ゴミ問題

 これも面白い話。――といっても、私にとっては全然面白くないのだが。
 我が家の息子が小学校の四年生だったときのこと。
 ある朝、私が食卓で新聞を読んでいると、息子が近寄ってきて、「ねえ、ゴミを捨てるときはどんなことを心がけて捨てているの?」と聞く。
 私は新聞に気を取られているところだったので、よく考えもせずに、「ええ? あんまりゴミを捨てに行かないしなあ。まあ、何を心がけているってこともないなあ」と答えた。
 その日は息子の学校での授業参観日だった。父親も来られるようにとわざわざ日曜日に行われたので、私も出かけた。
 先生はその春に大学を出たばかりの若い女性だった。彼女にとって教職について初めての授業参観で、いかにも頑張ってるという感じで授業をやっていた。
 科目は社会科で、ゴミ問題を勉強していた。
「それじゃあ、みんな、お母さんやお父さんに、ゴミを出すときにどういうことを心がけているか、聞いてきた?」
 先生が突然そう言って、生徒を何人か指名して、報告を求めた。
 「はい、燃えるゴミと燃えないゴミを分けて捨てているそうです」とか「電池類は別にしているそうです」とかの答えがあった。
 何人目かに「それじゃ、今度は入江君」と、息子が指名された。
 息子は、立ち上がって、
「お父さんは何も心がけていないそうです」
 と答えた。
 子どもたちも、後ろで見ていた親たちも、どっと笑った。
 先生は、笑いを押さえて、「そういう大人にならないために、いま君たちはこの勉強をしているんだよね」と言った。
 いやあ、あのときは恥ずかしかった。顔から火が出る、というのはああいうのを言うのだろう。
 この話は今でも我が家でそうとう人気のある話題になっている。

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