Ecriture
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「オーレリア」
ジェラール・ド・ネルヴァル
夢はもうひとつの生である
( 「オーレリア 夢と生」ジェラール・ド・ネルヴァル篠田知和訳 思潮社刊p.11)
現実世界と夢との境界がくずれ、さまざまな試みが様相となる。
ネルヴァルがいきたふたつの生は、
いまなお多くの詩情を語り続ける。
「オーレリア」 AURELIA
19世紀後半のフランスの作家、ネルヴァルの事実上遺稿となった作品。
現実世界への夢の流出、東方へのあこがれと神秘的な予兆がからみあわされた
幻想的な雰囲気をもつ。
<Gerard de NERVAL(1808-1855)>
このひとについて語ろうとするといつも言葉を選んでしまう、そんな印象があります。
他の作品、たとえば「火の娘たち」なんかを読んでもそうなんですけれども、
あまりにも現実の世界から乖離してしまっていて、作者自身はかろうじてそこに
踏みとどまっている。その葛藤が痛々しいほどに伝わってきて、う〜ん、なんて
うなってしまうような作品が多いです。軽々しく言葉にしてはいけないような。
作品群はどれもオリエントへの憧れ、とくにイシス信仰が強くて、そういった
モチーフのみで構成されている、といっても言い過ぎではないでしょうね。
「オーレリア」も実際作者が作品中でのべているように「冥界下り」という神話では
普遍的なイメージの上になりたっています。たえず自分をひきこもうとする夢の世界
(あるいは死)が、ひどく美しい表現であらわされている。
ネルヴァルは詩人でもあって、その作品はどれも究極的には愛と神秘に彩られて
いるのだけれど、その反面実態のない恐怖と常にむかいあってきた影がつよい。
執筆と入院(精神的な病)を繰り返し、最後には病室で自ら死を選んだネルヴァル
の遺稿はまた、不思議なやさしさと希望にあふれています。
<図書>
ネルヴァルは全集も出ていて、いまでも神田なんかの古本屋さんを訪ねれば何冊か/セット
で手にはいります。個人的には詩人の入沢康夫さんがお書きになっているネルヴァル関連の
書籍が気に入っています。そのほか角川からも数年前に「火の娘たち」から抜粋した
作品が文庫版で出版されています。
「オーレリア 夢と生」ジェラール・ド・ネルヴァル著 篠田知和訳 思潮社刊
1986年初版発行 1298-500034-3016
Cf:ロマン派
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