飯野文彦ホラーコレクション

【作品名】訪問者

【収録書籍】蚊−か−コレクション

【出版社】電撃文庫

【定価】¥630

 懐かしく淡い思い出に封印された記憶は、決して開けてはならない禁断の扉。すでに熟年と呼ばれる歳になっていた山田健一は、部下の大伴の話の中にそれを思い出すのだが、しかし大伴自身はすでにその扉を開けてしまっていたのだった。おぞましい姿になり果てた大伴と、思い出を捨て去ってしまった健一、幸せと呼べるのはどちらなのだろうか。

 ゲームソフト「蚊」のノベライズ・アンソロジーながら、それぞれ独自の発想で描かれた物語。コミカルなタッチが多いなかでも、この飯野氏の作品は独特の恐ろしくて切ない語り口を過去と現在とのかけ橋にして綴られた逸品です。そろそろ雑誌のみの収録作品を含めて短編集を編纂してくださるとうれしいですね。

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