女性同士

 学生が、「駅構内のエスカレーターに乗ってぼんやり立っていたら、後ろから来たおばさんに突き飛ばされました」と言っていた。エスカレーターから転げ落ちて大怪我をしなくてよかった。
 それで思い出したのだが、この種の話は、女性からときどき聞く。「疲れていたので人ごみのなかをゆっくり歩いていたら、後ろから来た若い女性にふくらはぎのあたりを蹴られた」とか、「街なかで向こうから来た女性にすれ違いざまに体当たりされた」とか、「すいている電車で足を組んで座っていたら、前を通るおばさんに足を蹴られた」とかいったものである。
 男性が他人に対して「実力行使」をすれば、警察沙汰になり、職を失うことにもなりかねない。だから、それをするにはそれなりの覚悟がいる。でも、女性同士の場合は、そういう気遣いはあまりないようだ。女性同士だから許される、と考えているとすれば、「女性同士」というのは、もしかしたら、法律とか社会の枠組みとかからはちょっと外れた所にあるのかなあ、なんて想像したりもする。
 「実力行使」の場合だけでなく、言葉だけの場合についても聞くことがある。この方が例としては多いのかもしれない。やはり学生から、駅で両方向の自動改札機にカードを当てたら、向こうから入ろうとしていた女性に怒鳴られた、という話を聞いたことがある。
 「女性同士」は、ずいぶん厳しい世界なんだなあと思う。いずれにしても、それは男から見れば、神秘の世界である。

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