先日、わが家の二階のヴェランダに二羽のヒヨドリの雛がいるのを発見した。たぶん、すぐ近くに巣があって、そこから巣立ちしたものの、力尽きて“不時着”してしまったのだろう。
私はガラス戸一枚隔てただけの至近距離から「観察」した。
親鳥は鳩やカラスよりもずっと小さい中型の鳥で、まだらがかった灰色のあまり美しくない色をしているが、枝にとまった姿はまっすぐ背筋を伸ばしているという感じで悪くない。ヒヨドリは漢字で「鵯」と書くのだが、これを分解すれば「卑しい鳥」になる。これはいくらなんでも言い過ぎじゃないの。
雛鳥は(そのとき初めて見たのだが)、雀みたいにむくむくとしていて、これは文句なくかわいい。
二羽の親鳥がせっせと餌を運んでいたが、よく見ると、大きな蜘蛛を口にくわえて、雛鳥の口に入れてやるのだが、そのまま引っ込めてしまう。そうして、少し離れた木の枝に飛んで行ってしまう。それを何回も繰り返している。つまり、餌で誘導して、雛を飛び立たせようとしているのである。雛もヴェランダの上でよちよち歩き回るのだが、親が餌をくれないので途方に暮れている気配があった。
親鳥の必死度もだんだんにエスカレートしてくるように見えた。
そりゃ、すぐ近くで人相の悪い男が見ているから、必死にもなるだろう。
そのうち、雛はいかにも「意を決して」という感じで飛び立って、庭の木の枝に止まり、それから電線に飛び移り、やがて近くの神社の森の方へと消えて行った。
私はヒヨドリにあまりいい印象を持っていなかったのだが、これ以後は好きになった。