ワープロ機能

 私は四〇代の終り頃にパソコンを買った。パソコンが急速に社会に浸透していた時期で、私ですらそれを買ったということである。
 共立で教職員のためのパソコン講習会があって、それに出てパソコンを買う気になった。
 買ってみて、やはりワープロ機能が一番有難かった。キーの並びは英文タイプライターと同じなので、文字を打つことには始めから抵抗がなかった。
 ワープロ専用機はすでに社会に出回っていたが、私は使ったことがなくて、従ってその利用価値もよく分らなくて、それを買おうとは思わなかった。
 私は紙に文字を書く時の筆圧が異常に強いので、書いているとすぐに指が痛み始める。そのうえ書いているときの姿勢が前屈みになるので、しばらくすると首や背中が痛くなる。文章を書くことは常に重労働だった。
 そればかりではない。私は自分が書いている文章をやたら訂正したくなるタチである。紙に書いているとすぐに書き直したくなる。その部分を線で消して、そのすぐ脇に書いたり、そこから線を引いて欄外に書いたりする。しかも、その部分もすぐに書き直したくなる。それを繰り返しているうちに、紙面はほとんど真っ黒状態になって、自分でも判読困難になる。推敲を重ねると言うと聞こえはいいが、私の場合はそんなきれいごとで済む話ではなかった。
 パソコンで書いていると、首や背中を真っ直ぐにしたままでいられるのもよかったが、何よりも訂正が楽なのが救いだった。
 ある作家がワープロを批判して、訂正したプロセスが後まで残ることが重要なのだと言っていたが、私には、何が重要なんだという気しか起こらなかった。
 パソコンを使いながら、これなら世間で「もの書き」と呼ばれる職業につくのも悪くないなと思った。無邪気なものだ。

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