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Debian デベロッパーズリファレンス - 章 10
バグの扱い


10.1 バグを監視する

優れた開発者であるためには、定期的に Debian バグ追跡システム (BTS) で自分のパッケージに関するものをチェックすると良いでしょう。 BTS には、あなたのパッケージに対してオープンされた 全バグ報告が登録されています。

開発者は、bugs.debian.org 宛てに 電子メールを出すことによって BTS を利用することもできます。 その際に利用できるコマンドに関するドキュメントは http://www.debian.org/Bugs/ にあります。 また debian-doc パッケージがインストール済みならば、 ローカルにある /usr/doc/debian/bug-* ファイルをご覧になることもできます。

また、オープンされたバグ報告を定期的に取り込むことも有益です。 また、あなたのパッケージに対してオープンされたバグ報告の概略を 毎週電子メールで受け取りたいならば、 cron ジョブに以下の行を追加してもよいでしょう。

     # 毎週自分のパッケージに対するバグ報告を調べる
     0 17 * * fri   echo "index maint maintainer-address" | mail request@bugs.debian.org

maintainer-address の箇所には、あなたの Debian 公式開発者としての電子メールアドレスを当てはめてください。


10.2 バグを報告する

パッケージ開発者として、他のパッケージのバグを発見することや、 あなたのパッケージに対して報告されてはいるが、その対象パッケージを変更 (reassign) すべきバグ報告を受けることもあるでしょう。 これらのバグは登録しておく必要があります。 こちらをどのように行なうかについての説明は、 バグコントロールメールサーバ入門 にあります。

問題があった場合、そのバグを登録することが奨励されています。 電子メールを受け取るときに用いている通常のユーザアカウントから、 バグを報告してください。 root アカウントからバグを報告してはいけません。

当該パッケージに関する問題のバグが、 まだ報告されていないことを確認してください。 その上で、そのバグを適切なところへ報告してください。 特別に許可を得ている場合、他のパッケージに対しても、 何度も報告を受けているバグをマージし、その修正が完了した際、 そのバグの重要度を `fixed' に設定することもできます。 なお、バグ報告者かそのパッケージの開発者でなければ、 (開発者から権限を付与されていない限り、) そのバグを実際にクローズすることはできません。


10.3 バグ報告に返信する

バグ報告に対する返信は、必ずそのバグの元の報告者と、 バグ報告そのもの (例えば 123@bugs.debian.org) の両者に送付されなければなりません。

バグサーバ経由で control@bugs.debian.org に `close' コマンドを送って バグをクローズすることは決してしないでください。 そうしてしまうと、元の報告者は、そのバグがクローズされた理由に関して 何のフィードバックも得ることができません。


10.4 新規アップロードによってバグをクローズする場合には

あなたのパッケージのバグを修正する場合、 その修正が完了した際にバグをクローズすることは、 パッケージ開発者としての責任です。 しかしながら、修正されたパッケージが Debian アーカイブに収められるまでは、 そのバグをクローズしてはいけません。 そのため、アップロードしたパッケージがアーカイブにインストールされたとの 通知を受けてから、BTS に登録されているバグをクローズしてください。

dpkg-dev の新しいバージョンを利用し、 changelog エントリを適切に設定していれば、 dinstall は自動的にそのバグをクローズします。 そのためには、以下のように debian/changelog ファイルの記述が正しい文法にしたがっていなければなりません。

     acme-cannon (3.1415) unstable; urgency=low
     
       * Frobbed with options (closes: Bug#98339)
       * Added safety to prevent operator dismemberment, closes: bug #98765,
         bug #98713, #98714.
       * Added manpage. closes: #98725.

技術的な観点からいえば、以下の Perl 正規表現が用いられます。

       /closes:\s*(bug)?\#\d+(,\s*(bug)?\#\d+)*/gi

このパッケージの開発者は、他の changelog エントリと区別しやすいことから、 (closes: Bug#XXX) という文法を好んで使っているようです。

バグのクローズを手動という古い流儀で行ないたい場合は、 .changes ファイルを XXX-done@bugs.debian.org 宛てに送れば結構です。 その際こちらの XXX の箇所にはバグ番号を当てはめてください。


10.5 Lintian による報告

パッケージ開発者は、定期的に最新の lintian を `unstable' ディストリビューションから入手し、 自らのパッケージすべてをチェックすべきです。 あるいは、オンライン lintian 報告上で、 自分が開発者として登録している電子メールアドレスの箇所を チェックしてもよいでしょう。 こちらの報告は自動的に更新されますが、 最新の lintian を利用して、 ディストリビューションの最新バージョン (通常は 'unstable') に対する lintian 報告を収録しています。


10.6 一度にたくさんのバグ報告を行なう

たくさんの異なるパッケージ上にある同一の問題に対して、 たくさんのバグ報告を -- つまり 10 以上も -- 行なうことは、勘弁願いたい作業です。 ただ、ともあれ一度にたくさんのバグ報告をしなくて済むように、 できうることは行なってください。 例えば、その問題のチェックが自動化できるものならば、 エラーや警告を発行するように lintian に新たなチェックを付け加えてください。

同じ問題に関する 10 個以上のバグを一度に報告する場合は、 そのバグを報告する前に、その意図するところを添えて debian-devel@lists.debian.org 宛てにメッセージを送ることが推奨されています。 このことによって、他の開発者はそのバグが本当に問題のあるものなのかどうかを 確かめることができます。 さらに、このことは、 複数の開発者が同じバグを同時に報告するという事態も防ぎます。

なお、たくさんのバグを同一のサブジェクトで報告する際には、 バグ報告が配送されるメーリングリストに転送されないよう、 そのバグ報告は maintonly@bugs.debian.org へ送ってください。


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Debian デベロッパーズリファレンス
ver. 2.7.1, 2 Oct, 1999
Adam Di Carlo, current maintainer aph@debian.org
Christian Schwarz schwarz@debian.org
Ian Jackson ijackson@gnu.ai.mit.edu