系、ドラマ系 2007/05/04
 これって言わば「ひきこもり映画」。ひきこもりの人たちが夢見るような心地良い生き方の理想を描いたようなご都合主義ファンタジー映画で、リアリティは全く無い。
 そんな映画であることやひきこもり自体は必ずしも悪いとは思わないが、「ひきこもりに対する後ろめたさのかけらも無い映画になっていることは問題だろう」と言いたい。
 この映画の日本人登場人物たちは、何かから逃げるようにフィンランドに流れ着いたような人たちで、フィンランドという土地は映画の中でも言われるように、日本人にとって特別の思い入れも無ければ特別な影響も受けそうにない、自分らしさを通したいと思うひきこもり的な人にうってつけの国。
 フィンランド人たちと繰り広げられるやりとりも、言葉が通じないのをいいことに、深く踏み込もうとせず、それでも気持ちが通じていると都合よく思い込んでいる。
 特に小林聡美演じるかもめ食堂の主人は、日本で食堂を開くことによって起こる人間関係の煩わしさを嫌ってフィンランドで店を開くことに決めたようで、客が来ない状況が開店以来1カ月も続いているにもかかわらず、店のスタイルや和食に対するこだわりを捨てるといった自分が傷つく選択をすることは無く、客がいない状況にも、金持ちの道楽でやっているかのように何故かケロッとしながや客が来るのを待っているだけである。
 そして、いろいろあって満席になったことに満足してハッピーエンドというオチなのだが、それは梅、鮭、おかかのおにぎりのような本格的な和食の良さをフィンランド人に判ってもらうのでもなければ、彼らの嗜好に合うようなアレンジした和食の試行錯誤の結果でもなく、客たちが食べていたメニューの大半は日本風洋食らしいものだった。つまり、和食へのこだわりよりも商売成功の方が重要だったわけだ。
 映画の中で、「コーヒーは他人に入れてもらった方がおいしい」という台詞があったが、この映画におけるフィンランドという国やフィンランドの人々の存在もまさにそんな「一方的に幸せをもたらしてくれる」だけの扱いで、日本人たちはひきこもりのように、自分が傷つくような努力、挫折、路線変更、異国の人との深いやり取りなどは何もしない。
 いい年をした中年女性なら、世の中というものがどういうものかが判ってきて、それと妥協しながらうまく付き合って生きていこうとするのが当たり前だと思うが、こんな「苦労も妥協もしないで成功する」ファンタジーを何のエクスキューズも無しに平気で作ったり、後ろめたさの自覚も無しに観て喜んだり、いい大人のくせにノー天気もいい加減にしてほしい。
ピーナッツ ★☆ 監督&脚本:内村光良 2006 日 カラー 1:1.85、115分 2007/04/15(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/04/16
ストーリー 感想
 かつて草野球チーム「ピーナッツ」の伝説の選手で、上京してスポーツライターとして活躍しながらも、ここ1年ほどは文章を書く気力をなくして恋人(桜井幸子)にも愛想を付かされた内村光良が、久しぶりに地元に戻ってピーナッツに入れて欲しいと頼む。
 しかし、ピーナッツの構成メンバーだった昔ながらの客足が遠のいた商店街に店を構える店主たちは、よそに行って9人そろわない状況だった。
 その商店街の再開発計画の反対派でピーナッツの監督のベンガルは、開発会社の野球チームと試合をして負けた方が計画に関して相手に従うという賭けをし、ピーナッツは惜しくも敗れるが、メンバー達は試合で健闘したことを通して自分自身に誇りを感じることが出来た。
 観終わってみれば気楽な映画として軽くあしらうことが出来るが、特に後半に入って試合が始まるまでのドラマシーンが、どういう映画を目指しているのかがどっちつかずの印象だったのが観ていて苦痛だった。
 即ち、いくらなんでも家業をどうするかといった重大な人生の岐路を野球の勝敗で決めるという現実離れしたストーリーは、同様の問題が数多く存在する現実に対する社会性を軽視していると言える。
 そんなストーリー以上に問題なのは演出のスタイルの方で、随所に小ネタを散りばめていることからも社会性より娯楽性を重視していると思いきや、人々の苦悩を描くシリアスさもあって、悪い意味で映画を重苦しくしている。
 また、シリアスさが観る者の心を登場人物に近づけるかと思いきや、その描き方は重いだけで深みは感じられない。
 結局、この映画はドタバタ調にしてエネルギッシュに楽しく見せるか、人間ドラマや社会派としてしっかりした演出で芝居を見せるか(でも、こっちは演出の力量的に無理だと思った。試合のシーンが少しましに見えたのは、芝居をさせる演出が不要だっただけだろう。)の、スタイルのはっきりした映画にすべきもので、残念ながらその両者の中間のどっちつかずの中途半端な結果に終わってしまった。
兇状流れドス ★☆ 監督:三隅研次 1970 日(大映) カラー 1:2.35、82分 2007/03/25(日) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/03/26
<ストーリーはキネ旬データベースを参照>
 三隅監督の初の、おそらく昭和初期ごろの時代設定のヤクザ映画とのことで、人情に厚い渡世人を軽妙に演じている松方弘樹は、悪くないんだけどヤクザ映画の主役にしては役柄にクセが無くてキャラが弱い。
 ヤクザ映画の後発の大映なら、なおさら特徴を際立たせないといけないはずなのに。
夜行列車 (原題:Pociag) ★★ 監督&脚本:イェジー・カワレロウィッチ 脚本:イェジー・ルトフスキー 2004 ポーランド、モノクロ、1:1.33、97分 2007/03/11(日) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/03/11
ストーリー 感想
 妻殺しの夫が逃走中との記事が新聞で報ぜられる中、ほぼ満室状態の寝台車両で、ある男が2人部屋を独占しようとしていたが、そこには女がいて、車掌が追い出そうと警察を呼ぼうとすると、男はことを荒立てたくないと相部屋を受け入れた。
 その女を追って来た彼女の恋人が2等車に乗っていて、女に会おうとするが女は会おうとしなかった。
 女はまとわりつく恋人との関係をどうするかで思い悩んでいて、男も過去の出来事を忘れられずにいることをお互いに判り合い、最初にいがみ合っていたのとはうってかわって2人は打ち解けた。
 そこに、妻殺しを追っている警官たちが乗り込んできてまっすぐ2人の部屋に行き、身分証明書を持っていなかった男を容疑者として別室に連行した。
 恋人に会いに2等車両に行った女は、そこで見かけた自分に寝台切符を売った男が殺人犯だと警官に言い、女と警官たちは姿をくらました犯人らしき男を探し、追い詰められた男は非常ブレーキをかけて車外逃げたが、追って来た乗客たちに袋叩きにされる。
 自分の部屋に戻った男は、自殺を図った少女を手術したが救えず、その直後に列車に飛び乗ったことを女に話した。
 朝になり、途中駅で窓の外から女に会いに来た恋人は、彼女が男と同室なことを知って驚いて出発する列車に乗れず、女は以前の恋人から手紙をもらって恋人と別れて彼に会うために列車に乗ったが彼は別にどうでもいいと言った。
 終着駅で迎えに来た妻と再会した医師を先に行かせて、結局元恋人が迎えに来ないまま最後まで1人列車に残っていた女は、列車を後にして1人で歩いていった。
 列車乗り合わせた人たちのさまざまな人間関係が、女車掌と同僚との関係まで含めて描かれる。
 殺人犯を乗客たちが追い詰めるシーンと、恋人が途中駅で置き去りにされるのを出発する車窓からワンカットの長回しでとらえるところなどが印象的。
縛り首の木 (原題:The Hanging Tree) 監督:デルマー・デイヴス 原作:ドロシー・M・ジョンソン 1959 米、カラー、1:1.33、108分 2007/02/07(水) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系 2007/08/30
ストーリー 感想
 医者のゲイリー・クーパーが、モンタナの金の採掘場に現れて診療所を開いた。
 採掘場の砂金を盗もうとしてカール・マルデンに撃たれたルーン(ベン・ピアザ)を匿って、正体をばらさない見返りに自分の助手にした。
 クーパーは博打で金鉱の採掘権を勝取り、そこの採掘にも乗り出した。
 駅馬車が強盗に襲われ、唯一生き残ったスイス人のマリア・シェルをクーパーが診ることになり、回復した彼女にマルデンが手を出そうとするが、クーパーは彼女が自分の女であるかのようにマルデンをはねのける。
 シェルはクーパーに思いを寄せていたが、クーパーは自分の妻と弟の不倫を気づいたことで2人は命を絶ってクーパーが家に火を放った過去が心の傷になって彼女を避け、マルデンがシェルに新しい採掘場を作る資金提供の誘いを彼女は受け入れる。
 しかし、その採掘場からは金が出ず、彼女が雑貨屋から借りていた借金は膨らむ一方だったが、クーパーが彼女に気づかれずに資金を提供していた。
 ついにマルデンが採掘を諦めようとした時、金脈が見つかり、マルデンは人々に酒をおごって古い衣服を燃やすようにあおると、人々は家々に火を放っていった。
 その最中に、マルデンがシェルを力づくでモノにしようとしたところにクーパーが現れてマルデンを撃ち殺し、それを見た人々はクーパーを縛り首にしようとする。
 そこにシェルが現れ、砂金と採掘権と引き換えにクーパーを引き渡すように言い、人々が金に群がっている間にクーパーの縄を解いた。
 コメントすることは無いです。
奇談 ★★ 監督&脚本:小松隆志 原作:諸星大二郎「生命の木」 製作:一瀬隆重 2005 日 カラー 1:1.85 ドルビーSRD 84分 2007/02/06(火) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/08/30
ストーリー 感想
 1972年。大学院生の藤澤恵麻は、子供の頃東北の山村の渡戸村の親戚に預けられていた頃の記憶がなぜか抜け落ちていたが、最近そのときの記憶の断片の夢をよく見るようになった。
 調べると、子供時代の彼女と少年の2人が共にその村で行方不明になって彼女だけが発見され、その村が近々ダムのそこに沈むと知って、記憶を取り戻すために村へ行った。
 そこで彼女は神隠しを研究している異端の考古学者の阿部寛と知り合い、共に村を調査した。
 渡戸村は徳川幕府のキリシタン弾圧から逃れてきた隠れキリシタンの村で、さらにその奥に秀吉のキリシタン弾圧を逃れた人が拓いた「はなれ」という集落があり、そこの人々は外界との交流を断っていたが、皆7歳ほどの知能で不死身だとの噂があった。
 はなれの住人の男が十字架に磔にされて死んでいるのが発見され教会に安置し、やがて藤澤と共に神隠しにあった新吉が当時のままの少年として現れ、すぐに忽然と姿を消してしまう。
 二人と駐在員(柳ユーレイ)と神父(清水?治)たちがはなれに行くと、住民たちは重太(神戸浩)を除いて誰もいず、洞窟の中を調査すると、そこは藤澤が夢で見ていたところだった。
 阿部は、エデンの園で知恵の木の実を食べたアダムの他に、生命の木の実を食べたもう一人の最初の人間がいて、神は不死身の彼をインフェルノに閉じ込め、戦国時代に宣教師たちが来たのは日本に生命の木があると言われていたからで、はなれの村人たちの信仰は長年の間に歪んで、洞窟の中に入り口のあるインフェルノに定期的に行っては苦しんでいたので、村人をキリストに見立てて磔にして、彼に自分たちを「はらいそ」に連れて行ってもらおうとしたのだと話した。
 そこに現れた新吉は藤澤をはらいそへと誘うが彼女は断り、生き返った磔の男が現れて新吉を含むインフェルノの人々と共に空へと舞い上がっていった。
 映画としては悪くないんだけど、とにかく話が解りにくい。
 手がかりとなる教会に残されたはなれの記録フィルムが、古さを出すために音声が不明瞭で、言っている内容が聞き取れないとか、やはり手がかりのお題目のようなものも、1回聞いただけではその聞きなれない内容が判らないとか、クライマックスの阿部寛による謎解きも、台詞だけによる説明で、しかも大量の固有名詞を含んでいたりとかが解りにくい原因。
 せめてクライマックスの謎解きは、フラッシュバックを多用するなどしてわかりやすくして欲しかったけど、何度も脚本を読んでストーリーを熟知している監督には、こうした所見の観客が陥る苦労のことは忘れちゃうのかな?
バタフライ・エフェクト (原題:The Butterfly Effect) ★★ 監督&脚本:エリック・ブレス、J・マッキー・グラバー 2004 米 カラー 1:1.66、114分 2007/01/13(土) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/01/14
ストーリー 感想
 エヴァン(アシュトン・カッチャー)が小学生の頃、猟奇的な絵を描いたので精神科の検査を受けて、時々記憶が抜けるので日記を書くように医者に言われた。
 女友達のケイリーの家に行ったとき彼女の父親にケイリーと共にチャイルドポルノのビデオのモデルにされ、精神病院に入院中の父親に面会すると、エヴァンを殺そうとした父が職員に殴られ死んでしまう。
 6年後、エヴァンはケイリーを好きになっていた。
 ケイリーの兄のトミーが2人と男友達のレニーと共に、悪戯でレターボックスにダイナマイトを仕掛けて、その家の親子が傷つき、猟奇的な正確だったトミーは3人が止める中犬に火をつけて殺したが、これらの出来事の肝心な部分の記憶がエヴァンにはなく、エヴァンは母に連れられよそに引っ越すことになった。
 7年後、エヴァンは心理学を学ぶ優秀な大学生になっていたが、ある日ずっと書いていた日記を読むと意識がその時の自分に乗り移り、そこで過去を変えようと行動すると、我に戻ったときに現在の自分の状況が変わることに気がついた。
 かつての3人が不幸な現在を送っていて、ケイリーと再会して嫌な過去を思い出させて彼女を自殺に追いやったことで、エヴァンは日記を読んで過去に戻って過去を変え始める。
 しかし、1つ過去を変えると、別の不幸な状況が新たに起きて、そのたびに過去を変えるがどうやってもうまくいかず、精神科の医師は実は日記など存在せず、彼が過去を変えようとしていることも、すべては彼の妄想だと指摘した。
 それでもエヴァンはケイリーと最初に会ったときに戻って、彼女を脅して自分から遠ざけてることで、愛する彼女と別れることと引き換えに以降のすべての不幸な出来事を回避し、現在に戻って日記を燃やすのだった。
 過去に戻って過去を変えることで、現在が元の状態から変わってしまうというストーリーは、面白さは確かにそれなりにあるのだが、その面白さはこの手のストーリーに自動的についてくるだけであって、決して作り手の才気によって面白くなっているわけでもない。
 この映画は、ストーリー的な面白さは上に述べたこと止まりで、これだけでは評価できない。(なにしろ、この類の過去に戻って過去の失敗をやり直すことを繰り返す物語の映画は、『ラン・ローラ・ラン』『リバース』『未来の思い出』など、既に多数存在するのだから。)
 他に何らかの要素がプラスされてないのが敗因。
着信アリ ★★ 監督:三池崇史 原作:秋元康 2003 日 カラー 1:1.85、112分 2007/01/10(水) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系、感覚系 2007/01/12
ストーリー 感想
 子供の頃に母親から虐待された経験があり、今は大学で児童虐待について学んでいる柴咲コウは、同級生の女友達の携帯に、数日後の日時で自分の番号から入れられた留守電を聞いた。
 その予告の当日のその時刻、その友達と電話で話していた柴咲は、友達が留守電と同じことを言ったのを聞いた直後、電話が切れて友達が陸橋から電車に飛び込んで死んだ。
 葬式で後輩の高校生から、このような死の予告電話がかかってくる事件が以前から起きていて、死んだ人間の携帯内の番号の1つに次の電話がかかって連鎖していることを聞いた。
 そして、今度は柴咲の目の前で男友達が留守電と同じ言葉を言って、「シュッシュッ」という音と共にエレベーターシャフトに落ちて死んだ。
 次の電話は同級生の吹石一恵にかかり、これを察知したテレビ局が彼女を除霊する番組に出演させようと近づき、死を恐れた彼女はそれを受け入れる。
 半年前に同様の死に方で妹を失って真相を追っている堤真一が柴咲に近づき、死んだ人間の携帯から死の直後に病院跡の電話番号に電話をかけていることを聞かされた。
 柴咲と堤が移転先の新病院に行くと、そこで「シュッシュツ」という音を聞き、それが喘息の薬の吸引の音だとわかった。
 葬儀屋である堤が、その病院で喘息で死んだ者を探すと、水沼美々子という女の子が7ヶ月前に小児喘息で死に、彼女の母のマリエ(筒井真理子)は、美々子の妹の菜々子を虐待して傷つけては何度も病院に連れて来ていて、美々子が発作を起こしたときも放置したせいで彼女は死に、今は行方不明で菜々子は施設にいることがわかった。
 吹石が出演する生番組が始まって柴咲と堤がスタジオに行くと、予告どおり吹石が死に、その直後に柴咲の携帯に予告電話がかかった。
 タイムリミットの夜になり、柴咲はひとり病院跡に潜入し、そこで心霊現象に襲われるが、マリエの遺体を発見して、虐待された過去を持つ自分と美々子を重ねてマリエの霊と接した柴咲は、呪いを解いて死を免れた。
 しかし、菜々子が持っていたビデオテープを見た施設の人が堤を呼びつけて見せると、そこには菜々子を傷つけている美々子のが写っていて、マリエは虐待していなかったことがわかった。
 一人自宅にいた柴咲のところに美々子の霊が現れ、堤がそこに駆けつけると、美々子に乗り移られた柴咲に包丁で刺された。
 発作を起こした美々子の命を救った夢を見た堤が病院のベッドで目を覚ますと、傍らには包丁を隠し持った柴咲が立っていて、2人はキスをして微笑み合った。
 当然のように『リング』とストーリーが類似していることが気になり、死の予告を回避するための謎解きというストーリーの骨子が丸々同じ。
 その『リング』自体既に「謎が解ければ呪いが解ける」という確証が無いままストーリーを進めていくという「ストーリーの抜け、飛躍」=「ご都合主義」があったのだが、あの映画はそうした抜けを観客に感づかれる隙を全く与えない見事な構成力で映画を引っ張っていたので、それは全く問題にならなかった。
 それに比べるとこの『着信アリ』は、ストーリーの飛躍も多ければ、観る者の注意を引き付ける力も弱く、観ていて映画に締まりのない印象を持つ結果になった。
 三池監督の演出は、冒頭まだ呪いのかかっていないはずの柴咲に白い腕をまとわりつかせるなど、映画の辻褄などよりは見せ場を増やすサービス精神重視の傾向を見せた。
 怖がらせるシーンでも、Jホラー特有のジワジワ怖がらせる見せ方よりも、見た目や音的に派手で激しいものを目指した感じ。
 結果、あんまり怖くなくなっちゃったかな?
パトリオット (原題:The Patriot) ★☆ 監督:ローランド・エメリッヒ 2000 米 カラー 1:2.35、165分 2007/01/08(月=祝) HDDレコーダー(NHK-BS2) ドラマ系、感覚系 2007/01/09
ストーリー 感想
 フレンチ・インディアン戦争の英雄で今は男手1つで育てた7人の子供たちと使用人たちと共に農場生活をしているベンジャミン・マーティン(メル・ギブソン)は、イギリスとの独立戦争で一般人が巻き添えになるような戦争をするより和平を推し進める主張をしたが、イギリスが受け入れない以上戦うしかないとの意見が大勢だった。
 長男のガブリエル(ヒース・レジャー)は父に逆らって出征したが、アメリカが不利な状況の中、家の近くの戦場で傷ついて家に逃げ帰った。
 そして家の目の前が戦場になって、ベンジャミンは両軍の負傷兵を治療すると、そこに現れたイギリス軍のタヴィントン大佐(ジェイソン・アイザックス)はアメリカ軍の兵士を皆殺しにし、ガブリエルを処刑するために連行しようとし、助けようとした次男が大佐に撃ち殺され家に火が放たれた。
 ベンジャミンは幼い三男と四男を連れてガブリエルを追い、3人で銃撃してイギリス兵をほぼ全員殺してガブリエルを奪還した。
 傷が癒えたガブリエルは、ベンジャミンの制止を振り切って戦地に戻り、ベンジャミンも軍に復帰して、ガブリエルを守るために自分の指揮下に転属させた。
 ベンジャミンはこれまで負け続けてきた正面攻撃をやめ、民兵を募って奇襲をかけて戦果を上げたが、彼の部隊に手を焼いたイギリス軍が囮を仕掛けてかなりの民兵が捕虜に獲られた。
 ベンジャミンはその夜ガブリエルに自分の英雄壇を聞かれて、フランス軍とチェロキーが砦の中の入植者たちを皆殺しにして、彼の部隊が後を追って両軍を全滅させ死体を切り刻んでフランス軍とチェロキーに送りつけて、チェロキーにフランス軍との協定を破棄させたことを話した。
 ベンジャミンは単独でイギリス軍に乗り込んで捕虜の交換の交渉で民兵たちを救い出すが、そこでタヴィントン大佐と再会して、お互いに相手を殺すと宣言して別れた。
 ダヴィントンはベンジャミンの家族が住む妻の妹の家を襲うが、ベンジャミンたちが駆けつけ家族たちは救出された。
 ガブリエルがアン(リサ・ブレナー)と結婚式を挙げるが、ガブリエルが出征した後、タヴィントンがアンを含めた村人たちを教会でベンジャミンの居場所を尋問した後、閉じ込めて教会ごと焼き殺した。
 ガブリエルたちはダヴィトンたちを追って戦うが、タヴィントンだけが生き残って双方全滅した。
 2人も子供を失ったベンジャミンは戦いに虚しさを感じたが、部隊に残って民兵たちを率いてイギリス軍への総攻撃の先頭に立ち、作戦が成功してイギリス軍を圧倒し、タヴィントンも一騎打ちの末倒した。
 以降、アメリカに加勢するフランス軍の艦隊が現れて形勢は逆転してイギリス軍が追い込まれ、ベンジャミンが故郷に帰ると新しい家を建てようとしているところだった。
 『パトリオット』(愛国者)というタイトルのイメージとは違って、メル・ギブソン演じる主人公はナショナリストでも好戦的でもなくむしろ家庭人で、戦争の悲惨さを知る分別ある人間で、一見するとこの映画はそんな彼の人物像を反映した反戦的なもののように思われる。
 でも、どうも巧妙に善と悪とを分けているように見え、それの最たる例はメル・ギブソンの家族との愛情エピソードがやたら強調され(彼を嫌っていた末娘が、突然父を慕って叫んで抱き合うなんてシーンもあったりする)、また敵対するタヴィントン大佐も、弱者も含めて皆殺しにしたり、教会をも燃やすなど、悪者としてやたらと強調されて描かれている。
 その結果、「アメリカ、家庭人、フランス、キリスト教」=善、「イギリス、反キリスト教」=悪という主張を描くことが本音の映画のように思える。
 言い換えれば、メル・ギブソンの役に厚みを持たせたのは、映画に厚みを持たせるためではなく、彼の側が行使する「正義」が一方的なものであることをカムフラージュするためのエクスキューズだったのでは?
 映画の出来としては、ローランド・エメリッヒ監督ってこれまでほとんど注目してなかったけど、合戦シーンなどでカッティングは今風にシャープなわりに、早すぎて目くらましになっているということはなく、見せたい画をちゃんと見せるアクションになっていたので、そうした点は評価するが、映画の題材がこんなのでなければ良かったのにね。
わが町 ★★ 監督:川島雄三 原作:織田作之助 1956 日(日活) モノクロ 1:133、98分 2007/01/08(月=祝) HDDレコーダー(WOWOW) ドラマ系 2007/01/08
ストーリー 感想
 日露戦争の頃、アメリカ領だったフィリピンの道路の難工事を監督して、多数の死者を出しながらも他国には成し得なかった道路を完成させて大阪の長屋町に帰って来た他吉(辰巳柳太郎)は、日本を発つ時に一度遊んだ女お鶴(南田洋子)に自分の娘が出来ていたことを聞かされたが、彼女は間もなく病死し、辰巳は人力車の車夫をしながら男手1つで娘を育てた。
 その娘の初枝(高友子)は、桶屋の息子の新太郎(大坂志郎)を好きになって2人は結婚するが、ちょうど昭和になった頃、桶屋が火事になって焼け出された新太郎がやる気をなくしていたので、他吉は性根を叩きなおすために、新太郎をフィリピンに行かせる。
 新太郎を見送った桟橋で、初枝は初めて身ごもっていることを明かし、まもなく新太郎が赤痢で死んだとの知らせを受けて、出産間もない初枝はフィリピン行きを嫌がっていた新太郎を無理矢理行かせた父を恨みながらショックで死んだ。
 他吉は孫娘の君枝を厳しく育てて、最初は父を嫌ったが、やがて打ち解けた。
 時が経って終戦を迎え、他吉はあいかわらず人力車を引いていて、タクシー会社に勤めた君枝(南田洋子)は、幼なじみの潜水夫の次郎(三橋達也)と再会して、君枝は他吉に結婚したいと打ち明けるが、他吉は当人同士で決めた結婚に反対した。
 しかし、次郎がマニラ湾の沈没船の引き上げに行くと聞いて、他吉は2人を結婚させようと正式に見合いをさせるが、次郎を連れて家に帰ると、君枝が他吉を隠居させるために隣人の落語家の桂〆團治(殿山泰司)に頼んで人力車を売ってしまったことで他吉はうろたえ、さらに君枝が妊娠したため次郎がマニラ行きをやめると言って口論になり、次郎と君枝は他吉がこれまで家族やフィリピンの工夫たちを犠牲にして自己満足をしてきたことを責めて飛び出した。
 落胆した他吉が夜道をうろついているところに、人力車を買い戻した〆團冶と鉢合わせになって2人はもみ合いになるが、通りかかったチンピラたちにからまれて人力車は川に落とされ他吉は袋叩きに合った。
 他吉は次郎と君枝宛に、ケチをして貯めたお金があるので次郎は安心してマニラ行った方が良いとの手紙を残し、プラネタリウムに行ってフィリピンで見た南十字星を見ながら死ぬのだった。
 日本の威信をかけて死に物狂いになることを強要したワンマンの他吉が、戦後になって若い世代の孫娘たちに自分の生き方を否定されるといった、新と旧、大義と個人の対立の話なのだが、映画版は全体的に早足で駆け抜けて行くスタイルで、ストーリー的にもキャラクター的にも深みが無く、孫娘にしっぺ返しを食うクライマックス以外はこれといった見どころも無く全体的にもの足りない。

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