トム・クルーズも大のお気に入り!?
最強のバカ映画『直撃地獄拳 大逆転』

2001/02/11
2001/02/16更新 (斜字体)





 登場作品


(注意:以下の文章には、「こうだったら面白いなあ」という考えに基づいた飛躍が含まれていますので、ずべて真実というわけではありません(笑)。)

さて、2000年最大のヒット作『M:I−2』には、どのような感想を持ちましたでしょうか? 巷の評価では、凄いアクションという肯定派と、大したことのない映画という否定派に分かれたようです。私の感想は、前半は退屈で、中盤の研究所での撃ち合いでやっとジョン・ウーらしくなったと思ったものの彼にしては物足りず、その後のアクションも今ひとつきまらなくて、これはダメかなあと思っていたところ、ラスト2台のオートバイが向かい合ったところから一気に炸裂! といっても、それはアクションの凄さというよりは、カッコ良さを追及する余り、一線を越えてバカッぽくなってしまったという、「バカ映画」としての凄さに喜んだということです。だって、バイクから飛び上がった2人が空中で組み合ってそのままガケから落ちるなんてアクション、マンガでしか見たことないぞ。それに、その後のカンフーアクションも、まわし蹴りを華麗にきめたり、いちいちポーズつくったりして、2人ともそんなことしてる場合じゃないだろう(笑)。

このバカっぽいさを、カッコ良さの進歩した形として喜ぶべきか、あるいは過ぎたるは及ばざるがごとしなのかによって正反対の感じ方になるのでしょうが、私はどちらが正しいと言えず、しいて言えば6:4で前者を支持するといったところです。この問題は、今後も考えていこうと思っています。

『M:I−2』は、前作の『ミッション:インポッシブル』が緻密なスパイ・サスペンスだったのに対し、こちらはアクションに大きく変わったと言われていますが、その境目は1作目と2作目の間ではなく、1作目のクライマックスで英仏海峡のトンネルに入った時だったというのが正確でしょう。それまでは監督のブライアン・デ・パルマお得意の小技や仕掛けの数々をこれでもかと盛り込んで、彼がサスペンス演出においては他の追随を許さないことを見せつけたものだが、トンネル内の大仕掛けなアクションとなるとなす術がないといった感じで、そこだけが妙にバカっぽく浮いた映画になってしまいました。

『ミッション:インポッシブル』を映画化するにあたって、オリジナルのテレビシリーズ「スパイ大作戦」はセコい手段で任務を達成していたので、そのままでは映画自体もセコくなってしまう。そこで、アクションをより大がかりにして映画として見栄えのするものにするという意図が製作者のトム・クルーズあったと思います。いや、それ以上に、ひょっとしたらそれ以上のバカっぽさも狙っていたかも?

というのは・・・と、ここで突然『直撃地獄拳 大逆転』の話になりますが、この映画を簡単に内容を紹介すると・・・。ある外人の女性が日本で展示しようとしていた宝石が盗まれ、更に彼女の娘も誘拐されてしまった。そこで、保険会社の丹波哲郎は、千葉真一以下3人のその道のプロに捜索を依頼した・・・。これだけだと、この映画は千葉真一主演の空手アクションのように思われますが、実はこの映画は登場人物がとにかく半端じゃないバカっぷりで、みんないい年をしたオヤジたちなのに、まるで子供のような悪ふざけを延々と続け、ギャグも例えばボコボコに顔面を殴られた人の目玉は飛び出すわ、ビルから落ちた人は地面に叩き付けられて木っ端みじんになるわで、次にこういうギャグが来るんじゃないかという予想をはるかに越えたものばかり。映画全体にわたって、ちょっとでもギャグを入れる透き間があれば逃さず入れて来る、全く容赦のない徹底した受け狙いの姿勢はとにかく感動的! これが、最近のバカバカしさを売りにしている映画だと、バカバカしいことを目指している俺は実は頭がいいんだといういやらしさが感じられたり、「おバカ」とか言ってお上品に「お」 をつけたりするのには及び腰な印象を受けたりするのですが、『直撃地獄拳 大逆転』にはそんなものは一切なし。リミッターなしの徹底したサービス精神でおなかが痛くなるほど笑える、観ていて本当に気持がいい映画です。

で、この映画と『ミッション〜』シリーズの関係はというと、『ミッション:インポッシブル』は『直撃地獄拳 大逆転』が元ネタなんじゃないかと思えるくらい、この2本の映画には共通点が多いんですね。(この説は私のオリジナルではなくて、石井輝男監督作品の特集上映のチラシに、『直撃地獄拳 大逆転』の紹介として「『ミッション:インポッシブル』に多大な影響を与えている?」という文からのいただきです。)まず、ボスが数人のスペシャリストたちを集めるということからして同じだし(おっと、これは「スパイ大作戦」の方がもっと古いか(笑))、センサーが埋め込まれている廊下の先にある金庫室を破ろうとしたり、○○○がトンネルに突っ込んだりと(何が突っ込むかは観てのお楽しみ)、『ミッション:〜』の最大の見せ場2つの原形もある。でも、そんなの単なる偶然に決まっていると私も思っていたのですが、続く『M:I−2』と比べても、警戒厳重の敵のアジトのビルに空から侵入したり、某超大物映画俳優がひそかに出演していたりと、さらに共通点が出て来て、うーん、これはトム君どこかで『直撃地獄拳 大逆転』を観てて(例えば、冒頭で千葉真 一の映画が出て来る『トゥルー・ロマンス』のトニー・スコット監督が見せたとか? 彼はトム・クルーズ主演の『トップガン』『デイズ・オブ・サンダー』の監督。)、それを目指していたとか?

そう思うと、馬鹿に成りきれなかった1作目のデ・パルマから、2作目の監督がジョン・ウーに替わったのは、彼ならバカ映画を撮れると見込んでのことなのでしょうか? ウー監督といえば『男たちの挽歌』はカッコいいし、前作『フェイス/オフ』では鏡をはさんで撃ち合うという最高のシーンがあった一方、ラストのモーターボートでのアクションでは、さすが日本のCMで「トキオ・ドリンク」「パチンコーッ!」と言っていたご両人だけあって相当バカっぽい。さらに、余りに多くの人(推定600人!)が次々に撃ち殺されるのが冗談としか思えない『ソルジャー・ドッグス』も監督していたし。『M:I−2』に何故ハトがまた出てくるのかという質問に対するウー監督の答えが、「私は平和主義者で、ハトは平和のシンボル。」というのも変で、ウー監督って相当冗談キツいのかなあ?

もしそうではなくて、真剣にアクション映画を極めたいと思っているのなら、今ごろ彼の心の師匠サム・ペキンパー監督が、あの世で「もっと真面目にやれ!」と怒っている声がウー監督の耳にも聞こえてきて、さぞかし反省していることでしょう(笑)。



『直撃地獄拳 大逆転』は2月10日(土)から16日(金)まで、自由が丘武蔵野館にてレイトショー(21:00〜22:30)


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