「入院二日目〜三日目 3月26日〜27日」

 最初に検査のすべてをしてしまったし血圧が急激に上がらなければ頭痛もしないので一時帰宅。

一泊してのんびりX-BOXを楽しみ、そんでもって病院に戻った。

 その夜、髪の毛を剃ってもらった。

ちょっと泡の立つ程度の石けんの入ったヨウドチンキを塗り塗りして剃る。

塗られただけで凍みる・・・そこにカミソリ。しかも売店で150円の一番安いやつ。

痛い。逆剃りされて痛い。時たまタオルで拭かれるのだがタオル血まみれ。

ああ・・俺の髪・・・俺の頭皮・・・。あらかじめ言ってくれれば

横に売っていた360円のシックウルトラ(二枚刃)にしてもらったのにぃ!!無茶苦茶ひりひりする!!

 その後にお風呂に入った。たれぱんだトランクスをはいてシャツを着ようとしたときに

剃ってくれた看護婦さんが入ってきた。

気にしないでシャツを着ようと広げたら昔景品でもらったギャバンTシャツ。

ギャバンが勇ましく蒸着ポーズを決めているイカしたシャツだ。

はっ!!と思いあわてて袋にしまい、さっき着ていたシャツを着た。

なんでこんなものを持ってきてしまったのだ!?

集まり等で笑い取り用のシャツなのだが病院でしかも手術前日に笑いを取るつもりはない。

「逝ってよし」Tシャツじゃなくてよかったが、せめてフランダースの犬Tシャツ

だったら笑いながら着れたものを・・・。

それにしてもギャバソはないよな・・・。

これがギャバソTシャツ。こんなの着れるか!!

 

「入院四日目 3月28日 手術日」

 やべ!今日手術じゃん!すっかり忘れてた。

どうりで起こされたらいっぱい人がいるし機材みたいのガサゴソ運んでると思った。

手術するときの患者着に着替えて小さな移動できるベッドに

寝かされ肩に筋肉注射をされた。うーん、やっぱり注射上手。それとも麻痺があるのか。

手術室に運ばれる時は、いやー酔った。寝かされて移動されるんだもんなあ。

 

 手前の部屋が見えた。「おお!すごい機材!」って喜んでいたら

手術室の男の人が「いやー、まだまだだよ〜」って言うので「?」って思っていたら

さらに真ん中の部屋がすごい。火曜サスペンスにでてくるような安い感じはない。

「ほー!」と言っていたら「まだまだだよ〜」って言う。

理由がすぐにわかった。私の入る部屋が一番重装備だった。

見たことがない最新設備ですごい光景だった。

不安より興味が勝り、きょろきょろしているうちに4人の人が腕で点滴や血圧計を装着していく。

「麻酔はいつ行うのですか?」と質問しているとちょうど点滴のジョイントに

白いヨーグルトのような物が入った注射器を接続していた。

麻酔科の先生「これが麻酔だよ。眠くなるよ」

ミュー「あ、それがそうなんですか・・・。」

先生「じゃあ、いくよ、ちょっと痛いけど」

ミュー「痛いんですか?」

先生「うーん、凍みるっていうのかな〜んじゃ、いくよ」

注射器がゆっくり液体を注入される。血管を冷たいものが流れていくと言うか這っていく様な感覚があった。

確かに凍みる。その冷たい感覚が首、そして頬のあたりまで来たと思った瞬間強烈に意識が遠くなる。

ミュー「先生、これ・・・かなり強烈・・ですね」

先生「はい、がんばってね〜」

ミュー「え!?これ・・・頑張る・・・もんな・・んですか・・・!?」

先生「はい、これ読んでみて」

それは、さっきまで読んでいた医療機材メーカーのタグだったのだが読めない。

そこまで意識が朦朧としている。

ミュー「もうだめ・・・です、おやすみなさい・・・」

先生「はい、おやすみ」

この言葉が最後でテレビを消したかのように真っ暗になる。

完全に意識がなく、気が付けば手術が終わってICUにいた。

すこしぼーっとしているがついさっき手術は終わったらしい。

心配だった輸血もしなかったとのこと。

一安心。

 麻酔の時は夢もなにも見なかった。眠った感触もなにもなく時間だけが過ぎ不思議な感覚だった・・・

あえて言うなら「死」が一番近い表現なのかもしれない。

ただただ、首と頭が痛かった・・・。

「NEXT」