国民栄誉賞

 総理大臣賞の一つに国民栄誉賞というものがある。その制度ができた年に最初の受賞者として表彰されたのがジャイアンツの王貞治選手で、ホームラン数で世界記録を達成した彼を表彰するために当時の総理大臣の発案で作られた制度だという。その後も長嶋茂雄や美空ひばりなど、プロ・スポーツの選手や芸能界の関係者が多いので、もともとそういう人たちのために作られたものなのだろう。
 それについて私が疑問に思うのは、そういう人たちを国として表彰する意義は何か、ということである。彼らはプロ・スポーツや芸能の世界で活躍し、そのトップに躍り出た人たちであって、その才能や努力は当然高く評価されなければならない。しかし同時に彼らはいわば賞金獲得レースを勝ち抜いた存在であって、その才能・努力に見合った、あるいはそれを遥かに超えた利益を得ている(国民栄誉賞では金銭・物品などの副賞はほとんどないようだが、それはこの際関係ない)。受賞理由として「国民に勇気と希望を与えた」とあることが多いようだが、それはあまりにも個人差の大きいことで、一般論にはなりえない。人々がどういうスポーツや音楽に熱中するかは個人の好みの問題であって、それは政治家が関与することではないのではないか。
 アフガニスタンで身を捨てて偉大な働きをした中村哲医師のように、収入に恵まれないまま生涯を人々の幸福のために費やした人がいる。そういう人に国民栄誉賞なるものが贈られるのならよく分るのである。
 国民の栄誉とは何か、ということについて、もう少し議論があってもよいように思う。

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