Debian を初めてインストールする場合、いくつかの作業段階を経てインストール をします。それは以下の順序になります。
各作業段階ごとに、そこで行なう作業ではさまざまな方法を用いることができます。 ただ、フラットフォームが異なれば、 利用できる方法が異なってくることには注意してください。 この文書では Intel x86 アーキテクチャで利用できる方法のみを扱います。
最初の作業段階である Debian インストーラのブートは、 以下のメディアから行なうことができます。
これらのさまざまな方法は 初めてのブートに用いるメディアの選択, Section 5.1.1 にて説明します。 お使いになっているハードウェアによっては、 最初のブートが最も困難な場合もあります。 こちらについては インストーラのブート, 章 6 という別の節を設けましたので、そちらで説明します。
一旦 Linux をブートしたら、dbootstrap
プログラムが起動し、
第 2 段階であるシステムの初期設定を行います。この作業段階については dbootstrap
によるシステムの初期設定, 章 7 で詳細に説明します。
「Debian 基本システム」は、Debian がスタンドアローンで動作するのに最低限
必要な、核となる一連のパッケージです。
初期設定を行って、一旦基本システムをインストールすれば、そのマシンは他に
依存せずそれ自身で動作できるようになります。
Debian 基本システムは、フロッピーディスク、ハードディスク、CD-ROM、
NFS サーバなどのメディアからインストールできます。
dbootstrap
がこのインストールを実行します。こちらに関しては、
「基本システムのインストール」, Section 7.14 で説明します。
インストールの最終段階は、残りの Debian システムをインストールすることです。
こちらには、X Window System、エディター、シェル、開発環境など、
実際にお使いになるアプリケーションやドキュメントが含まれます。
残りの Debian システムは、CD-ROM や Debian アーカイブのあらゆるミラーから
(インターネットやそれ以外から、また HTTP や、FTP、NFS 経由で) インストール
することができます。
現時点では、dselect
もしくは apt-get
といった標準的な Debian パッケージ管理ツールを使うことになるでしょう。
この作業段階については システムの残りの部分をインストールする, Section 7.26 で説明します。
インストールのある作業段階で利用するメディアと、 他の作業段階で利用するメディアが同じものである必要のない ことは心に留めておいてください。 つまり、Rescue Floppy からブートし、NFS から基本システムをインストールし、 システムの残りをインターネットからインストールすることもできるのです。 システムをアーカイブからダウンロードするならば、普通フロッピーから 基本システムをインストールし、インターネット経由で完全な Debian システムをインストールするでしょう。
以下ではさまざまなインストール方法と、インストールに必要となるファイルに ついて説明します。 どのファイルを用いるのか、またどの段階でインストールに用いるメディアを 用意する必要があるのかは、Debian のインストールの際にお選びになる 方法によって異なります。
まず最初に、インストーラのブートに用いるメディアを、 その次に基本システムのインストールに用いる方法を選択してください。 前述したように、それぞれ異なる方法が選択可能です。
インストーラをブートする方法には、フロッピー、 ブート可能な CD-ROM、 もしくは、Linux 以外で用いられるブートローダーがあります。
フロッピーからのブートはほとんどのプラットフォームでサポートされています。 フロッピーによるブートについてはフロッピーからのブート, Section 5.6.1に説明があります。
CD-ROM からのブートは、最も簡単なインストール方法の一つです。 ただ、運悪く CD-ROM 上のカーネルがうまく動作しなかったら、 他の方法に戻ってください。 CD-ROM からのインストールは CD-ROM からのインストール, Section 5.4 で説明します。
既存のオペレーティングシステムからブートすることが、適切な選択であることも よくあります。というのは、あるシステムではこちらがインストールの唯一の方法 であるからです。この方法についてはハードディスクからのインストール, Section 5.3で説明します。
基本システムは、フロッピー (フロッピーから基本システムをインストールする, Section 5.7.1)、 CD-ROM (CD-ROM からのインストール, Section 5.4)、NFS サーバ (NFS からのインストール, Section 5.5)、 ローカルハードディスク (ハードディスクからのインストール, Section 5.3) のいずれかからインストール することができます。 お持ちのメディアの中から、最も都合のよいものを選択してください。
この節では、disks-i386
ディレクトリにあるファイルの
一覧を簡単な説明を付して紹介します。
これらすべてをダウンロードする必要はないでしょう。このことはブートおよび
基本システムのメディアに、何をお選びになるかによってまったく異なってきます。
ほとんどのファイルはフロッピーディスクのイメージです。これらは必要な フロッピーディスクを作成するためにディスクに書き込まれる、 単一のファイルとなっています。 これらのイメージは、明らかに 1.4MB や 1.2MB、720KB といった書き込み先の フロッピーの容量によって異なってきます。どの容量のものが利用できるかは、 お使いのプラットフォームによって左右されます。 (例えば 720KB ドライブは Atari 固有のものです。) それぞれのファイル名に、1.4MB ドライブ用のイメージでは ``14'' という数字 が、1.2MB ドライブ用のイメージでは ``12'' という数字が、そして、720KB 用のイメージでは ``72'' という数字が埋め込まれています。
もしこの文書をネットワークに接続されたコンピュータ上のウェブブラウザで
ご覧になっているなら、ブラウザ上でファイル名を選択することで各ファイルを
取り寄せることができるでしょう。
お使いになっているブラウザにもよりますが、
バイナリモードでそのまま直接ファイルにダウンロードするためには、
特別な操作が必要かもしれません。
例えばネットスケープナビゲータでファイルを取り寄せるためには、
シフトキーを押したままそのリンクをクリックする必要があります。
この文書に記載されている URL から各ファイルをダウンロード
することができますが、それらを ftp://ftp.debian.org/debian/dists/slink/main/disks-i386/current/
や、
Debian ミラーサイト
の対応するディレクトリから取り寄せることも可能です。
resc1440.bin
, resc1440tecra.bin
, resc1200.bin
-- Rescue Floppy のイメージ
5.25 インチのフロッピードライブをお持ちの場合は、ファイル名に
1200 あるいは 1440 という数字が埋め込まれたイメージを使ってください。
後述しますが root.bin
も必要になります。
なお ``tecra'' イメージは、
標準ディスクで問題がある場合に用いる代替カーネルです。
drv1440.bin
, drv1440tecra.bin
, drv1200.bin
-- Drivers Floppy のイメージもし特別な Rescue Floppy イメージをお使いになる場合は、 それに対応した Drivers Floppy を使う必要があります。
base2_1.tgz
か、 base14-1.bin
, base14-2.bin
, base14-3.bin
, base14-4.bin
, base14-5.bin
, base14-6.bin
, base14-7.bin
、 あるいは base12-1.bin
, base12-2.bin
, base12-3.bin
, base12-4.bin
, base12-5.bin
, base12-6.bin
, base12-7.bin
-- 基本システムのイメージbase2_1.tgz
ファイルが利用できます。
root.bin
-- ルートイメージ
また、ルートファイルシステムが何らかの理由で
Rescue Floppy におさまらない場合もこちらを利用します。
例えば、5.25 インチフロッピーからブートする場合は、
root.bin
が必要になるでしょう。
lowmem.bin
-- メモリ消費量の少ないブートイメージ
lowmemrd.bin
-- メモリ消費量の少ないルートファイルシステムlowmem.bin
がそのディスク容量に収まりきらないために、
こちらを利用します。
rawrite2.exe
loadlin.exe
-- Linux ブートローダー
install.bat
linux
-- カーネルイメージ
install.txt
、 install.html
-- インストールマニュアル
fdisk.txt
cfdisk.txt
basecont.txt
md5sum.txt
md5sum
プログラムをお持ちであれば、
md5sum -v -c md5sum.txt を実行することで、
お手持ちのファイルが改竄されていないか確認することができます。
場合によっては、既存のオペレーティングシステムからブートなさりたい かもしれません。基本システムをディスクからインストールする場合でも、 インストールシステムを他の方法を用いてブートすることは可能です。
同じマシンにすでにインストールされた DOS パーティションから Debian をインストールすることも可能です。 その方法には次の二つがあります。 一つはフロッピーをまったく使わないインストール方法、 もう一つはブートは Rescue Floppy から行ない、 基本システムはローカルハードディスクからインストールするという方法です。
フロッピーを使わずにブートを試みる場合は以下の説明にしたがってください。
resc1440.bin
、drv1440.bin
、base2_1.tgz
、root.bin
、linux
、install.bat
および loadlin.exe
install.bat
を実行してください。
ブートはフロッピーから行なうが、
基本システムは DOS パーティションからインストールしたい場合は、
ディスクイメージからフロッピーを作成する, Section 5.8 の説明にしたがって、
単に Rescue Floppy と Drivers Floppy をダウンロードし作成してください。
そして base2_1.tgz
をダウンロードして、そのファイルを
DOS パーティションのどこかに置いてください。
ext2fs パーティション、あるいは Minix パーティションから Debian をインストールすることもできます。 こちらのインストール方法は、例えばすでにインストールされた Linux システムを Debian で完全に置き換える場合に適切です。
Debian のインストール元のパーティションと、インストール先のパーティションは、別にしなければならないことにご注意ください。
(すなわち、/、/usr、/lib
などそのすべてを別にしてください。)
既存の Linux パーティションからインストールする場合は、 以下の説明にしたがってください。
base2_1.tgz
もしブート可能な CD ドライブをお持ちで、お使いのアーキテクチャやシステムが CD-ROM からのブートをサポートしているなら、フロッピーはまったく必要ありません。 ブートデバイスの選択, Section 3.3.2 の説明通りにハードウェアを 設定し、 CD-ROM をドライブに入れてリブートしてください。 ``tecra'' ブートイメージが必要なシステムでは、一枚目の CD-ROM の代りに二枚目の CD-ROM をドライブに挿入してリブートしてください。 そうしたら、以下の節はとばして、インストーラのブート, 章 6 をご覧ください。
もしお使いになるハードウェアが CD-ROM からのブートをサポートしていない場合
は、DOS からブートし、CD の \boot
ディレクトリにある
boot.bat
ファイルを実行してください。
そうしたら、以下の節はとばして dbootstrap
によるシステムの初期設定, 章 7 をご覧ください。
CD-ROMからブートできない場合でも、Debian の基本システムを CD-ROM からインストールすることは可能です。 単に他のインストール方法の一つを用いてブートしてください。 つまり、基本システムや追加パッケージをインストールするときに、 「基本システムのインストール」, Section 7.14 の説明にしたがって、CD-ROM ドライブをインストールシステムとして選択すればよいのです。
NFS 経由でインストールできるのは、その性質上基本システムだけです。
すでに説明した方法のいずれかを用いて、手元で利用できる
Rescue Floppy と Drivers Floppy を用意しておく必要があるでしょう。
NFS 経由で基本システムをインストールするためには、dbootstrap
によるシステムの初期設定, 章 7での説明の通りに標準的なインストール手順を踏まなければな
りません。忘れずに、お使いのイーサネットカード用のモジュール (ドライバ) と、
NFS 用のファイルシステムのモジュールをロードしてください。
dbootstrap
に、
どこに基本システムが置かれているかを尋ねられた時には (「基本システムのインストール」, Section 7.14)、NFS を選択しその指示にしたがってください。
フロッピーからのインストールは、 一般的に好ましい方法でも短時間で済む方法でもありませんが、 もしお使いになるシステムがこの方法をサポートしているならば、 いざという時の頼みの綱でしょう。 以下で説明しますが、インストールの際、 いくつかの作業段階ごとにフロッピーの利用が可能です。
フロッピーからブートするには、まず Rescue Floppy のイメージと Drivers Floppy のイメージを単純にダウンロードしてください。 場合によっては、システムファイルインストールの解説, Section 5.2 で説明されているように、 お使いになるディスクイメージの種類を選択する必要があるかもしれません。 お使いになるフロッピーイメージを選択するとき、 そちらの節にある情報は参考になるでしょう。 次に、ディスクイメージからフロッピーを作成する, Section 5.8の説明にしたがって、 これらのイメージからフロッピーを作成します。
必要があれば Rescue Floppy を修正することもできます。 Rescue Floppy のカーネルの交換, Section 9.3 をご覧ください。
もしお使いになるシステムの搭載するメモリーが 5MB
未満の場合は、メモリーの少ないシステム用に特別に用意されたディスクイメージ
lowmem.bin
を使わなければならないでしょう。
この場合、全部で 3 枚のフロッピーが必要になります。
ディスクイメージからフロッピーを作成する, Section 5.8 の説明を読み、
適切なディスクイメージをフロッピーに書き込んでください。
5.25 インチフロッピードライブしかお持ちでない場合は、
ブートフロッピーの代わりに、メモリ消費量の少ないルートディスク
lowmemrd.bin
をお使いください。
ブートは Rescue Floppy から行ない、
ルートディスクを要求されたら、
メモリ消費量の少ないこのルートディスクを挿入してください。
あるいは、最初のブートをメモリ消費量の少ないブートフロッピーから 行なっても構いません。 その場合は、そのフロッピーを第 1 フロッピードライブに挿入し、 リブートしてください。 必要があれば、インストーラのブート, 章 6 を読んで、 システムのブートに関する情報を参照してください。 いったんカーネルが立ち上がったら、メモリの少ないシステムでのブート, Section 6.3 で説明されるように、 メモリの少ないシステム用に特別なインストール準備を行なうかどうかを 尋ねられます。
注意: フロッピーが一般的に最も信頼性の低い種類のメディアであることから、 こちらは Debian をインストールする方法としては推奨できません。 こちらの方法が推奨されるのは、お使いになるシステムのハードディスクのいずれ にも、余分な既存のファイルシステムがない場合だけです。
以下の手順にしたがってください。
base14-1.bin
、 base14-2.bin
、など)
ディスクイメージは、フロッピーディスクの完全な内容をそのままの
形式で含んだファイルです。
resc1440.bin
のようなディスクイメージは、フロッピーディスクに
単純にコピーすることはできません。
イメージファイルをフロッピーディスクにそのままの形式で
書き込むために、特別なプログラムを用います。
このようなことが必要になるのは、これらのイメージがディスクの内容をそのまま
記録してあるためです。つまり、ファイルからフロッピーへデータの
セクタコピーが必要になるのです。
お使いのプラットフォームによって、ディスクイメージからフロッピーを作成する 方法は異なってきます。 この節では、異なるプラットフォームでどのようにディスクイメージから フロッピーを作成するかを説明します。
フロッピーをどの方法で作成したとしても、不注意でそれらを壊さないために、 一旦イメージを書き込んだら、忘れずにフロッピーの爪を動かして 書き込み禁止にしてください。
フロッピーディスクイメージをフロッピーディスクに書き込むためには、おそらく システムのルート特権が必要になるでしょう。 適切な空のフロッピーディスクをフロッピードライブに挿入したら、 次に以下のコマンドを使ってください。
dd if=ファイル名 of=/dev/fd0 bs=512 conv=sync ; sync
ファイル名のところには、
フロッピーディスクイメージの一つを当てはめます。
また、/dev/fd0
はフロッピーディスク装置によく使われている名前
です。(こちらは Solaris 上では /dev/fd/0
になります。)
Unix が フロッピーディスクへの書き込みを終える前に、このコマンドは
プロンプトを返すかもしれません。そのため、ドライブからフロッピーディスクを
取り出す前に、フロッピードライブのディスク使用中のランプをみて、
それが消えていること、ディスクの回転が止まっていることを確認してください。
システムによっては、ドライブからフロッピーディスクを取り出すために、
なにかコマンドを実行させなければならないかもしれません。
(Solaris 上では eject
を使ってくさい。
こちらについてはマニュアルページをご覧ください。)
またあるシステムは、フロッピーディスクをドライブに挿入すると、それを自動的
にマウントしようと試みます。
そのようなワークステーションで、イメージをそのままの形式で
フロッピーディスクに書き込むためには、
この機能を無効にしなければならないかもしれません。
残念ながら、その設定をどのようにするかはお使いになっている
オペレーティングシステムによって異なってきます。
Solaris 上では、vold
が実行されていないことを確認してください。
その他のシステムに関しては、ご自身のシステム管理者にお尋ねください。
フロッピーディスクイメージと同じディレクトリに rawrite2.exe
プログラムが収録されています。
そこには、rawrite2
の使用説明書を含む rawrite2.txt
ファイルもあります。
フロッピーディスクにイメージを書き込むためには、
まず最初に DOS をブートしてください。
Windows 上の DOS プロンプトから rawrite2
を実行すると
問題が発生するとの報告が多く寄せられているからです。
また Windows のエクスプローラ上で rawrite2
をダブルクリックしても動作しないとの報告も受けています。
もし DOS のブート方法をご存知ない場合は、
ブートの際に F8 を押してみてください。
一旦プレーンな DOS をブートして、以下のコマンドを使ってください。
rawrite2 -f ファイル名 -d ドライブ名
こちらのファイル名には、 書き込むフロッピーディスクのイメージの一つを、 また ドライブ名 には ``a:'' もしくは ``b:'' を書き込む先のフロッピードライブに応じて当てはめてください。
はじめて Debian をインストールする方々が抱える一番の問題は、 フロッピーディスクの信頼性のようです。
Rescue Floppy は Linux がブートする前にハードウェアによって直接読まれる ことから、最悪の問題点を抱えています。 ハードウェアは Linux のフロッピーディスクドライバほど信頼性のある読み込み をしないことが多く、誤ったデータを読み込んだときには、エラーメッセージも 表示せずに止まってしまうこともあります。 Drivers Floppy や基本システムフロッピーにも、これと同様に失敗する 可能性はあります。ただし、これらのほとんどはディスク I/O エラーに関する たくさんのメッセージを出して、読み込みが失敗したことを教えてくれます。
ある特定のフロッピーでインストールが失敗するならば、まず最初に フロッピーディスクのイメーをダウンロードし直して、 別のフロッピーに書き込んでみてください。 フロッピーの再フォーマットや書き込みの際にエラーがでなかったとしても、 古いフロッピーを単に再フォーマットするだけでは不十分でしょう。 場合によっては、異なるシステム上でフロッピーへの書き込みを行う方が よいかもしれません。
一つのフロッピーがうまく動作するまでに 3 回もイメージを書き直し、 3 枚目のフロッピーでようやくうまく動作したというユーザの報告もあります。
また、別のユーザは、同じフロッピーを同じフロッピードライブで用いても、 単に数回リブートすればブートに成功したとも報告しています。 これらはすべて、バグのはびこったハードウェアもしくはフロッピードライバの ファームウェアによるものです。