緩い人生

 私は身を締め付けるような窮屈な衣服を好まない。身に纏っているすべてがゆるっとしているのがいい。
 女性はもとより、男性でも体の線を際立たせるような服を着ている人がいる。肌に密着したシャツを着てピチピチの薄手のズボンをはいて歩いている青年を見ると、私は人力車夫が思い出されてならない。よほど体型に自信があるのだろうが、しかし、自信があるのと見せびらかしたいと思うのとは別の話である――とは、自信がない人間の僻みに過ぎないことはよく分っている。
 私が理想とするのは、絵で見る囚人服とか、これも絵で見るペンキ屋の仕事着とかのように、上と下とが繋がっていて、全体がだぶっとしている印象の服である。しかし、囚人にもペンキ屋にもなり損なったので、どちらも着る機会に恵まれなかった。
 なによりもベルトで腹を締めるのがイヤである。冬はサスペンダーを使うのでまだ助かるが、夏はそれができない。半袖開襟シャツの上にサスペンダーといういでたちで外出するわけにいかない。
 このことと関わりがあるかどうか分らないが、私は何によらず締め付けられることが嫌いである。規則だとか建て前だとかに拘束されたくない。私にはゆるっとした人生が合っているようだ。
 これが教職にある人間の書く文章か?

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