音楽家は見返りをもとめず、
事は、ある意味では見返りに似ておりますが、
愛に近付くのです。
(グスタフ・レオンハルト:1980年エラスムス賞受賞スピーチより)
レオンハルトのこころはつねに遠い空間でわたしたちを待っている。 精緻で霊妙な鍵盤のタッチ、澄んだ感覚の音楽への奉仕が、 すべて愛の名のもとに集約される美学。
2度、レオンハルトの演奏を聴きに会場にあしをはこんだことがあります。 1度目はチェンバロ、2度目はパイプオルガンで、どちらも都内の名のしれた コンサートホールでした。近年のレオンハルトは彼のライフワークともいえる バッハからさらにバロック時代の古楽へとその領域をひろげ、彼独特の美学、 音楽への奉仕の姿勢をより深めていったそのちょうどそのときでもあり、 またわたしが訪ねた2度目の公演は、おそらく彼の最後の日本訪問であろうと されていました。夜が深まりはじめたその時間をレオンハルトの音楽で満たされていた あの日のことはいまでも、静かな感銘をもっておもいだされます。 レオンハルトはいいます。「芸術家が特別な人間であるのは特定の瞬間だけだ」と。 人工のあかりより揺れるろうそくのひかりを好み、雲間からのぞく月光が 水面に映える瞬間を愛するかれのこころは、一演奏家としての領域をはるかに超えて 多くのかがやいた瞬間をわたしたちに示してくれています。 <おすすめディスク> レオンハルトのものは近年全集が発売されているようですが、ここではわたしの好きな 一枚をあげておきます。 「J.S.BACH Englische Suiten BWV 806-811 」 EMI CDS7 49000 8 (J.S.バッハ「イギリス組曲」) <グスタフ・レオンハルト> 「現代のバッハ」といわれるチェンバリストでありまたオルガニストである演奏家。 活動の拠点をアムステルダムにおき、世界各地で18世紀バロック音楽の演奏を 続ける。高齢のため日本公演は1996年で最後とされる。*
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1996年で最期とされていたレオンハルトの日本公演が、1999年10月東京で開催されるという情報をいただきました。
東京:
10月19日(火) 19:00 "チエンバロ・リサイタル"カザルスホール
10月20日(水) 19:00 "チェンバロ・リサイタル" 東京文化会館小ホール
10月21日 (木) 19:00 "オルガン・リサイタル" カザルス・ホール
札幌 10月16日 (土)札幌コンサートホール小ホール
大阪 10月22日 (金)ザ・シンフォニーホール
詳細はアレグロミュージック( 03-3403-5871)まで。
わたしはもちろんチケットをGet ! いまからすごく楽しみです。(^^)
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Cf:ワンダ・ランドフスカ ヒルデガルド・フォン・ビンゲン