一段落

 もうかなり前から、一段落(いちだんらく)を「ひとだんらく」と読む人がいることが気になってしかたなかった。「辞書を引けよ」と言いたいのをいつもこらえていた。
 社会人入試で入ってきた四〇代の学生が、「最近の若い人はどうして一段落をひとだんらくと読むのでしょうね」と不思議がっていたことに、私は励ましと慰めを見出した。
 ところが最近になって、それが減るどころか、逆に増えてきて、むしろそれが当たり前になりつつある。テレビでアナウンサーが「ひと段落」と言っているのを聞いて愕然としたが、先日、NHKテレビで、そこに映っている人がちゃんと「いち段落」と言っているのに、画面下に流れたテロップに「ひと段落」とあることに衝撃を受けた。NHKの方針はどうなっているのか。
 そのうち辞書にも「いちだんらく。但し、ひとだんらくという読み方もある」と出るようになるのではないか。そればかりか、「ひとだんらく。但し、いちだんらくという読み方もある」と出るようになるのではないか。
 言葉は時代の移り変わりと共に変化するものだ、と言ってしまえばそれまでだが。
 ああ、この文章を書いているうちに、どっちでもよくなってきた。

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