飯野文彦ホラーコレクション

【作品名】我が妻−ラヴィーについて

【出版社】詳伝社

【収録書籍】小説NON2000年10月号

【定価】¥650

呪われた一族の末裔、河内哲生が生き長らえる唯一の手段は、忌まわしい血を引く一族の女性と交わることであった。しかし、欲望に果てた男と、打ち捨てられた女の運命は、悲しくもおぞましいものであった。そして二人の間に生まれた娘の運命は・・・?

ラヴクラフトの得意とする手記形式をなぞらえ、「母の行方」にひきつづき比喩と形容詞とで想像力をかきたてるよう描かれた短編。多少の照れ隠しがまだ残っているように見受けられるが、それもまた飯野氏らしさといえるだろうか。もちろん、女性を絡めてくるあたりも、である。わずかなネタバレ覚悟で書かせてもらうと、残された母娘と河内家に伝わる暗黒の書籍のその後がひじょうに気になるラストであった。

また、具体的な地名を伏せるあたりも飯野氏の一つの手段であるが、「クトゥルー」と銘打ったうえでの「Aという町」、「M大学」、「Iという田舎町」、ラヴクラフトファンなら察してニヤリといったところか。何のことだかわからないという向きには、わからなくてもかまわないと言い切らせていただこう。知ってるとちょっと楽しい、知らなくてもたいして変わらない・・・という程度のものである( ̄ー ̄)。

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