大阪新年怪・青天霹靂篇

TOP / 1 / 2 / 3

 1月21日朝6時。清々しい目覚めである。そう、毎度のことながら健全な悪は健全な生活から始まるのである。そしてエノケンの時代劇(有料)を見る。ほんのちょっとのつもりがほとんどを見てしまった。うーむ、1000円ほど使ってしまった。しかし覚えているのは踊るチャイナドレスぐらいだったり。シャワーを浴びて「ライディーン」を見たりして過ごす。9時をまわったところでさすがに起きているだろうとYYコンビに電話を入れる。朝食の件で話が噛み合わない事にいらだちながらも、10時にロビーで待ち合わせてアメ村に行くことを決める。

 ロビーで来栖さんと話していると、ほどなくしてカイエさんがやってくる。後の二人は・・・不安ですな。女性の支度は時間がかかるといわれるが、はて、この場合は説得力がない。待つことしばししばし、エレベーターから降りた二人だが、荷物を投げ棄てて戻るゆきさん。忘れ物ですかとたずねると、鍵を部屋に忘れたという。自動ロックだから入れない・・・と言いかけると、その旨を伝えるフロントのおねいさんの声がロビーに響き渡る。この二人は捨てて3人で行きましょうかと話が決まりかけたのは言うまでもない。まったくこの人たちゃぁー!

 道々ひたすら言いわけと罪のなすり合いをする二人だが、どっちもどっちである。五十歩百歩、どんぐりの背比べ、目くそ鼻くそを笑うである。アメ村への案内を以前長期滞在していたという柚井さんにお任せしようとするが、だめです、覚えていませんとすげなく断られる。むむむ、地図を見るかぎりではさほどわかりにくいところとは思えないが。とにかく自分の勘を信じて地下鉄に乗りこみ、心斎橋をめざす。車中柚井さんに、私の地図は普通のなのでセバスチャンのを見せなさいといわれた。ええ?私めの地図の方がいたって普通の物ですが、もしや百年ほど前の古地図でもお持ちですかっ!

 このままでは危険きわまりないので、心斎橋駅のコーヒーラウンジで本日の傾向と対策を練る。黙り込んで考え事をしていると、カイエさんに怖いといわれた。貴女のその格好ではとても人のことは言えないと思いますが。

 さて、お腹も空いてきたのでアメ村へ向かう。しかし、心斎橋駅からの出口は間違っていなかったが、階段を上る時に方向を見失ったらしい。この階段は見覚えがあるという柚井さんのお言葉に少しほっとする。が、駅を出てしばらく歩いても目印が見つからないので、逆に来てしまったことに気づく。だめじゃん、セバスチャン。踵を返してきた道を戻る。セバスチャンでも迷うのですねと言われるが、あたり前ですっ。私めはこの界隈をまったく存じませんゆえ。

 途中「風呂小路」なる石柱を見つけ、どうしても気になった私はそちらに入ってみる。が、何もなかった。何もないのに周辺案内の看板があり、しかも現在地が示されていないという不可解さ。通るべきか迷うが、また道に迷うと困るのでやめる。風呂小路から出る時に「カイエさんはどこ行ったの?」とたずねる者一人。貴女の後ろにいますがね・・・。いたたまれなくなった私は風呂小路に戻って涙を流す。

 気を取り直して歩をすすめ、目印のお米博物館を見つける。実はおよねさんという高名な女性がいて、その資料館なのかな?と思っていたことは情けないので隠しておく。ここまで来ればすんなりとアメ村三角公園に到着。アメ村は遊ぶというよりもお買い物をするところといった印象。買いもしないのにしばし店先をにぎわせた後、甲賀流たこ焼きへ。私は最初に買ったためか、大量に爪楊枝をいただく。けっして店員が私の身なりに脅えたわけではない。さすがにプロが焼いただけのことはあり、自分で焼いて生地をだいなしにした昨日のたこ焼きとは大違いである。

 特に目的地もないのでガイドブックを開いてみると、ノスタルジア・ミュージアムがあることを知る。これは行かねば!とカイエさんに提案すると、私の後方を指差す。何のことはない、甲賀流たこ焼きのすぐそばにあった。さすがカイエさん、目のつけ所がちがう。というわけでささっとミュージアムへ。

 巨大な鉄人28号に感動し、キャプテンウルトラの子供靴に涙する。元来おもちゃは大好きなので、隅から隅まで見てまわる。思いのほか新しいおもちゃも多いが、棚の下や片隅に妙なものが置いてあったり。チャッキー人形にちょっと心が動いたが、怖いので買わない。映画のポスターパネルを来栖さんと堪能する。うーむ、これはというものはさすがに高い。ハーロックと植木等が欲しかったり。そうこうしていると、このフィギュアはなんなのか教えなさいとよばれる。そこにはユニヴァーサルホラーのちっこい人形が。まとめて1500円なのかな?まあ要らないやと、ミュータント(宇宙水爆戦)と地底人(モール・ピープル)である事をお教えして立ち去る。販売コーナーに飽きたところで、200円を払って展示室に。もちろん、他の皆様はほったらかして一人で・・・。

 半分ほどがスターウォーズ、リーバイス人形、ビリケンで占められており、これらにはあまり興味がわかない私はペコちゃんグッズから見てまわる。牛乳びんまでコレクションしてあるのははじめて見た。懐かしのロボットコーナー、ああ、こんなのをもっていたなぁ、などと本当に懐かしい。かつてのハイテクと今のハイテク、夢をかき立てるのはどちらなのだろう、などと感慨にふけっていると、他の皆様もやってきた。そこへ、柚井さんに総婦長さんからメールが入る。睡魔に襲われて帝都まで行ってしまったそうな。もしかしてひかりに乗ったのかな? 私も乗り過ごさないよう気をつけねばと、訓戒にする。

 幼少のみぎりを思い出し、すぐに忘れたところで明石焼きが食べたい旨をお願いする。じゃあ、梅田のぶぶ亭へ行きましょうということに。アメ村には短時間しかいなかったが、私にはさほど有意義なところでも無さそうなのであっさりと梅田へ戻る。甲賀流たこ焼きが堪能できただけで幸せ〜。

 さすがに帰りは迷うことない・・・と思ったが、すたすたと地下鉄への階段をおりると「どこへ行くのですか?セバスチャン」とのお言葉が。どなたのお言葉かは想像におまかせする。道標の案内に従ったまでのことですと、すたすたと地下鉄へ。切符を買っていると、ゆきさんがATMを探しにデパートへ。ATMなら昨日劉貴さんに案内されたHEPの近くの地下へと・・・という提案は宙に消えた。そしてしばし待つ・・・さらに待つ・・・果報は寝て待つ・・・。改札の向こうへ用を足しに行かれたカイエさんが一人旅に出ない事を祈りながら待つ。デパートにはないので通りの向こうのビルまで行ってきたと戻られたところで、ホームへ。電車を待つあいだカイエさんから「迷っていたのでしょう」と突っ込まれるゆきさん、名前は忘れたけどアルファベット三文字のビルまで行っていたと弁明しておられる。それらしいビルのポスターの真ん前だったので、ここですか?とお訪ねするとその通りであった。

 それはさておき、梅田駅地下街のぶぶ亭へ。食堂街で少々迷うが、案内図によってすぐに発見。5人ではしばらくお待ちくださいといわれ、店の外で待つが、なぜか行列になる。少人数なら入れるのに・・・と思いつつも店員が案内しないので私は知らない。

 さて、運ばれてきました明石焼き。香り良き出し汁につけていただく。この熱さは作りおきですな。少し遅れて運ばれたカイエさんのはかなり熱いそうで。ゆきさんがかたわらに置いたカメラを来栖さんが手にとってそちらの写真をを撮ってあげる。すると、私もお撮りいたしましょうと先程置いたご自分のカメラを探す。しかし来栖さんが使ったから当然置いた場所にはないわけで・・・あわてて探し回る。もしかしてこのカメラをお探しで?と来栖さんに指差されたのは目の前に置かれたゆきさんのカメラ。さよう、来栖さんがお借りしたのに気がつかなかったのだった。みんな知っていたのに。

 もう少し周囲の状況に気を配り、物事に疑問を持ちましょう。そう、なぜ明石焼きの台が傾いているのかとか。などと諭すが、今度は明石焼きの台が傾いていることにすら気がついていらっしゃらなかった。これも気がつかなかったのはゆきさんだけ。うーむ、これは手ごわいですな。もっとも、なぜ傾いているのかは解明できなかったが。

 念願の明石焼きを堪能したところで、私めの帰りに切符を買うために大阪駅へと足を運んでいただく。1時間半ほどのちの列車をとり、待ち時間を喫茶店で過ごしましょうということに。駅構内に喫茶店を見つけるも、もう少し洒落たところにしましょうとデパートへ。しかし日曜日だけあって食事時を外れているのにもかかわらずどこも満席。しかたなく先ほどのうら淋しい喫茶店に。

 狭い席に不満を持ちながらも、気が立つのはビタミンやカルシウム不足が原因とばかりにトマトジュースをオーダー。まあトマトジュースの自家製はめったにないから、絶対にはずれがありませんからな。壁にかかっている人形で遊んでいると、皆様の話は九州オフの話題になっておられる。「たらちゃんもとりさんも高校性なんですよ、ご存じでした?」カイエさんがおっしゃられると、それをどう聞いていたのかゆきさん「まだ高校生なんですって、ご存じでした?」とカイエさんに返す。それはカイエさんが目の前でおっしゃったのに・・・。

 だから状況をよく見て、物事の過程をよく考えましょう。ええ、新宿でホテルの場所を「この道をまっすぐすすめば右に見えます」お教えした時にも、この道は突き当たりで行き止まりです!と行ってもいないのに切り返されるような事は2度としてはいけません。あの道は確かに先が見えませんが、ずっと続いているのです。まっすぐといっても起伏していたり少々曲がっていれば先は見えなのですよ。いくら私でも人を陥れるような嘘はつきません。

 ああ、まったく人間の質は落ちたものだ。昔は良かった、ノアの一族は賢く従順であった、ヤコブの民は良かった、ヨハネの時は良かった。こうなったら黙示録・・・。さて、珍妙な1時間を過ごしたところで、カイエさんと来栖さんに後を任せて逃げるように立ち去る。青い空なんか大嫌いだ!青い海なんて大嫌いだ!・・・。ああ、大阪二日目の空は青かった。おしまい。

TOP / 1 / 2 / 3