地球上で暮らしていると水溶液をつくることはちっとも難しいことには思えないことでしょう。ところがこれがなかなか大変なことなのです。
太陽系の、地球の両隣の惑星のことを思い出して下さい。
金星の大気には水が含まれています。ところが大変な高温のためすべて気体の水蒸気になっています。これでは水溶液はできません。金星より少し太陽から遠い地球は、空気中の水蒸気が液体の水になり、この水に当初の大気に含まれていた二酸化炭素がとけこみました。金星は単純に太陽から近くて熱いだけでなく、液体の水が存在しないために二酸化炭素の温室効果が強く働き、大変な高温になっているのです。
火星には過去に液体の水が大量にあったようです。ところが現在はわずかしかありません。天体そのものが小さいため重力が小さく、ほとんどが宇宙空間に逃げていってしまったためと考えられています。また、温度が低いため、残っている水もほとんどが氷になっていると考えられています。
地球にはご存じの通り、大量の水が液体の形で存在します。地球表面全体の平均温度は約15℃。高緯度地方の一部を除いて水は液体の形で存在します。太陽に近すぎても遠すぎてもこうはいきません。この許容範囲はあまり広くはないようです。
また、距離さえ適当ならよいというものでもありません。月は、太陽からの距離は地球と同じです。表面の平均温度も似たようなものです。しかし、日があたらない「夜」の部分では-100℃を下回るような低温、反対に昼は+100℃を上回る高温になります。そもそも月に水はないのですが(*1)、もしあっても、水溶液をつくれる液体の水にはほとんどなりそうにありません。
この違いのおもな原因は大気の有無です(*2)(*3)。気体は岩石より温まりにくく冷えにくいので、地球は昼になってもすぐには熱くならず、また夜も急激には冷えません。それから温度差による対流で高温の地域から低温の地域に熱を運び、温度差を小さくする効果もあります。
さらに、水自身の状態変化に伴う効果もあります。水は熱を吸収して液体から気体に変わります。状態変化に熱が使われるため、状態変化を伴わないときと比べて温度の上昇は少なくなります。逆に気体から液体に変わるときは熱を放出し、温度の低下を少なくします。
(*1)最近、極地方に氷があるようだとの報告がありました。
(*2)他に、自転速度の違いなども原因になっています。
(*3)月に大気がないのと水がないのは同じ原因、すなわち重力が小さいことによります。
したがって、「大気がなくて水がある」という状況はあまり現実的ではありません。
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