つい最近になって(1997)、ティントレットの画集もそちこちで見られるように なりました。わたしが彼の作品を知ったのは高校生のときで、ちょうど今から10年ほど まえのことです。 その当時ごく一部の書籍でしか作品がみられず、ずいぶんと心細い気持ちがしたわたしは、 数年後の欧州旅行で彼の作品に出逢い、なんだか懐かしい気持ちになったのを覚えています。 彼の絵が好きか。正直なところいまのわたしにはあまり良い返事はできません。 ティントレットの画面構成の過剰な演出、ハリウッドさながらのつくられたスペクタクルは、 好奇心を抱きこそすれ人によってはややもすると食傷の感をうけることもあります。 2度は繰り返し見ない娯楽映画のように、です。 けれどもわたしは、彼の絵のもつ躍動的な生命感、ドラマティクなまでの構図に、 磁力のようなものを感じているのも事実です。自分と相反するもの、異質なものだからこそ その価値をみとめられる。そんな絵との関係もあっていい、と思ったりする今日このごろです。 <ティントレット> 16世紀イタリアルネッサンスヴェネツイア派のひとり。 大胆に分割された構図、極端な遠近感、左右非対称の造形、人物やモチーフを 画面上で目立たせるための明暗、など徹底して演出的空間を多用した作品をのこす。 <16世紀イタリアルネッサンス> 盛期ルネッサンスとよばれ、政治・学術・宗教・芸術が法王のお膝元であるローマに集まっており、 ミケランジェロ、ラファエロもこの時代に区分される。 ティントレットはヴェネツア派の代表ティツィアーノのながれを汲むといわれる。 そのほかフィレンツェではピエロ・ディ・コシモ等が古典的な絵画を制作していた。