スズメを飼う犬


 実家の犬はスズメを飼っていました。餌をわざと少し残して(としか見えなかった)、それをスズメがつつきに来るのを見ていました。取って食おうとするでもなく、追っぱらうでもなく、ただ目を細めて見ていました。
 というような話をすると、うちの犬も飼ってた、と言う人が結構います。どうやら世間の飼い犬の半分ぐらいはスズメを飼うようです。不思議なことにハトが来ると追い払っていました。これも共通するようです。


 実家の裏の柿畑から父がハトを拾ってきたことがありました。ネコにでも襲われたのでしょう、腹に傷を負い、尾ばねがボロボロになっていました。父によれば、落ち葉が溜まっているところでじっとしていたということです。ネコに一撃を受けたあとじっとしていたので第二撃をうけずに済んだのでしょう。
 で、そのハトに傷薬を塗り、鳥かごに入れて置いたところ、ハトはやはり鳥かごの中でじっとしていました。家族会議の末、家の中よりも外の方がいいんじゃないか、ネコにまた襲われたらまずいから犬の目が届くところに置いておこう、ということになりました。
 すぐそばに肉食獣(犬)がいるってのはハトのストレスになるのでは、などとも思いましたが、実際置いてみると犬はハトにかまう様子もなく、むしろ遠慮がちに近づかないようにしているような様子でした。ご飯粒だの野菜屑だのをやっていたら、ハトはだんだん回復してきました。
 ところが、ハトが元気になると犬がちょっかいを出すようになりました。鳥かごを引っかいてみたり、吠えてみたり。叱るとやめるのですが、しばらくすると繰り返します。回復に向かっていたハトはかえって弱りはじめ、とうとう死んでしまいました。(*1)


 このときの犬の心理はわかりません。補食しようとしたのであれば、じっとしているときの方が好都合なはずです。じっとしているとはいえ、ハトがそこにいることは認識していたと思います。ともかく、犬の心理として、スズメとハトは区別するべきものであるらしいこと、健康なハトと弱ったハトも区別するべきものであるらしいことは確かなようです


(*1) 犬がちょっかいを出したこととハトが死んだことの因果関係は必ずしも明らかではありません。もしかしたら「ハトが元気になった」ように見えたのは気のせいかもしれないし、犬がかまわずに存在しているだけでストレスとなり、ハトは死んでいたのかもしれません。

 


back

僕生きの目次へ戻る
"about life" index