太陽系の惑星のうち、肉眼で見える5つは昔から知られていました。 日本式(というか中国式)の「水・金・火・木・土」は陰明五行説、すなわちこの世のすべてのものは木火土金水(もっかどごんすい)の5つの組み合わせでできているという考え方に基づいてつけられた名前です。一方、西洋ではギリシア・ローマの神話の神様の名で呼ばれました。英語で水星はMercury、金星はVenus、火星はMars、木星はJupiter、土星はSuturnと呼ばれています。 |
17世紀に望遠鏡が発明されると、それまで知られていなかった惑星が発見されるようになりました。まず今で言う天王星が発見されました。英語名のUranus(ウラーヌス)は、私はよく知りませんがとっても偉い神様だそうで、それを訳して天王星です。 天王星の観測を続けているうち、天王星の運動が少々おかしいことがわかりました。それは太陽の引力だけではなく、未知の惑星があって、その引力の影響を受けているのに違いないと考えられ、その惑星の位置が計算されました。 算出された位置を探したところ、青い色をした惑星が発見されました。その色から海の神様Neptuneの名が付けられました。それを訳して日本語では海王星です。 ところが、この惑星の運動も少々おかしいということになりました。きっと、更に未知の惑星があるに違いない。多くの天文学者が新惑星の位置を計算し、探しました。その中の一人に、アメリカ人のパーシバル・ローウェル(Percival Lowel)という人がいました。 結局、見つけられないまま彼は世を去りますが、その後彼の弟子が見つけました。20世紀始めのことです。 さて、新しい惑星の名前をどうしよう?できることならローウェル先生の名前を付けたいのだけど、ずっと神様の名前だったのを急に変えるのもナンだし。…と思案したところ、いたのですねえ、実に好都合な名前の神様が。ローマ神話に登場する「プルート(Pluto)」。最初の2文字PとLがローウェルの頭文字と一致しています。地獄のボス(ギリシア神話のハデス)なんだそうで、日本語では冥王星と呼ばれることになりました。 |
さて、このようにして新天体発見がされたことは、天体の運動に関する我々の知識が正しいということをあらわしています(*1)。あやしげな占星術から始まった天文学ですが、いまや怪しくないものになったということです。 数年後の1940年、新しい元素が人工的に作り出されました。あやしげな錬金術から始まった化学ですが、いまや元素の性質を理解し、新しい元素を作り出せるところまで来たということです。この新しい元素は、物理学の輝かしい成果にあやかって「プルトニウム(Plutonium)」と名付けられました。 このプルトニウムがどういう性質のものであるかはご存じの通りです。そんなつもりで命名されたわけではないようですが、はからずも「名は体を表す」ということになってしまいました。
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