アバン


火星
そこは全ての始まりにして、全ての終わる場所
怒りも
悔しさも
喜びも
悲しみも

そして出会いと別れも・・・

だから私はその大地に刻みつけようと思う
私の「生きた証」を

たとえ火星の砂塵に掻き消される定めだとしても・・・



火星極冠外周


ボソンアウトしてきた7体の機体、夜天光と6機の六連達だった。
火星の氷原帯を低空飛行で進む彼ら。
『隊長、よろしいのですか?』
「ボソンジャンプは両刃の剣だ。
 アマテラスが沈んだ時、我々の勝ちは五分と五分
 敵側にA級ジャンパーがいたという時点で・・・」

北辰は前方を見上げる。そこには彼が焦がれていたものが現れるからだ。

「さて、終幕の前の座興だ。楽しもう」
『どういうことですか・・・あ!

ボース粒子増大・・・

彼らの眼前にボソンのキラメキとともに何者かがジャンプアウトしてきた。

ラピスの駆る戦艦ユーチャリス、そしてホシノ・ルリが駆るホワイトサレナが現われたのだ。

ユーチャリスはゆっくりと機体を旋回させるさまは、まるで彼らに挨拶しているようだった。そのユーチャリスの機首はホワイトサレナが静かにたたずんでいた。

ホワイトサレナのコックピットに座す白百合ことホシノ・ルリはまるで死に装束かのような真っ白なパイロットスーツを着て静かに眼前の機動兵器達を一瞥した。
そしてわずかにサレナのハンドカノンを彼らに向ける。
『始めよう』という合図なのだ。

それに呼応して夜天光達もバーニアを吹かして臨戦態勢に入る。

「決着をつけよう!」
北辰はそう宣言した。
それが開始の合図かのように彼らは大空へ飛びたった!
幾度となく繰り返された終わらぬ戦いの決着をつける為に・・・



Nadesico Princess of White(Auther's Remix ver.)

Last Chapter 「復讐人」と「お帰りなさい」



火星極冠外周


急上昇する最中、ホワイトサレナはまず夜天光の周りに付き従う六連に対して旋回しながら砲撃を行なった。あわててかわす六連達。

その隙にホワイトサレナは夜天光に対して集中砲火を行なった。
だがそれは正確無比にコックピットを狙ったがゆえに、夜天光のコックピット周りに搭載されているピンポイントのディストーションフィールドに阻まれた。

攻撃を防いだ夜天光は牽制にミサイルを数発打ちだす。
サレナの足留めをし、六連達を引き込む為だ。
一発目と二発目を傀儡舞でかわし、三発目をかろうじて防いだホワイトサレナはただ一心に夜天光を目指した。
それはまるで恋い焦がれた恋人でも追いかけるかのように・・・

ルリの瞳にはあの日、彼女を救いにきたアキトを楽しむように打ち抜いた北辰の姿しか映されていなかった・・・。



ユーチャリス


激しい感情の揺さぶりで変動するルリの五感を、ラピスは必死に補正していた。
ひょっとすればルリの五感のうち、痛覚と嗅覚、味覚は消失していたかもしれない。
その代わり視覚、聴覚あるいはIFSのフィードバックレベルが研ぎ澄まされたように上昇していた。
まるで全てを投げ捨ててでも、命すら燃やしつくしても・・・
ラピスにはそれが恐ろしかった。

『あなたは誰?』
そこにラピスは誰かから自我接触を受けた。
『私はテンカワ・ユリカ。これは友達のハーリー君とオモイカネ。
 あなたは・・・だれ?』

「わたしはラピス」
『ラピス?』
「ラピス・ラズリ
 ネルガルの研究所で生まれた。
 ルリの目
 ルリの耳
 ルリの手
 ルリの足
 ルリの剣
 ルリの盾
 ルリの・・・
 ルリの・・・
 ルリの・・・」

ラピスはすぐに悟った。彼女がかつてルリの「大切な人達」だったのを。
だから彼女はユリカに見せたのだ。
彼女の記憶、彼女の想い
何ゆえルリが復讐に駆立てられていたのかを・・・



惨劇の回想


ネルガルの研究所、それは時代がかった洋館でのこと。
血塗られた惨劇

次々と殺される研究所員達
血しぶきを撒きちらしながら狂気に笑う男
まるで宝物を探すかのようにその男は彼女の前に歩み寄って来た。

ガラスにこびりつく誰かの血痕、そして断末魔
そのすき間からガラスを割ろうと顔を覗かせる男「北辰」!
彼の瞳に写る彼女・・・ラピスの恐怖に引きつった顔を彼はこよなく愛した。

その歪んだ笑顔が存在するかぎり妖精達が悪夢から解き放たれることはなかったのだ・・・



火星極冠外周


今度はホワイトサレナが六連達に後ろを取られていた。
牽制の為にハンドカノンを一斉掃射し、引き離すようにホワイトサレナは錐揉みで急降下していった。そして彼らも一気に勝負を決めようと追いすがるように彼女を追尾した。

振り切れず間合いをつめる事を許してしまったサレナは六連に傀儡舞を仕掛けるタイミングを与えてしまった。

一撃目、二撃目と投擲された錫杖を傀儡舞でかわすホワイトサレナだが、三撃目にウイングをかすめてしまった。一瞬速度が落ちるが隙を見せずにハンドカノンを連射する。
六連を追い払うのに成功したが、そこは彼らの必勝パターン、夜天光が六連の影から躍り出て錫杖を振りかざした。

慌ててホワイトサレナはハンドカノンのブレード部分にディストーションフィールドを収束させてソードモードで夜天光の錫杖に対抗した。
最初の一撃は間に合わず、ディストーションフィールドで何とか防ぎ、二撃目以降はブレードで受けた。

ガツン!
ガツン!
ガツン!

かわすだけで精一杯のホワイトサレナ。
さすがに北辰とルリの力の差は歴然としていたのか?
『ハハハ!
 どうだ!
 怖かろう、悔しかろう!』

北辰は薄気味悪く笑いながら、対面する相手の表情を想像して悦に入っていた。
「・・・!」
北辰の言い様に歯ぎしりするルリ。彼の想像は多分当たっているだろう
『たとえ、白き鎧を纏おうとも、
 纏ったつもりで強くなったと思い込もうとも、
 心の弱さまでは守れないのだよ!!』

嘲る北辰、その言葉に激情に駆られるルリ

その冷笑で、その戯れ言で、私の大切な人を嬲っていく北辰!

屋台を引いていた頃、チャルメラを吹き疲れた私に特製ラーメンを作って労ってくれたアキトさんの暖かい微笑みを!

闇の王子様となって囚われの妖精を助けに来てくれたアキトさんの凍った微笑みを!

遺跡に融合されて物言わぬ存在にされてしまったアキトさんの憂いを!

絶対に取り戻す!!!

ルリのその思いに呼応するかのようにホワイトサレナのウイングはその勢いを増し、ディストーションフィールドが軋むのも構わずに夜天光にブレードを押しつけた。
今度はそれを受けている夜天光の錫杖が軋む!!

たまらず、夜天光は蹴りをいれて間合いを一旦外した。
すかさずサレナはハンドカノンを連射して夜天光を狙撃した。
しかし、サレナのウインドウは右舷から追いすがってくる六連を写した。



火星極冠外周


『隊長!!』
ガガガ!!
『何!!』
六連達がサレナに襲いかかろうとしたその時、あらぬ方向から砲撃を受けた。
驚愕をもってその方向を振り返る六人衆達。
彼らの見たものは4機のカラフルな機動兵器達だった。

「騎兵隊参上!!」
そう、リョーコ、ヒカル、イズミ、サブロウタらの駆るエステバリス隊だった。

「義父の仇討ち邪魔する奴は馬に蹴られて三途の河だ!」
「馬その1ヒヒーン!」
「その2のヒヒーン!!」
リョーコの掛声に絶妙のツッコミを入れるヒカルとイズミ。彼女たちのチームワーク(?)は健在だった。
『いや〜アキトさんまだ死んでないよ』とのユキナのツッコミがあったとかなかったとか。

「おいおい、俺も馬かよ〜〜」
「そうそう馬だけに」
「リョーコはサブを尻に敷き」
「お、やるねぇ」
「バカヤロ!何が尻だ!!」
ヒカルとイズミのギャグにその気になるサブロウタ。それを過剰反応して激怒するリョーコ。

「おっと!」
サブロウタはちょっとボールを避ける様な口調で六連からの攻撃をかわした。
掛け合い漫才をしながら彼らはしっかり戦闘していたのだ。

レールカノンを広域に掃射しながら彼はまだ無駄口をたたいていた。
「まぁ、尻に敷くか膝枕かはその後の展開を楽しむとして
 ねぇ、中尉!!
「ば、バカ!!」
「「おお、熱い熱い!!」」
「く!てめえら、これが終わったら覚えてやがれ!」
そんな漫才をしながらも、彼らは六人衆を圧倒していた。
一番のネック、夜天光はホワイトサレナが相手をしてくれている。
十分に傀儡舞対策をして来た彼らにとって夜天光のいない六人衆など大した脅威ではなかったのだ。

『気をつけろ!
 ヘラヘラしているが奴らは強い!』
そういった傍から六連の一機が被弾した。
『む、無念!!』

「ルリ、負けるなよ・・・」
リョーコは地表に対峙していた夜天光とホワイトサレナを見やって祈るように呟いた・・・。



地表・対峙する二人


ホワイトサレナと夜天光は火星の砂塵に身をさらしながら、互いに次の一手を待っていた。
どちらもそろそろ活動限界だ。おそらく次の攻撃が最後だろう。

上空ではまた一機の六連が撃墜されたようだが、今の彼らには眼中になかった。
互いに相手のことしかその瞳に写ってなかったからだ。

『よくぞ、ここまで辿り着いたものだ。
 人の執念、見せてもらったぞ・・・』

最初に対戦した時には橋にも棒にもかからなかったルリ。
だが、今こうして北辰と一対一で勝負するに足る力を身につけた。たとえそれが自らを破滅に導くモノの力を借りたとしても

邪魔になったのかヘルメットを外すルリ。
「北辰、勝負です」
そう宣言するとホワイトサレナは両手のハンドカノン兼ブレードをまるで刀の鞘に戻すかの如く腰に回した。

『抜刀か!笑止!!』
この自分に対して抜刀術で対峙しようとするルリを、北辰は嘲る。
そして、その思い上がりを正すべく夜天光は錫杖を槍の様に構えた。こちらは突きの体勢だ。

一筋の砂塵、それが合図となった。

神速で間合いをつめる二つの機動兵器!!

先に仕掛けたのはホワイトサレナだった。
繰り出された神速の抜刀が夜天光を襲う。だが、それを夜天光は錫杖でいなした。
右手のブレードをいなされたサレナは構わず左手のブレードで夜天光の胴体を凪にかかった。
木蓮式抜刀術二刀流「旋風」!!

しかし、北辰は「旋風」が来るのは先刻承知だった。
錫杖の手首を返し、そのまま左手のブレードもいなしにかかった。恐ろしい事に普通なら避けきれないその斬撃を北辰は右手に持った錫杖だけで防いだのだ!!

そして両手のブレードをいなされて体が流れたホワイトサレナに左手のナックルが襲う!!
『終わりだ!妖精!!』
サレナの返し技はない! 北辰はそう確信した。
しかし、ルリにとってそれすらもフェイクだった。

バン!!

サレナのコクピットが吹き飛ぶ。夜天光のナックルが入る直前に!
自ら吹き飛ばしたのだ!
『何!!』

北辰が爆砕されるハッチに目を奪われていたその瞬間、それを隠れ蓑にしたルリはコックピットからジャンプし、夜天光のはるか頭上に飛び上がっていたのだ。その手には既に愛用のサーベルが握られていた。

「北辰、覚悟!!」
ルリのサーベルがディストーションフィールドを発生させて唸った。
狙うは夜天光の首筋!
もっとも装甲の薄い部分、そこを装甲ごと中にいる北辰を貫くつもりなのだ!
彼女の剣技とサーベルならそれが可能だった。

「ほう!おもしろい!
 だが、甘いのだよ!!」

同じく太刀を取り出して同様に迎え撃つ北辰。
彼もまた装甲を貫いてルリを打ち落とす事が可能だった。

斬!!!

一瞬、北辰の太刀のほうが疾くルリをめがけて襲いかかった。
狙いは正確無比、外すはずがなかった。

ガッッッゥゥゥ!!!

ルリは夜天光の首筋の装甲を突き破って襲いかかってくる白刃から顔を庇うかのように左手をかざした。
『そんなもので我が抜刀を防げるものか!!』
その瞬間、北辰は勝利を確信した。
だが、彼は知らなかったのだ。ルリのその忌まわしき体のことを・・・

パキン!!

彼の太刀は真っ二つに折れた。
ルリの左手は既に「遺跡の組織」に侵されていた。その硬さは鋼をも凌駕した。

ガッッッゥゥゥ!!!

『・・・見事だ・・・』
北辰は肺に溢れかえる己の血を感じながら、最後の瞬間に自分のアイした妖精が自分のことだけを見つめている事に満足した・・・

「はぁはぁはぁ・・・・・」
ルリはオーバーヒートしたサーベルをようやく手放し、ただ天を仰ぎ見た。
今ほど涙を流せない事を惜しく思ったことはなかった・・・。



火星極冠遺跡イワト





眠れる王子様が目を覚ます時間・・・




アキトはまるで夕べの徹夜が尾を引いたかのような面持ちで静かに瞳を開けた。
「・・・あれ?みんな・・・」
「わーい!アキトお帰りなさい!!」
「だぁぁぁぁ!!ユリカ、抱きつくな!!」
あまりにうれしかったのか、アキトが病み上がりなのに構わず抱きつくユリカ。
そんなアキトから出て来た言葉はかつてのナデシコ時代のアキトそのままだった。
遺跡からの切り離し作業をしていたイネスはもちろん、ハーリーやジュン、ミナトにユキナ、ウリバタケ、ゴートらは一様に嬉しいような、呆れたようにその光景を眺めた。

「良かった。いつものアキト君だ〜〜」
ほっとした様子で呟くミナト。この様子なら体の調子は問題ないだろう。

「あれ・・・なんか嫌な夢を見ていたような
 確か夜天光と決着をつけようとして・・・」
記憶が錯綜するアキト。それが遺跡に接合されていた時に見せられていた「プリンス オブ ダークネス」という悪夢なのか、それとももう一つの可能性の世界のアキトの記憶なのかあやふやだった。
そうだ、ルリちゃん!助けなきゃ!
 ルリちゃんは?」
慌てて振り返る。だがそこにはルリの姿はなかった。
バツの悪そうな顔の元ナデシコクルーの顔があるだけだった。



火星極冠遺跡


「さようなら〜」
ヒカルの別れの挨拶に呼応するかのようにボソンのキラメキに包まれるユーチャリス。
「って、本当に行かせてよかったの?」
「行くってもんを止められないでしょ」
サバサバとした口調で言うサブロウタ。
彼には何となくアキトに会わずに立ち去るルリの気持ちがわかっていたのかもしれない。
そりゃ、愛する人が別の女性の所へ帰る所なんて誰も見たくもないだろう。

いいわきゃないだろ!
 これからどうすんだよ・・・あいつは・・・」
それでもなおかつリョーコは言う。同じく昔アキトが好きで思いを伝えられずにその恋が終わった自分を重ねていたのだ。

「帰って来ますよ」
ユリカの発言にみんなが驚いたように振り返った。
「帰って来なければ連れ戻すまでです!」
まっすぐな瞳でユーチャリスが飛び去るのを見届けたユリカがそう答えた。
「艦長?」
ミナトが不思議そうに聞き返す。

「だってあの子は・・・・・・」
振り返ったユリカはきっぱりと言った。
当たり前のその言葉を・・・



ユーチャリス


「姉さん、終わったね」
「ええ」
「会わなくて良かったの?アキトに・・・」
「ユリカさんがいるから大丈夫ですよ。」
ナビゲータシートに深く腰かけながら、ルリは傍らでしがみついているラピスの頭を撫でであげた。
「これから月ドックに戻ります。後のことはエリナさんに頼みなさい」
「?・・・なにを?」
その質問に答えずルリはただ淡々と言葉だけを紡いだ。

「これが私があなたにしてあげられる最後の事です。
 ラピス、あなたに悲しみという感情を教える事。
 これを知ればあなたは『人形』から『人間』になれるわ。
 かつての私の様にアキトさんを失ってから、
 初めて自分で何かを求めるという感情を知った様に・・・」
ルリはまるで重そうに瞳を閉じた。

「姉さん、私、姉さんが何を言ってるかわからないよ!」
「いつかわかるわ。
 その時、それはあなたの心にとってかけがえのないものになる
 誰にも譲れないモノになる。」
「わかんないよ。そんな私を置いてくような事言わないでよ」
「ごめんね、ラピス。眠いのよ。
 お願い寝かせて・・・」
だんだん、ルリの呼吸が弱くなる。
「やだよ!!姉さん・・・目を覚まして・・・」






ああ、何て心地いいの・・・
やっとゆっくり眠れる。
もう、悪夢にうなされることはない、穏やかな眠り・・・
アキトさんに告白できなかったけど、まぁユリカさんかエリナさんなら、まぁいいか・・・

『姉・・・さん・・・・きて・・おき・・よ・・・』



ごめんね、ラピス。もう聞こえないよ。
でも大丈夫、あなたは私の妹だもの、きっと乗り越えられる。
だから・・・





『・・・・・・・ん・・・・・・よ!・・・』

よろこんでよ、ラピス
私はやっと『人間』になれたのだから・・・














暗転

















ここはどこ?


『・・・っちょう!・・・かん・・・う!・』

もう、うるさいですねぇ、耳元で・・・

『艦長!・・・・起きて下さいよ!艦長!』

そんなに大声でしゃべらなくても聞こえますよ・・・

「艦長!!」

「うるさいですね、ラピス!
 寝かせて下さいとお願いしたはずですよ!!」

「ラピスって誰です?」

その声を不審に思って起き上がって、辺りを見回す。
ここはどこ?私は誰?

先程から呼びかけていた人物は怪訝そうな顔をして私を見ていた。

「あれ?ここは?
 ユーチャリスじゃないの?」
「何を言ってるんですか、艦長
 ここはナデシコCですよ。
 ユーチャリスでしたっけ?あの謎の戦艦はジャンプして跳んでっちゃったの見たでしょう?」

「え?え?え?」
「寝ぼけて夢でも見てたんですか?
 ナデシコC艦長 ホシノ・ルリ少佐!
「ハーリー君?・・・って何で私、あなたの名前を知ってるの?」
先程から呼びかけていた人物・・・マキビ・ハリ少尉はやれやれと言った口調で溜め息をついた。

「いくら敵システムの掌握に疲れたからといって、寝ぼけたあげくに僕の事忘れますか?
 だから僕がオペレーション代わりましょうかって言ったのに、大丈夫って言い張るから・・・」
「・・・・済みません、もう大丈夫です。
 ありがとう。ハーリー君」

訝しげにしながらも、落ち着きを取り戻したルリを見て持ち場に戻るハーリー。
でもルリの頭の中は混乱していた。

え?私はホシノ・ルリ、ユーチャリスの艦長でホワイトサレナのパイロットで
でも、ここはナデシコCで、彼はマキビ・ハリ君で私の部下で
サブロウタさんって副長がいて、みんなでユリカさんを遺跡から救い出して・・・



・・・え?


もしかして、今までホワイトサレナで戦っていたと思っていたのは


・・・・・・・ですか?


ひょっとしてこれは、あのSSの最終兵器、誰もが蔑むあの夢オチってやつですか!
この天才美少女艦長ホシノ・ルリともあろうものが夢オチですか!!


それにしても何てナルシズムな夢・・・赤面モノだわ・・・


「違うよ、ルリちゃん。あれは夢なんかじゃないの」
「え?」

私は振り返った。
そしてその人を見た瞬間、私は全てを悟ったのだ。
あれが夢なんかじゃない事を。
車椅子に乗ったユリカさんがチャルメラとディスクを手にしていたからだ。

「これありがとう。役に立ったわ、返すね」
「ユリカさん!!」
「お帰りなさい、ルリちゃん」
たまらず私はユリカさんに抱きついた。
ユリカさんも私を抱きしめてくれた。




そう、私はやっと帰って来たのだ。
大切な人の元へ・・・




See you Chapter Zero ...



ポストスプリクト


って、何のこっちゃとお思いの方、
取り敢えず、黙ってChapter Zero をご覧ください。

既にわかっちゃったよ!という方、
想像が当たってるかどうかChapter Zero で確かめて下さい。

詳しい後書きはそちらで

では!