アバン


大切な人
元気ないと私も元気でない

大切な人
だから元気づけたい

でもどうすればいいの?



8月9日・ネルガル月ドック


こんにちわ。わたしラピス。
ユーチャリスオペレータと姉さんの感覚サポートを勤める。

一日のお小遣いは500円、それで肉まんを買うのが楽しみ。
え?今時の子供はもっと貰ってる?
別にお金に興味ないから知らない。

今日はアマテラス攻略に出かけた。
姉さんのホワイトサレナは何とか無事帰ってきた。
帰るとさっそくサリナが傷ついたホワイトサレナを見て泣いていた。Janction Point

「ああああああ
 わたしの美しいホワイトサレナがぁぁぁ!
 おみ足に被弾跡が!!
 右手のブレードが欠けてるし!!
 う、ウイングが一枚もげているぅぅぅ!!
 ああ、ここも〜〜!!!」

うるさいので以下省略
ほんとバカみたい。

姉さんは帰るといつものようにブラックサレナにお籠もりした。Janction Point
今日は一段と長く、結局その日はブラックサレナのコックピットから降りてこなかった。

せっかくエリナからクッキー貰ったから一緒に食べようと思ったのに・・・



Nadesico Princess of White(Auther's Remix ver.)

Appendix:Anecdote1 ラピスの大切なモノ



8月10日


最近、姉さんちょっと変わった。

前は左手で頭撫でてくれたのに、最近は右手で撫でてくれる。
なんで左かって?
「右手は常に開けておけ、いつでも抜刀できるように」って月臣が言っていた。

今日は出撃後定例の身体検査日
私と姉さんは別々に受けたけど、私の方はすぐ済んだ。
ちょっと迎えに行ってみる。

てくてくてく・・・・・・・・

『右手よくそこまで動くわね。左手ぐらいに進行していてもおかしくないのに』
『鍛え方が違いますから』
『おとなしく静養するつもりは・・・ないのね?』
『ええ、生きた証し・・・ってやつですか?残してから逝きたいので』

扉の中で姉さんと誰かが話をしていた。

「あら、ラピス。どうしたの?」
扉が開いて中から姉さんが出てきた。
「姉さん、待ってた。でもあれ何?」
「じゃ、白百合。また来週ね」
「はい」
姉さんと一緒に出て来たのは、なぜかヒサゴンのぬいぐるみだった。
「まぁ、生きているのがバレると困る人ですよ。私と同じようにね」

ふうん、確かこの前はゲキガンガーでその前はうさタンだったような・・・

「ねぇ、姉さん。どこか悪かったの?
 時間、長かった」
「そんなことありませんよ。」
グリグリ
姉さんは少し困った顔をして右手で私の頭を撫でてくれた。

それが嘘だというのは私でもわかる。
だって、姉さんの感覚のサポートをしているのは私。

最初は視覚だけだったが、最近は聴覚や痛覚までの補正処理が必要になってきている。
特にアマテラスから返って来た直後はほとんどブラックアウト状態だった。

・・・なにか不安・・・



8月14日


その夜は姉さんと一緒に寝た。

不思議な夢を見た。Janction Point

私は「あの人」と一緒に歩いていた。
でも姉さんのように白くなかった。
黒いマント、黒い髪、黒いバイザー
「あの人」の顔を見上げようとしたらいつもより高い位置にあった。

「ルリちゃんとナデシコCが合流したそうよ」
「勝ったな」
「ええ、あの子とオモイカネが一つになればナデシコCは無敵になる!」
「俺達の実線データが役に立ったわけだな」
「やっぱり行くの?」
「ああ・・・」
「復讐、昔のあなたには一番似つかわしくなかった言葉だったわね」
「昔は昔、今は今だ・・・補給ありがとう」
「いいえ、私は会長のお使いだから・・・」

「あの人」は誰?姉さんの様でいてそうじゃない
でもエリナもいたし、私もいた。今の姉さんに付き従う私の様に・・・

向こうの私も同じように「あの人」が大好きなのかなぁ・・・

姉さんも同じように夢を見たみたい。うなされていたから
次の日から姉さんはもっと元気がなくなった・・・。



8月15日


〜〜計画発動「姉さんを元気づけるぞ!」大作戦〜〜


 その1・リサーチ

質問内容:あなたが幸せと思える事はなんですか?


■解答者No.1 ヒサゴン(?)

「そうねえ、説明している時かな?
 最近は可能性のジャンクションについて説明したくてうずうずしているの。
 あなた、聞いていかない?」

結構です。次行きます。


■解答者No2 サリナ・キンジョウ・ウォン

そりゃ、エステバリスをいじっている時でしょう!
 特に私のホワイトサレナの美しい事ときたらもう!
 あの美しいウイング、美しいご尊顔、美しいおみ足
 あああ、美しい・・・
(以下 Repeat)」

バカみたい。じゃ次


■解答者No.3 ウリバタケ・セイヤ

「ああ、ちょっと今は手が離せないんだ。済まないな。
 なんせ整備するエステが多くって。
 サブロウタのスーパーエステだろ?
 三人娘のエステバリス・カスタムだろ?
 ホワイトサレナも直してやらなきゃいけないし。
 ナデシコCのジャンプユニットも調整しなきゃいかん。
 女房のオリエのやつ、うすうす感ずいてやがるから今日は一旦帰らなきゃいかんし・・・
 サリナ女史がまともなら楽できるんだが、あいつマシンスペックばっかりに目がいって、トータルバランスにまで気が回らないんだ。俺の仕事手伝ってるのか、仕事増やしてるのかわかりゃしない!
 くそ!時間がなさ過ぎる!!

そのわりに楽しそう。でも少女に愚痴をぶちまけないで欲しい。


■解答者No.4 エリナ・キンジョウ・ウォン

「男共を顎でこき使う時かな?」

エリナってそうキャラだったの?

「っていうのは冗談で・・・何でこんなこと聞くの、ラピス?」

う・・・・・・そうね、このまま聞いてってもサンプル数は少ないし

ごにょごにょ・・・

「ふうん・・・白百合を元気づけたくてねぇ。
 いいわ、一緒に考えましょう!」


 その2・第一次接触

装備1:コレクターズアイテム
「何ですか?ラピス。
 いきなりゲキガンガーの超合金なんか見せて?」

『いやぁ、アキト君がゲキガンガー好きだったんで、あの子も感化されてるんじゃないかな〜〜と思って、あははは』
・・・笑ってごまかすな・・・


装備2:コスプレその1
「あら、ホウメイさんの猫スーツですか?
 似合ってますよ、クス♪」

エリナ・・・これは喜んだというよりもウケた・・・って言わない?
『おっかしいわねぇ、私のリサーチによればあの子はかぶりものが好きとなってるんだけど』
それ、何時のデータ?


■装備3:コスプレその2
「・・・ラピス。私達のスリーサイズでプラグスーツはやめなさい」

うううう、なぜか憐れみと同情の目で見られてしまった・・・
『やっぱりラピスには早かったかしら、オホホホホ』
ちょっと自分が似合うからっといって・・・


■装備4:モノマネ
ゴツン!!
「こら!ダメでしょ、人様の前で『バカばっか』なんて言って!」

びええぇぇぇぇ!!! エリナのバカぁぁぁぁ!!
『昔はあの子が一番たくさん言ってたのに・・・成長したんだ・・・』


作戦、全て失敗・・・


 その3・お悩み相談

エリナって役たたずだった!!

でも、どうしよう・・・

「おや、どうしたの?」

・・・ヒサゴン?

「悩みがあるなら聞いてあげましょうか?」

ヒサゴンに話したって・・・

「今、ヒサゴン如きって思ったでしょう!(怒)」

う、恐いからアップにならないで〜〜
実は・・・ごにょごにょ・・・

「ふうん・・・で、あなたはどうなの?幸せと思ったことはないの?」

え、私が幸せと思ったこと?

「そうよ。あなたと白百合は家族なんでしょ?
 だったら、一緒に暮らして来て楽しいと思える事を共有しているはずでしょ?」

う〜〜ん
そういえば、姉さんが昔話してくれる時が一番楽しかったかな?
ナデシコに乗っていた頃の話をしてくれてたのが。



回想・2年前の火星の後継者 某拠点


「そうねぇ、あの頃は毎日がお祭りみたいなものだったわね。
 みんなバカみたいに騒いで、それを私は横目で見ていて「バカばっか」なんて思っていたけど。
 でも、祭りって外から眺めていても全然楽しくないの。
 自分で参加してみて初めてわかったわ。」

ふうん、お祭りって楽しいものなの?

「ふふ、今度教えてあげるわ。
 今じゃナデシコはなくなってるけど、
 アキトさんの屋台とか、ホウメイさんの日々平穏とか、
 まだ元ナデシコのクルーの方々が来るからそれは楽しいわよ」

屋台って何?日々平穏ってなに?

「料理を食べさせてくれる所よ。
 アキトさんはラーメン屋さんで、
 ホウメイさんは和洋中なんでもあり、特にチキンライスが好きだったわ」

料理って何?食事ならCレーションで十分でしょ?

「違うわよ。食べる事自体を楽しむの。
 ここを出れたら食べさせてあげる。
 食べただけで元気になれるぐらい美味しいの。ラピスも気に入るわ」

なんか姉さん、幸せそう。
ナデシコ・・・か・・・



回想終わり


「ふうん、料理ね。」

でも、最近姉さん食事してないし・・・

「そうねぇ、アキト君のラーメン・・・ってわけにも行かないし
 プロスさんも今は忙しそうだし・・・
 ホウメイさんの所ってのはどう?」

・・・いいけど、姉さんの胃、食事を受けつけないよ?

「何の為にあなたがいるの?」

そうか!
私が姉さんの感覚補正してるんだった。
と、いう事は・・・

「ご名答。それとなくおねだりしてみれば?」

うん、わかったヒサゴン!ありがとう!


 その4・ということで作戦実行

「そしてホウメイさんは日々平穏という料理店をヨコハマシティにて開業中。」Janction Point

クイクイ

「・・・ってなんですか?ラピス。(なぜなにナデシコの)本番中ですよ」

姉さん、わたしチキンライスというものを食べてみたい。

「・・・しかたないですねぇ。
 まぁ、ちょうどさる方の地球までの護衛も頼まれましたし
 イネスさんのお墓参りをしたら連れていって上げますよ」

やった!



8月20日・地球連合宇宙軍・地下施設


・・・まずい、迷った。

『ええ、先に日々平穏に行くって?まぁ、ヨコスカまでさほどないでしょうけど・・・
 本当に一人で大丈夫?』

って聞かれたんで、思わず『大丈夫!』って答えてしまったけど・・・思いっきり大丈夫じゃなかったりする・・・。だからリアルワールドは嫌い!
でもまさか、迷いましたって受け付けに泣きついたら・・・

ピンポンパンポン
 保護者の白百合様
 正面入り口受け付けにて11歳くらいの迷子の女の子をおあずかりしております。
 お名前はラピス・ラズリちゃんです。
 いらっしゃいましたら受け付けまでお迎えに来てあげてください。
 ピンポンパンポン!

うう・・・嫌過ぎる・・・

「さってと、帰るとするか」Janction Point

あ、ロン毛・・・アカツキ?

抱き!!

「え、お、お嬢ちゃん、どちら様?」

あれ、アカツキじゃない?でも、この顔どこかで・・・
多分、ナデシコ関係者、一応この人に聞いてみよう。

日々平穏はどこ?

「はぁ?」



8月20日・日々平穏AM


「悪いねぇ、サブちゃん。ラピスを連れてきてもらって」
「いいえ、でもホウメイさんのお客さんって知らなかったっすよ」
「まぁ、会うのは初めてだけどね。古い知り合いのお連れさんなんだよ」
「へぇ、『古い友人』ねぇ・・・」

ロン毛2号が私をちらっと見る。・・・なに?

「いや、別に。ただ君のお姉さん何してるのか・・・と」

別に。お墓参りって言ってた。

「ふうん、じゃうちの艦長と鉢合わせか・・・お前も大変だなぁ」

クシャクシャ

やめて、頭を撫でるのは。へヤーが乱れる!

「ごめんごめん」
「でもいいのかい?お嬢ちゃん。お腹空いてるんだろ?
 何か作ってやろうか?」

いい。姉さんが来てから一緒に食べるの。
じゃなきゃ意味無いから

「・・・わかったよ。その代わりさぁ。店番しといてくれる?
 ちょっと空港まで見送りに行きたいからさ」

わかった。

・・・・・・・・

「あの〜オレ行ってもいい?オレ、ホウメイさんに見送られる側の人なんだけど・・・」Janction Point

ひしっ!
だめ、退屈だから。

「・・・・・・」

・・・・

「・・・・・・」

・・・・

「なんか、気まずくない?」

・・・・

「・・・・・・」

・・・・

「・・・・・・」

・・・・ねぇ、励ますってどうすればいいの?

「ん?何で?」

・・・・

「何考えてるのかしんないけどさぁ、少なくとも眉間にしわを寄せてちゃだめだよ」

・・・・寄ってる?

「すっごく。もっと笑って笑って
 辛気も伝染するの。君が辛気くさかったらお姉さんもますます落ち込むよ?」

そうなの?

「そうそう。だからまず君が元気にするの。元気も伝染するから。
 カラ元気も元気のうちってね!」

・・・・うん、そうだね。ありがとう・・・

「お待たせ・・・ってラピス、何してるの?」

あ!姉さん♪

「よかった!君、この子のお姉さん?
 オレ、タカスギ・サブロウタ。
 っと、腰のモノに手をかけなくても大丈夫、何もしやしないよ」
「・・・何の用ですか」
「この子をここに送ってきただけだよ。まぁ、暇つぶしの話し相手ぐらいにはなってあげたけど」
「・・・それはお世話になりました」
「礼はいいよ。
 それより、その顔!あんまり妹さんを心配させるなよ」
「!・・・よけいなお世話です」
「おおっと、まずい。シャトルに乗り遅れちまう
 んじゃ!!」

バイバイ、サブ!

「何かあったの?」

別に・・・何でもないよ♪



8月20日・日々平穏PM


「はい、チキンライスだよ」Janction Point
「ありがとう」
 ラピスは留守番したお礼にホウメイからチキンライスを奢ってもらっていた。
横でルリが穏やかに微笑みながらラピスの様子を見守っていた。

「姉さん、これ美味しい」
「そう」
ラピスは少し食べる手を休めてルリに話しかけた。
「教えてあげる・・・」
「え?」
ラピスは自分の味覚をルリとリンクさせた。ラピスが食事する度に、その味がルリに伝わった。

「どう、食べたがってたチキンライスおいしい?」
「ラピス・・・」
うまく感情を表現できないもどかしさで一杯だが、ラピスは精一杯優しい顔でルリを見つめた。

「ラピス・・・バカね!」
「姉さん・・・痛い」
たまらず、ルリはラピスを抱きしめた。

「いい妹が出来たね」
「はい」
ホウメイの問いかけに素直にルリはうなずいた。
この時だけ、ルリはナデシコにいた頃のルリに戻れたのかもしれない・・・。



ポストスプリクト


というわけで、Princess of White のChapter6 から Chapter12の間のルリサイドの
バックストーリーでした。チョコチョコ出ていたラピスは裏でこんなことをやっていた
っていうストーリーです。

コメディーなハートフルドラマ・・・っていうノリで書いたんですけど
さてはて

改稿分:
 本作品はBZ−Rさん家のイベント「春祭り♪」に投稿させていただいていたのを、
期間終了につきご本人の承諾を得まして修正及び加筆の上、大塚さん家にも投稿させて
頂きました。
内容が本編 Princess of White を補足するものですのでわがままを言いましたが
多重投稿を許して頂いたお二人に感謝いたします。

変更内容は誤字、言葉の取り回し、改行位置などの修正と、サブロウタとラピスの
くだりの追加エピソードです。
(追加エピソードはストーリー的には冗長になるのでカットした部分ですが、
 今回は収録してみました)

再改稿分:
 今回は各所にジャンクションポイントなるリンクを張ってみました。ストーリとしてどことどこがリンクしているかということが明確になったのではないでしょうか?
後、見やすくするということで一応パーペキ版という事で(苦笑)

Special Thanks!!
・みゅとす様