大阪新年怪・序幕

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ここに書かれていることは、多大な脚色によって真実が覆い隠されている。よって内容をうのみにし、登場人物を色眼鏡で見るようなことをしてはいけない。全ては世の中を謳歌するために演じているのだから。ほんとかっ( ̄□ ̄;)?

 2001年1月20日、ヘッドホンからささやかに聞こえる美空ひばりの歌声に耳を傾けながら、車窓から見る京の都では白い小悪魔たちが手招きをしている。京都駅で開いた扉から身を切る風が誘いをかけてくるが、目的地はここではない。かの地でも雪が舞っていることを期待しつつ、白く煙る古都を後にする。私はナルではないので、けっして雪の中で舞うインバネス姿なんぞ想像してはいないことを断っておく。

 正午少し前、到着した列車の窓を流れ、商人の街大阪に降り注いでいたのは身も凍るほどに鋭い雨粒であった。まさに嵐の予感を感じさせる天候のなか、集合場所に指定された梅田駅へとのんびりと向かう。それでも12時10分ほどに着き、早すぎたので紀伊国屋書店へ。菊地氏の新刊が見当たらないのでビデオ・DVDのコーナーを見てまわる。IVCのクラシックシリーズが並んでいるではないか。ううむ、オーダーすればいつでも手に入るからいいやと思っていたが、こう目の前に並んでいると咽から手が・・・。しかし荷物になるのできっぱりと諦め、待ち合わせ場所に。

 集合時間よりも少し早く着くが、すでに劉貴殿が待たれていた。一月ぶりの再会を喜ぶ。柚井さんと来栖さんは明石焼きを食しているという。むむ、せっかく腹を空かせてきたというのになんて奴等だ・・・。ぢつは劉貴殿が案内していたというのは内緒だ。しばらくして明石焼きを堪能していた二人がやってくる。ほくほく顔で階段を上ってくるお二人に真空飛び膝蹴りを下そうと画策するが、空腹の身では力が出ないので断念する。来栖さんとも一月ぶりのはずながらはじめましてのご挨拶。

 時間をいくらか過ぎたところで、雪で電車が遅れたという謎の坊主さん到着。そうか、わたしが堪能していた小悪魔たちはそんな悪事を働いていたのか、というのはどうでもよくて、謎の坊主さんはちょっと人捜しに行き、見目好き少女を連れて戻ってくる。劉貴殿のところへ時折訪れていらっしゃる虎瑠茉ちゃんとのこと。へっへっヘ、いくらでお売りになるので?高く買わせていただきますよ・・・などとはこれっぽっちも思っておりません。あとで分かったことだが、虎瑠茉ちゃんは柔道の有段者だそうな。危なかった(爆)

 全員揃ったところで、お好み焼きの「きじ」へ。空腹度のいや増す私は店頭の行列に恐れをなすが、美味いものを食うためにはここで引き下がってはいけない。待っている間、某紅い人の悪人ぶりで盛り上がる一部の方々。それがどこへ行けば分かるかまで虎瑠茉ちゃんに説明されているが、劉貴殿と二人、とてもいたいけな少女に披露できるものではありませんなと前途ある身を案じる。もちろん、好印象を与えておくために善人を演じることは忘れない。

 さて、30分以上待った(ぐらいまでしか時間をみていなかった)ところで、席に案内される。棚に仕舞うために鉄板の上で手渡された柚井さんのコート、ほら、そこで手を滑らせて焼いてしまおうと悪い私にそそのかされるが、ひと睨みされた善い私が押し止める。善人は早死にするとはよく言ったものですなぁ。

 待った甲斐があるほどに美味なるお好み焼き、私はベーシックなぶた玉を堪能するが、柚井さんは劉貴殿が持参されたDのシナリオ本に熱中している。その間も鉄板にのせられたお好み焼きは有無を言わさず熱くなっている。何事にも熱を入れるのはいいことですが、過ぎたるは及ばざるがごとしもありうることをお忘れなきよう。黒こげは免れたようだが、熱くて食べにくくなってしまわれた。

 満足したところで来栖さんに会計をお願いし、一足先に店を出ると天候はさらに崩れて土砂降り。取り合えずアメ村へ行く時間はないが、外を歩き回るのもどうかということに。スチャラカな私は「HEPの観覧車に乗ろう!」と冗談のような提案を本気でするが、承諾される(爆)

 HEPへの道中、前を歩く虎瑠茉ちゃんのうさみみ帽子がどうしても悪魔のとんがりやじるし耳に思えてならない。きっといつかとんがりやじるししっぽも生えてくるに違いないと思う私であったが、すでに口を突いて出てしまっていたので柚井さんにおこられた(笑)

 一回700円とちっともお手軽じゃない観覧車乗り場に着くと、ここにも異様な行列が。チケットを買ってそれに並ぶと、係りのおねいさんが観覧車はこちらですよと誰もいないゲートを指し示す。なんだ、物好きは私達だけだったのか。どうせ空いているのだから一人ずつ乗ろうという提案(爆)はあっけなく却下され、劉貴殿・謎の坊主さん・虎瑠茉ちゃんの親子チームと、柚井さん・来栖さん・私めの主従チームに分かれる。眼下に広がる街並みと、窓に貼られた案内図をぴったり重ねてみたり、換気の小窓を開け閉めしてすき間風を楽しんでみたりしつつ、ゴンドラは高度をあげていく。そしてなぜかてっぺんで意味なく喜んでみたり。まったくなにをやっているんだ、私達は。

 前を行く親子チームのゴンドラ内が見えたところで、写真を撮ってやろうと窓の曇りを手で拭いていると、それに気がついたようで手を振り返された。いやいや、私が手を振っているようにみえても、実は窓を拭いているのですよ、などとこちらのゴンドラは悪の気分に酔いしれていたり。そんなことで受けていたら、親子ゴンドラの写真を撮り忘れた。来栖さんと組んで柚井ちゃんを小娘扱いして逆に情けなくなっているうちに、観覧時間は終了。全天候ではない降り口を雨に濡れながら走りぬける。

 ゆきさんの到着までおよそ1時間あまりなので、喫茶店でのんびりしましょうということに。甘いものは嫌いだがココアは好きな私は、温まろうとココアをオーダー。が、ここのココアは甘すぎた(涙)。ここでようやく菊地オフらしい話題に盛り上がる。柚井さんはシナリオ本の読み残しに再び熱中する。真面目な話をレポしてもつまらないので省略(爆)

 ゆきさんから空港に到着の連絡が入り、少々不安なやりとりながら劉貴殿が電車の乗り方を教える(え?)。そしてほどよい時間になったところで、劉貴殿がおむかえに先行。残りはもうしばらく全身を弛緩させたところであとを追う。が、待てど暮らせどゆきさんはおろか劉貴殿も現われない。到着予想時刻から30分ほど過ぎた頃、汗だくになった劉貴殿だけ現われる。梅田駅にはついているらしいんですが・・・と言い残し、再び人捜しに消える。そして月日は流れて十数分ほどした頃、すでにモニターの前にいるとゆきさんから連絡が。モニターの前ということは・・・こちらに背中を向けて電話しているのを来栖さんが発見。無事保護の連絡を劉貴殿に入れると、脱力して今にも倒れそうな様相で合流。とにかくホテルのチェックインを済ませることに。やはり天はこのことを預言するために嵐をおこしたのであろうか。

 さらに強まった風雨のなか、凍えきってホテルに到着。置いていく荷物もないわたしはトイレだけすませて部屋を出ようとする。が、ゆきさん達から部屋の鍵が開かないと電話が入る。だったらフロントに・・・と思うが、とりあえず状況だけきいてみる。

 ○鍵は根本まで入る

 ○ある程度は右にまわる

 ×しかしドアは開かない

 ●入るべき部屋の番号を確認(爆)

 ○合っている

 ●鍵を回したまま扉を押してみるよう指示

 ○あ〜!という柚井さんの歓声が聞こえた

 ○ドアは開いた

 自動ロックのシリンダー錠の場合、一般的なものと違って完全にロックが外れるものはまずないのである。しかもこの二人、しばらく鍵をさしっぱなしにしていたという。お互いにそちが取らぬのがいかんと言い張るが、どっちもどっちである。がくりとひざを折り、その場に突っ伏しそうになりながらもエレベーターを下りる。その中でもっとろくでもない指示をしていじめてやればよかったと後悔した。部屋の中に人がいるから大声で呼べとか、フロントで教わった呪文を唱えろとか、その部屋は呪われているとか・・・。とにもかくにもラウンジへ入ってこのことを報告。全員で脱力爆笑にかられる。当然、来栖さんはすでにきていた。全くもって希有な出来事である。

 コーヒーをオーダーして、しばしまったりと過ごす。少し離れたテーブルでは、小柄な老紳士が一人、夕食を取っていた。彼はきっと優秀な学者で、どこからも受け入れられない研究をしているのだろう。そう、晩年のボリス・カーロフが演じたような邪悪な探求を。などと妙な想像をしてコーヒーの香りを楽しんでいると、柚井さんとゆきさんが支度をすませてやってきた。

 たこ焼きはゆきさんがきてからとかねてより決めてあったので、劉貴殿の案内でたこ焼き屋へ。前方を一つ傘で歩く劉貴殿と虎瑠茉ちゃん、どう見ても帰宅途中のほのぼのとした親子である。席に着くと、またも親子チームと主従チームに分かれる。ここは自分でたこ焼きを焼くシステム。ここで得た教訓は、たこ焼きはプロに焼いてもらうべし。主従テーブルは寄ってたかってたたき壊しているようなものであった。そば飯も堪能できたが、いか焼きがあったのに気がつかなかった。ちっ、会計が全部一緒なんだから奪いとってくればよかった(笑)

 この店で総婦長さんから入電。曾根崎警察署にいるから迎にこられよ。なんと!とうとう曾根崎署にお世話になる方が出てしまったのか。などというわけではなかったらしいが。焼き上がる前に迎えに行った劉貴殿、戻ってくるともう待ち合わせ時間が迫ったいたためほとんど食べられずに再び店を出る。いと哀れなり。

 着替えたいので一度ホテルに戻るという柚井さんとゆきさんを送りだし、時間がきたので会計をしているとこの二人が戻ってきた。なんだ、着替えにしては異常に早いなと思ったが、ホテルの場所がわからないとの一声に腰砕けになる。ついさっき通ったばかりなのになぜ帰れないか、この人たちゃぁー! そもそも、なぜに着替えてからこなかったのだろうか。しかたないのでお二人をホテルに連れ帰り、監禁しておくことに・・・。ではかわいそうなので現地集合と待ち合わせ集合に分かれる。御堂筋の交差点まで来ると、ここまでは来たが渡ったのか忘れたという二人。少々見つけにくいが、交差点からはホテルの看板が見えるというのにだ。看板を指し示すと、あれが見えなくなったらどう行っていいかわからなくなるじゃんと言われた。絶句である。

 そんなこんなであったが、現地集合には間に合った。ほっと胸をなで下ろす。所長とあった瞬間、ヘルシング教授ですねといわれる。しょちょー、心の友よ! ええ、怪しい宣教師でも人買いでもえりまきトカゲでもないのだ。

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