青春

 今どきの高校生が「ぼくたちの青春は……」などと言っているのを聞くと、「なにを生意気な」という気がする。私が高校生の頃は、青春というものは大学に入らなければ(あるいは、高校を卒業しなければ)始まらないものだと固く信じていた。だから、大学に入ったとき、さあ、いよいよ青春が始まるのだと思った。
 しかし、いつまでたってもそれらしい気配が起きてこないのが不思議だった。
 私は中学一年のときから柔道に打ち込んでいたので、大学でも柔道部に所属した。ひたすら汗くさい生活を送っていたので、「青春」の方で逃げ出したのだろう。
 秋の大学祭で柔道部は模擬店を出し、私はおでんの係りになって、早起きして築地に買い出しに行った。母が私を起こしてくれたのだが、そのとき「和生、起きなさい。きのうケネディ大統領が殺されたんだって」と言ったことをよく覚えている。その日の明け方に衛星放送が始まって、しかもその第一声がこのニュースだったのである。しかし、私にとっては、おでんを上手に煮ることの方がはるかに大問題だった。
 翌年は東京オリンピックの年だった。正式種目になったばかりの柔道が無差別級で金メダルを取り損なってくやしい思いをした。
 この年はシェイクスピア生誕四〇〇年の年で、私もその記念に大学でおこなった原語によるシェイクスピア上演に参加した。それがきっかけとなってシェイクスピアを読むようになって、それが今日につながっている。
 今にして思えば、やっぱりあれが私の青春だったという気がする。

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