いつだったか、新聞のレコードだかCDだかの広告で、日本の若い男のロック・シンガーの写真の横に、「自信があるぜ、おれの生き方」と書いてあるのを見て、ゲッと吐きそうになったことがある。どういう生き方をすれば自信が持てるのか、私はこのトシになっても分らないでいる。
若い人が「絶対に後悔はしたくないと思います」と言うのを何度か聞いたことがある。後悔するかどうかは後になってみなければ分らないんじゃないか、と、いつも後悔ばかりしている私は思うのである。最初から後悔しないことを考えて行動する、ということが私には理解できない。
最近よく聞く「思い出づくり」という言葉も、どうしても好きになれない。小学校の校長先生も、若い人の表現に影響されてか、入学式などで、「よい思い出をいっぱい作ってください」なんてことを言うようだ。でも、思い出というものは、ずっとあとになって振り返ったときに自然に思い浮んでくるものであって、初めからそれを当てにして行動する、という性質のものではない。勇んでやったことよりも、何気なくやったことの方がはるかに強烈な思い出になっている、ということは実によくあることである。
若いスポーツ選手が「自分を誉めてあげたいと思います」と言うのを何度か聞いたが、これもとっても気持の悪い言葉だ。自己満足というものはいつの時代にもあっただろうけれど、自分を誉める、という発想は、少し前の世代にはなかったように思う。
むかし流行った「青春時代」という歌の一節に「青春時代のまんなかは、道に迷っているばかり」(阿久悠作詞)というのがあったが、こういうのが私の感覚にはぴたっとくる。不安のなかでいつも苛立っている、というのが「青春」の姿だと思うのである。