謎にみちた巨大植物

 あまり知られていないことですが、実は電波望遠鏡は植物なのです。いや、木造家屋(家屋とはいわんな。「構造物」かな)だとかいうことではなく、それ自体が「パラボラの木」という生きている植物なのです。ちょうど電波を集めるのに適したパラボラ型の花をつけるので、栽培して宇宙の観測や長距離通信に利用しているのです。

 ときどき種子をつくって増えますが、自家受粉はできないようです。パラボラの木は個体数が少ないため、年中花をつけっぱなしにしてチャンスを待っています。それでも野辺山の45m電波望遠鏡が種子をつけたのは過去に2回だけ、それも1度目はいまの場所に移植された直後ですから、二十数年間で1回しか受粉しなかったことになります。(こんなことだから個体数が少ないのかも。タマゴが先かニワトリが先か…)
 受粉したパラボラの木は、大きさ・形ともにタンポポそっくりの綿毛つきの種子をつくり、飛ばします。毛の短い「短距離型」と、毛の長い「長距離型」を同時に飛ばすことがわかっていますので、どこか遠くにも45m鏡の子が芽生えているかもしれないのですが、現在見つかっていません。

 野辺山天文台の入口から45m鏡に向かう途中で数台の10m鏡のそばを通りますね。あれが樹齢二十数年のパラボラの木、その右手にあるたくさんの1m鏡が樹齢10年ほどのパラボラの木です。
 パラボラの木は十数年程度では生殖能力がないと考えられているため、1m鏡は45mの子、すなわち10m鏡の弟・妹にあたるものと考えられています。しかし、パラボラの木が結実しているかどうかの見分けはつきにくい(なにしろ「タンポポ」ですから)ため、45m鏡の子と確認されているわけではありません。また生態についてまだ十分わかっていないことが多いため、10m鏡の子であると考えている研究者もいます。
 

 近年、成長が速く、花の直径が数十cmにしかならない栽培品種が普及し、一般家庭でも庭やベランダ、屋根の上で育てているのをよく見掛けるようになりました。花の形も楕円形や四角いもの、平面に近いものなどが作り出されています。栽培品種によくあることですが、これらは生殖能力がなく、残念ながら綿毛を見ることはできません。


問1・パラボラの木の花粉はどのようにして運ばれると考えられるか。
問2・野辺山から飛んだ「長距離型」種子はその後どうなった(もしくは、なっている)と考えられるか。
問3・1m鏡は45m鏡の子であると考えられる根拠、逆に孫であると考えられる根拠をあげなさい。
問4・アンテナとして使われるパラボラの木は、まっ白な花をつけているものが選ばれる。白一色の花がアンテナとしての機能上優れている理由を考えなさい。

back

特選観光案内へ

backback

清里野辺山観光地図へ

home

うさくま館Homeへ