横浜マリノス/試合観戦記/1998年


第15節 98.11.03 対浦和レッズ 国立

『 サポータの気持ちを紡ぐ9本のパス 』

 

暑い日差しの中、国立に行きました。ここ数日の騒動で良く眠れない毎日が通いていましたが、今日はいい試合を見たいと言う思いと、統合を揶揄する相手サポータの声でサポ同士の騒動にならなければいいが…という不安を抱きながら国立に向かいました。

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朝10時に、統合の件でマリノスフロントからサポータへの説明が有るという事で早めに行きましたが、スタジアムに着いたのは10時少し過ぎでした。先に行っていた友人に聞いたところ、説明は20人くらいのサポータを国立の会議室に集めての説明会が行われている所という事でした。そのまま日差しが強い中、開門時間を待ちます。待ってる間にもフリエのサポータが”フリエ存続”の署名活動を行なっていました。頭が下がる思いです。マリノスのサポータも、A4サイズ1枚のビラを作成して”合併反対”の署名活動を開始していました。もちろん両方とも趣旨には賛同出来るので署名しました。マリノスは署名を集めて日産本社の関係セクションに要望書とともに持って行くそうです。

11時30分頃に警備員からの話で、今回は地元警察署から荷物チェックを厳しくやるようにという話が有って、並んでいる所に警備員が回ってきて荷物をチェックします。話によると、前回の国立競技場の試合で(浦和対鹿島)で発煙筒が炊かれた為の処置という事でした。(31日の西京極の件も関係有るとは思いますが…)チェックが終わって12時にいよいよ開門です。開門時も日本代表の試合のように、10人位人数を区切っての入場で、再度荷物チェックをやりながらの入場で時間がかかりました。中に入ると、ホーム側ゴール裏に場所を取りました。今回は西京極の件も有って、サポータの中心部には行きづらかったし、久々の国立という事も有って(5月のキリンカップ以来)ゴール裏前列の一番上でバックスタンドの方に場所を取りました。この位置は試合全体が見る事が出来て電光掲示板も見る事が出来る席です。(デーゲームは光の反射で見えない事も多いですが…苦笑)並んでいる間にチームからビラが配られました。(内容は別項参照願います)

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入場してから時間が有ったので、売店に行きました。国立は結構品揃えが豊富でいいです。新発売の選手個人ポスターや来年の卓上カレンダーとかも置いて有りました。卓上カレンダーは例年非売品で日産が配ってるはずですが、モノクロバックで各選手の写真が毎月載っています。1月井原、2月聡太郎、3月能活、4月文丈、5月上野、6月直樹、7月小村、8月野田、9月俊輔、10月路木、11月榎本、12月城と、結構いい写真だったので、値段も安いし買ってしまいました。途中の売店を覗くと、J各チームミサンガが売っていました。”青い翼運動”を思い出し、フリエのミサンガを買いました。右手首に巻いて試合に臨みます。

席に戻り、食事をしながら時間を潰していきます。試合開始30分前にマリノスサポータから、サポータの考えを述べた横断幕が掲げられます。最前列の前から、青い布に”Jは企業のおもちゃじゃない、マリノス合併反対”青い布に”貧しくても誇りが有ればそれでいい、親はなくても子は育つぞ”白い布に”谷口常務オレ達のマリノス救ってくれ!”赤い布に”これからも横浜ダービーを戦いたい!”そして大きな白い布に試合前に署名を募っていたマリノスサポータ一同の声明文を書いてサポータの考えをアピールします。アウェー側のレッズサポータの中にも”Jの理念とは?”と書かれた横断幕が掲げられます。

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そしていよいよ選手紹介です。大人しかったレッズサポがアウェー席で目覚めます。各選手の紹介のたびに”ウオー”という雄たけびが聞こえます。MF28番小野伸二の所で最大のボリュームになります。U−19アジアユース選手権で抜けてる間レッズサポはこの日を待っていたんでしょう。

レッズ選手紹介が終わり、マリノスの選手紹介が始まります。横浜国際と同じビデオによる選手紹介、1番GKYoshikatsu kawaguchi〜から順に選手の紹介が続くたびにマリノスサポから拍手と歓声が沸きます。レッズサポからはブーイングが起きます。マリノス6番、埼玉武南高校出身、上野の所で埼玉の裏切り者とばかりに大きなブーイングが起きます。城の選手紹介でもマリサポの歓声を打ち消すようなブーイングがレッズサポから発せられます。強いものの宿命でしょう(城はマリノス移籍後レッズ戦3試合で3ゴール上げています)

選手紹介が終わり、一息ついてる時に、レッズサポータから大量の”横浜!横浜!”コールが発せられました。マリサポの揺れてる気持ちを鼓舞するような暖かいコールはうれしかったです。マリサポも同じように”横浜!横浜!”コールでスタジアムを”横浜”コールで埋めます。次にコールのお返しという意味でマリサポから”浦和レッズ”コールを返しました。コールが終わってどちらともなく拍手が起き、これからの試合はフェアないい試合をしようといい気持ちになりました。レッズサポに勇気付けられて西京極では聞けなかったいつものマリノスコールが続きます。選手はグランド下のアップルームで必ず聞いてると思い、サポートを続けます。レッズサポも迫力十分の”うらーわレッズ”コールを大音量でコールはじめました。

コール合戦の中、いよいよ選手入場です。メンバーは下記の通りです。マリノスは井原が累積警告で出場停止。右SBに今シーズン初スタメンの丸山を入れて、野田をボランチの位置に上げて上野とダブルボランチを組みます。センターバックは直樹と小村、俊輔が連戦の疲労披露のためにベンチからも外れて中盤は、アキとバルディが組みます。

レッズはU−19から帰ってきたばかりの小野を中盤に入れて臨みます。

マリノス

      能活

丸山 小村 直樹 路木

    野田 上野

   バルディ 遠藤

    城   安永

サブ:岡山、寺川、吉原、神田、文丈

レッズ

      土田

土橋 ザップ 西野 山田

    石井 ペトロ

    小野 チキ

    大柴 福田

サブ:田北、岡野、広瀬、三本管、福永

 

レッズのキックオフから試合開始です。試合開始早々、レッズがロングパスから、チキ(ベギリスタイン)がヘッドで狙いますが能活が前に出て難なくキャッチ。マリノスも右サイドを安永が突破してセンタリングを入れますが、少し城には合わずにクリアされてしまいます。中盤での厳しいプレスからパスを繋いで攻め込むマリノス。それに対して中盤から早い攻めを繰り出し福田、大柴のスピードを使うレッズ。局面局面で激しい1対1の対戦が見受けられます。丸山対福田、路木対山田、上野対小野、安永対西野、城対ザップ(ザッペッラ)、そんな中マリノスは左CKからゴール前で丸山がヘッドで合わせますが、惜しくもゴール左へ、中央上野がドリブルで1人2人3人とドリブルで交わしていくのをザップが足を引っかけてイエローが出ます。後半23分小野から素晴らしいスルーパスがチキに出ましたが、左サイドから上げたボールは能活が素晴らしい判断でキャッチします。ペトロからの福田へのスルーパスからの強烈な右足シュートも能活はきっちり弾きます。その後のレッズCKから能活がキャッチしての早いキックをしようとして福田が邪魔して福田にイエローが出ます(最近多いから毎回相手選手にイエロー出してもらいたいです)マリノスも攻め込みますが、中盤でのファウルで止められることも多くてシュートに結びつきません。福田のヘッドで落としての大柴の右足シュートは能活が横っ飛びでボールを押さえます。能活は完全に乗ってるなと感じました。カウンターからマリノスの野田がゴール前で突進しますが、このクリアで得た左CK。バルディの蹴ったボールが直樹の頭に合いますが、惜しくもゴール右へ。試合前半は息つく暇なく早い時間が経過しました。

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後半が開始。お互いのサポータに向かっての攻撃になります。”うらーわカモン”とマリサポの”こい”のコールが互いのゴール裏から漏れます。マリノスのここ数試合見られた前線の人数不足はまったくなく、遠藤、上野、野田などがFWの城、安永を飛び越してボールを受けるシーンも増えて、点が入るのも時間の問題だろうという気になりますが、レッズDFの早い寄せでなかなかシュートが打てない展開にイライラします。そしてレッズに嫌な選手が出てきました。後半10分に大柴に変えて岡野が出てきます。早い攻めが岡野投入で更に早くなります。しかし、アキのドリブルから安永のシュートなどで攻め入りますが押さえられます。ザップからのスルーパスで岡野が抜け出しますが、能活の早い飛び出しでボールを押さえます。戦いはヒートアップしていきます。後半22分マリノスが左CKを得ます。珍しく城がCKを蹴りますが、土田に難なくキャッチされカウンターがやってきます。ペトロにボールを預けてドリブルでハーフウエイラインまで持ち上がり左に開いたチキにパスを出します。小村、直樹はCKでゴール前に上がっていたため戻り切れていません。チキに遠藤が付き、中央上がって行った岡野には、野田と路木がカバーに行きます。しかしその後ろから小野が全速力で上がってきていました。チキが左から上げたボールを小野がスライディングボレーで逆サイドネットに突き刺しとうとう失点してしまいます。シュートは能活が飛んだ下を抜けていきました。素晴らしい得点だったと思います。ゴール後アウェーゴール裏からバックスタンドにかけて赤い旗が揺れます。悔しさと同時に綺麗だな〜と思ってしまいました。

得点したことでレッズコールが大きくなりますが、負けじとマリノスコールも大きくなります。後半26分ゴール正面の福田のヘッドはゴール右へ外れますが、後半32分右の岡野からのセンタリングを福田がヘッドで一度上に上げてしまいますが、落ち際をダイレクトで右サイドネットへ能活の延ばした左手の先を抜けて2点目が入ります。

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しかし、マリノスもあきらめません。切れかけたサポータの気持ちを鼓舞するようにサポータから声が出ます。安永を岡山に変えてターゲットにして徐々にシュートが枠に行き出します。DF陣も岡野の突破を直樹と小村が体を張って止めます。レッズはチキに変えてベテラン広瀬を投入して中盤を締めにかかります。後半37分城のドリブルから岡山が右足で狙いますが、土田の正面に行きます。高さのある岡山が前線で張ることで徐々にマークがずれてきます。そしてついに、後半40分右の上野からふわっとした浮き玉のセンタリングがゴール前に上がります。城の前でクリアしようとして飛んだ山田にかすりもせずに城にボールが通ります。胸で確実に足下に落として右足でコースをよく狙って流し込み、ついに1点を返しました。城はゴールに入ったボールを取ってセンターサークルに早く戻ってキックオフを早く行います。

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1点返した事で、更に岡山を基点としてボールを放り込んでレッズDFラインを下げます。岡野の前線からのチェイシングを早いボール回しで交わしながら前線へビルドアップしていきます。後半44分スローインから左サイドをDFと競り合いながら岡山がゴール前に出して、同点ゴールと思ったバルディのシュートは惜しくもクロスバーの上へ、サポータからは溜息が漏れます。

電光掲示板の45が消えて、ロスタイムが”3”と出ます。まだまだ時間は有ると声援を送ります土田の蹴ったボールは、長く流れて能活の所まで飛びます。岡野のプレッシャーをかわして、能活→丸山→野田→上野→バルディ→遠藤→上野→野田→バルディと2タッチ以内で流れるようにパスが繋がり、バルディのセンタリングを城がヘッド一閃。土田の飛んだ下にワンバンドしてネットに突き刺さりついに2対2の同点に追いつきます。

この一連のゴールまでの流れは、色んな騒動で気持ちが離れかけたサポータの気持ちを1本1本繋いでくれるように9本のパスが繋がった素晴らしく美しいゴールでした。今シーズンのベストゴールとも言えます。城がヘッドをする時にDFを外へ引きつけた岡山の隠れた好プレイも見逃せません。

ロスタイムも少なくなって延長の気配も漂う頃、同点に追いつかれた事でレッズが前がかりになって攻めてきます。右サイドからゴール前にボールを送りますが、混戦から上野が抜けだしハーフライン近く左サイドにいた岡山にパスを出します。西野のトラップが大きくなった所を奪って、少し溜めて上がってきた城にパスを送ります。城はボールを受けてドリブル始めます。右には野田が、左には遠藤が併走するように駆け上がります。ザップがドリブルしている城に少し寄ったところで、フリーとなった左の遠藤に絶妙のパスが出ます。GK土田が体を倒してコースを消しに行くところを遠藤のダイレクトでの左足シュートが土田の肩隅を抜けてゴールに突き刺さり、ついに逆転します。時間は後半48分くらいだったでしょうか?!

ゴールを決めた遠藤はそのままベンチに駆け上がりスタッフと喜びを爆発させます。サポータも狂喜乱舞の大騒ぎでした。私も友人と抱き合いながら喜んでいました。丸山と寺川が交代して、主審のファウルスローの笛を試合終了と勘違いしますが、数秒後にタイムアップ。残り試合時間5分の逆転劇、劇的な逆転勝利を飾りました。

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試合後挨拶にくる選手の表情は晴れ晴れとしたものでした。マストよなびけよの唄が何度も歌われます。能活も手を挙げてサポータの歓声に答えます。他の選手達もうれしそうでした。

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試合後のインタビューは鹿実の同期、遠藤と城でした。

  A:2対0からの2ゴール本当に感動的なゴールでした。

  城:そうですね、内容はすごい良かったと思うんですけど、ここ数試合いろいろなもやもやを有って晴らしたかったんで…90分間あきらめないでやりました。

  A:2対0からのまず1点目は

  城:これは、もうサポータのおかげだと思うし、ここに見に来てくれたみんなのおかげだと思うし、だから、すごく感謝しています。

  A:そして誰もがあきらめかけた瞬間の同点ゴールでした…

  城:そうですね。あきらめた人たちもいると思いますけど、でも僕たちは最後の笛が鳴るまで走りたかったし、最後まで頑張りたかったですね。(最後はちょっと涙声になっていました)

  A:そして同点に追いついた後の決勝ゴールの遠藤選手です。素晴らしいゴールでした。

  遠藤:ありがとうございます。

  A:あの時はどんな気持ちだったんですか?

  遠藤:試合前に監督に今日ぐらい点を取れよって言われてたんで、だから良かったです。

  A:それにしてもあの大事なロスタイムから…

  遠藤:僕も一緒で、最後まであきらめない精神が大事だと思うんで勝てて良かったです。

  A:ホームの国立でこれだけの素晴らしい試合、最後にぜひサポータに一言、まずは城さん

  城:マリノスのサポータはみんな熱心に応援してくれて、色々な問題がありますけど、僕達はグランドの中で魅せるしかないと思うんで、このままずっとついてきて欲しいですし、これからも僕たちも一緒に戦ってきたいと思いますので、また応援して下さい。

  A:遠藤選手は

  遠藤:やっぱサポータがいて僕らがいると思うんで、これからもよろしくお願いします。

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選手の気持ちがうれしくてうるうるしてしまいました。色んな事があってこれからどうなるか解りませんが、9本のパスを繋いだようにサポータの気持ちを一つにして色んな困難に立ち向かっていきたいと改めて思いました。あきらめちゃいけないんだという事を教えられました。選手には色んな意味で”ありがとう”と言いたい気持ちです。

試合後は晴れ晴れとした気分で家路につきました。

 

〜fin〜