生物の進化


 現在、地球上にはたくさんの生物がいます。その多くは(地球の歴史からすると)ごく最近になってあらわれたものです。逆に、昔いた生物で、今ではいなくなってしまったものもたくさんあります。そこで、化石を手がかりに地層の時代が決められたことは以前出てきましたね。今回はその、生物が時代とともに変わってきたことについてです。
遺伝

 昔から「カエルの子はカエル(*1)」なんてぇことを言いまして、生き物はその親に似ることになっています。高校の生物で教わることになっている「遺伝」です。
 簡単に仕組みを説明すると、こういうことです。われわれの体をつくる細胞には有機物や塩分の水溶液が満たされていて、さまざまの化学反応がおきています。具体的には、消化・吸収して血液で運ばれてきたアミノ酸をタンパク質に作り替えるなどです(牛肉ばかり食べてもウシにならないのは、ちゃんと「自分用」のタンパク質に作り替えるからです)。
 どんな化学反応をどのぐらいおこすかは、細胞の核の中にある「遺伝子」が決めています。遺伝子の情報は少しずつ個人差があり、そのせいで「背が高い・低い」「色が白い・黒い」などの個人差ができています。形にあらわれることばかりでなく、たとえば運動能力が優れているとか、そういう性質も遺伝子の情報によって決まるものがあります。生物の形や性質のことを、生物学の用語で「形質」といいます。
 子は、両親から遺伝子を半分ずつ受け継ぎます。遺伝情報には個人差がありますが、ヒトならヒトという同じ種の生物では大きな違いはありません。そこで子は親に似、カエルの親からはカエル、ヒヨコの親(*2)からはヒヨコが生まれます。
 (*1)「オタマジャクシだ」というツッコミは歓迎します。(^^)
 (*2)「ニワトリだ」とか「タマゴの親じゃ」というツッコミも歓迎します。(^-^)


変異と自然選択

 子は、両親から遺伝子を半分ずつ受け継ぎます。どの部分を父親から受け継ぎ、どの部分を母親から受け継ぐかによって、親が同じ兄弟でもまったく同じ形質にはなりません。生物の個体差のことを「変異」といいます。
 そして、環境…生活している場の条件…に、より合った形質をもったものは生き残る可能性が高くなります(*3)。いわば、生き残るべき個体を環境が選んでいることになります。このことを「自然選択(*4)」といいます。生き残った個体は自分に似た形質を持つ子供を残します。
 1年生の生物で、「生物は生活の仕方に合った形質をもっている」ということを勉強しましたが、それは変異と自然選択の積み重ねでできたものだったのです。たとえば、キリンの先祖は今より小さかったことがわかっています。大きな個体は速く走れるため生き残ることが多く、大きな子供を残し…ということが繰り返されて今のように大きくなったと考えられます(*5)。 (*3)偶然の要素もありますから、そうならないこともあります。
 (*4)最近はあまり使わないようですが「自然淘汰(とうた)」という呼び方もあります。
 (*5)足が長くても水が飲めるように、首が長くなったと考えられています。


突然変異

 ところで、前に勉強したように、ほ乳類の先祖はは虫類と考えられています。は虫類とほ乳類は変温・恒温、卵生・胎生など、大きな違いがあります。は虫類の先祖をたどると両生類、さらに魚類にたどり着きますが、やはりそれぞれ大きな違いがあります。これを変異と自然選択で説明するのは無理があります。
 実は、ときどき親が持っていない遺伝情報を子が持つようになることがあります。それを「突然変異」といいます(詳しいことは生物の時間で教わって下さい)。よくある突然変異には、体中の色が抜けてしまう「アルビノ」などがあります。
 は虫類からほ乳類へというような大きな進化は、突然変異によっておきたと考えられます。もちろん、環境に合わない形質を持つものは生き残れません。
 変異や突然変異、自然選択の繰り返し・積み重ねで生物は長い間に姿かたちや生活のしかたを変えてきました。そのことを「進化」といいます。


系統樹

 脊椎動物で一番古くからいるのは魚類です。さらに先祖を遡ると、ウニやヒトデの仲間(棘皮動物)、さらにイソギンチャクやクラゲの仲間(腔腸動物)とたどれるようです。
 1年生の生物で軟体動物(二枚貝)や節足動物(エビ)の解剖をしました。体のしくみがわれわれ脊椎動物とかなり違っていましたね。それはかなり古い時代に別のグループに分かれ、それぞれ独自に進化してきたからなのです。
 いろいろな動物の類縁関係をあらわしたものが図_です。こういう図を「系統樹」といいます(図がごちゃごちゃするので細かいところは一部省いてあります)。


時代区分

 化石を手がかりにして地質時代が区切られるようになったことは前に勉強しました。生物の進化の様子が詳しくわかるようになるにつれ、細かい区分がされるようになりました。また、絶対年代を調べる方法が発達してきました。絶対年代と、「代」より一段細かい区分(「紀」)、主な示準化石を示したものが表_です。
 ちょっと注目してもらいたいのは、ひとつの「代」の長さが古い時代ほど長いことです。古生代以前の「先カンブリア時代」はもっと長くなっています。この原因は、ひとつは古い時代のことはわかりにくいので大雑把になりがちだったこと、もうひとつは、実際に生物の大きな進化がおきるペースが、新しい時代ほど速くなっているらしいことです。(このことについては次回以降見てゆくことにします)


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