私は戦時中に渋谷区幡ヶ谷で生まれた。その後、我が家は必要に迫られてあちこちに転居して、一年後には福岡県の母の実家にいた。
そこにいる間に私は病気になった。当時の医療は食事制限に傾いていたようで、医師からあれを食べてはだめ、これを食べてはだめと言われているあいだに、私はみるみる衰えていった。
そして、医師から、「この子はもう助からない」と宣告されるに至った。
その時、私の祖父が、「どうせ死ぬんだったら、腹を空かして死なせたら可哀そうだ。何でも食べさせてやれ」と言うので、食糧事情の乏しい中で、私に何でも食べさせた。
そうしたら、治ってしまった。
元気になった私を見て、医師はさぞ驚いたことだろう。
幼いときにこの話を聞かされて以来、私は、自分の命とはいったい何なのだろうと考え続けてきた。あの時死んでいれば、私は始めから存在しなかったのと同じになるのか。
あれから途方もない年月が経過した。なんと、私はまだ生きている。
せっかく与えられた命なのだから、せめて世のため人のためになるような人生を生きたかというと、そういうことは全くない。ただその時々の流れに身を任せて生きてきたにすぎない。
私とは、いったい何なのか。