頑張れ

 最近は、若い人に「頑張れ」と言ってはいけないらしい。「やってみて、失敗したらやりなおせばいい」とか、「進む道はいくらでもあるから、なにもこれだけを考える必要はない」とか、「まあ、あせらずにのんびりやってゆこう」とか言うのが、ものわかりのいい大人ということになっているようだ。
 なるほど、人生に行き暮れている人に、うかつに「頑張れ」と言うのはよした方がいいだろう。頑張りたくても頑張れない状態の人だっているのだから、ただやみくもに励ますのは危険だということはよく分る。
 そして、現代という時代が、若者にとって、希望の持ちにくい、やたら神経を消耗させる時代だということも、間違いのない事実だ。
 しかし、そうかと言って、若い人全部を、まるで壊れ物のように扱わなければならないということでもないだろう。年配者が、遠慮しながら、言葉の端々に気を遣いながらものを言うとすれば、それは却って若い人を損なうことになるように思えてならない。
 人生は頑張らなければどうにもならないものではないか。あくせく働いて、必死に頑張って、ようやく生きてゆけるものではないか。若い人も、いつかはひとりで放り出されるのだ。そのときになって、頑張る気力がなければ、どうやって生きてゆくのか?

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