ずっと以前のこと。
目前に結婚を控えた女性に、「姓が変わるって嫌じゃないですか」と聞いたところ、「それが楽しみで結婚するんです」という返事が返ってきた。
また、結婚したばかりの女性に、「どうですか、結婚のご感想は」と聞くと、「もう結婚のことを考えなくていいと思うと、それがいちばん嬉しいです」とのことだった。
ひとむかし前の結婚は、だいたいこんな風だったのだ。
それは、思うに、女性にとって、結婚がいいとか悪いとかいう問題ではなくて、結婚しなければならないという圧迫感が重くのしかかっていて、それから逃れる道は結婚しかないということだったのだろう。
だから、結婚によって、女性は解放感を得たのだ――その解放感が結婚後どこまで続いたかは分らないが。
むしろ結婚によって束縛感を得たのは男性の方だったかもしれない。
今の結婚がどうなっているか、私は知らない。